説明

カード用コネクタ装置

【課題】誤挿入カードが挿入された際でも、その誤挿入カードを容易にカード挿入口から取り出すことができる。
【解決手段】第3コンタクト端子6による付勢力によって、カード挿入経路10に向かう方向に付勢され、第1,第2カード21,22が挿入されたときに、カード挿入経路10から離れる方向に回動し、これによって第3コンタクト端子6をカード挿入経路10から離れる方向に移動させる第1カム板7を備えるとともに、第1,第2,第3カード21,22,23がカード挿入口1から挿入されない待機状態にあって、第1カム板7を、第3コンタクト端子6による付勢力に抗して、カード挿入経路10から離れる方向に回動させた状態に保持する保持手段を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さの異なる複数種類のカードが装着可能であるとともに、装置手前側に位置するコンタクト端子をカード挿入経路から離れる方向に移動させることが可能なカム板を備えたカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。この特許文献1には、比較的長くて厚いカードと、このカードに比べて短くて薄いカードとの複数種類のカードの装着が可能なカード用コネクタ装置が開示されている。
【0003】
この従来技術は、上述のカードのそれぞれの挿入を許容させるカード挿入口と、装置奥側に配置され、上述の長いカードの接触部と接触可能な複数の第1コンタクト端子と、装置手前側に配置され、上述の短いカードの接触部と接触可能な複数の第2コンタクト端子とを備えている。また、上述したカードの挿入、排出に伴って、挿入方向及び排出方向に摺動するスライド部材と、このスライド部材を排出方向に付勢する付勢部材とを備えている。さらに、装置手前側に位置する上述の第2コンタクト端子による付勢力によって、カード挿入経路に向かう方向に付勢され、上述の長いカードが挿入されたとき、そのカードとの係合によって第2コンタクト端子による付勢力に抗して、カード挿入経路から離れる方向に回動し、これによって第2コンタクト端子をカード挿入経路から離れる方向に移動させる押圧部材、すなわちカム板を備えている。
【0004】
このように構成した従来技術では、長いカードを所定の装着部に装着させる際には、カム板によって第2コンタクト端子がその長いカードに接触しないようにすることができる。また、短いカードを所定の装着部に装着させる際には、第2コンタクト端子を自身の保有する付勢力によって、その短いカードの接触部に所望の接触圧で接触させることができるようになっている。
【特許文献1】特開2004−71257公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術にあっては、誤挿入カード、例えば上述した長いカードよりも短く、上述した短いカードよりも長いカードであって、厚さは上述した長いカードと同等であり、幅寸法が上述した長いカードよりも小さいカードが誤って挿入されてしまったときに、不具合を生じる
すなわち、このような誤挿入カードがカード挿入口から誤って挿入されると、スライド部材が摺動せず、この誤挿入カードは、上述のカム板によって挟み込まれ、取り出すことが困難となる。無理に取り出そうとしたときには、装置手前側に配置された第2コンタクト端子に負荷がかかり、この第2コンタクト端子が損傷する懸念がある。このようなことは、第2コンタクト端子に接触する接触部を有する正規の短いカードが、縦と横を誤って挿入され、挿入時の幅寸法が、正しく挿入された場合に比べて小さくなるときにも起こり得る。このようなときにも、スライド部材が摺動せず、誤挿入カードとなる正規の短いカードが上述のカム板によって挟み込まれてしまう事態を生じる。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、誤挿入カードが挿入された際でも、その誤挿入カードを容易にカード挿入口から取り出すことができるカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、装置奥側の所定の装着部に装着される長いカードと、装置手前側の所定の装着部に装着される短いカードとを含む複数種類のカードの挿入を許容させるカード挿入口と、上記複数種類のカードのそれぞれが接触可能な複数のコンタクト端子と、上記複数種類のカードのそれぞれの挿入、排出に伴って、挿入方向、及び排出方向に摺動するスライド部材と、上記複数のコンタクト端子のうちの上記装置手前側に位置する上記短いカードの接触部に接触可能なコンタクト端子による付勢力によって、カード挿入経路に向かう方向に付勢され、上記複数種類のカードのうちの装置奥側まで挿入される上