説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】車両のロールオーバの際における乗員保護性能を向上させることができるカーテンエアバッグ装置を得る。
【解決手段】カーテンエアバッグ装置10は、ドアオープニング22、24の上縁部に折り畳み状態で収納され側面衝突及び車両のロールオーバの際に展開される前側主チャンバ36Fと、ガス供給を受けることで少なくとも車両のロールオーバの際に展開される前側副チャンバ40とを備えている。前側主チャンバ36Fは、側面視で、後端側がセンタピラー15とオーバラップするようにベルトラインBLの上側で車両前後方向に延びる筒状に展開され、前側副チャンバ40は、前側主チャンバ36Fとは側面視でオーバラップしない前方で、下端がベルトラインBLよりも下方に至るように展開される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の着座位置に設けた主膨張部と、主膨張部に縮径部を介して常時連通されると共に乗員の着座位置から外した位置に設けた副膨張部とを備えるカーテンエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、カーテンエアバッグにおいて、乗員の着座位置を除く箇所にベルトラインよりも下方へ延出する第2の展開部を設ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116163号公報
【特許文献2】特開2007−116167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カーテンエアバッグにてロールオーバに対し乗員を保護する場合、該保護に適した展開形状にカーテンエアバッグを展開させることが望まれる。
【0005】
本発明は、車両のロールオーバの際における乗員保護性能を向上させることができるカーテンエアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、車体における乗降用の開口部の上縁部に折り畳み状態で収納され、車両の側面衝突の際及び車両のロールオーバの際にガス供給を受けて膨張し、側面視でピラーとオーバラップするようにベルトラインの上側で車両前後方向に延びる筒状に展開される第1の展開部と、ガス供給を受けることで、少なくとも車両のロールオーバの際に、前記第1の展開部とは側面視でオーバラップしない位置で、下端が前記ベルトラインよりも下方に至るように展開される第2の展開部と、を備えている。
【0007】
請求項1記載のカーテンエアバッグ装置では、車両の側面衝突の際には、第1の展開部がガス供給を受けて展開され、該第1の展開部により乗員の頭部が側面衝突に対し保護される。一方、車両のロールオーバの際には、第1の展開部及び第2の展開部が展開され、該第1及び第2の展開部にて車両前後方向の広い範囲に亘って、乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限することができる。すなわち、乗員頭部が保護される。
【0008】
ここで、本カーテンエアバッグ装置では、ロールオーバの際に乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限するための反力が、第2の展開部においてはサイドドア(ベルトラインの下側部分)にて支持され、第1の展開部においてはピラーによって支持される。第1の展開部は車両前後方向に延びる筒状を成すため、ピラーとの干渉によって上記反力が効果的に支持され、乗員頭部の保護性能が向上する。
【0009】
このように、請求項1記載のカーテンエアバッグ装置では、車両のロールオーバの際における乗員保護性能を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項1記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、側面視でセンタピラーとオーバラップするように、車両前席の乗員の側方でかつ前記ベルトラインの上側で車両前後方向に延びる筒状に展開される前席用展開部を含んで構成されており、前記第2の展開部は、少なくとも前記前席用展開部に対する前側かつフロントピラーの下側で、車両上下方向に延びる筒状に展開される前側展開部を含んで構成されている。
【0011】
請求項2記載のカーテンエアバッグ装置では、第1の展開部においては、ロールオーバの際に乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限するための反力が、車両前後方向に延びる筒状の前席用展開部の後端側がセンタピラーと干渉しつつ良好に支持される。また、第2の展開部においては、ロールオーバの際に乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限するための反力が、上下方向に延びる筒状の前側展開部においてサイドドアと干渉しつつ良好に支持される。これらにより、前席乗員の頭部の保護性能が向上する。
【0012】
請求項3記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、ロールオーバ試験の複数のインパクタ打撃点のうち最も上側の打撃点を通る車両前後方向に沿った第1の線と、前記複数のインパクタ打撃点のうち最も下側の打撃点を通る車両前後方向に沿った第2の線とで囲まれた領域に、車幅方向の展開厚みを規制するシームが設定されていない。
【0013】
請求項3記載のカーテンエアバッグ装置では、第1の展開部におけるシームが設定されないことで曲率半径が大きい範囲に、換言すれば、展開部の張力が高い範囲にインパクタの打撃点が位置することとなる。これにより、第1の展開部によって乗員の頭部をロールオーバに対し良好に保護することができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項3記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線とで囲まれた領域に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が位置するように展開される構成とされている。
