説明

ガス検出装置

【課題】 ガス検出素子に水滴が付着し難いガス検出装置を提供する。
【解決手段】 ガス内の特定成分を感知するガス検出素子53と、ガス検出素子53の周囲を加温するヒータ54と、ガス検出素子53とヒータ54の間に配設されてヒータ54を支持し、ヒータ54をガス検出素子53に対して臨出させる臨出部55bを有する基板55と、を備えるガス検出装置5において、基板55に、当該基板55の外周部55dと臨出部55bとを連続させる排出経路55cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という場合がある。)を燃料極と酸素極とで両側から挟み込んで形成したセルを複数積層して構成したスタックを備えている。水素を含む燃料ガスが燃料極に供給されると、燃料極の触媒層において反応が生じ、燃料ガス内の水素がプロトン(H+)と電子とに分かれ、プロトンは電解質膜中を透過して酸素極に移動し、電子は外部回路を通って酸素極に移動する。そして、酸素を含む酸化剤ガスが酸素極に供給されると、酸素極の触媒層において反応が生じ、酸化剤ガス中の酸素と燃料極から移動してきたプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような燃料電池において、燃料極の水素が電解質膜を透過して酸素極に漏洩してしまうことがある。そのため、例えば特許文献1においては、燃料電池の酸素極側の排出系に水素検出装置を設置して、水素の漏洩を検知したときは燃料の供給を遮断する保護装置が開示されている。
【0003】
ところで、酸素極側の排出系は、酸素極の触媒反応によって水が生成されること、および、触媒反応が好適に行われるように酸化剤ガスが加湿されることから、湿度が高くなっている。そのため、前記水素検出装置のガス検出素子の表面に液滴(結露)が付着することがある。ガス検出素子表面に液滴が付着するとガス検出素子の感度が落ちるため、これを防止すべく、ガス検出素子とガスの流通路の間にヒータを設置してガス検出素子の周囲を暖めることにより、液滴の付着を防止する水素検出装置が開発されている。
【0004】
図6(a)は、ヒータを備えた水素検出装置の断面図である。水素検出装置100は、水素を検出するガス検出素子101と、このガス検出素子101の周囲を加温するヒータ102と、ガス検出素子101とヒータ102の間に配置されてヒータ102を支持する基板103と、基板103に接続された端子104、104と、を備えて構成されている。基板103は、ガス検出素子101に対してヒータ102を臨出させる開口部である臨出部103aを備えており、ヒータ102によってガス検出素子101の周囲を暖めて、結露などによる液滴の付着を防止するようになっている。
【特許文献1】特開平6−223850号公報(段落0013〜0017、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかる水素検出装置100によってガス検出素子101への液滴の付着頻度は減少したが、このような構成の水素検出装置100においても、時には水素の検出精度が低下してしまうことがあった。
【0006】
発明者らが鋭意研究を重ねた結果、図6(b)に示すように、ガス検出素子101とヒータ102とのわずかな隙間、すなわち基板103の臨出部103aに水滴Wが溜まり、あるいは基板103とガス検出素子101との間に水膜が形成され、ガス検出素子101に水滴Wが付着してしまう場合があることが推測された。その結果、ガス検出素子101の感度が悪くなり、水素検出精度の低下を招いていた。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、ガス検出素子に水滴が付着し難いガス検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガス検出装置は、ガス内の特定成分を感知するガス検出素子と、前記ガス検出素子の周囲を加温するヒータと、前記ガス検出素子と前記ヒータの間に配設されて前記ヒータを支持し、前記ヒータを前記ガス検出素子に対して臨出させる臨出部を有する基板と、を備えるガス検出装置であって、前記基板は、当該基板の外周部と前記臨出部とを連続させる排出経路を有することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、前記基板は、当該基板の外周部と前記臨出部とを連続させる排出経路を有することから、前記臨出部に付着した水は、排出経路を通って基板の外(外周部)に排出されることとなる。そのため、臨出部に水が溜まりにくい構造となる。
