説明

オリーブオイルの生産から得られる植物水をベースとした新規な粉末

本発明は、水溶性ポリフェノール、特にヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末の製造方法に関し、また、粉末それ自体、並びに、そのような粉末を含有する、特に錠剤の形態の栄養補助食品、食品、飼料および化粧品に関する。方法は、次の工程:A)水溶性ポリフェノールを含有する(濃縮)植物水を準備する工程;B)(必要に応じて)(濃縮)植物水の水含有率を調節する工程;C)必要に応じて、(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;D)好ましくはアジュバントの存在下に、(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;E)このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、水溶性ポリフェノール、特にヒドロキシチロソールに富むオリーブ植物水を含む粉末の製造方法に関し、また、粉末それ自体、並びに、そのような粉末を含有する、特に錠剤の形態の栄養補助食品、食品、飼料およびヒト用化粧品に関する。
【0002】
オリーブオイル生産の副産物である植物水は、それに含まれるヒドロキシチロソール(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エタノール)やオレウロペイン(図1に示す)などの水溶性ポリフェノールにより、抗酸化作用、心臓の健康増進作用、ガンの抑制作用、抗炎症作用などの有益な生物学的効果を有している。
【0003】
植物水から製造された粉末は、殆どの場合、オイルおよび繊維の含有量が依然として高いため、流動性に乏しい。流動性の低さは、粉末のその後の加工に、それが錠剤の製造であれ、あるいは、そのような粉末で栄養強化した食品の製造であれ、不利である。しかしながら、良好な流動性は、そのような粉末の取り扱いを容易にする。したがって、本発明の目的は、現在商業的に入手可能な粉末より流動性に優れた粉末を提供することにある。本発明の他の目的は、そのような粉末を経済的に製造する方法を提供することにある。
【0004】
そのような粉末および方法に対する要求は、本発明により満たされる。
【0005】
したがって、本発明は、水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末の製造方法であって、次の工程:
A)水溶性ポリフェノールを含有する植物水(または濃縮植物水)を準備する工程;
B)(必要に応じて)植物水(または濃縮植物水)の水含有率を調節する工程;
C)必要に応じて、(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
D)好ましくはアジュバントの存在下に、(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;
E)このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法に関する。
【0006】
水溶性ポリフェノールは、好ましくは、ヒドロキシチロソール、オレウロペイン、チロソールおよびこれらの混合物からなる群より選択される。本発明との関係において「水溶性ポリフェノールに富む」とは、水溶性ポリフェノールの量が、本方法の出発物質として使用された元の植物水に対して、≧0.1重量%、好ましくは≧0.3重量%、より好ましくは≧0.5重量%、特に好ましくは≧30重量%であることを意味する。
【0007】
本方法は、特に、ヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末を製造するためのものである。「ヒドロキシチロソールに富む」とは、本発明との関係において、ヒドロキシチロソールの量が、元の植物水の乾燥重量に対して、≧0.5重量%、好ましくは≧1重量%、より好ましくは≧2.5重量%、特に好ましくは≧25重量%であることを意味する。
【0008】
本発明との関係において、「水溶性ポリフェノール/ヒドロキシチロソールに富む」植物水を含む粉末は、また、水溶性ポリフェノール/ヒドロキシチロソールの量が、粉末の全重量に対して、≧25重量%、好ましくは≧50重量%、より好ましくは≧70重量%、特に好ましくは≧90重量%である粉末を意味し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、オリーブオイル生産の副産物である植物水に含まれる水溶性ポリフェノールであるオレウロペインを示す。
【0010】
以下に各工程をさらに詳細に説明する。本方法の工程はここに挙げた順序とし得るが、必ずしもそのようにする必要はない。
【0011】
[工程A)]
本発明の方法の出発物質として適している植物水は、当業者に知られた方法で製造された植物水であればいかなるものであってもよい。
【0012】
