説明

カメラ

【課題】簡単な構成で、常に適正なOBクランプレベルでクランプ処理を施すことが出来るカメラを提供すること。
【解決手段】撮像素子からの画像信号を出力する際に、互いに異なるクランプレベルを持つ第1出力モードまたは第2出力モードを切替可能とし、第1出力モードから第2出力モードに切り替えられたとき、所定の期間内にクランプレベルが変更される。従って、出力モードが切り替えられても所定期間後には正常なクランプレベルに到達し、画像の品質を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子からの画像信号をクランプするクランプ処理を行うカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラ、特にたとえばデジタルカメラにおいて、撮像素子から出力されるアナログ映像信号はCDS回路による相関2重サンプリング処理を経て、クランプ回路に与えられ、クランプ処理が為される。そしてクランプ処理されたアナログ映像信号は、A/D変換器に出力されデジタル信号に変換され、信号処理回路に入力される。
【0003】
上述したクランプ処理は、アナログ映像信号のオフセット電圧(DC成分)を常に一定レベルに保つために、撮像素子内に形成されるオプティカルブラック部から暗電流を検出し、その信号レベルに基づいてオプティカルブラック部の電位を固定し、基準黒信号レベル(OBクランプレベル)とする(クランプする)処理を行っている。そうすることによって、信号処理回路における信号処理では、OBクランプレベルを基準として3つの色信号であるR、G、B信号を生成し、3つの色信号に対して利得調整などが行われ、Y、U、V信号に変換するなどの信号処理を実行する際に、暗電流に影響されずに処理を実行することができる。
【0004】
このように、撮像素子のアナログ信号出力を、A/D変換器を用いてデジタル信号化し、以降の信号処理を行うビデオカメラ信号に係り、特にA/D変換前のアナログ映像信号のオフセット電圧を一定に保つようにするクランプ回路が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−169188号公報 [H04N 5/335]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術1のクランプ回路においては、充放電を行うコンデンサと、オフセットを決定するバイアス用コンデンサを分離独立させ、ライン毎に時分割した交互動作としたことにより、1ライン期間内でクランプ用コンデンサの充放電による影響を受けない、安定した映像信号を得ることができる。
【0006】
しかしながら、このクランプ回路の構成では、コンデンサを2つ用意するとともに切り替え用のスイッチも複数用意しなければならないため、回路が複雑化し、かつコストも高くなる。
【0007】
また、デジタルカメラでは、静止画像を外部メモリなどに記録するときとスルー画像を所定のフレームレートで表示器に出力させるときとで、例えば(1)撮像素子から出力されるアナログ映像信号の制御、または(2)A/D変換におけるデジタル信号のビット数の制御などが行われている。
【0008】
(1)では、デジタルカメラは静止画像を外部メモリなどに記録するときに、デジタルカメラの撮像素子が備える画素をすべて読み出し(全画素出力モード)、ファインダ等にスルー画像を所定のフレームレートで表示器に出力するときは、撮像素子が備える画素を撮像素子上で混合し、出力している(画素加算出力モード)。
【0009】
全画素出力モードでは、画素が全て読み出されるため、クランプ処理におけるOBクランプレベルは1画素分のレベルである。しかしながら、画素加算出力モードにおいては画素が加算されて読み出されるため、クランプ処理におけるOBクランプレベルは、加算した画素数分加算されたレベルとなる。
【0010】
さて、画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替えられたとき、クランプ処理におけるOBクランプレベルも画素数分加算されたレベルから1画素分のレベルにしなければならない。しかしながら、図15に示す4画素加算出力モードから全画素出力モードへの移行時に、クランプ処理におけるOBクランプレベルを調整する際の時定数の関係から、出力モードを切り替えてから所望のOBクランプレベルに所定の期間内に到達することができず、OBクランプレベルが正常とならない期間が発生し、画像において局所的または全体的にOBクランプレベルが適正とならなくなる。その結果、静止画像の下部に黒沈みなどが発生し、画像の品質が悪くなる。
【0011】
(2)では、デジタルカメラは撮像素子から全画素の読み出しを行い、A/D変換器で静止画像を外部メモリなどに記録するときと、スルー画像を所定のフレームレートで出力するときとで、ダイナミックレンジを変更し異なるビット数でデジタル信号を出力している。
【0012】
静止画像を外部メモリなどに記録する静止画像撮像モードとスルー画像を所定のフレームレートで表示器に出力するスルー画像モードとで、モード切り替えを行った際に、クランプ処理のOBクランプレベルを決定する制御回路において、制御回路の前段のビット数の変化により正常に動作されないフィルタ部から出力されたデジタル信号が入力されるため、図16に示すようにOBクランプレベルが変化し、リセット処理がなされるまで正常とならない期間が発生する。その結果、スルー画像全体に黒沈みなどが発生し、画像の品質が悪くなる。
【0013】
(1)、(2)のように、モードが切り替えられた際のOBクランプレベルの適正化について、従来技術1は何ら開示していない。
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するもので、簡単な構成で、常に適正なOBクランプレベルでクランプ処理を施すことが出来るカメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1のカメラは、光学的黒エリアおよび有効エリアが隣接して形成された複数の画素から画像信号を第1出力モードと第2出力モードを含む複数の出力モードに応じて出力する撮像素子と、第1出力モードにおいて出力される第1画像信号の光学的黒エリアに基づいて第1クランプレベルを検出し、第1クランプレベルを基準黒レベルとして第1画像信号に対してクランプ処理を施す第1クランプ手段と、第2出力モードにおいて出力される第2画像信号の光学的黒エリアに基づいて第2クランプレベルを検出し、第2クランプレベルを基準黒レベルとして第2画像信号に対してクランプ処理を施す第2クランプ手段と、第1出力モードと第2出力モードを切り替えるモード切替手段と、切替手段によって第1出力モードから第2出力モードに切り替えられたとき、基準黒レベルを第1クランプレベルから第2クランプレベルへ変更するレベル変更に要する時間を所定期間内とする制御を実行する制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
これによると、第1出力モードから第2出力モードに切り替えられたとき、所定の期間内に第1クランプレベルから第2クランプレベルに変更されるため、出力モードが切り替えられても、所定期間後には正常なクランプレベルに到達する。したがって、画像の品質を維持することができる。