記長いカードが挿入されたとき、その長いカードとの係合によって上記装置手前側に位置するコンタクト端子による付勢力に抗して、上記カード挿入経路から離れる方向に回動し、これによって上記装置手前側に位置するコンタクト端子を上記カード挿入経路から離れる方向に移動させるカム板とを備えるとともに、上記複数種類のカードのそれぞれが上記カード挿入口から挿入されない待機状態にあって、上記カム板を、上記装置手前側に位置するコンタクト端子による付勢力に抗して、上記カード挿入経路から離れる方向に回動させた状態に保持するとともに、上記スライド部材の上記装置奥側への摺動に伴って上記保持が解除される保持手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、カードが挿入されない待機状態にあって、保持手段によってカム板をカード挿入経路から離れる方向に回動させた際のカム板によって形成されるカード挿入経路のカード厚さ方向に沿う寸法が、想定される誤挿入カードの厚さよりも大きくなるように、あらかじめ考慮してこの保持手段を設ければよく、カード挿入口から誤挿入カードが挿入された際には、スライド部材が摺動せず、したがって待機状態におけるのと同じように保持手段によってカム板が上述のように保持される。これにより、誤挿入カードがカム板によって挟まれる事態を生じることがなく、その誤挿入カードを容易にカード挿入口から取り出すことができる。
【0009】
なお、装置奥側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する長くて厚い正規のカードが正しく挿入された際には、このカードの挿入によってスライド部材が摺動し、保持手段による保持が解除されるとともに、その長いカードとの係合によってカム板がカード挿入経路から離れる方向に回動して、装置手前側に位置するコンタクト端子を長いカードに接触しない状態に保つことができ、これによって所定の装着部に長いカードを装着させることができる。また、装置手前側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する短くて薄い正規のカードが正しく挿入された際には、この短いカードの挿入に伴ってスライド部材が摺動し、保持手段による保持が解除されるとともに、装置手前側に位置するコンタクト端子が自身の保有する付勢力によって短いカードの接触部に接触する状態となる所望の装着部に装着させることができる。
【0010】
また、本発明は上記発明において、上記保持手段は、上記スライド部材に形成され、上記カード挿入経路に沿って延設される平坦面、及びこの平坦面の端部に形成される角部を含むとともに、上記スライド部材に対向するように上記カム板に設けられ、上記待機状態で上記スライド部材の上記平坦面に係合する平坦部と、この平坦部に連設され、装置奥側に向かうに従って上記スライド部材から離れる形状に形成され、上記スライド部材の装置奥側への摺動に伴って、このスライド部材の上記角部が係合可能な傾斜部とを有するカム部を含むことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、待機状態から誤挿入カードが挿入された際には、スライド部材が摺動しないことから、スライド部材の平坦面と、カム板に設けられるカム部の平坦部とを係合させた状態を維持できる。したがって、これらのスライド部材の平坦面と、カム板のカム部の平坦部とを含む寸法関係を、このときカム板によって形成されるカード挿入経路のカード厚さ方向に沿う寸法が、想定される誤挿入カードの厚さよりも大きくするようにあらかじめ考慮して設定すればよく、上述のように誤挿入カードが挿入されてしまっても、その誤挿入カードがカム板によって挟まれる事態を生じることがない。
【0012】
なお、装置奥側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する長くて厚い正規のカードが正しく挿入された際には、この長いカードの挿入に伴ってスライド部材が摺動し、スライド部材の平坦面の端部に形成される角部と、カム板に設けられるカム部の傾斜部とが係合する状態となって、装置手前側に位置するコンタクト端子の付勢力によってカム板がカード挿入経路に向かう方向に回動しようとするが、挿入された長いカードがカム板に係合することにより、カム板がカード挿入経路から離れる方向に回動する。これにより、装置手前側に位置するコンタクト端子を長いカードに接触しない状態に保つことができる。
【0013】