【0015】
請求項4記載のカーテンエアバッグ装置では、第1の展開部における基布の曲率半径の大きい範囲、すなわち張力が高い範囲にインパクタの打撃点が位置することとなる。これにより、第1の展開部によって乗員の頭部をロールオーバに対し良好に保護することができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項3記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線との中間を通る車両前後方向に沿った第3の線に対する上下方向に±50mmの範囲内に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が位置するように展開される構成とされている。
【0017】
請求項5記載のカーテンエアバッグ装置では、第1の展開部における基布の曲率半径の大きい範囲、すなわち張力が高い範囲にインパクタの打撃点が位置することとなる。これにより、第1の展開部によって乗員の頭部をロールオーバに対し良好に保護することができる。
【0018】
請求項6記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項3記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線との中間を通る車両前後方向に第3の線に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が一致するように展開される構成とされている。
【0019】
請求項6記載のカーテンエアバッグ装置では第1の展開部における基布の曲率半径の大きい範囲、すなわち張力が高い範囲にインパクタの打撃点が位置することとなる。これにより、第1の展開部によって乗員の頭部をロールオーバに対し良好に保護することができる。
【0020】
請求項7記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項1〜6の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置において、ガス発生手段と、前記第1の展開部に対する車両上方で前記開口部の上縁部に沿って展開され、前記ガス発生手段から前記第1の展開部及び前記第2の展開部に供給されるガスが流れるガス流路と、をさらに備え、前記第1の展開部は、前記ガス流路からガスが流入する部分に対する車両前後方向の両側に設定されたシームによって、該ガス流路と区画されている。
【0021】
請求項7記載のカーテンエアバッグ装置では、ガス発生手段が発生したガスは、ガス流路を通じて、第2の展開部、ガス流路の下方に配置された第1の展開部に供給される。ここで、ガス流路からのガス供給部に対する前後両側でシームによってガス流路と区画された第1の展開部は、前後方向に略一様な断面形状とされる。これにより、第1の展開部における前後方向の各部において良好な乗員頭部の保護性能が得られる。特に、請求項3〜6を引用する構成では、シームの範囲が最上及び最下のインパクタ打点を通る第1の線及び第2の線で囲まれた範囲の外側に位置する。このため、上記した前後方向に略一様な断面形状となることによる作用効果と、請求項3〜6の構成による作用効果との両立が図られる。
【0022】
請求項8記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項2、及び請求項2を引用する請求項3〜請求項7の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置において、ガス発生手段と、前記開口部の上縁部に沿って展開され、前記ガス発生手段から前記第1の展開部及び前記第2の展開部に供給されるガスが流れるガス流路と、をさらに備え、前記第2の展開部の前記前側展開部は、前記ガス流路及び絞り流路を通じてガスが供給されることで、前記第1の展開部の前記前席用展開部に対し遅れて展開される遅れ展開部を含んで構成されている。
【0023】
請求項8記載のカーテンエアバッグ装置では、ガス流路及び絞り流路を通じてガスが供給される第2の展開部における前側展開部の少なくとも一部を成す遅れ展開部は、第1の展開部に対し遅れて展開される。これにより、遅れ展開部の容量に応じて第1の展開部の展開完了を早めることができる。一方、ロールオーバの検知又は側突発生から前席乗員頭部の保護開始までの時間が長いロールオーバに対しては、遅れ展開部により前席乗員の頭部が良好に保護される。
【0024】
請求項9記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項8記載のカーテンエアバッグ装置において、前記遅れ展開部は、側面視でフロントピラーにオーバラップして車両上下方向に延びる筒状に展開される構成とされている。
【0025】
請求項9記載のカーテンエアバッグ装置では、遅れ展開部がサイドドア及びフロントピラーに干渉して、乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限するための反力が良好に支持される。これにより、ロールオーバの際に前席乗員の頭部を一層良好に保護することができる。
【0026】
請求項10記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項8又は請求項9記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第1の展開部は、車両後席の乗員の側方で展開される後席用展開部を含んで構成されており、前記第2の展開部は、前記後席用展開部と前記センタピラーとの間で展開される後側展開部を含んで構成されており、前記後側展開部は、前記後席用展開部から絞り流路を通じてガスが供給されることで、該後席用展開部に対し遅れて展開される後側遅れ展開部を含んで構成されている。
