説明

ガス原料流からのCO2の分離方法

(a)固定床(101、102、103)形態の多孔質体をCOの昇華温度より低い温度に冷却して冷多孔質体を得る工程、(b)COを含有するガス原料流(120)及び1種以上の他のガス化合物を該冷多孔質体の表面と接触させて固体COを含有する多孔質体及びCOの枯渇した流出ガス(124)を得る工程、及び(c)該固体CO含有多孔質体をCOの昇華温度より高い温度を有する流体CO流(130)に曝して固体COを除去し、これにより流体CO(136)及び温多孔質体を得る工程を含むガス原料流からのCOの分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はガス原料流からCOを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
温室効果ガスの大気への放出について次第に大きくなる関心に答えて、工業的プロセス流からCOを捕獲することについて興味が高まっている。化石及びバイオマスをベースとするエネルギー変換方法は、エネルギーを放出しながら、炭化水素材料を二酸化炭素及び水に転化する。COの捕獲目的は、隔離(sequestration)(例えば地質的貯蔵又は鉱物化)又は再利用に好適である比較的純粋なCOを製造することである。
【0003】
空気よりもむしろ純酸素を使用するようなエネルギー変換方法でCOの捕獲には、種々の試みがなされてきた。このような方法では、CO及び水だけを含有する煙道ガスが生成し、窒素による希釈を避けている。
或いは慣用の空気着火式燃焼法により得られる煙道ガスからCOを抽出するのに別の化学的又は物理的方法が使用されている。COを捕獲するための既知の方法は、例えばモノエタノールアミン(MEA)又はジメチルホルムアミド、圧力震盪吸着(PSA)又は膜分離で洗浄するものである。
他の方法は、約5.2バール(絶対圧)及び−56.7℃というCOの三重点と、液体COはCOの三重点を超える特定の温度及び圧力でのみ存在し得るという事実を利用している。
【0004】
米国特許第7,073,348号には熱交換器の内部で冷媒流体を蒸発させながら、煙道ガスを熱交換器の外表面と接触させて、煙道ガスから大気圧でCOを捕獲する方法が開示されている。熱交換器の外壁には固体COが堆積する。特定の操作時間後、熱交換器の外側部での煙道ガスの流れ及び熱交換器内部の冷媒流体の流れはそれぞれ第二の平行な熱交換器に切り換えられる。第一熱交換器の外表面に堆積した固体COは、5.2バールの圧力で−78.5〜−56.5℃に再加熱され、COは液体相として回収される。
【0005】
熱交換器は高価な上、熱交換に利用できる領域は限定されるし、固体COの堆積がある。冷媒は蒸発器の表面に連続的に冷気(cold)を供給するので、COの殆どは蒸発器の上流側に堆積し、固体COの分布が不均一になる。また固体CO層の形成により操作中、蒸発器全体に亘る圧力降下が著しく増大する。更に、堆積した固体CO層の厚さが増大するのに従って、熱伝達抵抗が増大し、冷媒の使用効率を低下させる。
【0006】
その結果、高価で比較的敏感な蒸発装置を短い堆積/除去サイクルで操作し、これにより蒸発装置を急速な温度変化に曝す必要がある。これは機械的観点から不利である。
【0007】
米国特許第4,265,088号は、2つ以上の充填塔を用いて熱排気ガスを処理する方法を開示している。米国特許第4,265,088号の方法では、熱排気ガスはCOの昇華温度より低い温度に冷却された充填塔に導入される。COは昇華し、これにより排気ガスから捕獲される。次いで、充填塔を減圧して、固体COの蒸発を誘引することにより、昇華した固体COは充填塔から除去される。しかし、このような方法は低濃度のCOを含有する排気ガスの処理にしか使用できない。排気ガスが高濃度のCOを含有する場合、減圧を使用ことは非実用的となる。或いは米国特許第4,265,088号は、充填塔からの固体COの除去に処理済み排気ガスを使用することを開示している。しかし、この使用法は、処理済み排気ガスの少なくとも一部にCOを再導入するという欠点がある。その結果、このCOはCO隔離法に直接供給できず、しかも新たなCO汚染ガス流が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
例えば煙道ガスからCOを前述のような欠点なしに分離可能であることが今回見出された。冷気の連続的な供給を利用する従来のCO分離技術とは対照的に、本発明は中間のエネルギー貯蔵体(repository)として多孔質体のような冷却された物体を用意し、これにより冷気を不連続的に供給することに基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、
