説明

ガスタービン翼およびその製造方法

【課題】溶接部を含みガスタービン翼において、溶接金属の粒界直線化を抑制して、疲労特性と耐クラック性の優れたガスタービン翼が得られるようにする。
【解決手段】γ’相析出強化型Ni基超合金基材の一部を溶接金属にて構成したガスタービン翼において、溶接金属を4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金とする。翼基材をストリップ化工程、γ’相を再固溶させる溶体化処理工程、前記溶接金属を得ることができる溶接ワイヤにてTIG法により不活性ガスチャンバ内で溶接する工程、1100〜1150℃のHIP処理工程、835〜855℃の時効処理工程にて製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン翼およびその製造方法に関する。本発明のガスタービン翼は、産業用ガスタービンのタービン動翼に好適である。また、主に損傷を受けた後に溶接補修を行った溶接補修翼を対象とするが、新品の翼であっても高温高応力部を予め溶接金属で構成するものには適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン動翼は1000℃以上の高温に曝されるため、疲労クラック、酸化減肉等の損傷が発生する。損傷を受けた動翼は廃棄されるか或いは補修により再使用される。
【0003】
ガスタービン動翼は精密鋳造材であり、等軸晶材、一方向凝固材、単結晶と3つのタイプが存在し、いずれも材質はγ’相析出強化型Ni基超合金である。γ’相は、NiAlよりなる金属間化合物であり、温度の上昇に伴い強度が上昇するという特異な特性を有するため、γ’相析出強化型Ni基超合金は極めて高い高温強度を示す。また、鋳造組織特有の樹枝状組織を呈するため、等軸晶や一方向凝固材でも結晶粒界が入り組んだ形態となり、粒界強度が高く耐クラック性や疲労強度が極めて高い。
【0004】
このように、ガスタービン動翼に用いられるγ’相析出強化型Ni基超合金は高い高温強度を有するが、一方で高温及び低温での延性が低く加工性と溶接性が悪いため、溶接が困難であり溶接補修が難しい。
【0005】
しかし、溶接方法の高度化と、強度と溶接性に優れた溶接材の開発により溶接補修が可能になってきた。溶接材料は粉末材とワイヤ材に分類される。ワイヤ材は、作業性が良く、歩留まりも良いが、熱間加工と冷間引き抜きでワイヤ材を製作するため、加工性が悪い高強度材は用いることができない。粉末材は、噴霧した液相を急冷して製作するため加工性の悪い高強度材も用いることができるが、材料の総表面積が大きいため、溶接プロセス中に酸化或いは吸着により混入するガス成分の量がワイヤ材に比べて多く、耐酸化性や疲労強度が十分に得られない。
【0006】
特許文献1〜3には、ガスタービン翼を溶接補修するための溶接材料について記載されている。前記したように、ガスタービン動翼材はγ’相析出強化型合金であるが、高温および低温での延性が低く加工性と溶接性が悪いため、これらの公知例では、γ’相析出強化型合金ではなく、Mo,W,Ta,Nbなどの耐火元素を多量に添加した固溶強化型合金を用いている。特許文献2では、耐火金属の総和を15〜28wt.%(重量%)にして、高い高温強度特性と加工性、溶接性を両立させている。特許文献1では、耐火元素の総和ではなく、W,Mo,Taについてそれぞれ適正な添加量を規定している。また、Moを添加せず、その分、Taの添加量を多くしている。特許文献1〜3の何れもγ’相の析出量を少なくするためAlの添加量を少なくしているが、Alは耐熱合金の耐酸化性の向上に大きく寄与する元素であり、Al減量に伴う耐酸化性の悪化が生じることから、それを補うためにMn,Siを適量添加している。特許文献3では、高温での粒界窒化を抑えるためにもAlの低減が必要であることが記載されている。
【0007】
溶接時には、ポロシティやブローホールなどの微視欠陥が発生するため、これらを除去する目的でHIP処理が行われる。HIP処理は高温で等方的な高い圧力を付加するものであり、ガスタービン動翼材の場合、γ’相が固溶する1160℃〜1200℃で実施されるのが一般的である。
【0008】
【特許文献1】特開2001−123237号公報(要約)
【特許文献2】特開2001−158929号公報(要約)
【特許文献3】特開2006−291344号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
溶接材料では、溶接中のガス成分の混入、溶接性や加工性重視による合金成分の違いから、動翼材と同等の強度を得ることは難しい。特に酸素の混入が多いと耐酸化性が大きく劣化する。また、ガス成分や合金成分の違いだけでなく、凝固速度の違いによる凝固組織の違いもある。
【0010】
動翼材は精密鋳造のため鋳型の中でゆっくり固まるが、溶接材はこれと比較すると凝固時の冷却速度がかなり速くなる。特にCは、凝固時に液相に濃化し、最終凝固部である粒界に偏析するため、粒界に炭化物が多く形成される。粒界に析出した炭化物は粒界をピン止めし、粒界の移動を阻止する働きがあり、凝固速度が遅く粒界偏析が大きい動翼材ではHIP処理を行っても粒界移動が起こらず、凝固時の樹枝状組織が維持される。炭化物だけでなく、共晶γ’相や粒界に偏析した高融点金属も粒界移動を阻止する働きがある。
【0011】
これに対して、溶接材では凝固速度が速いため、偏析が小さく、粒界に形成される炭化物も少ないため、HIP処理で粒界が容易に移動し樹枝状組織が直線化し、これにより粒界強度が低下し、高温延性、疲労強度および耐クラック性が低下する。
