説明

ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体、及びこの積層体からなる延伸ブロー成形用プリフォーム、並びにこのプリフォームを成形してなる包装用容器

【課題】層間剥離の防止と不透明化の抑制を可能としたガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体、加えてこのポリエステル系樹脂積層体を有する延伸ブロー成形用プリフォーム、さらには延伸ブロー成形用プリフォームを成形してなる包装用容器を提供する。
【解決手段】直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部、芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)と、当該樹脂組成物(P)の少なくとも一面側に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して延伸ブロー成形用プリフォームを成形し、さらに当該プリフォームを延伸ブロー成形して包装用容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体、及びこの積層体からなる延伸ブロー成形用プリフォーム、並びにこのプリフォームを延伸ブロー成形してなる包装用容器に関し、特に、樹脂の組成、配合割合を改良したことに特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
主にポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械強度、耐薬品性、耐候性に優れ、透明であることから、食品や薬品等の包装用容器、フィルム、シート、その他の資材類に多用されている。特に、射出成形によりプリフォームを製造し、このプリフォームからの飲料用容器の生産は拡大している。
【0003】
しかしながら、熱可塑性ポリエステル樹脂は、高度なガスバリア性の要求に対応できてはいなかった。飲料、食品、医薬品等の包装用容器材料として用いる場合、ガスの透過に伴う内容物の変性、劣化が不可避である。このため、ガスバリア性能が不足がちであることから、熱可塑性ポリエステル樹脂のみからなる包装用容器は長期保存用途に向かない。
【0004】
ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド樹脂は、熱可塑性ポリエステル樹脂に比してより高いガスバリア性能を有する。そこで、熱可塑性ポリエステル樹脂の短所を補うべく、ポリアミド樹脂を中間に配した熱可塑性ポリエステル樹脂の複合体(積層体)がある。ただし、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との組み合わせでは互いの相溶性が悪い。このため、比較的弱い外部からの応力により両層の間で層間剥離を起こしやすい。例えば包装用容器としての使用に際し、著しく商品価値を下げてしまう。
【0005】
層間剥離の問題点を改善するべく、樹脂同士を混合する改良が進められた。例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂とを有する包装用障壁並びに容器が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリアミド樹脂と、変性重合ポリエステルを含有する熱可塑性ポリエステルのポリエステル中空成形体(特許文献2参照)、ポリアミド樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂組成物(特許文献3参照)も提案されている。特許文献2、3において、熱可塑性ポリエステル樹脂のグリコール成分にはエチレングリコールの他にシクロヘキサンジメタノールも利用されている。
【0006】
ところが、特許文献1においては、両樹脂同士の相溶性の関係から、不透明化あるいは剥離した成形品しか得られなかった。特許文献2,3にあっても、熱可塑性ポリエステル樹脂の成分の改良が進められてはいるものの、層間剥離の防止と不透明化の抑制との両立に関し具体的な言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2991437号公報
【特許文献2】特公平6−11797号公報
【特許文献3】特開平1−188560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その後、発明者は熱可塑性ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂の組成、並びに各成分の好適な配合割合により、層間剥離の防止と不透明化の抑制の双方を同時に解決可能な組成を見出した。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、ガスバリア性を高めた樹脂組成としつつ、層間剥離の防止と不透明化の抑制を可能としたガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体、加えてこのポリエステル系樹脂積層体を有する延伸ブロー成形用プリフォーム、さらには延伸ブロー成形用プリフォームを成形してなる包装用容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)からなるガスバリア性樹脂層(Y)の少なくとも一面に、熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を配したことを特徴とするガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体に係る。
【0011】
