説明

ガス液化装置、リブレット付導管およびスパイラル式冷却部、並びに、ガス液化方法およびガス冷却方法

【課題】 所定の濃度に濃縮した高濃度および低濃度の石炭層内メタンガスを効率よく極低温に冷却し液化するとともに分離された極低温空気を窒素ガスの再冷却に利用する省エネルギ化の実現およびCO2排出量の削減を行うのに好適なガス液化装置を提供する。
【解決手段】 極低温冷却メタンガス液化装置は、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23をスパイラル状に接触させて配管したスパイラル式極低温冷却部11の窒素用リブレット付矩形導管23内に極低温度冷却用液化窒素13を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触するメタン用リブレット付矩形導管12内を流れる石炭層内メタンガス2A,2Bを極低温に冷却し液化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重要なエネルギ源である地下の石炭層内に多量に包含される高濃度メタンガスを余すことなく効率的に採取し、大気中への散逸を防止し有効利用するためにメタンガスの体積を600分の1の液化メタンとして貯蔵する工程において、熱貫流率の向上と流体抵抗の低減を図ることによってメタンガスの液化に要する消費動力と圧縮機等の原動機から大気中に排出されるCO2の削減を可能とする方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の炭鉱における石炭層内メタンガスの採取法と利用概要を示す図である。
地下深部の石炭層内には、多量の濃度100%に近いメタンガスが内包されている。この石炭層を採掘するときに巨大な地圧が解放されることにより圧縮されたメタンガスが坑道内作業空間に湧出してくる現象が生じる。
【0003】
湧出した多量のメタンガスは空気と混合し濃度は低下するが、坑道内の作業員の人体に悪影響を与えるため、通気立坑や入昇降用立坑を通して大気中に放出される。
【0004】
メタンガスはCO2の21倍の温室効果を持っているが、現在の大気中の含有量はわずか0.00022%に過ぎず、地球温暖化に影響を与えるような数値ではないことは明らかである。しかしながら、近年、世界全体の年間石炭生産量は70億トンを超えており、石炭採掘に伴い大気中への放散されるメタンガスの温室効果への影響は無視できないものがある。さらに、貴重なメタンガスエネルギの大量消失ともなっている。
【0005】
そこで、石炭層内メタンガスをガス抜き法により石炭層から採取して発電や原動機の燃料として利用する試みがある。
【0006】
さらに、メタンガスを液化すると体積が600分の1となり、運搬や貯蔵と利用に非常に便利であるので、液化メタンを極低温冷却機により製造する試みもある。
【0007】
しかしながら、メタンガスの液化には冷媒が使用され、圧縮と膨張を繰り返す冷媒サイクルの中で圧縮機動力を得るために多くのエネルギを必要とし、消費される燃料から多くのCO2が排出されることが問題となっている。
【0008】
そこで、石炭層内メタンガスの有効利用のため高性能冷却能力を備え消費燃料とCO2排出量を削減できる極低温冷却メタンガス液化装置が必要とされている。
【0009】
非特許文献1には、21%低濃度石炭層内メタンガス中に含まれる酸素、窒素およびメタンガスのうち、分子サイズの大きいメタンガスだけを吸着塔内でメタン選択制吸着剤に吸着させ、吸着塔の出口から分子サイズが小さく吸着されない酸素および窒素を排出し、吸着されたメタンガスを吸着塔内の圧力を下げることで吸着剤から分離させ、48%濃度のメタンガスとしてガスエンジンやガスボイラの燃料として有効利用する技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、非特許文献1記載の技術は、20%以下の低濃度石炭層内メタンガスを対象として、活性炭を用いたメタン選択性吸着剤によりメタンガスを酸素および窒素から分離し、48%まで濃縮した後、メタンガスを貯蔵槽に蓄えて発電機用燃料とするものであるので、メタンガスを液化するためには、さらに濃縮分離を行う必要があるという問題がある。
【0011】
図9は、非特許文献2に開示された低濃度石炭層内メタンガス濃縮装置の概要を示す図である。
【0012】
