カーボンナノチューブ構造体及びその製造方法
【課題】所望の機械的特性/電気的特性および異方性を有するカーボンナノチューブ(CNT)だけで一体成形された任意の立体形状の構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板の表面に直線状に成膜された金属触媒から一定方向に化学気相成長させた複数のCNTからなるCNT集合体2で構成されたCNT構造体1を、前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上であり、基部3に当接する第1の部分2A、前記基部から離間する第2の部分2B、前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分2Cを有し、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分における少なくとも一部のCNTの配向軸が連続しているものとする。
【解決手段】基板の表面に直線状に成膜された金属触媒から一定方向に化学気相成長させた複数のCNTからなるCNT集合体2で構成されたCNT構造体1を、前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上であり、基部3に当接する第1の部分2A、前記基部から離間する第2の部分2B、前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分2Cを有し、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分における少なくとも一部のCNTの配向軸が連続しているものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ構造体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成された立体形状部を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特異な物理的、化学的特性を有するカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)をマイクロマシン(MEMS)用デバイスや電子デバイスに適用しようとする機運が高まっている。例えば、CNTからなる探針の基端をカンチレバーのピラミッド部に別工程で付着させて原子間力顕微鏡のプローブを構成する技術(特許文献1)が知られている。しかしこの技術は、カンチレバーと探針とが個別に形成された別部材であり、製造工程が繁雑になりがちである。
【0003】
また、パターニング技術でモールド型を基板に形成し、CNTを溶媒に分散させた溶液をモールド型に充填し、溶媒を揮発させてナノメートルサイズの構造体やMEMS構造体を得る技術(特許文献2)が知られている。しかしこの技術は、製造工程が繁雑である上にCNTの配向を制御し難い。つまり同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体は、電気的特性(たとえば導電率)や光学的特性(たとえば透過率)や機械的特性(たとえば曲げ特性)などの物理特性について、配向方向とそれに直交する方向とで異なる特性(異方性)を備えることが知られているが、特許文献2に記載のものは、その製法上、完成した構造体に異方性を与えることは困難である。このように複数のCNTの向きがランダムであると、均一に且つ隙間なく複数のCNTを充填することができないため、所望の機械的強度を備えた高密度なCNT集合体を得ることも困難である。
【0004】
また、基板上に凹部または凸部を形成し、基板の凹部または凸部の形成面から垂直配向させて形成した複数のCNTを凹部または凸部上に倒すことにより、CNTで凹部を跨ぐ、あるいはCNTを凹凸に沿わせるものが知られている(特許文献3(例えば図16、図21参照))。本文献には、一方向に配向し且つ配向軸が連続的に変化している複数のCNTからなる電子デバイス、なかんずくスイッチへの適用を示唆する記載がある(例えば本文献の請求項4)。しかし本文献に記載のものは、基板からCNTを離間させるには、凹部または凸部を基板に形成しなければならない上、CNTを直接成長させるために耐熱性の高い基板が必要である。しかも本文献には、複数のCNTを集合体とする技術思想は認められず、可動端子を支持するカンチレバーなど、弾発的復元性を要する部位への適用は示唆されていない。
【0005】
さらに、所定方向へ配向したCNT集合体を高密度化(0.2〜1.5g/cm3)して剛性を高める技術を本発明と同一出願人は既に提案しているが(特許文献4)、これにおいては、任意の立体形状への成形性は何等考慮されていない。
【0006】
いずれにしても、リレー、メモリー等のスイッチング素子やセンサのプローブは、可動接点や探針を支持するための弾性構造体を要することが一般的であり、これをCNTで形成するためには、所望に応じて物理特性が制御された立体形状の構造体を得ることが不可欠である。しかるに、構造体の物理特性はその形状に依存するが、上述の通り従来の技術によると、異方性を有するCNTだけで任意の立体形状の構造体を一体形成することはできず、特に外力や電流を断った時に元の位置に復帰する形状復元性を得ることは困難であった。なお、本明細書においてCNT集合体とは、複数のCNT(例えば本数密度が5×1011本/cm2以上)がファン・デア・ワールス力により強固に結合し、層状または束状に集合した状態となっているものを意味する。
【特許文献1】特開2005−319581号公報
【特許文献2】特開2007−63116号公報
【特許文献3】特開2006−228818号公報
【特許文献4】特開2007−182352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、制御され且つ安定した所望の物理特性および異方性を有するCNTだけで一体成形された任意の立体形状の構造体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決するため、以下の発明が提供される。
【0009】
〔1〕同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体2で構成されたCNT構造体1を、前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上であり、基部3に当接する第1の部分2A、前記基部から離間した第2の部分2B、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分2Cを有し、前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分における少なくとも一部のCNTの配向軸が連続しているものとする。なお、本発明において、「基部」とは、基板のみならず、ブロック状の基台や、角柱や円柱上の構造物であってもよく、凸部や凹部(溝やトレンチ、段部等)が形成されたものであってもよい。
【0010】
このようにすれば、高密度なCNT集合体で構造体が形成されるので、異方性を有し且つ形状の自己保持性および復元性にすぐれた任意の立体形状の構造体をCNTのみで一体形成することができる。より詳しく言うと、同一方向に配向したCNTは、均一に且つ隙間なく所望の容積に充填することが容易であり、また、ファン・デア・ワールス力で複数のCNT同士が強く結合している。かかる高密度なCNT集合体は、一体性、形状保持性、形状復元性を有する云わば固体状の物質となり、MEMS用デバイス等に必要な物理特性を備えたものとなる。このような観点からCNT集合体に求められるCNTの配向性は、高密度化工程が可能となり、MEMS用デバイス等を実用化する上でのCNT集合体の一体性、形状保持性、形状復元性、並びに形状加工性が実用上許容される程度であればよく、必ずしも完全である必要はない。
【0011】
〔2〕同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体で構成されたCNT構造体の製造方法を、基板の表面に形成された金属触媒膜から複数のCNTを同一方向に化学気相成長させてCNT集合体を得る化学気相成長工程S1と、前記CNTの集合体を前記基板から取り外す集合体取り外し工程S2と、表面に立体形状部を備えた第2の基板を製作する第2基板製作工程S3と、前記基板から取り外したCNT集合体を前記立体形状部に適合した所定形状に成形する立体形状成形工程S4、S5と、前記第2の基板上で所定形状をなすCNT集合体に高密度化処理を施すことによって前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上となるようにして前記所定の立体形状を固定する形状固定化工程S6と、少なくとも前記固定化されたCNT集合体の不用部分を選択的に除去する不用部分除去工程S7とを含むこととする。
【0012】
〔3〕特に、前記所定形状は、前記第2の基板に当接する第1の部分、前記第2の基板から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有することとするとよい。
【0013】
〔4〕また前記立体形状成形工程は、前記CNT集合体を液体に晒す液体晒し工程S4と前記CNT集合体を前記第2の基板上に載置する載置工程S5とを含み、前記形状固定化工程は、液体を含浸した前記CNT集合体を前記第2の基板上に載置された状態で乾燥させる工程を含むこととするとよい。
【0014】
〔5〕さらに前記第2の基板が備える立体形状部は犠牲層22であり、前記不用部分除去工程は前記犠牲層の除去を含む工程とするとよい。
【0015】
このようにすれば、合成直後の低密度な状態のCNT集合体を成形することができるので、任意の立体形状を容易に得ることができ、CNT集合体を成形後に高密度化することにより、高い保形性を得ることができる。従って、例えばスイッチの可動接点やプローブの探針を支持するカンチレバー等に要求される復元力が得られるので、これらをCNTだけで一体成形することができる。また高密度化されたものは、周知のパターニング技術及びエッチング技術を適用可能であり、任意の形状への加工が容易である。特に構造体の物理特性は形状に依存するため、所望の形状に成形可能なことは、所望の物理特性を持つ構造体の形成が可能なことを意味する。しかもCNT集合体を合成する基板とCNT構造体を実装する基板とが別々の基板となるので、CNT構造体を実装する基板材質の設定自由度も高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のような技術的手段ないし手法を採用したので、所望の物理特性および異方性を有するCNTだけで一体成形された任意の立体的形状の構造体及びその製造方法を提供する上に多大な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明のCNT構造体は、一方向に配向した複数のCNTからなり、CNTの重量密度が0.1g/cm3以上のCNT集合体で構成されたものであり、基部に当接する第1の部分、基部から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有し、これら第1の部分、第2の部分、及び第3の部分における少なくとも一部の配向軸が連続していることにその特徴がある。
【0019】
<基本構造>
図1(a)、(b)に、本発明のCNT構造体の概念を断面図で示す。図1(a)において、1はCNT構造体であり、2はCNT構造体を構成するCNT集合体である。CNT構造体1は、基部3に当接する第1の部分2Aと、基部3から空間4をおいて離間する(この例では基部3の上面から離間している)第2の部分2Bと、第1の部分2Aと第2の部分2Bとを連結する屈曲した第3の部分2Cとから構成される。
【0020】
CNT集合体2を構成する複数のCNTは、その軸線を一定方向に向けており、第1の部分2A、第2の部分2B、及び第3の部分2Cにおける各配向軸が連続している。つまりこのCNT集合体2には高い配向性(異方性)がある。なお、CNTに要求される配向性は、高密度化処理の実施が可能となり、MEMS用デバイス等を実用化する上でのCNT構造体1の一体性、形状保持性、並びに形状加工性が許容される程度であればよく、必ずしも完全である必要はない。
【0021】