請求項2の発明は、直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)と、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の少なくとも一面側に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォームに係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリエチレンテレフタレートであり、前記第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)がポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである請求項2に記載の延伸ブロー成形用プリフォームに係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記芳香族ポリアミド樹脂(C)がポリメタキシリレンアジパミドである請求項2又は3に記載の延伸ブロー成形用プリフォームに係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の延伸ブロー成形用プリフォームに係る。
【0015】
請求項6の発明は、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)が積層されている部位は、延伸ブロー成形用プリフォームにおける口部の上端を除いた部位である請求項5に記載の延伸ブロー成形用プリフォームに係る。
【0016】
請求項7の発明は、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の延伸ブロー成形用プリフォームを、延伸ブロー成形して得たこと特徴とする包装用容器に係る。
【0017】
請求項8の発明は、前記包装用容器におけるJIS−K−7136に準拠して測定した厚さ0.3mmのヘイズ値が、5%以下である請求項7に記載の包装用容器に係る。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係るガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体によると、直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)からなるガスバリア性樹脂層(Y)の少なくとも一面に、熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を配したため、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガスバリア性を高めることができると共に、積層体の層間剥離の防止及び不透明化を抑制することができる。
【0019】
請求項2の発明に係る延伸ブロー成形用プリフォームによると、直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)と、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の少なくとも一面側に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなるため、延伸ブロー成形用プリフォームが事後成形されてなる成形品におけるガスバリア性を高めることができると共に、成形品の層間剥離の防止及び不透明化を抑制することができる。
【0020】
請求項3の発明に係る延伸ブロー成形用プリフォームによると、請求項2に記載の発明において、前記第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリエチレンテレフタレートであり、前記第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)がポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるため、樹脂材料の調達が比較的容易であり、延伸ブロー成形用プリフォームが事後成形されてなる成形品におけるヘイズ値の低減に寄与する。
【0021】
請求項4の発明に係る延伸ブロー成形用プリフォームによると、請求項2又は3に記載の発明において、前記芳香族ポリアミド樹脂(C)がポリメタキシリレンアジパミドであるため、従来よりガスバリア性樹脂として知られており、材料の調達が比較的容易であることから、延伸ブロー成形用プリフォームが事後成形されてなる成形品におけるガスバリア性に寄与する。
【0022】
請求項5の発明に係る延伸ブロー成形用プリフォームによると、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなるため、延伸ブロー成形用プリフォームが事後成形されてなる成形品においても、ガスバリア性を確保し、かつ、含有されている芳香族ポリアミド樹脂の劣化を防ぐことができる。
【0023】
請求項6の発明に係る延伸ブロー成形用プリフォームによると、請求項5に記載の発明において、前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)が積層されている部位は、延伸ブロー成形用プリフォームにおける口部の上端を除いた部位であるため、製品の口部の変形要因を減らすことができ、さらに、口部の上端から直接ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物が露出することを回避できる。
【0024】
請求項7の発明に係る包装用容器によると、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の延伸ブロー成形用プリフォームを、延伸ブロー成形して得たため、包装用容器におけるガスバリア性を高めることができると共に、積層体の層間剥離の防止及び不透明化を抑制することができる。
【0025】
請求項8の発明に係る包装用容器によると、請求項7に記載の発明において、前記包装用容器におけるJIS−K−7136に準拠して測定した厚さ0.3mmのヘイズ値が、5%以下であるため、肉眼による目視では差異を見分けることができない透明さを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体の断面模式図である。
【図2】延伸ブロー成形用プリフォームの一例の全体斜視図である。
【図3】図2の部分断面図である。
【図4】包装用容器の一例の全体斜視図である。
