説明

カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物及びこれを用いて形成した遮光性カラーフィルター隔壁並びにカラーフィルター

【課題】撥インキ剤の相溶性に優れ、製膜後の表面外観ならびにパターン形状が良好であり、表面撥インキ性に優れる一方で、通常の洗浄や時間が経過しても表面撥インキ性を維持することができるカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される単量体から形成される単量体単位を有する含フッ素樹脂(A)と、紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分とを含むカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、組成物の全固形分100重量部に対する含フッ素樹脂(A)の割合が0.05〜10重量部であるカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物である。
CH2=C(Rn)−COO−Y−Rf (1)
(式中、Rnは炭素数2以上の有機基又は塩素を示し、Yは炭素数1〜6の2価のフッ素原子を含まない2価の有機基を示し、Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物及びこれを用いて形成した遮光性カラーフィルター隔壁並びにカラーフィルターに関し、特にインクジェット印刷法でのカラーフィルターの製造に好適なカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物及びこれを用いて形成した遮光性カラーフィルター隔壁並びにカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に黒色のマトリックスを形成し、続いて、赤、緑、青等の3種以上の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成される。パターンサイズはカラーフィルターの用途並びにそれぞれの色により異なるが5〜700μm程度である。また、重ね合わせの位置精度は数μm〜数十μmであり、寸法精度の高い微細加工技術により製造されている。
【0003】
カラーフィルターの代表的な製造方法としては、染色法、印刷法、顔料分散法、電着法等がある。これらのうち、特に、色材料を含有する光重合性組成物を、透明基板上に塗布し、画像露光、現像、必要により硬化を繰り返すことでカラーフィルター画像を形成する顔料分散法は、カラーフィルター画素の位置、膜厚等の精度が高く、耐光性・耐熱性等の耐久性に優れ、ピンホール等の欠陥が少ないため、広く採用されている。
【0004】
一方、ブラックマトリックスは赤、緑、青の色パターンの間に格子状、ストライプ状又はモザイク状に配置するのが一般的であり、各色間の混色抑制によるコントラスト向上あるいは光漏れによるTFTの誤動作を防ぐ役割を果たしている。このため、ブラックマトリックスには高い遮光性が要求される。従来、ブラックマトリクスはクロム等の金属膜で形成するか、遮光材を含有した感光性樹脂をもちいてフォトリソ法で形成するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、顔料分散法を用いて色パターンを形成すると、各色ごとに露光と現像の工程を行わなければならないため、少なくとも3回のフォト工程を必要として、コストがかかる。ゆえに、低コストでカラーフィルターを提供できるインクジェット法が提案されている。これは、画素が構成される領域に、赤、青、緑のインキをそれぞれ必要な画素のみに同時に噴射塗布し硬化させて画素形成する方法であり、あらかじめフォト工程で隔壁を形成し、その画素部にインキを吐出する方法が提案されている。ところが、この方法では、各色領域の滲みや隣り合う領域間の混色が起こりうる。したがって、この隔壁を構成する材料には、着色剤の着色目的領域外への拡がりが抑制される特性が求められている。例えば、特許文献2にはインキと隔壁表面との静的接触角が40〜55°であれば混色を効果的に避けることができるとの例示がある。一方、動的接触角を考えるときは、そのインキと隔壁表面との前進角が大きいことが好ましいと考えられる。
【0006】
また、インクジェットヘッドより吐出されたインキが画素内と共に隔壁上に重なった場合、その隔壁表面のインキが、表面撥インキ性によって画素内に戻る、いわゆる自己修復作用が求められている。特に、画素が微細化される高精細化要求においてはインクジェットから吐出された液滴がブラックマトリクスに重なる頻度が高くなることや、各色領域におけるコーナー部においてインキの展開性を補うために隔壁部と重ね打ちすることなども検討されている(特許文献7参照)。隔壁部に重なったインキが画素内に戻る場合は、インキの転落角が小さいことが好ましいことが予測される。
【0007】
このような目的における隔壁材料を与えるフォトレジスト組成物として、撥インキ性を付与する成分としてフッ素系もしくはシリコン系の化合物を混合する方法が提案されている。特許文献1にはフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体とを含有するフォトレジスト組成物が開示されている。しかしながら、前記共重合体の添加量はフォトレジスト組成物固形分に対して0.001〜0.05重量%であり、このような低含有量では撥インキ性が不足する。
【0008】
特許文献2には、ヘキサフルオロプロピレンと不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物との共重合体とフッ素有機化合物との組成物が例示されている。しかしながら、ヘキサフルオロプロピレンの重合体を得るには高圧での重合が不可欠で、その分子量も2000以下と小さい。また、これを補助するフッ素有機化合物も界面活性剤系であって、その撥インキ性持続に問題が生じる。