a)固定床形態の多孔質体をCOの昇華温度より低い温度に冷却して冷多孔質体を得る工程、
b)COを含有するガス原料流及び1種以上の他のガス化合物を該冷多孔質体の表面と接触させて固体COを含有する多孔質体及びCOの枯渇した(depleted)流出ガスを得る工程、及び
c)該固体CO含有多孔質体をCOの昇華温度より高い温度を有する流体CO流に曝して固体COを除去し、これにより流体CO及び温多孔質体を得る工程、
を含むガス原料流からのCOの分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法はCOを堆積させる表面を有する予め冷却した多孔質体を利用する。このような多孔質体は限定された量の冷気しか貯蔵できないので、堆積可能なCOの量も制限される。その結果、COの堆積が大きくできず、分離器全体に亘る圧力降下の生成は大幅に回避される。
多孔質体を使用したので、単位体積当たりの高い比表面積を熱交換及びCOの堆積に利用できる可能性がある。これにより足型(footprint)及び装置の大きさを縮小できる。
【0011】
多孔質体から固体COを除去するため、工程(c)から得られる流体CO流出流のような流体COを使用したので、CO隔離法に直接使用できる流体COの純粋流が得られる。
本方法は、従来法で使用される高価な蒸発器に比べて資本コストが制限された比較的簡単なプロセス装置を使用して操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】3つの独立した固定床を用いた本発明方法の概略図である。
【図2】冷却多孔質体内の温度分布及び塊状(mass)堆積分布の概略図である。
【図3】冷却多孔質体内の温度分布及び塊状堆積分布の他の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明はCO及び1種以上の他のガス化合物を含有するガス原料流からCOを分離するため、予め冷却した多孔質体を使用する方法(use)に関する。多孔質体はまず冷却し、次いで前記CO含有ガス原料流と接触させる。得られた冷多孔質体はエネルギーの中間貯蔵体として使用してよい。即ち、冷多孔質体は有限量のエネルギーを貯蔵するのに使用でき、その後、COを昇華するのに使用される。これに対し、既知の熱交換器は、ほぼ瞬間的に熱を伝達する、即ち、エネルギーの中間貯蔵は起こらない。
【0014】
熱伝達は、少なくとも一部が熱伝達に利用可能な表面積に依存することは理解されよう。通常、プレート型熱交換器は約500m/mの比表面積を有する。一体式(monolithic)充填物は、3500m/mほど、又はそれ以上にも高くできる、非常に高い比表面積を有する。本発明方法では、ガス原料流をCOの三重点より低い圧力、好ましくは1〜2バール(絶対圧)の範囲の圧力で冷多孔質体と接触させる際、ガス原料流中のCOは昇華し、冷多孔質体の表面に固体COとして堆積する。ここで昇華とは、液相の存在なしでの、気体から固体への相転移又は固体から気体への層転移をいう。純COは常圧で約−78℃の昇華温度を有し、希釈すると、昇華温度は低下することに注目すべきである。通常、COを20容量%含有する煙道ガスは常圧で約−93℃の昇華温度を有する。
【0015】
ガス原料流を、COの三重点圧力5.2バール(絶対圧)を超える圧力で冷多孔質体と接触させ、これによりCOを液体として堆積させることは可能である。しかし、ガス原料流は、好ましくは1〜5バール(絶対圧)、更に好ましくは1〜2バール(絶対圧)の範囲の圧力で冷多孔質体と接触させる。これは再生段階中、毛管力が存在しないため、固体COの除去が複雑化しにくいからである。
次に、固体COを表面から除去し、この表面をCOの昇華温度より高い温度に曝すと、流体CO流出流が得られる。
【0016】
多孔質体は固定床の形態が好ましい。多孔質体は、好ましくは単一体、例えばセラミック発泡体である。同じく好ましい実施態様では、多孔質体は粒子、好ましくは一体式粒子からなる。任意に、これらの粒子は互いに焼結される。多孔質体は高い比表面積を有してよい。高い比表面積は、熱交換用及びCOの堆積に利用可能な面積用に有益である。単一体を使用する利点としては、圧力降下が低いこと、及び塊前端(front)、特に多孔質体を通る熱前端の軸方向分散が少ないことが挙げられる。
【0017】