CNT集合体2は、互いに隣接するCNT同士が配向しているため、ファン・デア・ワールス力によって強く結合した状態となっており、その重量密度は、上記の通り0.1g/cm3以上となっている。このようにCNT集合体2におけるCNTの重量密度が0.1g/cm3以上であると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、CNT集合体2が固体としてのリジッドな様相を呈し、MEMS用デバイスや電子デバイスに適用する上でCNT構造体1に要求される機械的特性(剛性あるいは曲げ弾性など)や電気的特性(導電性など)が得られるようになる。この逆に、CNTの重量密度が0.1g/cm3に満たないと、CNT集合体2を構成するCNT同士間に有意な隙間が発生する。そのため、CNT集合体2がリジッドな固体ではなくなり、所要の機械的強度が得られなくなることはもとより、周知のパターニング技術やエッチング技術を適用した際に、例えばレジスト等の薬液がCNT同士間の隙間に沁み込んでしまい、所望の形状を持つCNT構造体1の形成が困難となる。ここでCNT集合体におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限からその上限値は1.5g/cm3程度である。
【0022】
本発明のCNT構造体1は、任意の立体形状を自己保持できるので、凸部や凹部などの支持部を基部3に形成せずに、その遊端部あるいは中間部を基部3から離間させた状態を維持することができる。またその遊端部あるいは中間部に外力が作用した際には、その遊端部あるいは中間部を、外力の作用方向に応じて変位させることができ、且つ外力が消失した際には、元の状態に復元可能である。従って、その機械的特性や電気的特性と相俟って、スイッチ、リレー、プローブ等のMEMS用デバイスや電子デバイスの構成部材として、集積回路などを形成する表面がフラットな基板に好適に使用することができる。
【0023】
CNT集合体2を構成するCNTは、単層CNTであってもよいし、多層CNTであってもよいし、これらが混在しているものであってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT構造体1の用途に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0024】
図1(a)では、CNT集合体2における基部3に当接する第1の部分2Aより上方に第2の部分2Bが位置しているが、図1(b)に示すように、両者の位置関係は逆となっていてもよい。図1(b)のものは、基部3の適所に段部5を形成することにより、このような位置関係が実現されている。
【0025】
<製造方法>
次に、本発明によるCNT構造体の製造方法について図2を参照して説明する。
【0026】
本発明に係るCNT構造体の製造方法は、図2に示す通り、次の各工程よりなる。
A.化学気相成長工程(ステップS1)
一定幅の直線状パターンの金属触媒膜を表面に形成してなる成長用基板(図示せず)を用い、金属触媒膜から基板の表面と交差する一定方向に複数のCNTを化学気相成長(以下CVDとも称す)させてCNT集合体を得る。ここで複数のCNTの成長する方向は、一般的には基板の表面に対して垂直方向であるが、実質的に一定方向でありさえすれば、その角度に格別な規定はない。
B.集合体取り外し工程(ステップS2)
成長用基板上で成長したフィルム状のCNT集合体を、例えばピンセットのような治具を用いて成長用基板から取り外す。
C.第2基板製作工程(ステップS3)
成長用基板上で成長したフィルム状のCNT集合体を載置する立体形状部(凸部または凹部)を備えた第2の基板を別工程で製作する。
D.立体形状成形工程
D−1.成長用基板から取り外した低密度なCNT集合体を液体に晒す(ステップS4)。
D−2.成長用基板から取り外した低密度なCNT集合体を第2の基板の所定位置に載置して第2の基板の立体形状部の表面輪郭にCNT集合体を沿わせる(ステップS5)。
E.形状固定化工程(ステップS6)
液体に晒したCNT集合体を第2の基板の表面に被着した状態で乾燥させて高密度化(0.1g/cm3以上)し、第2の基板の立体形状部の表面輪郭に倣った所定形状に固定する。
F.不用部分除去工程(ステップS7)
所定形状に固定されたCNT層からパターニング技術およびエッチング技術によって不用部分を除去すると共に、立体形状部が犠牲層で形成されている場合はそれも除去する。
【0027】
<片持ち梁状構造体>
以下、本発明によるCNT構造体の一例として、片持ち梁状構造体の製造方法について図3を併せて参照して更に具体的に説明する。
【0028】
先ず、化学気相成長工程(図2のステップS1)においては、例えば、厚さ1nm、幅4μmの直線状パターンの金属触媒膜を表面に成膜した成長用基板(図示せず)を用意し、この金属触媒膜から基板の表面と交差する一定方向(例えば基板の表面に対して垂直な方向)に、複数のCNTからなるCNT集合体を、周知のCVD法によって成長させる。
【0029】
ここで用いる基板としては、CNTの製造技術において従来周知の各種の材料を用いることができ、典型的には、鉄、ニッケル、クロムなどの金属および金属の酸化物や、シリコン、石英、ガラスなどの非金属、あるいはセラミックスよりなる表面が平坦なシート材あるいは板材などを使用することができる。
【0030】
直線状パターンの金属触媒膜としては、これまでCNTの製造に使用された実績のある適宜な金属を用い、周知の成膜技術を用いて形成することができる。典型的には、レジストマスクを用いたスパッタリング蒸着法で成膜した金属薄膜、たとえば鉄薄膜、塩化鉄薄膜、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜等を例示することができる。また金属触媒膜の膜厚は、触媒として用いる金属に応じた最適値に設定すればよく、例えば、鉄金属を用いた場合には、0.1nm以上100nm以下が好ましい。
【0031】
金属触媒膜の幅は、最終的に形成するCNT構造体の所要厚さに応じて設定することができ、高密度化後におけるCNT集合体の厚さの5〜20倍の値に設定される。ここで高密度化後のCNT集合体の厚さは、これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。高密度化後のCNT集合体の厚さの上限値に格別な制限はないが、電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0032】
CVD法におけるCNTの原料となる炭素化合物としては、従来と同様に、炭化水素、なかでも低級炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン等が好適なものとして使用可能である。
【0033】
反応の雰囲気ガスは、CNTと反応せず、成長温度で不活性であればよく、そのようなものとしては、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、ネオン、クリプトン、二酸化炭素、塩素等や、これらの混合気体が例示できる。
【0034】
反応の雰囲気圧力は、これまでCNTが製造された圧力範囲であれば適用可能であり、例えば102Pa〜107Paの範囲の適切な値に設定することができる。
【0035】
CVD法における成長反応時の温度は、反応圧力、金属触媒、原料炭素源等を考慮した上で適宜定められるが、通常、400〜1200(より好ましくは600〜1000)℃の範囲であるとCNTを良好に成長させることができる。
【0036】
この方法により、一定方向へ配向した複数のCNTが所定サイズのフィルム状に成長したCNT集合体が得られる(図4参照)。
【0037】
本発明に適用するCNT集合体を製造するに当たっては、本発明と同一出願人が先に提案した、反応雰囲気中に水分などを存在させて多量の垂直配向CNTを成長させる方法(Kenji Hata et al, Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes, SCIENCE, 2004.11.19, vol. 306, p. 1362-1364、あるいはPCT/JP2008/51749号明細書などを参照されたい)を適用可能である。
【0038】
この方法によって得られたCNT集合体は、純度98質量%以上、重量密度0.03g/cm3程度、比表面積600〜1300m3(未開口)/1600〜2500m3(開口)、異方性の大小の大きさ比が1:3以上、最大1:100という優れた特性を有しており、これに高密度化処理を施したものは、本発明のCNT構造体の製作に好適に適用可能である。
【0039】
なお、本発明に適用可能な垂直配向のCNT集合体を得るための技術としては、種々の公知の方法を適宜用いることができ、例えば、プラズマCVD法(Guofang Zhong et al, Growth Kinetics of 0.5 cm Vertically Aligned Single-Walled Carbon Nanotubes, Journal of Physical Chemistry B, 2007, vol. 111, p. 1907-1910)を用いてもよい 。
【0040】
次に、集合体取り外し工程(図2のステップS2)において、化学気相成長工程S1で製造したフィルム状をなすCNT集合体を成長用基板から取り外す。
【0041】
次に、第2基板製作工程(図2のステップS3)において、立体形状部としての犠牲層を備えた第2の基板を製作する。犠牲層の製作工程においては、例えば、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板21を用意し、これの表面をイソプロピルアルコール(以下、IPAとも称する)で超音波洗浄し、且つO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、150℃で10分間ベークして脱水する。これに例えばHSQ[hydrogensilsesquioxane](FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し且つ250℃で2分間ベークしたものに、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)で矩形パターンを描画した後に現像することにより、図3(a)に示すように、厚さ440nm×幅1μm×長さ5μmの犠牲層22を形成した。
【0042】
なお、第2基板製作工程S3は、化学気相成長工程S1の以前に行ってもよいし、両工程S1、S3を並行して行ってもよい。
【0043】
次の立体形状成形工程は、液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とに分けられ、液体晒し工程S4においては、成長用基板から取り外したCNT集合体23を液体に晒し、集合体載置工程S5においては、集合体取り外し工程S2で成長用基板から取り外したCNT集合体23を、第2の基板である犠牲層22が設けられたシリコン基板21上に載置する。
【0044】
これら液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とは、どちらを先に行っても結果は同じとなり、シリコン基板21上にCNT集合体23を載置した後にスプレー等でCNT集合体23に液体を染み込ませたり、液体に浸漬したCNT集合体23を液中から取り上げてシリコン基板21上に載置したりすることも可能である。好ましくは、シリコン基板21上でのCNT集合体23の位置合わせ作業が容易な点に鑑み、集合体取り外し工程S2で取り外したフィルム状のCNT集合体23を、表面張力下で水滴状の形態を保ってシリコン基板21上に存在している液体中に浸すようにして載置、位置決めするとよい。このように、シリコン基板21における犠牲層22が設けられた部位に適量の液体を滴下した状態でCNT集合体23を載置すると、CNT集合体23に液体が浸み込むので、液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とを同時に行うことができる。
【0045】
液体晒し工程S4で用いる液体としては、CNTと親和性があり、CNTを湿潤状態とした後、乾燥させたときに残留する成分がないものを使用することが好ましい。このような液体としては、たとえば水、アルコール類(IPA、エタノール、メタノール)、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)等を用いることができる。また液体に浸す時間としては、CNT集合体25の内部に気泡が残らずに全体が満遍なく濡れるのに十分な時間であればよい。
【0046】
合成直後のCNT集合体23は低密度(重量密度:0.03g/cm3程度)であり、やわらかく且つ互いに隣り合うCNT同士の結合力もさほど高くないので、図3(b)に示すように、基板21および犠牲層22の輪郭形状に倣ってこれらの表面をCNT集合体23が隙間なく覆う。ここで、基板21の表面と犠牲層22の表面に直接接している部分のCNT集合体23におけるCNTの配向方向は、基板21の表面と平行な方向となっている。
【0047】
次の形状固定化工程(図2のステップS6)においては、典型的には、液体を含浸したCNT集合体23を乾燥させる、つまりCNT集合体23に付着した液体を蒸発させることで行う。CNT集合体23を乾燥させる手法としては、たとえば室温窒素雰囲気下での自然乾燥、真空引き乾燥、アルゴン等の不活性ガス存在下での加熱などを用いることができる。