【0027】
請求項10記載のカーテンエアバッグ装置では、後席乗員は、側面衝突に対しては第1の展開部を構成する後席用展開部にて保護され、ロールオーバに対しては後席用展開部及び第2の展開部を構成する後側展開部にて保護される。ここで、絞り流路を通じてガスが供給される第2の展開部における後側展開部の少なくとも一部を成す後側遅れ展開部は、第1の展開部に対し遅れて展開される。これにより、後側遅れ展開部の容量に応じて第1の展開部(後席用展開部)の展開完了を早めることに寄与する。一方、ロールオーバの検知又は側突発生から後席乗員頭部の保護開始までの時間が長いロールオーバに対しては、後側遅れ展開部により後席乗員の頭部が良好に保護される。
【0028】
請求項11記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項10記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第2の展開部の前記遅れ展開部及び後側遅れ展開部の容量と、該遅れ展開部及び後側遅れ展開部以外の部分の容量との比が1:4〜1:5に設定されている。
【0029】
請求項11記載のカーテンエアバッグ装置では、前後の遅れ展開部の容量とカーテンエアバッグにおける他の部分の容量との比が1:4〜1:5であるため、遅れて展開された前後の遅れ展開部の内圧をロールオーバの際に要求される内圧以上の圧力にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明に係るカーテンエアバッグ装置は、車両のロールオーバの際における乗員保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の概略全体構成を示す車室内から見た側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置構成する前側主チャンバを拡大して示す拡大側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を構成する前側主チャンバの前後方向との直交断面形状を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を構成する前側副チャンバの前後方向との直交断面形状を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の各部の内圧の時間変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置10について図1〜図5に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印IN、矢印OUTは、それぞれカーテンエアバッグ装置10が適用された自動車Sの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向内側、及び外側を示している。以下、単に前後、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0033】
(カーテンエアバッグ装置の全体構成)
図1には、カーテンエアバッグ装置10が適用された自動車Sの車室内から見た側面図が示されている。この図に示される如く、カーテンエアバッグ装置10は、カーテンエアバッグ12を備えている。カーテンエアバッグ12は、車室内側部としてのサイドウインドガラス14、センタピラー(Bピラー)15に沿ってカーテン状に展開するように形成されている。この実施形態では、カーテンエアバッグ12は、前席及び後席の側方に位置する前後のサイドウインドガラス14を覆うように構成されている。
【0034】
図示は省略するが、カーテンエアバッグ12は、例えばロール折り又は蛇腹折りされて長尺状にされた上で、フロントピラー(Aピラー)16からルーフサイド部18に亘ってリヤピラー20の近傍まで収納されており、後述する所定の場合に図1に示される如く前後のサイドウインドガラス14、センタピラー15に沿って展開して前席、後席の乗員の頭部を保護するようになっている。なお、この実施形態におけるルーフサイド部18は、該ルーフサイド部18とフロントピラー16とセンタピラー15とリヤピラー20とで囲まれた乗降用の開口部としての前後のドアオープニング22、24の上縁を成している。カーテンエアバッグ12は、ルーフサイド部18を成すルーフサイドレールとルーフヘッドライニングとの間に収容されている。
【0035】
また、カーテンエアバッグ装置10は、カーテンエアバッグ12内にガスを供給するためのガス発生手段としてのインフレータ25を備えている。インフレータ25は、燃焼式又はコールドガス式のものが採用され、作動されることで発生したガスをカーテンエアバッグ12内に供給するようになっている。インフレータ25のガス噴出口は、カーテンエアバッグ12の内部と連通されている。この実施形態では、インフレータ25はルーフサイド部18に配設されている。カーテンエアバッグ12の展開形状及びインフレータ25の配置については、後述する。
【0036】
以上説明したカーテンエアバッグ12、インフレータ25は、自動車Sの車幅方向両側にそれぞれ設けられている。すなわち、カーテンエアバッグ装置10は、左右一対のカーテンエアバッグ12、インフレータ25を備えて構成されている。さらに、カーテンエアバッグ装置10は、図1に示される如く、側突センサ30及びロールオーバセンサ32のそれぞれと電気的に接続されたエアバッグECU34を備えている。側突センサ30は、自動車Sの側面衝突(の不可避)を予測又は検出してエアバッグECU34に側突検出信号を出力するように構成されている。ロールオーバセンサ32は、自動車Sのロールオーバ(の不可避)を予測又は検出してエアバッグECU34にロールオーバ検出信号(以下、R/O検出信号という)を出力するように構成されている。
【0037】
