説明

カードコネクタ

【課題】部品点数が少なく、組立作業が容易で、カム部材が外れにくく、確実なカム係合を可能にしたイジェクト機構を有するカードコネクタを提供する。
【解決手段】カードコネクタのイジェクト機構は、フレーム20に対して移動可能に設けられ、回動アームに係合するプッシュバー50と、フレーム20及びプッシュバー50に形成されたカム構成部70と、フレーム20に対して移動可能に設けられたイジェクトボタン90に回動自在に軸支され、カム構成部70とカム係合するプッシュプレート60と、プッシュプレート60をイジェクトボタン90の押圧方向と逆方向に付勢する弾性部材80とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イジェクト機構を有するカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリカード等のカードをコネクタ内に挿抜するカードコネクタとして、いわゆるポップ−プッシュ作用を可能にしたイジェクト機構を有するカードコネクタが開発されている。このカードコネクタは、カードをコネクタ内に挿入しているとき及びカードをコネクタ内に挿入していないときには、操作部が突出せず、コネクタ内に挿入しているカードを排出するときのみ操作部を突出させる機構を採用している。
【0003】
この種のイジェクト機構を有するカードコネクタとして、例えば、図10及び図11に示すものが知られている(特許文献1参照)。
このカードコネクタ101は、カードCを挿抜可能に案内するフレーム110と、フレーム110の側方に設けられたイジェクト機構120と、挿入されたカードCを排出するイジェクトレバー130とを備えている。イジェクトレバー130は、イジェクト機構120のプッシュロッドからの押圧力を受けて回動し、挿入されたカードCを排出する。
【0004】
ここで、プッシュロッドは、操作者からの押圧力を受ける第1ロッド121と、この押圧力をイジェクトレバー130に伝達する第2ロッド122とを有している。第2ロッド122と対向する第1ロッド121の先端には、ガイド板140に形成されたガイド溝141に係合するカム部材150が設けられる。また、カードCの排出時に第1ロッド121と第2ロッド122とがカム部材150を介して連係するようになっている。
【0005】
このように、カードコネクタ101は、カードCの排出のためのイジェクトレバー130を駆動するプッシュロッドを第1ロッド121と第2ロッド122とで構成している。また、カードコネクタ101は、カム部材150を介して両ロッド121,122を作動せしめることとし、カム部材150が係合するガイド溝141を有するガイド板140を板状に形成している。従って、カードコネクタ101の幅寸法を小さくでき、カードコネクタ101の全体を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−324623号公報
【特許文献2】特開2005−11574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10及び図11に示したカードコネクタ101にあっては、以下の問題点があった。
即ち、カム部材150をカードコネクタ101へ組み付ける組立作業が容易ではない。具体的には、カム部材150のフック部151にばね部材153を引っ掛け、カム部材150の係合部152をガイド板140の内側からガイド溝141に係合させる必要があるため、部品点数が多く組立作業が容易ではない。さらに、カム部材150が揺動するために、カム部材150が第1ロッド121から外れやすく、確実なカム係合がされないことがあった。
【0008】
このようなカム部材を要しないイジェクト機構を備えたカードコネクタとして、特許文献2に開示されたものがある(図12参照)。このカードコネクタでは、一端に操作部を他端に係合アームを有する第1バーのロック時において、第1バーの係合アーム253がストッパ229のテーパ面229aによってフレーム220の側壁部222に対して外側に撓んでいる。即ち、このカードコネクタでは、イジェクト機構が、係合アーム253自体の弾性力で係合アーム253を幅方向に動かす機構を採用している。従って、特許文献2に開示されたカードコネクタにおいては、必要な荷重を得るために係合アーム253を高精度で作製する必要があった。また、カバー部材(図示せず)が必要であり、部品点数が多い。
【0009】