【0017】
請求項1に従う請求項2のカメラは、制御手段における前記レベル変更では、第1クランプレベルを所定レベルよりも低くするリセット処理を行ってから第2クランプレベルへ変更されることを特徴とする。
【0018】
これによると、出力モードが変更されるときに、第1クランプレベルが所定レベルよりも低くなるため、第2クランプレベルに到達する時間を短縮することができる。
【0019】
請求項1乃至2に従う請求項3のカメラにおいて、第1クランプレベルおよび第2クランプレベルはレジスタ値に基づくレベルであり、クランプ処理はアナログ映像信号にレジスタ値が変換されたアナログ信号を減少させることを特徴とする。
【0020】
これによると、第1クランプレベルおよび第2クランプレベルはレジスタ値で調整され、レジスタ値に基づくアナログ信号でアナログ映像信号を減少させることでクランプ処理が為されるため、簡単な構成でクランプ処理を実行させることが出来る。
【0021】
請求項1乃至2に従う請求項4のカメラにおいて、第1クランプレベルおよび第2クランプレベルはキャパシタの充放電による電荷量に基づくレベルであり、クランプ処理は画像信号にキャパシタが保持する電荷量を減少させることを特徴とする。
【0022】
これによると、第1クランプレベルおよび第2クランプレベルはキャパシタで調整され、キャパシタが保持する電荷量を減少させることでクランプ処理がなされるため、簡単な構成でクランプ処理を実行させることができる。
【0023】
請求項4に従う請求項5のカメラにおいて、第1クランプレベルにおけるリセット処理は、キャパシタの電荷量がしきい値よりも低くなるように放電することを特徴とする。
【0024】
これによると、キャパシタの電荷量がしきい値よりも低くなってから、第2クランプレベルに対応する電荷量に充電されるため、簡単な構成で第2クランプレベルに到達する時間を短縮することができる。
【0025】
請求項1乃至5に従う請求項6のカメラにおいて、所定期間は、撮像素子が画像信号を出力する際の垂直ブランキング期間であることを特徴とする。
【0026】
請求項7のカメラは、光学的黒エリアおよび有効エリアが隣接して形成された複数の画素からアナログ映像信号を出力する撮像素子と、アナログ映像信号に第1A/D変換処理を施し第1ビット数の第1デジタル画像信号を出力する第1A/D変換手段と、アナログ映像信号に第2A/D変換処理を施し第2ビット数の第2デジタル画像信号を出力する第2A/D変換手段と、第1A/D変換処理と第2A/D変換処理を切替える切替手段と、第1デジタル画像信号および第2デジタル画像信号に光学的黒エリア中の特定画素に対応するデジタル黒信号を取得するためのフィルタリング処理を施すデジタルフィルタと、フィルタリング処理が施されたデジタル黒信号に基づくクランプレベルを基準黒レベルとしてアナログ映像信号に対してクランプ処理を施すクランプ手段と、切替手段によって第1A/D変換処理と第2A/D変換処理が切り替えられると、デジタルフィルタに初期化処理を施す初期化手段を備えることを特徴とする。
【0027】
これによると、デジタルフィルタのおけるデジタル黒信号のフィルタリング処理において、入力されるデジタル黒信号のビット数が変更されると、初期化処理が施されるため正常に動作する。したがって適正なクランプレベルを常に保つことができる。
【0028】
請求項7に従属する請求項8のカメラは、クランプ手段において、初期化処理が施されるとクランプレベルをリセットするリセット処理をさらに備えることを特徴とする。
【0029】
請求項8に従属する請求項9のカメラにおいて、クランプ手段はレジスタを含み、リセット処理は該レジスタの値を0とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るカメラによれば、簡単な構成で、常に適正なOBクランプレベルでクランプ処理を施すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明をデジタルカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0032】
第1実施例
図1および図2は第1実施例のデジタルカメラ10のブロック図を示している。デジタルカメラ10は光学レンズ12および絞り14を含む。これらの光学レンズ12および絞り14の移動の調節は、モータ駆動部50によって行われる。ただし、このモータ駆動部50は、光学レンズ12および絞り14を別々に調節する図示しない2つのモータで構成される。
【0033】
被写体の光学像は、光学レンズ12は絞り14を介して、撮像素子であるCCDイメージャ16の受光面上に結像させる。CCDイメージャ16の受光面には図3に示す原色フィルタが装着されており、CCDイメージャ16を構成する1部分であるフォトダイオードには、いずれか1つの原色成分を持つ光が照射される。フォトダイオードでは、光電変換が行われ、光の強さと時間に応じて蓄積された電荷の信号は、タイミングジェネレータ(TG)18によって生成されたCCDイメージャ16の駆動に必要な各種のパルス波形である電荷読み出しパルス、垂直転送パルスおよび水平転送パルスに従ってアナログ撮像信号で出力される。また、タイミングジェネレータ(TG)18は、クランプパルスを生成し、AFE回路20に含まれるクランプ回路30に与える。
【0034】
第1実施例において、CCDイメージャ16からアナログ映像信号を出力させる際のCCDイメージャ16から画素を読み出す2通りのモードが存在するが、後で詳しく説明する。
【0035】
AFE回路20は図2に示すように、CDS回路22、AGC回路24、減算器26、A/D変換器28およびクランプ回路30で構成される。クランプ回路30は、デジタルフィルタ回路30a、制御回路30b、D/A変換器30c、およびスイッチSW1で構成される。CCDイメージャ16から出力されたアナログ撮像信号は、CDS回路22によって相関2重サンプリング処理が施され、AGC回路24によってゲイン調整が施される。そして、クランプ回路30は、TG18から出力されたクランプパルスに応答して、アナログ映像信号にクランプ処理が施される。クランプ処理を終えたアナログ画像信号は、A/D変換器28によってデジタル信号に変換される。デジタル信号は信号処理回路32でさまざまな信号処理が行われ、Y、U、V信号に変換され、SDRAM36に一旦格納される。SDRAM36に格納されたデジタル信号は、CPU34の制御により、画像圧縮・伸張処理部38でJPEG圧縮処理が施され、圧縮画像データに変換される。CPU34の制御により、カード制御部40は外部カードメモリカード42を制御し圧縮画像データを記録する。
【0036】
また、SDRAM36に一旦格納されたデジタル信号は、CPU34の制御により、D/A変換器44によってアナログ映像信号に変換され、ビデオエンコーダ46によってNTSC信号に変換され、スルー画像として表示器48に表示される。
【0037】