エアバッグECU34は、左右のインフレータ25にそれぞれ電気的に接続されており(図1では、一方のインフレータ25との接続のみを示している)、側突検出信号が入力されると、側面衝突側(ニアサイド)のインフレータ25を作動する構成とされている。したがって、自動車Sに側面衝突が生じると、ニアサイドのカーテンエアバッグ12がガス供給を受けて膨張し、展開されるようになっている。また、エアバッグECU34は、R/O検出信号が入力されると、車幅方向両側のインフレータ25を作動する構成とされている。なお、エアバッグECU34は、側面衝突後にR/O検出信号が入力されると、すでに作動されている側面衝突側とは反対側のインフレータ25を作動するようになっている。
【0038】
以下、カーテンエアバッグ12の具体的な構成を説明する。なお、特に断りのない場合、カーテンエアバッグ12の膨張、展開状態の構成(形状)を説明するものとする。図1に示される如く、カーテンエアバッグ12は、第1の展開部としての主チャンバ36と、主チャンバ36に連通された前側副チャンバ40と、主チャンバ36に連通された後側副チャンバ42とを備えている。この実施形態では、前側副チャンバ40及び後側副チャンバ42が第2の展開部に相当する。
【0039】
主チャンバ36は、側面衝突に対する頭部保護エリア(図1に示す領域B参照)で膨張、展開されるようになっている。より具体的には、主チャンバ36は、前席用の側面衝突に対する頭部保護エリアBfを含んで膨張展開される前席用展開部としての前側主チャンバ36Fと、後席用の側面衝突に対する頭部保護エリアBrを含んで膨張展開される後席用展開部としての後側主チャンバ36Rと、ルーフサイド部18に沿ってこれら前側主チャンバ36Fと前側主チャンバ36Fとを連通するガス流路としてのガス供給通路36Cとを含んで構成されている。
【0040】
インフレータ25は、ガス供給通路36Cの略中央部からガスを供給するように設けられている。すなわち、カーテンエアバッグ12の前部である前側主チャンバ36Fと後部である後側主チャンバ36Rとの間にインフレータ25が配置されている。なお、インフレータ25は、センタピラー15やリヤピラー20(CピラーやDピラー)に配設されても良い。
【0041】
前側副チャンバ40は、前側主チャンバ36Fの前方で展開されてカーテンエアバッグ12の前端部分を構成し、ロールオーバの際に前席乗員の頭部を前席の前側で保護するようになっている。前側副チャンバ40は、側面視で、その上端側がフロントピラー16にオーバラップされると共に、その下端側がベルトラインBL下方に位置してサイドドアとしてのフロントサイドドア26の前部にオーバラップされる構成である。
【0042】
この実施形態では、前側副チャンバ40は、その上部において、カーテンエアバッグ12の絞り流路38を介して、ルーフサイド部18に沿って展開されるガス供給通路36Cの前端に連通されている。正面断面視である図4に示される如く、前側副チャンバ40は、上下方向に中心軸を有する(縦長の)略筒状に展開されるようになっている。
【0043】
ここで、図1及び図2に細い実線にて示す領域Aは、ロールオーバ試験(FMVSS226規格)での前席において乗員頭部に相当するインパクタI(図4参照)を当てる試験ポイント(インパクタ打撃点又は打点)を表している。カーテンエアバッグ12では、前側副チャンバ40により、上記ロールオーバ試験における最も前の試験ポイントがカバーされている。なお、上記ロールオーバ試験における前席乗員に対する他の試験ポイントは、前側主チャンバ36Fにてカバーされている。
【0044】
後側副チャンバ42は、後側主チャンバ36Rの前方で展開されて、該後側主チャンバ36Rと前側主チャンバ36Fの間の部分を構成する。この実施形態では、後側副チャンバ42は、その下端側の一部において、ガス通路44を介して、後側主チャンバ36Rの前下部に連通されている。また、この実施形態における後側副チャンバ42の前端は、前側主チャンバ36Fの後端部とは後述するシーム64にて区画されている。
【0045】
さらに、後側副チャンバ42は、その上端側がガス供給通路36Cの下縁部に後述するシーム60を介して連結(接続)されると共に、下端側がリヤサイドドア28にオーバラップして展開されるようになっている。そして、この後側副チャンバ42は、ロールオーバの際に後席乗員の頭部を後席の前側で保護するようになっている。
【0046】
具体的には、図1に細い実線にて示す領域Cは、ロールオーバ試験(FMVSS226規格)での後席においてインパクタIを当てる試験ポイント(打点)を表している。カーテンエアバッグ12では、後側副チャンバ42により、上記ロールオーバ試験での後席における最も前側の試験ポイントがカバーされている。この最も前側の試験ポイントにおいては、上端がガス供給通路36Cに連結された後側副チャンバ42の下端側がリヤサイドドア28に係合(当接)することで、ロールオーバ時に乗員頭部の車幅方向外側への変位を抑制する構成とされている。なお、上記ロールオーバ試験における後席乗員に対する最も後側の試験ポイント(図1では中間の試験ポイントについて図示を省略している)は、後側主チャンバ36R及び後側副チャンバ42にてカバーされている。
【0047】
また、図1に示される如く、カーテンエアバッグ12には、その上縁に沿って複数の取付片46が設けられている。カーテンエアバッグ12の取付片46は、それぞれを貫通したクリップやボルト・ナット等である固定具48によって、車体骨格(フロントピラー16、ルーフサイド部18、リヤピラー20)に固定されている。
【0048】
以上説明したカーテンエアバッグ12の前端すなわち前側副チャンバ40は、側面視略三角形状の支持布(テンションクロス)50を介してフロントピラー16の下部に支持されている。また、カーテンエアバッグ12の後端すなわち後側主チャンバ36Rは、支持 布52を介してリヤピラー20に支持されている。
【0049】
また、カーテンエアバッグ12のうち、少なくとも前側副チャンバ40を構成する基布の表面にはシリコンコート等の織り目シール加工が施されており、内圧が保持されやすい構成とされている。この実施形態では、前側副チャンバ40及び後側副チャンバ42を構成する基布の表面にシリコンコートが施されている。