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数が少なく、組立作業が容易で、カム部材が外れにくく、確実なカム係合を可能にしたイジェクト機構を有するカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係るカードコネクタは、コンタクトを保持するハウジングと、該ハウジングに取り付けられ、カードを挿抜可能に案内するフレームと、前記ハウジングに回動可能に配置され、回動により前記カードを抜出方向に排出する回動アームと、前記フレームの側方に設けられ、前記カードの排出時に前記回動アームを回動させるイジェクト機構とを具備し、
該イジェクト機構は、前記フレームに対して移動可能に設けられ、前記回動アームに係合するプッシュバーと、
前記フレーム及びプッシュバーに形成されたカム構成部と、
前記フレームに対して移動可能に設けられた操作部に回動自在に軸支され、前記カム構成部とカム係合するプッシュプレートと、
前記プッシュプレートを前記操作部の押圧方向と逆方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴としている。
【0011】
このカードコネクタによれば、カム構成部と、該カム構成部にカム係合するプッシュプレートと、弾性部材とからイジェクト機構が構成されているので、部品点数が少なく、組立作業が容易である。また、プッシュバー及びプッシュプレートがフレームに対して移動可能とされた構成とされているため、カム構成部に係合するカム部材が外れにくく、カム係合を確実にすることができる。
【0012】
また、本発明のうち請求項2に係るカードコネクタは、請求項1に係るカードコネクタにおいて、前記カム構成部は、前記フレームに形成された第1カム部と、
前記カードが前記フレーム内に収容されることにより前記プッシュバーが初期位置に位置された初期状態で、前記操作部が押圧方向に押圧されることによって、前記プッシュプレートの先端に形成された第1当接部に当接する被当接部と、
移動限界位置まで移動された前記プッシュバーが前記回動アームを回動させた状態で、前記弾性部材の弾性力によって前記プッシュプレートに設けられた第2カム部に係合して前記プッシュプレートを一方の向きに回動させて、前記プッシュプレートに設けられた第3カム部を第1カム部に係合させる第1カム面と、
前記カードが前記フレーム内に収容されることにより前記回動アームを介して前記プッシュバーを前記移動限界位置から前記初期位置に移動させた状態で、前記操作部が前記押圧方向に押圧されることにより、前記プッシュプレートを他方の向きに回動させて第3カム部と第1カム部との係合を解除する第2カム面と、
前記被当接部と一体に形成され、前記弾性部材の弾性力によって前記プッシュプレートを、第1カム面に第2カム部が係止された前記初期位置に移動させる第3カム面とを有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明のうち請求項3に係るカードコネクタは、請求項1又は2に係るカードコネクタにおいて、前記フレーム、前記プッシュバー、及び前記プッシュプレートが金属板から形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るカードコネクタによれば、部品点数が少なく、組立作業が容易で、カム部材が外れにくく、確実なカム係合を可能にしたイジェクト機構を有するカードコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカードコネクタを示し、(A)は背面図、(B)は平面図、(C)は正面図である。
【図2】フレームとイジェクト機構との組立状態を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図である。
【図3】フレームを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図である。
【図4】イジェクトボタンを示し、(A)は左側面図、(B)は平面図である。
【図5】プッシュバーを示し、(A)は平面図、(B)は左側面図である。
【図6】プッシュプレートを示し、(A)は平面図、(B)は左側面図である。
【図7】イジェクト機構の動作を示し、(A)はカード挿入後の初期状態、(B)はカードが排出されている状態、(C)はカードが排出された状態、(D)〜(F)はプッシュプレートのロック状態を示している。
【図8】イジェクト機構の動作を示し、(A)及び(B)はカード挿入後の状態、(C)〜(E)はプッシュプレートのロック解除時の状態、(F)はプッシュプレートのロックを解除して初期位置に向かう状態を示している。
【図9】イジェクト機構の動作を示し、(A)〜(E)はプッシュプレートのロックを解除して初期位置に向かう状態、(F)はプッシュプレートが初期位置に戻り、イジェクトボタンが突出した状態を示している。
【図10】イジェクト機構を有する従来のカードコネクタの斜視図である。