非特許文献2では、メタンガスの液化には冷媒が使用され、圧縮と膨張を繰り返す冷媒サイクルの中で圧縮機動力を得るために多くのエネルギを必要とし、消費される燃料から多くのCO2が排出されることが問題となっている点が指摘されている。
【0013】
そこで、非特許文献2では、石炭層内メタンガスを発生装置に導入し、活性炭等の吸脱効果を利用して高純度のメタンガスに精製して分離された酸素、CO2などは別ラインから排出している。精製されたメタンガスは、極低温冷却機のコールヘッド冷却部と直接接触することで自然対流冷却により液化され、貯蔵容器に移送される。特記すべきは、冷却方式で冷媒コンプレッサーが1系列1基で2系列を使用してメタンガス液化を行う最もシンプルな構成となっていることである。
【0014】
しかしながら、非特許文献2記載の技術にあっては、メタンガスの自然対流により冷却を行うために連続的なメタンガスの液化には大規模冷却槽と大きな消費エネルギが必要となること、および、液化には冷媒が使用され、圧縮と膨張を繰り返す冷媒サイクルの中で圧縮機動力を得るために多くの燃料が消費されるので大量のCO2を発生するという問題がある。
【0015】
図10は、非特許文献3に開示された石炭層内メタンガスの液化メタン自動生産システムを示す図である。
【0016】
非特許文献3では、実際のパイプラインの管径(内径492[mm])に近い条件下で内面塗装を施している、いわゆるコーティング管の内壁に乱流摩擦抵抗を低減するリブレットを施して管の摩擦抵抗低減効果を調べ、最大の低減効果を生じる無次元リブレット高さを明らかにしている。
【0017】
また、特許文献1記載の技術は、航走体リブレットを流れ方向断面積が変化する航走体においてリブレットの溝間隔と航走体船殻の流れ方向断面の周長の比を一定とすることによって航走体船殻の全流体接触面にリブレットの溝数を変えることなくリブレットを設けて流体抵抗を低減させたリブレット付航走体船殻についてのものである。
【0018】
しかしながら、非特許文献3および特許文献1には、リブレットが流体とリブレット壁面間の熱伝達効果に与える機能については開示されていない。
【0019】
また、特許文献2記載の技術は、新たに開発した高粘度流体熱交換器および高温殺菌用流体保持容器としてスパイラル式熱交換器の導管内部に特殊な攪拌阻止手段を持ち、高粘度性による層流を打ち壊し、高性能伝熱を達成している。また、高粘度側容積が他の熱交換器の1/10となり、温度制御性が非常によく、コンパクトでメンテナンスが容易な単純形状で、保温工事も容易で保守と工事費の削減を図った発明を開示している。
【0020】
しかしながら、特許文献2記載の攪拌阻止手段は、流体の高粘度性による層流を打壊し高性能伝熱を達成すものであり、導管内を流れる流体の流体抵抗を増大させるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】「低濃度CMM濃縮の実証試験装置」,大阪ガス株式会社プレリリース,2009年4月7日
【非特許文献2】「中国新疆ウイグル自治区:LNG液化プロジェクトの夢と現実」,石油・天然ガスレビュー,2007.11 Vol.41 No.6
【非特許文献3】「リブレットを用いた管内流の摩擦抵抗減少について」,日本機械学会論文集(B偏),68巻668号(2002−4)
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2004−352024号公報
【特許文献2】特開平8−166194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明が解決しようとする課題は3つある。
第1点は、所定の濃度に濃縮した高濃度および低濃度の石炭層内メタンガスを連続的に液化するため、従来の極低温冷却機と比較して高い冷却性能を有する余熱利用式冷却サイクルを備えた省力型極低温冷却メタンガス液化装置の開発である。
【0024】
第2点は、極低温冷却部の導管壁面のメタンガスまたは液化メタンと窒素ガスまたは液化窒素との間の熱貫流率の向上と導管内を流れる流体の流体抵抗を低減させる冷却用導管の開発である。
【0025】
第3点は、メタン用リブレット付矩形導管および窒素用リブレット付矩形導管をスパイラル状に接触させて円筒型冷却部を構成し周囲を真空容器で包むことによってメタンガスと液化窒素との間で効果的に熱貫流が行われることにより冷却効率を高めたスパイラル式極低温冷却部を製作し、窒素とメタンガスとの間の熱貫流率と冷却効率を明らかにすることである。