【図5】ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物に含まれる樹脂の配合割合を示す三角図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体、延伸ブロー成形用プリフォーム、包装用容器の基となるガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物とは、ガスバリア性を有することで知られているポリアミド樹脂を、機械強度、耐薬品性、耐候性等に優れている熱可塑性ポリエステル樹脂に添加、混合して熱可塑性ポリエステル系樹脂の改良を図った樹脂組成物である。さらに、成形後の製品における層間剥離の防止(層間での密着性の向上)と不透明化の抑制も実現可能とする樹脂組成物である。特にガスバリア性とはガス透過量の低減を目的とする。
【0028】
はじめに、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の組成から説明する。ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)は、直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と、脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)と、芳香族ポリアミド樹脂(C)とを含有してなる樹脂組成物である。すなわち、樹脂組成物(P)={樹脂(A)+樹脂(B)+樹脂(C)}である。
【0029】
熱可塑性ポリエステル系樹脂とは、一般にジオール成分(グリコール成分)とジカルボン酸との縮重合(縮合重合)反応により得られるエステル結合を有した高分子体である。本発明の第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の特徴となる差異は、互いのジオール成分を異とすることである。
【0030】
第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)に用いられるジオール成分(:第1ジオール成分(a))は直鎖状炭化水素を有する化合物である。具体的に、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール(2,2’−オキシジエタノール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル-1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。第1ジオール成分(a)は、分子中に環構造を有しない直鎖状の炭化水素に水酸基(−OH)が配されてなるジオール類である。列記の第1ジオール成分(a)は単独としても複数種類の混合としてもよい。
【0031】
第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)に用いられるジオール成分(:第2ジオール成分(b))は脂環式炭化水素を有する化合物である。具体的に、transまたはcis−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの構造から明らかように、第2ジオール成分(b)は、分子中に芳香族ではない炭化水素の環構造の部位を有し、これに水酸基(−OH)が配されてなるジオール類である。列記の第2ジオール成分(b)は単独としても複数種類の混合としてもよい。
【0032】
第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)及び第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)に用いられるジカルボン酸(d)は、双方共通としてもあるいは異ならせても良い。ジカルボン酸(d)として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0033】
芳香族ポリアミド樹脂(C)とは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、オルト,メタ,パラジアミノベンゼン等のジアミンと、前記のジカルボン酸(d)に列記したアジピン酸をはじめとする各種のジカルボン酸との縮重合(縮合重合)反応により得られるアミド結合を有した高分子体である。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド等の芳香族系のナイロンであり、これらの単独もしくは共重合体としても良い。
【0034】
列記の各樹脂において、性能の実証、調達量の確保の容易さ、製造経費、安全性の認証等を多面的に勘案すると、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)にはポリエチレンテレフタレート、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)にはポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が好ましく用いられる。また、芳香族ポリアミド樹脂(C)にはポリメタキシリレンアジパミド(MXD6樹脂等と称される。)等が好ましく用いられる。このポリメタキシリレンアジパミド(MXD6樹脂)は、主に次の特性を備える。ガスバリア性に優れ、吸水性、吸湿性が低い。機械強度や弾性率が高い。ガラス転移温度が高く、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂と混ぜても成形しやすい。特に、適度な結晶化速度を有し成形加工性に優れる。
【0035】
次に、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)に配合される3種類の樹脂の好適な配合割合(重量比換算)は、後記の実施例から把握されるように、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が10〜90重量部、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が8〜85重量部、芳香族ポリアミド樹脂(C)が0.1〜43重量部の範囲となる。
【0036】