【図11】図10に示したカードコネクタのイジェクト機構の主要部を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図12】従来のカードコネクタのイジェクト機構の主要部を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、カードコネクタ1は、ハウジング10と、フレーム20と、回動アーム30と、イジェクト機構40とを具備している。
【0017】
ハウジング10は、長手方向(図1(B)における左右方向)に延びる略直方体形状体で構成され、絶縁性の樹脂を成形することによって形成される。ハウジング10の長手方向両端には、回路基板(図示せず)上に実装するための基板実装部11が設けられる。各基板実装部11には、取付ねじ用貫通孔12が形成されている。そして、ハウジング10には、複数のコンタクト13が長手方向に沿って保持されている。各コンタクト13は、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。また、各コンタクト13は、回路基板に半田接続されるとともに、カードコネクタ1に挿入されたメモリカード等のカードC内のコンタクト(図示せず)に嵌合接触するようになっている。
【0018】
フレーム20は、矩形状の平板部21と、平板部21の幅方向両端(図1(B)における左右方向両端)から下方に折り曲げられた1対の側壁部22とを具備し、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。フレーム20が金属板からなることにより、強度を保ったまま、カードコネクタ1の幅方向の寸法を小さくできる。平板部21の幅方向両端の前方部(図1(B)における上方部)には、ハウジング10の長手方向両端部に圧入固定される固定部23が下方に折り曲げ形成されている。また、各側壁部22の後方部には、回路基板上への実装部24(図2(B)参照)が内側へ折り曲げ形成されている。そして、平板部21の幅方向両端であって側壁部22の内側には、平板部21から下方に突出する複数のガイド突部25が形成されている。各ガイド突部25は、連結片28により側壁部22の上端に連結されている。また、各側壁部22の下端からは複数の折り曲げ部26が折り曲げ形成されている。カードCの挿抜時において、ガイド突部25及び折り曲げ部26によってカードCの上下方向の移動が規制される。さらに、1対の側壁部22によりカードCの左右方向(ハウジング10の長手方向)の移動を規制し、カードCの挿抜可能に案内するようになっている。また、各側壁部22の後方部には、挿入されたカードCの側部に接触する接地片(図示せず)が内側に向けて折り曲げ形成されている。側壁部22の中央部分には、プッシュプレート60の動きを規制する第1カム部22b及び第4カム部22cを有する窓部22aが打ち抜かれて形成されている。第1カム部22bは、窓部22aの上面に設けられ、下方に突出し、前方に向いた鉤形状をなしている。第4カム部22cは、窓部22aの上方から後方へ斜めに形成される。また、側壁部22の後方側上端には、引張ばね(弾性部材)80の一方のフック部が掛かり止めされる掛止部22dが外側に向けて折り曲げ形成されている。また、側壁部22の前方側上下端及び中央部分上下端には、プッシュバー50に設けられた溝部58(図5参照)に係合する爪部22eが複数設けられる。
【0019】
回動アーム30は、ハウジング10内に回動可能に配置される。回動アーム30は、ハウジング10内部の一端に、挿入されたカードCに係合するカード係合部(図示せず)を備え、ハウジング10外部の他端に、後述するプッシュバー50の前端部51aに係合するバー係合部31を備えている。回動アーム30は、その回動により、挿入されたカードCを抜出方向(図1(B)における下方向)に排出する。
【0020】
イジェクト機構40は、プッシュバー50と、フレーム20及びプッシュバー50に形成されたカム構成部70と、カム構成部70とカム係合するプッシュプレート60と、弾性部材80とを有する。イジェクト機構40は、フレーム20の一方の側壁部22(例えば左側、図2参照)に設けられる。弾性部材80は、プッシュプレート60を操作部90の押圧方向と逆方向に付勢する。イジェクト機構40は、フレーム20の一方の側壁部22の内側に、プッシュプレート60及びプッシュバー50がこの順で重畳するように配設されている。具体的には、フレーム20の一方の側壁部22の内側に、フレーム20に対して前後方向に移動可能に係合するプッシュバー50が重畳するように配設されている。そして、フレーム20の側壁22とプッシュバー50との間に、プッシュプレート60が挟まれるようにして設けられる。プッシュプレート60は、フレーム20に対して前後方向に移動可能に設けられたイジェクトボタン(操作部)90に回動自在に軸支されるので、フレーム20とプッシュバー50との間で前後方向に移動可能となる。