【0048】
CNT集合体23は、液体に晒されると、各CNT同士が密着して全体の体積が少し収縮し、液体の蒸発と共に密着度がより一層高まって体積がかなり収縮し、結果として高密度化する。このとき、犠牲層22を含むシリコン基板21との接触抵抗により、シリコン基板21および犠牲層22の表面と平行な方向についての収縮は殆ど無く、厚さ方向のみの収縮となり、成長時の配向状態および立体形状を維持したまま高密度化する。本例の場合、成長用基板から取り外した合成直後のCNT集合体23の厚さが4μmであったものが、形状固定化工程S6終了後に500nmに収縮していた(重量密度:0.23g/cm3)。これと同時に、高密度化したCNT集合体23とシリコン基板21および犠牲層22の間にも強い相互作用が働き、シリコン基板21および犠牲層22にCNT集合体23が強く貼り付いた状態となる。
【0049】
上記形状固定化工程においてCNT集合体23が厚さ方向のみに収縮する理由は、CNT間に液体が入り込むことによって表面張力が生じ、それによって収縮が起きると推定される。したがって、形状固定化工程における高密度化する手法は、CNT間に表面張力を生じさせる手法であれば上述の手法に限定されず、たとえば高温蒸気などを用いる手法を適用することも可能である。
【0050】
次の不用部分除去工程(図2のステップS7)では、形状固定化工程S6で高密度化されて所定の立体形状に固定されたCNT集合体23の表面にレジストHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し、250℃で2分間ベークした。
【0051】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)にてレジスト被膜に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%、ZTMA-100/日本ゼオン社製)で現像してマスク24を形成した(図3(c))。これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ社製)にてO2及びArを流速10sccmで同時に供給しながら80W、10Pa、12minの条件でエッチングを施し、CNT集合体23のマスクから露出した部分、すなわち不用部分を除去した(図3(d))。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0052】
最後に、マスク24の表層並びに犠牲層22を形成しているFOX16を緩衝弗酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業社製)で除去し、且つIPAで洗浄することにより、基板21に当接した基端部(第1の部分)25Aと、基板21から離間した片持ち梁部(第2の部分)25Bとが、屈曲形状部(第3の部分)25Cを介して一体をなすCNT構造体25を得た(図3(e))。
【0053】
ここで洗浄液の乾燥には、超臨界乾燥を行うとよい。これにより、洗浄液が蒸発する際にCNTとの界面に表面張力が作用しないので、片持ち梁部25Bが微細であっても変形せずに済み、通常は基板21から離間した形状を保持することができる。
【0054】
以上の各工程を経て実際に得られた片持ち梁状構造体のモデルを図5の電子顕微鏡写真像に示す。この片持ち梁状構造体11は、基板12に当接した基端部(第1の部分)11Aと、基板12から離間した可動片部(第2の部分)11Bとが、屈曲形状部(第3の部分)11Cを介して一体をなしており、片持ち梁状構造体11の長手方向に配向した複数のCNTからなるフィルム状のCNT集合体13で構成されており、スイッチの可動接点あるいはプローブの探針の支持部材として用いることができるものである。
【0055】
この片持ち梁状構造体11は、リジッドな立体形状を自己保持できる剛性を有すると共に適度な曲げ弾性を有し、かつ良好な導電性を有している。そして可動片部11Bの遊端に例えば下向きの力を作用させると可動片部11Bが下向きに撓み、力を解除すると元の状態に復帰する。この例では、片持ち梁状構造体11の可動片部11Bはスイッチやリレー、センサ等への適用のために、先端が尖った形状に形成されており、基板12から離間した可動片部11Bの寸法は、長さ4μm×幅200nm×厚さ500nmである。これら各部の寸法は用途に応じて適宜設定できる。また、断面形状は長方形のほか、正方形、円形、楕円形、多角形等、各種形状とすることができ、その断面形状や大きさを長さ方向にわたって変化させることもできる。
【0056】
このような片持ち梁状構造体をスイッチとして用いる場合は、図6に示すように、基板41における片持ち梁状構造体42の基端部42Aに対応する部位に予めスパッタリングなどでソース電極(図示せず)を形成しておくと同時に、基板41における片持ち梁状構造体42の可動片部42Bに対応する部位に予めスパッタリングなどでドレイン電極43及びゲート電極44を形成すると共に犠牲層(図示せず)を形成しておき、これらの上面にフィルム状のCNT集合体を被着して高密度化した後に、そのCNT集合体の不用部分をパターニング及びエッチングで除去することにより、スイッチを得ることができる。これによると、ゲート電極44に電圧を印加すると、その時に発生する静電引力で可動片部42Bがゲート電極44に吸引され、その結果、可動片部42Bがドレイン電極43に接触し、ドレイン電極43と図示していないソース電極との間が片持ち梁状構造体42を介して導通することとなる。そしてゲート電極44への印加電圧を断つと、可動片部42Bが元の位置に復帰してドレイン電極43から離間する。
【0057】
<リレー>
次に、本発明のCNT構造体をリレーに適用した例について図7を参照して説明する。
【0058】
先ず、上述した片持ち梁状構造体11の例と同様に、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板31上にTi及びAuの電極をスパッタリング形成したものを用意し、これにHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し且つ250℃で2分間ベークした後にパターニングすることにより、厚さ440nm×幅3μm×長さ6μmの犠牲層32を形成した(図7(a))。
【0059】
その上面にフィルム状をなすCNT集合体33(厚さ:4μm、重量密度:0.03g/cm3)を載置し且つ液体に晒した後に乾燥することにより、犠牲層32を覆った部分が盛り上がった立体形状にCNT集合体33が固定され且つ高密度化(厚さ:500nm、重量密度:0.23g/cm3)された(図7(b))。
【0060】
このようにして基板31に被着したCNT集合体33の表面に、レジストHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し、250℃で2分間ベークした。この後、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)にてレジスト被膜に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%、ZTMA-100/日本ゼオン社製)で現像してマスク34を形成した(図7(c))。
【0061】
これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ社製)にてO2及びArを流量10sccmで同時に供給して80W、10Pa、12minの条件でエッチングを施し、CNT集合体のマスク34から露出した部分、すなわち不用部分を除去した(図7(d))。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0062】
最後に緩衝弗酸(4.7%HF,36.2%NH4F,59.1%H2O/森田化学工業社製)でFOX16を除去し、且つIPAで洗浄することにより、リレー51の完成品を得た(図7(e))。このリレー51の電子顕微鏡写真像を図8に示す。
【0063】
このリレー51は、ソース(S)53、ドレイン(D)54、ゲート(G)55を基板31上に配置して構成される。ソース53、ドレイン54、ゲート55のいずれも高密度なCNT集合体のみからなり、これらを構成する複数のCNTは、全て同一方向に配向している。そしてその基本的構造は、図1(a)に示したタイプ、すなわち基板に当接する第1の部分、基板から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有しており、特にソース53の部分においては、第1の部分、第2の部分、及び第3の部分のCNTの配向軸がその長手方向について連続している。またソース53、ドレイン54、及びゲート55のそれぞれは、予めスパッタリングなどで形成された金属電極を介して基板31に接続している。なお、ソース53における基板31から離間した部分の寸法は、長さ3.6μm×幅170nm×厚さ500nmである。
【0064】
このリレー51においては、ソース53並びにドレイン54に電圧(5V)を印加した状態でゲート55に印加する電圧を増大させる(0〜60V)と、ゲート55への印加電圧が約50Vに達したところでソース53における基板31から離間した部分が静電引力によってドレイン54に引寄せられ、両者が互いに接触してソース53とドレイン54との間が導通状態となった(図9(a))。そしてゲート55への印加電圧を減少させると、ゲート55への印加電圧が約20Vを下回ったところでソース53における基板31から離間した部分がドレイン54から離れて元の状態へと復帰した(図9(b))。図10にその時のゲート55への印加電圧とソース53とドレイン54との間の電流との関係を示す。このように、リレー51を構成する高密度なCNT集合体は、所定形状を自己保持し得る剛性と、負荷に応じて変形し且つ復元し得る弾性とを有すると共に、良好な導電性を有しているため、このような電流の断続動作を繰返し行わせることができる。
【0065】
本実施例においては、ソース53とドレイン54との間の接離動作にヒステリシスが認められるが、これはソース53とドレイン54との間の吸着力とソース53の弾発的復元力との関係によるものであり、このヒステリシスの大きさは、ソース53とドレイン54との互いの接触面の面積及びソース53の遊端部の断面積によって適宜に調節可能である。
【0066】
図8において3端子のリレーを例示したが、本発明によれば、図11並びに図12に示すような5端子のリレーも同様にして製造することができる。5端子のリレー61は、基本的な構造は図1(a)に示したタイプとなっており、基板62上にソース63、第1ドレイン64a、第2ドレイン64b、第1ゲート65a、及び第2ゲート65bを配置して構成され、第1ドレイン64a並びに第1ゲート65aと、第2ドレイン64b並びに第2ゲート65bとの間に、ソース63と一体をなす可動片部66が延出されている。これらソース63、第1、第2ドレイン64a、64b、第1、第2ゲート65a、65b、および可動片部66のいずれも、上述の3端子リレーと同様の高密度なCNT集合体のみからなり、各集合体を構成する複数のCNTは、全て同一方向に配向している。
【0067】
この例の場合も、第1ゲート65aと第2ゲート65bとのいずれか一方に印加する電圧を増大させると、第1ドレイン64aと第2ドレイン64bとのいずれか一方にソース63が選択的に引寄せられてそれらの側面と接触し、電圧を減少させると元の状態に復帰することは、上述の3端子リレーと同様である。
【0068】
本例の構造においては、第1、第2両ドレイン64a、64bとソース63との間の吸着力を、ソース63の弾発的復元力より大きくしておき、第1、第2各ゲート65a、65bへの印加電圧を減少させても、第1、第2両ドレイン64a、64bのいずれか一方とソース63との接触状態が維持されるようにしておけば、第1ゲート65aと第2ゲート65bとのいずれか一方に一時的に電圧を印加すれば、第1、第2両ドレイン64a、64bのいずれか一方に選択的にソース63が接触したままになるメモリー素子として用いることができる。この場合、ソース63が接触したドレインと反対側のゲートに電圧を印加すれば、ソース63をドレインから離間させることができる。
【0069】
<両持ち梁状構造体>