【0009】
特許文献3には、CH2=CH(R1)COOXRf(Rfは炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す)を単量体としてフッ素原子含有率が7〜35重量%である含フッ素樹脂を特徴とするレジスト組成物が例示されている。この場合、R1基は、H、CH3もしくはCF3に限定されている。
【0010】
特許文献4には、酸性基および分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶の感光性樹脂と、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基を有する重合単位、及びエチレン性二重結合を有する重合単位を共重合した重合体からなる撥インキ剤とを含有するネガ型感光性樹脂組成物が述べられている。この撥インキ剤におけるフッ素含有重合単位も前述特許文献3と同等のものである。いずれの場合も、フォトレジスト固形分中の含フッ素化合物の割合が増すと、支持基板に対する密着性の低下ならびに表面平滑性の悪化が指摘されている。
【0011】
特許文献5には、ブラックマトリクスに含まれる樹脂と親和性の少ないケイ素及び/又はフッ素の原子を含む撥インキ剤を用い、現像後にブラックマトリクスを150〜230℃で焼成することで撥インキ剤を表面に移行させて着色インキとの接触角を30〜60°に制御する表面撥インキ性ブラックマトリクスの製造方法が述べられている。このうち、撥インキ剤の具体例として、主鎖または側鎖に有機シリコーンを有するもの、フッ化ビニリデン等とのフッ素含有モノマーとの共重合によるフッ素樹脂を例示している。ところが、界面活性剤等の含シリコーンオリゴマーならびにフッ素系オリゴマーは、焼成後に表面に移行してきてもその撥インキ性は、その後の洗浄や時間の経過とともに低下することが問題である。
【0012】
一方、アクリル酸エステル重合体を用いて含フッ素側鎖の分子鎖長による動的接触角に関してMacromolecules、38(2005)、5699ページ(非特許文献1)に記載されている。含フッ素分子鎖長の炭素数が6を超えると、側鎖の結晶化のために後退角が大きく、転落角が小さくなってくる記載がある。しかしながら、EPA勧告では炭素数8以上(長鎖)のフルオロアルキル(Rf)基を有するフッ素化合物の生産を2010年までに95%削減する方針を打ち出しており、炭素数6以下における転落角の小さな撥インキ性含フッ素化合物が望まれるところである。
【0013】
また、遮光性樹脂マトリクスを形成するのに適したフォトレジストとして、特許文献6では、特定の芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られた不飽和基含有化合物を樹脂主成分として含むブラックレジストが、高遮光率を有し、フォトリソグラフィー法によるファインパターンの形成が容易であって、しかも、絶縁性、耐熱性、密着性、室温保存安定性にも優れた遮光性薄膜形成用組成物となることを報告している。しかし、特許文献6もその撥インキ特性については触れていないし、相溶性についての言及もない。
【特許文献1】特開平9−54432号公報
【特許文献2】特開平11−281815号公報
【特許文献3】特開2005−315984号公報
【特許文献4】WO2004−42474号公報
【特許文献5】特開2006−251433号公報
【特許文献6】特開平8−278629号公報
【特許文献7】特開2006−343518号公報
【非特許文献1】Macromolecules、38(2005)、5699
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決し、すなわち紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分とのレジスト組成物(感光性樹脂組成物)においても撥インキ剤の相溶性に優れ、製膜後の表面外観ならびにパターン形状が良好であり、表面撥インキ性に優れる一方で、通常の洗浄や時間が経過しても表面撥インキ性を維持することができるカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を与えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)下記一般式(1)で表される単量体から形成される単量体単位を有する含フッ素樹脂(A)と、紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分とを含むカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、組成物の全固形分100重量部に対する含フッ素樹脂(A)の割合が0.05〜10重量部であることを特徴とするカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
CH2=C(Rn)−COO−Y−Rf (1)
(式中、Rnは炭素数2以上の有機基又は塩素を示し、Yは炭素数1〜6の2価のフッ素原子を含まない有機基を示し、Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す。)
【0016】
また、
(2)前記カラーフィルター隔壁形成用樹脂組成物が、下記(B)〜(E)成分、
(B)一分子中に酸性基と2つ以上のエチレン性二重結合とを有するアルカリ現像性オリゴマー、
(C)少なくとも1分子中に3個以上のエチレン性二重結合を有する光重合性モノマー、
(D)光重合開始剤、
(E)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材から選ばれる少なくとも1種以上の遮光性分散顔料、
を必須成分として含み、全固形分100重量部に対して(E)成分が25〜60重量部配合されていることを特徴とする上記(1)記載の遮光性のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【0017】