また、装置手前側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する短くて薄い正規のカードが正しく挿入された際には、この短いカードの挿入に伴ってスライド部材が摺動し、上述のようにスライド部材の平坦面の端部に形成される角部が、カム板のカム部の傾斜部に係合する状態となって、装置手前側に位置するコンタクト端子の付勢力によってカム板がカード挿入経路に向かう方向に回動する。これにより、装置手前側に位置するコンタクト端子と短いカードの接触部とを、所望の接触圧で接触させることができる。
【0014】
また、本発明は上記発明において、上記スライド部材の上記平坦面、及び角部を、上記スライド部材の側壁に設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、スライド部材の側壁を、誤挿入カードが挿入された際の取り出しを容易にするために有効に活用させることができる。
【0015】
また、本発明は上記発明において、上記保持手段は、上記スライド部材に対向するように上記カム板に設けた突出部を含むとともに、上記カム板に対向するように上記スライド部材に設けられ、上記待機状態で上記カム板の上記突出部に係合する平坦部と、この平坦部に連設され、上記カード挿入口に向かうに従って上記カム板から離れる形状に形成され、上記スライド部材の装置奥側への摺動に伴って上記カム板の上記突出部が係合可能な傾斜部とを有するカム部を含むことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、待機状態から誤挿入カードが挿入された際には、スライド部材が摺動しないことから、カム板の突出部とスライド部材のカム部の平坦部とを係合させた状態に保つことができる。したがって、これらのカム板の突出部と、スライド部材のカム部の平坦部を含む寸法関係を、このときカム板によって形成されるカード挿入経路のカード厚さ方向に沿う寸法が、想定される誤挿入カードの厚さよりも大きくなるようにあらかじめ考慮して設定すればよく、上述のように誤挿入カードが挿入されたとしても、その誤挿入カードがカム板によって挟まれる事態を生じることがない。
【0017】
なお、装置奥側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する長くて厚い正規のカードが正しく挿入された際には、この長いカードの挿入に伴ってスライド部材が摺動し、カム板の突出部と、スライド部材に設けたカム部の傾斜部とが係合する状態となって、装置手前側に位置するコンタクト端子の付勢力によってカム板がカード挿入経路に向かう方向に回動しようとするが、この際、長いカードとの係合によってカム板がカード挿入経路から離れる方向に回動して、装置手前側に位置するコンタクト端子が長いカードに接触しない状態に保つことができる。
【0018】
また、装置奥側に配置されるコンタクト端子に接触する接触部を有する短くて薄い正規のカードが正しく挿入された際には、この短いカードの挿入に伴ってスライド部材が摺動し、上述のようにカム板の突出部とスライド部材のカム部の傾斜部とが係合する状態となって、装置手前側に位置するコンタクト端子の付勢力によってカム板がカード挿入経路に向かう方向に回動する。これにより、装置手前側に位置するコンタクト端子と、短いカードの接触部とを所望の接触圧で接触させることができる。
【0019】
また、本発明は上記発明において、上記スライド部材の上記平坦部、及び上記傾斜部を、上記スライド部材の側壁に設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、スライド部材の側壁を、誤挿入カードが挿入された際の取り出しを容易にするために有効に活用させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、複数種類のカードのそれぞれが挿入されない待機状態にあって、カム板を、装置手前側に位置するコンタクト端子による付勢力に抗して、カード挿入経路から離れる方向に回動させた状態に保持するとともに、スライド部材の装置奥側への摺動に伴って上述の保持が解除される保持手段を備えたことから、カム板によって形成されるカード挿入経路のカード厚さ方向に沿う寸法を誤挿入カードの厚さよりも大きくすることができ、これにより、誤挿入カードが挿入された際でも、スライド部材が摺動しないことに伴ってカム板を上述のようにカード挿入経路から離れる方向に回動させた状態に保持でき、その誤挿入カードを容易にカード挿入口から取り出すことができる。したがって、従来懸念されていた誤挿入カードの取り出しに伴う煩雑さを解消できるとともに、装置手前側に位置するコンタクト端子の損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明に係るカード用コネクタ装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0022】