本発明によるCNT構造体は、上述した片持ち梁状構造体に限らず、両端が基板に接合し、中間部が基板から離間した両持ち梁状構造体にも適用できる。この場合は、上述した製造方法と同様に、基板から離間した中間部を犠牲層で形成すれば良い。このようにして得られた両持ち梁状構造体のモデルを図13の電子顕微鏡写真像に示す。この両持ち梁状構造体71は、CNTのみからなる高密度なCNT集合体で構成され、基板72に当接する一対の固定部(第1の部分)71Aa、71Abと、基板72から空間73をおいて離間する可動部(第2の部分)71Bと、可動部71Bと一対の固定部71Aa、71Abとを連結する一対の屈曲部(第3の部分)71Ca、71Cbから構成されている。この両持ち梁状構造体71のモデルは、一対の固定部71Aa、71Abと一対の屈曲部71Ca、71Cbとが、共通の可動部71Bを介して連続した形態となっている。つまり基板に当接する第1の部分、基板から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分とが、2組連続したものとして構成されている。そして可動部71Bが、通常は基板72から離間し、外力が加わると基板72に接近するように変位可能になっている。
【0070】
この両持ち梁状構造体71を構成する複数のCNTは、両持ち梁の長手方向について同一方向に配向しており、その重量密度は0.23g/cm3であり、その寸法は、厚さが500nmで幅が5μmである。
【0071】
このような両持ち梁状構造体71をスイッチとして用いる場合は、基板72における両持ち梁状構造体71の固定部71Aa、71Abに対応する部位に予めスパッタリングなどでソース電極(図示せず)を形成しておくと同時に、基板72における両持ち梁状構造体71の可動部71Bに対応する部位に予めスパッタリングなどでドレイン電極75及びゲート電極76を形成すると共に犠牲層を形成しておき、これらの上面にフィルム状のCNT集合体を被着し且つ高密度化処理を施し、そのCNT集合体の不用部分をパターニング及びエッチングで除去することにより、スイッチを得ることができる。これによると、ゲート電極76に電圧を印加すると、その時に発生する静電引力で可動部71Bがゲート電極76に吸引され、その結果、可動部71Bがドレイン電極75に接触し、ドレイン電極75と図示していないソース電極との間が両持ち梁状構造体71を介して導通することとなる。そしてゲート電極76への印加電圧を断つと、可動部71Bが元の位置に復帰してドレイン電極75から離間する。
【0072】
<集積デバイス>
本発明によれば、CNTのみからなるCNT構造体を適用した集積デバイスの製造が可能である。前述の3端子型リレーを集積化した例を図14に示す。これは1つの基板上の410μm×310μm内に、6.8μm×10μmの3端子型リレーを同時に1276個形成した様子を示す電子顕微鏡写真像である。
【0073】
〔検証例1〕
本発明による構造体の物理特性が、形状によって制御可能であることを、高密度化処理を施した単純梁を例にとって以下に示す。
【0074】
片持ち梁仕様
厚さ:250nm
重量密度:0.464g/cm3
長さ:10、20、30、70μm
幅:10μm
両持ち梁仕様
厚さ:310nm
重量密度:0.374g/cm3
長さ:30、40μm
幅:10μm
これらの長さが互いに異なる複数の梁について、パルスレーザーによる梁状体の加熱振動およびレーザー反射による振動検出法(B. Ilic, S. Krylov, K. Aubin, R. Reichenbach, and H. G. Craighead, ”Optical excitation of nanoelectromechanical oscillators”, Appl. Phys. Lett. 86, 193114 (2005)を参照されたい )により、共振周波数を測定した。その結果、図15に示す通り、本発明によるCNT構造体は、長さ寸法が小さくなるに従って共振周波数が高くなる傾向を示すことが分かった。この構造体の長さと共振周波数との関係は、片持ち梁、両持ち梁ともに、図15中に引いた弾性体の理論値曲線(細線:両持ち梁、太線:片持ち梁)とよく一致する。なお、理論値曲線は、図15の右下に付記した理論式(f:共振周波数、t:厚さ、L:長さ、E:ヤング係数、ρ:密度)より、E、ρをフィッティング係数として導出されたものである。
【0075】
この結果は、本発明によるCNT構造体の共振周波数すなわち力学特性が、形状に依存する、換言すると形状によって制御可能であることを示している。さらに、この結果は、本発明によるCNT構造体が周期的に振動可能なことを示しており、これは、本発明によるCNT構造体が、弾性体として機能し、すなわち、形状保持性、形状復元性を有していることを示している。
【0076】
また図15の右上に付記した表は、物質の力学特性を表す指標のひとつである音速である。音速が高い物質は軽量で強靭であり、MEMSデバイス等の機械的要素に好適な材料と言える。測定結果からフィッティング係数によって得られた本発明によるCNT構造体の音速は、報告されている単結晶シリコン(Si)の最高値である結晶方位(111)方向での特性と比して同等以上の値を示しており、本発明によるCNT構造体が、MEMSデバイス等に極めて好適であることを示している。
【0077】
ところで、高密度化前のフィルム状CNT集合体は、重量が極めて小さいため、その重量密度の計測は困難である。そこで、高密度化前のフィルム状CNT集合体の重量密度を、線状のパターニングを施さずに全面に金属触媒膜を成膜した基板から成長させたバルク状CNT集合体の密度をもって推定するものとした。
【0078】
ここでバルク状CNT集合体の密度は、重さ/体積で計算されるが、様々な条件の下で、バルク状CNT集合体の密度は一定となることが知られている。例えば非特許文献(Don N. Futaba, et al, 84% Catalyst Activity of Water-Assisted Growth of Single Walled Carbon Nanotube Forest Characterization by a Statistical and Macroscopic Approach, Journal of Physical Chemistry B, 2006, vol. 110, p. 8035-8038)には、バルク状CNT集合体の重量密度は、集合体の高さが200μmから1mmまで一定の値(0.029g/cm3)であることが報告されている。つまりバルク状CNT集合体の成長と略同等の成長条件および触媒を用いて成長させたフィルム状CNT集合体の密度は、バルク状CNT集合体の密度と大きく相違しないものと推察できる。
【0079】
高密度化工程でのフィルム状CNT集合体の圧縮率を〈圧縮率=元の厚さ÷高密度化後の厚さ〉と定義すると、高密度化後のフィルム状CNT集合体の重量密度は〈CNT密度=圧縮率×0.029g/cm3〉となる。これによって各厚さのフィルム状CNT集合体の高密度化後の重量密度を導出したところ、重量密度が0.11g/cm3のフィルム状CNT集合体においても、基板との密着性が十分に保たれており、上述の各実施例と同様のパターニングが可能であった。これに対し、高密度化処理前のフィルム状CNT集合体(重量密度0.029g/cm3)の場合は、基板との密着性不足やレジストの侵食などにより、公知のエッチング、リソグラフィー技術の適応が実質的に不可能であった。以上に鑑み、本発明に適応可能なCNT構造体における高密度化処理後の重量密度の範囲を0.1g/cm3と規定した。
【0080】
本発明において制御可能なフィルム状CNT集合体の重量密度は、原理的には、CNTの直径を制御することによって幅広い範囲で実現することができる。すべてのCNTが等しい直径を有し、且つ高密度化工程によってすべてのCNTが最密充填されるものと仮定すると、CNTの直径寸法が小さくなるに従って高密度化後のCNT密度は増加することが容易に計算できる(図16を参照されたい)。上述した実施例で用いたフィルム状CNT集合体のCNTの平均直径は2.8nm程度であるが、この場合のCNTが最密充填したとして重量密度は、図16に示す通り、0.78g/cm3程度である。この点に関しては、すでに非特許文献(Ya-Qiong Xu, et al, Vertical Array Growth of Small Diameter Single-Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc., 128 (20), 6560 -6561, 2006)に報告されている技術を用いることにより、CNTの直径をより小さいもの(1.0nm程度)にすることは可能であることが分かっている。このことから、CNTの直径を小さくすることにより、最大1.5g/cm3程度までは重量密度を高めることが可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明によるCNT構造体の基本的構造を示す概念的断面図である。
【図2】本発明によるCNT構造体の製造方法の概略工程を示すフロー図である。
【図3】本発明による片持ち梁状構造体の製造手順を示す模式図である。
【図4】本発明に用いるフィルム状集合体の顕微鏡写真像である。
【図5】本発明による片持ち梁状構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図6】片持ち梁状構造体のスイッチへの適用例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図7】本発明によるリレーの製造手順を示す模式図である。
【図8】図7に示した手順で製造されたリレーの一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図9】図8に示したリレーの作動説明図である。
【図10】図8に示したリレーのゲート電圧とソース〜ドレイン間電流との関係線図である。
【図11】図7に示した手順で製造されるリレーの別例を示す配置図である。
【図12】図11に示したリレーの電子顕微鏡写真像である。
【図13】本発明による両持ち梁状構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図14】図8に示したリレーを集積化した基板の電子顕微鏡写真像である。
【図15】長さが互いに異なる梁状体におけるそれぞれの共振周波数と長さとの関係を示すグラフである。また、表は測定から得られたCNT梁状構造体の音速及び過去に報告されている単結晶シリコンの(111)方向の音速を示す。さらに、2つの式は、弾性体の片持ち梁および両持ち梁の長さと共振周波数との関係を示す理論式である。
【図16】CNTの直径と最密充填した時の重量密度との関係線図である。
【符号の説明】
【0082】
1 CNT構造体
2 CNT集合体
2A 第1の部分
2B 2の部分
2C 第3の部分
3 基部
S1 化学気相成長工程
S2 集合体取り外し工程
S4 液体晒し工程
S5 集合体載置工程
S6 形状固定化工程
S7 不用部分除去工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ構造体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成された立体形状部を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特異な物理的、化学的特性を有するカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)をマイクロマシン(MEMS)用デバイスや電子デバイスに適用しようとする機運が高まっている。例えば、CNTからなる探針の基端をカンチレバーのピラミッド部に別工程で付着させて原子間力顕微鏡のプローブを構成する技術(特許文献1)が知られている。しかしこの技術は、カンチレバーと探針とが個別に形成された別部材であり、製造工程が繁雑になりがちである。
【0003】
また、パターニング技術でモールド型を基板に形成し、CNTを溶媒に分散させた溶液をモールド型に充填し、溶媒を揮発させてナノメートルサイズの構造体やMEMS構造体を得る技術(特許文献2)が知られている。しかしこの技術は、製造工程が繁雑である上にCNTの配向を制御し難い。つまり同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体は、電気的特性(たとえば導電率)や光学的特性(たとえば透過率)や機械的特性(たとえば曲げ特性)などの物理特性について、配向方向とそれに直交する方向とで異なる特性(異方性)を備えることが知られているが、特許文献2に記載のものは、その製法上、完成した構造体に異方性を与えることは困難である。このように複数のCNTの向きがランダムであると、均一に且つ隙間なく複数のCNTを充填することができないため、所望の機械的強度を備えた高密度なCNT集合体を得ることも困難である。
【0004】