【0012】
本発明の目的は、溶接補修部或いは高温高応力部が溶接金属で構成されるガスタービン翼において、溶接金属の粒界直線化を抑制して、従来よりも優れた疲労特性と耐クラック性を有する溶接部が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部が溶接金属にて構成されているガスタービン翼において、前記溶接金属が4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金よりなることを特徴とする。
【0014】
本発明は、γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部が固溶強化型Ni基合金よりなる溶接金属にて構成されているガスタービン翼において、前記溶接金属が4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金よりなり、前記翼基材と前記溶接金属との境界部分が前記γ’相析出強化型Ni基超合金と前記溶接金属との混合物よりなることを特徴とする。
【0015】
本発明は、γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部を溶接金属にて構成するガスタービン翼の製造方法において、前記翼基材をストリップにする工程と、前記前記翼基材におけるγ’相を再固溶させる溶体化処理工程と、前記溶接金属にて構成する部分を4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金よりなる溶接ワイヤを使用してTIG法により不活性ガスチャンバ内で溶接して形成する溶接工程と、前記溶接工程の終了後に1100〜1150℃の温度でHIP処理を施すHIP処理工程と、その後で835〜855℃の温度で時効処理を施す時効処理工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明は、γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部を溶接金属にて構成するガスタービン翼の製造方法において、前記溶接金属にて構成する部分を4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金よりなる溶接ワイヤを使用してTIG法により不活性ガスチャンバ内で溶接することにより形成する溶接工程と、前記溶接工程の終了後に1100〜1150℃の温度でHIP処理を施すHIP処理工程と、その後、835〜855℃の温度で時効処理を施す時効処理工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のガスタービン翼における溶接金属或いは本発明のガスタービン翼製造方法における溶接ワイヤには、0.25〜1wt.%のAl,0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnを含有させることができる。これにより、溶接部の耐酸化性を向上できる。
【0018】
本発明のガスタービン翼の一例では、溶接補修部が前記した溶接金属にて構成されている。また、他の一例では、新品のガスタービン翼において、高温高応力に晒される部分が前記した溶接金属にて構成されている。
【0019】
本発明によるガスタービン翼製造方法において、溶体化処理はγ’相の固溶温度以上、部分溶融温度以下の温度で行うことが望ましい。
【0020】
また、本発明によるガスタービン翼の製造方法では、ガスタービン翼の表面に形成されているコーティング膜を、溶接する前に剥がすことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、結晶粒界の直線化が抑えられ、疲労強度および耐酸化特性に優れた溶接部を有するガスタービン翼が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、特許文献1に記載されている溶接材料の化学成分について、平衡凝固時の液層濃度をCALPHAD法により計算して、その計算値をプロットしたものである。Mo,Wは凝固の進行すなわち固相率の増加とともに優先的に固相側に入るため、液層中濃度は低下する。したがって、Mo,Wは粒界偏析しにくい。これに対してTaは、凝固の進行とともに、液層に濃化されるため、粒界に偏析し粒界の直線化を抑えるのに効果的な元素である。
【0023】
特許文献2では耐火元素の総和を規定しているが、Mo,WとTaは偏析挙動が全く異なるため、それぞれの添加量は別々に規定する必要がある。
【0024】
粒界の直線化を抑制するためには、4.8wt.%以上のTaを添加する必要があるが、5.3wt.%を超える添加では加工性が悪くなり、ワイヤ化が困難となる。
【0025】
Mo,Wは粒内の強度を高める上で重要であり、1〜2wt.%のMoおよび14〜16wt.%のWを添加する必要がある。何れの元素も粒内強度の向上に寄与するが、添加しすぎると有害相を生成し延性が大きく低下する。
【0026】
Alの添加量は、粒界窒化割れの抑制とγ’相の析出抑制の観点から1wt.%以下にする必要があり、特に0.75wt.%以下にすることが望ましい。耐酸化性を維持するためには0.25wt.%以上のAlを添加するとともに、0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnおよび18〜23wt.%のCrを添加し、溶接後の酸素の含有量はできるだけ少なく、0〜30ppmにすることが望ましい。Si,Mn,Crは耐酸化性を向上させるが過剰に添加すると材料を脆化させる。
