説明

カラー画像処理装置及びプログラム

【課題】画像を出力するまでの時間を短くするカラー画像処理装置を提供する。
【解決手段】本発明のカラー画像処理装置は、入力されたカラー画像の画像データから、順次、n画素単位(nは1以上の整数)で画像データを抽出し、抽出した当該画像データを所定単位に変換する。さらに、当該変換結果が、抽出されたカラー画像を所定の色変換方法で色変換した画像を更に所定単位に変換した変換結果に基づく量になるように、入力カラー画像の各色の階調値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機等の画像形成装置において、デジタル機器の発展に伴って、アナログ方式の画像形成装置に代わり、デジタル化した描画データに基づいて画像を形成するデジタル方式の画像形成装置が広く普及している。このような画像形成装置では、記録媒体に画像を形成するために使用する色材として、現像剤(トナー)やインクが使用されている。そしてユーザにとっては、なるべく無駄にトナーを浪費しないようにすることが望まれる。このような背景のもと、色材コストを低減することを目的とし、一部の画像形成装置においては、通常の画像形成(印刷)機能に加えて、色材消費量を通常よりも低減して印刷を行う機能(省トナー機能等)が搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、入力されたカラー画像を色材(インク)により記録媒体に形成する場合に、当該カラー画像をモノクロ化(白黒化)して形成する場合の色材コストに基づいて、当該カラー画像の形成に用いる色材量を調整する技術が開示されている。具体的には、1ページの画像を形成するために必要な1ページ分の描画データに含まれる各階調値に対して、調整用の係数を乗じることによって、色材量を調整する。さらに、色材量の調整後の描画データを用いた画像形成における色材コストが所定の範囲内に収まるか否かを判定し、当該判定結果に応じて画像形成の可否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−18460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、ページ単位で色材量の調整を行うことに関連して、以下のような問題がある。例えば、ページ単位で色材量の調整を行うために、トナー量を調整した1ページ分の描画データの作成が完了するまで画像形成を開始できず、画像形成を開始するまでの時間が長期化する可能性がある。特に、色材量の調整後の描画データに対応する色材コストが所定の範囲内に収まっていない場合には、再度、色材量の調整を行う必要があるため、画像形成を開始するまでの時間がさらに長期化する問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、画像を出力するまでの時間を短くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、カラー画像処理装置として実現できる。カラー画像処理装置は、入力されたカラー画像の画像データに画像処理を行い出力するカラー画像処理装置であって、画像データから、順次、n画素単位(nは1以上の整数)で画像データを抽出する抽出手段と、抽出された画像データを所定単位に変換したときの変換結果が、抽出された画像データを所定の色変換方法で色変換し更に所定単位に変換した変換結果に基づく量になるように、カラー画像の各色の階調値を変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用する色材量を低減した画像形成を行うための画像データを作成する画像処理をn画素単位で実行して、画像を出力するまでの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】省トナー処理に関連するブロック図である。
【図2】プリンタ100における画像形成ユニットの構成を示す図である。
【図3】プリンタ100のシステム構成を示す図である
【図4】プリンタ100及びホストPC200における処理に関連するブロック図である。
【図5】ラスタデータからの画素の階調値の読み込みの様子を示す図である。
【図6】階調値‐トナー量テーブルの一例である。
【図7】省トナー処理に関連するブロック図である。
【図8】省トナー処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】省トナー処理に関連するブロック図である。
【図10】省トナー処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】省トナー処理に関連するブロック図である。
【図12】省トナー処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】階調値‐トナー量テーブルの一例である。
【図14】省トナー処理に関連する設定画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
[第1の実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明のカラー画像処理装置の適用例として、電子写真方式による、中間転写ベルトを採用したタンデム方式の4ドラムフルカラー画像形成装置について説明する。なお、後述するように、本発明のカラー画像処理装置は、ホスト・コンピュータ(ホストPC)に対しても適用可能である。
【0012】
<プリンタ100の構成>
まず、図2を参照して、カラー画像形成装置100(以下では単にプリンタと称する。)の構成について説明する。プリンタ100は、記録材(記録媒体)に画像を形成するための複数色の色材として、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色及びブラック(K)色の4色の現像剤(トナー)を使用する。プリンタ100は、それぞれが異なる色のトナーで単色のトナー像を対応する感光体(感光ドラム)22Y,22M,22C,22K上に形成する4つの画像形成ステーションを備える。4つの画像形成ステーションは、複数の感光体22Y,22M,22C,22Kと、一次帯電器である注入帯電器23Y,23M,23C,23Kと、露光装置24Y,24M,24C,24Kとをそれぞれ備える。4つの画像形成ステーションは、更に、トナーカートリッジ25Y,25M,25C,25Kと、現像器26Y,26M,26C,26Kとをそれぞれ備える。プリンタ100は、これら4つの画像形成ステーションにおいて感光体22Y,22M,22C,22K上に形成されたトナー像が転写される中間転写体27を備える。
【0013】
感光体22Y,22M,22C,22Kは、アルミシリンダの外周に有機光導伝層を塗布したものであり、駆動モータ(不図示)の駆動力によって回転する。駆動モータは、画像形成動作に応じて、図2において反時計回りの方向に各感光体22を回転させる。この駆動モータの駆動力は、当該駆動モータの軸に取り付けられたギア及びその他のギア列を通じて各感光体22へ伝達される。なお、駆動モータには、単一のモータが使用されてもよいし、感光体ごとに異なるモータが使用されてもよい。
【0014】
注入帯電器23Y,23M,23C,23Kは、スリーブ23YS,23MS,23CS,23KSをそれぞれ備え、対応する感光体22Y,22M,22C,22Kを帯電させる。露光装置24Y,24M,24C,24Kは、帯電した感光体22Y,22M,22C,22Kの表面を露光光で露光することによって、対応する感光体上に静電潜像を形成する。現像器26Y,26M,26C,26Kは、スリーブ26YS,26MS,26CS,26KSをそれぞれ備える。現像器26Y,26M,26C,26Kは、それぞれ異なる色のトナーで感光体22Y,22M,22C,22K上の静電潜像を現像することによって、対応する感光体上にトナー像を形成する。具体的には、現像器26Y,26M,26C,26Kは、それぞれY色、M色、C色、K色のトナーを用いて各感光体22Y,22M,22C,22K上に単色のトナー像を形成することで、静電潜像を可視化する。なお、各現像器26Y,26M,26C,26Kはプリンタ100に対して着脱可能である。
【0015】
中間転写体27は、図2に示すように、感光体22Y,22M,22C,22Kに接触する位置に配置されている。中間転写体27は、画像形成の際には、中間転写体駆動ローラ216によって図2において時計回りの方向に回転しながら、その表面に各感光体22Y,22M,22C,22Kから単色(モノクロ)のトナー像が順に転写(1次転写)される。各トナー像が中間転写体27上で重ねて転写されることによって、中間転写体27上に多色(カラー)のトナー像が形成される。
【0016】
中間転写体27上に形成されたカラーのトナー像は、当該中間転写体の回転に伴って、転写ローラ28が配置された位置へ搬送される。カラーのトナー像が搬送されるタイミングに合わせて、記録材20が給紙部(給紙カセット)21から給紙される。記録材20は、転写ローラ28が配置された位置まで搬送路上を搬送される。転写ローラ28は、位置28aにおいて、搬送された記録材20を介して中間転写体27に当接する。転写ローラ28が中間転写体27に当接している間に、中間転写体27上に形成されたカラーのトナー像が記録材20上に転写(2次転写)される。これにより、記録材20上にカラーのトナー像が形成される。中間転写体27から記録材20への2次転写が終了すると、転写ローラ28は、位置28aから位置28bへ移動して、中間転写体27から離間する。
【0017】