[本実施形態の構成]
図1は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態を示す要部平面図、図2は図1の側断面図で、(a)図は図1のA−A断面図、(b)図は図1のB−B断面図である。図3は図2の要部を拡大して示した図で、(a)図は図2の(a)図のC部拡大図、(b)図は図2の(b)図のD部拡大図である。図4は本実施形態に誤挿入カードが挿入されるときの状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図のE−E断面図である。
【0023】
本実施形態は、複数種類のカード例えば、装置奥側の所定の第1カード装着部に装着される長くて厚い後述の第1カード21と、装置中央部の所定の第2カード装着部に装着され、第1カード21よりも短いものの比較的厚い後述の第2カード22と、装置手前側の所定の第3カード装着部に装着され、第2カード22よりもさらに短く、第1カード21及び第2カード22よりも薄い後述の第3カード23の3つのカードの挿入が可能となっている。
【0024】
本実施形態は、複数のコンタクト端子を備えている。すなわち、図1に示すように、上述の第1カード装着部に配置され、第1カード21の接触部と接触可能な金属板から成る第1コンタクト端子4と、上述の第2カード装着部に配置され、第2カード22の接触部と接触可能な金属板から成る第2コンタクト端子5と、上述の第3カード装着部に配置され、第3カード23の接触部と接触可能な金属板から成る第3コンタクト端子6とを備えている。
【0025】
また、第1カード21、第2カード22、第3カード23のそれぞれの挿入、排出に伴って、挿入方向、及び排出方向に摺動するスライド部材2と、このスライド部材2を排出方向に付勢するコイルばねから成る付勢部材3を備えている。
【0026】
また、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6による付勢力によって、図3に示すカード挿入経路10に向かう方向に付勢され、装置奥側に挿入される第1カード21、及び装置中央部に挿入される第2カード22が挿入されたとき、これらのカードとの係合によって装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の付勢力に抗して、カード挿入経路10から離れる方向に回動し、これによって装置手前側に位置する第3コンタクト端子6を第1カード21あるいは第2カード22に接触させないように、カード挿入経路10から離れる方向に移動させる第1カム板7を備えている。
【0027】
さらに、装置中央部に位置する第2コンタクト端子5等による付勢力によってカード挿入経路10に向かう方向に付勢され、装置奥側まで挿入される第1カード21が挿入されたとき、第1カード21との係合によって第2コンタクト端子5等の付勢力に抗して、カード挿入経路10から離れる方向に回動し、これによって第2コンタクト端子5を第1カード21に接触させないように、カード挿入経路10から離れる方向に移動させる第2カム板8を備えている。
【0028】
本実施形態は特に、第1カード21、第2カード22、及び第3カード23のそれぞれが、カード挿入口1から挿入されていない待機状態にあって、第1カム板7を、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の付勢力に抗して、カード挿入経路10から離れる方向に回動させた状態に保持するとともに、スライド部材2の装置奥側への摺動に伴って上述の保持が解除される保持手段を備えている。この保持手段は、例えば第1保持手段と第2保持手段とを含んでいる。
【0029】
第1保持手段は、図1のA−A断面に関連する図3の(a)図に示すように、スライド部材2に形成され、カード挿入経路10に沿って延設される平坦面2a、及びこの平坦面2aの端部に形成される角部2bを含んでいる。また、スライド部材2に対向するように、第1カム板7に設けられ、待機状態でスライド部材2の平坦面2に係合する平坦部9aと、この平坦部9aに連設され、装置奥側に向かってスライド部材2から離れる形状に形成され、スライド部材2の装置奥側への摺動に伴って、このスライド部材2の角部2bが係合可能な傾斜部9bを有する第1カム部9を含んでいる。上述したスライド部材2の平坦面2a、及び角部2bは、スライド部材2の一方の側壁、すなわち図1の右側に位置する側壁に設けてある。
【0030】