操作部52はCPU34に接続され、図示しないシャッタボタンを備えており、シャッタボタンが押下されることによって、静止画像の撮像および動画像の撮像を開始させる撮像操作を行うことができる。また、静止画像または動画像を撮像する際には、デジタルカメラの撮像形態を設定しておく必要があるが、操作部52の図示しない撮像モード設定ボタンを操作することにより撮像形態の切り替えが可能である。また、操作部52は図示しない電源ボタンを備えており、押下されることによってデジタルカメラ10の電源がON、OFFされる。電源ONされると、撮像操作が行われない間、静止画像撮像モードまたは動画像撮像モードのモード状態に関わらず、表示器48にスルー画像が表示される。
【0038】
第1実施例において、CCDイメージャ16からアナログ映像信号を出力させる際に、CCDイメージャ16から画素を読み出す2通りのモードが存在する。1つ目のモードは、静止画像等を取得する場合に、図4(a)に示すようにCCDイメージャ16に形成される画素を全て読み出す、全画素出力モードによって出力させるものである。
【0039】
2つ目のモードは、スルー画像を表示器48に表示させる場合に、図4(b)に示すように、CCDイメージャ16上で垂直方向に2つの同一色フィルタの画素を加算し、さらに水平方向に2つの同一色フィルタ画素を加算して読み出す、4画素加算出力モードによって出力させるものである。この場合、信号レベルは4倍となり、S/Nは1倍になる。この4画素加算出力モードの動作は、例えばソニー株式会社の製品であるソニーCCDエリアイメージセンサICX629AQFの技術資料などに詳細に書かれているため、省略する。
【0040】
さて、CCDイメージャ16の受光面には、図3に示すように有効エリアと光学的黒エリア(OBエリア)が形成される。有効エリアは受光面の中央に形成され、光学的黒エリアは受光面の周辺に形成される。このため、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号は、光学的黒成分も有する。
【0041】
ここで、静止画撮像が行われるときのクランプ処理について図2を用いて詳細に説明する。ユーザによって、操作部52のシャッタボタンが押下されることにより、上述したように光学レンズ12および絞り14の調整が行われ、CCDイメージャ16の受光面上に被写体の光学像が結像されると、フォトダイオードで生成された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)18から出力された電荷読み出しパルスによって垂直転送レジスタに読み出される。読み出された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)18から出力された垂直転送パルスによって垂直方向に転送される。TG18はまた、水平1ライン分の電荷が各垂直転送レジスタから水平転送レジスタに与えられる毎に、水平転送パルスを出力する。水平転送レジスタは、このような水平転送パルスに応答して水平1ライン分の電荷を水平方向に転送する。水平転送された電荷はアナログ映像信号として外部に出力される(全画素出力モード)。そのとき、図3から分かるように、クランプエリアの画素に対応する電荷が先にアナログ映像信号として外部に出力され、次に有効エリアの画素に対応する電荷がアナログ映像信号として外部に出力される。
【0042】
また、タイミングジェネレータ(TG)18により生成されるクランプパルスによって、CCDイメージャ16からアナログ映像信号が出力されるタイミングで、A/D変換器28とデジタルフィルタ回路30aを接続するようにスイッチSW1を切り替える。CDS回路22では、クランプエリアの画素に対応するアナログ黒信号が相関2重サンプリング処理され、AGC回路24にてゲイン調整され、減算器26を経てA/D変換器28に入力される。A/D変換器28によってアナログ黒信号が変換され、デジタルフィルタ回路30aにデジタル黒信号として入力される。デジタルフィルタ回路30aでは、デジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去する。デジタルフィルタ回路30aにてフィルタリングされたデジタル黒信号は、制御回路30bへ入力され、制御回路30b内のレジスタ30dへデジタル的にOBクランプレベルを蓄積し1画素分に平均化して、D/A変換器30cへ出力する。D/A変換器30cでは、制御回路30bから出力されたOBクランプレベルをアナログ信号に変換する。AGC回路24から出力される有効エリアのアナログ映像信号に上述したアナログ信号を減算することにより、クランプ処理が施されてから、A/D変換器28を経て、信号処理部32へ入力されさまざまな信号処理が行われる。
【0043】
この制御回路30bで為されるOBクランプレベルの蓄積および平均化は、制御回路30bに基づく時定数に従って、図3に示す光学的黒エリアAに対応するアナログ映像信号をCCDイメージャ16から出力されている間、つまり垂直ブランキング期間に為される。
【0044】
次に、スルー画像が表示器48に出力されるときのクランプ処理について図2を用いて詳細に説明する。
【0045】
ユーザによって、操作部52の電源ボタンが押下されると、CPU34は押下されたことを検出し、CPU34の制御によって、クランプ回路30の制御回路30b内のレジスタ30dがリセットされる。
【0046】
CCDイメージャ16の受光面上に被写体の光学像が結像されると、フォトダイオードで生成された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)18から出力された電荷読み出しパルスによって、図4(b)に示す如く、例えば、色フィルタRが付された1行目と3行目の2つのフォトダイオードの電荷が垂直転送レジスタに読み出される。読み出された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)18から出力された垂直転送パルスによって垂直方向に転送され、水平転送レジスタで垂直方向1行目の2つの電荷が加算され、垂直方向3行目の2つの電荷が加算される。そして、TG18からの水平転送パルスに応答して、水平1ライン分の電荷を水平方向に転送する際に、加算された1行目と3行目の電荷が加算される。つまり、4画素の電荷を加算し1画素を生成している。したがって信号レベルは4倍、S/Nは1倍になる。このような画素加算処理が、色フィルタGおよびBが付されたフォトダイオードの電荷について同様に行われ、これらの電荷は水平方向に転送される。水平転送された電荷は、アナログ映像信号として外部に出力される(4画素加算出力モード)。
【0047】
全画素出力モードの説明と同様、アナログ黒信号が生成され、それに基づくOBクランプレベルは、図5に示すように4画素加算出力モードと全画素出力モードによって異なる。4画素加算出力モードでは、信号レベルが全画素出力モードの4倍であるため、OBクランプレベルも4倍となる。
【0048】
したがって、制御回路30b内のレジスタ30dへデジタル的に、全画素出力モードと比較して信号レベルが4倍であるOBクランプレベルを蓄積し4画素分に平均化して、D/A変換器30cへ出力する。D/A変換器30cでは、制御回路30bから出力されたOBクランプレベルをアナログ信号に変換する。AGC回路24から出力される有効エリアのアナログ映像信号に、上述したアナログ信号を減算することにより、クランプ処理が施されてからA/D変換器28を経て、信号処理部32へ入力されさまざまな信号処理が行われる。