【0027】
CoはCrの固溶限を広げるため12wt.%以上の添加が必要であるが、過剰に添加すると特有の有害相が生じ材料が脆化するため、17wt.%以下とする必要がある。
【0028】
Tiは、溶接材料が析出強化型でないので、含有量を少なくし、0〜0.1wt.%にすることが望ましい。
【0029】
Re量は0〜0.5wt.%にすることが望ましい。
【0030】
図2に固溶強化型合金とγ’相析出強化型合金の強度の温度依存性を模式的に示す。γ’相析出強化型では、γ’相が固溶する温度付近までは高い強度を示すが、この温度以上では急激に強度が低下する。欠陥を潰すためには、強度が低くなる温度でHIP処理を行う必要があり、ガスタービン動翼として広く使われているIN738やRene80などではγ’固溶温度が1160℃前後であることから、一般的にHIP処理は、1160℃以上で行われる。
【0031】
固溶強化型合金は図2に示すように強度の温度依存性が小さく、1100℃程度ではγ’相析出強化型合金と比較して強度が低いが、高温にしても大きな強度低下はない。一方、粒界の直線化は高温ほど加速されるため、固溶強化型合金で粒界の直線化を抑えるためにはHIP温度を1150℃以下とする必要がある。1100℃を下回ると欠陥はつぶれにくくなる。溶接条件が適正化されていれば、溶接割れは発生せず、欠陥はブローホールやミクロポロシティである。これらの欠陥は、固溶強化型合金である溶接金属に発生するため、HIP温度は、1150℃以下1100℃以上とすべきである。γ’相の固溶温度以上でのHIP処理では、粗大化あるいは扁平化したγ’相を再固溶、再析出させ基材の損傷を回復させる効果がある。
【0032】
HIP温度を1150℃以下1100℃以上とした場合、γ’相の再固溶ができず基材の損傷回復効果がない。したがって、本発明では溶接補修の前にγ’相の再固溶処理を行うことが望ましい。ただし、基材の損傷が少なければ、再固溶処理を省略することもできる。
【0033】
HIP処理したならば、主として基材の強度向上のために、時効処理を施す。時効処理の温度は析出物の粒径と形態を整えるのに適する835〜855℃とすることが望ましい。
【0034】
以上の溶接金属成分の選択と製造プロセスにより、粒界の直線化が改善され疲労強度が大きく向上する。
【0035】
溶接補修翼の例を図7に示した。酸化により減肉が生じた酸化減肉部101を本発明材による溶接補修部102で補修したものである。
【実施例1】
【0036】
表1に示した化学成分の合金を真空溶解により作製し、熱間鍛造および冷間線引きにより、約2mmのワイヤに加工した。これを用いてTIG溶接により動翼基材上に溶接金属を形成し、これより試験片を採取して各種の評価を実施した。
【0037】
表2に、用いた溶接材(溶接ワイヤ)、溶接補修プロセス、溶接雰囲気、得られた溶接金属の酸素含有量と組織形態を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
溶接補修プロセスは図3に示したとおりである。(a)は従来の方法であり、(b)は本発明の方法である。
【0041】
図4に、本実施例で得られる溶接金属の組織を模式図で示した。(a)は結晶粒界の直線化が抑制され、樹枝状になっている。(b)は樹枝状組織がくずれ、直線化が進んでいる。(c)は粒界が直線化している。
【0042】
本発明A〜Cでは、いずれも図4(a)の組織が得られ、結晶粒界の直線化が抑制された。これには、Taを多く含有したことと、HIP処理温度を従来に比べて低くしたことが寄与している。
【0043】
図5に、本発明材と従来材の高温疲労試験の結果を示した。縦軸は疲労試験で壊れるまでの回数を示している。本発明材では従来材と比較して大幅に疲労強度が高くなった。これは表2に示したように粒界の直線化が抑制されている効果である。
【0044】
図6は、酸素量が異なる試料を用いて行った耐酸化性試験結果である。本発明材の耐酸化性は従来材と遜色がないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】平衡凝固時の液相濃度をプロットした図。
【図2】強度の温度依存性を示した図。
【図3】従来方法と本発明について、溶接補修プロセスを示した図。
【図4】溶接金属の結晶組織の模式図。
【図5】高温疲労特性を示した図。
【図6】高温耐酸化特性を示した図。
【図7】ガスタービン翼の溶接補修部を示した模式図。
【符号の説明】
【0046】
101…酸化減肉部、102…溶接補修部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部が溶接金属にて構成されているガスタービン翼において、前記溶接金属が4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基合金よりなることを特徴とするガスタービン翼。
【請求項2】
前記溶接金属にて構成された部分が溶接補修部位であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン翼。
【請求項3】
前記溶接金属にて構成された部分が高温高応力に晒される部分であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン翼。