また、上述したスライド部材2の平坦面2aと、第1カム部9の平坦部9aとを含む寸法関係を、図3の(a)図に示す待機状態にあって、第1カム板7によって形成されるカード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法が、想定される誤挿入カード13の厚さよりも大きくなるようにあらかじめ考慮して設定してある。すなわち、このような待機状態にあっては、図4の(b)図に示すように、上述の第1保持手段によって第1カム板7の先端部7aによって形成されるカード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法sが、想定される誤挿入カード13の厚さ寸法tよりも大きくなるようにあらかじめ設定してある。
【0031】
また、第2保持手段は、図1のB−B断面に関連する図3の(b)図に示すように、スライド部材2に対向するように第1カム板7に設けた突出部12を含むとともに、第1カム板7に対向するようにスライド部材2に設けられ、待機状態で第1カム板7の突出部12に係合する平坦部11aと、この平坦部11aに連設され、カード挿入口1に向かうに従って第1カム板7から離れる形状に形成され、スライド部材2の装置奥側への摺動に伴って、第1カム板7の突出部12が係合可能な傾斜部11bとを有する第2カム部11を含んでいる。上述したスライド部材2の平坦部11a、及び傾斜部11bは、スライド部材2の他方の側壁、すなわち図1の左側に位置する側壁に設けてある。
【0032】
また、上述した第1カム板7の突出部12と、スライド部材2の平坦部11aとを含む寸法関係を、上述した第1保持手段におけるのと同様に、図3の(b)図に示す待機状態にあって、第1カム板7によって形成されるカード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法が、想定される誤挿入カード13の厚さ寸法よりも大きくなるようにあらかじめ考慮して設定してある。すなわち、待機状態にあって、上述したように図4の(b)図に示す寸法sと、誤挿入カード13の厚さtの関係が、(s>t)の関係を保つようにあらかじめ設定してある。
【0033】
[カードが正しく挿入されたときの動作]
図5は本実施形態の所定の第1カード装着部に第1カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【0034】
本実施形態に係るカード用コネクタ装置に、図5の(b)図に例示する長くて厚い第1カード21が挿入されると、この第1カード21との係合によって、図1に示す第1カム7がカード挿入経路10から離れる方向に回動し、これに伴って第3コンタクト端子6が第1カード21に接触しないようにカード挿入経路10から離れる方向に移動する。
【0035】
なお、第1カード21の挿入に伴ってスライド部材2が図1に示す付勢部材3の付勢力に抗して摺動し、図3の(a)図に示すスライド部材2の平坦面2aの端部に形成される角部2bと、第1カム板7に設けられる第1カム部9の傾斜部9bとが係合する状態となって、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の付勢力によって第1カム板7がカード挿入経路10に向かう方向に回動しようとするが、この際、第1カード21との係合によって第1カム板7がカード挿入経路10から離れる方向に回動して、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6が第1カード21に接触しない状態に保たれる。
【0036】
また、上述したスライド部材2の摺動によって、図3の(b)図に示す第1カム板7の突出部12と、スライド部材2に設けた第2カム部11の傾斜部11bとが係合する状態となって、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の付勢力によって第1カム板7がカード挿入経路10に向かう方向に回動しようとするが、この際、第1カード21との係合によって第1カム板7がカード挿入経路10から離れる方向に回動して、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6が第1カード21に接触しない状態に保たれる。
【0037】
さらに、第1カード21が装置奥側に向かって押し込まれると、この第1カード21との係合によって、図1に示す第2カム板8もカード挿入経路10から離れる方向に回動し、これに伴って第2コンタクト端子5がカード挿入経路10から離れる方向に回動する。図5の(a)図に示すように、挿入された第1カード21が所定の第1カード装着部に至ると、図示しないロック機構によってスライド部材2がロックされるとともに、第1カード21の接触部と第1コンタクト端子4とが接触し、この第1カード21に対する信号の送受信が可能となる。なお、カード排出時には、図示しないロック機構によるスライド部材2のロックを解除すると、付勢部材3の付勢力によりスライド部材2が排出方向に摺動し、これに伴って第1カード21がカード挿入口1から排出される。