【0010】
なお、排出経路は、ガス検出素子に対して最も近接するように基板に形成されているのが好ましい(請求項2)。かかる構成によれば、ガス検出素子に最も近接する部位に水が溜まり難くなるため、ガス検出素子に水が付着し難くなり、ガス検出装置の検出精度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非常に簡易な構成で、ガス検出素子に水滴が付着し難いガス検出装置を提供することができる。その結果、ガス検出装置の精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、実施形態としては、本発明に係るガス検出装置を燃料電池システムのガス流通路に適用した場合について説明する。
【0013】
(燃料電池システム1)
図1は、本実施形態に係るガス検出装置を備える燃料電池システムの概略構成を示したブロック図である。
燃料電池システム1は、燃料電池2と、この燃料電池2の燃料極2Aに接続された燃料ガス流通路3と、燃料電池2の酸素極2Bに接続された酸化剤ガス流通路4と、この酸化剤ガス流通路4の排出路4Bに設置されたガス検出装置5と、ガス検出装置5からの信号に基づいて警報装置8を制御する制御装置6と、記憶装置7と、警報装置8とから構成されている。
【0014】
燃料電池システム1は、燃料電池2の燃料極2Aに供給された燃料ガスの中の水素(H2)が電解質膜2Cを透過して酸素極2Bに漏洩し、当該水素が酸化剤ガスの排出路4Bを流通すると、当該排出路4Bにセットされたガス検出装置5がこれを検知し、検知信号を制御装置6に送信するようになっている。制御装置6は、例えば検知信号から把握されるガスの濃度と記憶装置7に記憶された閾値とを比較し、ガスの濃度が閾値以上である場合には警報装置8を作動させるようになっている。
【0015】
(燃料電池2)
燃料電池2は、電解質膜2Cを挟んで燃料極2Aと酸素極2Bとを有している。燃料極2Aには、燃料ガス流通路3が接続されている。燃料極2Aは、供給路3Aから燃料ガスの供給を受け、燃料ガスを触媒反応に使用したのち排出路3Bに排出するようになっている。また、酸素極2Bには、酸化剤ガス流通路4が接続されている。酸素極2Bは、供給路4Aから酸化剤ガス(例えば空気)の供給を受け、酸化剤ガスを触媒反応に使用したのち排出路4Bに排出するようになっている。ここで、酸化剤ガスは、触媒反応によって生じた生成水を含むことになり、高湿度となっている。
【0016】
(ガス検出装置5)
図2は、酸化剤ガスの排出路とガス検出装置の断面図である。
ガス検出装置5は、図2に示すように、酸化剤ガスの排出路4Bに設置されている。酸化剤ガスの排出路4Bを構成する配管には、ガス検出装置5を取り付けることができるように、取付穴4Baが形成されている。
【0017】
図3は、図2のA部を拡大して示した断面図である。
ガス検出装置5は、図3に示すように、ケース51と、ケース51内に格納された回路基板52と、ケース51の下方に配置されたガス検出素子53と、ガス検出素子53の下方に配置されたヒータ54と、ガス検出素子53とヒータ54の間に配置され、ヒータ54を支持する基板55と、ケース51の下方に突出してガス検出素子53およびヒータ54の周囲を囲む断熱樹脂ケース56と、断熱樹脂ケース56の開口部56aを覆う撥水フィルタ57と、から構成されている。
ガス検出装置5は、取付穴4Baの中にガス検出素子53を配置することにより、排出路4B内を流れる酸化剤ガスに含まれる水素を検知することができるようになっている。
【0018】
(ケース51)
ケース51は、回路基板52を格納して保護するケースであり、図2に示すように、酸化剤ガスの排出路4Bを構成する配管にボルトを介して固定されている。
【0019】
(回路基板52)
回路基板52は、ガス検出素子53の反応を検知信号に変えるための回路と、ヒータ54の温度を調節するための回路とを備えている。回路基板52は、端子53aを介してガス検出素子53と接続されている。また、回路基板52は、端子55a及び基板55を介してヒータ54と接続されている。
【0020】
(ガス検出素子53)
図4は、ガス検出素子とヒータと基板とを示した斜視図である。
ガス検出素子53は、例えば白金やアルミナなどの触媒からなる検出素子53bと、熱電対などの温度補償素子53cとから構成されている。ガス検出素子53は、ケース51の下方から突出した位置に配置されており、取付穴4Baの内部に配置できるようになっている。
