説明

カソード基板及びその作製方法、並びに表示素子及びその作製方法

【課題】 電子収束に優れたゲート電極と収束電極とが同一平面に形成されたカソード基板及びその作製方法、並びに表示素子及びその作製方法の提供。
【解決手段】 本発明のカソード基板は、基板上に形成されたカソード電極と、絶縁層と、エミッタと、2以上のゲートホールが形成されたゲート電極と、該ゲート電極と同一平面に形成された収束電極とを備えたカソード基板において、各ゲート電極は、他の2つのゲート電極とそれぞれの端部で接続され、収束電極は、該端部以外の各ゲート電極の周囲を包囲するように形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソード基板及びその作製方法、並びに表示素子及びその作製方法に関するものであり、特にゲート電極と収束電極とが同一平面に形成されたカソード基板及びその作製方法、並びに表示素子及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来用いられてきた陰極線管に代わり、液晶ディスプレイ、光放出ダイオード、プラズマディスプレイパネル、電界放出型ディスプレイ(Field Emission Display:FED)などの平板ディスプレイの研究・開発が進められているが、その中でもFEDは、低消費電力、高画質、高速応答を実現できるとして注目されている。このFEDの作製に用いられる表示素子としては、カソード電極、ゲート電極及びエミッタを少なくとも有する3極構造のカソード基板と、アノード電極を少なくとも有するアノード基板とから構成される3極構造型の表示素子があるが、この3極構造型の表示素子においては、電子が拡散しやすいという問題がある。そこで、電子の拡散を抑制すべく、カソード電極、ゲート電極、エミッタ及び収束電極を少なくとも有する4極構造のカソード基板と、アノード電極を少なくとも有するアノード基板とから構成される4極構造型の表示素子が知られている(例えば、特許文献1、2及び3)。
【特許文献1】特開2005−243609号(図2、図3等)
【特許文献2】特開2001−229805号(図1、段落(0018)等)
【特許文献3】特許3189789号(図1、段落(0010)等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載された4極構造型の表示素子では、ゲート電極上にさらに絶縁層及び収束電極層を順次設ける必要があり、3極構造型の表示素子に比べて作製工程が多く、煩雑であるという問題がある。また、特許文献2に記載された4極構造型の表示素子は、収束電極層がゲート電極層と同一平面にあるが、収束電極層はコンタクトホールを介して収束電極と同一平面にない収束電極端子に接続されており、構造が複雑で作製が困難であるという問題がある。さらに、特許文献3に記載された4極構造型の表示素子も、収束電極とゲート電極とが同一平面にあるが、引出電極の一辺の中央部にゲート配線部との接続ラインである引出線部(図1中では絶縁膜で覆われている)が接続されているために、この一辺には収束電極を配置することができない。従って、この部分で電子が収束しにくいという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、作製が簡単で、かつゲート電極の周囲四方向を包囲することができる収束電極を有する4極構造型のカソード基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカソード基板は、基板上に形成されたカソード電極と、絶縁層と、エミッタと、2以上のゲートホールが形成されたゲート電極と、該ゲート電極と同一平面に形成された収束電極とを少なくとも備えたカソード基板において、各ゲート電極は、他の2つのゲート電極とそれぞれ端部で接続するように形成され、収束電極は、各ゲート電極の該端部以外の周囲を包囲するように形成されたことを特徴とする。
【0006】
ゲート電極の端部で互いに接続していることで、ゲート電極の周囲各方向を収束電極が包囲でき、その結果、電子放出が拡散しない。このような配置になるように各ゲート電極と収束電極とを形成するためには、前記各ゲート電極は、その一辺の両端部で他の2つのゲート電極の端部と接続するように形成されること、前記各ゲート電極の対向する二辺の対向する端部で他の2つのゲート電極と接続するように形成されることが望ましい。
【0007】
