説明

カードコネクタ

【課題】 内部にメモリチップなどが収納された薄型のカードが装着されるカードコネクタであって、カードを識別する検知機構を狭い領域内に配置できるようにしたカードコネクタを提供する。
【解決手段】 カードが装着される収納空間の側方に検知機構40が設けられている。検知機構40は、上下に動作する可動検知部材41と、この可動検知部材41に装着されたトーションばね42の腕部で形成された弾性可動接点42b,42cを有している。検知板ばね58が対向する位置に識別溝が形成されていないカードが装着されていると、蓋体50が閉鎖姿勢に回動したときに、検知板ばね58がカードの上に乗り上がり、可動検知部材41が上昇した姿勢になる。このとき、弾性可動接点42cが固定接点44から外れ、固定接点43と固定接点44とが非導通となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で薄型のケース内にメモリチップなどの電子回路が収納されたカードが装着されるカードコネクタに係り、特にカードが装着されたときに検知機構を動作させることができるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、またはパーソナルコンピュータなどには、メモリカードと称される小型で薄型の電子機能カードが装着されて使用される。この電子機能カードは、合成樹脂材料で形成された小型で薄型のケース(ハウジングと称されることもある)内に、メモリチップや、メモリコントローラなどとして機能するICチップが収納されている。そして、ケースの裏面に、内部の電子回路に導通する複数の外部接続部が設けられている。
【0003】
この電子機能カードはカードコネクタに装着されて使用され、カードコネクタには、前記電子機能カードに設けられた複数の外部接続部が個別に接触する複数の接続端子が設けられている。
【0004】
前記カードコネクタとしては、筐体本体に開口するスリット状の挿入口へ向けて、電子機能カードをその表面および裏面と平行な向きで差し込むスロットインタイプと、以下の特許文献1および特許文献2などに記載されているように、電子機能カードを開放状態の蓋体に差し込んで、電子機能カードと共に蓋体を筐体本体に向けて閉じることで、電子機能カードを筐体本体に装着する開閉タイプとが知られている。開閉タイプは、スロットインタイプのように、筐体本体の内部にロック機構やカード排出機構を設けることが不要であるため、比較的簡単な構造で安価で且つ小型に構成することが可能である。
【0005】
前記スロットインタイプでは、電子機能カードが筐体本体内の所定位置まで挿入されたときに動作する検知機構が設けられており、同様に開閉タイプにおいても、電子機能カードが装着されて蓋体が閉じたときに動作する検知機構が設けられていることが好ましい。
【0006】
以下の特許文献2に記載された発明では、蓋体に板片が設けられ、電子機能カードが開放姿勢の蓋体の内部に差し込まれると、カードの底面によって前記板片が下向きに押し下げられる。カードを保持した蓋体を筐体本体に向けて回動し、カードが筐体本体に装着された後に、蓋体をスライドして蓋体をロックすると、スライドする蓋体と共に移動する前記板片によって、筐体本体に設けられたスイッチの接点が動作させられる。一方、蓋体に電子機能カードが差し込まれていない状態で、蓋体を閉じてスライドさせたときには、前記板片がスイッチの接点に当たることなく素通りし、接点が動作させられることはない。
【特許文献1】特開2005−302334号公報
【特許文献2】特開2003−86302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に記載されているカードコネクタには、蓋体に差し込まれる電子機能カードの底面に押されて下向きに突出する板片と、この板片によって動作させられる接点が設けられているが、前記板片および接点は、筐体本体にカードが装着されたときに、カードの底面よりも下の領域に配置される。そのため、カードコネクタ全体の厚み寸法を薄くすることが困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載されたカードコネクタでは、筐体本体の底部側に接続端子が設けられ、この接続端子が電子機能カードの底面に設けられた外部接続部と接触する。この外部接続部と前記接続端子とが接触することにより、接続端子から電子機能カードに対して持ち上げ力が作用する。一方、前記板片とこの板片で動作させられている接点も電子機能カードの底面側に位置しているため、この板片および接点からも、カードに持ち上げ力が作用する。
【0009】
このように、蓋体がロックされている状態で、蓋体に保持されている電子機能カードに対して主に持ち上げ力のみが作用するため、カードの厚み寸法が規格内でやや薄いものであるなどの場合に、接続端子と外部接続部との接触が不安定となることがあり、外部振動などが作用したときに、接続端子と外部接続部との接触の確実性が損なわれるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、蓋体が開閉式のものであっても薄型に構成でき、しかもカードが装着されて蓋体がロックされたことを高精度に検知でき、さらにカードが装着されたきにその種別の識別が可能なカードコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部に電子回路を有するとともに裏面に外部接続部が設けられたカードが装着されるカードコネクタにおいて、
筐体本体と前記筐体本体に連結された蓋体とを有し、前記筐体本体には、上方に開口部を有する収納空間が形成されて、前記カードがその裏面を前記収納空間の底部に向けて装着可能とされ、前記蓋体は、前記筐体本体との間に支点を有して前記開口部から離れる開放姿勢と前記開口部を覆う閉鎖姿勢との間で回動可能であり、さらに前記蓋体は、前記閉鎖姿勢から前記支点が動く方向へ移動して前記開口部から離れないようにロックされるロック姿勢に設定可能であり、
前記蓋体は金属板で形成されて、前記蓋体に検知板ばねが一体に形成され、前記筐体本体には、前記収納空間の側方に検知機構が配置されており、