第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の配合割合が10重量部を下回る場合、当然、他の樹脂の割合が増し、原料コストの上昇となり現実的ではない。第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の配合割合が90重量部を上回る場合、相対的に第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の割合が減少する。最終的に包装用容器に加工した場合の白濁抑制効果が低下する。そこで、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は10〜90重量部、好ましくは15〜85重量部、より好ましくは20〜80重量部となる。
【0037】
第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の配合割合が8重量部を下回る場合、相対的に芳香族ポリアミド樹脂(C)の割合が増加し、樹脂組成物(P)における相溶性が悪化する。また、最終的に包装用容器に加工した場合の白濁抑制効果を発揮しなくなる。第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の配合割合が85重量部を上回る場合、原料コストの上昇となり現実的ではない。そこで、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は8〜85重量部、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは12〜70重量部となる。
【0038】
芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合が0.1重量部を下回る場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物におけるガスバリア性が発揮されず、発明の目的に不適合となる。また、芳香族ポリアミド樹脂を他の熱可塑性ポリエステル樹脂に均一に分散させることができず、作成自体が困難となる。芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合が43重量部を上回る場合、後述の実施例から明らかであるように、樹脂層の積層構造を備えた包装用容器における衝撃が加わった時の樹脂層間の剥離要因(衝撃耐性の低下)となる。そこで、芳香族ポリアミド樹脂(C)は0.1〜43重量部、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.1〜37重量部の範囲となる。
【0039】
なお、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)、あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)のもととなる熱可塑性ポリエステル樹脂のいずれかもしくは両方に、酸化防止剤、酸化触媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、結晶化剤、無機フィラー等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0040】
これまでに、組成及び配合割合を説明したガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)は積層体を形成する樹脂組成物として用いられる。すなわち、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)からなるガスバリア性樹脂層(Y)の少なくとも一面側には、当該樹脂組成物(P)と異なる熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を配している部位が備えられ、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体が形成される。積層体の構造について図1を用いさらに述べる。図1(a)は二層積層体1を示し、ガスバリア性樹脂層(Y)の一面側のみに熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が配されている{(Y)|(X)}。熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を構成する熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)は、ポリアミド樹脂を含まない熱可塑性ポリエステル樹脂であり、単独種あるいは混合種のいずれでもよい。価格や調達の利便性から、熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)はポリエチレンテレフタレートからなる(以下同様)。
【0041】
図1(b)は三層積層体2を示し、ガスバリア性樹脂層(Y)の両面側に熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が配されている{(X)|(Y)|(X)}。三層積層体2は両表面に熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を備える部位を有することにより、二層積層体1よりも耐候性を高めることができる。特に、芳香族ポリアミド樹脂(C)を含有するガスバリア性樹脂層(Y)の劣化を抑えることができる。図1(c)は五層積層体3を示し、最外層を熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)とし、ガスバリア性樹脂層(Y)と熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が交互に配されている{(X)|(Y)|(X)|(Y)|(X)}。五層積層体3のように複層化するとよりガスバリア性は向上する。ただし、加工が複雑になる場合がある。
【0042】
ガスバリア性樹脂層(Y)と熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)との積層はラミネートによる圧着とすることが可能であるものの、両樹脂層間における相溶性の差異から層間剥離を引き起こしやすくなる。そのため、ガスバリア性樹脂層(Y)と熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)は押出成形により一括して吐出されて積層体となる。例えばフィルムに加工する場合、当該樹脂からなる積層体は、公知の一軸、二軸の延伸、その他の延伸により樹脂の積層構造のフィルム状となる(図1参照)。