(3)前記記載の(B)成分において、下記一般式(2)で表されるビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られたアルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーである上記(1)又は(2)に記載のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【化1】

(但し、式中、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかであり、Xは‐CO‐、−SO2−、‐C(CF3)2−、-Si(CH3)2‐、-CH2‐、-C(CH3)2‐、-O-、下記式で表される9,9-フルオレニル基
【化2】

又は不存在を示し、nは0〜10の整数である)
【0018】
(4)遮光性分散顔料(E)成分がカーボンブラック分散体である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の遮光性のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【0019】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布、乾燥した後、(a)紫外線露光装置による露光、(b)アルカリ水溶液による現像、(c)熱焼成の各工程を必須として得られる遮光性カラーフィルター隔壁であって、膜厚が1.5〜3μmであることを特徴とする遮光性カラーフィルター隔壁。
【0020】
(6)上記(5)記載の遮光性カラーフィルター隔壁内にインクジェット印刷法により画素を形成したカラーフィルター。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分とのレジスト組成物においても撥インキ剤の相溶性に優れ、製膜後の表面外観ならびにパターン形状が良好であり、表面撥インキ性に優れる一方で、通常の洗浄や時間が経過しても表面撥インキ性を維持することができるカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を与えることができる。このため、特にインクジェットプロセスによるカラーフィルターの製造法において、大気圧プラズマによる表面撥インキ処理の設備を必要としない低コスト化を達成でき、かつ歩留まり向上に貢献する材料を好適に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素樹脂(A)は撥インキ剤であり、下記一般式(1)で表される単量体から形成される単量体単位を有する。
CH2=C(Rn)−COO−Y−Rf (1)
(式中、Rnは炭素数2以上の有機基又は塩素を示し、Yは炭素数1〜6のフッ素原子を含まない2価の有機基を示し、Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す。)
【0023】
一般式(1)で表される単量体は、スペーサー的な役割をする有機基YによりRfがα位置換基(Rn)を有する重合体主鎖に繋がれたものである。パーフルオロアルキル基(Rf)の炭素数が6を超えると、表面撥インキ性に優れるが、ネガ型レジスト組成物との相溶性が低下して、スリット塗工時の表面外観不良や、硬化後に表面が粗くなる。また、炭素数が6を超えるパーフルオロアルキル基は環境上も好まれていない。一方、Rfの炭素数が4より小さいと撥インキ性が低下するので好ましくない。
【0024】
また、α位置換基Rnが水素やメチル基に該当する嵩の低いものであると、ブラックマトリクスの焼成時に炭素数6以下のパーフルオロアルキル基の側鎖結晶性を崩して撥インキ性が焼成後に低下するのに対し、炭素数2以上の有機基とすることで主鎖の運動性を束縛で側鎖に起因する撥インキ性の維持に好ましいものとなる。この際、スペーサーであるY基が炭素数6以下であると、この主鎖が側鎖パーフルオロアルキル基へ表面撥インキ性を洗浄後や硬化後も維持するに好ましい。
【0025】
このような含フッ素樹脂を与えうる含フッ素単量体単位としての具体例としては、Rn基が-CH2CH3, -CH(CH3)2,-CH2C6H5, -COO−Rm、-CH2COO−Rm(Rmはアルキル基、フェニル基、アルコキシ基などの有機基又は塩素を表わし、酸素、ケイ素、さらにはフッ素元素を含んでもかまわない)、Rfが-C4F9, -C5F11, -C6F13、Y基が-CH2CH2-、-CH2CH2O-, -CH2CH(OH)CH2O-等であるものを挙げることができる。
【0026】
さらにこのような含フッ素単量体と非フッ素含有単量体とを共重合させることで含フッ素樹脂(A)成分を調製する。このような非フッ素含有単量体としては、通常のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン誘導体、無水マレイン酸エステル等を例示できる。アルカリ現像性樹脂との相溶性ならびに撥インキ性維持の観点から、メタクリル酸エステルとの共重合が好ましく、また側鎖のアルコール残基はベンジル基、イソボルニル基、アダマンタン基などの嵩高いものが好ましい。含フッ素樹脂(A)に用いる含フッ素単量体単位の割合は、30モル%以上、好ましくは50モル%以上であるのがよい。30%未満であると、十分な撥インキ性が発揮されず、またブラックマトリクス形成時ならびにインクジェットインキ塗布直前までにその撥インキ性が消失してしまう場合がある。
【0027】
この含フッ素樹脂(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマト(GPC)法で求めたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が4000〜20000の範囲にあることが必要である。この分子量が4000以下であると、隔壁形成プロセスにおいて撥インキ作用が低下したり、撥インキ作用の継続が困難になる。分子量の上限は、アルカリ現像液に対する溶解遅延のため好ましくない。