前記蓋体がロック姿勢となったときに、前記検知板ばねは、第1の姿勢または前記収納空間に設けられた前記カードの一部分によって前記第1の姿勢よりも持ち上げられる第2の姿勢のいずれかに設定され、前記検知板ばねが第1の姿勢のときと第2の姿勢のときとで、前記検知機構の検知状態が切換えられることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のカードコネクタでは、検知板ばねが蓋体と一体に形成されていることにより、部品点数を削減でき、蓋体が必要以上に厚くなるのを防止できる。また、筐体本体は、前記収納空間の側方に検知機構が収納されている。検知板ばねが蓋体と一体であり、検知機構がカードの側部でカードの厚さ方向に動作するものであるため、カードコネクタ全体を薄型に構成できる。
【0013】
また、前記検知板ばねによって、収納空間内のカードを上方から押圧させることが可能である。この押圧力によって、カードの裏面に設けられている外部接続部と、筐体本体に設けられている接続端子との接触を安定させることができる。
【0014】
本発明は、前記筐体本体では、前記収納空間に前記カードの側部と対向する内側面が形成されているとともに、前記内側面から側方に窪む機構凹部が形成されており、前記検知機構が前記機構凹部内に設けられているものである。
【0015】
筐体本体では、収納空間と連続する機構凹部内に検知機構を配置しているため、収納空間内に装着されるカードの側部と接近した領域に検知機構を配置できる。よって、カードコネクタの幅寸法を短くでき、さらに、カードの一部で持ち上げられる検知板ばねの変形に応じて、そのすぐに横位置する検知機構を確実に動作させることができる。
【0016】
本発明は、前記検知機構には、前記収納空間内に収納される前記カードの厚み方向へ移動可能な可動検知部材と、前記可動検知部材を前記押圧板ばねに押し付ける付勢部材とが設けられており、前記可動検知部材の上下動作によって接点の接続状態が切換えられるものとして構成できる。
【0017】
また、前記付勢部材は弾性可動接点であり、前記可動検知部材の上下動作によって前記弾性可動接点と前記筐体本体内に固定された固定接点との接続状態が切換えられるものである。このように、付勢部材を弾性可動接点として使用すると、検知機構を構成する部品数をさらに削減することができる。
【0018】
また本発明は、第1の姿勢の前記検知板ばねによって前記可動検知部材が押し下げられているときに、接点が導通し、前記検知板ばねが第2の姿勢になり前記可動検知部材が上昇すると接点の導通が解除されるものが好ましい。
【0019】
上記構成では、筐体本体の収納空間内にカードが装着されていないときに、検知機構の接点が導通状態であり、収納空間にカードが装着され、蓋体がスライド移動してロックされると、検知機構の接点が非導通状態に切換えられる。このように、カードが装着されたときにのみ接点が非導通になると、カードが正常に装着されていないのに検知状態となる誤動作を防止できる確率を高くできる。
【0020】
本発明では、前記筐体本体の前記収納空間の底部には、前記カードに設けられた前記外部接続部と接触する接続端子が設けられている。
【0021】
そして、前記接続端子が前記外部接続部と接触していると認識しているときに、前記検知機構の検知出力に応じて、前記収納空間内に装着された前記カードの種類を識別する制御部が設けられている。
【0022】
例えば、前記収納空間内には、種類の相違するカードが装着可能であり、前記カードに前記検知板ばねに対向する溝が設けられているか否かによって、前記カードの種別が識別される。
【0023】
上記のように、筐体本体に設けられた接続端子の導通状態からカードが正常に装着されたと認識し、その後に検知機構により、カードの種別を認識するようにすると、カードの装着と種類の認識を正確に行なえる確率が高くなる。
【0024】
なお、前記カードの種類とはカードの種別であって、カードの内部回路に供給すべき電圧の違い、すなわち駆動電圧の違い、あるいはカード内に設けられているフラッシュメモリなどのメモリ容量の違いなどである。あるいは、前記カードの種別とは、書き込み禁止や消去禁止のカードと、書き込みや消去を自由にできるカードの区別を意味しているものであってもよい。
【0025】
また、前記接続端子が外部接続部に導通したか否かの検知を行なうことなく、前記検知機構の動作を認識することで、カードが筐体本体に正常に装着されたか否かを検知するものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、カードが正常に装着されて蓋体がロックされたことが検知機構で確実に検知できる。また、蓋体を薄く構成でき、カードコネクタ全体を薄型に構成できる。さらに、検知機構の誤動作も生じにくいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1ないし図3は、カードコネクタ20に第1のカードを装着し蓋体をロック姿勢とするまでの過程を順に示す斜視図、図4ないし図6は、カードコネクタ20に第2のカードを装着し蓋体をロック姿勢とするまでの過程を順に示す斜視図である。図7は、カードコネクタ20の筐体本体を示す斜視図、図8は検知機構の構造を示す部分斜視図である。図9は、第1のカードが装着されたときの検知機構の動作を示す右側面図、図10は、第2のカードが装着されたときの検知機構の動作を示す右側面図である。図11(A)(B)は、蓋体に設けられたロック板ばねの動作を説明するために左側面図である。
【0028】
図12以下には、前記カードコネクタ20に装着されるカードが示されている。図12は第1のカードC1の平面図、図13は第1のカードC1の左側面図、図14は第1のカードC1を斜め下側から示す斜視図である。図15は第2のカードC2の平面図である。
【0029】
(第1のカードの形状)
図12ないし図14に示される第1のカードC1は、いわゆるマルチメディアカードなどのメモリデバイスとして使用されるものである。第1のカードC1は、プラスチック製のケース(ハウジング)1を有しており、このケース1内に、フラッシュメモリなどのメモリチップや、メモリコントローラとして機能するICチップなどが収納されている。
【0030】
図13に示すように、ケース1は、表面1aと裏面1bを有している。表面1aと裏面1bは互いに平行な平面であり、表面1aと裏面1bの間隔が第1のカードC1の厚み寸法Tである。図14に示すように、裏面1bの前方には、複数個(13個)の外部接続部5が露出している。外部接続部5の表面はケース1の裏面1bとほぼ同一面である。
【0031】
ここで、「表面」と「裏面」とは外部接続部5を有する面と有しない面を識別するための便宜上の名称であり、カードコネクタ20に対し、表面1aを上向きにして装着してもよいし、裏面1bを上向きにして装着してもよい。
【0032】