【0043】
図1に示した積層体の用途は多岐にわたり、包装資材、建材、内装材、衣類、電子機器等の熱可塑性ポリエステル樹脂の耐候性を生かしつつ、ガスバリア性に加え、層間剥離の防止(層間での密着性の向上)、及び不透明化の抑制が要求される分野に利用される。これらの中においても、包装用容器として、つまり、その前駆体であるプリフォームに成形される用途が最も多い。
【0044】
図2の全体斜視図及び図3の部分断面図はプリフォーム(すなわち、延伸ブロー成形用プリフォーム10)の一実施形態を示す。延伸ブロー成形用プリフォーム10は、前記の第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)10〜90重量部と、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)8〜80重量部と、芳香族ポリアミド樹脂(C)0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の少なくとも一面側に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)が積層されて射出成形により成形される。
【0045】
延伸ブロー成形用プリフォームにおいても、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)にポリエチレンテレフタレート、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)にポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド樹脂(C)にポリメタキシリレンアジパミドが好ましく用いられる。各々の使用樹脂、配合割合の説明については前述のとおりである。また、本発明の延伸ブロー成形用プリフォームの成形には既存のプリフォームの射出成形装置、成形方法等が好適に用いられる。
【0046】
図2及び図3からわかるように、延伸ブロー成形用プリフォーム10は、キャップ(図示せず)が取り付けられねじ締めにより封栓される口部11と、容器体の側面部分を形成する胴部12と、容器体の底部分を形成する底部13とから形成される。口部11には開口部14が形成され、ブロー成形の際に空気が送り込まれる。また、口部11にはねじ山部15と、フランジ部16も備えられる。図3中の符号17は延伸ブロー成形用プリフォームの内面部である。
【0047】
図3の断面図に示すように、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)からなるガスバリア性樹脂層(Y)の少なくとも一面側、特に、延伸ブロー成形用プリフォーム10では、ガスバリア性樹脂層(Y)の両面に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)からなる熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が積層されている。この樹脂層同士の積層態様は、前掲図1(b)の三層積層体2と同様である。
【0048】
ガスバリア性樹脂層(Y)の表裏両面を熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)で覆うことにより、延伸ブロー成形用プリフォーム10において、二層積層体とする場合よりもガスバリア性樹脂層(Y)の被覆が完全となる。このため、プリフォームを成形した後の成形品(製品)における芳香族ポリアミド樹脂(C)を含有するガスバリア性樹脂層(Y)の劣化を防ぐことができる。
【0049】
さらに、図3の矢印S部分の積層態様に表されるように、開示の延伸ブロー成形用プリフォーム10においては、ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)が積層されている部位、つまり、ガスバリア性樹脂層(Y)の表裏両面に熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が積層されている部位(三層積層体)は当該延伸ブロー成形用プリフォームの口部11の上端11uを除いた部位としている。また、底部13も除かれており、具体的には胴部12が{(X)|(Y)|(X)}の三層積層体である。口部11、底部13では熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)からなる熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)のみの構造である。
【0050】
一般にプリフォームの口部は延伸されることはなく、ガスバリア性に十分な肉厚を有する。このため、ガスバリア性樹脂層を配する必要が乏しい。また、複数の層(異なる樹脂組成)が存在する場合、当然、樹脂組成毎に、結晶化速度、融点、MFR(メルトフローレイト)、熱膨張係数等は異なる。プリフォームの成形、その口部の結晶化等に際し、口部には十分な成形精度が要求される。そうすると、極力成形不良、変形の要因を減らすべきであるため、樹脂種を熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)の単独に限定する方が望ましい。特に、口部の上端にガスバリア性樹脂層(Y)が達しない構造とする方がより好ましい。
【0051】
プリフォームが後述の飲料の包装用容器に成形され、口部(その上端)に三層積層体の断面が露出する場合を仮定する。ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)は芳香族ポリアミド樹脂を含有しているため、一般に時間経過に伴い黄色に変色する等の外観不良を引き起こしやすい。また、口部は直に人の口や飲料等の内容物に接触する。その場合、口部に三層積層体の断面が露出しているとガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)が人の口や飲料等の内容物と接することになる。そこで、最大限、見た目や安全性に配慮する必要から、プリフォームの口部、特にその口部の上端を三層積層体としないこととしている。