また、基板上に凹部または凸部を形成し、基板の凹部または凸部の形成面から垂直配向させて形成した複数のCNTを凹部または凸部上に倒すことにより、CNTで凹部を跨ぐ、あるいはCNTを凹凸に沿わせるものが知られている(特許文献3(例えば図16、図21参照))。本文献には、一方向に配向し且つ配向軸が連続的に変化している複数のCNTからなる電子デバイス、なかんずくスイッチへの適用を示唆する記載がある(例えば本文献の請求項4)。しかし本文献に記載のものは、基板からCNTを離間させるには、凹部または凸部を基板に形成しなければならない上、CNTを直接成長させるために耐熱性の高い基板が必要である。しかも本文献には、複数のCNTを集合体とする技術思想は認められず、可動端子を支持するカンチレバーなど、弾発的復元性を要する部位への適用は示唆されていない。
【0005】
さらに、所定方向へ配向したCNT集合体を高密度化(0.2〜1.5g/cm3)して剛性を高める技術を本発明と同一出願人は既に提案しているが(特許文献4)、これにおいては、任意の立体形状への成形性は何等考慮されていない。
【0006】
いずれにしても、リレー、メモリー等のスイッチング素子やセンサのプローブは、可動接点や探針を支持するための弾性構造体を要することが一般的であり、これをCNTで形成するためには、所望に応じて物理特性が制御された立体形状の構造体を得ることが不可欠である。しかるに、構造体の物理特性はその形状に依存するが、上述の通り従来の技術によると、異方性を有するCNTだけで任意の立体形状の構造体を一体形成することはできず、特に外力や電流を断った時に元の位置に復帰する形状復元性を得ることは困難であった。なお、本明細書においてCNT集合体とは、複数のCNT(例えば本数密度が5×1011本/cm2以上)がファン・デア・ワールス力により強固に結合し、層状または束状に集合した状態となっているものを意味する。
【特許文献1】特開2005−319581号公報
【特許文献2】特開2007−63116号公報
【特許文献3】特開2006−228818号公報
【特許文献4】特開2007−182352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、制御され且つ安定した所望の物理特性および異方性を有するCNTだけで一体成形された任意の立体形状の構造体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決するため、以下の発明が提供される。
【0009】
〔1〕同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体2で構成されたCNT構造体1を、前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上であり、基部3に当接する第1の部分2A、前記基部から離間した第2の部分2B、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分2Cを有し、前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分における少なくとも一部のCNTの配向軸が連続しているものとする。なお、本発明において、「基部」とは、基板のみならず、ブロック状の基台や、角柱や円柱上の構造物であってもよく、凸部や凹部(溝やトレンチ、段部等)が形成されたものであってもよい。
【0010】
このようにすれば、高密度なCNT集合体で構造体が形成されるので、異方性を有し且つ形状の自己保持性および復元性にすぐれた任意の立体形状の構造体をCNTのみで一体形成することができる。より詳しく言うと、同一方向に配向したCNTは、均一に且つ隙間なく所望の容積に充填することが容易であり、また、ファン・デア・ワールス力で複数のCNT同士が強く結合している。かかる高密度なCNT集合体は、一体性、形状保持性、形状復元性を有する云わば固体状の物質となり、MEMS用デバイス等に必要な物理特性を備えたものとなる。このような観点からCNT集合体に求められるCNTの配向性は、高密度化工程が可能となり、MEMS用デバイス等を実用化する上でのCNT集合体の一体性、形状保持性、形状復元性、並びに形状加工性が実用上許容される程度であればよく、必ずしも完全である必要はない。
【0011】
〔2〕同一方向に配向した複数のCNTからなるCNT集合体で構成されたCNT構造体の製造方法を、基板の表面に形成された金属触媒膜から複数のCNTを同一方向に化学気相成長させてCNT集合体を得る化学気相成長工程S1と、前記CNTの集合体を前記基板から取り外す集合体取り外し工程S2と、表面に立体形状部を備えた第2の基板を製作する第2基板製作工程S3と、前記基板から取り外したCNT集合体を前記立体形状部に適合した所定形状に成形する立体形状成形工程S4、S5と、前記第2の基板上で所定形状をなすCNT集合体に高密度化処理を施すことによって前記CNTの重量密度が0.1g/cm3以上となるようにして前記所定の立体形状を固定する形状固定化工程S6と、少なくとも前記固定化されたCNT集合体の不用部分を選択的に除去する不用部分除去工程S7とを含むこととする。
【0012】
〔3〕特に、前記所定形状は、前記第2の基板に当接する第1の部分、前記第2の基板から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有することとするとよい。
【0013】
〔4〕また前記立体形状成形工程は、前記CNT集合体を液体に晒す液体晒し工程S4と前記CNT集合体を前記第2の基板上に載置する載置工程S5とを含み、前記形状固定化工程は、液体を含浸した前記CNT集合体を前記第2の基板上に載置された状態で乾燥させる工程を含むこととするとよい。
【0014】
〔5〕さらに前記第2の基板が備える立体形状部は犠牲層22であり、前記不用部分除去工程は前記犠牲層の除去を含む工程とするとよい。
【0015】
このようにすれば、合成直後の低密度な状態のCNT集合体を成形することができるので、任意の立体形状を容易に得ることができ、CNT集合体を成形後に高密度化することにより、高い保形性を得ることができる。従って、例えばスイッチの可動接点やプローブの探針を支持するカンチレバー等に要求される復元力が得られるので、これらをCNTだけで一体成形することができる。また高密度化されたものは、周知のパターニング技術及びエッチング技術を適用可能であり、任意の形状への加工が容易である。特に構造体の物理特性は形状に依存するため、所望の形状に成形可能なことは、所望の物理特性を持つ構造体の形成が可能なことを意味する。しかもCNT集合体を合成する基板とCNT構造体を実装する基板とが別々の基板となるので、CNT構造体を実装する基板材質の設定自由度も高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のような技術的手段ないし手法を採用したので、所望の物理特性および異方性を有するCNTだけで一体成形された任意の立体的形状の構造体及びその製造方法を提供する上に多大な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明のCNT構造体は、一方向に配向した複数のCNTからなり、CNTの重量密度が0.1g/cm3以上のCNT集合体で構成されたものであり、基部に当接する第1の部分、基部から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有し、これら第1の部分、第2の部分、及び第3の部分における少なくとも一部の配向軸が連続していることにその特徴がある。
【0019】
<基本構造>
図1(a)、(b)に、本発明のCNT構造体の概念を断面図で示す。図1(a)において、1はCNT構造体であり、2はCNT構造体を構成するCNT集合体である。CNT構造体1は、基部3に当接する第1の部分2Aと、基部3から空間4をおいて離間する(この例では基部3の上面から離間している)第2の部分2Bと、第1の部分2Aと第2の部分2Bとを連結する屈曲した第3の部分2Cとから構成される。
【0020】
CNT集合体2を構成する複数のCNTは、その軸線を一定方向に向けており、第1の部分2A、第2の部分2B、及び第3の部分2Cにおける各配向軸が連続している。つまりこのCNT集合体2には高い配向性(異方性)がある。なお、CNTに要求される配向性は、高密度化処理の実施が可能となり、MEMS用デバイス等を実用化する上でのCNT構造体1の一体性、形状保持性、並びに形状加工性が許容される程度であればよく、必ずしも完全である必要はない。
【0021】
CNT集合体2は、互いに隣接するCNT同士が配向しているため、ファン・デア・ワールス力によって強く結合した状態となっており、その重量密度は、上記の通り0.1g/cm3以上となっている。このようにCNT集合体2におけるCNTの重量密度が0.1g/cm3以上であると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、CNT集合体2が固体としてのリジッドな様相を呈し、MEMS用デバイスや電子デバイスに適用する上でCNT構造体1に要求される機械的特性(剛性あるいは曲げ弾性など)や電気的特性(導電性など)が得られるようになる。この逆に、CNTの重量密度が0.1g/cm3に満たないと、CNT集合体2を構成するCNT同士間に有意な隙間が発生する。そのため、CNT集合体2がリジッドな固体ではなくなり、所要の機械的強度が得られなくなることはもとより、周知のパターニング技術やエッチング技術を適用した際に、例えばレジスト等の薬液がCNT同士間の隙間に沁み込んでしまい、所望の形状を持つCNT構造体1の形成が困難となる。ここでCNT集合体におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限からその上限値は1.5g/cm3程度である。
【0022】
本発明のCNT構造体1は、任意の立体形状を自己保持できるので、凸部や凹部などの支持部を基部3に形成せずに、その遊端部あるいは中間部を基部3から離間させた状態を維持することができる。またその遊端部あるいは中間部に外力が作用した際には、その遊端部あるいは中間部を、外力の作用方向に応じて変位させることができ、且つ外力が消失した際には、元の状態に復元可能である。従って、その機械的特性や電気的特性と相俟って、スイッチ、リレー、プローブ等のMEMS用デバイスや電子デバイスの構成部材として、集積回路などを形成する表面がフラットな基板に好適に使用することができる。
【0023】
CNT集合体2を構成するCNTは、単層CNTであってもよいし、多層CNTであってもよいし、これらが混在しているものであってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT構造体1の用途に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0024】
図1(a)では、CNT集合体2における基部3に当接する第1の部分2Aより上方に第2の部分2Bが位置しているが、図1(b)に示すように、両者の位置関係は逆となっていてもよい。図1(b)のものは、基部3の適所に段部5を形成することにより、このような位置関係が実現されている。
【0025】
<製造方法>
次に、本発明によるCNT構造体の製造方法について図2を参照して説明する。
【0026】
本発明に係るCNT構造体の製造方法は、図2に示す通り、次の各工程よりなる。
A.化学気相成長工程(ステップS1)
一定幅の直線状パターンの金属触媒膜を表面に形成してなる成長用基板(図示せず)を用い、金属触媒膜から基板の表面と交差する一定方向に複数のCNTを化学気相成長(以下CVDとも称す)させてCNT集合体を得る。ここで複数のCNTの成長する方向は、一般的には基板の表面に対して垂直方向であるが、実質的に一定方向でありさえすれば、その角度に格別な規定はない。
B.集合体取り外し工程(ステップS2)
成長用基板上で成長したフィルム状のCNT集合体を、例えばピンセットのような治具を用いて成長用基板から取り外す。
C.第2基板製作工程(ステップS3)
成長用基板上で成長したフィルム状のCNT集合体を載置する立体形状部(凸部または凹部)を備えた第2の基板を別工程で製作する。
D.立体形状成形工程
D−1.成長用基板から取り外した低密度なCNT集合体を液体に晒す(ステップS4)。
D−2.成長用基板から取り外した低密度なCNT集合体を第2の基板の所定位置に載置して第2の基板の立体形状部の表面輪郭にCNT集合体を沿わせる(ステップS5)。
E.形状固定化工程(ステップS6)
液体に晒したCNT集合体を第2の基板の表面に被着した状態で乾燥させて高密度化(0.1g/cm3以上)し、第2の基板の立体形状部の表面輪郭に倣った所定形状に固定する。
F.不用部分除去工程(ステップS7)
所定形状に固定されたCNT層からパターニング技術およびエッチング技術によって不用部分を除去すると共に、立体形状部が犠牲層で形成されている場合はそれも除去する。
【0027】
<片持ち梁状構造体>
以下、本発明によるCNT構造体の一例として、片持ち梁状構造体の製造方法について図3を併せて参照して更に具体的に説明する。
【0028】