【0028】
また、この含フッ素樹脂(A)については、隔壁形成用感光性樹脂組成物の全固形分100重量部に対する含フッ素樹脂(A)の割合が0.05〜10重量部となるようにする。含フッ素樹脂(A)の割合が0.05重量部より少ないと撥インキ性が不十分となり、反対に10重量部を超えるとファインパターン形成に悪影響を及ぼすおそれがある。なお、感光性樹脂組成物の全固形分とは硬化後に固形分として残る成分の総量を表す。
【0029】
次に、紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分を含む、カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物(ネガ型レジスト組成物)に使用される(B)〜(E)成分について述べる。
【0030】
(B)成分である、一分子中に酸性基と2つ以上のエチレン性二重結合とを有するアルカリ現像性オリゴマーの例としては、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られたアルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーを挙げることができる。
【0031】
ここで、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物が好ましく挙げられる。
【化3】

(但し、式中、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかであり、Xは-CO-、-SO2-、-C(CF3) 2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、下記式で表される9,9-フルオレニル基
【化4】

又は不存在を示し、nは0〜10の整数である)
これらのビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に多塩基酸カルボン酸又はその無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を、本発明の(B)成分であるアルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーとして使用することができる。
【0032】
(B)成分であるエチレン性二重結合を有するアルカリ現像性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合と、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基とを併せ持つため、カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え、遮光性隔壁の物性向上をもたらす。
【0033】
(B)成分であるエチレン性二重結合を有するアルカリ現像性オリゴマーは、好ましくは、上記式(2)で表されるエポキシ化合物から誘導される。このエポキシ化合物はビスフェノール類から誘導される。したがって、ビスフェノール類を説明することによって、アルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーが理解されるので、好ましい具体例をビスフェノール類により説明する。
【0034】
好ましいアルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーを与えるビスフェノール類としては、次のようなものが挙げられる。ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル等を含む化合物や、式(2)中のXが前記の9,9−フルオレニル基である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等や、更には4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール等の化合物が挙げられる。
【0035】
(B)成分であるエチレン性二重結合を有するアルカリ現像性オリゴマーは、上記のようなビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物から得ることができるが、かかるエポキシ化合物の他にフェノールノボラック型エポキシ化合物や、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等も2個のグリシジルエーテル基を有する化合物を有意に含むものであれば使用することができる。また、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、オリゴマー単位が混入することになるが、一般式(2)におけるnの平均値が0〜10、好ましくは0〜2の範囲であれば、本樹脂組成物の性能には問題はない。
【0036】
また、このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート分子中のヒドロキシ基と反応し得る多塩基酸カルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等やその酸無水物、更には、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸やその酸二無水物等が挙げられる。そして、酸無水物と酸二無水物の使用割合については、露光、アルカリ現像操作によって微細なパターンを形成するのに適した割合を選択することができる。
【0037】