カラーのトナー像が転写された記録材20は、その後、搬送路上を定着部210へ搬送される。定着部210は、搬送路上を搬送される記録材20上のトナー像を溶融させ、記録材20上に定着させる。定着部210は、記録材20を加熱するための定着ローラ211と、記録材20を定着ローラ211に圧接させるための加圧ローラ212とを備える。定着ローラ211及び加圧ローラ212は、中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ213、214を内蔵している。表面にカラーのトナー像を保持した記録材20は、定着部210において、定着ローラ211及び加圧ローラ212によって搬送ながら、熱及び圧力を加えられる。これにより、記録材20の表面にトナーが定着する。トナーの定着後、記録材20は、排出ローラ(図示せず)によって排紙トレイ(図示せず)に排出される。以上により、記録材20への画像形成動作が終了する。
【0018】
中間転写体27の近傍に設けられたクリーニング部29は、クリーナ容器を備え、記録材20へのトナー像の転写後に中間転写体27上に残留したトナー(廃トナー)を回収する。クリーニング部29は、回収した廃トナーを当該クリーナ容器に蓄える。このようにして、クリーニング部29は、中間転写体27の表面をクリーニングする。
【0019】
ここで、少なくとも上述の画像形成ステーション、給紙部21、中間転写体27、転写ローラ28及び定着部210は、入力された画像データに基づいて記録材20に画像を形成するための画像形成部として機能する。以下では、記録材20の搬送方向(即ち、中間転写体27の周面の移動方向)を、単に「搬送方向」又は「副走査方向」と称し、副走査方向に対して垂直方向を「主走査方向」と称する。
【0020】
<プリンタ100のシステム構成>
次に、図3に示すプリンタ100のシステム構成を参照して、画像形成時において実行される処理について説明する。ホストPC200は、少なくとも、CPU201、RAM202、ネットワークIF203、表示部インタフェース(IF)204、入力IF205、及び不揮発性の記憶装置の一例としてハードディスクドライブ(HDD)206を備える。CPU201は、RAM202をメインメモリ及びワークエリアとして使用するとともに、HDD206に格納された各種の制御プログラムをRAM202に読み出して実行することでホストPC200全体の動作を制御する。HDD206には、各種アプリケーションやプリンタドライバも格納されている。CPU201は、それらをRAM202に読み出して実行可能である。ネットワークIF203は、LAN等のネットワークに接続されており、ホストPC200はそのようなネットワークを介してプリンタ100と接続されている。なお、ホストPC200は、ネットワークを介することなく、USB接続等の接続方式によりプリンタ100と直接接続されていてもよい。
【0021】
ホストPC200は、そのようなアプリケーション又はプリンタドライバを用い、ネットワークIF203を介してプリンタ100へPDL(Page Description Language)ジョブデータを送信する。PDLジョブデータ(プリントジョブデータ)には、形成すべき画像の画像データである描画データと、当該描画データを用いた画像形成動作を制御するための制御データとが含まれる。また、表示部IF204は、液晶ディスプレイ等の表示部(図示せず)に各種の表示を行うためのインタフェースである。また、入力IF205は、キーボードやマウス等の入力デバイスからの入力を受け付けるためのインタフェースである。
【0022】
プリンタ100は、大きく分けて、エンジン制御部320とエンジン機構部330とを備える。エンジン機構部330は、エンジン制御部320からの各種指示に応じて動作する。エンジン機構部330は、センサ系309、給紙・搬送系310、作像系311、及び、レーザスキャナ系312を備える。レーザスキャナ系312は、露光装置24Y,24M,24C,24Kで構成され、レーザ発光素子、レーザドライバ回路、スキャナモータ、回転多面鏡、スキャナドライバ等を備える。レーザスキャナ系312は、ASIC308から送信された描画データに従って感光体22Y,22M,22C,22K上をレーザ光で露光走査して、当該感光体上に静電潜像を形成する。
【0023】
作像系311は、レーザスキャナ系312によって感光体22Y,22M,22C,22K上に形成された静電潜像に基づいてトナー像を記録媒体上に形成する。作像系311は、トナーカートリッジ25Y,25M,25C,25K、中間転写体27、定着部210等のプロセス要素と、作像(画像形成)の際に各種のバイアス(高電圧)を生成する高圧電源回路とを備える。作像系311は、更に、除電器、注入帯電器23Y,23M,23C,23K、現像器26Y、26M,26C,26K,感光体22Y,22M,22C,22K等を備える。トナーカートリッジ25Y,25M,25C,25Kは、不揮発性のメモリタグを備える。CPU303又はASIC308は、当該メモリタグに対して各種情報の読み書きを行う。給紙・搬送系310は、各種の搬送系モータ、給紙部21、排紙トレイ、各種搬送ローラ等を備え、記録媒体の給紙及び搬送を行う。
【0024】
センサ系309は、複数のセンサを含むセンサ群を備える。当該センサ群に含まれる各センサは、CPU303及びASIC308がレーザスキャナ系312、作像系311、給紙・搬送系310を制御するために必要とする情報を収集する。当該センサ群には、例えば、定着部210の温度センサ、トナー残量検知センサ、画像の濃度を検知する濃度センサ、用紙サイズを検知する用紙サイズセンサ、記録媒体の先端を検知する紙先端検知センサ、紙搬送検知センサ等が含まれる。これらのセンサで検知された情報は、CPU303へ送られてプリントシーケンス制御に用いられる。なお、上述の各センサは、センサ系309ではなく、レーザスキャナ系312、作像系311、給紙・搬送系310の何れかが備えていてもよい。
【0025】
エンジン制御部320は、上述のエンジン機構部330を制御する。エンジン制御部320において、CPU303は、RAM305をメインメモリ及びワークエリアとして使用する。CPU303は、ROM304に格納された各種制御プログラムをRAM305へ読み出して実行することによってエンジン機構部330を制御する。システムバス314は、アドレスバス及びデータバスを有する。エンジン制御部320内の各構成要素は、システムバス314に接続されているため、システムバス314を介して他の構成要素にアクセス可能である。
【0026】
ホストインタフェース(IF)部306は、ホストPC200との間で描画データ及び制御データの入出力を行うためのインタフェースである。ホストIF部306において圧縮データとして受信された描画データは、RAM305に格納される。CPU303は、ホストIF部306で受信された圧縮データを描画データに伸張し、当該描画データをRAM305に格納する。DMA制御部307は、CPU303からの指示に応じて、RAM305内の描画データをASIC308に転送する。パネルIF部313は、プリンタ本体に設けられた表示パネル部を用いてユーザによって入力された設定及び指示を、当該表示パネル部から受信するインタフェースである。
【0027】
CPU303及びASIC308は、ホストIF部306を介して入力された制御データ及び描画データに基づいて、エンジン機構部330内のレーザスキャナ系312を駆動する。CPU303は、作像系311及び給紙・搬送系310を制御して、各種プリントシーケンスを実行する。また、CPU303は、センサ系309を駆動して、作像系311及び給紙・搬送系310を制御するために必要なセンサ情報を得る。
【0028】
ASIC308は、上述の各種のプリントシーケンスが実行される際に、CPU303からの指示に応じて、各モータの制御バイアスや現像バイアス等についての高圧電源制御を行う。また、ASIC308は、後述する省トナー処理、ガンマ補正処理、ハーフトーン処理、PWM処理等を行う。なお、CPU303の機能の一部又は全てはASIC308において実行されてもよいし、逆にASIC308の機能の一部又は全てがCPU303において実行されてもよい。また、プリンタ100に別の専用ハードウェアを設け、当該専用ハードウェアにCPU303及びASIC308の機能の一部を実行させてもよい。
【0029】
<プリンタ100及びホストPC200における処理>
次に、図4(a)を参照して、ホストPC200、並びにプリンタ100内のCPU303、ASIC308、及びレーザスキャナ系312において実行される処理について説明する。
【0030】
文書作成ソフトウェア、図形描画ソフトウェア等の、ホストPC200において実行中のアプリケーション401は、印刷用の描画データ及び制御データを生成すると、それをプリンタドライバ上のPDL変換部402へ送信する。描画データは、例えば、印刷対象の画像の階調値及び属性情報を含むデータである。当該属性情報は、例えば、画像の種類(文字データ、グラフィクスデータ及びイメージデータ)を識別するための情報である。制御データは、例えば、印刷に使用される記録材のサイズ設定、印刷部数、後述する省トナー処理の許可及び不許可に関する設定、並びに省トナーパラメータを含むデータである。PDL変換部402は、描画データを圧縮データに変換し、変換後のデータと制御データとを含むPDLデータを生成するとともに、生成した当該PDLデータをプリンタ100へ送信する。
【0031】
プリンタ100において、CPU303は、ホストPC200から送信されたPDLデータを、ホストIF部306を介して受信する。CPU303は、受信した当該PDLデータに対して所定の処理を施した後、処理後のデータをRAM305へ一時的に格納する。具体的には、CPU303によって実行されるレンダラ403が、受信されたPDLデータに含まれる圧縮データを描画データへと伸張し、それをRAM305に格納する。本実施形態において、当該描画データ内の階調値は、RGB色空間で表現されたRGBデータである。