【0050】
(前側主チャンバの構成)
以上説明したカーテンエアバッグ12を構成する前側主チャンバ36Fは、前後方向に延びる筒状に展開されるようになっている。以下、具体的に説明する。
【0051】
図1及び図2に示される如く、前側主チャンバ36Fは、ルーフサイド部18に沿って延び前側副チャンバ40に至るガス供給通路36Cの下方に配置されている。前側主チャンバ36Fは、その前後方向の略中間部に位置するガス通路54を通じてガス供給通路36Cからガス供給を受ける構成とされている。ガス通路54の前後においては、ガス供給通路36Cと前側主チャンバ36Fとは、シーム56、58にて区画され(仕切られ)ている。
【0052】
後側のシーム56は、ガス供給通路36Cと後側副チャンバ42とを区画するシーム60、後側主チャンバ36Rと後側副チャンバ42を区画するシーム62、後述するディレイチャンバ42Dと一般部42Gとを区画するシーム63、及び後側副チャンバ42と前側主チャンバ36Fとを区画するシーム64に連続している。一方、前側のシーム58は、前側副チャンバ40と前側主チャンバ36Fとを区画するシーム65の上端及びシーム56の前端との間で、これらシーム65、56と離間して配置されている。すなわち、シーム58は、浮島状に形成(配置)されている。
【0053】
以上により、前側主チャンバ36Fは、ガス供給通路36Cすなわちシーム56、58の下方で前後方向に長い筒状に展開される構成とされている。この前側主チャンバ36Fの後端側は、側面視でセンタピラー15にオーバラップするピラーラップ部36FPとされている。
【0054】
ここで、前側主チャンバ36Fは、上記ロールオーバ試験(FMVSS226規格)のインパクタ打点との関係で展開形状が設定されている。この実施形態の車両における前席用のインパクタ打点(領域Aの中心点)を図1及び図2に示される如く打点A1、A2、A3、A4とすると、前側主チャンバ36Fがカバーする打点A2〜A4との関係で、前側主チャンバ36Fの展開形状が設定されている。
【0055】
具体的には、図2に示される如く、打点A2〜A4のうち最も上側に位置する打点A4を通る前後方向(水平方向)に沿った仮想線である第1の線L1と、打点A2〜A4のうち最も下側に位置する打点A2を通る前後方向(水平方向)に沿った仮想線である第2の線L2とを考慮する。後側主チャンバ36Rは、第1の線L1と第2の線L2との間の領域Dにはシームが設定されない構成とされている。
【0056】
また、図3に示される如く、前側主チャンバ36Fは、車両前後方向の各部において、上記の領域D内に車幅方向内側に最も突出する頂点CPが位置するように展開形状が設定されている。この実施形態では、車両前後方向の各部において、第1の線L1と第2の線L2との中間部をこれらと平行に通る仮想線である第3の線L3に対する上下方向に±50mmの領域Eの範囲内に、前側主チャンバ36Fの頂点CPが位置する設定とされている。なお、領域Dと領域Eとは、車種に応じて上下方向の大小関係が入れ替わる場合がある。この実施形態では、前側主チャンバ36Fは、その頂点CPが車両前後方向の各部において第3の線L3に一致する展開形状が設定されている。
【0057】
(ディレイチャンバの構成)
この実施形態におけるカーテンエアバッグ12は、第2の展開部の前側展開部を構成する前側副チャンバ40が遅れ展開部としてのディレイチャンバとして設定されている。すなわち、この実施形態では、第2の展開部の前側展開部の全体が遅れ展開部とされた例が示されている。前側副チャンバ40は、上記した通り、側面視で、その上端側がフロントピラー16にオーバラップされると共に、その下端側がフロントサイドドア26の前部にオーバラップする構成とされている。
【0058】
また、カーテンエアバッグ12は、第2の展開部の後側展開部を構成する後側副チャンバ42の一部が遅れ展開部としてのディレイチャンバ42Dとして設定されている。具体的には、後側副チャンバ42は、後側主チャンバ36R等と共に展開される一般部42Gとディレイチャンバ42Dとで構成されている。すなわち、この実施形態では、第2の展開部の後側展開部の一部が遅れ展開部とされた例が示されている。なお、後述する如くディレイチャンバとディレイチャンバ以外の部分との容量比が定められており、この容量比となるようにディレイチャンバ42Dの有無や容量が設定されるようになっている。したがって、後側副チャンバ42は、ディレイチャンバが設定されない構成としても良く、全体がディレイチャンバである構成としても良い。
【0059】
前側副チャンバ40は、ガス供給通路36C(前側主チャンバ36F)との間に絞り流路38が設定されることで、インフレータ25の作動初期におけるガス流入が制限され、主チャンバ36等に対し遅れて展開されるようになっている。換言すれば、絞り流路38は、前側副チャンバ40が主チャンバ36に対し時間的に遅れて膨張、展開されるように、ガス通路54等に対しガスの流動抵抗(圧力損失)が大きくなる構成とされている。このため本実施形態の構成においては、絞り流路38の内径は40mm〜70mmの範囲内(この実施形態では55mm)とされている。
【0060】
同様にディレイチャンバ42Dは、内径が40〜70mm(この実施形態では55mm)とされた絞り流路66を通じて、後側副チャンバ42の一般部42Gからインフレータ25のガスが供給されることで、主チャンバ36及び一般部42Gに対し遅れて展開されるようになっている。
【0061】
ここで、ディレイチャンバである前側副チャンバ40、ディレイチャンバ42Dを含むカーテンエアバッグ12の展開について、図5を参照しつつ補足する。この図5に示される如く、側突センサ30からの側突信号の入力すなわちインフレータ25が作動された時点t0から略35msec後の時点t1でカーテンエアバッグ12の主チャンバ36及び後側副チャンバ42の一般部42G(以下、主チャンバ36等という場合がある)の展開が完了されるように構成されている。