【0038】
図6は本実施形態の所定の第2カード装着部に第2カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【0039】
本実施形態に、第1カード21よりも短い図6の(b)図に例示する第2カード22が挿入されると、この第2カード22との係合によって図1に示す第1カム板7がカード挿入経路10から離れる方向に回動し、これに伴って第3コンタクト端子6が第2カード22に接触しないようにカード挿入経路10から離れる方向に移動する。
【0040】
この際、上述の第1カード21の挿入の場合と同様に、第2カード22の挿入に伴ってスライド部材2が図1に示す付勢部材3の付勢力に抗して摺動し、これにより第1カム板7が上述したようにカード挿入経路10に向かう方向に回動しようとするが、第2カード22との係合によってこの第1カム板7がカード挿入経路10から離れる方向に回動して、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6が第2カード22に接触しない状態に保たれる。
【0041】
さらに、第2カード22が押し込まれ、図6の(a)図に示すように、所定の第2カード装着部に至ると、図示しないロック機構によってスライド部材2がロックされるとともに、第2カード22の接触部と第2コンタクト端子5とが接触し、この第2カード22に対する信号の送受信が可能となる。なお、カード排出時には、図示しないロック機構によるスライド部材2のロックを解除することにより、付勢部材3の付勢力によってスライド部材2が排出方向に摺動して、第2カード22が排出される。
【0042】
図7は本実施形態に第3カードが挿入され、これに伴ってスライド部材が摺動したときの状態を示す図で、(a)図は図3の(a)図に対応させて描いた拡大図、(b)図は図3の(b)図に対応させて描いた拡大図である。図8は本実施形態の所定の第3カード装着部に第3カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は図7の(a)図に対応させて描いた拡大図、(b)図は図7の(b)図に対応させて描いた拡大図である。図9は本実施形態の所定の第3カード装着部に第3カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【0043】
本実施形態に第2カード22よりも短くて薄い図9の(b)図に例示する第3カード23が挿入されると、この第3カード23の挿入に伴ってスライド部材2が摺動し、スライド部材2の一方の側壁側においては、図7の(a)図に示すように、スライド部材2の平坦面2aの端部に形成される角部2bと、第1カム板7に設けられる第1カム部9の傾斜部9bとが係合する状態となり、また、スライド部材2の他方の側壁側においては図7の(b)図に示すように、第1カム板7の突出部12がスライド部材2の第2カム部11の傾斜部11bに係合する状態となって、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の付勢力によって、第1カム板7がカード挿入経路10に向かう方向に回動する。
【0044】
さらに、第3カード23が押し込まれると、スライド部材2の一方の側壁側においては、図8の(a)図に示すように、スライド部材2の角部2bが第1カム板7に設けた第1カム部9の傾斜部9bから離脱した状態となり、また、スライド部材2の他方の側壁側においては、図8の(b)図に示すように、第1カム板7の突出部12がスライド部材2の第2カム部11の傾斜部11bから離脱し、第2平坦部11cに係合する状態となり、図9の(a)図に示すように、挿入された第3カード23が所定の第3カード装着部に至る。この状態に至ると、図示しないロック機構によってスライド部材2がロックされるとともに、図8の(a)(b)図に示すように、第3カード23の接触部と第3コンタクト端子6とが接触し、この第3カード23に対する信号の送受信が可能となる。なお、カード排出時には、図示しないロック機構によるスライド部材2のロックを解除することにより、付勢部材3の付勢力によってスライド部材2が排出方向に摺動し、これによって第3カード23がカード挿入口1から排出される。
【0045】
[誤挿入カードが挿入されたときの動作]
図4に示すように、例えば第1カード21よりも短く、第3カード23よりも長く、第1カード21よりも幅寸法が小さく、厚さが第1カード21とほぼ同等の誤挿入カード13が、本実施形態に係るカード用コネクタ装置に誤って挿入されたときには、その誤挿入カード13がスライド部材2に係合せず、したがって、スライド部材2が摺動しない状態で、誤挿入カード13だけが押し込まれる。