先ず、化学気相成長工程(図2のステップS1)においては、例えば、厚さ1nm、幅4μmの直線状パターンの金属触媒膜を表面に成膜した成長用基板(図示せず)を用意し、この金属触媒膜から基板の表面と交差する一定方向(例えば基板の表面に対して垂直な方向)に、複数のCNTからなるCNT集合体を、周知のCVD法によって成長させる。
【0029】
ここで用いる基板としては、CNTの製造技術において従来周知の各種の材料を用いることができ、典型的には、鉄、ニッケル、クロムなどの金属および金属の酸化物や、シリコン、石英、ガラスなどの非金属、あるいはセラミックスよりなる表面が平坦なシート材あるいは板材などを使用することができる。
【0030】
直線状パターンの金属触媒膜としては、これまでCNTの製造に使用された実績のある適宜な金属を用い、周知の成膜技術を用いて形成することができる。典型的には、レジストマスクを用いたスパッタリング蒸着法で成膜した金属薄膜、たとえば鉄薄膜、塩化鉄薄膜、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜等を例示することができる。また金属触媒膜の膜厚は、触媒として用いる金属に応じた最適値に設定すればよく、例えば、鉄金属を用いた場合には、0.1nm以上100nm以下が好ましい。
【0031】
金属触媒膜の幅は、最終的に形成するCNT構造体の所要厚さに応じて設定することができ、高密度化後におけるCNT集合体の厚さの5〜20倍の値に設定される。ここで高密度化後のCNT集合体の厚さは、これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。高密度化後のCNT集合体の厚さの上限値に格別な制限はないが、電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0032】
CVD法におけるCNTの原料となる炭素化合物としては、従来と同様に、炭化水素、なかでも低級炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン等が好適なものとして使用可能である。
【0033】
反応の雰囲気ガスは、CNTと反応せず、成長温度で不活性であればよく、そのようなものとしては、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、ネオン、クリプトン、二酸化炭素、塩素等や、これらの混合気体が例示できる。
【0034】
反応の雰囲気圧力は、これまでCNTが製造された圧力範囲であれば適用可能であり、例えば102Pa〜107Paの範囲の適切な値に設定することができる。
【0035】
CVD法における成長反応時の温度は、反応圧力、金属触媒、原料炭素源等を考慮した上で適宜定められるが、通常、400〜1200(より好ましくは600〜1000)℃の範囲であるとCNTを良好に成長させることができる。
【0036】
この方法により、一定方向へ配向した複数のCNTが所定サイズのフィルム状に成長したCNT集合体が得られる(図4参照)。
【0037】
本発明に適用するCNT集合体を製造するに当たっては、本発明と同一出願人が先に提案した、反応雰囲気中に水分などを存在させて多量の垂直配向CNTを成長させる方法(Kenji Hata et al, Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes, SCIENCE, 2004.11.19, vol. 306, p. 1362-1364、あるいはPCT/JP2008/51749号明細書などを参照されたい)を適用可能である。
【0038】
この方法によって得られたCNT集合体は、純度98質量%以上、重量密度0.03g/cm3程度、比表面積600〜1300m3(未開口)/1600〜2500m3(開口)、異方性の大小の大きさ比が1:3以上、最大1:100という優れた特性を有しており、これに高密度化処理を施したものは、本発明のCNT構造体の製作に好適に適用可能である。
【0039】
なお、本発明に適用可能な垂直配向のCNT集合体を得るための技術としては、種々の公知の方法を適宜用いることができ、例えば、プラズマCVD法(Guofang Zhong et al, Growth Kinetics of 0.5 cm Vertically Aligned Single-Walled Carbon Nanotubes, Journal of Physical Chemistry B, 2007, vol. 111, p. 1907-1910)を用いてもよい 。
【0040】
次に、集合体取り外し工程(図2のステップS2)において、化学気相成長工程S1で製造したフィルム状をなすCNT集合体を成長用基板から取り外す。
【0041】
次に、第2基板製作工程(図2のステップS3)において、立体形状部としての犠牲層を備えた第2の基板を製作する。犠牲層の製作工程においては、例えば、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板21を用意し、これの表面をイソプロピルアルコール(以下、IPAとも称する)で超音波洗浄し、且つO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、150℃で10分間ベークして脱水する。これに例えばHSQ[hydrogensilsesquioxane](FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し且つ250℃で2分間ベークしたものに、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)で矩形パターンを描画した後に現像することにより、図3(a)に示すように、厚さ440nm×幅1μm×長さ5μmの犠牲層22を形成した。
【0042】
なお、第2基板製作工程S3は、化学気相成長工程S1の以前に行ってもよいし、両工程S1、S3を並行して行ってもよい。
【0043】
次の立体形状成形工程は、液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とに分けられ、液体晒し工程S4においては、成長用基板から取り外したCNT集合体23を液体に晒し、集合体載置工程S5においては、集合体取り外し工程S2で成長用基板から取り外したCNT集合体23を、第2の基板である犠牲層22が設けられたシリコン基板21上に載置する。
【0044】
これら液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とは、どちらを先に行っても結果は同じとなり、シリコン基板21上にCNT集合体23を載置した後にスプレー等でCNT集合体23に液体を染み込ませたり、液体に浸漬したCNT集合体23を液中から取り上げてシリコン基板21上に載置したりすることも可能である。好ましくは、シリコン基板21上でのCNT集合体23の位置合わせ作業が容易な点に鑑み、集合体取り外し工程S2で取り外したフィルム状のCNT集合体23を、表面張力下で水滴状の形態を保ってシリコン基板21上に存在している液体中に浸すようにして載置、位置決めするとよい。このように、シリコン基板21における犠牲層22が設けられた部位に適量の液体を滴下した状態でCNT集合体23を載置すると、CNT集合体23に液体が浸み込むので、液体晒し工程S4と集合体載置工程S5とを同時に行うことができる。
【0045】
液体晒し工程S4で用いる液体としては、CNTと親和性があり、CNTを湿潤状態とした後、乾燥させたときに残留する成分がないものを使用することが好ましい。このような液体としては、たとえば水、アルコール類(IPA、エタノール、メタノール)、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)等を用いることができる。また液体に浸す時間としては、CNT集合体25の内部に気泡が残らずに全体が満遍なく濡れるのに十分な時間であればよい。
【0046】
合成直後のCNT集合体23は低密度(重量密度:0.03g/cm3程度)であり、やわらかく且つ互いに隣り合うCNT同士の結合力もさほど高くないので、図3(b)に示すように、基板21および犠牲層22の輪郭形状に倣ってこれらの表面をCNT集合体23が隙間なく覆う。ここで、基板21の表面と犠牲層22の表面に直接接している部分のCNT集合体23におけるCNTの配向方向は、基板21の表面と平行な方向となっている。
【0047】
次の形状固定化工程(図2のステップS6)においては、典型的には、液体を含浸したCNT集合体23を乾燥させる、つまりCNT集合体23に付着した液体を蒸発させることで行う。CNT集合体23を乾燥させる手法としては、たとえば室温窒素雰囲気下での自然乾燥、真空引き乾燥、アルゴン等の不活性ガス存在下での加熱などを用いることができる。
【0048】
CNT集合体23は、液体に晒されると、各CNT同士が密着して全体の体積が少し収縮し、液体の蒸発と共に密着度がより一層高まって体積がかなり収縮し、結果として高密度化する。このとき、犠牲層22を含むシリコン基板21との接触抵抗により、シリコン基板21および犠牲層22の表面と平行な方向についての収縮は殆ど無く、厚さ方向のみの収縮となり、成長時の配向状態および立体形状を維持したまま高密度化する。本例の場合、成長用基板から取り外した合成直後のCNT集合体23の厚さが4μmであったものが、形状固定化工程S6終了後に500nmに収縮していた(重量密度:0.23g/cm3)。これと同時に、高密度化したCNT集合体23とシリコン基板21および犠牲層22の間にも強い相互作用が働き、シリコン基板21および犠牲層22にCNT集合体23が強く貼り付いた状態となる。
【0049】
上記形状固定化工程においてCNT集合体23が厚さ方向のみに収縮する理由は、CNT間に液体が入り込むことによって表面張力が生じ、それによって収縮が起きると推定される。したがって、形状固定化工程における高密度化する手法は、CNT間に表面張力を生じさせる手法であれば上述の手法に限定されず、たとえば高温蒸気などを用いる手法を適用することも可能である。
【0050】
次の不用部分除去工程(図2のステップS7)では、形状固定化工程S6で高密度化されて所定の立体形状に固定されたCNT集合体23の表面にレジストHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し、250℃で2分間ベークした。
【0051】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)にてレジスト被膜に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%、ZTMA-100/日本ゼオン社製)で現像してマスク24を形成した(図3(c))。これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ社製)にてO2及びArを流速10sccmで同時に供給しながら80W、10Pa、12minの条件でエッチングを施し、CNT集合体23のマスクから露出した部分、すなわち不用部分を除去した(図3(d))。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0052】
最後に、マスク24の表層並びに犠牲層22を形成しているFOX16を緩衝弗酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業社製)で除去し、且つIPAで洗浄することにより、基板21に当接した基端部(第1の部分)25Aと、基板21から離間した片持ち梁部(第2の部分)25Bとが、屈曲形状部(第3の部分)25Cを介して一体をなすCNT構造体25を得た(図3(e))。
【0053】
ここで洗浄液の乾燥には、超臨界乾燥を行うとよい。これにより、洗浄液が蒸発する際にCNTとの界面に表面張力が作用しないので、片持ち梁部25Bが微細であっても変形せずに済み、通常は基板21から離間した形状を保持することができる。
【0054】
以上の各工程を経て実際に得られた片持ち梁状構造体のモデルを図5の電子顕微鏡写真像に示す。この片持ち梁状構造体11は、基板12に当接した基端部(第1の部分)11Aと、基板12から離間した可動片部(第2の部分)11Bとが、屈曲形状部(第3の部分)11Cを介して一体をなしており、片持ち梁状構造体11の長手方向に配向した複数のCNTからなるフィルム状のCNT集合体13で構成されており、スイッチの可動接点あるいはプローブの探針の支持部材として用いることができるものである。
【0055】