【0062】
そして、側面衝突の際には、カーテンエアバッグ12の主チャンバ36による乗員の頭部の保護は、時点t0から略100msec後の時点t2までに終了するようになっている。この時点t2から前側副チャンバ40の膨張が実質的に開始される設定(設計上の狙い)とされている。カーテンエアバッグ装置10では、上記の通り絞り流路38、66の内径を40mm〜70mmの範囲内とすることで、時点t0から時点t3後に前側副チャンバ40の膨張が開始される構成(設計)とされている。
【0063】
したがって、カーテンエアバッグ装置10では、側面衝突の際の主チャンバ36による乗員保護の終了後に、前側副チャンバ40、ディレイチャンバ42Dが膨張、展開される構成とされている。なお、自動車Sのロールオーバに対しては、側面衝突に起因するものは時点t0から略1.5sec(時点t4)〜略6sec(時点t5)の間に発生し、また側面衝突に起因しないものはロールオーバセンサ32によるR/O検出信号の出力(すなわちインフレータ25の作動時点である時点t0)から略1.5sec〜略6secの間に、カーテンエアバッグ12による保護が要求される。
【0064】
そして、上記したロールオーバに対する乗員頭部の保護のために、時点t0から時点t5まで間、カーテンエアバッグ12は、その内圧が所要の圧力(例えば25kPa)以上の内圧に保持される構成とされている。また、カーテンエアバッグ12は、側面衝突に対する乗員の保護のために、時点t0から時点t2まで間、主チャンバ36の内圧が別途所要の内圧(例えば40kPa)以上となるように構成されている。このように要求期間に所要の内圧が維持される構成は、ディレイチャンバである前側副チャンバ40の容量及びディレイチャンバ42Dの容量の和の容量Vdと、主チャンバ36等の容量Vgとの容量比の設定によって達成されている。
【0065】
具体的には、カーテンエアバッグ12は、Vd:Vgが1:4〜1:5の範囲内となる設定とされている。換言すれば、カーテンエアバッグ12の総容量Vt(=Vd+Vg)に対するディレイチャンバの容量比Rv(=Vd/Vt)が、1/6以上1/5以下の範囲内となる設定とされている。この実施形態では、Vd:Vg=1:4、すなわち1/6≦Rv≦1/5とされている。
【0066】
この容量比について、図5を参照しつつ以下に説明する。なお、図5は、カーテンエアバッグ12の内圧の時間変化を模式的に示したものであり、実際の内圧変化を示すものではない。
【0067】
上記した通り、側面衝突の際(時点t0〜時点t2)における乗員の頭部保護のためには、主チャンバ36、後側副チャンバ42の一般部42Gの容量Vgに対して例えば40kPa以上のバッグ内圧(P0)が要求される。一方、ロールオーバの際における乗員の頭部保護のためには、カーテンエアバッグ12の総容量に対して例えば25kPa以上のバッグ内圧(P2)が要求される。
【0068】
ここで、図5に示される如く、時点t2から時点t4までの時間経過に伴ってカーテンエアバッグ52の内圧が略20%低下することを考慮すると、該低下前(時点t2)におけるカーテンエアバッグ52の総容量に対する内圧(P1)は、25kPaの125%の31.25kPa以上であることが要求される。また、時点t2ではカーテンエアバッグ12の容量が上記容量Vgから容量Vdの分だけ増すことを考慮すると、
P1 = P0×Vg/(Vg+Vd) = P0×Vg/Vt
となる。
【0069】
したがって、P1=31.25kPa、P0=40kPaとすると、
Vg/Vt = P1/P0 ≒ 0.8
となり、Vt:Vd:Vg≒5:1:4(Vd/Vg≒1/4)となる。また、ロールオーバの際の内圧P1を25kPaよりも若干大きく設定する場合、Vd/Vtは小さくなる。例えばP1=27kPaとする場合、Vt:Vd:Vs≒6:1:5となる。
【0070】
これにより、カーテンエアバッグ装置10では、単一のインフレータ25からのガス供給によって、時点t0〜t2の期間では例えば40kPaで主チャンバ36が展開され、時点t2〜t5の期間では例えば25kPa以上の内圧でカーテンエアバッグ12全体が展開される構成となっている。
【0071】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0072】
上記構成のカーテンエアバッグ装置10では、適用された自動車Sに側面衝突が生じた場合、側突センサ30から側突検出信号を受けたエアバッグECU34は、側面衝突が生じた側のインフレータ25を作動させる(時点t0)。これにより、カーテンエアバッグ12がインフレータ25からガス供給を受けて膨張され、該カーテンエアバッグ12の主チャンバ36、すなわち前側主チャンバ36F、後側主チャンバ36Rが展開される(時点t1)。これにより、側面衝突側の前席乗員は、頭部が前側主チャンバ36Fにて保護され、側面衝突側の後席乗員は頭部が後側主チャンバ36Rにて保護される。この側面衝突に対する保護は、時点t2までに完了する。
【0073】
また、側面衝突に続いて自動車Sにロールオーバが生じた場合には、ロールオーバセンサ32からR/O検出信号を受けたエアバッグECU34は、反側突側のインフレータ25を作動させる。一方、側面衝突とは独立して自動車Sにロールオーバが生じた場合には、ロールオーバセンサ32からR/O検出信号を受けたエアバッグECU34は、左右両側のインフレータ25を作動させる。これらにより、車幅方向の両側でカーテンエアバッグ12が展開され、乗員の頭部がロールオーバに対し保護される(時点t4〜t5)。なお、ディレイチャンバである前側副チャンバ40、ディレイチャンバ42Dは、インフレータ25の作動(時点t0)から時点t3までに展開が完了されている。
【0074】
ロールオーバの際に前席乗員の頭部が前側副チャンバ40にて保護される場合、上端側がフロントピラー16にオーバラップすると共に下端側がフロントサイドドア26にオーバラップする前側副チャンバ40は、上下端をフロントピラー16、フロントサイドドア26に係合(当接)させつつ前席乗員の頭部(インパクタI)の車幅方向外側への変位を抑制する(図4の想像線参照)。