本方法はガス原料流からCOを連続的に分離することができる。冷多孔質体を動的に操作する固定床の形態で使用すれば、多孔質体は中間のエネルギー貯蔵体として使用される。したがって、本方法は3つの多孔質体を3つの固定床の形態で用意した(provide)ので、連続的な方法で操作できる。これらの固定床は工程(a)、(b)及び(c)のサイクルに同時に通され/経由(through)する。これらの固定床は相外で(out of phase)操作される、即ち、それぞれ同時に、一固定床は工程(a)(冷却)の操作中であり、一固定床は工程(b)(CO捕獲)の操作中であり、また一固定床は工程(c)(CO除去)の操作中である。工程(b)を操作中の固定床が一杯になれば、この固定床は工程(c)に切り換えられ、これに従って他の固定床は切り換えられる。
【0018】
固定床は、いかなる種類の固定床であってもよい。固定床は独立した構成要素(entity)、直列又は並列で操作される複数の固定床の形態であってもよいし、或いは大型固定床配列の一部、帯域又は区画で形成されてもよい。
【0019】
多孔質体は工程(a)においてCOの昇華温度より低い温度を有する冷流体流を多孔質体に通して、冷却してよい。冷流体流は冷ガス流が好ましい。冷流体は、例えば工程(b)において多孔質体から得られるCOの枯渇した流出流であってよい。この流出流は多孔質体を通過中、冷却されたものである。COの枯渇した流出流は、工程(a)で多孔質体の冷却に使用する前に、任意に冷却される。COの枯渇した流出流は、COの昇華温度より低い温度に冷却することが好ましい。或いはこの冷流体は、COの昇華温度より低い凝縮温度又は昇華温度を有する流体である。このような流体の好ましい例は、N、H、He、Ne、Ar、Kr、CH又はそれらの1種以上を含む混合物である。冷流体の選択は、例えばこのような流体の入手可能性により影響を受けるかも知れない。液体窒素は容易に大量に得られる。冷CHは、例えばLNGの再ガス化地域で、通常、液体天然ガス(LNG)の形態で豊富に入手できる。したがって、LNGも冷流体として使用できる。また冷流体のコストも影響するかも知れない。したがって、冷流体は窒素又は工程(b)において多孔質体から得られるCOの枯渇した流出流を用いるのが好ましい。
【0020】
冷流体は多孔質体を冷却できるのに充分な量供給する必要があることは理解されよう。更に、冷流体の温度はCOの昇華温度未満でなければならない。しかし、少量の冷流体を用いて触媒床を予備冷却し、次いで、COの昇華温度より低い温度を有する流体で冷却する段階で多孔質体を冷却することは可能である。多孔質体を充分冷却するには、冷流体の温度は、好ましくは−200〜−100℃、更に好ましくは−200〜−125℃、更に好ましくは−200〜−145℃の範囲であってよい。
【0021】
固定床を使用すると、本発明方法の工程(b)中、固定床に固体COが堆積する。しかし、堆積により圧力降下が著しく増大したり、更には固定床が閉塞するようなことはない。これは、固定床中のどこかで貯蔵される、コールド・デューティ(cold duty)とも言われる、限定量のエネルギーによるものである。初期温度が−150℃でのCOの昇華では、CO塊の最大堆積量は、固体材料の容積熱容量に従って、多孔質体1m当たり50kg未満である。固体COを含有する多孔質体の密度が、堆積したCO層の多孔度に従って、約1000〜1500kg/mであると仮定すると、これは3〜5容量%に相当する。このような容量は、多孔度が容易に20容量%を超え更には30容量%も超えることができる組立式(structured)又は非組立式充填物中に容易に貯蔵できる。こうして、捕獲サイクル中の閉塞又は許容できない圧力降下の増大を伴う問題は本質的に防止できる。これは本発明方法の大きな利点の1つである。
【0022】
多孔質体に堆積した固体COは、本方法の工程(c)において、COの昇華温度よりも高い温度を有する温流体CO流を固体COを含有する固定床に通せば、除去される。温流体CO流は、温COガス流が好ましい。この温流体CO流は、有利には50〜ほぼ100容量%、更に好ましくは90〜ほぼ100容量%、99〜ほぼ100容量%の範囲のような高濃度のCOを含有する。温COガス流は、例えば工程(c)で得られた流体CO、即ち、流体CO流出流の少なくとも一部を多孔質体に再循環すれば、用意できる。このようなCO濃度の高い温流体を使用する利点は、工程(c)の流出流が例えばCO鉱物質の隔離又は別途に精製を必要としない強化石油回収(enhanced oil recovery)法に使用できる。温流体はCOの昇華温度又は溶融温度のいずれの温度であってもよい。工程(c)中、固定床の圧力がCOの三重点圧力、即ち、約5.2バール(絶対圧)よりも高いと、堆積したCOが溶融するかも知れない。液体COはCOの三重点よりも高い特定の温度でのみ存在し得る。温流体の温度は−70〜50℃、好ましくは−70〜−20℃の範囲が好ましい。