【0049】
この制御回路30bで為されるOBクランプレベルの蓄積および平均化は、制御回路30bに基づく時定数に従って、図3に示す光学的黒エリアAに対応するアナログ映像信号をCCDイメージャ16から出力されている間、つまり垂直ブランキング期間に為される。
【0050】
さて、ここで、図6を参照して、スルー画像を表示器48に出力しているとき、つまりCCDイメージャ16が4画素加算処理を行い出力している状態のとき(4画素加算出力モード)、操作部52のシャッタボタンが押下され、全画素を出力する処理(全画素加算出力モード)に切り替わった場合について説明する。
【0051】
操作部52のシャッタボタンが押下されると、CPU34は操作部52のシャッタボタンが押下されたことを検出し、CPU34の制御によって、クランプ回路30の制御回路30b内のレジスタ30dがリセットされる。そして、上述したような全画素出力モードにおけるクランプ処理が行われる。
【0052】
図6に示すように4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったときのOBクランプレベルは0となる。そして、制御回路30bに基づく時定数に従って、全画素出力モードにおけるOBクランプレベルに達している。全画素出力モードにおけるOBクランプレベルは、4画素加算出力モードにおけるOBクランプレベルよりも低いため、OBクランプレベルを一旦0にしてから制御回路30bにてOBクランプレベルを蓄積した方が、所望のOBクランプレベルに到達する時間が短くなる。
【0053】
すると、図15に示すように、4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったとき、制御回路30bに基づく時定数に従ってOBクランプレベルを下げていった場合の垂直ブランキング期間内に適正なOBクランプレベルに到達することができないという問題がなくなる。したがって、下部が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録することができる。
【0054】
また、静止画撮像処理が行われた後、再びスルー画像を表示器48に出力する。したがって、CCDイメージャ16は全画素出力モードから4画素加算出力モードに切り替えられる。しかしながら、クランプ回路30において、CPU34はレジスタ30dをリセットする制御を行うことなく、4画素加算出力モードにおけるOBクランプレベルに到達するようにレジスタ30dにOBクランプレベルを蓄積している。
【0055】
次に、上述した4画素加算出力モードと全画素加算出力モードが切り替えられる際のクランプ回路30におけるCPU34が実行する処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
操作部52の電源ボタンが押下されるとデジタルカメラ10に電源が投入される。するとCPU34は、ステップS1にてスルー画像を表示器48に表示させるべく、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号をスルー画像モード、つまり4画素加算して出力させるように設定する。つまり、タイミングジェネレータ(TG)の電荷読み出しパルス、垂直転送パルスおよび水平転送パルスを4画素加算して出力させるように制御する。
【0057】
次にステップS3に進み、OBクランプレベルのリセット処理、つまりレジスタ30dを0にリセットする。
【0058】
そしてステップS5に進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別する。ここで、YESと判別するとステップS7に進み、静止画像モード、つまり全画素出力モードに切り替え操作が有ったか否かを判別する。この切り替え操作の例として、操作部52のシャッタボタンの押下があったか否かが挙げられる。
【0059】
ステップS7でNOと判別した場合は、ステップS5に進み、再び1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合はステップS9へ進む。
【0060】
ステップS9では、静止画像を出力させるべく、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号を全画素で出力させるように設定する。つまり、タイミングジェネレータ(TG)の電荷読み出しパルス、垂直転送パルスおよび水平転送パルスを全画素で出力させるように制御する。
【0061】
次にステップS11へ進み、OBクランプレベルのリセット処理つまりレジスタ30dを0にリセットする。
【0062】
そしてステップS13へ進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合、ステップS15へ進み、ふたたび、スルー画像モード(4画素加算出力モード)に設定する。そして、ステップS5にもどる。
【0063】
上述したように、本実施例では、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号が、4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったときに、制御回路30d内のレジスタ30dをリセットするため、垂直ブランキング期間内にOBクランプレベルに到達することができる。したがって、下部が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録することができる。
【0064】
なお、本実施例では、CCDイメージャ16の出力において、4画素加算出力モードを、スルー画像を表示器34に表示させるときのモードとして、全画素出力モードを、静止画像を取り込むときのモードとして説明したが、4画素加算出力モードを動画像を記録するときのモードとしてもよく、これに限らないことは言うまでもない。
【0065】
また、第1実施例では、撮像素子としてCCDイメージャ16を採用し本件発明を説明したが、CMOSイメージャを採用しても良い。
【0066】
第2実施例
図8および図9は、第2実施例のデジタルカメラ60のブロック図を示している。図8および図9において、第1実施例のデジタルカメラ10のブロック図である図1と同じ符号が付されているブロックについては、第1実施例と同様の機能を持ち、同様の動作が為される。したがって、第1実施例のデジタルカメラ10と同様の動作は省略し、第1実施例のデジタルカメラ10と第2実施例のデジタルカメラ60の相違点を中心に説明する。
【0067】
デジタルカメラ60は、CMOSイメージャユニット62を備え、CMOSイメージャユニット62は、撮像素子として原色フィルタが装着されたCMOSイメージャ64を備えている。そして、第1実施例と同様、CMOSイメージャ64の受光面には、図3に示すように有効エリアと光学的黒エリア(OBエリア)が形成され、有効エリアは受光面の中央に形成され、光学的黒エリアは受光面の周辺に形成される。
【0068】