本発明との関係において、「植物水」は、あらゆる種類のオリーブ廃水、オリーブジュースおよびオリーブの水溶性部分を包含する。
【0013】
本発明の他の実施態様においては、植物水自身ではなく、水含有率が低いその濃縮物が使用される。
【0014】
「濃縮植物水」とは、ここでは、当業者に知られた方法(凍結乾燥であっても、あるいは、水の蒸留除去(好ましくは減圧下で)であってもよい)で水の大部分が除去された植物水を意味する。この点において、「水含有率が低い」とは、水の量が、濃縮植物水の全重量に対して、6重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満であることを意味する。
【0015】
本発明で使用される(濃縮)植物水は、特に、米国特許第6,416,808号明細書(第4欄第37行〜第7欄第27行);国際公開第2004/005228号パンフレット、米国特許第6,936,287号明細書、米国特許公開第2005/103711号明細書、米国特許公開第2003/108651号明細書、米国特許公開第2002/198415号明細書、米国特許第6,165,475号明細書;特開2001−252054号公報、特開2000−319161号公報、国際公開第01/45514号パンフレット(ユサナ(Usana))、米国特許第6,358,542号明細書(特に、第4欄第1行〜第9欄第50行を参照)、米国特許第6,361,803号明細書(特に、第3欄第64行〜第9欄第47行、並びに、実施例1〜5および11〜13を参照)、および国際公開第06/084658号パンフレットに記載されている方法の1つにより製造され得る。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、(濃縮)植物水は米国特許第6,416,808号明細書(第4欄第37行〜第7欄第27行)に開示されている方法で製造された。
【0017】
特に適切な濃縮植物水は、例えば、米国、ヘイワードのクレアグリ(CreAgri、Hayward、USA)から商業的に入手可能な「HIDROX(登録商標)6%」である。「HIDROX(登録商標)6%」は、HIDROX(登録商標)6%の全重量に対して、5〜8重量%のタンパク質、45〜68重量%の炭水化物、17〜30重量%の脂肪、8〜15重量%の灰分、および少なくとも6重量%の水溶性でかつ単純なポリフェノールを含有する。
【0018】
共に米国、ヘイワードのクレアグリから商業的に入手可能な「HIDROX(登録商標)2%」および「HIDROX(登録商標)9%」も、イタリア、ミラノ(Milan、Italy)のGlanbia and Indenaから商業的に入手可能な次の製品:20〜35重量%のヒドロキシチロソールおよび4〜6重量%のチロソールを含有するOLIVACTIVTM、フェノールの全含有率が≧30重量%(UVにより測定)、ヒドロキシチロソール量が≧1.5重量%(HPLCにより測定)で、かつベルバスコシド量が≧5.0重量%(HPLCにより測定)のOLEASELECTTM、並びに、1kg当たり22〜24gのヒドロキシチロソールおよび5.0〜6.5gのチロソールを含有する粉末のOLIVE(OLEA)DRYもまた使用することができる。
【0019】
他の適切な製品には、Seppicから商業的に入手可能なProlivols(35重量%のポリフェノール、特に20mgのヒドロキシチロソール(Prolivols1g当たり)および3mgのチロソール(Prolivols1g当たり)を含有)の他、Olive Braun Standard 500(obipektin製)(1kg当たり1.0〜2.2gのヒドロキシチロソールおよび0.2〜0.7gのチロソールを含有する粉末)、Olivex olive polyphenol liquid P10(Albert Isliker製)(1kg当たり2.0〜3.5gのヒドロキシチロソールおよび0.2〜1.0gのチロソールを含有する液体)、Olivex olive polyphenol(Albert Isliker製)(1kg当たり22〜23gのヒドロキシチロソールおよび6.5〜8.0gのチロソールを含有する粉末)、およびOlive Polyphenols NLT(Lalilab Inc.製)(2.0〜6重量%のヒドロキシチロソールおよび0.7〜1.1重量%のチロソールを含有)がある。
【0020】
商業的に入手可能な適切な濃縮植物水においては、ヒドロキシチロソールの量は濃縮植物水全重量の1kg当たり1.0〜220gの範囲で変化する。チロソールの量は、濃縮植物水全重量の1kg当たり0.2〜45gの範囲で変化することが好ましい。ヒドロキシチロソールとチロソールの重量比は、100:10〜100:40であることが好ましく、100:18〜100:35であることが特に好ましい。
【0021】
本発明の方法で使用される特に好ましいヒドロキシチロソールに富む(濃縮)植物水は、次の工程:
i)オリーブから植物水を製造する工程;
ii)植物水に酸を加え、それにより酸性植物水を製造する工程;