【0023】
本発明方法はCO及び1種以上の他のガス化合物を含むいかなるガス原料流からもCOを除去するために使用できる。ガス原料流はCOを3容量%以上、好ましくは5〜75容量%、更に好ましくは10〜35容量%の範囲含有することが好ましい。昇華によるCO分離の有効性を最大化するために、1種以上の他のガス化合物は冷多孔質体の温度より低い凝縮又は昇華温度を有することが好ましい。他のガス化合物の好適な例としては、N、O、H、CHが挙げられる。冷表面含有体の温度よりも高い凝縮又は昇華温度を有する少量の炭化水素化合物、或いはまた冷表面含有体の温度よりも高い凝縮又は昇華温度を有する例えばNO、HS又はSOのような化合物は、少量ならば許容し得る。
【0024】
好適な原料流としては、例えば化石及びバイオマスをベースとするエネルギー変換法からの煙道ガスが挙げられる。COとH及び/又はCOとの混合物を含むガス原料流も好適である。このような原料流は、例えば合成ガス(主としてHとCOとの混合物)中に存在するCOが水によりCO及びHに転化する水−ガス−シフト反応帯域の流出流として得られる。
煙道ガス又は水−ガス−シフト反応帯域の流出流は、通常、水又は水蒸気を含有してよい。
【0025】
このような流体原料流を処理するときは、まずガス原料流を、存在する水又は水蒸気全体に対し、80重量%〜ほぼ100%の範囲に除去されるように、脱水するのが有益である。更に好ましくは水蒸気の90〜99.9重量%、なお更に好ましくは95〜99.9重量%が除去される。しかし、水を除去するためにガス原料流を予備処理する必要はない。ガス原料流中に水が存在する場合、本発明方法ではガス原料流から水をCOと一緒に除去、即ち分離することが可能である。したがって、本発明方法は、本発明方法で処理する前に、ガス原料流から水を少量除去するだけでよいか、或いは全く除去しなくてよいという利点を有する。得られた流体CO流出流から水を除去するために、引続く水及びCOの分離を行ってよい。しかし、COの捕獲に本発明方法を使用すれば、多孔質体の内部でCOと水との有利な分離が起こる。この分離は、COの昇華温度と水の凝縮兼凍結温度との差に基づいている。実施例で更に詳細に説明するように、水は他の領域、通常はCOよりも、ガス原料流が冷多孔質体に入った所に近い領域に堆積する。その結果、水及びCOは多孔質体から別々に回収できる。更に、工程(a)において多孔質体内に初期温度分布を作れば、多孔質体/固定床内の水及びCOの分離は、なお更に増進できる。このような温度分布は、例えば多孔質体の第一の部分を、水の凝縮温度より低いがCOの昇華温度よりも高い温度に冷却する工程を含んでよい。次に、多孔質体の第二の部分をCOの昇華温度よりも低い温度に冷却してよい。固体CO及び液体/固体水を含む多孔質体が温流体CO流と接触すると、昇華温度が低いため、COは水より前に回収される。固体CO及び液体/固体水を含む多孔質体は、固体COの昇華温度よりも高いが、水を固体に留めるのに充分低い温度、好ましくは−75〜−1℃の範囲の温度、更に好ましくは−70〜−10℃の範囲の温度を有する流体CO流と接触させるのは有利である。次いで、液体/固体水は、該液体/固体水を溶融及び/又は蒸発或いは昇華させるのに(即ち、固体から蒸気に)充分高い温度、好ましくは0〜500℃の範囲の温度を有する流体流で除去してよい。水の回収に好適な流体としては、CO、N、H、He、Ne、Ar、Kr、CH、又は空気等を含むガス流が挙げられる。好ましくは、窒素は窒素の混合物として使用され、また水は大気中に安全に処分できるし、或いは所望ならば、容易に分離できる。また工程(a)において多孔質体の冷却に窒素を使用すれば、窒素は特に好ましい。なぜならば、工程(a)で使用した窒素は、次に多孔質体から水を回収するのに使用でき、この多孔質体は引続き工程(a)において冷却される用意ができているからである。水回収用の他の好適なガスは、清浄化された煙道ガス、例えば容易に得られる点で、工程(b)で得られるCOの枯渇した流出流である。COを分離すべき原料流は、冷多孔質体と接触する際、COの昇華温度よりいかなる高い温度を有してもよい。COの捕獲に多孔質体を使用する本発明方法の実施態様では、多孔質体と接触する際のガス原料流の温度は、好ましくは周囲温度〜500℃、更に好ましくは100〜500℃、なお更に好ましくは200〜350℃の範囲である。高温の原料を使用すると、固体COの堆積を多孔質体内部のガス原料流の方向に移動させる可能性がある。更に、多孔質体は固体COの除去の準備中に加熱される。これについては以下に更に詳細に検討する。