(B)成分のエチレン性二重結合を有するアルカリ現像性オリゴマーについては、その1種のみを使用しても、2種以上の混合物を使用することもできる。また、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応、この反応で得られたエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸又はその酸無水物との反応は、上記特許文献6等で公知の方法を採用することができるが、特に限定されるものではない。
【0038】
また、(B)成分を得るための別法としては、1)カルボキシル基を1個以上有するエチレン性不飽和単量体、2)重合後に不飽和基を導入可能なヒドロキシ基、酸無水物基、グリシジル基などを側鎖に有するエチレン性不飽和単量体及び3)他のエチレン性不飽和単量体、を含有するモノマー混合物を過酸化物ならびに連鎖移動剤が共存する溶剤中にてラジカル共重合することより得られる共重合体を、さらに2)の側鎖に付加可能な官能基を有する一不飽和化合物を付加させたバインダー樹脂とすることでエチレン性二重結合を有するアルカリ現像性オリゴマーとすることもできる。
【0039】
前記モノマー混合物として用いることができる、1)カルボキシル基を1個以上有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、エタクリル酸、けい皮酸などの不飽和モノカルボン酸類:マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの不飽和ジカルボン酸(無水物)類:3価以上の不飽和多価カルボン酸(無水物)類などを挙げることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。これらカルボキシル基含有のエチレン性不飽和単量体は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
モノマー混合物のもう一つの成分である3)他のエチレン性不飽和単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドコシルメタクリレート、エイコシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル類;アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテルなどの不飽和エーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、マレイミドなどの不飽和アミド或いは不飽和イミド類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの脂肪族共役ジエン類などを挙げることができる。中でも、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートが好ましい。これらの他の不飽和単量体は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、この(B)成分の酸価は、樹脂1g中のカルボキシル基を中和するに必要なKOHのmg数として表され、画像パターン形成時の現像処理時間やパターン形状、硬化膜の密着性の観点から70〜150(KOHmg/g)であるのがよい。70を下回るとアルカリ現像液によるパターン形成ができなくなり、また、架橋剤を用いる場合は、架橋剤とするエポキシ樹脂との架橋が不十分になり、耐熱性の低下、有機溶剤中での密着性不良などが生じる。そして、酸価が150を超えると、アルカリ現像時の表面荒れ、細線パターンの現像密着不良並びに硬化膜の耐湿性が問題となる。
【0042】
(C)成分の少なくとも1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
【0043】
本発明の隔壁形成用感光性樹脂組成物には、(B)成分、(C)成分等の光重合性の化合物を含むものであるが、これを光硬化させるために(D)成分として光重合開始剤を含む。(D)成分は紫外線光照射、特に300〜450nmの紫外線照射により、ラジカル種を発生し、光重合性の化合物に付加してラジカル重合を開始させ、樹脂組成物を硬化させる。
【0044】
(D)成分の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、N,N'テトラメチル-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2、4,5-トリアリールイミダゾール2量体、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)−ブタノン、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-[4-モルフォリノフェニル]-ブタノン-1,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン等の光重合開始剤が挙げられる。
【0045】
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミン等の第3級アミンを挙げることができる。
【0046】
(D)成分の光重合開始剤の使用量は、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計100重量部を基準として5〜40重量部が適している。(D)成分の配合割合が5重量部未満の場合には、光重合の速度が遅くなって、感度が低下し、一方、40重量部を超える場合には、感度が強すぎて、パターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又は、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。
【0047】