図12ないし図14に示すように、ケース1は前端部1cと、後端部1dを有している。また右側部1eと左側部1fを有している。
【0033】
図13に示すように、前端部1cは、表面1aと垂直な平面であり、表面1aと裏面1bとの角部には前方傾斜面2が形成されている。後端部1dは、表面1aおよび裏面1bに垂直な平面である。右側部1eと左側部1fは、表面1aおよび裏面1bと垂直な平面である。図12に示すように、前端部1cと右側部1eとの境界部および前端部1cと左側部1fとの境界部、すなわち前端部1cの左右両側部には、円筒面の一部である前方コーナー曲面3,3が形成されている。後端部1dと右側部1eとの境界部および後端部1dと左側部1fとの境界部、すなわち後端部1dの左右両側部にも、円筒面の一部である後方コーナー曲面4,4が形成されている。
【0034】
図12に示すように、ケース11を表面1a側から見た平面図では、ケース1の形状は前後に延びる中心線O−Oを介して左右に対称の形状である。
【0035】
ケース1の前方部分では、右側部1eと左側部1fから中心線O−Oに向けて窪む識別溝6,6が形成されている。識別溝6,6は、右側部1eおよび左側部1fと平行で且つ右側部1eおよび左側部1fから中心線O−Oに向けて距離W1だけ内側に位置する内側面6a,6aと、裏面1bと平行な内底面6c,6cとを有している。そして、右側の識別溝6の後端部と右側部1eとの間、および左側の識別溝6の後端部と左側部1fとの間には、それぞれ傾斜部6b,6bが形成されている。傾斜部6b,6bは、後方に向かうにしたがって中心線O−Oから徐々に離れる面であり、傾斜部6b,6bは平面または所定の曲率を有する曲面である。
【0036】
図13に示すように、識別溝6,6は、ケース1の表面1aから裏面1bに向けて窪んでいる。ケース1の表面1aから識別溝6の内底面6cまでの距離、すなわち識別溝6,6の表面1aから裏面1bに向けた深さ寸法t1は、第1のカードC1の全体の厚み寸法Tのほぼ1/2である。また、前記識別溝6,6が表面1aから窪んで形成された結果、それよりも裏面側には、裏面1bと前記内底面6c,6cとで挟まれた部分である薄肉部7,7が形成されている。この薄肉部7,7の厚さ寸法t2も、第1のカードC1の全体の厚み寸法Tのほぼ1/2である。
【0037】
識別溝6,6は、前端部1cの左右両側部にて前方に開放されている。よって、図14に示すように、前端部1cの厚さ寸法は、その中央のほとんどの部分がTであるが、両側部においては、厚さ寸法はt2である。図12に示すように、識別溝6,6の前後の長さ寸法L1は、ケース1の前端部1cから、傾斜部6b,6bの後端部までの距離である。
【0038】
傾斜部6b,6bは、識別溝6,6とケース1の表面1aとの間に段差部を形成しており、この段差部が、第1のカードC1を識別するための識別部として機能している。
【0039】
ケース1の右側部1eと左側部1fでは、識別溝6,6の後端部よりも後方へ距離L2だけ空けた位置に、中間凹部8,8が形成されている。中間凹部8,8の前後方向の長さ寸法L3は、前記識別溝6,6の前後方向の長さ寸法L1よりも短い。
【0040】
中間凹部8,8は、右側部1eおよび左側部1fよりも中心線O−O側に位置し且つ右側部1eおよび左側部1fと平行な内側端8a,8aを有している。右側部1eから内側端8aまでの幅寸法ならびに左側部1fから内側端8aまでの幅寸法W2は、前記識別溝6,6の幅寸法W1とほぼ同じである。
【0041】
中間凹部8,8は前内端8bと後内端8cを有しており、前内端8bと後内端8cとの間の前後の間隔が、中間凹部8,8の長さ寸法L3である。
【0042】
図13と図14に示すように、中間凹部8,8は内底端8d,8dを有しており、この内底端8d,8dは、裏面1bと平行である。表面1aから内底端8d,8dまでの寸法が、中間凹部8,8の深さ寸法t3であり、この深さ寸法t3は、前記識別溝6の深さ寸法t1よりも大きい。
【0043】
図12に示すように、ケース1の後端部1dよりも少し内側には、表面1aから窪む摘み凹部9が形成されている。
【0044】
(第2のカードの形状)
図15は、第2のカードC2を示す図12と同じ平面図である。
【0045】
第2のカードC2はケース11を有しており、このケース11内に、メモリチップやその他のICチップなどが収納されている。
【0046】
第2のカードC2のケース11に形成された識別溝16は、第1のカードC1の識別溝6よりも長いが、これ以外の形状について、第1のカードC1と第2のカードC2は、全てにおいて同じである。すなわち、第2のカードC2のケース11の厚み寸法Tと幅寸法W0および長さ寸法は、第1のカードC1のケース1と同じである。第2のカードC2のケース11に形成されている中間凹部8,8の形状と寸法および位置は、第1のカードC1のケース1と同じである。その他、図15では、第1のカードC1のケース1と同じ部分には同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0047】
図15に示す第2のカードC2では、前方の左右両側に識別溝16,16が形成されている。この識別溝16,16には、中心線O−Oに近づく位置に内側面16aが形成されている。内側面16aの位置、すなわち識別溝16,16の幅寸法W1は、図12に示すケース1の識別溝6,6の幅寸法W1と同じである。またケース11の表面1aから、内底面16cまでの寸法、すなわち識別溝16,16の深さ寸法は、図13に示すケース1の識別溝6,6の深さ寸法t1と同じである。第2のカードC2のケース11には、識別溝6,6よりも裏面側に薄肉部17,17が設けられているが、この薄肉部17,17の幅寸法および厚み寸法も、第1のカードC1の薄肉部7,7の厚さ寸法t2と同じである。
【0048】
ただし、図15に示すケース11の識別溝16,16および薄肉部17,17の長さ寸法L11、すなわち前端部1cから傾斜部16bの後端までの距離L11は、図12に示すケース1の識別溝6,6および薄肉部7,7の長さ寸法L1よりも長い。よって、第2のカードC2では、識別部として機能する段差部である傾斜部16b,16bが、第1のカードC1での傾斜部6b,6bよりも後端部1d側に離れた位置にある。
【0049】
第2のカードC2のケース11に形成されている中間凹部8,8の長さ寸法L3は、ケース1の中間凹部8,8の長さ寸法L3と同じである。また、図15に示す長さ寸法L11+L12は、図12に示す長さ寸法L1+L2と同じである。
【0050】