【0026】
昇華したCOはガス又は液体として回収できる。工程(c)の圧力がCOの三重点圧力、即ち、約5.2バール(絶対圧)を超えると、このCOは溶融し、液体として回収できる。COを液体として回収する有利な点は、COガスを、更に処理するのに必要な圧力に加圧する際の大幅なコスト低下である。液体COを得るための工程(c)での圧力は、好ましくは5.2〜50.0バール(絶対圧)、更に好ましくは5.2〜10バール(絶対圧)の範囲である。
【0027】
多孔質体は一定量の冷気を貯蔵できるいかなる材料からも製造できる。このような多孔質体は、貯蔵可能なエネルギー(冷気)量を最大にするため、容積熱容量の高い材料で作ることが好ましい。特に好ましくは、容積熱容量が110J/mK以上、更に好ましくは110〜510J/mKの範囲の材料である。このような材料は比較的低コストで多量に入手できると有利である。好適な材料の例としては、アルミニウム、アルミナ及びコージェライトが挙げられる。
【0028】
熱伝達及び固体COの堆積を最適化するため、多孔質体は高い比表面積を有することが好ましい。多孔質体の比表面積は、1000m/m以上、好ましくは1000〜100000m/m、更に好ましくは2000〜50000m/mの範囲であることが好ましい。
【0029】
冷多孔質体はCOの昇華温度よりも低いいかなる温度を有してもよい。COを昇華させるのに充分なエネルギーを効率的に付与するために、冷多孔質体の温度は−200〜−100℃、好ましくは−175〜−125℃、更に好ましくは−155〜−145℃の範囲であることが好ましい。
【0030】
ガス原料流からCOを分離する好適な装置は、固体充填物の固定床を有する容器を備え、該容器は更に、
COの昇華温度よりも低い温度を有する流体を受取るために配置した流体用第一入口、
COの昇華温度よりも高い温度を有する流体を受取るために配置した流体用第二入口、
COの昇華温度よりも低い温度を有する流体を移送するために配置した流体用第一出口、
COの昇華温度よりも高い温度を有する流体を移送するために配置した流体用第二出口、
を備える。
【0031】
固定床の保持に極冷気絶縁材料付きステンレス鋼円筒容器を使用することが好ましい。このような容器は、−150〜300℃の範囲の操作温度に耐えられるように設計する必要があることは理解されよう。このために例えば特定の溶接技術を使用する必要があり、また構築材料の選択を制約するかも知れない。
【0032】
COの昇華温度よりも低い温度を有する流体を受取るか又は移送するために配置した流体用入口及び出口は、−150℃〜周囲温度の範囲の温度に耐えられなければならない。一方、COの昇華温度よりも高い温度を有する流体を受取るか移送するために配置した流体用入口及び出口は、−80〜300℃の範囲の温度に耐えられなければならない。これらの入口及び出口はエネルギー損失を防止するため、絶縁することが好ましい。任意に、第一及び第二入口は同じ入口であってよい。同じく、第一及び第二出口は同じ出口であってよい。しかし、このためには入口は−150〜300℃の範囲の温度に耐えられなければならない。
【0033】
本発明の装置は、好ましくは前記の本発明方法の工程(a)、(b)及び(c)のサイクルを、各容器において同時に、かつ各容器の相外で通すために配置した前記定義した3つの容器を備える。或いはこの容器は、本発明方法の工程(a)、(b)及び(c)に従って、各々同時であるが相外で操作される3つの固定床を含む。これら3つの固定床は、容器内の更に大型の固定床配列の3つの、部分、区画又は帯域であってもよいことは理解されよう。
【0034】
本発明方法及び装置は、特に液体天然ガス(LNG)ターミナルにおいて再ガス化ユニットと一体化して使用される。再ガス化中、生成した冷気は、本発明方法の工程(a)において冷CHガスの形態で、或いは現場で例えば熱交換により生成した他の好適な冷媒体の形態で有利に使用できる。本発明方法及び装置は、特にLNGターミナルでの再ガス化ユニットと組合わせ、更に水素製造ユニット(HMU)と組合わせて使用され、これにより水素はCHから製造され、またHMUの煙道ガス中のCOは、本発明方法及び装置を用いて分離される。
【0035】
得られた流体COは、更に別の方法に好適に使用できる。例えばこのCOは、鉱物炭酸化法により隔離できる。このような方法ではCOは珪酸マグネシウム又は珪酸カルシウム、例えばカンラン石、活性蛇紋石又は鋼スラグの水性スラリーと反応する。或いはこのCOは、例えば強化石油回収法で貯蔵又は使用できる。