(E)成分の黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材などの遮光性分散顔料に用いられる遮光性顔料としては、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性に優れたものであることが好ましい。ここで、黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。遮光材としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックを挙げることができ、2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性が良好な点で好ましい。これらの遮光性顔料から選ばれた1種以上を必要により分散剤、分散助剤と伴に有機溶媒中に分散させることで遮光性分散顔料とすることができる。
【0048】
(E)成分の配合割合については、感光性樹脂組成物の全固形分100重量部に対して25〜60重量部配合されていることが好ましい。25重量部より少ないと、遮光性が十分でなくなる。60重量部を超えると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少するため、現像特性を損なうと共に膜形成能が損なわれるという好ましくない問題が生じる。
【0049】
本発明のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物においては、上記(A)〜(E)成分の他に溶剤を使用するのがよい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0050】
また、本発明のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、ベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。このうち、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0051】
特に表面特性改善に用いるレベリング剤、消泡剤などの界面活性作用を有する材料を添加する際は、硬化後の表面撥インキ性を損なわない程度に加える必要があり、好ましくは組成物中全固形分に対する濃度で撥インキ剤より少ない含有量で添加する。
【0052】
本発明のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分又はこれらと溶剤を主成分として含有する。溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(A)〜(E)成分が合計で70wt%以上、好ましくは80wt%、より好ましくは90wt%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、塗布方式に依存する目標とする粘度によって変化するが、30〜90wt%の範囲が望ましい。
【0053】
本発明のカラーフィルター隔壁は、上述した本発明のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成される。その製造工程としては、先ず、感光性樹脂組成物を溶液にして基板表面に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後乾燥としてポストベークを行う方法が挙げられる。
【0054】
感光性樹脂組成物の溶液を塗布する基板としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITO、金等の透明電極が蒸着あるいはパターニングされたもの等が用いられる。
【0055】
この感光性樹脂組成物の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜10分間行われる。
【0056】
プリベーク後に行われる露光は、露光機によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光機及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中のブラックレジスト用樹脂組成物を光硬化させる。
【0057】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜3重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0058】
このようにして現像した後、160〜250℃の温度、及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた遮光膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた遮光膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0059】
また、本発明のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物は、例えば上記の方法等により遮光性カラーフィルター隔壁とした上で、種々の手段で画素を設けて所定の色パターンを形成すれば、カラーフィルターを得ることができる。特に、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成したカラーフィルター隔壁は、基板に対する密着性に優れると共に撥インキ性に優れることから、得られた遮光性カラーフィルター隔壁内にインクジェット法印刷法により画素を形成してカラーフィルターを得るのに好適である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、表中記載の化合物略号を以下に示す。
【化5】

CF4MA:CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2)3CF3