この片持ち梁状構造体11は、リジッドな立体形状を自己保持できる剛性を有すると共に適度な曲げ弾性を有し、かつ良好な導電性を有している。そして可動片部11Bの遊端に例えば下向きの力を作用させると可動片部11Bが下向きに撓み、力を解除すると元の状態に復帰する。この例では、片持ち梁状構造体11の可動片部11Bはスイッチやリレー、センサ等への適用のために、先端が尖った形状に形成されており、基板12から離間した可動片部11Bの寸法は、長さ4μm×幅200nm×厚さ500nmである。これら各部の寸法は用途に応じて適宜設定できる。また、断面形状は長方形のほか、正方形、円形、楕円形、多角形等、各種形状とすることができ、その断面形状や大きさを長さ方向にわたって変化させることもできる。
【0056】
このような片持ち梁状構造体をスイッチとして用いる場合は、図6に示すように、基板41における片持ち梁状構造体42の基端部42Aに対応する部位に予めスパッタリングなどでソース電極(図示せず)を形成しておくと同時に、基板41における片持ち梁状構造体42の可動片部42Bに対応する部位に予めスパッタリングなどでドレイン電極43及びゲート電極44を形成すると共に犠牲層(図示せず)を形成しておき、これらの上面にフィルム状のCNT集合体を被着して高密度化した後に、そのCNT集合体の不用部分をパターニング及びエッチングで除去することにより、スイッチを得ることができる。これによると、ゲート電極44に電圧を印加すると、その時に発生する静電引力で可動片部42Bがゲート電極44に吸引され、その結果、可動片部42Bがドレイン電極43に接触し、ドレイン電極43と図示していないソース電極との間が片持ち梁状構造体42を介して導通することとなる。そしてゲート電極44への印加電圧を断つと、可動片部42Bが元の位置に復帰してドレイン電極43から離間する。
【0057】
<リレー>
次に、本発明のCNT構造体をリレーに適用した例について図7を参照して説明する。
【0058】
先ず、上述した片持ち梁状構造体11の例と同様に、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板31上にTi及びAuの電極をスパッタリング形成したものを用意し、これにHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し且つ250℃で2分間ベークした後にパターニングすることにより、厚さ440nm×幅3μm×長さ6μmの犠牲層32を形成した(図7(a))。
【0059】
その上面にフィルム状をなすCNT集合体33(厚さ:4μm、重量密度:0.03g/cm3)を載置し且つ液体に晒した後に乾燥することにより、犠牲層32を覆った部分が盛り上がった立体形状にCNT集合体33が固定され且つ高密度化(厚さ:500nm、重量密度:0.23g/cm3)された(図7(b))。
【0060】
このようにして基板31に被着したCNT集合体33の表面に、レジストHSQ(FOX16/ダウコーニング社製)をスピンコート法で塗布し、250℃で2分間ベークした。この後、電子線描画装置(CABL8000/クレステック社製)にてレジスト被膜に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%、ZTMA-100/日本ゼオン社製)で現像してマスク34を形成した(図7(c))。
【0061】
これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ社製)にてO2及びArを流量10sccmで同時に供給して80W、10Pa、12minの条件でエッチングを施し、CNT集合体のマスク34から露出した部分、すなわち不用部分を除去した(図7(d))。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0062】
最後に緩衝弗酸(4.7%HF,36.2%NH4F,59.1%H2O/森田化学工業社製)でFOX16を除去し、且つIPAで洗浄することにより、リレー51の完成品を得た(図7(e))。このリレー51の電子顕微鏡写真像を図8に示す。
【0063】
このリレー51は、ソース(S)53、ドレイン(D)54、ゲート(G)55を基板31上に配置して構成される。ソース53、ドレイン54、ゲート55のいずれも高密度なCNT集合体のみからなり、これらを構成する複数のCNTは、全て同一方向に配向している。そしてその基本的構造は、図1(a)に示したタイプ、すなわち基板に当接する第1の部分、基板から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有しており、特にソース53の部分においては、第1の部分、第2の部分、及び第3の部分のCNTの配向軸がその長手方向について連続している。またソース53、ドレイン54、及びゲート55のそれぞれは、予めスパッタリングなどで形成された金属電極を介して基板31に接続している。なお、ソース53における基板31から離間した部分の寸法は、長さ3.6μm×幅170nm×厚さ500nmである。
【0064】
このリレー51においては、ソース53並びにドレイン54に電圧(5V)を印加した状態でゲート55に印加する電圧を増大させる(0〜60V)と、ゲート55への印加電圧が約50Vに達したところでソース53における基板31から離間した部分が静電引力によってドレイン54に引寄せられ、両者が互いに接触してソース53とドレイン54との間が導通状態となった(図9(a))。そしてゲート55への印加電圧を減少させると、ゲート55への印加電圧が約20Vを下回ったところでソース53における基板31から離間した部分がドレイン54から離れて元の状態へと復帰した(図9(b))。図10にその時のゲート55への印加電圧とソース53とドレイン54との間の電流との関係を示す。このように、リレー51を構成する高密度なCNT集合体は、所定形状を自己保持し得る剛性と、負荷に応じて変形し且つ復元し得る弾性とを有すると共に、良好な導電性を有しているため、このような電流の断続動作を繰返し行わせることができる。
【0065】
本実施例においては、ソース53とドレイン54との間の接離動作にヒステリシスが認められるが、これはソース53とドレイン54との間の吸着力とソース53の弾発的復元力との関係によるものであり、このヒステリシスの大きさは、ソース53とドレイン54との互いの接触面の面積及びソース53の遊端部の断面積によって適宜に調節可能である。
【0066】
図8において3端子のリレーを例示したが、本発明によれば、図11並びに図12に示すような5端子のリレーも同様にして製造することができる。5端子のリレー61は、基本的な構造は図1(a)に示したタイプとなっており、基板62上にソース63、第1ドレイン64a、第2ドレイン64b、第1ゲート65a、及び第2ゲート65bを配置して構成され、第1ドレイン64a並びに第1ゲート65aと、第2ドレイン64b並びに第2ゲート65bとの間に、ソース63と一体をなす可動片部66が延出されている。これらソース63、第1、第2ドレイン64a、64b、第1、第2ゲート65a、65b、および可動片部66のいずれも、上述の3端子リレーと同様の高密度なCNT集合体のみからなり、各集合体を構成する複数のCNTは、全て同一方向に配向している。
【0067】
この例の場合も、第1ゲート65aと第2ゲート65bとのいずれか一方に印加する電圧を増大させると、第1ドレイン64aと第2ドレイン64bとのいずれか一方にソース63が選択的に引寄せられてそれらの側面と接触し、電圧を減少させると元の状態に復帰することは、上述の3端子リレーと同様である。
【0068】
本例の構造においては、第1、第2両ドレイン64a、64bとソース63との間の吸着力を、ソース63の弾発的復元力より大きくしておき、第1、第2各ゲート65a、65bへの印加電圧を減少させても、第1、第2両ドレイン64a、64bのいずれか一方とソース63との接触状態が維持されるようにしておけば、第1ゲート65aと第2ゲート65bとのいずれか一方に一時的に電圧を印加すれば、第1、第2両ドレイン64a、64bのいずれか一方に選択的にソース63が接触したままになるメモリー素子として用いることができる。この場合、ソース63が接触したドレインと反対側のゲートに電圧を印加すれば、ソース63をドレインから離間させることができる。
【0069】
<両持ち梁状構造体>
本発明によるCNT構造体は、上述した片持ち梁状構造体に限らず、両端が基板に接合し、中間部が基板から離間した両持ち梁状構造体にも適用できる。この場合は、上述した製造方法と同様に、基板から離間した中間部を犠牲層で形成すれば良い。このようにして得られた両持ち梁状構造体のモデルを図13の電子顕微鏡写真像に示す。この両持ち梁状構造体71は、CNTのみからなる高密度なCNT集合体で構成され、基板72に当接する一対の固定部(第1の部分)71Aa、71Abと、基板72から空間73をおいて離間する可動部(第2の部分)71Bと、可動部71Bと一対の固定部71Aa、71Abとを連結する一対の屈曲部(第3の部分)71Ca、71Cbから構成されている。この両持ち梁状構造体71のモデルは、一対の固定部71Aa、71Abと一対の屈曲部71Ca、71Cbとが、共通の可動部71Bを介して連続した形態となっている。つまり基板に当接する第1の部分、基板から離間した第2の部分、及び第1の部分と第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分とが、2組連続したものとして構成されている。そして可動部71Bが、通常は基板72から離間し、外力が加わると基板72に接近するように変位可能になっている。
【0070】
この両持ち梁状構造体71を構成する複数のCNTは、両持ち梁の長手方向について同一方向に配向しており、その重量密度は0.23g/cm3であり、その寸法は、厚さが500nmで幅が5μmである。
【0071】
このような両持ち梁状構造体71をスイッチとして用いる場合は、基板72における両持ち梁状構造体71の固定部71Aa、71Abに対応する部位に予めスパッタリングなどでソース電極(図示せず)を形成しておくと同時に、基板72における両持ち梁状構造体71の可動部71Bに対応する部位に予めスパッタリングなどでドレイン電極75及びゲート電極76を形成すると共に犠牲層を形成しておき、これらの上面にフィルム状のCNT集合体を被着し且つ高密度化処理を施し、そのCNT集合体の不用部分をパターニング及びエッチングで除去することにより、スイッチを得ることができる。これによると、ゲート電極76に電圧を印加すると、その時に発生する静電引力で可動部71Bがゲート電極76に吸引され、その結果、可動部71Bがドレイン電極75に接触し、ドレイン電極75と図示していないソース電極との間が両持ち梁状構造体71を介して導通することとなる。そしてゲート電極76への印加電圧を断つと、可動部71Bが元の位置に復帰してドレイン電極75から離間する。
【0072】
<集積デバイス>
本発明によれば、CNTのみからなるCNT構造体を適用した集積デバイスの製造が可能である。前述の3端子型リレーを集積化した例を図14に示す。これは1つの基板上の410μm×310μm内に、6.8μm×10μmの3端子型リレーを同時に1276個形成した様子を示す電子顕微鏡写真像である。
【0073】
〔検証例1〕
本発明による構造体の物理特性が、形状によって制御可能であることを、高密度化処理を施した単純梁を例にとって以下に示す。
【0074】
片持ち梁仕様
厚さ:250nm
重量密度:0.464g/cm3
長さ:10、20、30、70μm
幅:10μm
両持ち梁仕様
厚さ:310nm
重量密度:0.374g/cm3
長さ:30、40μm
幅:10μm
これらの長さが互いに異なる複数の梁について、パルスレーザーによる梁状体の加熱振動およびレーザー反射による振動検出法(B. Ilic, S. Krylov, K. Aubin, R. Reichenbach, and H. G. Craighead, ”Optical excitation of nanoelectromechanical oscillators”, Appl. Phys. Lett. 86, 193114 (2005)を参照されたい )により、共振周波数を測定した。その結果、図15に示す通り、本発明によるCNT構造体は、長さ寸法が小さくなるに従って共振周波数が高くなる傾向を示すことが分かった。この構造体の長さと共振周波数との関係は、片持ち梁、両持ち梁ともに、図15中に引いた弾性体の理論値曲線(細線:両持ち梁、太線:片持ち梁)とよく一致する。なお、理論値曲線は、図15の右下に付記した理論式(f:共振周波数、t:厚さ、L:長さ、E:ヤング係数、ρ:密度)より、E、ρをフィッティング係数として導出されたものである。
【0075】
この結果は、本発明によるCNT構造体の共振周波数すなわち力学特性が、形状に依存する、換言すると形状によって制御可能であることを示している。さらに、この結果は、本発明によるCNT構造体が周期的に振動可能なことを示しており、これは、本発明によるCNT構造体が、弾性体として機能し、すなわち、形状保持性、形状復元性を有していることを示している。
【0076】