【0046】
このとき、待機状態にあっては、第1カム板7の先端部7aによって形成されるカード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法sが、想定される誤挿入カード13の厚さtよりもあらかじめ大きく設定されており、また、スライド部材2が摺動しないことに伴って、誤挿入カード13の挿入の間、上述の寸法sが維持される。すなわち、スライド部材2の一方の側壁側においては、図3の(a)図に示すように、第1カム板7に設けた第1カム部9の平坦部9aが、スライド部材2の平坦面2aに係合した状態に保たれ、スライド部材2の他方の側壁側においては、図3の(b)図に示すように、第1カム板7に設けた突出部12が、スライド部材2に設けた第2カム部11の傾斜部11bに係合した状態に保たれ、これによって上述のように、第1カム板7の先端部7aによって形成される図4に示すカード挿入経路10の寸法sが、誤挿入カード13の厚さtよりも大きい状態に保たれる。
【0047】
したがって、誤挿入カード13が挿入された際に、この誤挿入カード13が第1カム板7によって挟まれることがなく、誤挿入カード13の挿入に気付いたときに直ちに、この誤挿入カード13をカード挿入口1から取り出すことができる。
【0048】
[本実施形態の効果]
上述のように本実施形態は、正規のカードである第1カード21、第2カード22、及び第3カード23のそれぞれがカード挿入口1から挿入されていない待機状態にあって、カード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法を、想定される誤挿入カード13の厚さtよりも大きい寸法s(t<s)に保持する保持手段を備え、この保持手段が、図3の(a)図に示す第1カム板7に設けた平坦部9aと傾斜部9bを有する第1カム部9と、スライド部材2に設けた平坦面2a及び角部2bとを含む第1保持手段と、図3の(b)図に示す第1カム板7に設けた突出部12と、スライド部材2に設けた平坦部11a及び傾斜部11bを有する第2カム部11とを含む第2保持手段とから成る構成にしてある。
【0049】
この構成により、誤挿入カード13が挿入された際に、スライド部材2が摺動せず、待機状態におけるのと同じように、カード挿入経路10を寸法s(>t)に保持できる。すなわち、第1カム板7によって形成されるカード挿入経路10のカード厚さ方向に沿う寸法を、誤挿入カード13の厚さよりも大きくすることができる。これにより、その誤挿入カード13が第1カム板7によって挟まれることがなく、この誤挿入カード13を容易にカード挿入口1から取り出すことができる。したがって、誤挿入カード13の取り出しに伴う煩雑さを解消できるとともに、装置手前側に位置する第3コンタクト端子6の損傷を防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態は、スライド部材2の平坦面2a、及び角部2bを、スライド部材2の一方の側壁に設け、スライド部材2の第2カム部11の第1平坦部11a、及び傾斜部11bを、スライド部材2の他方の側壁に設けたことから、これらのスライド部材2の側壁を、誤挿入カード13が挿入された際の取り出しを容易にするために有効に活用させることができ、装置の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態を示す要部平面図である。
【図2】図1の側断面図で、(a)図は図1のA−A断面図、(b)図は図1のB−B断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示した図で、(a)図は図2の(a)図のC部拡大図、(b)図は図2の(b)図のD部拡大図である。
【図4】本実施形態に誤挿入カードが挿入されるときの状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図のE−E断面図である。
【図5】本実施形態の所定の第1カード装着部に第1カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【図6】本実施形態の所定の第2カード装着部に第2カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【図7】本実施形態に第3カードが挿入され、これに伴ってスライド部材が摺動したときの状態を示す図で、(a)図は図3の(a)図に対応させて描いた拡大図、(b)図は図3の(b)図に対応させて描いた拡大図である。