【0032】
RAM305に格納された描画データは、DMA制御部307による制御に応じてASIC308へ送信される。また、CPU303は、PDLデータ内の制御データをASIC308へ送信するとともに、ASIC308で実行される処理で必要となる制御情報をROM304から取り出してASIC308へ送信する。なお、ROM304に格納された制御情報には、例えば、色変換テーブル、階調値‐トナー量テーブル、コスト係数テーブル、ガンマ補正テーブル、ハーフトーンテーブル等が含まれる。
【0033】
ASIC308で受信された制御情報は、省トナー処理部406、ガンマ補正部407、及びハーフトーン処理部408に供給される。また、ASIC308で受信された描画データ(RGB色空間で表現された階調値R,G,B)は、入力信号として省トナー処理部406へ供給される。省トナー処理部406は、入力信号に基づいて印刷を行った場合に使用される色材であるトナーの使用量を低減するための省トナー処理を、当該入力信号に対して実行する。省トナー処理部406は、入力信号である階調値R,G,Bを、CMYK色空間で表現された階調値に変換するとともに、当該変換後の階調値に対して省トナー処理を実行する。さらに、省トナー処理部406は、省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'をガンマ補正部407に出力する。
【0034】
ガンマ補正部407は、制御情報に含まれる、プリンタの階調−濃度特性を補正するためのガンマ補正テーブルを用いて、階調値C',M',Y',Kの階調−濃度特性を補正した階調値C'',M'',Y'',K''へ生成する。生成された当該階調はハーフトーン処理部408へ出力される。ハーフトーン処理部408は、制御情報に含まれるハーフトーンテーブルを用いて、公知のディザ処理によるハーフトーン処理を行うことによって、階調値C'',M'',Y'',K''を階調値C''',M''',Y''',K'''へ変換する。変換後の階調値はPWM処理部409へ出力される。PWM処理部409は、階調値C''',M''',Y''',K'''を、露光装置24Y,24M,24C,24Kのレーザ発光素子の露光時間Tc,Tm,Ty,Tkへ変換する。PWM処理部409は、露光時間Tc,Tm,Ty,Tkを、露光用の画像データ(PWMデータ)として露光装置24Y,24M,24C,24Kに出力する。露光装置24Y,24M,24C,24Kは、露光時間Tc,Tm,Ty,Tkに従ってレーザ発光素子を発光させる。
【0035】
RGB色空間及びCMYK色空間の階調値は任意のビット数で表現でき、例えばそれぞれ8ビットで表現される。ただし、プリンタ100の色再現範囲の調整等を行うために、各階調値のビット数は増減され得る。また、図4(a)を参照して上述したASIC308における処理は、図4(b)に示すようにホストPC200側で実現されてもよい。その場合、例えば、上述の図4(a)のASIC308で実行される機能を実現するためのソフトウェアをホストPC200のHDD206に予め格納しておき、CPU201がそれをRAM202に読み出して実行すればよい。また、色変換テーブル等の各種のテーブルを含む制御情報もHDD206に予め格納しておき、CPU201がHDD206から当該制御情報を読み出して使用すればよい。図4(b)において、PDL変換部410は、ハーフトーン処理部408によるハーフトーン処理後の階調値C''',M''',Y''',K'''を、描画データとしてPDLデータに変換する機能を有する。当該PDLデータは、プリンタ100へ送信される。プリンタ100において、レンダラ411は、ホストPC200から受信されたPDLデータを元の階調値C''',M''',Y''',K'''に変換して、それをPWM処理部409に出力する。
【0036】
<省トナー処理部406の構成>
次に、図1を参照して、省トナー処理部406のブロック構成及び省トナー処理部406において実行される省トナー処理について説明する。省トナー処理部406に入力された階調値R,G,Bは、第1の色変換部101及び第2の色変換部102へ入力される。第1の色変換部101は、入力された階調値R,G,Bを、モノクロ階調値で表された階調値Kmに所定の演算で変換し、当該変換結果を第1のトナー量計算部103へ出力する。第2の色変換部102は、RGB色空間からCMYK色空間へ色空間を変換するための情報を保持した色変換テーブルを用いて、入力された階調値R,G,Bを、CMYK色空間における対応する階調値C,M,Y,Kへ変換する。なお、当該色変換テーブルは、省トナー処理部406へ入力された制御情報から取り出される。第2の色変換部102は、当該変換結果を第2のトナー量計算部104及び階調変換部106へ出力する。
【0037】
第1のトナー量計算部103は、階調値‐トナー量変換テーブルを参照して、階調値Kmで画像を形成する場合に消費されるトナー量(色材量)Akmを計算し、当該計算結果をトナー量削減率決定部105へ出力する。一方、第2のトナー量計算部104は、色ごとの階調値−トナー量テーブルを参照して、階調値C,M,Y,Kで画像を形成する場合に消費される各色のトナー量(色材量)Ac,Am,Ay,Akをそれぞれ計算する。当該計算結果は、トナー量削減率決定部105及び階調変換部106へ出力される。なお、これら第1及び第2のトナー量計算部103、104で使用される階調値‐トナー量変換テーブルは、省トナー処理部406へ入力される制御情報から取り出される。ここで、第1及び第2のトナー量計算部103、104は、カラー画像の階調値C,M,Y,Kと、モノクロ画像の階調値Kmとを、各階調値に従って画像を形成する場合に消費されるトナー量にそれぞれ変換する変換手段として機能する。
【0038】
トナー量削減率決定部105は、トナー量Akm,Ac,Am,Ay,Akと、省トナーパラメータSとを用いて、カラー画像のトナー量Ac,Am,Ay,Akを削減するトナー量削減率D(第1削減率)を決定する。具体的には、トナー量削減率決定部105は、モノクロ画像に対応するトナー量Akmを基準として、カラー画像に対応するトナー量Ac,Am,Ay,Akを削減するトナー量削減率Dを決定する。トナー量削減率決定部105は、決定したDを階調変換部106へ出力する。省トナーパラメータSは、省トナー処理部406へ入力された制御情報から取り出される。階調変換部106は、トナー量削減率Dと、トナー量Akm,Ac,Am,Ay,Akと、制御情報から取り出された階調値‐トナー量テーブルとを用いて、省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'を出力する。また、階調変換部106は、カラー画像を記録材に形成するための階調値C',M',Y',K'を得るために、トナー量削減率Dに応じてカラー画像の階調値C,M,Y,Kを変更する。
【0039】
<省トナー処理の手順>
次に、ASIC308の省トナー処理部406によって実行される上述の省トナー処理の手順について、図5〜図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る省トナー処理の手順を示すフローチャートである。省トナー処理部406は、省トナー処理を開始すると、S101で、第1の色変換部101及び第2の色変換部102において、描画データから1画素分の階調値R,G,Bを読み込む。即ち、本実施形態では、入力されたカラー画像の画像データから、順次、1画素単位で画素の階調値が抽出される。ここで、図5の500は、描画データのラスタイメージの一例である。同図に示すように、当該ラスタイメージにおいて、主走査方向及び副走査方向にそれぞれ所定の数の画素が配置されている。第1の色変換部101及び第2の色変換部102では、最初に画素501の階調値が読み込まれる。その後、省トナー処理部406は、処理をS102へ進める。
【0040】
S102で、省トナー処理部406は、第2の色変換部102において、色変換テーブルを参照して、1画素分の階調値R,G,BをCMYK色空間の階調値C,M,Y,Kに変換する。この色変換テーブルは、RGB色空間で表される色を表現可能なCMYK色空間の階調値を決定するために使用されるテーブルであり、プリンタ100の色特性に適したテーブルが予め用意されている。次に、S103で、省トナー処理部406は、制御情報に含まれる省トナー処理の許可及び不許可に関する設定を参照して、省トナー処理が許可されているか否かを判定する。ここで、省トナー処理部406は、省トナー処理が許可されていないと判定した場合、S104へ処理を進め、省トナー処理を施していない1画素分の階調値C,M,Y,Kをそのまま階調変換部106から出力する。その後、省トナー処理部406は、処理をS112へ進める。一方で、省トナー処理部406は、S103で、省トナー処理が許可されていると判定した場合、S105及びS106へ処理を進める。
【0041】
S105で、省トナー処理部406は、第1の色変換部101によって、次式を用いて階調値R,G,Bを階調値Kmに変換する。この階調値Kmはグレースケールにした場合の値に相当する。
Km=255−(0.299R+0.587G+0.114B) (1)
ここで、Kmは、値が0の場合には白を表し、値が255の場合には最大階調の黒を表す。また、Kmは、値が1〜254の場合には、その値に応じた中間階調の黒を表す。この階調値Kmはモノクロの階調値であり、Kmで表現される描画データは、モノクロ画像に相当する。即ち、S105では、入力されたカラー画像についての階調値R,G,Bが、当該カラー画像をモノクロ化して画像形成する場合におけるモノクロの階調値Kmに変換される。尚、モノクロの階調値Kmを求める計算式は式(1)に限定されない。例えば、Km=255−(R+G+B)/3といった計算式で求めてもよい。