第2のカードC2のケース11の裏面1bに現れている外部接続部の数および位置ならびに形状は、図14に示す第1のカードC1のケース1の裏面1bに現れている外部接続部5と全く同じである。
【0051】
第1のカードC1と第2のカードC2では、識別溝6,16および薄肉部7,17の長さ寸法L1,L11が相違しているため、カードコネクタ20ではこの相違を検知することで、いずれのカードが装着されたかを認識できる。
【0052】
第1のカードC1と第2のカードC2の仕様の違いは、例えば、駆動電圧の違い、すなわち、電源用の外部接続部を介してケース1,11内の回路に供給すべき電圧の違いである。または、前記仕様の相違は、ケース1,11の内部に収納されているメモリチップのメモリ容量の違いである。あるいは、第1のカードC1と第2のカードC2のいずれか一方は、容量の大きいメモリチップを有して、主にデータの記憶に使用され、他方は、所定のプログラムを内蔵した読み取り専用メモリが内蔵されて、制御プログラムを供給する用途として使用される。
【0053】
図12と図15に示すように、第1のカードC1のケース1と第2のカードC2のケース11は、いずれも中心線O−Oに対して左右対称形状であり、全体の平面形状が長方形である。そのため、ケース1,11の内部のスペースを有効的に広く使用することができ、小型で且つ薄型でありながら、内部のICチップやその他の回路を集積して配置することが可能である。
【0054】
しかも、識別溝6,16と、中間凹部8が、ケース1,11の表面1a側からのみ窪んでいるため、ケースの表裏を見分けやすい。また、識別溝6,16が、左右両側部1e,1fにおいて、前方の領域に形成されているため、ケースの前後も区別しやすい。そのため、カードコネクタ20に向けて誤った向きで挿入されるのを防止しやすい。
【0055】
(カードコネクタの構造)
次に、第1のカードC1と第2のカードC2が共に装着されるカードコネクタ20の構造を説明する。
【0056】
図1および図4に示すように、カードコネクタ20は筐体本体21を有している。筐体本体21は合成樹脂製であり、図7に示すように長方形の枠体形状である。カードコネクタ20および筐体本体21の向きは、Y1方向が前方でY2方向が後方、X1方向が右方向でX2方向が左方向である。
【0057】
図7に示すように、筐体本体21は、前側板22と後側板23および右側板24と左側板25を有し、さらに底板26が一体に形成されている。底板26の前方と後方の2箇所には、底部を上下に貫通する窓部27,28が形成されている。筐体本体21には、前側板22と後側板23および右側板24と左側板25、さらに底板26で囲まれた収納空間30が形成されている。収納空間30は上方に向けて開口する開口部を有している。
【0058】
右側板24と左側板25のX方向での横方向の内幅寸法は、図12に示す第1のカードC1と図15に示す第2のカードC2の幅寸法W0よりもわずかに大きい寸法であり、前側板22と後側板23との間のY方向での縦方向の内幅寸法は、第1のカードC1と第2のカードC2の縦寸法よりもわずかに大きい寸法である。また、底板26の上面から、前側板22と後側板23および右側板24と左側板25の上縁までの内高さ寸法は、第1のカードC1と第2のカードC2の厚さ寸法Tとほぼ同じである。
【0059】
すなわち、筐体本体21に形成された収納空間30の容積は、第1のカードC1と第2のカードC2の体積よりもわずかに大きい程度であり、収納空間30の開口部の形状および大きさは、第1のカードC1と第2のカードC2の平面形状および平面積よりもわずかに大きい程度である。
【0060】
底板26には、複数の接続端子31と複数の引出し端子32が設けられている。個々の接続端子31と引出し端子32は一対一で連続しており、リン青銅板などのばね性を発揮できる金属板の表面に金メッキなどが施されて形成されている。それぞれの接続端子31と引出し端子32は互いに連続した状態で、底板26の内部にインサートされている。
【0061】
接続端子31は、前方の窓部27の内部に向けて延びている。それぞれの接続端子31の先部には上向きに山折りされた接触部31aが形成されている。接続端子31は、接触部31aが底板26の上面のよりも上方に位置するように、やや斜め上方に向けて延びている。また、引出し端子32は、後方の窓部28内に延び、その先の接続部32aは、窓部28からやや下向きに延びている。このカードコネクタ20が、各種電子機器に実装されるときは、個々の引出し端子32の前記接続部32aが、回路基板に形成されたランドパターンに設置され、リフロー工程などによって半田付けされる。
【0062】
図7に示すように、筐体本体21には、右側板24の一部が外側へ一体に突出して形成された収納凸部35が設けられている。筐体本体21の前側板22と後側板23および右側板24と左側板25ならびに底板26は、一定の厚みをする平坦な壁であり、筐体本体21の外形状は、第1のカードC1および第2のカードC2よりもひと回り大きい直方体である。ただし、前記収納凸部35だけが前記直方体から側方へ突出する形状である。
【0063】
収納凸部35の内部には機構凹部36が形成されている。この機構凹部36は、右側板24の内側面24aから右方向(X1方向)へ窪むように形成されている。この機構凹部36内に検知機構40が設けられている。機構凹部36が収納空間30と連続する空間であるため、機構凹部36内に収納されている検知機構40を、収納空間30内に装着されている第1のカードC1または第2のカードC2の右側部1eに接近させた位置に配置できる。また、検知機構40が、右側板24から右側方へ突出する収納凸部35の内部に設けられているため、検知機構40を設けても、筐体本体21の高さ寸法(厚み寸法)が大きくならない。すなわち、筐体本体21の横幅寸法と前後の長さ寸法および高さ寸法は、第1のカードC1および第2のカードC2の寸法よりもわずかに大きいだけであり、これに加えて最小限の大きさの収納凸部35が部分的に突出しているだけである。
【0064】
図8ないし図10には、検知機構40の構造が示されている。検知機構40には可動検知部材41が設けられている。可動検知部材41は、合成樹脂製であり絶縁体である。可動検知部材41には、後方(Y2方向)へ突出する細幅のリブ41aが一体に形成されている。図7に示すように、筐体本体21に設けられた機構凹部36の後方(Y2方向)には、横幅寸法が狭くなったガイド部36aが形成されている。前記リブ41aが前記ガイド部36a内に摺動自在に挿通されて、可動検知部材41の横方向(X方向)でのがたつきが防止されている。
【0065】