iii)植物水中に最初に存在したオレウロペインの少なくとも50%がヒドロキシチロソールに転換されるまでの間、酸性植物水をインキュベートする工程;
iv)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水の水(の一部)を、必要に応じて、例えば凍結乾燥により除去する工程
を含む方法で製造される。
【0022】
[工程i)]
植物水は種を除いたオリーブの肉または果肉から製造することが好ましい。
【0023】
植物水は次の工程:
必要に応じて、オリーブからオリーブの種を除き、種なしのオリーブ果肉を得る工程;
(種なしの)オリーブ果肉をプレスし、水、オイルおよびオリーブ果肉成分を含む液相混合物を得る工程;
液相混合物のオイルおよびオリーブ果肉成分から水成分を分離し、オイルおよびオリーブ果肉を実質的に含まない水成分を得る工程;
分離された水成分を採取する工程
により得ることが好ましい。
【0024】
[工程ii)]
酸は、pHを1〜6の範囲、好ましくは3〜5の範囲とするのに有効な量を添加することが好ましい。
【0025】
酸は、ヒトが消費するのに適した任意の有機酸および無機酸(例えば、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、リン酸など)からなる群より選択することが好ましい。クエン酸および/またはリン酸の使用がより好ましい。
【0026】
[工程iii)]
酸性植物水は、植物水中に最初に存在したオレウロペインの少なくとも75%がヒドロキシチロソールに転換されるまでの間、インキュベートすることが好ましい。
【0027】
[工程B)]
工程B)では、その結果得られる懸濁液中の水の量が、その結果得られる懸濁水の全重量に対して7〜70重量%の範囲、より好ましくは20〜60重量%の範囲、特に好ましくは40〜50重量%の範囲となるような量の水が濃縮植物水に加えられるか、または植物水から除去される。その結果、濃度はスプレードライまたは造粒に最適なものとなる。
【0028】
[工程C)]
脂溶性部分(オイル)および水不溶性部分は無視する。水溶性ポリフェノール、特にヒドロキシチロソールに富む水溶性部分が工程D)でさらに使用される。
【0029】
[工程D)]
(濃縮)植物水を粉末へ変換する工程D)は、スプレードライまたは造粒によって行われる。
【0030】
工程D)のスプレードライは、入口温度が120〜220℃の範囲、好ましくは130〜210℃の範囲、より好ましくは130〜150℃の範囲で、かつ出口温度が75〜90℃の範囲で行うことが好ましい。
【0031】
工程D)の造粒は、加工デンプン、ペクチン、ポリサッカリドおよびタンパク質などのバインダーを用い、流動層造粒、押出造粒、ミキサー造粒のような標準的な造粒方法を使用して行われる。
【0032】
スプレードライは、モノサッカリド、ジサッカリド、オリゴサッカリドおよびポリサッカリドからなる群より選択されるアジュバントの存在下に行うことが好ましい。より好ましくは、スプレードライは、好ましくはデキストロース当量が5〜8のマルトデキストリンの存在下に行うことがより好ましい。マルトデキストリンを加えることにより、収率が大きく上昇し、流動性が向上し、かつ吸湿性(hygroscopicity)が低下する。
【0033】
モノ−およびジサッカリドの好ましい例としては、サッカロース、転化糖、キシロース、グルコース、フラクトース、ラクトース、マルトース、サッカロースおよび糖アルコールが挙げられる。
【0034】
オリゴ−およびポリサッカリドの好ましい例としては、デンプン、加工デンプン、デンプン加水分解物が挙げられる。デンプン加水分解物の好ましい例としては、デキストリンおよびマルトデキストリン、特に5〜65の範囲のデキストロース当量(DE)を有するもの、並びに、グルコースシロップ、特に20〜95の範囲のDEを有するものが挙げられる。用語「デキストロース当量」(DE)は加水分解の程度を意味し、乾燥重量基準のD−グルコースとして計算される還元糖の量である。この尺度はDEが略0の天然デンプンとDEが100のグルコースを基準にしている。
【0035】
好ましい加工ポリサッカリドは加工デンプンである。デンプンは親水性であり、したがって、乳化力を有さない。しかしながら、加工デンプンは、公知の化学的方法により疎水性部分で置換されたデンプンから造られる。例えば、デンプンは、炭化水素鎖で置換した無水コハク酸などの環状ジカルボン酸無水物で処理することができる(オー・ビー・ブルツバーグ(O.B.Wurzburg)(編者)、「Modified Starches:Properties and Uses、CRC Press,Inc.ボカラトン(Boca Raton)、フロリダ(Florida)、1986(およびその後の版)を参照。本発明の特に好ましい加工デンプンは、次式(I)を有する。
【化1】