【0075】
ここで、カーテンエアバッグ装置10では、前側主チャンバ36Fが後端側にピラーラップ部36FPを有する前後方向に長い筒状を成しているため、ロールオーバの際に前席乗員の頭部の車幅方向外側への移動を効果的に抑制することができる。すなわち、前席乗員をロールオーバに対し良好に保護することができる。特に、前側主チャンバ36Fは、ガス通路54の前後でシーム56、58によってガス供給通路36Cと区画されているので、前後方向の各部において略一様な断面形状とされている。このため、前側主チャンバ36Fは、前後方向の各部(打点A2〜A4を含む各部)で良好な乗員保護性能を発揮する。
【0076】
そして、前側主チャンバ36Fは、第1の線L1と第2の線L2との間の領域Dにシームが設定されていないので、該領域D内にシームが設定されている比較例と比較して、上下方向に沿った展開高さH(図2、図3参照)が高い。すなわち、カーテンエアバッグ装置10では、比較例と比較して、前側主チャンバ36Fの車室中央側(乗員の頭部が当たる側)の面の曲率半径R(図3参照)が大きい。
【0077】
ここで、前側主チャンバ36Fを構成する基布に作用する張力Tは、曲率半径R及び内圧Pに比例する。すなわち、
T ∝ R × P
とされる。したがって、エアバッグについては、同じ内圧、同じ展開厚みであっても、曲率半径Rが大きいほど基布の張力Tが大きくなる。そして、前側主チャンバ36Fは、基布の張力Tが大きいほどロールオーバに対し乗員の頭部が車幅方向外側に移動されるのを抑制する効果が高い。したがって、カーテンエアバッグ装置10では、上記比較例に対し、前側主チャンバ36Fによるロールオーバに対する前席乗員の頭部保護性能が向上する。
【0078】
しかも、前側主チャンバ36Fの頂点CPは領域D、領域E内で第3の線L3に一致されているので、車幅方向よりも上下方向に大きく展開される前側主チャンバ36Fにおいて曲率半径Rの大きい範囲で乗員の頭部を受けることとなる。このため、カーテンエアバッグ装置10では、前側主チャンバ36Fによってロールオーバに対する前席乗員の頭部保護性能が一層向上する。
【0079】
さらに、前側主チャンバ36Fは、ガス通路54に対する前後でシーム56、シーム58によってガス供給通路36Cと区画されているため、前後方向の各部において略一様な断面形状とされる。このため、前後方向の各部において、上記した高い乗員保護性能が得られる。
【0080】
また、カーテンエアバッグ装置10では、前側副チャンバ40が上下方向に長い筒状を成しているため、該前側副チャンバ40をフロントピラー16及びフロントサイドドア26に係合させつつ、ロールオーバの際に車室前端側(打点A1を含む部分)で前席乗員の車幅方向外向きの移動を効果的に抑制することができる。
【0081】
そして、カーテンエアバッグ装置10では、前側副チャンバ40、後側副チャンバ42のディレイチャンバ42Dがディレイチャンバとされているので、側面衝突の際に主チャンバ36を短時間で膨張、展開させることができる。すなわち、図5に示される如く、ディレイチャンバが設定されていない比較例では、容量Vtのカーテンエアバッグ全体として展開される必要があるので、その展開完了がカーテンエアバッグ12の主チャンバ36(容量Vg)の展開完了時点に対しΔtだけ遅れる。
Δt =(Vt/Vg−1) × t1
【0082】
さらに、図5に示される如く、上記比較例では、側面衝突に対する保護時に内圧P0を得ることができない。これらにより、この比較例では、インフレータ25よりも大容量のインフレータが要求されることとなる。
【0083】
これに対してカーテンエアバッグ装置10では、上記の通り前側副チャンバ40、ディレイチャンバ42Dが設定されているので、相対的に小容量のインフレータ25にて、側突時の前側主チャンバ36Fの所要内圧P0での早期展開完了が果たされる。しかも、前側副チャンバ40及びディレイチャンバ42Dの容量Vdと、主チャンバ36等の容量Vgとの容量比Rvが1:4とされているため、ロールオーバに対する保護の際に要求される所要内圧P2を時点t4〜t5において得ることができる。
【0084】
なお、上記した各実施形態では、カーテンエアバッグ12にディレイチャンバが設定された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えばディレイチャンバが設定されない構成としても良い。この場合、例えば比較的小型の車両においては、前側副チャンバ40を前側主チャンバ36Fと一体的に(1つのチャンバとして)構成することが望ましい。すなわち、打点A1に相当する打点まで前側主チャンバ36Fにてカバーする構成とすることができる。この構成では、打点A1に相当する打点をカバーする部分を考慮して得られる領域D内にシームのない構成とすると共に、該領域D又は該領域Dの中心線である第3の線L3を基準とする領域E内に前側主チャンバ36Fの頂点CPが位置する展開形状とされる。
【0085】
また、上記した実施形態では、後席及びリヤサイドドア28を備えた自動車Sに本発明が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、リヤサイドドア28を備えない2ドア自動車、後席を備えない2座の自動車、3列以上の座席を有する自動車等に本発明を適用することが可能である。
【0086】
さらに、上記した実施形態では、前側副チャンバ40がロール折り等されてフロントピラー16内に収納された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロール折り等された前側副チャンバ40を主チャンバ36の前端側に折り返して該主チャンバ36と共にルーフサイド部18内に収納しても良く、ロール折り等された前側副チャンバ40をルーフ前縁に沿ってルーフ内に配置しても良い。
【0087】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