【0042】
次に、S106及びS107では、各階調値に対応する濃度で各画素を形成する場合に消費されるトナー量が求められる。S106で、省トナー処理部406は、第2のトナー量計算部104によって、階調値‐トナー量テーブルを参照して、階調値C,M,Y,Kをそれぞれ対応するトナー量Ac,Am,Ay,Akに変換する。ここで、図6は、各色についての階調値‐トナー量テーブルの一例を示す。各階調値‐トナー量テーブルは、各色の階調値と、各階調値に対応する濃度で1画素分の画像を形成した場合に消費されるトナー量との関係を示す。図6(a)〜(d)は、それぞれC色、M色、Y色、K色に対応する。図6の対応関係によれば、例えば、C色、M色、Y色、K色の階調値C,M,Y,Kは、601、602、603、604に示すように、それぞれ対応するトナー量Ac,Am,Ay,Akに変換される。
【0043】
また、S107で、省トナー処理部406は、第1のトナー量計算部103によって、K色についての階調値‐トナー量テーブルを参照して、階調値Kmを対応するトナー量Akmに変換する。ここで、階調値Kmは、K色を用いてモノクロ画像を形成する際の階調値に相当する。このため、S107で使用される階調値‐トナー量テーブルは図6(d)に示すテーブルであり、609に示すように、階調値Kmは対応するトナー量Akmに変換される。S107の処理によって、入力されたカラー画像に含まれる複数の画素のうち、S101で順次読み込まれた画素をモノクロ化して形成する場合に消費されるトナー量Akmが求められる。S106及びS107の後、処理がS108へ進む。
【0044】
S108で、省トナー処理部406は、トナー量削減率決定部105によって、次式を用いてトナー量削減率Dを決定する。
D=(Ac+Am+Ay+Ak)/(Akm×S) (2)
ここで、(Ac+Am+Ay+Ak)は省トナー処理前における全色の消費トナー量の総和を表し、(Akm×S)は省トナー処理後の全色の消費トナー量の総和についての目標トナー量(目標値)を表す。また、係数Sは、制御情報に含まれる省トナーパラメータであり、省トナー処理後の総トナー量を調整するための調整率として使用されるパラメータである。本実施形態では、省トナーパラメータSは、カラー画像をモノクロ画像として形成する場合の消費トナー量に対する比率を定める、予め設定された調整率であり、省トナー処理によって低減される消費トナー量を規定するパラメータである。
【0045】
次に、S109で、省トナー処理部406は、階調変換部106によって、決定したトナー量削減率Dを次式に代入することで、省トナー処理後のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'を計算する。
Ac'=Ac/D, Am'=Am/D
Ay'=Ay/D, Ak'=Ak/D (3)
これらの式(2)及び(3)を用いることによって、省トナー処理後における全色の消費トナー量の総和(Ac'+Am'+Ay'+Ak')は、次式のように目標トナー量に等しくなる。
(Ac'+Am'+Ay'+Ak')=(Akm×S) (4)
【0046】
式(4)からわかるように、例えばS=1とした場合、省トナー処理後の階調データを用いて画像形成した場合の消費トナー量は、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成した場合の消費トナー量Akmと等しくなる。また、S=0.8とした場合、省トナー処理後の階調データで画像形成した場合の消費トナー量は、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成した場合の消費トナー量Akmの8割に調整される。このように、省トナーパラメータSを調整することによって、省トナー処理によって低減されるトナー量を調整することができる。また、式(2)及び(3)を用いて省トナー処理後の消費トナー量を決定することによって、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成した場合のトナー量に基づいて、当該カラー画像を画像形成する際に消費されるトナー量を調整することができる。
【0047】
次に、省トナー処理部406は、S110で、階調変換部106によって、階調値‐トナー量テーブルを参照して、省トナー処理後のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'を、対応する階調値C',M',Y',K'に変換する。S110における処理は、各色のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'から、図6の605、606、607、608に示すように対応する階調値C',M',Y',K'を求める処理によって実現される。その後、S111で、省トナー処理部406は、階調変換部106から1画素分の階調値C',M',Y',K'を出力し、処理をS112へ進める。
【0048】
S112で、省トナー処理部406は、1ページ分の画素について、S101〜S111の処理が終了したか否かを判定する。ここで、省トナー処理部406は、1ページの画素について処理が終了していないと判定した場合、S101へ処理を戻す。S101で、省トナー処理部406は、例えば、図5の500において画素501の処理が終了した場合には、主走査方向における次の画素である画素502について、S102以下の処理を実行する。また、画素501及び502を含む1ラインの主走査方向における最後の画素503の階調値の読み込みが終了した場合、副走査方向における次のラインに含まれる最初の画素504の階調値の読み込みが開始される。一方、S112で、省トナー処理部406は、1ページ分の全画素についての処理が終了したと判定した場合(即ち、図5の500においてページ終端の画素505についての処理が終了したと判定した場合)、処理を終了する。
【0049】
省トナー処理の終了後、省トナー処理部406から出力された省トナー処理後の各画素の階調値C',M',Y',K'に基づいて、前述のようにガンマ補正、ハーフトーン処理、PWM処理が実行される。それにより、露光用の画像データ(PWMデータ)が露光装置24Y,24M,24C,24Kに与えられる。露光装置24Y,24M,24C,24Kは、当該画像データに従って、対応する感光体22Y,22M,22C,22Kを露光する。その後の記録媒体への画像形成処理は、前述したとおりである。
【0050】
以上説明したように、第1の実施形態では、入力されたカラー画像をモノクロ画像として形成する場合のトナー量を基準として、カラー画像を形成するために消費されるトナー量を1画素単位で調整する。具体的には、入力されたカラー画像から順次抽出される1画素単位の階調値を用いて1画素単位でトナー量削減率を決定するとともに、決定したトナー量削減率に応じて当該階調値を変更する。このように省トナー処理を1画素単位で実行することによって、1ページ単位で省トナー処理を実行する場合と比較して、画像形成を開始するまでの時間を短くすることができる。また、省トナー処理を1ページ単位で実行する場合のように、1ページ分の階調値を記憶装置に保持しておく必要もなくなる。
【0051】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、トナー量Ac,Am,Ay,Akと、カラー画像をモノクロ化して画像形成する場合に消費されるトナー量Akmとを用いてトナー量削減率Dを決定する。さらに、決定した当該トナー量削減率Dに応じて、カラー画像を形成する際に消費される各色のトナー量を調整する。このように、第1の実施形態では、カラー画像をモノクロ化して形成する場合に消費されるトナー量を基準として、トナー量を調整する。一方で、第1の実施形態の変形例として、トナー量を基準とする代わりに、トナー量に対応するトナー価格を基準として、各色の消費トナー量を調整することも可能である。そこで、第2の実施形態では、入力されたカラー画像をモノクロ化して形成する場合のトナー価格を基準として、カラー画像を形成する際に消費される各色のトナー量を調整することを特徴とする。なお、以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心として説明することによって説明を簡略化する。
【0052】
<省トナー処理部406の構成>
図8を参照して、省トナー処理部406のブロック構成及び省トナー処理部406において実行される省トナー処理について説明する。なお、同図において、図1と同一の動作を実行するブロックについては図1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。図8の省トナー処理部406は、図1の場合と比較して、第1のトナー価格計算部801及び第2のトナー価格計算部802が追加された点と、トナー量削減率決定部803においてトナー量削減率Dの計算に使用されるパラメータとが異なる。本実施形態において、第1のトナー量計算部103による、モノクロの階調値Kmで画像形成を行う場合に消費されるトナー量Akmの計算結果は、第1のトナー価格計算部801へ出力される。一方、第2のトナー量計算部104による、階調値C,M,Y,Kで画像形成を行う場合に消費される各色のトナー量Ac,Am,Ay,Akの計算結果は、第2のトナー価格計算部802及び階調変換部106へ出力される。
【0053】