式中、Stはデンプン、Rはアルキレンラジカル、およびR’は疎水性の基である。好ましくは、Rはジメチレンまたはトリメチレンなどの低級アルキレンラジカルである。R’は、好ましくは5〜18個の炭素原子を有する、アルキル基またはアルケニル基とすることができる。式(I)で表わされる化合物は「OSA−デンプン」(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム)である。置換度、すなわちフリーの非エステル化水酸基数に対するエステル化水酸基数は、通常、0.1%〜10%の範囲、好ましくは0.5%〜4%の範囲、より好ましくは3%〜4%の範囲で変化する。
を有する。
【0036】
用語「OSA−デンプン」はオクテニル無水コハク酸(OSA)で処理された任意のデンプン(トウモロコシ、小麦、タピオカおよびジャガイモなどの任意の天然物または合成物由来)を意味する。置換度、すなわちフリーの非エステル化水酸基数に対するOSAによりエステル化された水酸基の数は、通常、0.1%〜10%の範囲、好ましくは0.5%〜4%の範囲、より好ましくは3%〜4%の範囲で変化する。OSA−デンプンはまた、「食品用加工デンプン」という表現でも知られている。
【0037】
用語「OSA−デンプン」は、また、例えば、HiCap 100、Capsul、Capsul HS、Purity Gum 2000)、UNI−PURE)、HYLON VII)という商品名でNational Starch)から、Roquette Freresから、CEmCapという商品名でCereStarから、またはTate & Lyleから商業的に入手可能なデンプンも包含する。
【0038】
[工程E)]
工程E)で使用する有機溶媒は、沸点が<115℃の有機溶媒であることが好ましい。
【0039】
有機溶媒は、ジクロロメタン、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、エタノール、iso−プロパノール、エチルアセテートおよびこれらの混合物からなる群より選択することが好ましい。
【0040】
必要ならば、有機溶媒で洗浄した粉末を、例えば乾燥器、流動層乾燥機、または電子レンジでの連続乾燥で、さらに乾燥させる。
【0041】
本発明はまた、水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末の製造方法であって、次の工程:
A)水溶性ポリフェノールを含有する植物水(または濃縮植物水)を準備する工程;
B)(必要に応じて)植物水(または濃縮植物水)の水含有率を調節する工程;
C)必要に応じて、(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
)(濃縮)植物水(の水溶性部分)を(スプレー)乾燥させる工程;
E)このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法に関する。
【0042】
工程A)、B)、C)およびE)の詳細および好ましい態様は上述した通りである。工程D)は、工程D)について記載したように行うことが好ましい。
【0043】
本発明の特別な実施形態は、ヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末の製造方法であって、次の工程:
a)オリーブから植物水を製造する工程;(上記工程A)および工程i)を参照)
b)植物水に酸を加え、それにより酸性植物水を製造する工程;(上記工程ii)を参照)
c)植物水中に最初に存在したオレウロペインの少なくとも50%がヒドロキシチロソールに転換されるまでの間、酸性植物水をインキュベートする工程;(上記工程iii)を参照)
d)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水を、必要に応じて、その水(の一部)を除去することによって濃縮する工程;(上記、工程B)を参照)
e)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む濃縮植物水を、必要に応じて、凍結乾燥する工程;
f)必要に応じて、凍結乾燥したヒドロキシチロソールに富む濃縮植物水を水に再懸濁する工程;
g)必要に応じて、濃縮植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;(上記工程C)を参照)
h)好ましくはアジュバントの存在下に、(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;(上記工程D)を参照)
j)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程(上記工程E)を参照)
を含む方法である。
【0044】
本発明はまた、上述した本発明の方法で製造した(水溶性ポリフェノール、特にヒドロキシチロソールに富む植物水を含む)粉末自体に関する。
【0045】
本発明の方法により製造された粉末は、良好な流動性を有する。それ故、それらは、それらを含む(コーティング/非コーティング)錠剤の製造に特に適している。したがって、本発明はまた、本発明の任意の方法で製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含むそのような粉末を含む錠剤に関する。