この場合、前記各ゲート電極は、その周囲の50%以上を収束電極によって包囲されることが好ましい。この場合の周囲とは、各ゲート電極が略多角形である場合にはその各辺の長さの合計を、各ゲート電極が略円形である場合にはその外周を意味するものである。この周囲のうち収束電極によって包囲される部分(即ち、収束電極が対向して配置されている部分)の長さの合計が50%以上であれば、電子を収束させうる程度に収束電極が各ゲート電極の周囲に配置されているので、電子放出の拡散が抑制されうる。
【0008】
前記エミッタが、カーボン系材料であることが好ましい。
【0009】
本発明のカソード基板の作製方法は、基板上に、カソード電極、絶縁層、電極層膜を順次成膜し、次いで、該電極層膜を微細加工して、各ゲート電極を隣り合う他の2つのゲート電極とその端部で接続するように形成するとともに、収束電極を各ゲート電極の該端部以外の周囲を包囲するように形成した後に、ゲート電極層にゲートホールを設けて、このゲートホールからウェットエッチングにより絶縁層をエッチングしてエミッタホールを形成し、その底部にエミッタを設けることを特徴とする。
【0010】
電極層膜を微細加工してゲート電極と収束電極とを同時に形成することで、簡易に4極構造のカソード基板を形成することが可能である。
【0011】
前記エミッタを、カソード電極上に形成した触媒層にカーボン系材料原料ガスを接触させて、触媒層上に形成したカーボン系材料から形成することが好ましい。
【0012】
また、本発明の表示素子は、前記カソード基板と、蛍光体層、アノード用電極層及び上部基板を少なくとも含むアノード基板とを有することを特徴とする。前記カソード基板を有することで、電子が拡散しにくい表示素子を得ることが可能となる。
【0013】
本発明の表示素子の作製方法は、前記カソード基板の作製方法に従ってカソード基板を作製した後、このカソード基板と、蛍光体層、アノード用電極層及び上部基板を少なくとも含むアノード基板とを、支持体を介してはり合わせて表示素子を作製することを特徴とする。前記カソード基板の作製方法を適用することで、簡易に、4極構造の表示素子を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカソード基板によれば、ゲート電極の周囲四方向を収束電極で包囲したことにより、電子放出の収束がよいという優れた効果を奏する。また、本発明のカソード基板の作製方法によれば、電子放出の収束がよいカソード基板を簡易に作製できるという優れた効果を奏する。
【0015】
さらに、本発明の表示素子によれば、電子放出の収束がよいので品質が高いという効果を奏する。本発明の表示素子の作製方法によれば、品質のよい表示素子を簡易に作製できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明のカソード基板の作製工程を説明するための各作製工程でのカソード基板の模式的断面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、基板S上に、カソード電極層1(厚さ50〜300nm)、絶縁層2(厚さ1〜6μm)及び電極層膜3(厚さ50〜300nm)を形成する。以下、詳細に説明する。まず、基板S上に、200〜400℃の範囲で基板加熱を行いながら、5×10−4Pa以下の真空中でのEB蒸着法や、例えば圧力0.67Pa下でのArガス(流量50sccm)雰囲気中でのスパッタ法等により、カソード電極層1を形成する。次いで、このカソード電極層1をライン状にパターニングする。
【0018】
パターニングしたカソード電極層1の上に、300〜450℃の範囲で基板加熱を行いながら5×10−4Pa以下の真空中でのEB蒸着法や、例えば圧力0.67Pa下でのArガス(流量50sccm)雰囲気中でのスパッタ法等により、絶縁層2を形成する。基板加熱を行なうのは、絶縁層の応力による破損を防ぐためである。この絶縁層形成の際、基板に付着するダストによるピンホールを防ぐため、2回以上にわけて形成し、その後、純水でこすり洗浄を行うことが好ましい。
【0019】
次いで、絶縁層2の上に、200〜400℃の基板加熱をしながら5×10−4Pa以下の真空中でのEB蒸着法や、例えば圧力0.67Pa下でのArガス(流量50sccm)雰囲気中でのスパッタ法等により、電極層膜3を形成する。
【0020】