図8に示すように、可動検知部材41には右方向(X1方向)へ突出する一対の摺動突起41b,41bが一体に形成されている。図7に示すように、前記収納凸部35には、前後方向(Y方向)に間隔を空けて上下方向に延びる一対の案内長穴35a,35aが形成されており、前記摺動突起41b,41bは、それぞれ前記案内長穴35a,35a内に挿入されている。よって、可動検知部材41は前後方向(Y方向)へ大きくがたつくことなく、上下方向へ移動自在に支持されている。
【0066】
図8に示すように、可動検知部材41には、保持軸部41cが一体に形成されており、この保持軸部41cの外周に、輪状の保持凹部41dが形成されている。可動検知部材41には、トーションばね42が設けられている。トーションばね42は導電性の金属線で形成され、その表面に金などの低抵抗金属層がメッキされている。トーションばね42の巻き部42aは、保持軸部41cの外周の保持凹部41d内に装着されている。トーションばね42のそれぞれの腕部は、弾性可動接点42bと弾性可動接点42cとなっており、弾性可動接点42bの先端と弾性可動接点42cの先端で、トーションばね42を形成する線材がV状に折り曲げられている。
【0067】
筐体本体21に形成されている前記機構凹部36の底面には、一対の固定接点43と固定接点44が設けられている。固定接点43と固定接点44は、金属板であり、その表面には、金などの低抵抗金属層がメッキで形成されている。固定接点43と固定接点44は、機構凹部36の合成樹脂製の底面の内部に埋め込まれており、固定接点43の表面と固定接点44の表面は、機構凹部36の底面と同一面に現れている。そのため、固定接点43および固定接点44と、合成樹脂製の前記底面との間にほとんど段差が現れていない。
【0068】
前記弾性可動接点42b,42cは可動検知部材41を常に上方へ付勢する付勢部材として機能している。図10に示すように、可動接点部材41が下向きに押し下げられているときに、弾性可動接点42bが固定接点43に接触し、弾性可動接点42cが固定接点44に接触して、トーションばね42を介して、固定接点43と固定接点44とが導通させられる。図9に示すように、弾性可動接点42bと弾性可動接点42cの弾性力によって可動検知部材41が持ち上げられると、弾性可動接点42cが固定接点44から離れ、固定接点43と固定接点44とが非導通状態となる。
【0069】
前記可動検知部材41の上面は、後方(Y2方向)の部分が逃げ面45aで、前方(Y1方向)の部分が押圧面45bとなっている。押圧面45bは逃げ面45aよりも上方へ突出している。
【0070】
図1に示すように、筐体本体21には蓋体50が連結されている。蓋体50は、金属板で折り曲げ形成されている。
【0071】
蓋体50には天井板51が設けられている。天井板51が、図2に示す閉鎖姿勢および図3に示すロック姿勢になると、前記筐体本体21の収納空間30の開口部が前記天井板51で覆われる。図9と図10は、天井板51がロック姿勢となった状態を示しているが、カードコネクタ20の高さ寸法(厚さ寸法)は、ほぼ筐体本体21と天井板51とを重ねた寸法である。
【0072】
蓋体50の右側部には、天井板51から直角に折り曲げられた金属板によって右側板52が形成され、蓋体50の左側部には、天井板51から直角に折り曲げられた金属板によって左側板53が形成されている。右側板52からは支持腕部54が一体に延び、左側板53からは支持腕部55が一体に延びている。図1に示すように、支持腕部54の基端部にはX2方向へ突出する支点軸54aが一体に隆起形成されている。また、図11に示すように、支持腕部55の基端部にも同様にX1方向へ突出する支点軸55aが一体に隆起形成されている。
【0073】
図7に示すように、筐体本体21の右側板24の外面には、その後方(Y2方向)部分に、軸支持部38が形成されている。この軸支持部38は右側板24の外面からX1方向へ向けて凸状に形成されており、この軸支持部38には前後方向(Y方向)に延びる支持長穴38aが形成されている。図11に示すように、筐体本体21の左側板25の外面では、前記軸支持部38と対称な位置に軸支持部39が形成されている。この軸支持部39はX2方向へ向けて凸状に形成されており、且つ前後方向に延びる支持長穴39aを有している。
【0074】
前記支持腕部55の基端部に設けられた支点軸54aは、軸支持部38に形成された支持長穴38a内に回動自在で且つ前後方向(Y方向)へ摺動自在に挿入されている。同様に、支持腕部55の基端部に設けられた支点軸55aは、軸支持部39に形成された支持長穴39a内に回動自在で、且つ前後方向へ摺動自在に挿入されている。
【0075】
蓋体50の先部では、右側部と左側部の双方に掛止部56,56が直角に折り曲げられており、それぞれの掛止部56,56には、先方へ突出するフック部56a,56aが一体に設けられている。一方、筐体本体21の右側板24の前方の外面にはロック凸部37が突出し、同様に左側板25の前方の外面にロック凸部37が一体に形成されている。ロック凸部37,37は、右側板24と左側面25の表面から突出する金属板で形成されている。
【0076】
図2と図5に示すように、蓋体50が筐体本体21の収納空間30の開口部を覆う閉鎖姿勢へ回動した後に、蓋体50を前方(Y1方向)へスライドさせると、支点軸54a,55aが支持長穴38a,39a内を前方(Y1方向)へ動いて、図3と図6に示すように、前記フック部56a,56aが、ロック凸部37,37の下側へ入り込んで蓋体50がロック姿勢となる。このロック姿勢で、蓋体50が筐体本体21から離れる方向へ回動しないようにロックされる。
【0077】
図1に示すように、蓋体50の左側部に折り曲げられた左側板53からは前方へ延びるロック板ばね57が一体に形成されており、ロック板ばね57の先部には、X1方向に向けて山形に折られた掛止部57aが形成されている。図7に示すように、筐体本体21の左側板25には、後方(Y2方向)に位置する第1の掛止凹部25aと摺動壁部25bおよび前方(Y1方向)に位置する第2の掛止凹部25cが順番に形成されている。
【0078】
図2と図5に示すように、蓋体50が閉鎖姿勢に閉じられた時点では、図11(A)に示すように、ロック板ばね57の先部に形成された前記掛止部57aが、前記第1の掛止凹部25aの内部に入り込む。閉鎖姿勢の蓋体50を前方へロック姿勢へ向けて移動させる間に、前記掛止部57aが前記摺動壁部25bの外面を摺動し、図11(B)に示すように、蓋体50がロック姿勢になると、掛止部57aが摺動壁部25bを乗り越えて前記第2の掛止凹部25c内に嵌合する。よって、蓋体50は、ロック姿勢において軽くロックされ、ロック姿勢の蓋体50が不用意に基部側であるY2側へ戻るのを防止できる。