【図8】本実施形態の所定の第3カード装着部に第3カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は図7の(a)図に対応させて描いた拡大図、(b)図は図7の(b)図に対応させて描いた拡大図である。
【図9】本実施形態の所定の第3カード装着部に第3カードが正しく装着された状態を示す図で、(a)図は要部平面図、(b)図は(a)図から第1,第2,第3コンタクト端子を除いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 挿入口
2 スライド部材
2a 平坦面(保持手段)
2b 角部(保持手段)
3 付勢部材
4 第1コンタクト端子
5 第2コンタクト端子
6 第3コンタクト端子
7 第1カム板
7a 先端部
8 第2カム板
9 第1カム部(保持手段)
9a 平坦部(保持手段)
9b 傾斜部(保持手段)
10 カード挿入経路
11 第2カム部(保持手段)
11a 第1平坦部(保持手段)
11b 傾斜部(保持手段)
11c 第2平坦部
12 突出部(保持手段)
13 誤挿入カード
21 第1カード
22 第2カード
23 第3カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置奥側の所定の装着部に装着される長いカードと、装置手前側の所定の装着部に装着される短いカードとを含む複数種類のカードの挿入を許容させるカード挿入口と、上記複数種類のカードのそれぞれが接触可能な複数のコンタクト端子と、上記複数種類のカードのそれぞれの挿入、排出に伴って、挿入方向、及び排出方向に摺動するスライド部材と、上記複数のコンタクト端子のうちの上記装置手前側に位置する上記短いカードの接触部に接触可能なコンタクト端子による付勢力によって、カード挿入経路に向かう方向に付勢され、上記複数種類のカードのうちの装置奥側まで挿入される上記長いカードが挿入されたとき、その長いカードとの係合によって上記装置手前側に位置するコンタクト端子による付勢力に抗して、上記カード挿入経路から離れる方向に回動し、これによって上記装置手前側に位置するコンタクト端子を上記カード挿入経路から離れる方向に移動させるカム板とを備えるとともに、
上記複数種類のカードのそれぞれが上記カード挿入口から挿入されない待機状態にあって、上記カム板を、上記装置手前側に位置するコンタクト端子による付勢力に抗して、上記カード挿入経路から離れる方向に回動させた状態に保持するとともに、上記スライド部材の上記装置奥側への摺動に伴って上記保持が解除される保持手段を備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記保持手段は、
上記スライド部材に形成され、上記カード挿入経路に沿って延設される平坦面、及びこの平坦面の端部に形成される角部を含むとともに、
上記スライド部材に対向するように上記カム板に設けられ、上記待機状態で上記スライド部材の上記平坦面に係合する平坦部と、この平坦部に連設され、装置奥側に向かうに従って上記スライド部材から離れる形状に形成され、上記スライド部材の装置奥側への摺動に伴って、このスライド部材の上記角部が係合可能な傾斜部とを有するカム部を含むことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
上記スライド部材の上記平坦面、及び角部を、上記スライド部材の側壁に設けたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記保持手段は、
上記スライド部材に対向するように上記カム板に設けた突出部を含むとともに、
上記カム板に対向するように上記スライド部材に設けられ、上記待機状態で上記カム板の上記突出部に係合する平坦部と、この平坦部に連設され、上記カード挿入口に向かうに従って上記カム板から離れる形状に形成され、上記スライド部材の装置奥側への摺動に伴って上記カム板の上記突出部が係合可能な傾斜部とを有するカム部を含むことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項5】
上記請求項4記載の発明において、
上記スライド部材の上記平坦部、及び上記傾斜部を、上記スライド部材の側壁に設けたことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−130275(P2008−130275A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311545(P2006−311545)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】