【0046】
本発明の粉末のさらなる加工は、錠剤に限定されるものではない。本発明の粉末は良好な流動性を有していることから、一般に取り扱いは容易である。したがって、それらはまた、後述するように(他の)ガレノス形態の製造に使用することができる。
【0047】
したがって、本発明はまた、本発明の任意の方法で製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を含む栄養補助食品に関する。
【0048】
人体への投与、特に経口投与に適したガレノス形態には、丸剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、および、発泡性粉末、発泡性錠剤などの発泡性製剤がある。栄養補助食品または医薬組成物は、固体形態のみならず、例えば飲料、ペーストおよび油性懸濁液のような溶液、乳化液または懸濁液などの液体形態でも投与することができる。ペーストは硬質または軟質シェルのカプセルに充填してもよい。他の使用形態の例としては、経皮、非経口または注射による投与が挙げられる。栄養および医薬組成物はまた、制御(遅延)放出製剤の形態とすることもできる。
【0049】
本発明の栄養組成物または医薬組成物は、保護親水コロイド、バインダー、フィルム形成剤、カプセル化剤/材、壁/シェル材、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤または崩壊剤、吸着剤、担体、フィラー、補助化合物(cocompound)、分散剤、湿潤剤、加工助剤、流動化剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル化剤、酸化防止剤および抗微生物剤をさらに含有することができる。
【0050】
本発明の粉末はまた、優れた/改善された官能的特性を有していることから、栄養補助食品(また、医薬組成物)のみならず、ヒトが食べる食品にも適している。したがって、本発明はまた、本発明の任意の方法により製造された水溶性ポリフェノールに富む(特にヒドロキシチロソールに富む)植物水を含む粉末を含む食品に関する。
【0051】
用語「食品」には、食物添加物や飲料だけでなく臨床栄養物など、あらゆるタイプの栄養物が含まれる。
【0052】
本発明の他の実施形態においては、本発明の任意の方法により製造された水溶性ポリフェノールに富む(特にヒドロキシチロソールに富む)植物水を含む粉末は、化粧品の成分として使用される。
【0053】
本発明の方法は、濃縮植物水(を含む粉末)の流動性を改善することから、また、濃縮植物水の流動性を改善する方法であって、次の工程:
必要に応じて、(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
好ましくはアジュバントの存在下に、濃縮植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;および
このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法に関する。
【0054】
これらの工程には、先述したのと同様の好ましい態様を適用することができる。
【0055】
ここで、次の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
[実施例1]
HIDROX6%凍結乾燥粉末200gを1000mlの二重壁容器に入れた。脱イオン水300mlを加え、室温下、ミキサーディスクにより800回転/分(rpm)で攪拌して混合物を溶液とした。その後、ミキサーディスクのrpmを4800rpmに上げ、30分間でオイルを乳化した。スプレードライの前に、溶液を脱イオン水300mlで希釈して、粘度を調節した。
【0057】
研究室用スプレードライヤー(ニロ(Niro)製のMobilie MinorTM2000 Typ D1により、次の条件で溶液をスプレードライした。
入口温度:約200℃
出口温度:78〜86℃
ノズル圧:4bar(速度:約23000rpm)
噴霧速度:約2.5kg/時間
収率:54g(理論量の27%)
【0058】
分析データを表1に示す。
【0059】
[実施例2]
HIDROX6%凍結乾燥粉末を100gとマルトデキストリンDE−0508を100gとを1000mlの二重壁容器に入れ、実施例1と同様に処理した。
収率132g(理論量の66%)
【0060】
分析データを表1に示す。
【0061】
[実施例3:エチルアセテートによる濃縮植物水の抽出]
10×5gのHIDROX6%凍結乾燥粉末を50mlの遠心分離管に入れた。エチルアセテート40mlを加え、振盪機(IKA HS 501 D)により遠心分離管を300振動/分で1時間振盪して、油溶性成分を溶解した。その後、円形フィルターおよび吸引ビンを使用して固体粒子をろ過した。固体粒子を再び50mlのエチルアセテートで3回洗浄した。