【0079】
図1および図8などに示すように、蓋体50の右側部には検知板ばね58が設けられている。この検知板ばね58は、蓋体50を構成する金属板の一部で一体に形成されており、弾性変形可能である。
【0080】
検知板ばね58には、先方に向けて延びる弾性腕部58aと、その先部において筐体本体21に向けて山折りに形成された識別摺動部58bと、この識別摺動部58bの先部に延びる押圧作用部58cとが一体に形成されている。
【0081】
図1および図8などに示すように、外力が作用していないときに、弾性腕部58aは、天井板51と同一平面に形成されて、所定の幅寸法でY1方向へ直線的に延びている。また、前記識別摺動部58bは、天井板51よりも筐体本体21の方向へ突出しており、押圧作用部58cは天井板51とほぼ同一面上に位置している。
【0082】
図2と図5に示すように、蓋体50が閉鎖姿勢に回動したときには、弾性腕部58aと識別摺動部58bが、筐体本体21の収納空間30の真上に対向している。ただし、押圧作用部58cは、弾性腕部58aと識別摺動部58bよりも右方向(X1方向)へ突出しており、押圧作用部58cの一部が、機構凹部36内の可動検知部材41の上に対向できるようになっている。
【0083】
(カードコネクタへのカードの装着動作)
次に、前記カードコネクタ20へのカードの装着動作を説明する。
【0084】
図1ないし図3は、カードコネクタ20に第1のカードC1を装着する際の動作を示している。
【0085】
図1に示すように、蓋体50を筐体本体21に対してほぼ90度の開き角度となる開放姿勢に回動させた状態で、筐体本体21の収納空間30内に第1のカードC1を装着する。第1のカードC1は、その裏面1bが筐体本体21の底板26に向けられ、且つ前端部1cが前側板22に向けられた姿勢で収納空間30内に装着される。第1のカードC1が正常な姿勢で装着されると、第1のカードC1の裏面1bに設けられた複数の外部接続部5の各々が、筐体本体21の収納空間30内に設けられた接続端子31に接触する。
【0086】
ただし、図3に示すように、蓋体50がロック姿勢となるまでは、第1のカードC1に設けられた外部接続部5は、筐体本体21に設けられた接続端子31に確実に押し付けられていないため、外部接続部5と接続端子31の接触状態は不安定である。
【0087】
蓋体50を図1に示す開放姿勢から図2に示す閉鎖姿勢に回動させ、さらに、蓋体50を前方(Y1方向)へスライドさせると、蓋体50に設けられた支点軸54a,55aが筐体本体21に形成された支持長穴38a,39a内を前方(Y1方向)へ移動する。その結果、図3に示すように、蓋体50に設けられたフック部56a,56aが筐体本体21に両側部に設けられたロック凸部37,37の下側に入り込んで、蓋体50が開放しないようにロックされる。このとき図11(B)に示すように、蓋体50の左側部に設けられたロック板ばね57の先部の掛止部57aが、筐体本体21の左側板25に形成された第2の掛止凹部25cと嵌合し、蓋体50が後方(Y2方向)へ容易に移動しないように、すなわち、フック部56a,56aがロック凸部37,37から容易に外れないように軽くロックされる。
【0088】
図1ないし図3に示すように、筐体本体21の収納空間30内に第1のカードC1が正常な向きで装着されていると、第1のカードC1の両側部に形成されている識別溝6,6が、筐体本体21の右側板24と左側板25の内側で上向きに配置される。ただし、第1のカードC1は、識別溝6の長さ寸法L1が短く、識別部の段差部である傾斜部6bが、検知機構40を構成している可動検知部材41よりも前方(Y1側)に位置している。
【0089】
そのために、図2に示すように、蓋体50が閉鎖姿勢まで回動すると、蓋体50に設けられている検知板ばね58の先部の識別摺動部58bが第1のカードC1の表面1aに当たり、検知板ばね58が上向きに変形させられる。検知板ばね58は、上向きに曲げ変形している状態が第2の姿勢である。
【0090】
図3および図9に示すように、閉鎖姿勢の蓋体50をそのまま前方へスライドさせて、ロック姿勢に設定すると、識別摺動部58bが第1のカードC1の表面1aを前方へ摺動し、検知板ばね58は上向きに変形したまま前方へ移動する。そのため、蓋体50を閉鎖姿勢へ回動させたときとロック姿勢へスライドさせたときの双方において、検知板ばね58の先端の押圧作用部58cは、可動検知部材41に当たることはない。
【0091】
よって、第1のカードC1が装着されている状態で、蓋体50を閉鎖姿勢からロック姿勢に移行するまでの間、図9に示すように、可動検知部材41は、弾性可動接点42bと弾性可動接点42cとで持ち上げられ、弾性可動接点42cが固定接点44から外れて、固定接点43と固定接点44とが非導通状態である。
【0092】
電子機器の回路基板には、カードコネクタ20と共にCPUを主体とした制御部が実装されている。この制御部では、次のようにして第1のカードC1が正常に装着されたことを認識する。
【0093】
筐体本体21の収納空間30内へ第1のカードC1が正常な向きで装着されて、蓋体50が図3に示すロック姿勢になると、第1のカードC1の裏面1bに設けられた個々の外部接続部5が、図7に示すように収納空間30の底部に設けられた個々の接続端子31に導通する。この時点で、制御部では、カードが収納空間30内に正常な姿勢で装着されていることを認識する。例えば、この種のカードでは、複数の外部接続部5のいずれかが内部回路において互いに短絡しているのが一般的である。よって、制御部では、所定の接続端子31どうしが互いに短絡したことを検知することで、カードが正常に装着されていると判断できる。
【0094】
カードが正常に装着されたと判断したときに、検知機構40に設けられた固定接点43と固定接点44とが短絡したか否かを確認し、短絡していないときに、装着されているのが第1のカードC1であると判断する。
【0095】
図3および図9に示すように、第1のカードC1が装着されて蓋体50がロック姿勢に移動したときには、蓋体50に設けられた検知板ばね58の識別摺動部58bによって第1のカードC1の表面1aが収納空間30の底部に向けて押し付けられている。よって、第1のカードC1の裏面1bに設けられた外部接続部5と筐体本体21に設けられた接続端子31との接続が確実になり、外部振動などが作用しても導通状態を常に維持できる。
【0096】