【0026】
本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、所定の濃度に濃縮した高濃度および低濃度の石炭層内メタンガスを効率よく極低温に冷却し液化するとともに分離された極低温空気を窒素ガスの再冷却に利用する省エネルギ化の実現およびCO2排出量の削減を行うのに好適なガス液化装置、リブレット付導管およびスパイラル式冷却部、並びに、ガス液化方法およびガス冷却方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1のガス液化装置は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを冷却し液化する。
【0028】
〔発明2〕 さらに、発明2のガス液化装置は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式極低温冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを極低温に冷却し液化する。
【0029】
〔発明3〕 さらに、発明3のガス液化装置は、発明2のガス液化装置において、前記冷却対象ガスからの熱貫流により前記冷媒が気化した冷媒ガスを再凝縮して前記冷媒とする極低温冷却手段と、前記スパイラル式極低温冷却部で液化された冷却対象と空気を比重の違いによって分離する空気分離手段とを備え、前記極低温冷却手段は、前記空気分離手段で分離した極低温空気により前記冷媒ガスを冷却する。
【0030】
〔発明4〕 一方、上記目的を達成するために、発明4のリブレット付導管は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の導管壁面に、リブレットの溝方向と流れの方向を一致させて当該リブレットを設けた。
【0031】
〔発明5〕 一方、上記目的を達成するために、発明5のスパイラル式冷却部は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に接触させて円筒型冷却部を構成し周囲を真空容器で包んだ。
【0032】
〔発明6〕 一方、上記目的を達成するために、発明6のガス液化方法は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを冷却し液化する。
【0033】
〔発明7〕 さらに、発明7のガス液化方法は、第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式極低温冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを極低温に冷却し液化する。
【0034】
〔発明8〕 さらに、発明8のガス液化方法は、発明7のガス液化方法において、前記冷却対象ガスからの熱貫流により前記冷媒が気化した冷媒ガスを再凝縮して前記冷媒とする極低温冷却工程と、前記スパイラル式極低温冷却部で液化された冷却対象と空気を比重の違いによって分離する空気分離工程とを含み、前記極低温冷却工程は、前記空気分離工程で分離した極低温空気により前記冷媒ガスを冷却する。
【0035】
〔発明9〕 一方、上記目的を達成するために、発明9のガス冷却方法は、発明4のリブレット付導管により冷却対象ガスを冷却する。
【0036】
〔発明10〕 さらに、発明10のガス冷却方法は、発明5のスパイラル式冷却部により冷却対象ガスを冷却する。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、発明1のガス液化装置、または発明6のガス液化方法によれば、スパイラル式冷却部により冷却対象ガスを効率よく冷却し液化することにより、冷却対象の製造に必要な圧縮機等の消費動力の節減を可能とする。
【0038】
さらに、発明2のガス液化装置、または発明7のガス液化方法によれば、スパイラル式極低温冷却部により冷却対象ガスを効率よく極低温に冷却し液化することにより、冷却対象の製造に必要な圧縮機等の消費動力の節減と、大気中に排出されるCO2と冷却対象ガスの放出量の減少を可能とする。また、産業用冷却機および高層ビル用空調機への応用ができるので、広く節電効果の向上が期待できる。
【0039】