【請求項4】
前記溶接金属が0.25〜1wt.%のAl,0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnを含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン翼。
【請求項5】
γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部が固溶強化型Ni基合金よりなる溶接金属にて構成されているガスタービン翼において、前記溶接金属が4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基よりなり、前記翼基材と前記溶接金属との境界部分が前記γ’相析出強化型Ni基超合金と前記溶接金属との混合物よりなることを特徴とするガスタービン翼。
【請求項6】
前記溶接金属にて構成された部分が溶接補修部位であることを特徴とする請求項5に記載のガスタービン翼。
【請求項7】
前記溶接金属にて構成された部分が高温高応力に晒される部分であることを特徴とする請求項5に記載のガスタービン翼。
【請求項8】
前記溶接金属が0.25〜1wt.%のAl,0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnを含むことを特徴とする請求項5に記載のガスタービン翼。
【請求項9】
γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部を溶接金属にて構成するガスタービン翼の製造方法において、前記翼基材をストリップにする工程と、前記前記翼基材におけるγ’相を再固溶させる溶体化処理工程と、前記溶接金属にて構成する部分を4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基よりなる溶接ワイヤを使用してTIG法により不活性ガスチャンバ内で溶接して形成する溶接工程と、前記溶接工程の終了後に1100〜1150℃の温度でHIP処理を施すHIP処理工程と、その後で835〜855℃の温度で時効処理を施す時効処理工程を含むことを特徴とするガスタービン翼の製造方法。
【請求項10】
前記溶接金属にて構成する部分が溶接補修部位であることを特徴とする請求項9に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項11】
前記ガスタービン翼の高温高応力に晒される部分を予め前記溶接金属にて構成することを特徴とする請求項9に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項12】
前記溶体化処理を、γ’相の固溶温度以上、部分溶融温度以下の温度で行うことを特徴とする請求項9に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項13】
前記ガスタービン翼をストリップにする工程が、ガスタービン翼の表面に形成されているコーティング膜を剥がす処理であることを特徴とする請求項9に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項14】
前記溶接ワイヤが0.25〜1wt.%のAl,0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnを含むことを特徴とする請求項9に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項15】
γ’相析出強化型Ni基超合金よりなる翼基材の一部を溶接金属にて構成するガスタービン翼の製造方法において、前記溶接金属にて構成する部分を4.8〜5.3wt.%のTa,18〜23wt.%のCr,12〜17wt.%のCo,14〜18wt.%のW,0.03〜0.1wt.%のC,1〜2wt.%のMo,1wt.%以下のAlを含み、酸素量が0〜30ppm,Ti量が0〜0.1wt.%,Re量が0〜0.5wt.%であるNi基よりなる溶接ワイヤを使用してTIG法により不活性ガスチャンバ内で溶接することにより形成する溶接工程と、前記溶接工程の終了後に1100〜1150℃の温度でHIP処理を施すHIP処理工程と、その後、835〜855℃の温度で時効処理を施す時効処理工程を含むことを特徴とするガスタービン翼の製造方法。
【請求項16】
前記溶接金属にて構成する部分が溶接補修部位であることを特徴とする請求項15に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項17】
前記ガスタービン翼の高温高応力に晒される部分を予め前記溶接金属にて構成することを特徴とする請求項15に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項18】
前記溶接ワイヤが0.25〜1wt.%のAl,0.15〜0.35wt.%のSi,0.4〜2wt.%のMnを含むことを特徴とする請求項15に記載のガスタービン翼の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−274314(P2008−274314A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115650(P2007−115650)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】