【0021】
ここで、イジェクトボタン90は、図4に示すように、直方体形状の本体部91と、該本体部91の前端部に開口した溝部92とを有する。該溝部92は、その上下方向の寸法よりも小さく開口された矩形状の凹部93に連通する。側壁部22の上端面及び下端面は、溝部92に移動可能に係合される。フレーム20に対するイジェクトボタン90の移動範囲の一方は、側壁部22の後端部に折り曲げられて形成された係止部29が凹部93の後端面で係止されることによって制限される。凹部93の前方には、プッシュプレート60を軸支するための軸部94が設けられている。
【0022】
プッシュバー50は、図5に示すように、側壁部22に沿って前後方向に延びる本体部51を有し、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。プッシュバー50が金属板からなることにより、強度を保ったまま、カム構成部の幅方向の寸法を小さくでき、カードコネクタ1の幅寸法も小さくできる。前端部51aは、回動アーム30の係合部31に係合する。また、本体部51には、側壁部22に設けられ、内側に折り曲げられた複数の爪部22e(図3(C)参照)に係合する溝部58が、各爪部22eの位置及び個数に合わせて、例えば、本体部51の前端側及び後端側に上下1対ずつ形成されている。各爪部22eを各溝部58の拡大部58aから各溝部58に挿入し、プッシュバー50を前方へ相対移動させることによって、フレーム20(側壁部22)に対して脱落させることなくプッシュバー50を前後方向に移動させることができる。本体部51の後端には、本体部51を打ち抜いた窓部52が形成されている。窓部52には、下面において上方に突出した被当接部53、下面と後面とを斜面で連結した第1カム面54、上面と前面とを斜面で連結した第2カム面55、及び被当接部53の前方の斜面部分である第3カム面56が形成される。
【0023】
プッシュプレート60は、図6に示すように、フレーム20の側壁部22(図2(C)参照)に沿って前後方向に延びる本体部61を有し、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。プッシュプレート60が金属板からなることにより、強度を保ったまま、カム構成部70の幅方向の寸法を小さくでき、カードコネクタ1の幅寸法も小さくできる。本体部61の後端には、イジェクトボタン90に形成された軸部94に軸支される軸穴66が形成されている。また、本体部61の前端には、フレーム20の窓部22a及びプッシュバー50の窓部52によって移動方向が規制される当接部62、第2カム部63、及び第3カム部64がそれぞれ内側に向けて折り曲げ形成されている。当接部62は、前方に突出した突出片を図6(A)に示されるように内側に向けて折り曲げ形成されている。第2カム部63は、後ろ斜め下方に突出した突出片を外側に向けて折り曲げ形成されている。第3カム部64は、上方に突出した突出片を内側に向けて折り曲げ形成されている。このように、カードコネクタ1では、折り曲げ形成された当接部62、第2カム部63、及び第3カム部64をカム構成部70にカム係合させるので、多少の摩耗があっても動作不良に至らない。さらに、本体部61の前方側下端には、プッシュプレート60を後方に付勢する引張ばね(弾性部材)80(図2(C)参照)の他方のフック部が掛かり止めされる掛止部65が外側に向けて折り曲げ形成されている。即ち、引張ばね80は、その両フック部がフレーム20の掛止部22dとプッシュプレート60の掛止部65とにそれぞれ取り付けられて、側壁部22に対してイジェクトボタン90を介して移動するプッシュプレート60を後方に付勢する。また、掛止部22dは側壁部22の後方側のほぼ中央に設けられ、掛止部65はプッシュプレート60の前方側に設けられているため、前記付勢力はプッシュプレート60がその姿勢に応じて一方の向きに回動するように付与される。
【0024】
このように、カム構成部70を構成する第1カム部22b、被当接部53、第1カム面54、第2カム面55、及び第3カム面56は、フレーム20及びフレーム20に対して移動可能とされたプッシュバー50に設けられる。従って、イジェクト機構40の動作においてカム構成部70の幅方向の動作がなく、カム構成部70に係合するカム部材が外れにくく、カム係合を確実にすることができる。
【0025】
このイジェクト機構40を構成する各部材を、図2に示すようにフレーム20に組み付けた後に、この組立体をハウジング10に取り付けることにより、カードコネクタ1は完成する。
【0026】