さらに、発明3のガス液化装置、または発明8のガス液化方法によれば、冷却対象ガスの液化工程において分離された極低温空気を冷媒ガスの再凝縮工程で冷媒ガスの冷却に再利用することにより、冷媒の再生に必要な圧縮機等の消費動力の節減と、大気中に排出されるCO2の放出量の減少を可能とする。また、従来の極低温冷却機と比較してその温度制御と設置工事および保守を容易にし、極低温冷却手段の容積を約1/10とすることができる。
【0040】
一方、発明4のリブレット付導管、または発明9のガス冷却方法によれば、スパイラル式冷却部の導管壁面の断面積を増大させるとともにリブレットが当該導管内を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制して流体抵抗を低減させ、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生して熱貫流を促進するので、スパイラル式冷却部の導管壁面を介して接触する温度の異なる冷却対象ガスと冷媒との間の熱貫流効果を高めることができる。
【0041】
一方、発明5のスパイラル式冷却部、または発明10のガス冷却方法によれば、冷却対象ガスと冷媒との間で効果的に熱貫流が行われるので冷却効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】極低温冷却メタンガス液化装置の構成概要を示す図である。
【図2】特許文献1に開示された流体抵抗低減用鮫鱗型リブレットの形状の概要を示す図である。
【図3】スパイラル式極低温冷却部11の縦断面図および横断面図である。
【図4】リブレット付矩形導管を示す図である。
【図5】リブレット付矩形導管内を液化窒素とメタンガスが並流および逆流する場合の熱交換状況を示す。
【図6】リブレットが近傍を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制し、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生している流体速度分布を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る極低温冷却メタンガス液化装置を炭鉱に導入した場合における石炭層内メタンガスの採取法と利用概要を示す図である。
【図8】従来の炭鉱における石炭層内メタンガスの採取法と利用概要を示す図である。
【図9】非特許文献2に開示された低濃度石炭層内メタンガス濃縮装置の概要を示す図である。
【図10】非特許文献3に開示された石炭層内メタンガスの液化メタン自動生産システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1ないし図7は、本実施の形態を示す図である。
【0044】
まず、本発明を適用する極低温冷却メタンガス液化装置の構成を説明する。
図1は、極低温冷却メタンガス液化装置の構成概要を示す図である。
【0045】
極低温冷却メタンガス液化装置は、図1に示すように、高濃度石炭層内メタンガス2A(例えば、濃度80%以上)を石炭層から採取するメタンガス吸引用パイスライン1Aと、メタンガス吸引用パイスライン1Aを通じて採取された高濃度石炭層内メタンガス2Aを吸引・圧送するメタンガス吸引用圧縮機3Aと、メタンガス吸引用圧縮機3Aから圧送された高濃度石炭層内メタンガス2Aを貯蔵するメタンガス貯蔵槽4Aと、メタンガス貯蔵槽4Aに貯蔵された高濃度石炭層内メタンガス2Aから水分を除去する高圧乾燥機5Aとを有して構成されている。
【0046】
極低温冷却メタンガス液化装置は、さらに、低濃度石炭層内メタンガス2B(例えば、濃度30%以下)を石炭層から採取するメタンガス吸引用パイスライン1Bと、メタンガス吸引用パイスライン1Bを通じて採取された低濃度石炭層内メタンガス2Bを吸引・圧送するメタンガス吸引用圧縮機3Bと、メタンガス吸引用圧縮機3Bから圧送された低濃度石炭層内メタンガス2Bを貯蔵するメタンガス貯蔵槽4Bと、メタンガス貯蔵槽4Bに貯蔵された低濃度石炭層内メタンガス2Bから水分を除去する高圧乾燥機5Bとを有して構成されている。
【0047】
極低温冷却メタンガス液化装置は、さらに、高圧乾燥機5Bで水分が除去された低濃度石炭層内メタンガス2Bを吸引・圧送する低濃度ガス圧縮機6と、低濃度ガス圧縮機6から圧送された低濃度石炭層内メタンガス2Bを活性炭8等により濃縮するメタンガス濃縮機7と、メタンガス濃縮機7で濃縮された低濃度石炭層内メタンガス2Bを貯蔵するメタンガス貯蔵槽8Bとを有して構成されている。
【0048】