また図15の右上に付記した表は、物質の力学特性を表す指標のひとつである音速である。音速が高い物質は軽量で強靭であり、MEMSデバイス等の機械的要素に好適な材料と言える。測定結果からフィッティング係数によって得られた本発明によるCNT構造体の音速は、報告されている単結晶シリコン(Si)の最高値である結晶方位(111)方向での特性と比して同等以上の値を示しており、本発明によるCNT構造体が、MEMSデバイス等に極めて好適であることを示している。
【0077】
ところで、高密度化前のフィルム状CNT集合体は、重量が極めて小さいため、その重量密度の計測は困難である。そこで、高密度化前のフィルム状CNT集合体の重量密度を、線状のパターニングを施さずに全面に金属触媒膜を成膜した基板から成長させたバルク状CNT集合体の密度をもって推定するものとした。
【0078】
ここでバルク状CNT集合体の密度は、重さ/体積で計算されるが、様々な条件の下で、バルク状CNT集合体の密度は一定となることが知られている。例えば非特許文献(Don N. Futaba, et al, 84% Catalyst Activity of Water-Assisted Growth of Single Walled Carbon Nanotube Forest Characterization by a Statistical and Macroscopic Approach, Journal of Physical Chemistry B, 2006, vol. 110, p. 8035-8038)には、バルク状CNT集合体の重量密度は、集合体の高さが200μmから1mmまで一定の値(0.029g/cm3)であることが報告されている。つまりバルク状CNT集合体の成長と略同等の成長条件および触媒を用いて成長させたフィルム状CNT集合体の密度は、バルク状CNT集合体の密度と大きく相違しないものと推察できる。
【0079】
高密度化工程でのフィルム状CNT集合体の圧縮率を〈圧縮率=元の厚さ÷高密度化後の厚さ〉と定義すると、高密度化後のフィルム状CNT集合体の重量密度は〈CNT密度=圧縮率×0.029g/cm3〉となる。これによって各厚さのフィルム状CNT集合体の高密度化後の重量密度を導出したところ、重量密度が0.11g/cm3のフィルム状CNT集合体においても、基板との密着性が十分に保たれており、上述の各実施例と同様のパターニングが可能であった。これに対し、高密度化処理前のフィルム状CNT集合体(重量密度0.029g/cm3)の場合は、基板との密着性不足やレジストの侵食などにより、公知のエッチング、リソグラフィー技術の適応が実質的に不可能であった。以上に鑑み、本発明に適応可能なCNT構造体における高密度化処理後の重量密度の範囲を0.1g/cm3と規定した。
【0080】
本発明において制御可能なフィルム状CNT集合体の重量密度は、原理的には、CNTの直径を制御することによって幅広い範囲で実現することができる。すべてのCNTが等しい直径を有し、且つ高密度化工程によってすべてのCNTが最密充填されるものと仮定すると、CNTの直径寸法が小さくなるに従って高密度化後のCNT密度は増加することが容易に計算できる(図16を参照されたい)。上述した実施例で用いたフィルム状CNT集合体のCNTの平均直径は2.8nm程度であるが、この場合のCNTが最密充填したとして重量密度は、図16に示す通り、0.78g/cm3程度である。この点に関しては、すでに非特許文献(Ya-Qiong Xu, et al, Vertical Array Growth of Small Diameter Single-Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc., 128 (20), 6560 -6561, 2006)に報告されている技術を用いることにより、CNTの直径をより小さいもの(1.0nm程度)にすることは可能であることが分かっている。このことから、CNTの直径を小さくすることにより、最大1.5g/cm3程度までは重量密度を高めることが可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明によるCNT構造体の基本的構造を示す概念的断面図である。
【図2】本発明によるCNT構造体の製造方法の概略工程を示すフロー図である。
【図3】本発明による片持ち梁状構造体の製造手順を示す模式図である。
【図4】本発明に用いるフィルム状集合体の顕微鏡写真像である。
【図5】本発明による片持ち梁状構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図6】片持ち梁状構造体のスイッチへの適用例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図7】本発明によるリレーの製造手順を示す模式図である。
【図8】図7に示した手順で製造されたリレーの一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図9】図8に示したリレーの作動説明図である。
【図10】図8に示したリレーのゲート電圧とソース〜ドレイン間電流との関係線図である。
【図11】図7に示した手順で製造されるリレーの別例を示す配置図である。
【図12】図11に示したリレーの電子顕微鏡写真像である。
【図13】本発明による両持ち梁状構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図14】図8に示したリレーを集積化した基板の電子顕微鏡写真像である。
【図15】長さが互いに異なる梁状体におけるそれぞれの共振周波数と長さとの関係を示すグラフである。また、表は測定から得られたCNT梁状構造体の音速及び過去に報告されている単結晶シリコンの(111)方向の音速を示す。さらに、2つの式は、弾性体の片持ち梁および両持ち梁の長さと共振周波数との関係を示す理論式である。
【図16】CNTの直径と最密充填した時の重量密度との関係線図である。
【符号の説明】
【0082】
1 CNT構造体
2 CNT集合体
2A 第1の部分
2B 2の部分
2C 第3の部分
3 基部
S1 化学気相成長工程
S2 集合体取り外し工程
S4 液体晒し工程
S5 集合体載置工程
S6 形状固定化工程
S7 不用部分除去工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成されたカーボンナノチューブ構造体であって、
前記カーボンナノチューブの重量密度が0.1g/cm3以上であり、
基部に当接する第1の部分、前記基部から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有し、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分における少なくとも一部のカーボンナノチューブの配向軸が連続していることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体。
【請求項2】
同一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成されたカーボンナノチューブ構造体の製造方法であって、
基板の表面に形成された金属触媒膜から複数のカーボンナノチューブを同一方向に化学気相成長させてカーボンナノチューブ集合体を得る化学気相成長工程と、
前記カーボンナノチューブ集合体を前記基板から取り外す集合体取り外し工程と、
表面に立体形状部を備えた第2の基板を製作する第2基板製作工程と、
前記基板から取り外したカーボンナノチューブ集合体を前記立体形状部に適合した所定形状に成形する立体形状成形工程と、
前記第2の基板上で所定形状をなすカーボンナノチューブ集合体に高密度化処理を施すことによって前記カーボンナノチューブの重量密度が0.1g/cm3以上となるようにして前記所定形状を固定する形状固定化工程と、
少なくとも前記固定化されたカーボンナノチューブ集合体の不用部分を選択的に除去する不用部分除去工程と、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記所定形状は、前記第2の基板に当接する第1の部分、前記第2の基板から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有することを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記立体形状成形工程は、前記カーボンナノチューブ集合体を液体に晒す液体晒し工程と前記カーボンナノチューブ集合体を前記第2の基板上に載置する載置工程とを含み、
前記形状固定化工程は、液体を含浸した前記カーボンナノチューブ集合体を前記第2の基板上に載置された状態で乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の基板が備える立体形状部は犠牲層であり、前記不用部分除去工程は前記犠牲層の除去を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項1】
同一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成されたカーボンナノチューブ構造体であって、
前記カーボンナノチューブの重量密度が0.1g/cm3以上であり、
基部に当接する第1の部分、前記基部から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有し、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分における少なくとも一部のカーボンナノチューブの配向軸が連続していることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体。
【請求項2】
同一方向に配向した複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ集合体で構成されたカーボンナノチューブ構造体の製造方法であって、
基板の表面に形成された金属触媒膜から複数のカーボンナノチューブを同一方向に化学気相成長させてカーボンナノチューブ集合体を得る化学気相成長工程と、
前記カーボンナノチューブ集合体を前記基板から取り外す集合体取り外し工程と、
表面に立体形状部を備えた第2の基板を製作する第2基板製作工程と、
前記基板から取り外したカーボンナノチューブ集合体を前記立体形状部に適合した所定形状に成形する立体形状成形工程と、
前記第2の基板上で所定形状をなすカーボンナノチューブ集合体に高密度化処理を施すことによって前記カーボンナノチューブの重量密度が0.1g/cm3以上となるようにして前記所定形状を固定する形状固定化工程と、
少なくとも前記固定化されたカーボンナノチューブ集合体の不用部分を選択的に除去する不用部分除去工程と、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記所定形状は、前記第2の基板に当接する第1の部分、前記第2の基板から離間した第2の部分、及び前記第1の部分と前記第2の部分とを連結する屈曲形状の第3の部分を有することを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記立体形状成形工程は、前記カーボンナノチューブ集合体を液体に晒す液体晒し工程と前記カーボンナノチューブ集合体を前記第2の基板上に載置する載置工程とを含み、
前記形状固定化工程は、液体を含浸した前記カーボンナノチューブ集合体を前記第2の基板上に載置された状態で乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の基板が備える立体形状部は犠牲層であり、前記不用部分除去工程は前記犠牲層の除去を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−208975(P2009−208975A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51320(P2008−51320)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「高集積・複合MEMS製造技術開発事業 MEMS/ナノ機能の複合技術の開発(ナノ材料(CNTなど)の選択的形成技術)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「高集積・複合MEMS製造技術開発事業 MEMS/ナノ機能の複合技術の開発(ナノ材料(CNTなど)の選択的形成技術)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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