【0021】
検出素子53bは、ガス中に含まれる水素と触媒とが反応して熱を発することにより電気抵抗が変化する。温度補償素子53cは、ガス検出素子53の周囲のガスの温度変化により電気抵抗が変化する。ガス検出装置5は、これらを比較することによりガスの温度変化の影響を除去して、水素と触媒の反応のみによる電気抵抗の変化を把握し、水素の濃度を検出するようになっている。
【0022】
(ヒータ54)
ヒータ54は、図3、4に示すように、ガス検出素子53の下方に配置されており、ガス検出素子53の周囲のガスを加温することができるようになっている。ヒータ54は、図4に示すように、例えば四角板状に形成された金属発熱体から構成されており、抵抗加熱によって熱を発するようになっている。この熱によりガス検出素子53の周囲のガスが温められ、飽和水蒸気量が大きくなり、結露を防止することができる。なお、ヒータ54とガス検出素子53との間隔は、適宜設定可能であるが、1.5mm以上とするのが好適である。
【0023】
(基板55)
基板55は、ガス検出素子53とヒータ54との間に配置されており、ヒータ54を支持するとともにヒータ54に電気を供給できるようになっている。基板55は、図4に示すように、その外形が略円形状に形成された板状の部材であり、その略中央部に臨出部55bが形成されている。臨出部55bは、平面視ほぼ円形状をした開口部であり、図4に示すように、ガス検出素子53に対してヒータ54を露出(臨出)させている。そのため、ヒータ54でガス検出素子53の周囲を暖めることができる。
【0024】
そして、基板55には、図4に示すように、臨出部55bと外周部55dとを連続させる排出経路55cが形成されている。排出経路55cは、臨出部55bに溜まってしまった結露水を排出する役割を果たすものであり、基板55の一部を切り欠いて形成されている。
【0025】
断熱樹脂ケース56で囲われた空間内(以下、「センサ室」という場合がある。)は、ヒータ54によって暖められているため、結露が生じ難くなっているが、何らかの原因により結露が生じた場合には、臨出部55bによって囲われたヒータ54の上面(ガス検出素子53側の面)に結露水が溜まりやすい。したがって、基板55の一部を切り欠いて結露水の排出経路55cを形成することにより、臨出部55bに結露水が溜まりにくくなる。その結果、ガス検出素子53に水滴が付着しにくくなり、ガス検出装置5の検出精度が向上する。
【0026】
また、排出路4Bを流れる酸化剤ガスは、図4の下方から流れてくることから、排出経路55cを形成することにより酸化剤ガスが検出素子53bと接触しやすくなり、やはりガス検出装置5の検出精度が向上する。
【0027】
なお、排出経路55cは、ガス検出素子53に対して最も近接する位置に形成するのが好適である。このようにすると、ガス検出素子53と最も近接していた基板55付近に水が溜まりにくくなり、ひいてはガス検出素子53に水が付着し難くなる。
図3に戻ってガス検出装置5の説明をつづける。
【0028】
(断熱樹脂ケース56)
断熱樹脂ケース56は、図3に示すように、ガス検出素子53、ヒータ54および基板55を囲うケースであり、酸化剤ガスの排出路4Bを構成する配管に形成された取付穴4Baに嵌合するようになっている。断熱樹脂ケース56は、例えば円筒形状に形成されており、排出路4B側に開口部56aを有している。かかる開口部56aを通って排出路4B内を流れる酸化剤ガスが断熱樹脂ケース56内に流入するようになっている。また、断熱樹脂ケース56の外周面には溝が形成されており、当該溝には酸化剤ガスの漏洩を防止するためのOリング56bがはめ込まれている。
【0029】
(撥水フィルタ57)
撥水フィルタ57は、排出路4B内を流れる酸化剤ガス中に含まれる液滴が断熱樹脂ケース56内に流入するのを防止する役割を果たすものであり、図3に示すように、断熱樹脂ケース56の開口部56aを塞ぐように配置されている。
【0030】
(制御装置6)
制御装置6(図1参照)は、例えば中央演算処理装置およびメモリ装置などから構成されている。制御装置6は、ガス検出装置5の回路基板52と接続されており、ガス検出装置5が検知した検知信号を受信できるようになっている。制御装置6は、例えばガス濃度判定手段を備えており、検知信号に基づいてガスの濃度を判定できるようになっている。また、制御装置6は、例えば警報装置制御手段を備えており、ガス濃度判定手段の判定結果に基づいて警報装置8を作動できるようになっている。
【0031】
(記憶装置7)