CMOSイメージャ64は、画素単位で増幅器を持ち画素単位でアナログ映像信号を読み出す。したがって、被写体の光学像はCMOSイメージャ64の受光面上に結像され、タイミングジェネレータ(TG)68によって生成されたCMOSイメージャ64の駆動に必要な転送信号に従って、アナログ撮像信号で出力される。また、タイミングジェネレータ(TG)68は、クランプパルスを生成し、クランプ回路74に与える。
【0069】
CMOSイメージャユニット64は図9に示すように、CDS回路82、AGC回路84、減算器70、A/D変換器72およびクランプ回路74で構成される。また、クランプ回路74は、デジタルフィルタ回路74a、制御回路74b、D/A変換器74c、レジスタ74dおよびスイッチSW1で構成される。CMOSイメージャ64から出力されたアナログ映像信号は、CDS回路82によって相関2重サンプリング処理が施され、AGC回路84によってゲイン調整が施される。そしてクランプ回路74は、タイミングジェネレータ(TG)68から出力されたクランプパルスに応答して、アナログ映像信号にクランプをかける。クランプ処理を終えたアナログ画像信号は、A/D変換器72によってデジタル信号に変換される。A/D変換器72では、12ビットまたは10ビットのダイナミックレンジでアナログ映像信号を変換し、デジタル信号を出力する。出力されたデジタル信号は信号処理回路32でさまざまな信号処理が行われY、U、V信号に変換されSDRAM36に格納される。SDRAM36に格納されたデータに対し、外部メモリカードに記録する処理および表示器48にスルー画像を表示する処理については第1実施例と同様であるため、省略する。
【0070】
ここで、静止画撮像が行われるときのクランプ処理について図9を用いて詳細に説明する。静止画像モードでは、ユーザによって、操作部52のシャッタボタンが押下されることにより、上述したように光学レンズ12および絞り14の調整が行われる。また、CPU66はタイミングジェネレータ(TG)68に対し、静止画像モードにおける各タイミング信号を出力するように制御する。したがって、タイミングジェネレータ(TG)68は、A/D変換器72に対しダイナミックレンジが12ビットに切替える切替信号を生成し、デジタルフィルタ回路74aに対し12ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定する設定信号を生成する。A/D変換器72およびデジタルフィルタ回路74aは、切替信号および設定信号に従って、切替および設定処理を行う。
【0071】
CMOSイメージャ64の受光面上に被写体の光学像が結像されると、フォトダイオードで生成された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)68によって読み出され、アナログ映像信号として、全画素に対応するアナログ映像信号が順次出力される。
そのとき、第1実施例と同様、図3から分かるように、クランプエリアの画素に対応する電荷が先にアナログ映像信号として外部に出力され、次に有効エリアの画素に対応する電荷がアナログ映像信号として外部に出力される。
【0072】
また、タイミングジェネレータ(TG)68により生成されるクランプ信号によって、CMOSイメージャ64からアナログ映像信号が出力されるタイミングで、A/D変換器72とデジタルフィルタ回路74aを接続するようにスイッチSW1を切り替える。CDS回路82では、クランプエリアの画素に対応するアナログ黒信号が相関2重サンプリング処理され、AGC回路84にてゲイン調整され、減算器70を経てA/D変換器72に入力される。静止画撮像を行う場合、A/D変換器72のダイナミックレンジは12ビットである。したがって、アナログ黒信号は、12ビットのデジタル黒信号に変換され、デジタルフィルタ回路74aに入力される。デジタルフィルタ回路74aは、12ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定されており、フィルタリングを実行する。デジタルフィルタ回路74aにてフィルタリングされたデジタル黒信号は、制御回路74bへ入力され、デジタル黒信号に基づき制御回路74b内のレジスタ74dへ、デジタル的にOBクランプレベルを値として蓄積し1画素分に平均化して、D/A変換器74cへ出力する。D/A変換器74cでは、制御回路74bから出力されたOBクランプレベルの値をアナログ信号に変換する。AGC回路84から出力される有効エリアのアナログ映像信号から上述したアナログ信号を減算することにより、クランプ処理が施されてから、A/D変換器72を経て、12ビットのデジタル信号として、信号処理部32へ入力され、さまざまな信号処理が行われる。
【0073】
この制御回路74bで為されるOBクランプレベルの蓄積および平均化は、制御回路74bに基づく時定数に従って、図3に示す光学的黒エリアAに対応するアナログ映像信号をCMOSイメージャ64から出力されている間、つまり垂直ブランキング期間に為される。
【0074】
次に、スルー画像が表示器48に出力されるときのクランプ処理について図9を用いて詳細に説明する。
【0075】
ユーザによって、操作部52の電源ボタンが押下されると、CPU66は押下されたことを検出し、タイミングジェネレータ(TG)68に対し、スルー画像モードにおける各タイミング信号を出力するように制御する。したがって、タイミングジェネレータ(TG)68は、A/D変換器72に対しダイナミックレンジが10ビットに切替える切替信号を生成し、デジタルフィルタ回路74aに対し初期化処理の初期化信号および10ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定する設定信号を生成する。A/D変換器72およびデジタルフィルタ回路74aは、切替信号、初期化信号および設定信号に従って、切替処理、初期化処理および設定処理を行う。また、CPU66の制御によって、クランプ回路74の制御回路74b内のレジスタ74dがリセットされる。
【0076】
上述したように光学レンズ12および絞り14の調整が行われ、CMOSイメージャ64の受光面上に被写体の光学像が結像されると、フォトダイオードで生成された電荷は、タイミングジェネレータ(TG)68によって読み出され、アナログ映像信号として全画素に対応するアナログ映像信号が順次出力される。そしてA/D変換器72にアナログ映像信号が入力されるまでの処理は静止画像撮像時と同様である。
【0077】
スルー画像を表示器48に表示させる場合、A/D変換器72のダイナミックレンジは10ビットである。従って、アナログ映像信号がA/D変換器72へ入力されると、10ビットのデジタル信号として出力される。クランプエリアの画素に対応する電荷が先にアナログ映像信号として外部に出力され、次に有効エリアの画素に対応する電荷がアナログ映像信号として外部に出力されるため、まず、クランプエリアの画素に対応するアナログ黒信号が、10ビットのデジタル黒信号に変換される。そして、10ビットのデジタル黒信号がデジタルフィルタ回路74aへ入力される。デジタルフィルタ回路74aは、10ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定されており、フィルタリングを実行する。
【0078】