CPU303において生成され、省トナー処理部406へ入力される制御情報には、使用される色ごとのトナー量とトナー価格との関係を規定したコスト係数テーブルが含まれる。第1及び第2のトナー価格計算部801、802は、当該制御情報からコスト係数テーブルを取り出して、それぞれのコスト計算に使用する。第1のトナー価格計算部801は、コスト係数テーブルを用いて、トナー量Akmのコストとして、当該トナー量に対応するトナー価格Pkmを計算する。第2のトナー価格計算部802は、各色のトナー量Ac,Am,Ay,Akのコストとして、各トナー量に対応するトナー価格Pc,Pm,Py,Pkを計算する。第1及び第2のトナー価格計算部801、802による計算結果は、トナー量削減率決定部803へ出力される。
【0054】
トナー量削減率決定部803は、入力されたトナー価格Pkm,Pc,Pm,Py,Pkと、省トナーパラメータSとを用いて、後述する計算によりトナー量削減率Dを決定するとともに、決定したDを階調変換部106へ出力する。省トナーパラメータSは、第1の実施形態と同様、省トナー処理部406へ入力された制御情報から取り出される。最終的に、階調変換部106は、トナー量削減率Dと、トナー量Akm,Ac,Am,Ay,Akと、制御情報から取り出された階調値‐トナー量テーブルとを用いて、省トナー処理後のC',M',Y',K'階調値を出力する。
【0055】
<省トナー処理の手順>
次に、ASIC308の省トナー処理部406によって実行される上述の省トナー処理の手順について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る省トナー処理の手順を示すフローチャートである。なお、図9では、第1の実施形態(図5)と同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0056】
S101〜S107については、第1の実施形態と同様である。S106及びS107においてトナー量Ac,Am,Ay,Ak及びAkmが求められると、処理がそれぞれS201及びS202へ進む。S201で、省トナー処理部406は、第2のトナー価格計算部802によって、トナー量Ac,Am,Ay,Akに対応するトナー価格を計算する。図10は、当該計算で使用されるコスト係数テーブルの一例である。同図に示すコスト係数テーブルに保持されたコスト係数Qc,Qm,Qy,Qkは、それぞれC色、M色、Y色、K色に関する単位トナー量当たりのトナー価格を表す。第2のトナー価格計算部802は、当該コスト係数テーブルを参照して、次式のように、トナー量Ac,Am,Ay,Akに対して対応するコスト係数を乗算することによって、トナー価格Pc,Pm,Py,Pkを計算する。
Pc=Ac×Qc, Pm=Am×Qm
Py=Ay×Qy, Pk=Ak×Qk (5)
【0057】
一方、S202で、省トナー処理部406は、第1のトナー価格計算部801によって、トナー量Akmに対応するトナー価格を計算する。当該計算において使用されるコスト係数は、次式のようにK色のコスト係数Qkを用いて計算できる。
Pkm=Akm×Qk (6)
S201及びS202において各トナー量に対応するトナー価格Pc,Pm,Py,Pk,Pkmが計算されると、処理がS203へ進む。
【0058】
S203で、省トナー処理部406は、トナー量削減率決定部803によって、次式を用いてトナー量削減率Dを決定する。
D=(Pc+Pm+Py+Pk)/(Pkm×S) (7)
このように、式(7)は、第1の実施形態における式(2)に含まれる各トナー量Ac,Am,Ay,Ak,Akmをトナー価格Pc,Pm,Py,Pk,Pkmに置き換えたものに相当する。式(7)において、(Pc+Pm+Py+Pk)は、省トナー処理前における全色の消費トナー量に対する合計トナー価格を表し、(Pkm×S)は、省トナー処理後の目標トナー価格を表す。また、係数Sは、制御情報に含まれる省トナーパラメータである。本実施形態では省トナー処理後のトナー価格を調整するための調整率として使用されるパラメータである。省トナーパラメータSは、カラー画像をモノクロ画像として形成する場合の消費トナー量のトナー価格に対する比率を定める、予め設定された調整率である。
【0059】
S203においてトナー量削減率Dが決定されると、処理がS109へ進む。S109以下では、第1の実施形態と同様の処理が実行される。即ち、S109では、省トナー処理後のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'が計算される。また、S110では、省トナー処理後のトナー量で画像形成するために、各トナー量に対応する階調値が求められる。このように、式(5)〜(7)及び式(3)を用いた処理により、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成する場合にかかるトナー価格を基準として、当該カラー画像のトナー量を調整することができる。
【0060】
以上説明したように、第2の実施形態では、入力されたカラー画像をモノクロ画像として形成する場合のトナー量に対応するトナー価格を基準として、カラー画像を形成するために消費されるトナー量を1画素単位で調整する。かかる省トナー処理を実行した場合においても、第1の実施形態と同様、1ページ単位で省トナー処理を実行する場合と比較して、画像形成を開始するまでの時間を短くすることができる。また、省トナー処理を1ページ単位で実行する場合のように、1ページ分の階調値を記憶装置に保持しておく必要もなくなる。
【0061】
[第3の実施形態]
第1及び第2の実施形態では、トナー量削減率Dを1画素ごとに決定するとともに、決定したDに基づいてトナー量の調整を1画素ごとに実行する。しかしながら、本発明は、1画素ごとの省トナー処理に限定されず、n画素(nは1以上の整数)を省トナー処理の単位としてトナー量を調整する場合にも適用できる。そこで、第3の実施形態では、一例として、第2の実施形態において説明した省トナー処理を1画素ごとではなくn画素ごとに実行する場合について説明する。
【0062】
本実施形態において、省トナー処理部406の構成は、第2の実施形態における図8と同様である。同図に示す各ブロックは、1画素単位の処理に代えてn画素単位の処理を実行する。以下では、図9を参照して、第2の実施形態において説明したトナー価格に基づくトナー量の調整について、1画素ごとではなくn画素ごとに処理する場合の手順について説明する。
【0063】
省トナー処理部406は、省トナー処理を開始すると、S101で、第1及び第2の色変換部101、102において、描画データからn画素分のRGB階調値を読み込む。即ち、本実施形態では、入力されたカラー画像の画像データから、順次、n画素単位で画素の階調値が抽出される。ここで、図5の510は、描画データのラスタイメージの一例である。第1及び第2の色変換部101、102は、同図に示すように、当該ラスタイメージにおける所定の個数の画素について階調値を読み込む。例えば、n=4の場合、図5の510では、511に含まれる4画素分の階調値が最初に読み込まれる。S102〜S112の処理後、S101では、副走査方向において次の4画素分の階調値として、512に含まれる画素の階調値が読み込まれる。さらに、S101では、副走査方向において1ライン分の階調値(即ち、ライン終端である513までの画素の階調値)の読み込みが終了すると、主走査方向に対して次のラインにおける先頭部分の514に含まれる画素の階調値が読み込まれる。
【0064】
その後、S102〜S111及びS201〜S203では、S101で読み込まれたn画素分の階調値を処理単位として、n画素の各々について、第2の実施形態と同様の処理を実行すればよい。即ち、トナー量Ac,Am,Ay,Ak及びAkm、並びにトナー価格Pc,Pm,Py,Pkを、画素ごとに個別に計算すればよい。ただし、S203におけるトナー量削減率Dは、n画素分のトナー価格Pc,Pm,Py,Pkを用いて、n画素単位で1つの値が計算される。即ち、
D=(Pc+Pm+Py+Pk)/(Pkm×S) (7)
において、各トナー価格Pc,Pm,Py,Pkは、n画素の各々について計算されたトナー価格の色ごとの総和とすればよい。例えば、n=4の場合、4つの画素の各々におけるC色についてのトナー価格をPc1,Pc2,Pc3,Pc4とすると、Pc=Pc1+Pc2+Pc3+Pc4 とすればよい。Pm,Py,PkについてもPcと同様である。Pkmについても、n画素の各々について計算されたトナー価格の総計とすればよい。
【0065】
本実施形態で、Pc+Pm+Py+Pkは、省トナー処理の対象としたn画素について画像形成を行う場合の、省トナー処理前における全色のトナー価格の合計を表す。Pkmは、省トナー処理の対象としたn画素をモノクロ化して画像形成を行った場合の、トナー価格を表す。このように、Pc+Pm+Py+Pk及びPkmは、それぞれn画素分のトナー価格に相当する。また、式(7)において、Pkm×Sは、省トナー処理における、n画素分の目標トナー価格に相当する。
【0066】
例えば、S=1とした場合、省トナー処理後のn画素分の階調データを用いて画像形成した場合のトナー価格は、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成した場合のn画素分のトナー価格と等しくなる。また、S=0.8とした場合、省トナー処理後のn画素分の階調データで画像形成した場合のトナー価格は、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成した場合のn画素分のトナー価格の8割に調整される。このように、n画素単位で処理を行う場合にも、第2の実施形態と同様、省トナーパラメータSの調整により、カラー画像をモノクロ化して画像形成する場合のトナー価格に基づいて、カラー画像を形成する場合のトナー量を調整することができる。
【0067】