次に、本発明の作用を図7〜図9を参照して説明する。なお、以下の説明では、フレーム20の窓部22a、プッシュバー50の窓部62、及びプッシュプレート60、並びにこれらに設けられたカム構成部70の動きについて説明する。また、図7〜図9において、点Zは、掛止部22dの位置であり、線分dは、弾性部材80の付勢力の方向又は弾性部材80の軸線を示す。
【0027】
図7(A)に示すように、まず、カードCがフレーム20内に収容された状態(以下、初期状態と呼ぶ。)では、プッシュバー50の前端部51aが初期位置Xに位置している。このとき、プッシュプレート60は、第2カム部63が第1カム面54に係止される。なお、イジェクトボタン90は、フレーム20の後端部から突出している。
【0028】
その後、図7(B)に示すように、イジェクトボタン90が押圧方向(前方)に押圧されることによって、プッシュプレート60の当接部62がプッシュバー50の被当接部53に当接し、プッシュバー50を前方へ移動させる。図7(C)に示すように、当接部62によって前端部51aが移動限界位置Yまで移動されたプッシュバー50は、回動アーム30を回動させるので、カードCの排出が行われる。この排出状態では、プッシュプレート60に弾性部材80の付勢力が軸孔66の回りを反時計回りの向きに働いている。というのは、図7(A)及び(B)において、弾性部材80の軸線dは、プッシュプレート60の軸孔66の中心よりも下側に位置するので、弾性部材80の付勢力により、プッシュプレート60が反時計回りに回転するからである。
【0029】
その後、イジェクトボタン90を押しきった状態から手を離す(付勢力を解除する)と、図7(D)に示すように、プッシュプレート60は弾性部材80の付勢力により後方に移動する。このとき、第1カム面54に第2カム部63が係合することにより、第2カム部63が上方へ移動するので、プッシュプレート60の回転方向にかかる力は反時計回りの向きから時計回りの向きに変わる。そして、第1カム面54によって案内されたプッシュプレート60の第3カム部64が側壁部22の第1カム部22bに係合する。図7(E)に示すように、弾性部材80によって後方へ付勢されたプッシュプレート60は、第1カム部22b及び第1カム面54によって係止される。このときのプッシュプレート60の状態をロック状態と呼ぶ。
【0030】
図7(F)に示すように、ロック状態では、弾性部材80の軸線dは、プッシュプレート60の軸孔66の中心よりも上側に位置するので、弾性部材80の付勢力によりプッシュプレート60には時計回りの向きに回動する力がかかっている。このため、イジェクトボタン90及びプッシュプレート60は、ので、イジェクトボタン90を押しても窓部22aに沿って往復運動をするだけである。
【0031】
カードが排出されたロック状態で、その後、カードをフレーム20に挿入すると、回動アーム30の回動によって、図8(A)及び(B)に示すように、プッシュバー50が後方に移動する。このとき、後方に移動するプッシュバー50の被当接部53は、第3カム部64が第1カム部22bに係合しているプッシュプレート60の第2カム部63に移動を妨げられないように高さが予め設定されている。また、プッシュバー50が後方に移動することにより、窓部22aに第2カム面55が重畳することになる。
【0032】
この状態でイジェクトボタン90が前方に押されると、図8(C)及び(D)に示すように、当接部62が第2カム面55に係合し、プッシュプレート60は前方に押されながら反時計回りの向きに回動する。
その後、イジェクトボタン90が前方に押され続けることにより、図8(E)に示すように、回動方向の力が時計回りの向きから反時計回りの向きへと変化し、第2カム部63が窓部52に当接する。
【0033】
その後、イジェクトボタン90に対する前方への付勢力を解除すると、図8(F)に示すように、弾性部材80の付勢力により、第2カム部63が窓部52に沿ってプッシュプレート60が後方に移動する。
そして、図9(A)に示すように、第2カム部63が第3カム面56と係合し、プッシュプレート60は時計回りの向きに回動しながら後方に移動する。
【0034】
この後、弾性部材80の付勢力により、プッシュプレート60がさらに後方に移動する際、図9(B)に示すように、プッシュプレート60の回動方向の力は反時計回りの向きから時計回りの向きに変化する。プッシュプレート60の回動方向が変化すると、図9(C)に示すように、窓部22aの上面に第3カム部64が当接する。
【0035】
次に、第3カム部64は、窓部22aの上面に係合した後、第4カム部22cに係合しながらプッシュプレート60は排出位置に戻されることになる。この係合の際、プッシュプレート60の回動方向の力は、時計回りの向きから反時計回りの向きへ変化する。このようにして、第2カム部63が第1カム面54に係合することによってプッシュプレート60は排出位置に保持されてポップ−プッシュ動作が完結する。
【0036】