このデジタルフィルタ回路74aは、12ビットまたは10ビットデジタル黒信号における無効画素のレベル値の消去処理に対応している。従って、A/D変換器72のダイナミックレンジが12ビットの場合と10ビットの場合とで、無効画素のレベル値を消去して有効画素のレベル値を取得するフィルタリングのしきい値の切り替える設定を行っている。
【0079】
そして、フィルタリングされたデジタル黒信号は、制御回路74bへ入力される。制御回路74b内のレジスタ74dへデジタル的にOBクランプレベルを値として蓄積し、1画素分に平均化する。
【0080】
そして、D/A変換器74cへ出力され、制御回路74bから出力されたOBクランプレベルの値をアナログ信号に変換する。AGC回路84から出力される有効エリアのアナログ映像信号に上述したアナログ信号を減算することにより、クランプ処理が施されてから、A/D変換器72を経て、10ビットのデジタル信号として、信号処理部32へ入力され、さまざまな信号処理が行われる。
【0081】
この制御回路74bで為されるOBクランプレベルの蓄積および平均化は、制御回路74bに基づく時定数に従って、図3に示す光学的黒エリアAに対応するアナログ映像信号をCMOSイメージャ64から出力されている間、つまり垂直ブランキング期間に為される。
【0082】
さて、図10を参照して、操作部52のシャッタボタンが押下され、静止画像を外部メモリカード42に記録するとき、つまりA/D変換器72のダイナミックレンジが12ビットに設定され、12ビットのデジタル信号を出力している状態から、スルー画像を表示器48に出力しているとき、つまりA/D変換器72のダイナミックレンジが10ビットに設定され、10ビットのデジタル信号を出力している状態に切り替わった場合について説明する。
【0083】
図10に示すように静止画像モードからスルー画像モードに切り替わったときのOBクランプレベルはリセットされるため0となる。そしてOBクランプレベルは、制御回路74bに基づく時定数に従って、垂直ブランキング期間にスルー画像モードにおけるOBクランプレベルに達している。CMOSイメージャ64から全画素出力されているため、静止画像モードにおけるOBクランプレベルとスルー画像モードにおけるOBクランプレベルは同じとなり、適切なクランプ処理が行われる。
【0084】
すると、図16に示すように、静止画像モードからスルー画像モードに切り替わったとき、OBクランプレベルが変化し、リセット処理がなされるまで正常とならない期間が発生し、垂直ブランキング期間内に適正なOBクランプレベルに到達することができないという問題がなくなる。
【0085】
従って、画面全体が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録することができる。
【0086】
このように、OBクランプレベルが変化してしまう理由としては、静止画像モードからスルー画像モードに切り替わった際、つまりダイナミックレンジにおけるビット数の変更があった際に、デジタルフィルタ回路74aが正常に動作しない場合、つまり有効画素のレベル値を取得するためのフィルタリングのしきい値が切替えられない場合などがある。
【0087】
また、上述した静止画像モードとスルー画像モードが切り替えられる際のクランプ回路74に対するCPU66が実行する処理を、図11のフローチャートを参照にして説明する。図11のフローチャートにおいて図8と同じ符号が付されているステップに関しては、第1実施例で説明した図8のフローチャートに基づく処理と同様である。
【0088】
操作部52の電源ボタンが押下されるとデジタルカメラ60に電源が投入され、CPU66は、ステップS16にてスルー画像を表示器48に表示させるべく、タイミングジェネレータ(TG)68に対し、スルー画像モードにおける各タイミング信号を出力するように制御する。タイミングジェネレータ(TG)68は、A/D変換器72に対しダイナミックレンジが10ビットに切替える切替信号を生成し、デジタルフィルタ回路74aに対し初期化処理の初期化信号および10ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定する設定信号を生成する。A/D変換器72およびデジタルフィルタ回路74aは、切替信号、初期化信号および設定信号に従って、切替および設定処理を行う。
【0089】
次にステップS17に進み、OBクランプレベルのリセット処理、つまりレジスタ74dを0にリセットする。
【0090】
そしてステップS5に進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別する。ここで、YESと判別するとステップS7に進み、静止画像モードに切り替え操作が有ったか否かを判別する。この切り替え操作の例として、操作部52のシャッタボタンの押下があったか否かが挙げられる。
【0091】
ステップS7でNOと判別した場合は、ステップS5に進み、再び1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合はステップS9へ進む。
【0092】
ステップS19では、静止画像を出力させるべく、CPU66はタイミングジェネレータ(TG)68に対し、静止画像モードにおける各タイミング信号を出力するように制御する。したがって、タイミングジェネレータ(TG)68は、A/D変換器72に対しダイナミックレンジが12ビットに切替える切替信号を生成し、デジタルフィルタ回路74aに対し12ビットのデジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去するように設定する設定信号を生成する。A/D変換器72およびデジタルフィルタ回路74aは、切替信号および設定信号に従って、切替および設定処理を行う。
【0093】
そしてステップS13へ進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合、ステップ16へ戻り、スルー画像を表示器48に表示させるべく、タイミングジェネレータ(TG)68に対し、スルー画像モードにおける各タイミング信号を出力するように制御する。
【0094】
上述したように、本実施例では、静止画像モードからスルー画像モードに切り替わったとき、つまりA/D変換器72のダイナミックレンジが12ビットから10ビットに設定変更されたとき、デジタルフィルタ回路74aを初期化し、制御回路74b内のレジスタ74dをリセットするため、垂直ブランキング期間内にOBクランプレベルに到達することができる。したがって、画面全体が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録することができる。
【0095】
なお、第2実施例では、スルー画像モードにおいてA/D変換器72のダイナミックレンジを10ビットに、静止画像モードにおいてA/D変換器72のダイナミックレンジを12ビットに設定することとして説明したが、スルー画像モードを動画像を記録する動画像記録モードとしてもよく、これに限らないことは言うまでもない。
【0096】
また、第2実施例では、撮像素子としてCMOSイメージャ64を採用し、本件発明を説明したが、CCDイメージャを採用しても良い。
【0097】
第3実施例