【0036】
図面の詳細な説明
図1は3つの独立した固定床を用いた本発明方法の概略図を示す。同方法は一連の工程(a)〜(c)を通過する単一固定床を用いて不連続的に操作できることは理解されよう。
【0037】
固体充填物111、112、113を充填した3つの固定床101、102、103は、並列で操作され、各固定床に対し順次3つのサイクル、即ち、捕獲サイクル(本発明方法の工程(b))、回収サイクル((本発明方法の工程(c))及び冷却サイクル(本発明方法の工程(a))を行う。熱煙道ガス120が入口122経由で固定床101に送られる。固定床101は前の冷却サイクルで約−150℃に冷凍されたものである。この捕獲サイクル中、煙道ガスに存在するCO(及び存在すれば水)は、固体床材料111上に堆積し、床材料中に貯蔵された“冷気”を消費する。COの枯渇した流出流124は固定床101の出口126で除去される。温度前端が捕獲サイクル中、固定床を移動し、比較的高い入口温度が固定床の入口でエネルギー(熱)を貯蔵するのに使用される。このエネルギーは次の回収サイクルにおいてCOの除去に使用される。捕獲サイクルは、COが固定床101を破過(break through)し始め、次の回収サイクルを操作するため固定床101が切り換えられるまで続けられる。
【0038】
前の捕獲サイクルにおいて固体COを堆積した固定床102では、同時に回収サイクルにおいて固体充填物112からCOが除去される。回収サイクル中、純COガス流130は、入口132経由で固定床102に導入され、固体充填物112を通過する。出口134からは、固体充填物112から除去されたCOを含有する流体CO136が得られる。流体COの一部は再循環ライン137及び圧縮機138経由で再循環してよい。前の捕獲サイクル中、固定床102の入口で作られた熱温度帯域は固定床を通過し、昇華したCO(凝縮し霜となったHOと一緒に)が除去されたことを確かめる。昇華COが固体充填物112から除去された後、固定床は次の冷却サイクルにおいて冷却される。
【0039】
前の回収サイクルでCOを放出した固定床103でも同時に冷N流140を入口142経由で固定床113に通せば、冷却サイクルにおいて固体充填物113は冷却される。出口146、再循環ライン148及び圧縮機149経由で固定床113を出るN流144の一部を再循環すれば、N流140は更に冷却される。N再循環流152は別の慣用の極冷気熱交換器156で冷媒154により冷却される。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の非限定的実施例により説明する。
動的に操作される固定床による新規な極冷気CO分離法の基本的原理を図2及び図3で説明する。この分離法を、露点と昇華温度との差に基づいてCO、HOと永久ガスとの効果的な分離が行われる数値モデルを用いて説明する。図2において、符号301で示すラインは、左のy軸に目盛った煙道ガスの温度(T)を示す。ライン303及び305は、それぞれ、縦のx軸と平行する充填床中のHO、COの塊状堆積(Mdep)を示す。塊状堆積は右のy軸に目盛った。ライン303及び305の下の領域304及び306は、それぞれ、堆積塊全体の大きさ(measure)である。
【0041】
CO、HO及び不活性ガスN(それぞれ20.9容量%、1.2容量%、77.9容量%)を含有する300℃の煙道ガスを、軸位置(x軸、x)0において始め均一に冷却した、コージェライト粒子の充填床に供給し、充填床を左から右に(軸位置の値を増大させる)に移動する。充填床の初期温度は−150℃であった。図2における温度分布及び塊状堆積の分布を、本発明方法による多孔質体の実施態様の工程(b)中、任意に選択した時間に対して示す。図3から判るように、3つの温度前端311、312及び313は進展し、充填床を(矢印の長さで示すように)異なる前端速度で通過する。温度前端311は、ガス混合物がその(第一の)露点、この場合は約36℃よりも直ぐ高い温度まで冷却される場所に相当する。実際に温度前端311では、固体充填物は煙道ガスにより加熱され、既に凝縮したHOは蒸発する。温度前端312では煙道ガス中に存在する水は全て凝縮する(領域304)。温度前端311でのHOの蒸発のため、局部のHO分圧は入口の煙道ガスのHO分圧よりも高く(また原料温度及び初期温度による)、したがって、局部ガス混合物の露点及び最初の平坦域温度は僅かに高い。
【0042】