以上説明したように、カードコネクタ1は、カム構成部70と、該カム構成部70にカム係合するプッシュプレート60と、弾性部材80とからイジェクト機構40が構成されているので、部品点数が少なく、組立作業が容易である。また、カードCを排出するときには、プッシュバー50を前方へ移動させることで、第1カム面54及び第1カム部22bに係合させてプッシュプレート60をロック状態にする。また、カードCが挿入されたときには、プッシュバー50が後方へ移動することにより、第2カム面55に係合させてプッシュプレート60を第1カム部22bからロック解除する。即ち、プッシュバー50及びプッシュプレート60がフレーム20に対して移動可能とされた構成とされているため、カム構成部70に係合するカム部材が外れにくく、カム係合を確実にすることができる。
【0037】
そして、このイジェクト機構40は、従来の図10に示したような揺動するカム部材を必要としないので、製造が容易であると共に、その組立作業も容易なものとすることができる。
また、イジェクト機構40にいわゆるハートカム構造を採用していないので、イジェクト機構40の幅方向の動きがなくなり、イジェクト機構40の幅寸法を小さくできる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。例えば、フレーム20、プッシュプレート60、及びプッシュバー50は、金属製でなく、樹脂製であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 カードコネクタ
10 ハウジング
13 コンタクト
20 フレーム
22a 窓部
22b 第1カム部
30 回動アーム
40 イジェクト機構
50 プッシュバー
51 本体部
52 窓部
53 被当接部
54 第1カム面
55 第2カム面
56 第3カム面
60 プッシュプレート
61 本体部
62 当接部
63 第2カム部
64 第3カム部
70 カム構成部
80 引張ばね(弾性部材)
90 イジェクトボタン(操作部)
C カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトを保持するハウジングと、該ハウジングに取り付けられ、カードを挿抜可能に案内するフレームと、前記ハウジングに回動可能に配置され、回動により前記カードを抜出方向に排出する回動アームと、前記フレームの側方に設けられ、前記カードの排出時に前記回動アームを回動させるイジェクト機構とを具備し、
該イジェクト機構は、前記フレームに対して移動可能に設けられ、前記回動アームに係合するプッシュバーと、
前記フレーム及びプッシュバーに形成されたカム構成部と、
前記フレームに対して移動可能に設けられた操作部に回動自在に軸支され、前記カム構成部とカム係合するプッシュプレートと、
前記プッシュプレートを前記操作部の押圧方向と逆方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記カム構成部は、前記フレームに形成された第1カム部と、
前記カードが前記フレーム内に収容されることにより前記プッシュバーが初期位置に位置された初期状態で、前記操作部が押圧方向に押圧されることによって、前記プッシュプレートの先端に形成された第1当接部に当接する被当接部と、
移動限界位置まで移動された前記プッシュバーが前記回動アームを回動させた状態で、前記弾性部材の弾性力によって前記プッシュプレートに設けられた第2カム部に係合して前記プッシュプレートを一方の向きに回動させて、前記プッシュプレートに設けられた第3カム部を第1カム部に係合させる第1カム面と、
前記カードが前記フレーム内に収容されることにより前記回動アームを介して前記プッシュバーを前記移動限界位置から前記初期位置に移動させた状態で、前記操作部が前記押圧方向に押圧されることにより、前記プッシュプレートを他方の向きに回動させて第3カム部と第1カム部との係合を解除する第2カム面と、
前記被当接部と一体に形成され、前記弾性部材の弾性力によって前記プッシュプレートを、第1カム面に第2カム部が係止された前記初期位置に移動させる第3カム面とを有することを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記フレーム、前記プッシュバー、及び前記プッシュプレートが金属板から形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−23280(P2011−23280A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168849(P2009−168849)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】