その後、S109では、S203で求められたトナー量削減率Dを用いて、n画素の各々について第1の実施形態と同様の処理を実行することによって、省トナー処理後のn画素分の各々のトナー量が計算される。また、S110においても、n画素の各々について第1の実施形態と同様の処理が実行される。最終的に、S104又はS111において、省トナー処理が施されていないn画素分の階調値、又は省トナー処理が施されたn画素分の階調値が階調変換部106から出力される。以上のn画素単位の処理は、S112における判定処理に基づいて、1ページ全体の全ての画素について実行される。
【0068】
以上説明したように、第3の実施形態では、1画素単位ではなく、n個の画素をまとめて(n画素単位で)省トナー処理を実行する。これにより、1ページ分の描画データについて省トナー処理を実行するために必要な処理回数をn分の1に低減することができるため、画像形成のスループットを向上させることができる。
【0069】
なお、描画データからn個の画素を読み込む際の画素の選択は、図5の510のように同一ライン上でn個の画素を選択する場合に限定されない。例えば、図5の520に示すように、複数のラインに含まれるn個の画素を選択してもよい。図5の520の場合、主走査方向へ521、522の順に、複数ラインから4個の画素の階調値が読み込まれる。主走査方向における最後の523に含まれる画素の階調値が読み込まれると、次に524が選択される。図5に520に示す読み込み方によれば、2ライン分の階調値を同時に処理可能である。これは、露光装置24C,24M,24Y,24Kのレーザ発光素子が色ごとに2個ずつ設けられた、同時に2ラインの領域を描画可能な2ビーム構成の露光装置に適する。
【0070】
本実施形態では、第2の実施形態で説明した処理をn画素単位で実行する場合について説明してきたが、第1の実施形態で説明した処理をn画素単位で実行することも同様に可能である。即ち、n画素分について計算したトナー量を用いてトナー量削減率Dを決定するとともに、n画素の各々について、本実施形態と同様に省トナー処理後のトナー量を求めればよい。
【0071】
[第4の実施形態]
第1〜第3の実施形態では、省トナー処理前の階調値C,M,Y,Kと省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'とで、異なる色の階調値間の比率が変化する(即ち、C:M:Y:K≠C':M':Y':K'となる)。これにより、省トナー処理の前後で、形成されるカラー画像の色味が変化する。例えば、省トナー処理において使用される階調値‐トナー量テーブルが図6に示す特性を有する場合に、トナー量削減率D=2であるものとする。この場合、省トナー処理後のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'は、元のトナー量Ac,Am,Ay,Akに対して50%に削減される。一方で、省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'は元の階調値C,M,Y,Kに対してそれぞれ63%,65%,56%,67%となり、省トナー処理によって色ごとに異なる変化が階調値に生じる。これは、階調値とトナー量との関係が非線形であり、かつ、色ごとに特性が異なるためである。図6の例では、省トナー処理後の階調値で形成した画像は、元の画像と比較して、Y色が薄く、K色が濃く形成されるため、省トナー処理によって画像の色味が変化してしまう。第4の実施形態では、省トナー処理によって生じるこのような画像の色味の変化を低減することを狙いとする。具体的には、カラー画像をモノクロ化して形成する場合のトナー価格を基準としてカラー画像のトナー量を調整する場合において、当該調整前のカラー画像の色味を当該調整後においても維持する。
【0072】
<省トナー処理部406の構成>
図11を参照して、本実施形態において省トナー処理部406によって実行される省トナー処理について説明する。なお、同図において、第2の実施形態(図8)と同様の動作を実行するブロックについては図8と同一の参照番号を付してその説明を省略する。階調値削減率決定部1101には、トナー価格計算部801によって計算された、トナー量Akmに対応するトナー価格Pkmと、カラー画像を形成する際の各色のトナー量に対応するトナー価格Pc',Pm',Py',Pk'とが入力される。階調値削減率決定部1101は、カラー画像の各色の階調値を削減する階調値削減率D'(第2削減率)を決定する。階調値削減率決定部1101は、入力されたこれらの情報と、省トナー処理部406に入力された制御情報から取り出される省トナーパラメータS及び階調値‐トナー量テーブルとを用いて、階調値削減率D'を決定する。
【0073】
階調変換部1102は、階調値削減率決定部1101によって決定される階調値削減率D'に応じて、第2の色変換部102から入力される階調値C,M,Y,Kを、省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'に変換(変更)して出力する。第2のトナー量計算部1103は、階調値とトナー量とを対応付けた階調値‐トナー量テーブルを参照して、階調値C',M',Y',K'で画像を形成する場合に消費される各色のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'を計算して出力する。第2のトナー価格計算部1104は、単位トナー量当たりのトナー価格を示すコスト係数を含むコスト係数テーブルを用いて、各色についてトナー量Ac',Am',Ay',Ak'を消費した場合のトナー価格Pc',Pm',Py',Pk'を計算する。計算されたトナー価格Pc',Pm',Py',Pk'は階調値削減率決定部1101にフィードバックされて、階調値削減率D'の決定に用いられる。なお、第2のトナー量計算部1103で使用される階調値‐トナー量テーブル及び第2のトナー価格計算部1104で使用されるコスト係数テーブルは、省トナー処理部406へ入力される制御情報から取り出される。
【0074】
<省トナー処理の手順>
次に、ASIC308の省トナー処理部406によって実行される本実施形態に係る省トナー処理の手順について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、本実施形態に係る省トナー処理の手順を示すフローチャートである。なお、図12では、第2の実施形態(図9)と同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。図12において図9と異なる部分はS401〜S409である。
【0075】
図12に示すように、S202で、省トナー処理部406は、トナー価格計算部801によってカラー画像をモノクロ化して形成した場合のトナー量Akmに対応するトナー価格Pkmを計算すると、処理をS401へ進める。S401で、省トナー処理部406は、階調値削減率決定部1101によって、階調値削減率D'を1以上の任意の値に仮決定し、処理をS402へ進める。S402で、省トナー処理部406は、階調変換部1102によって省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'を次式で計算する。階調値C',M',Y',K'は、階調値削減率D'が1以上の任意の値なので、階調値C、M、Y、Kに対して小さく変更されている。
C'=C/D', M'=M/D',
Y'=Y/D', K'=K/D' (8)
式(8)に示すように、本実施形態における省トナー処理は、省トナー処理前の階調値C,M,Y,Kに対して、階調値削減率D'に応じた係数(1/D')を乗ずることによって実行される。
【0076】
これは、第1〜第3の実施形態における、トナー量削減率Dに基づいてトナー量を調整する省トナー処理と異なる点である。第1〜第3の実施形態では、上述のように、省トナー処理前の階調値C,M,Y,Kと省トナー処理後の階調値C',M',Y',K'とで、色ごとに階調値の比率が変化する(即ち、C:M:Y:K≠C':M':Y':K'となる)。これに対して、式(8)を用いた本実施形態の省トナー処理においては、各色の階調値に対して同一の係数(1/D')を乗じて階調値を調整するため、複数の色に対する階調値間の比率が省トナー処理の前後で維持される。即ち、C:M:Y:K=C':M':Y':K'が常に成立する。これにより、省トナー処理によって、入力カラー画像の色味が変化することを回避できる。
【0077】
S402の後、S403で、省トナー処理部406は、第2のトナー量計算部1103によって、階調値‐トナー量テーブルを参照して、階調値C',M',Y',K'を、対応するトナー量Ac',Am',Ay',Ak'に変換する。ここで、図13は、図6と同様の階調値‐トナー量テーブルを示す。第1〜第3の実施形態では、図6の605〜608のように、各色のトナー量Ac',Am',Ay',Ak'が、対応する階調値C',M',Y',K'へ変換される。これに対して、本実施形態では、図13の1301〜1304のように、各色の階調値C',M',Y',K'が、対応するトナー量Ac',Am',Ay',Ak'へ変換される。
【0078】
次に、S404で、省トナー処理部406は、第2のトナー価格計算部1104によって、コスト係数テーブル(図10)を参照し、かつ、トナー量Ac',Am',Ay',Ak'から対応するトナー価格Pc'、Pm'、Py'、Pk'を次式により計算する。このトナー価格Pc'、Pm'、Py'、Pk'は、仮決定された階調値削減率D'により求められた値という意味で仮変換結果に相当する。
Pc'=Ac'×Qc, Pm'=Am'×Qm
Py'=Ay'×Qy, Pk'=Ak'×Qk (9)
【0079】