温度前端312では、HOは全て煙道ガスから凝縮し、この脱水煙道ガスは更にその第二の露点(約−93℃)よりも直ぐ高い温度まで冷却され、同時に充填床をCOの昇華温度よりも直ぐ高い温度まで加熱する。また温度前端312では、前に堆積したCOは昇華して、再び温度前端313で固体充填物上に堆積する(領域306)。温度前端313では煙道ガスは充填床の初期温度、即ち、−150℃まで冷却される。
【0043】
温度前端313の前端速度は温度前端312の前端速度よりも早く、また温度前端312の前端速度は温度前端311の前端速度よりも早く、前端速度は捕獲サイクル中、充填床中の固体充填物上に凝縮したHO及び堆積したCOの成長量に相当する。凝縮HO量及び固体充填物の単位容量当たりの昇華CO量は最大値に達し、この最大値は固体充填物中に貯蔵された冷気の最大量(即ち、露点と初期温度との差)に相当することは注目される。初期温度が−150℃でのCOの昇華では、固体充填物の容積熱容量に従って、COの最大塊状堆積は、通常、50kg/m未満である。前述のように、このような固体CO量は組立式又は非組立式充填物中に容易に貯蔵できる。こうして、捕獲サイクル中の閉塞又は許容できない圧力降下の増大を伴う問題は本質的に防止できる。
【0044】
本発明方法による多孔質体/固定床の実施態様の他の重要な利点は、出口ガス温度が捕獲サイクル全体の殆どに亘って正に最小の冷媒温度であるため、このサイクル全体の殆どに亘って最大限可能なCOの捕獲が実際に達成されることである。
【0045】
図3に、本発明方法による多孔質体の実施態様の工程(a)中、固定床中に初期温度分布を導入する実施態様を示す。工程(a)において多孔質体内部にこのような初期温度分布を作ると、多孔質体/固定床内でのCOと水との分離がなお更に増進できる。このような温度分布は、例えば多孔質体の第一の部分を、水の凝縮温度より低いがCOの昇華温度よりも高い温度に冷却する工程を含んでよい。次に、多孔質体の第二の部分をCOの昇華温度よりも低い温度に冷却してよい。図3では初期温度分布を有効利用すると、COとHOとの分離が増進することを示している。図3では符号405で示すラインは、左のy軸に目盛った煙道ガスの温度(T)を示している。ライン407及び409は、それぞれ、縦のx軸と平行する充填床中のHO、COの塊状堆積(Mdep)を示す。塊状堆積は右のy軸に目盛った。ライン407及び409の下の領域408及び410は、それぞれ、堆積塊全体の尺度である。
【0046】
CO、HO及び不活性ガスN(それぞれ20.9容量%、1.2容量%、77.9容量%)を含有する300℃の煙道ガスを、軸位置(x軸、x)0において始め均一に冷却した、コージェライト粒子の充填床に供給し、充填床を左から右に(軸位置の値を増大させる)に移動する。充填床の最初の温度は−150℃であった。充填床を2つの帯域、即ち、軸位置0〜3m(帯域401)及び、軸位置3〜10m(帯域402)に分割する。帯域401は−70℃、即ち、COの昇華温度よりも高いがHOの凝縮点よりも低い温度に冷却される。帯域402は−150℃、即ち、COの昇華点よりも低い温度に冷却される。図3では温度分布及び塊状堆積の分布を、本発明方法による多孔質体の実施態様の工程(b)中、任意に選択した時間に対して示す。図3から判るように、4つの温度前端411、412、413及び414は進展し、充填床を(矢印の長さで示すように)それぞれ異なる前端速度で通過する。図3から判るように、HOとCOとの明確な分離が得られる。凝縮HOが見られる場所(領域408)は、COの堆積した領域(領域410)から効果的に分離される。実際に初期温度帯域401及び402の長さは、煙道ガス原料の組成、煙道ガスの処理量、及びサイクル時間と同調させなければならない。しかし、初期温度分布により、僅かに大きい床容積の費用でほぼ完全な分離が可能である。
【符号の説明】
【0047】
101 固定床
102 固定床
103 固定床
111 固体充填物
112 固体充填物
113 固体充填物
120 熱煙道ガス又はCOを含有するガス原料流
122 入口
126 出口
130 純COガス流
132 入口
134 出口
136 流体CO
137 再循環ライン
140 冷N
142 入口
144 N
146 出口
148 再循環ライン
152 N再循環
154 冷媒
156 極冷気熱交換器
303 縦のx軸と平行する充填床中のHOの塊状堆積
304 領域又は堆積塊全体の大きさ
305 縦のx軸と平行する充填床中のCOの塊状堆積
306 領域又は堆積塊全体の大きさ
311 温度前端
312 温度前端
313 温度前端
401 軸位置0〜3mの帯域又は初期温度帯域
402 軸位置3〜10mの帯域又は初期温度帯域