【0052】
プリフォーム10の底部13も三層積層体の構造から除かれている理由として、成形後の包装用容器における強度確保の観点から底部は肉厚に形成される。よって、ガスバリア性は胴部と比較して高くなる。また、包装用容器全体に占める底部の表面積は相対的に大きくない。このことから、プリフォーム10の底部13を三層積層体とするか否かについては選択的とされる。
【0053】
ただし、延伸ブロー成形用プリフォーム10のガスバリア性樹脂層(Y)の表裏両面に熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)が積層されている部位(三層積層体)は、必ずしも厳密ではなく、概ね当該延伸ブロー成形用プリフォームの口部11(口部の上端11u)、底部13を除いた部位としている。図3よりわかるように、この開示例のプリフォーム10においては、ガスバリア性樹脂層(Y)の上端18は口部の上端11uを除いた口部11の下部に差し掛かり、同樹脂層(Y)の下端19は底部13の途中に及んでいる。むろん、プリフォームにおける三層積層体とする部位は、プリフォーム自体の形状、事後延伸ブロー成形により形成する成形体の形状に応じて最適な配置となる。各層の厚さは、成形後の製品の大きさ、用途等を勘案して適切に設定される。また、前記の五層積層体を採用することもできる。
【0054】
図2及び図3と共に詳述した延伸ブロー成形用プリフォーム10の胴部12及び底部13は軟化点まで加熱され、適宜の成形型(図示せず)に装填される。その後、口部11の開口部14に空気が送通され、延伸ブロー成形によりプリフォーム10の内面部17は膨張し、成形型の内面形状に成形される。こうして得られた成形品の一例が、図4に示す包装用容器50である。図示の包装用容器50は容量280mL用の樹脂製ボトル(飲料用容器)である。プリフォーム10の胴部12、底部13は延伸ブロー成形による膨張に伴い容器胴部52、容器底部53となる。なお、口部11はそのままの形状が維持される。
【0055】
延伸ブロー成形用プリフォームから成形される包装用容器の用途は特段限定されない。例えば、飲料、医薬品、試薬、調味料、酒類、化粧品等の各種である。この中で飲料用容器としての需要が最も多い。近時、飲料用容器として用いられる場合、50℃ないし70℃に加温して販売される機会が増えている。従前の熱可塑性ポリエステル系樹脂のみで形成した包装用容器ではガス透過度は高く、内容物の劣化を抑制することができないため、消費期限等を短くする必要がある。また、ガス透過度を抑制するためのポリアミド樹脂の配合では白濁、層間剥離等の外観悪化の問題を招来する。これに対し、本発明の包装用容器50(容器胴部52)は、これまでに述べた樹脂組成並びに配合割合を具備するためガスバリア性を発揮し得る。つまり、内容物の劣化速度を遅くすることができる。
【0056】
また、飲料用容器の包装用容器50として成形された後にあっては、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合の均衡から、白濁等の外観不良も抑制される。特に、飲料用容器の場合、内容物の色合い、美味しさ、商品のイメージを訴求する必要上、容器に透明感が求められる。そこで、当該包装用容器では、JIS−K−7136に準拠して測定した厚さ0.3mmのヘイズ(haze)値が5%以下である。一般に、飲料用容器の包装用容器において、前記のヘイズ値が5%を下回る場合、肉眼による目視では差異を見分けることができないとされている。従って、後記の実施例も踏まえ、ヘイズ値は5%以下に規定される。
【実施例】
【0057】
発明者らは、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合を変化させて各種配合のガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物を調製し(表1の樹脂配合割合参照)、同ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物からなるガスバリア性樹脂層(Y)を中間層として含む三層積層体の延伸ブロー成形用プリフォームを射出成形により試作した。表1中の配合割合は重量比換算である。
【0058】
試作に際し、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)にポリエチレンテレフタレート、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)にポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド樹脂(C)にポリメタキシリレンアジパミドを用いた。三層積層体においてガスバリア性樹脂層以外の熱可塑性ポリエステル系樹脂からなる熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)にはポリエチレンテレフタレートを用いた。当該延伸ブロー成形用プリフォームの全長77mm(口部長21mm、胴部長44mm、底部長12mm)、胴部直径25mm、胴部最大厚さ3.6mmであった。
【0059】
このプリフォームにおけるガスバリア性樹脂層はプリフォームの胴部のみの配置(すなわち、口部の上端と底部を除いた配置)とし、この配置で積層できるように成形した。その後、射出成形により出来上がった延伸ブロー成形用プリフォームを延伸ブロー成形し、容量280mL相当の飲料の包装用容器に成形した(いわゆるペットボトル)。結果、表1の試作例1ないし試作例20である。試作例21は比較品であり、既存の組成に基づくガスバリア性樹脂層を備えたプリフォームから成形した包装用容器である。いずれの試作例も成形型は同一とし、同一形状に仕上げた。
【0060】
〔ヘイズ値の測定〕
各試作例の包装用容器の容器胴部(図4参照)について、厚さ0.3mmのヘイズ値(外観透明)を測定した。測定に際し、JIS−K−7136の「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方(制定:2000年2月20日)」に準拠して測定した。測定装置に日本電色工業株式会社製:Haze Meter NDR2000を用いた。