ここで、前記基板としては、表示素子において通常用いられる基板であれば良く、例えばガラスやシリコン、セラミック(例えば、STOやBTOなど)からなる基板を用いることができる。カソード電極層材料としては、通常カソード電極材料として用いる金属、合金であれば良く、例えばCr、Mo、Cu、W、Al及びNdから選ばれた金属やこれらの金属の少なくとも1種を含む合金を用いることができる。絶縁層材料としては、通常絶縁層として用いる材料でもあれば良く、例えばSiOやジルコニアなどを用いることができる。電極層膜としては、通常ゲート電極層として用いる金属、合金であれば良く、例えばCr、Pd、Mo、Nd、Cu、W及びAlから選ばれた金属やこれらの金属の少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0021】
この電極層膜3上に、レジストを塗布して図2に示すマスクパターンを用いて所定のレジストパターン4を形成する(図1(b))。この図2中のマスクパターンは、ゲート電極形成用マスクパターンXと、収束電極形成用マスクパターンYとが相互に繰り返し配置されているものであり、各マスクパターン下に、それぞれゲート電極用レジストパターン4a(即ちゲート電極)と収束電極用レジストパターン4b(即ち収束電極)とが形成される。このマスクパターンを、図2の拡大図である図3を用いてより詳細に説明する。なお、このマスクパターンをレジスト上に載置した場合、図3中の線LLでの断面図が、図1(b)に相当する(図1(b)中、マスクパターンは図示していない)。以下、説明のため、ゲート電極用パターンA〜A及び収束電極用パターンB〜B及びCについて述べる。
【0022】
ゲート電極形成用マスクパターンXは、図3に示したような配置で、2列に並んだ正方形のゲート電極用パターン部A〜Aからなる。各ゲート電極用パターン部は、列方向に対しては所定の間隔をあけて並んでおり、行方向では、所定の間隔をあけずに配置されている。そして、各ゲート電極用パターン部は、一方の列にあるゲート電極パターン部の中心が、他方の列の所定の間隔の中心にくるように、一方の列を他方の列に対してずらして配置されている。これにより、一方の列にあるゲート電極パターン部は、その一辺の両端部で、異なる列にある2つのゲート電極用パターン部の端部と接している。例えば、ゲート電極用パターン部Aの中心は、異なる列にある2つのゲート電極用パターン部A及びAの所定の間隔の中心に位置し、ゲート電極用パターン部Aは、その一辺の両端部で、2つのゲート電極用パターン部A及びAの各端部と接するように構成されている。収束電極形成用マスクパターンYは、櫛歯状部分B〜Bと、この櫛歯状部分の背部分Cとからなる。例えば、ゲート電極用パターン部Aは、各櫛歯状部分B、B及び背部分Cにより三方から囲まれ、また、別の櫛歯状部分Bが、ゲート電極用パターン部Aのゲート電極用パターン部A及びAと接した辺の中央部でAと対向している。
【0023】
このようにしてゲート電極用パターン部Aは、櫛歯状部分B、B、及びB、並びに背部分Cによって、その周囲4方向を包囲される。その結果、このマスクパターンを用いて形成されるゲート電極は、2列に並び、列方向に対しては所定の間隔をあけて並んでおり、行方向に対しては所定の間隔をあけずに配置され、一方の列にあるゲート電極の中心が、他方の列の所定の間隔の中心にくるように、一方の列を他方の列に対してずらして配置されている。そして、一方の列にあるゲート電極は、その一辺の両端部で、異なる列にある2つのゲート電極の端部と接することができる。そして、ゲート電極の周囲4方向を収束電極が包囲するように形成されるため、電子放出の収束がよい。各ゲート電極用パターンの一辺の大きさは20〜300μm、櫛歯状部分及び背部分の幅は、15〜200μmである。
【0024】
この場合、収束電極がゲート電極の周囲の50%以上を包囲するようにマスクパターンを構成することが好ましい。50%未満であると、電子の発散を十分に抑制できず収束電極がない部分から電子放出が拡散してしまう。より好ましくは、その周囲の75%以上を包囲することであり、高いほうが望ましい。
【0025】
次いで、図1(c)のように、図2に示したマスクパターンを用いて形成されたレジストパターン4にしたがって、電極層膜3を微細加工してゲート電極用レジストパターン4a下にゲート電極3aを形成すると同時に、収束電極用レジストパターン4b下に収束電極3bを形成する。このように、本発明では、ゲート電極を形成すると同時に収束電極を形成できるので、従来の4極構造の表示素子と比べて非常に作製が容易である。
【0026】