図12は、第1実施例および第2実施例に適用されるAFE回路100のクランプ回路106を示している。第1実施例および第2実施例では、クランプ処理における、OBクランプレベルの調整をデジタル的に実行していたが、クランプ回路106はアナログ的にOBクランプレベルの調整を行う。第3実施例では、このクランプ回路106を用いて第1実施例に基づいたクランプ処理を説明する。ここで、クランプ処理の制御を行うCPU108は第1実施例と異なる制御を行う。
【0098】
クランプ回路106は、デジタルフィルタ106a、D/A変換器106b、スイッチSW1〜3、第1放電抵抗R1、第2放電抵抗R2、コンデンサCで構成される。CCDイメージャ16から出力されたアナログ撮像信号は、CDS回路22によって相関2重サンプリング処理が施され、AGC回路24によってゲイン調整が施される。デジタルフィルタ回路106aでは、デジタル黒信号における欠陥画素等の無効画素のレベル値を除去し、D/A変換器106bへ出力し、D/A変換器106bでは、デジタル黒信号をアナログ黒信号に変換する。
【0099】
また、ユーザによって、操作部52のシャッタボタンが押下されたタイミングで、CPU34の制御によってコンデンサCと第1放電抵抗R1が接続されるように、スイッチSW2が切り替えられる。コンデンサCに蓄積されていた電荷は、第1放電抵抗R1と接続されることによって、コンデンサCに蓄積される電荷は減少する。CPU34は、スイッチSW2が切り替えられてすぐにコンデンサCがD/A変換器106bと接続されるように、スイッチSW2を切り替える。したがって、D/A変換器106bからのアナログ黒信号に基づくOBクランプレベルになるよう、スイッチSW3をコンデンサ充電電源Vに接続し、コンデンサCに電荷が蓄積される。コンデンサCと減算器26は直列接続されており、AGC回路24から出力される有効エリアのアナログ映像信号からコンデンサCの電圧が減算される。このようなクランプ処理が施されてから、信号処理部32によりさまざまな信号処理が行われる。
【0100】
ユーザによって、操作部52の電源ボタンが押下されることにより、本体に電源が入ると、CPU34は、コンデンサCを第1放電抵抗R1に接続するようスイッチSW2を切り替える。すると、コンデンサCに蓄積されていた電荷が放電され、減少する。また、CPU34は、スイッチSW2を切り替えてからすぐにコンデンサCをD/A変換器106bに接続するよう、スイッチSW2を切り替える。
【0101】
したがって、スイッチSW3をコンデンサ充電電源Vに接続するように切り替え、OBクランプレベルになるように、コンデンサCに電荷を蓄積する。この電荷の蓄積は、図3に示す光学的黒エリアAに対応するアナログ映像信号をCCDイメージャ16から出力されている間、つまり垂直ブランキング期間に為される。
【0102】
したがって、AGC回路24から出力される有効エリアのアナログ映像信号からコンデンサCの電圧が減算される。このようなクランプ処理が施されてから、信号処理部32によりさまざまな信号処理が行われる。
【0103】
すると、図13に示すように4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったときのOBクランプレベルは、切り替わったときに十分低くなってからコンデンサCと第2放電抵抗R2の時定数に従って全画素出力モードにおけるOBクランプレベルに達している。全画素出力モードにおけるOBクランプレベルは、4画素加算出力モードにおけるOBクランプレベルよりも低いため、コンデンサCを一旦放電してから充電した方が、所望のOBクランプレベルに到達する時間が短くなる。従って、図15に示すように、4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったとき、コンデンサCと第2放電抵抗R2の時定数に従ってOBクランプレベルを下げていくと、垂直ブランキング期間内に適正なOBクランプレベルに到達することができないという問題がなくなる。したがって、下部が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録する8ことができる。
【0104】
また、静止画撮像処理が行われた後、再びスルー画像を表示器48に出力する。したがって、CCDイメージャ16は全画素出力モードから4画素加算出力モードに切り替えられる。しかしながら、クランプ回路30において、CPU34はスイッチSW2の切り替え制御をすることなく、4画素加算出力モードにおけるOBクランプレベルに到達するようにコンデンサCに電荷を蓄積させる。
【0105】
また、上述した4画素加算出力モードと全画素加算出力モードが切り替えられる際のクランプ回路106に対するCPU108が実行する処理を、図14のフローチャートを参照して説明する。図14のフローチャートにおいて図8と同じ符号が付されているステップに関しては、第1実施例で説明した図8のフローチャートに基づく処理と同様である。
【0106】
操作部52の電源ボタンが押下されると本体に電源が投入される。するとCPU108は、ステップS1にてスルー画像を表示器48に表示させるべく、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号をスルー画像モード、つまり4画素加算して出力させるように設定する。つまり、タイミングジェネレータ(TG)の電荷読み出しパルス、垂直転送パルスおよび水平転送パルスを4画素加算して出力させるように制御する。
【0107】
次にステップS23に進み、クランプ回路106内のスイッチSW2を、コンデンサCと第1放電抵抗R1が接続されるように切り替える。
【0108】
そしてステップS5に進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別する。ここで、YESと判別するとステップS7に進み、静止画像モード、つまり全画素出力モードに切り替え操作が有ったか否かを判別する。この切り替え操作の例として、操作部52のシャッタボタンの押下があったか否かが挙げられる。
【0109】
ステップS7でNOと判別した場合は、ステップS5に進み、再び1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合はステップS9へ進む。
【0110】
ステップS9では、静止画像を出力させるべく、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号を全画素で出力させるように設定する。つまり、タイミングジェネレータ(TG)の電荷読み出しパルス、垂直転送パルスおよび水平転送パルスを全画素で出力させるように制御する。
【0111】
次にステップS25へ進み、クランプ回路106内のスイッチSW2をコンデンサCと第1放電抵抗R1が接続されるように切り替える。
【0112】
そしてステップS13へ進み、1画面分の取り込みが終了したか否かを判別し、YESと判別した場合、ステップS15へ進み、ふたたび、スルー画像モード(4画素加算出力モード)に設定する。そして、ステップS5にもどる。
【0113】