【0061】
〔剥離(衝撃耐性)の評価〕
各試作例の包装用容器に水を満量まで充填して当該容器用キャップにより封栓した。容器内液温を5℃で一定にした。それぞれの水を入れた試作例の包装用容器を1.5mの高さから、容器底部を下向きにして、地面に落とした。ひとつの試作例につき20本用意して落下を試み、その中で落下の衝撃に伴い容器に白濁箇所もしくは光の乱反射に伴う虹色等の変色が生じた容器の本数を数えた。容器に生じた白濁や虹色等の変色とは、包装用容器の三層積層体を構成する層のひとつであるガスバリア性樹脂層が他の層から剥離して生じた結果である。例えば、或る試作例において20本の落下を試み10本に白濁あるいは虹色等の変色が生じれば、その試作例における剥離は50%である。従って、数値が低いほど望ましい。
【0062】
試作例1ないし試作例20及び試作例21について、包装用容器の三層積層体に含まれるガスバリア性樹脂層(Y)を構成するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物{第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、芳香族ポリアミド樹脂(C)}の配合割合(重量部換算)、ヘイズ値、剥離の結果は、表1のとおりである。表1のヘイズ値については、5%未満を“○”とし、5%〜10%を“△”、10%以上を“×”として付記した。剥離については、既存品である試作例21の包装用容器との比較から、同品の結果数値(20%)より好転した試作例を“○”とし、悪化した試作例を“×”とした。さらに、ヘイズ値と剥離の結果の双方を踏まえて商品適性の総合評価も行った。商品として望ましい試作例の包装用容器を“○”とし、商品として使用可能な試作例の包装用容器を“△”とし、商品として望ましくない試作例の包装用容器を“×”とした。
【0063】
【表1】

【0064】
図5は、試作例1ないし試作例20のガスバリア性樹脂層(Y)を構成する3種類の樹脂:第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合(重量部換算)に基づいてプロットした三角図である。同三角図にヘイズ値、剥離の結果も重ね、前記の3種類の樹脂(A),(B),(C)の間に成立する好適な配合割合を抽出した。図の見方について、例えば左下の第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の頂点に近づくほど同樹脂の配合割合は‘100’に近づき、頂点から離れる(右斜辺に近づく)ほど同樹脂の配合割合は‘0’に近づく。他の樹脂(B),(C)も同様である。
【0065】
〔ヘイズ値による考察〕
試作例9,10,18と、試作例16,17,19,20等との間では、ヘイズ値の良否に差が生じた。ヘイズの良否の差は、図示より、包装用容器の三層積層体に含まれるガスバリア性樹脂層(Y)を構成するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物中の第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)(試作に際しポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを使用した。)の配合割合に起因していることがわかる。少なくとも第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、8重量部以上配合すべきであり、好ましくは10重量部以上、より好ましくは12重量部以上配合することが望ましい。第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の上限はヘイズ値により拘束されない。他の樹脂の配合割合、並びに当該第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)自体の価格、その後の製品価格への影響を考慮して樹脂(B)の配合量を減らすことができればより好ましい。そのため、第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の配合割合の上限は、85重量部、好ましくは80重量部、より好ましくは70重量部となる。
【0066】
〔剥離(衝撃耐性)による考察〕
試作例1,4,6,9と、試作例11,13,15,16等との間では、剥離(衝撃耐性)の良否に差が生じた。衝撃耐性の良否の差は、図示より、包装用容器の三層積層体に含まれるガスバリア性樹脂層(Y)を構成するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物中の芳香族ポリアミド樹脂(C)(試作に際しポリメタキシリレンアジパミドを使用した。)の配合割合に起因していることがわかる。これを踏まえ、芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合の上限は43重量部、好ましくは40重量部、より好ましくは37重量部以下となる。また、芳香族ポリアミド樹脂(C)は発明の目的上必須であるため、少なくとも0.1重量部以上の含有が必要である。むろん、ガスバリア性の向上や樹脂同士の混練等の条件により調整される。
【0067】
〔最適範囲の規定〕
第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)及び芳香族ポリアミド樹脂(C)については、前記のとおり、ヘイズ値、剥離の結果を考慮して配合割合を規定することができた。第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)については、樹脂(B)及び樹脂(C)関係から配合割合を求めることができる。従って、第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の配合割合は、10〜90重量部、好ましくは15〜85重量部、より好ましくは20〜80重量部となる。相対的に第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)よりも安価であるため、同第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の配合割合が増すほど製品価格の上昇を抑制することができる。