なお、このカードコネクタ20の収納空間30にカードが装着されていないときには、蓋体50がロック姿勢にスライドしても、検知板ばね58に外力が作用せず、弾性腕部58aが天井板51と同一面上に位置している。このように、検知板ばね58は、上方へ変形していないときが第1の姿勢である。このとき、検知板ばね58の先部の押圧作用部58cが可動検知部材41の押圧面45bの上に乗り上がる。図8に示す弾性可動接点42b,42cが可動検知部材41を押し上げようとする力よりも、検知板ばね58の押圧作用部58cが押圧面45bを押し下げようとする力の方が大きいため、蓋体50がスライドしてロック姿勢になったときに、可動検知部材41が押し下げられる。図10にも示すように、可動検知部材41が押し下げられると、弾性可動接点42bが固定接点43に接触し、弾性可動接点42cが固定接点44に接触して、トーションばね42によって固定接点43と固定接点44とが導通される。
【0097】
前記検知機構40では、カードが装着されていないときは、常に固定接点43と固定接点44とが導通状態で、第1のカードC1が正常な姿勢で装着され、蓋体50がロック姿勢になると、図9に示すように固定接点43と固定接点44とが非導通状態となる。このように、カードが装着されていないときに固定接点を導通状態にしておくと、第1のカードC1が装着されたことを誤認識する確率を低くできる。例えば、逆の場合であって、カードが装着されてないときに固定接点43と固定接点44とが非導通状態であり、第1のカードC1が正常に装着されたときに固定接点43と固定接点44とが導通状態になる構造であると、カードが装着されていないときに、金属片などが固定接点43と固定接点44との間に介在したときに、第1のカードC1が装着されていないのにもかかわらず、装着状態であると誤認識するおそれがある。
【0098】
次に、図4ないし図6に示すように、第2のカードC2の装着手順は、第1のカードC1の装着手順と同じである。
【0099】
ただし、図15に示すように、第2のカードC2に形成されている識別溝16の長さ寸法L11は、図12に示す第1のカードC1の識別溝6の長さ寸法L1よりも長い。よって、図4に示すように、第2のカードC2が筐体本体21の収納空間30内へ正常な姿勢で装着されたときに、識別溝16の後端部に位置する識別部として機能する傾斜部16bが、検知機構40よりも後方(Y2方向)に位置している。そのため、図5に示すように、蓋体50を閉鎖姿勢に回動させると、蓋体50に設けられている検知板ばね58の識別摺動部58bが、識別溝16の内部に入り込み、検知板ばね58は変形しない。
【0100】
このとき、検知板ばね58は第1の姿勢であり、弾性腕部58aは天井板51と同一面上に位置している。
【0101】
蓋体50が閉鎖姿勢に回動すると、検知板ばね58の先端部の押圧作用部58cが可動検知部材41の逃げ面45aに対向する。ただし、逃げ面45aは押圧面45bよりも一段低い位置にあるため、第1の姿勢の検知板ばね58に設けられた押圧作用部58cが逃げ面45aに対向しても、可動検知部材41が下向きに押し下げられることはなく、あるいは押し下げられたとしてもその下降距離はわずかである。よって、弾性可動接点42cが固定接点44から離れたままであり、固定接点43と固定接点44は非導通状態である。
【0102】
図5に示す閉鎖姿勢の蓋体50を前方へスライドさせて、図6に示すようにロック姿勢に移行すると、検知板ばね58の先部の識別摺動部58bは、識別溝16内を移動する。そして、図10に示すように、検知板ばね58の先端部の押圧作用部58cが可動検知部材41の上面の押圧面45bに乗り上がり、押圧作用部58cによって可動検知部材41が押し下げられる。このとき、弾性可動接点42cが固定接点44に接触し、固定接点43と固定接点44がトーションばね42を介して導通される。
【0103】
前記制御部では、カードの外部接続部5と図7に示す接続端子31とが接続されていることを検知したときに、固定接点43と固定接点44との導通状態を確認し、導通していたら、装着されたのが第2のカードC2であると判断する。
【0104】
以上のように、制御部は、接続端子31の状態と、固定接点43と固定接点44の導通状態を監視することで、第1のカードC1が装填されたか第2のカードC2が装填されたかを判断する。そして、制御部では第1のカードC1と第2のカードC2のそれぞれの仕様に適した制御動作を行う。例えば、第1のカードC1と第2のカードC2とで駆動電圧が相違するときには、各カードに異なる電圧を供給する。また、第1のカードC1と第2のカードC2とでメモリ容量が相違するときには、それぞれのカードのメモリ残量の情報を制御部に取り込んで、その後の記録データ量の調整が行なわれる。
【0105】
(その他の実施の形態)
なお、前記カードコネクタ20での検知機構40を使用した制御は、第1のカードC1と第2のカードC2の種別検知以外に使用することができる。
【0106】
例えば、カードに、検知板ばね58の識別摺動部58bが入り込む溝が設けられているとともに、この溝を塞ぐ切換え部材が設けられていてもよい。この場合、前記溝に識別摺動部58bが入り込んで、可動検知部材41が押し下げられるか、または前記溝を塞ぐ切換え部材に識別摺動部58bが乗り上がって可動検知部材41が持ち上がった状態になるか否かで、溝が塞がれているか否かを検知できる。例えば、溝が塞がれていないカードは書き込みや記録情報の消去が自由であり、溝が塞がれているカードは書き込みや消去が禁止されたものである。このように、検知機構40を使用して、書き込みや消去を禁止しているカードであるか否かを識別できる。
【0107】
また、前記実施の形態では、筐体本体21に設けられた接続端子31がカードの外部接続部5に接触したことを検知することで、カードが装着されたか否かを確認しているが、接続端子31と外部接続部5との接触で検知するのではなく、検知機構40を使用して、カードが装着されてか否かを判断することも可能である。
【0108】
例えば、図9に示すように、筐体本体21にカードが装着され、検知板ばね58の識別摺動部58bがカードの上に乗り上がって、可動検知部材41が持ち上げられたら、カードが装着されたと判断し、蓋体50をロック姿勢としたときに可動検知部材41が下降していれば、カードが装着されていないと判断してもよい。
【0109】