上述したように、本実施例では、CCDイメージャ16から出力されるアナログ映像信号が、4画素加算出力モードから全画素出力モードに切り替わったときに、コンデンサCを一旦放電させるため、垂直ブランキング期間内にOBクランプレベルに到達するようにコンデンサCを充電することができる。したがって、クランプ処理において常に適正なOBクランプレベルを維持することができ、下部が黒沈みするような画像は生成されず、常に安定した画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る第1実施例のカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1実施例のカメラの構成の1部を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る第1実施例〜第3実施例カメラの撮像素子の構成を示す図解図である。
【図4】本発明に係る第1実施例〜第3実施例カメラの撮像素子に備えられた色フィルタを示す図解図である。
【図5】本発明に係る第1実施例のカメラのOBクランプレベルを示す図解図である。
【図6】本発明に係る第1実施例のカメラの撮像素子の出力モードとOBクランプレベルの関係を示す図解図である。
【図7】本発明に係る第1実施例のカメラのCPUが実行する制御手続きの1部におけるフローチャートである。
【図8】本発明に係る第2実施例のカメラの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る第2実施例のカメラの構成の1部を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る第2実施例のカメラの撮像モードとOBクランプレベルの関係を示す図解図である。
【図11】本発明に係る第2実施例のカメラのCPUが実行する制御手続きの1部におけるフローチャートである。
【図12】本発明に係る第3実施例のカメラの構成の1部を示すブロック図である。
【図13】本発明に係る第3実施例のカメラの撮像素子の出力モードとOBクランプレベルの関係を示す図解図である。
【図14】本発明に係る第3実施例のカメラのCPUが実行する制御手続きの1部におけるフローチャートである。
【図15】従来のカメラの撮像素子の出力モードとOBクランプレベルの関係を示す図解図である。
【図16】従来のカメラの撮像モードとOBクランプレベルの関係を示す図解図である。
【符号の説明】
【0115】
10… カメラ本体
16… CCDイメージャ
18… タイミングジェネレータ(TG)
20… AFE回路
22… CDS回路
24… AGC回路
26… 減算器
28… A/D変換器
30… クランプ回路
30a…デジタルフィルタ
30b…制御回路
30c…D/A変換器
30d…レジスタ
34… CPU
60… カメラ本体
62… CMOSイメージャユニット
64… CMOSイメージャ
66… CPU
68… タイミングジェネレータ(TG)
70… 減算器
72… A/D変換器
74… クランプ回路
74a…デジタルフィルタ
74b…制御回路
74c…D/A変換器
74d…レジスタ
100…AFE回路
106…クランプ回路
106a…デジタルフィルタ
106b…D/A変換器
SW1…スイッチ
SW2…スイッチ
SW3…スイッチ
C… コンデンサ
R1… 第1放電抵抗
R2… 第2放電抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的黒エリアおよび有効エリアが隣接して形成された複数の画素から画像信号を第1出力モードと第2出力モードを含む複数の出力モードに応じて出力する撮像素子と、
前記第1出力モードにおいて出力される第1画像信号の前記光学的黒エリアに基づいて第1クランプレベルを検出し、該第1クランプレベルを基準黒レベルとして前記第1画像信号に対してクランプ処理を施す第1クランプ手段と、
前記第2出力モードにおいて出力される第2画像信号の前記光学的黒エリアに基づいて第2クランプレベルを検出し、該第2クランプレベルを基準黒レベルとして前記第2画像信号に対してクランプ処理を施す第2クランプ手段と、
前記第1出力モードと前記第2出力モードを切り替えるモード切替手段と、
前記切替手段によって前記第1出力モードから第2出力モードに切り替えられる場合、前記基準黒レベルを前記第1クランプレベルから前記第2クランプレベルへ変更するレベル変更に要する時間を所定期間内とする制御を実行する制御手段を備える、カメラ。
【請求項2】
前記制御手段における前記レベル変更では、前記第1クランプレベルを所定レベルよりも低くするリセット処理を行ってから前記第2クランプレベルへ変更されることを特徴とする、請求項1記載のカメラ。
【請求項3】
前記第1クランプレベルおよび前記第2クランプレベルはレジスタ値に基づくレベルであり、前記クランプ処理は前記アナログ映像信号に該レジスタ値が変換されたアナログ信号を減少させることを特徴とする、請求項1乃至2記載のカメラ。
【請求項4】
前記第1クランプレベルおよび前記第2クランプレベルはキャパシタの充放電による電荷量に基づくレベルであり、前記クランプ処理は前記画像信号に該キャパシタが保持する該電荷量を減少させることを特徴とする、請求項1乃至2記載のカメラ。
【請求項5】
前記第1クランプレベルにおける前記リセット処理は、前記キャパシタの電荷量がしきい値よりも低くなるように放電することを特徴とする請求項4記載のカメラ。
【請求項6】
前記所定期間は、前記撮像素子が画像信号を出力する際の垂直ブランキング期間であることを特徴とする請求項1乃至5記載のカメラ。
【請求項7】
光学的黒エリアおよび有効エリアが隣接して形成された複数の画素からアナログ映像信号を出力する撮像素子と、
前記アナログ映像信号に第1A/D変換処理を施し第1ビット数の第1デジタル画像信号を出力する第1A/D変換手段と、
前記アナログ映像信号に第2A/D変換処理を施し第2ビット数の第2デジタル画像信号を出力する第2A/D変換手段と、
前記第1A/D変換処理と第2A/D変換処理を切替える切替手段と、
前記第1デジタル画像信号および前記第2デジタル画像信号に光学的黒エリア中の特定画素に対応するデジタル黒信号を取得するためのフィルタリング処理を施すデジタルフィルタと、
前記フィルタリング処理が施されたデジタル黒信号に基づくクランプレベルを基準黒レベルとして前記アナログ映像信号に対してクランプ処理を施すクランプ手段と、
前記切替手段によって前記第1A/D変換処理と前記第2A/D変換処理が切り替えられると、前記デジタルフィルタに初期化処理を施す初期化手段を備える、カメラ。
【請求項8】
前記クランプ手段において、前記初期化処理が施されると前記クランプレベルをリセットするリセット処理をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のカメラ。
【請求項9】
前記クランプ手段はレジスタを含み、前記リセット処理は該レジスタの値を0とすることを特徴とする、請求項8記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−77184(P2009−77184A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244540(P2007−244540)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】