405 左のy軸に目盛った煙道ガスの温度
407 縦のx軸と平行する充填床中のHOの塊状堆積
408 堆積塊全体の大きさ又は凝縮HOが見られる場所
409 縦のx軸と平行する充填床中のCOの塊状堆積
410 堆積塊全体の大きさ又はCOの堆積した領域
411 温度前端
412 温度前端
413 温度前端
414 温度前端
dep 塊状堆積
T 煙道ガスの温度

【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】米国特許第7,073,348号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固定床形態の多孔質体をCOの昇華温度より低い温度に冷却して冷多孔質体を得る工程、
(b)COを含有するガス原料流及び1種以上の他のガス化合物を該冷多孔質体の表面と接触させて固体COを含有する多孔質体及びCOの枯渇した流出ガスを得る工程、及び
(c)該固体CO含有多孔質体をCOの昇華温度より高い温度を有する流体CO流に曝して固体COを除去し、これにより流体CO及び温多孔質体を得る工程、
を順次に含むガス原料流からのCOの分離方法。
【請求項2】
前記流体CO流が工程(c)で得られた流体COを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス原料流が水を含有し、該水が前記COと一緒にガス原料流から除去される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記CO及び水が多孔質体から別々に回収される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質体が単一体であるか又は一体式粒子からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において、前記多孔質体中に又はそれを通してCOの昇華温度より低い温度を有する冷流体流、好ましくは冷ガス流を通すことにより、該多孔質体が冷却される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記冷流体が工程(b)で得られた冷却COの枯渇した流出ガス、又はCOの昇華温度より低い凝縮又は昇華温度を有する流体であり、好ましくは該流体はN、H、He、Ne、Ar、Kr、CH、LNG又はそれらの1種以上の混合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、前記ガス原料流が1〜2バール(絶対圧)の圧力で前記冷多孔質体の表面と接触する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
3つの多孔質体を3つの固定床の形態で用意し、これらの固定床を工程(a)、(b)及び(c)のサイクルの一つに同時に相外で通す工程を更に含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
表面を有する前記冷多孔質体の温度が−200〜−100℃、好ましくは−175〜−125℃、更に好ましくは−155〜−145℃の範囲である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス原料流が煙道ガス流か、又はCO及びH及び/又はCOの混合物を含有する流れである請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
表面を有する前記多孔質体の比表面積が、1000m/m以上、好ましくは1000〜100000m/m、更に好ましくは2000〜50000m/mの範囲である請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
表面を有する前記多孔質体がセラミック又は金属、好ましくはセラミック、更に好ましくはアルミナ又はコージェライトを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−500307(P2011−500307A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528417(P2010−528417)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063658
【国際公開番号】WO2009/047341
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】