記憶装置7は、例えば磁気記録装置などから構成されている。記憶装置7は、制御装置6に接続されており、制御装置6によってデータの読み出し/書き込みができるようになっている。記憶装置7には、例えばガス濃度判定手段の判定基準となる閾値が記憶されている。
【0032】
(警報装置8)
警報装置8は、警戒を呼びかける知らせを発する装置であり、例えば本実施形態に係る燃料電池システム1が自動車に搭載されている場合には、音や光や振動などを発して運転者に水素の漏洩を知らせるようになっている。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るガス検出装置5は、ガス検出素子53の下方に設けられたヒータ54を支持する基板55に、臨出部55bと外周部55dとを連続させる排出経路55cを有することから、臨出部55bに結露水が溜まり難い。そのため、ガス検出素子53に水が付着し難くなり、ガスの検出精度が向上する。
【0034】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、本実施形態においては、基板55に排出経路55cを一つだけ形成したが、排出経路55cの位置や数はこれに限られるものではなく、図5(a)に示すように、ガス検出素子53と基板55とが最も近接する2箇所に排出経路55cを設けてもよい。
さらに、図5(b)に示すように、ガス検出素子53に対して最も近接する位置ではなく、その他の2箇所に排出経路55cを設けてもよい。かかる構成によっても、臨出部55bに水を溜まり難くすることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、制御装置6は警報装置8を作動させることとしたが、これに限られるものではなく、例えば燃料ガスの供給を停止するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、燃料電池システムに本発明に係るガス検出装置を適用したが、これに限られるものではなく、ガス検出時に素子に水滴が付着するおそれがあるシステムであれば、どのようなものに適用してもよいことは言うまでもない。
【0038】
また、本実施形態では、ガス検出装置によって水素を検出することとしたが、これに限られるものではなく、その他のガス、例えば一酸化炭素や硫化水素などを検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係るガス検出装置を備える燃料電池システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】酸化剤ガスの排出路とガス検出装置の断面図である。
【図3】図2のA部を拡大して示した断面図である。
【図4】ガス検出素子とヒータと基板とを示した斜視図である。
【図5】ガス検出装置の他の実施形態を示した平面図である。
【図6】従来のガス検出装置を示した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
3 燃料ガス流通路
4 酸化剤ガス流通路
5 ガス検出装置
51 ケース
52 回路基板
53 ガス検出素子
53a 端子
53b 検出素子
53c 温度補償素子
54 ヒータ
55 基板
55a 端子
55b 臨出部
55c 排出経路
55d 外周部
6 制御装置
7 記憶装置
8 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス内の特定成分を感知するガス検出素子と、
前記ガス検出素子の周囲を加温するヒータと、
前記ガス検出素子と前記ヒータの間に配設されて前記ヒータを支持し、前記ヒータを前記ガス検出素子に対して臨出させる臨出部を有する基板と、を備えるガス検出装置であって、
前記基板は、当該基板の外周部と前記臨出部とを連続させる排出経路を有することを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記排出経路は、前記ガス検出素子に対して最も近接するように前記基板に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−153596(P2006−153596A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343094(P2004−343094)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】