【0068】
そこで、表1の各試作例のヘイズ値、剥離の結果に加え、総合評価を勘案した結果、包装用容器の三層積層体に含まれるガスバリア性樹脂層を構成するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物中の3種類の樹脂(A),(B),(C)の好適な配合割合の範囲は、試作例1ないし試作例10を含む範囲内となる。これより、「細鎖線」は好適な範囲、「中太さの一点鎖線」はより好適な範囲、「太実線」はさらに好適な範囲として規定することができる。
【0069】
また、試作例1,4,6,9は、試作例21(従来品)と比較して芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合割合を増やしていながらもヘイズ値を低下させている。従って、芳香族ポリアミド樹脂(C)の配合量増加に伴うガスバリア性能の向上が期待できる。しかも、芳香族ポリアミド樹脂(C)の存在下であっても第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の配合によるヘイズ値の低下を実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体はガスバリア性を有すると共に、ヘイズ値が低く、剥離のおそれを低減した樹脂の積層構造を備えた製品に適する。本発明のガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体を有して成形された延伸ブロー成形用プリフォームは、ガスバリア性を有すると共に、ヘイズ値が低く、剥離のおそれを低減した中間製品に適する。本発明のガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体を有する延伸ブロー成形用プリフォームから成形した包装用容器は、ガスバリア性を有すると共に、ヘイズ値が低く、剥離のおそれを低減した包装用容器の製品として適する。
【符号の説明】
【0071】
1 二層積層体
2 三層積層体
3 五層積層体
10 延伸ブロー成形用プリフォーム
11 口部
11u 口部の上端
12 胴部
13 底部
14 開口部
50 包装用容器(飲料用容器)
52 容器胴部
53 容器底部
X 熱可塑性ポリエステル樹脂層
Y ガスバリア性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、
脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、
芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部とを含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)からなるガスバリア性樹脂層(Y)の少なくとも一面に、
熱可塑性ポリエステル樹脂層(X)を配したことを特徴とするガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂積層体。
【請求項2】
直鎖状炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を10〜90重量部と、
脂環式炭化水素を有するジオール成分とジカルボン酸とを含んでなる第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を8〜85重量部と、
芳香族ポリアミド樹脂(C)を0.1〜43重量部と
を含有するガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)と、
前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の少なくとも一面側に熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項3】
前記第1熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリエチレンテレフタレートであり、前記第2熱可塑性ポリエステル樹脂(B)がポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである請求項2に記載の延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項4】
前記芳香族ポリアミド樹脂(C)がポリメタキシリレンアジパミドである請求項2又は3に記載の延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項5】
前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)を積層した部位を有して射出成形してなる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項6】
前記ガスバリア熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物(P)の両面に前記熱可塑性ポリエステル系樹脂(Q)が積層されている部位は、延伸ブロー成形用プリフォームにおける口部の上端を除いた部位である請求項5に記載の延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の延伸ブロー成形用プリフォームを、延伸ブロー成形して得たこと特徴とする包装用容器。
【請求項8】
前記包装用容器におけるJIS−K−7136に準拠して測定した厚さ0.3mmのヘイズ値が、5%以下である請求項7に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20373(P2011−20373A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167868(P2009−167868)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000198477)石塚硝子株式会社 (77)
【Fターム(参考)】