その後、レジストパターン4を除去する(図1(d))。除去後に、本カソード基板をを上面からみると、ゲート電極3aと収束電極3bとは、図2に示すマスクパターンと同一の所定の配置がなされている。次いで、図1(e)に示すように、ゲート電極にゲートホールを形成すべく、ゲートホール形成用のレジストを塗布してレジスト層5とした後に所定のレジストパターンに形成し、次いで、ウェットエッチングまたはドライエッチングによりゲート電極3aにゲートホール3cを形成する(図1(f))。
【0027】
ゲート電極3aに設けられた各ゲートホール3cは、それぞれ略四角形または略円形に形成される。略四角形の場合、例えば正方形であるとその一辺の長さは1〜3μmの範囲で形成され、略円形の場合、その直径は1〜3μmの範囲で形成される。そして、これらのゲートホール3cは、後述する絶縁層ホール6直上に密集、好ましくは均一に密集して形成される。このゲートホール3cが密集した領域は、略円形状又は略四角形状である。
【0028】
そして、各ゲートホール3c間の間隔は、絶縁層2の厚さの2倍以下が好ましい。2倍を超えると、後述する絶縁層のエッチング工程において、後述する1つの絶縁層ホール6を形成することができなくなるからである。このように形成するには、例えば、各ゲートホール3cは、その間隔が0.5〜2μmの範囲、その数は1ドット(2500〜40000μm)当たり2〜500個の範囲で形成されることが好ましい。
【0029】
各ゲートホール3cの開口面積の総和は、絶縁層ホール6の開口面積に対して50〜90%となることが好ましい。各ゲートホール3cの開口面積及びゲートホール数のいずれか一方を増減させることで、アノード基板への電荷注入効率を変化させることができる。各ゲートホール3cの開口面積の総和が50%未満であると、アノード基板への電荷注入効率が悪くなり、他方で、90%より大きい場合であって、各ゲートホール3cの開口面積が大きい場合、電界が平行にかからずに斜めに電子が引き出されて電子が拡散してしまう。また、エミッタの形状の微小な違いを受けやすくなり、エミッタからの電子放出が一定ではなくなってしまう。
【0030】
次いで、図1(g)に示すように、各ゲートホール3cから、フッ酸又はバッファードフッ酸などのエッチャントを導入して、絶縁層をエッチングする。各ゲートホール間相互の間隔は、絶縁層の厚さの2倍以下であるので、各ゲートホール3c下でのサイドエッチングにより、各ゲートホール3c下に形成された開口同士が繋がって、ひとつの絶縁層ホール6が形成されると共に、絶縁層2下に形成されていたカソード電極層1が露出する。
【0031】
その後、露出したカソード電極層1上に、例えば、カーボン系材料からなるエミッタ7を形成するために、ゲートホールを利用して触媒層を5×10−4Pa以下の真空中でのEB蒸着法や、例えば圧力0.67Pa下でのArガス(流量50sccm)雰囲気中でのスパッタ法により成膜する。また、触媒としては、化学気相成長法において通常触媒材料として用いる金属、合金であれば良く、例えば、Fe、Co及びNiから選ばれた少なくとも1種の金属、或いはインバー、インコネル、ハステロ及びハーバー(Co/Cr/Ni/W/Mo/Mn/C/Be/Fからなる合金)などの合金から選ばれた少なくと1種の合金を用いることができる。その後、ゲート電極及び収束電極上のレジスト層及びこのレジスト層上に堆積した触媒層をリフトオフする。そして、熱CVD法により、公知のカーボン系材料成長ガス、例えば一酸化炭素(200sccm)と、水素(200sccm)とからなるガスを大気圧で導入して、成長温度:400〜700℃、成長時間:5〜60分(この成長時間は、成長させるグラファイトナノファイバー等カーボン系エミッタの高さに依存する)の条件で、触媒層上にカーボン系材料を成長させ、エミッタ7とする。
【0032】
また、エミッタ7として公知の方法によりスピントを形成してもよい。この場合、例えば、図1(g)に示したように絶縁層ホールを形成した後に、レジスト層5上に斜め蒸着することにより剥離層を形成し、次いで、通常の異方性蒸着により、剥離層上にエミッタ材料を蒸着しつつ、各ゲートホール3b下に自己整合的にエミッタを形成した後に、剥離層、エミッタ材料及びレジスト層を剥落させてスピントを形成することができる。
【0033】
このようにして、本発明のカソード基板では、図1(h)に示したように、ゲートホール3cが形成されたゲート電極3aと収束電極3bとは同一平面に作製されており、また、各ゲート電極はその周囲4方向を収束電極3bが包囲する配置されているので、電子放出の収束がよい。