【0062】
洗浄物を、真空吸引ビンを使用して、フィルター上、室温で乾燥させ、その後、乾燥器で1時間乾燥させた。
【0063】
油性成分を含有するエチルアセテート相はロータリーエバポレータにより蒸発させた。
【0064】
ヒドロキシチロソールを含有するエチルアセテート相の蒸発により得られた乾燥粉末の分析データを表1に要約する。
【0065】
[実施例4:植物水の遠心分離およびスプレードライ]
12×12.5g(合計150g)のHIDROX6%凍結乾燥粉末を50の遠心分離管に入れた。脱イオン水34mlを加え、振盪機(IKA HS 501 D)により遠心分離管を300振動/分で1時間振盪して、粉末を再分散させた。そのため、それらを3700rpm(Sigma 6−10)で6時間の遠心分離した。上部の油相と底部の「固体」相を除去し、水相を採取した。77.9gの乾燥物質を含有する水相(412g)を、ニロ製の研究室用スプレードライヤーMobile Minor 2000により、次の条件でスプレードライした。
入口温度:約140℃
出口温度:76〜82℃
ノズル圧:4bar(速度:約23000rpm)
噴霧速度:約0.8kg/時間
収率:6g(理論量の7.7%)
【0066】
水相中の乾燥物質含有率は18.9重量%(乾燥物質77.9g、使用した全材料の約52重量%)であった。
【0067】
分析データを表1に示す。
【0068】
[実施例5:マルトデキストリンの使用による植物水の遠心分離およびスプレードライ]
水溶性部分を実施例4で記載したようにして分離した。収率および流動性を向上させるために、スプレードライの前に、乾燥物質63.6gを含有する344gの水相に、マルトデキストリン63.6gを加えた。実施例4で記載したのと同様の方法で水溶液をスプレードライした。
収率107g(理論量の86%)
【0069】
分析データを表1に要約する。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末の製造方法であって、次の工程:
A)水溶性ポリフェノールを含有する(濃縮)植物水を準備する工程;
B)(必要に応じて)前記(濃縮)植物水の水含有率を調節する工程;
C)必要に応じて、前記(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
D)好ましくはアジュバントの存在下に、前記(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;
E)このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程B)において、その結果得られる懸濁液中の水の量が、その結果得られる懸濁水の全重量に対して7〜70重量%の範囲、より好ましくは20〜60重量%の範囲、特に好ましくは40〜50重量%の範囲となるような量の水が加えられるか、または除去される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリフェノールは、ヒドロキシチロソール、オレウロペイン、チロソールおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程D)のスプレードライは、入口温度が120〜220℃の範囲で、かつ出口温度が75〜90℃の範囲で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程D)で使用されるアジュバントは、モノサッカリド、ジサッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリドおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、ジクロロメタン、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、エタノール、iso−プロパノール、エチルアセテートおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程C)において、前記植物水の脂溶性部分および水不溶性部分が除去される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロキシチロソールに富む(濃縮)植物水の製造方法であって、次の工程:
i)オリーブから植物水を製造する工程;
ii)前記植物水に酸を加え、それにより酸性植物水を製造する工程;
iii)前記植物水中に最初に存在したオレウロペインの少なくとも50%がヒドロキシチロソールに転換されるまでの間、前記酸性植物水をインキュベートする工程;
iv)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水の水(の一部)を、必要に応じて、例えば凍結乾燥により除去する工程
を含む方法。
【請求項9】