S404の計算結果に基づいて、S405で、省トナー処理部406は、階調値削減率決定部1101によって、省トナー処理後の合計トナー価格(Pc'+Pm'+Py'+Pk')が、目標トナー価格に合致するか否かを判定する。当該判定は、次式が成立するか否かによって実行される。
(Pc'+Pm'+Py'+Pk')=(Pkm×S) (10)
ここで、係数Sは、制御情報より取り出した省トナーパラメータであり、省トナー処理後のトナー量を調整するために使用される。また、(Pkm×S)は目標トナー価格である。なお、S405における判定処理では、式(10)における左辺と右辺との差分が厳密に等しくなるか否か判定するのではなく、省トナー処理後のトナー価格と目標トナー価格とがある程度近い値になった場合には、式(10)が成立したものとみなしてもよい。例えば、それらの価格の差分を計算するとともに、閾値判定等により当該差分がある程度の範囲内に収まったと判定された場合に、式(10)が成立したものとみなしてもよい。また、例えば式(10)の左辺(Pc'+Pm'+Py'+Pk')の値が、式(10)の右辺(Pkm×S)を基準に所定範囲内の値になっていれば、式(10)が成立したものとみなしてもよい。
【0080】
例えば、S=1とした場合、式(10)が成立すると、省トナー処理後の階調データを用いて画像形成した場合のトナー価格が、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成する場合のトナー価格Pkmと等しくなり得る。また、S=0.8とした場合、式(10)が成立すると、省トナー処理後の階調データを用いて画像形成した場合のトナー価格が、入力されたカラー画像をモノクロ化して画像形成する場合のトナー価格Pkmの8割に調整され得る。
【0081】
S405で、式(10)が成立すると判定されると、処理がS409へ進む。一方で、一方で、式(10)が成立しないと判定されると、処理がS406へ進む。S406で、省トナー処理部406は、階調値削減率決定部1101によって、(省トナー処理後の合計トナー価格>目標トナー価格)が満たされるか否かを判定する。即ち、
(Pc'+Pm'+Py'+Pk')>(Pkm×S) (11)
が成立するか否かを判定する。当該判定結果に応じて、省トナー処理部406は、省トナー処理後の(合計)トナー価格が目標トナー価格に近づくように、S407及びS408で以下の処理を実行する。
【0082】
ここで、省トナー処理部406は、S406において式(11)が成立する場合、S407で、階調値削減率決定部1101によって、階調値削減率D'を増加させる。一方で、省トナー処理部406は、S406において式(11)が成立しない場合、S408で、階調値削減率決定部1101によって、階調値削減率D'を減少させる。これらの処理によって、省トナー処理後の(合計)トナー価格が増加又は減少して、省トナー処理後のトナー価格が目標トナー価格に近づく。S407及びS408の後、処理がS402へ戻る。その後、省トナー処理部406は、S405において式(10)が成立するまでの間、S402〜S408の処理を繰り返す。
【0083】
S405において、式(10)が成立すると判定されると、階調値削減率決定部1101から階調変換部1102へ、1画素分の階調値の出力を指示するための出力指示信号Pが送信される。これにより、S409で、省トナー処理部406は、1画素分の階調値C',M',Y',K'を省トナー処理後の階調値として階調変換部1102から出力する。
【0084】
このように、本実施形態では、省トナー処理後のトナー価格(Pc'+Pm'+Py'+Pk')が目標トナー価格(Pkm×S)となるように、画像形成の際のトナー量が調整される。さらに、省トナー処理の前後において、異なる色の階調値間の比率が維持されるため、形成される画像において省トナー処理による色味の変化が生じない。
【0085】
以上説明したように、第4の実施形態では、カラー画像をモノクロ画像として形成する際のトナー価格を基準として決定した階調値削減率で、当該カラー画像の階調値を削減すすることによって、カラー画像を形成するためのトナー量を削減する。これにより、第2の実施形態の効果に加えて、更に、省トナー処理によって生じるこのような画像の色味の変化を低減することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、第2及び第3の実施形態のように、トナー価格に基づいてカラー画像のトナー量を調整する手法について説明した。しかしながら、第1の実施形態のようにトナー量を直接的に調整する手法において、本実施形態と同様の処理を適用することが可能である。その場合、図12のフローチャートにおいて、トナー量からトナー価格に換算するためのS202及びS404の処理は不要である。また、(Akm×S)を目標トナー量として、S405で、省トナー処理部405は、仮決定した階調値削減率D’を用いた省トナー処理後の消費トナー量の総和(Ac'+Am'+Ay'+Ak')が、目標トナー量と合致するか否かを判定する。即ち、S405では、次式が成立するか否かが判定される。
(Ac'+Am'+Ay'+Ak')=(Akm×S) (12)
なお、当該判定は、上述の式(10)を用いた場合と同様に、省トナー処理後の消費トナー量の総和と目標トナー量とがある程度近い値になった場合に、式(12)が成立したものとみなしてもよい。
【0087】
S405で、式(12)が成立しないと判定された場合、S406で、省トナー処理部406は、
(Ac'+Am'+Ay'+Ak')>(Akm×S) (13)
が成立するか否かを判定すればよい。当該判定結果に応じて、省トナー処理部406は、省トナー処理後の消費トナー量の総和が目標トナー量に近づくように、S407及びS408で階調値削減率D’を調整する。以上のような変形例によっても、上述の実施形態と同様、省トナー処理の前後における画像の色味の変化を回避することが可能である。
【0088】
[第5の実施形態]
上述の第1〜第4の実施形態において説明した、省トナー処理の許可・不許可に関する設定、及び省トナーパラメータSは、ユーザが任意に設定できると有用である。本実施形態では、これらの設定をユーザが任意に指定可能な画像処理装置について説明する。
【0089】
図14は、ホストPC200上で実行されるプリンタドライバによってホストPC200の表示部に表示される設定画面の一例である。図14(a)に示す設定画面では、印刷に使用される設定のうち、印刷品質に関する設定を行うことができる。項目1401は、印刷に用いるハーフトーンテーブル及び色変換テーブル等の印刷品質に関する設定用の項目である。ユーザは、項目1401において、予め用意された「きれい」又は「標準」を選択するか、あるいはユーザ設定として詳細な設定を入力できる。項目1402は、印刷物の種類(印刷目的)に関する設定用の項目である。ユーザは、項目1402において、表示された選択肢の何れかを選択することによって、印刷物の種類に適したハーフトーンテーブル及び色変換テーブル等を容易に設定できる。
【0090】
項目1410は、省トナーモードに関する設定用の項目であり、本発明に関連する省トナー処理の許可・不許可に関する設定、及びトナー制御パラメータSの設定が可能である。項目1411の「ON」が選択されて印刷操作が実行されると、制御データとして、省トナー処理の許可設定がプリンタ100へ送信される。一方、符号1412の「OFF」が選択されて印刷操作が実行されると、制御データとして、省トナー処理の不許可設定がプリンタ100へ送信される。項目1413は、省トナーパラメータS(%)を設定するための項目である。この省トナーパラメータS(%)は、カラー画像データを所定の色変換方法で色変換し、更に所定単位(例えば色材量)に変換した変換結果から、更にどれだけトナー量を減少或いは増加させるかを設定するためのパラメータ(調整値)である。
【0091】
ユーザは、スライダ1414を操作することによって、項目1413に示された省トナーパラメータSの値を増減させることができる。尚、省トナーパラメータSを100%以上にも設定できる。ユーザ印刷操作を実行すると、項目1413に設定された値が、省トナーパラメータSに関する制御データとしてプリンタ100へ送信される。
【0092】
本発明の省トナー処理に関連する設定は、上述のようにホストPC200側で行われてもよいし、プリンタ100において行われてもよい。図14(b)は、プリンタ100上のパネルIF部313の表示パネルに表示される設定画面の一例である。本実施形態において、表示パネルは表面にタッチパネルを備えている。ユーザは、表示パネルに表示された各項目について、当該タッチパネルを押下することによって選択又は設定することができる。なお、表示パネルに設定画面として表示されていないボタン(例えば、操作部に設けられたハードキー等)を用いてユーザによる選択又は設定が行われてもよい。
【0093】
項目1421の「ON」が選択されると、省トナー処理が「許可」に設定される。一方、項目1422の「OFF」が選択されると、省トナー処理が「不許可」に設定される。また、項目1423は、省トナーパラメータS(%)を設定するための項目である。ユーザが項目1424の「↑」を押下すると、項目1423に表示された省トナーパラメータSの値が増加する。一方、ユーザが項目1425の「↓」を押下すると、項目1423に表示された省トナーパラメータSの値が減少する。CPU303は、パネルIF部313において設定された省トナー処理の許可・不許可設定、及び省トナーパラメータSを、制御情報として省トナー処理部406へ送信する。
【0094】
本実施形態では、ホストPC200におけるプリンタドライバによる表示部への表示、又はプリンタ100における表示パネル部による表示を介して、本発明で必要となる省トナー処理の許可・不許可及び省トナーパラメータ等のパラメータを設定することを可能にする。これにより、ユーザが本発明の省トナー処理に関連するパラメータを容易に設定することが可能になる。