【0034】
本実施の形態においては、各ゲート電極の四辺のうちの一辺で他の2つのゲート電極と接するように構成したが、第2の実施の形態として、各ゲート電極が、その対向する2辺の端部で、2つのゲート電極の端部と接することも可能である。この場合、対向する二辺の端部とは、対向する端部でもよく、また、対向しない端部でもよい。このように構成しても、収束電極がゲート電極の周囲4方向全てに配置されるので、電子放出の収束がよい。
【0035】
本実施の形態においては、各ゲート電極がその端部で互いに接しているが、第3の実施の形態として相互に隣り合う各ゲート電極の端部間にラインを設けて接続することも可能である。
【0036】
上記実施の形態においては、各ゲート電極を正方形で作製したが、形状は正方形に限られず、多角形であればよく、例えば、長方形等の他の四角形でもよい。また、略円状でもよい。
【0037】
次いで、これらのカソード基板を用いて表示素子を作製する方法について説明する。
【0038】
公知の方法により、蛍光体層、アノード用電極層及び上部基板からなるアノード基板を作製する。公知の方法としては、例えば、高歪点ガラスからなる上部基板に、スパッタ法によりアノード用電極層としてのITOからなる透明電極層を形成する。そして、この透明電極上に、ブラックマトリクスのパターンをスパッタ法で形成し、スクリーン印刷法等により、CRT用の蛍光体(P22等)や低加速電圧用に開発された蛍光体を塗布して蛍光体層を形成し、アノード基板を作製する。
【0039】
そして、このアノード基板と、前記したカソード基板とを支持体(例えば、高さ500μmのリブ)を介して、蛍光体層がゲート電極及び収束電極に対向するように貼り合わせて表示素子を構成する。
【実施例1】
【0040】
図1に示す本発明の第1の実施の態様にかかるカソード基板を作製した。商品名CP−600V(セントラル硝子株式会社製)からなる基板S上に、300℃の基板加熱を行いながら膜厚200nmのCrからなるカソード電極層1を形成し、リソグラフィ法により、ライン状にパターニングした後に、このカソード電極層1の上に、スパッタ法により膜厚3μmのSiOからなる絶縁層2を形成した。次いで、300℃の基板加熱をしながらスパッタ法により膜厚200nmのCrからなる電極層膜3を形成した。得られた電極層膜3をリソグラフィ法により、所定のパターンでパターニングして、ゲート電極3a及び収束電極3bを同時に作製した。その後、レジスト層を除去した後に、再度レジスト層を塗布し、各ゲートホール3cを直径2μmで作製し、その間隔は、2μmとした。
【0041】
そして、エッチャントとして濃度15%のバッファードフッ酸を使用して、絶縁層2をエッチングし、各ゲートホール下の絶縁層2をそれぞれ4μm分サイドエッチング(オーバーエッチング)して、各ゲートホール3c下で絶縁層をつなげて、1つの絶縁層ホール6を形成した。
【0042】
その後、膜厚5nmのFe合金触媒層(図示せず)をスパッタにより成膜し、レジストパターン及びレジスト上の触媒層をリフトオフした。そして、熱CVD法により、成長温度525℃、圧力760Torr、成長時間20分及びプロセスガス比CO/H=1の条件で触媒層上にグラファイトナノファイバーを成長させてエミッタ7とし、カソード基板を作製した。このカソード基板の上面SEM写真を、図4に示す。図4から、ゲート電極同士がそれぞれ端部で接続し、かつ、各ゲート電極が収束電極により四方を囲まれていることがわかる。なお、この場合、各ゲート電極3aは、80%以上が収束電極により包囲されていた。
【0043】
次いで、得られたカソード基板のゲート電極及び収束電極上に高さ500μmのリブを設けて、カソード基板とアノード基板とを、蛍光体層がゲート電極及び収束電極に対向するようにリブを介して貼り合わせて表示素子とした。この表示素子のゲート電極に60Vを印加し、アノードの蛍光体の発光によりエミッタからの電子放出を確認すると、1画素が0.4mm程度が広がるだけで、優れた電子の収束特性が得られていた。これに対し、従来の3極構造のカソード基板を用いた場合には、1画素が0.7mm程度だった。また、本発明の第2の実施の態様で作製したカソード基板についても表示素子を作製し、エミッタからの電子放出を確認すると、1画素は0.4mmであった。
【0044】