前記植物水は種を除いたオリーブの肉または果肉から製造される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記インキュベートは、前記酸性植物水のヒドロキシチロソールとオレウロペインとの重量比が、1:1〜200:1、好ましくは4:1〜200:1、より好ましくは10:1〜100:1になるまで行われる請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記インキュベートは、前記酸性植物水のヒドロキシチロソールとチロソールとの重量比が、3:1〜50:1、好ましくは5:1〜30:1になるまで行われる請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸は、pHを1〜6の範囲、好ましくは3〜5の範囲とするのに有効な量で添加される請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸は、クエン酸またはリンである請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)は、次の工程:
必要に応じて、オリーブからオリーブの種を除き、種なしのオリーブ果肉を得る工程;
前記(種なしの)オリーブ果肉をプレスし、水、オイルおよびオリーブ果肉成分を含む液相混合物を得る工程;
前記液相混合物のオイルおよびオリーブ果肉成分から水成分を分離し、オイルおよびオリーブ果肉を実質的に含まない水成分を得る工程;
前記分離された水成分を採取する工程
によって行われる請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末の製造方法であって、次の工程:
a)オリーブから植物水を製造する工程;
b)前記植物水に酸を加え、それにより酸性植物水を製造する工程;
c)前記植物水中に最初に存在したオレウロペインの少なくとも50%がヒドロキシチロソールに転換されるまでの間、前記酸性植物水をインキュベートする工程;
d)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水を、必要に応じて、その水(の一部)を除去することによって濃縮する工程;
e)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む濃縮植物水を、必要に応じて、凍結乾燥する工程;
f)必要に応じて、前記凍結乾燥したヒドロキシチロソールに富む濃縮植物水を水に再懸濁する工程;
g)必要に応じて、前記濃縮植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
h)好ましくはアジュバントの存在下に、前記(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;
j)このようにして得られたヒドロキシチロソールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によって製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を含む錠剤。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によって製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を含む栄養補助食品。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によって製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を含む食品または飼料。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によって製造された水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を含む化粧品。
【請求項20】
濃縮植物水の流動性を改善する方法であって、次の工程:
必要に応じて、(濃縮)植物水を遠心分離し、水溶性部分を分離する工程;
好ましくはアジュバントの存在下に、前記(濃縮)植物水(の水溶性部分)をスプレードライまたは造粒する工程;および
このようにして得られた水溶性ポリフェノールに富む植物水を含む粉末を、必要に応じて、有機溶媒により洗浄する工程
を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−511393(P2010−511393A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539653(P2009−539653)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010490
【国際公開番号】WO2008/067976
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】