【0095】
[第6の実施形態]
上述の第1〜第4の実施形態では、色変換テーブル、階調値‐トナー量テーブル(図6)、コスト係数テーブル(図10)等の、予め用意したテーブル情報を使用して、色変換、階調値からトナー量への変換、トナー量からトナー価格への変換等を行っている。しかしながら、これらの変換処理は、テーブル情報を用いて実行するのではなく、テーブル情報に対応する計算式を予め用意して、当該計算式を用いて実行することも可能である。また、階調値R,G,Bから階調値Kmへの変換処理は、式(1)に例示した計算式を用いて実行しているものの、当該計算式に対応するテーブル情報を予め用意して、当該テーブル情報を用いて実行することも可能である。このように、図7、図9及び図12のフローチャートの各ステップにおける処理に、予め用意したテーブル情報及び計算式の何れを用いるかは、任意に決定することが可能である。
【0096】
また、図7、図9及び図12のフローチャートに従った処理において、複数のステップをまとめて1回の処理で実行するためのテーブル情報又は計算式を用意することも可能である。例えば、図7において、入力カラー画像から抽出された画素のRGB階調値又は対応するCMYK階調値から、予め用意した1つのテーブル情報を使用して、直接的にトナー量削減率Dを決定することも可能である。これは、省トナー処理の対象となるRGB階調値又は対応するCMYK階調値が定まると、S105〜S108の各々における処理結果が、計算式又はテーブル情報によってそれぞれ一意に定まるためである。同様に、S109及びS110の処理も、省トナー処理の対象となるRGB階調値又は対応するCMYK階調値とトナー量削減率Dに応じて一意に定まるため、そのような1つのテーブル情報にまとめることが可能である。その場合、S105〜S110の処理を、予め用意した1つのテーブル情報を使用して実行することが可能である。このため、1つのテーブル情報を使用して、省トナー処理の対象となるRGB階調値又は対応するCMYK階調値から、直接的に、省トナー処理後のCMYK階調値を求めることが可能である。また、図12においても、例えば、S105、S107及びS202の処理を1つのテーブル情報を用いた1回の処理にまとめることが可能である。
【0097】
また、上述の第5の実施形態に対しては、ユーザが指定可能な省トナーパラメータS(%)をいくつか予め用意しておき、各省トナーパラメータSに対応して、上記した計算式やテーブル情報を用いるようにしてもよい。
【0098】
なお、上述の第1〜第4の実施形態では、入力カラー画像から抽出されたn画素単位の階調値を、グレースケールに変換する色変換方法によって、モノクロの階調値に変換している。しかし、これらの実施形態では、そのような色変換方法によらず、任意の色変換方法(例えば、セピア調への色変換)を使用することが可能である。つまり、フルカラー画像データによるカラー画像形成を行う場合に比べて色材消費量が減少する色変換方法であれば適用することが可能である。
【0099】
また、これらの実施形態では、入力カラー画像から抽出されたn画素単位の階調値と、その色変換後の画像の階調値とを、それぞれトナー量又はトナー価格に変換した値を使用して、省トナー処理を行っている。即ち、省トナー処理を行うための階調値の変換として、カラー画像をトナー量に変換したときの重量の単位、又はカラー画像をトナー価格(色材価格)に変換したときの価格の単位への変換を用いている。しかし、省トナー処理を行うための階調値の変換には、トナー量及びトナー価格への変換以外の、任意の所定単位への変換を用いることが可能である。
【0100】
さらに、上述の第1〜第4の実施形態では、省トナーパラメータSに応じてトナー量削減率Dや目標トナー価格(目標トナー量)を定めているが、省トナーパラメータSを用いずに省トナー処理を実行することも可能である。これは、例えば、式(2)及び式(7)においてS=1とした場合、及び、目標トナー価格(目標トナー量)を、Pkm(Akm)に等しくした場合に相当する。また、第4の実施形態に係る目標トナー価格(目標トナー量)は、このように、抽出した画像データを所定の色変換方法で色変換し、更に所定単位に変換したときの変換結果と等しい値としてもよいし、当該変換結果から所定範囲内に含まれる値としてもよい。即ち、当該変換結果に厳密に等しい値を目標トナー価格(目標トナー量)とするのではなく、式(10)を参照して上述したように、ある程度の幅を与えてもよい。このような場合にも、上述の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0101】
[その他の実施形態]
上述の各実施形態において説明した省トナー処理は、ホストPCから描画データを受信する画像形成装置(プリンタ100)に限られず、画像読取装置を備えた複写機においても実行することができよう。その場合、画像形成のための描画データは、画像読取装置において原稿から読み取ることによって得られよう。また、本発明において、階調値−トナー量テーブル、コスト係数テーブル等のテーブルデータは、ROM304に予め格納されている場合に限られず、トナーカートリッジ25Y,25M,25C,25Kが備えるメモリタグに予め格納されていてもよい。あるいは、ホストPC200が予め保持した当該テーブルデータを画像形成装置へ送信してもよい。このような場合にも、画像形成装置において、受信したテーブルデータを用いて本発明の省トナー処理を実行することができよう。更に、印刷品質設定の変更等に応じてガンマ補正テーブル、ハーフトーンテーブル等が変更された場合に、それに合わせて、階調値‐トナー量テーブル及びコスト係数テーブルを自動的に変更する動作が実行されてもよい。
【0102】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたカラー画像の画像データに画像処理を行い出力するカラー画像処理装置であって、
前記画像データから、順次、n画素単位(nは1以上の整数)で画像データを抽出する抽出手段と、
前記抽出された画像データを所定単位に変換したときの変換結果が、前記抽出された前記画像データを所定の色変換方法で色変換し更に前記所定単位に変換した変換結果に基づく量になるように、前記カラー画像の各色の階調値を変更する変更手段と
を備えることを特徴とするカラー画像処理装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記抽出された画像データの各色の階調値を小さく変更し、前記小さくした各色の階調値の画像データを所定単位に変換したときの仮変換結果が、前記抽出された画像データを所定の色変換方法で色変換し、更に所定単位に変換したときの変換結果に従う目標値に合致するか否かを判定する判定手段を備え、
前記変更手段は、前記判定手段によって、前記仮変換結果が前記目標値に合致しないと判定されると、前記仮変換結果が前記目標値に近づくように、前記画像データの各色の階調値を変更することを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理装置。
【請求項3】
前記目標値は、前記抽出された画像データを所定の色変換方法で色変換し、更に所定単位に変換したときの変換結果と等しい値、或いは前記抽出された画像データを所定の色変換方法で色変換し更に所定単位に変換したときの変換結果から所定範囲内に含まれる値であることを特徴とする請求項2に記載のカラー画像処理装置。
【請求項4】
前記目標値は、前記抽出された画像データを所定の色変換方法で色変換し、更に所定単位に変換したときの変換結果を増加又は減少させた調整値であることを特徴とする請求項2又は3に記載のカラー画像処理装置。
【請求項5】
前記調整値を予めユーザの操作に応じて設定するための設定手段を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記所定単位は、カラー画像の画像データを色材量に変換したときの重量の単位、或いはカラー画像の画像データを色材価格に変換したときの価格の単位であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のカラー画像処理装置。
【請求項7】
前記所定の色変換方法は、前記抽出された前記カラー画像の画像データをグレースケールの画像に変換する色変換方法であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のカラー画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、入力されたカラー画像の画像データに画像処理を行い出力するカラー画像処理装置として機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、
前記画像データから、順次、n画素単位(nは1以上の整数)で画像データを抽出する抽出手段と、
前記抽出された画像データを所定単位に変換したときの変換結果が、前記抽出された前記画像データを所定の色変換方法で色変換し更に前記所定単位に変換した変換結果に基づく量になるように、前記カラー画像の各色の階調値を変更する変更手段と
を備えるカラー画像処理装置として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−51221(P2012−51221A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195133(P2010−195133)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】