従って、本発明のカソード基板を用いた表示素子は、従来の3極構造のカソード基板の表示素子よりもエミッタからの電子放出を収束させたことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の4極構造型素子用のカソード基板は、電子収束に優れているため、表示素子の特性を大きく向上させることができる。しかも、本発明のカソード基板の作製方法によれば、この4極構造型のカソード基板を簡易に作製することができる。また、このカソード基板を用いた本発明の表示素子は、簡易に作製でき、かつ、表示装置の性能を向上させることが可能である。従って、本発明は、ディスプレイの技術分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)〜(h)は本発明のカソード基板の作製工程を示す模式的断面図である。
【図2】本発明のカソード基板の作製におけるマスクパターンを示す図である。
【図3】図2に示すマスクパターンの拡大図である。
【図4】実施例1で得られたカソード基板の上面SEM写真である。
【符号の説明】
【0047】
1 カソード電極層 2 絶縁層
3 電極層膜 3a ゲート電極
3b 収束電極 3c ゲートホール
4 レジストパターン 4a ゲート電極用レジストパターン
4b 収束電極用レジストパターン 5 レジスト層
6 絶縁層ホール 7 エミッタ
、A、A ゲート電極用パターン部
、B、B 櫛歯状部分
C 背部分
X ゲート電極形成用マスクパターン
Y 収束電極形成用マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたカソード電極と、絶縁層と、エミッタと、2以上のゲートホールが形成されたゲート電極と、該ゲート電極と同一平面に形成された収束電極とを少なくとも備えたカソード基板において、各ゲート電極は、他の2つのゲート電極とそれぞれの端部で接続するように形成され、収束電極は、各ゲート電極の該端部以外の周囲を包囲するように形成されたことを特徴とするカソード基板。
【請求項2】
前記各ゲート電極は、その一辺の両端部で他の2つのゲート電極の端部と接続するように形成されることを特徴とする請求項1記載のカソード基板。
【請求項3】
前記各ゲート電極は、その対向する二辺の端部で他の2つのゲート電極の端部と接続するように形成されることを特徴とする請求項1記載のカソード基板。
【請求項4】
前記各ゲート電極は、その周囲の50%以上を収束電極によって包囲されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカソード基板。
【請求項5】
前記エミッタが、カーボン系材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカソード基板。
【請求項6】
基板上に、カソード電極、絶縁層、電極層膜を順次成膜し、次いで、該電極層膜を微細加工して、各ゲート電極を隣り合う他の2つのゲート電極とそれぞれの端部で接続するように形成するとともに、収束電極を各ゲート電極の該端部以外の周囲を包囲するように形成した後に、ゲート電極層にゲートホールを設けて、このゲートホールからウェットエッチングにより絶縁層をエッチングしてエミッタホールを形成し、その底部にエミッタを設けることを特徴とするカソード基板の作製方法。
【請求項7】
前記エミッタを、カソード電極上に形成した触媒層にカーボン系材料原料ガスを接触させて、触媒層上に形成したカーボン系材料から形成することを特徴とする請求項6に記載のカソード基板の作製方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のカソード基板と、蛍光体層、アノード用電極層及び上部基板を少なくとも含むアノード基板とを有することを特徴とする表示素子。
【請求項9】
請求項6又は7のいずれかに記載のカソード基板の作製方法に従ってカソード基板を作製した後、このカソード基板と、蛍光体層、アノード用電極層及び上部基板を少なくとも含むアノード基板とを、支持体を介してはり合わせて表示素子を作製することを特徴とする表示素子の作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−305493(P2007−305493A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134393(P2006−134393)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】