CFnMA:CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2)nCF3 n=4〜10の混合物
IBMA:イソボルニルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
MMA: メチルメタクリレート
NPMI:n−フェニルマレイミド
BzMA:ベンジルメタクリレート
V-70:2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)
2−ME:2−メルカプトエタノール
【0061】
<合成例1> 撥インキ剤 A-1
攪拌機を備えた内容積5リットルの反応機に2MCA-bCF4(352g)、IBMA(43.4g)、GMA(14.2g)、MMA(8.6g)重合開始剤V-70(8.8g)、及び連鎖移動剤2−ME(4.4g)を仕込み、さらに固形分濃度が40wt%となるようにPGMEAを加え、窒素雰囲気下に攪拌しながら、40℃にて18時間重合させた。降温後、固形分濃度が20wt%になるようにPGMEAにて希釈して、撥インキ剤A-1溶液を得た。撥インキ剤A-1の重量平均分子量は、7300であった。ただし、重量平均分子量は、THFを展開溶媒としたGPCにより求めた(PS換算)。
【0062】
<合成例2〜11>
撥インキ剤A-1の合成において、原料の配合量を表1のように変更したほかは同様にして、撥インキ剤A-2〜A-11、a-1及びa-2を得た。なお、表1に示した各成分の欄に記した数値の単位は「g」である。
【0063】
【表1】

【0064】
<実施例1〜18及び比較例1〜4>
まず(A)成分を除く(B)〜(E)成分を表2及び表3に記載した割合(重量部)で混合し、シランカップリング剤 S-510(信越化学社製)0.23重量部(F成分)とともにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて固形分濃度20重量%となるようにした。引き続き、表2及び表3記載の重量部で(A)成分溶液を加え、更にシリコン系界面活性剤 SH3557(花王社製)0.005重量部(G-2成分)を加えた(比較例2の場合のみG-1成分とした)。次いで、2μmのポリプロピレン製メンブレンフィルターを用いて0.2kg/cm2加圧にてろ過し、カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を調製した。表2及び表3において、(A)成分及び(B)成分の( )内に、全固形分に対する配合割合をwt%で示した。(E)成分の配合割合については全固形分に対する(顔料/全固形分)wt%として別欄に示した。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
ここで、実施例、比較例の感光性樹脂組成物の製造で用いた配合成分は以下の通りである。
(B)-1:フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.1重量%、新日鐵化学社製 商品名V259ME)
(B)-2:重量平均分子量30000、酸価100のN−エチルマレイミド/メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=36.7重量%)(N−エチルマレイミド:メタクリル酸:ベンジルメタクリレート=29:20:51mol%)
(C)-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製 商品名 DPHA)
(D)-1:IRGACURE OXE-01 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(D)-2:IRGACURE OXE-02 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(E)-1:カーボンブラック濃度20重量%、高分子分散剤濃度5重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散液(固形分25%)
(F)-1:シランカップリング剤 サイラエース S-510(チッソ社製)
(G)-1:フッ素系界面活性剤 メガファックF-470(大日本インキ社製)
(G)-2:シリコン系界面活性剤 SH3557(花王社製)
【0068】
上記実施例、比較例で得られたカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が2.1μmとなるように塗布し、80℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、I線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mj/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。
【0069】
次に、この露光済み塗板を0.05%水酸化カリウム水溶液中、23℃にて60秒又は80秒の1kgf/cm2圧シャワー現像及び5kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃にて30分間熱ポストベークした。実施例、比較例におけるブラックマトリックスの評価項目と方法は以下の通りである。
【0070】
[膜厚] 触針式膜厚計(東京精密社製 商品名サーフコム)を用いて測定した。
[塗布異物] スピンコート後の塗膜に放射状スジが観察された場合を×<不良>、観察されなかった場合を○<良好>とした。
[現像性] 現像後の画素パターンを顕微鏡観察し、基板に対する剥離やパターンエッジ部分のギザツキが認められないものを○<良好>、認められるものを×<不良>と評価した。
[塗膜表面粗度] 現像、熱焼成後の塗膜の表面粗度(Ra)の値が、150Å未満を○<良好>、150Å以上を×<不良>と評価した。