また、前記検知機構40を、蓋体50がロック姿勢に設定されたか否かを検知するためにのみ用いてもよい。この場合に使用されるカードは、第2のカードC2のように、識別摺動部58bと対向する場所に溝が形成されている。蓋体50が閉鎖姿勢へ回動した時点では、検知板ばね58の識別摺動部58bが前記溝内に入り込んでも、押圧作用部58cが可動検知部材41の逃げ面45に対向するために、可動検知部材41が押し下げられることはない。しかし、その後、蓋体50を前方へスライドさせてロック姿勢とすると、図10に示したのと同様に、押圧作用部58cが可動検知部材41の押圧面45bの上に乗り上がり、可動検知部材41が押し下げられる。よって、固定接点43と固定接点44とが導通状態になった時点で、蓋体50がロック姿勢に至ったと判断できる。
【0110】
また、前記実施の形態では、機構凹部36の内部で可動検知部材41が上下に平行な姿勢で上下動するが、この可動検知部材のY2側の端部に支点が設けられ、可動検知部材がこの支点を中心として上下に回動するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態のカードコネクタに第1のカードを装着している状態を示す斜視図、
【図2】カードコネクタに第1のカードを装着し、蓋体を閉鎖姿勢としたときの斜視図、
【図3】カードコネクタに第1のカードを装着し、蓋体をロック姿勢としたときの斜視図、
【図4】本発明の実施の形態のカードコネクタに第2のカードを装着している状態を示す斜視図、
【図5】カードコネクタに第2のカードを装着し、蓋体を閉鎖姿勢としたときの斜視図、
【図6】カードコネクタに第2のカードを装着し、蓋体をロック姿勢としたときの斜視図、
【図7】筐体本体の斜視図、
【図8】検知機構の構造を示す拡大斜視図、
【図9】第1のカードが装着されたときの検知機構の動作を示す右側面図、
【図10】第2のカードが装着されたときの検知機構の動作を示す右側面図、
【図11】(A)(B)は、蓋体が閉鎖姿勢からロック姿勢へスライドするときのロック板ばねの動作を示す左側面図、
【図12】第1のカードの平面図、
【図13】第1のカードの左側面図、
【図14】第1のカードを下から見た斜視図、
【図15】第2のカードの平面図、
【符号の説明】
【0112】
C1 第1のカード
C2 第2のカード
1,11 ケース
1a 表面
1b 裏面
1c 前端部
1d 後端部
1e 右側部
1f 左側部
5 外部接続部
6,16 識別溝
6b,16b 傾斜部(識別部、段差部)
7,17 薄肉部
8 中間凹部
20 カードコネクタ
21 筐体本体
22 前側板
23 後側板
24 右側板
24a 内側面
25 左側板
25a,25c 掛止凹部
26 底板
30 収納空間
31 接続端子
36 機構凹部
40 検知機構
41 可動検知部材
42 トーションばね
42b,42c 弾性可動接点
43,44 固定接点
50 蓋体
54a 支点軸
57 ロック板ばね
58 検知板ばね
58a 弾性腕
58b 識別摺動部
58c 押圧作用部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子回路を有するとともに裏面に外部接続部が設けられたカードが装着されるカードコネクタにおいて、
筐体本体と前記筐体本体に連結された蓋体とを有し、前記筐体本体には、上方に開口部を有する収納空間が形成されて、前記カードがその裏面を前記収納空間の底部に向けて装着可能とされ、前記蓋体は、前記筐体本体との間に支点を有して前記開口部から離れる開放姿勢と前記開口部を覆う閉鎖姿勢との間で回動可能であり、さらに前記蓋体は、前記閉鎖姿勢から前記支点が動く方向へ移動して前記開口部から離れないようにロックされるロック姿勢に設定可能であり、
前記蓋体は金属板で形成されて、前記蓋体に検知板ばねが一体に形成され、前記筐体本体には、前記収納空間の側方に検知機構が配置されており、
前記蓋体がロック姿勢となったときに、前記検知板ばねは、第1の姿勢または前記収納空間に設けられた前記カードの一部分によって前記第1の姿勢よりも持ち上げられる第2の姿勢のいずれかに設定され、前記検知板ばねが第1の姿勢のときと第2の姿勢のときとで、前記検知機構の検知状態が切換えられることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記筐体本体では、前記収納空間に前記カードの側部と対向する内側面が形成されているとともに、前記内側面から側方に窪む機構凹部が形成されており、前記検知機構が前記機構凹部内に設けられている請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記検知機構には、前記収納空間内に収納される前記カードの厚み方向へ移動可能な可動検知部材と、前記可動検知部材を前記押圧板ばねに押し付ける付勢部材とが設けられており、前記可動検知部材の上下動作によって接点の接続状態が切換えられる請求項1または2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記付勢部材は弾性可動接点であり、前記可動検知部材の上下動作によって前記弾性可動接点と前記筐体本体内に固定された固定接点との接続状態が切換えられる請求項3記載のカードコネクタ。
【請求項5】
第1の姿勢の前記検知板ばねによって前記可動検知部材が押し下げられているときに、接点が導通し、前記検知板ばねが第2の姿勢になり前記可動検知部材が上昇すると接点の導通が解除される請求項3または4記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記筐体本体の前記収納空間の底部には、前記カードに設けられた前記外部接続部と接触する接続端子が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記接続端子が前記外部接続部と接触していると認識しているときに、前記検知機構の検知出力に応じて、前記収納空間内に装着された前記カードの種別を識別する制御部が設けられている請求項6記載のカードコネクタ。
【請求項8】
前記収納空間内には、種類の相違するカードが装着可能であり、前記カードに前記検知板ばねに対向する溝が設けられているか否かによって、前記カードの種類が識別される請求項7記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−110709(P2009−110709A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279252(P2007−279252)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】