10 カーテンエアバッグ装置
12 カーテンエアバッグ
15 センタピラー(ピラー)
16 フロントピラー
18 ルーフサイド部
22・24 ドアオープニング(乗降用の開口部)
25 インフレータ(ガス発生手段)
36 主チャンバ(第1の展開部)
36C ガス供給通路(ガス流路)
36F 前側主チャンバ(前席用展開部)
36R 後側主チャンバ(後席用展開部)
38 絞り流路
40 前側副チャンバ(前側展開部、遅れ展開部)
42 後側副チャンバ(後側展開部)
42D ディレイチャンバ(遅れ展開部)
56・58 シーム
66 絞り流路
A2〜A4 打点(第1の展開部のインパクタ打撃点)
BL ベルトライン
I インパクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体における乗降用の開口部の上縁部に折り畳み状態で収納され、車両の側面衝突の際及び車両のロールオーバの際にガス供給を受けて膨張し、側面視でピラーとオーバラップするようにベルトラインの上側で車両前後方向に延びる筒状に展開される第1の展開部と、
ガス供給を受けることで、少なくとも車両のロールオーバの際に、前記第1の展開部とは側面視でオーバラップしない位置で、下端が前記ベルトラインよりも下方に至るように展開される第2の展開部と、
を備えたカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1の展開部は、車両後端側が側面視でセンタピラーとオーバラップするように、車両前席の乗員の側方でかつ前記ベルトラインの上側で車両前後方向に延びる筒状に展開される前席用展開部を含んで構成されており、
前記第2の展開部は、少なくとも前記前席用展開部に対する前側かつフロントピラーの下側で、車両上下方向に延びる筒状に展開される前側展開部を含んで構成されている請求項1記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1の展開部は、ロールオーバ試験の複数のインパクタ打撃点のうち最も上側の打撃点を通る車両前後方向に沿った第1の線と、前記複数のインパクタ打撃点のうち最も下側の打撃点を通る車両前後方向に沿った第2の線とで囲まれた領域に、車幅方向の展開厚みを規制するシームが設定されていない請求項1又は請求項2記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線とで囲まれた領域に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が位置するように展開される構成とされている請求項3記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線との中間を通る車両前後方向に沿った第3の線に対する上下方向に±50mmの範囲内に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が位置するように展開される構成とされている請求項3記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1の展開部は、前記第1の線と第2の線との中間を通る車両前後方向に第3の線に、車両前後方向に直交する断面視で車幅方向内側に最も突出する頂点が一致するように展開される構成とされている請求項3記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
ガス発生手段と、
前記第1の展開部に対する車両上方で前記開口部の上縁部に沿って展開され、前記ガス発生手段から前記第1の展開部及び前記第2の展開部に供給されるガスが流れるガス流路と、
をさらに備え、
前記第1の展開部は、前記ガス流路からガスが流入する部分に対する車両前後方向の両側に設定されたシームによって、該ガス流路と区画されている請求項1〜6の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項8】
ガス発生手段と、
前記開口部の上縁部に沿って展開され、前記ガス発生手段から前記第1の展開部及び前記第2の展開部に供給されるガスが流れるガス流路と、
をさらに備え、
前記第2の展開部の前記前側展開部は、前記ガス流路及び絞り流路を通じてガスが供給されることで、前記第1の展開部の前記前席用展開部に対し遅れて展開される遅れ展開部を含んで構成されている請求項2、及び請求項2を引用する請求項3〜請求項7の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項9】
前記遅れ展開部は、側面視でフロントピラーにオーバラップして車両上下方向に延びる筒状に展開される構成とされている請求項8記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項10】
前記第1の展開部は、車両後席の乗員の側方で展開される後席用展開部を含んで構成されており、
前記第2の展開部は、前記後席用展開部と前記センタピラーとの間で展開される後側展開部を含んで構成されており、
前記後側展開部は、前記後席用展開部から絞り流路を通じてガスが供給されることで、該後席用展開部に対し遅れて展開される後側遅れ展開部を含んで構成されている請求項8又は請求項9記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項11】
前記第2の展開部の前記遅れ展開部及び後側遅れ展開部の容量と、該遅れ展開部及び後側遅れ展開部以外の部分の容量との比が1:4〜1:5に設定されている請求項10記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201312(P2012−201312A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69734(P2011−69734)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】