[パターン密着性] ピーリングテストで20μmパターンの剥がれが認められないものを○<良好>、認められるものを×<不良>と評価した。
[PCT密着性] ポストベーク実施済みのパターン形成基板を、121℃、100%RH、2atm、24時間の条件下においてPCT(プレッシャー・クッカー)テストを実施後、20μmパターン部にセロハンテープを貼り付けピーリングテストを行うことでパターン密着性を評価した。
[OD測定] ポストベーク後2.1μmの塗膜を用いて、大塚電子社製OD計を用いて測定し、1μmあたりのOD値として記載した。
[接触角測定] 前述した同様の方法により、現像後にガラス基板上に黒色の10mm×10mm×2.1μmの四角パターンを形成した。このブラック塗膜上に水またはブチルカルビトールアセテート(BCA)を用いて、静的接触角を測定した。さらにこのブラック塗膜を23℃、50%湿度条件下にて1週間放置した後、再度静的接触角を測定した。
【0071】
上記の結果、実施例ではいずれも遮光性カラーフィルター隔壁としての諸特性を満たし、且つ静的接触角は水、ブチルカルビトールアセテート(BCA)においても高く、また1週間の放置においてもほとんど低下は見られなかった。一方、比較例1及び比較例2においては、界面活性剤程度では十分な撥インキ性が得られず、また1週間の放置で低下する傾向が見られた。比較例3では、α位に嵩高い基がついていないために、十分な接触角が得られず、また1週間後の低下も大きい。また、比較例4ではフッ素側鎖が長いために、直線性など製版特性に課題があった。
【0072】
<実施例19>
実施例1で得た樹脂組成物を用い、開口部が300μm×100μmならびにBMライン30μm、膜厚2.1μmのマトリックスを形成した。その後、酸素大気圧プラズマで3秒間処理した後に、CF4大気圧プラズマにて3秒間処理を行った。このブラック塗膜上に水またはブチルカルビトールアセテート(BCA)を用いて、静的接触角を測定したところ、それぞれ100°、50°を示した。このブラックマトリックス中にむかって、東芝テック製インクジェットヘッドを用い、粘度9mPa.sec、固形分濃度20%のレッド、ブルー、グリーンのインキを打ち込み、230℃にてポストベークを行い、カラーフィルターを形成した。得られたカラーフィルターは隣あう領域でのインキの混色のない良好なカラーフィルターであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体から形成される単量体単位を有する含フッ素樹脂(A)と、紫外光(300nm〜450nm)に反応する感光性成分とを含むカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、組成物の全固形分100重量部に対する含フッ素樹脂(A)の割合が0.05〜10重量部であることを特徴とするカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
CH2=C(Rn)−COO−Y−Rf (1)
(式中、Rnは炭素数2以上の有機基又は塩素を示し、Yは炭素数1〜6のフッ素原子を含まない2価の有機基を示し、Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記カラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物が、下記(B)〜(E)成分、
(B)一分子中に酸性基と2つ以上のエチレン性二重結合とを有するアルカリ現像性オリゴマー、
(C)少なくとも1分子中に3個以上のエチレン性二重結合を有する光重合性モノマー、
(D)光重合開始剤、
(E)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材から選ばれる少なくとも1種を含む遮光性分散顔料、
を必須成分として含み、全固形分100重量部に対して(E)成分が25〜60重量部配合されていることを特徴とする請求項1に記載の遮光性のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記記載の(B)成分において、下記一般式(2)で表されるビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られたアルカリ現像性不飽和基含有オリゴマーである請求項1又は2に記載のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【化1】

(但し、式中、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかであり、Xは‐CO‐、−SO2−、‐C(CF3)2−、-Si(CH3)2‐、-CH2‐、-C(CH3)2‐、-O-、下記式で表される9,9-フルオレニル基
【化2】

又は不存在を示し、nは0〜10の整数である)
【請求項4】
遮光性分散顔料(E)成分がカーボンブラック分散体である請求項1〜3のいずれかに記載の遮光性のカラーフィルター隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布、乾燥した後、(a)紫外線露光装置による露光、(b)アルカリ水溶液による現像、(c)熱焼成の各工程を必須として得られる遮光性カラーフィルター隔壁であって、膜厚が1.5〜3μmであることを特徴とする遮光性カラーフィルター隔壁。
【請求項6】
請求項5記載の遮光性カラーフィルター隔壁内にインクジェット印刷法により画素を形成したカラーフィルター。

【公開番号】特開2009−37233(P2009−37233A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178637(P2008−178637)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】