極低温冷却メタンガス液化装置は、さらに、高圧乾燥機5Aおよびメタンガス貯蔵槽8Bのそれぞれに吸引口が接続された三方開閉弁9と、三方開閉弁9の排出口から石炭層内メタンガス2A,2Bを吸引・圧送するガス圧縮機10と、ガス圧縮機10から圧送された石炭層内メタンガス2A,2Bを冷却・液化するスパイラル式極低温冷却部11と、スパイラル式極低温冷却部11で液化された液化メタン14を貯蔵する液化メタン貯蔵槽15とを有して構成されている。
【0049】
スパイラル式極低温冷却部11は、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23をスパイラル状に接触させて配管したものである(図3(b))。スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面には、リブレット16が設けられている。例えば、リブレット16が形成されたリブレットシートを、リブレット16の溝方向と流れの方向を一致させてスパイラル式極低温冷却部11の導管壁面に貼り付けることにより実現することができる。
【0050】
極低温冷却メタンガス液化装置は、さらに、冷媒となる冷媒用窒素ガス17を冷却・液化する極低温冷却機18、低圧フレキシブル配管21、窒素液化用ガス圧縮機19および高圧フレキシブル配管20と、スパイラル式極低温冷却部11の周囲に設けられた真空容器を構成するクライオスタット25と、クライオスタット25の上部であって極低温冷却機18とクライオスッタト25との間に設けられた振動防止手段26とを有して構成されている。
【0051】
次に、極低温冷却メタンガス液化装置を用いたメタンガス液化方法を説明する。
メタンガス吸引用パイスライン1Bを通じて採取された低濃度石炭層内メタンガス2Bをメタンガス吸引用圧縮機3Bでメタンガス貯蔵槽4Bに貯蔵し、高圧乾燥機5Bで水分を除去した後、低濃度ガス圧縮機6を介してメタンガス濃縮機7に圧送し、所定の濃度に濃縮してメタンガス貯蔵槽8Bに貯蔵する。その後、三方開閉弁9を介してガス圧縮機10によりスパイラル式極低温冷却部11のメタン用リブレット付矩形導管12に圧送する。低濃度石炭層内メタンガス2Bは、メタン用リブレット付矩形導管12のリブレット付壁面を介して接触する極低温度冷却用液化窒素13との間で熱貫流が行われ冷却され液化メタン14となり、液化メタン貯蔵槽15内に貯蔵される。その間、メタン用リブレット付矩形導管12の壁面にその溝方向と流れの方向を一致させて設けられたリブレット16は、スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面の断面積を増大させるとともに当該導管内を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制して流体抵抗を低減させ、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生して熱貫流を促進するためにガス圧縮機10の所要動力を削減する働きを行う。
【0052】
また、冷媒用窒素ガス17は、極低温冷却機18、低圧フレキシブル配管21、窒素液化用ガス圧縮機19および高圧フレキシブル配管20を用いた圧縮膨張工程において、極低温冷却機18に内蔵された液化窒素再凝縮装置22により極低温度冷却用液化窒素13とされた後、スパイラル式極低温冷却部11の窒素用リブレット付矩形導管23に圧送される。そこで、極低温度冷却用液化窒素13は、窒素用リブレット付矩形導管23のリブレット付壁面を介して接触する低濃度石炭層内メタンガス2Bとの間で熱貫流が行われ、低濃度石炭層内メタンガス2Bを極低温度に冷却する。その間、窒素用リブレット付矩形導管23の壁面にその溝方向と流れの方向を一致させて設けられたリブレット16は、スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面の断面積を増大させるとともに当該導管内を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制して流体抵抗を低減させ、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生して熱貫流を促進するために極低温冷却機18および窒素液化用ガス圧縮機19の所要動力を削減する働きを行う。
【0053】
液化メタン貯蔵槽15は、スパイラル式極低温冷却部11で−161.49℃以下まで極低温冷却された液化メタン14と、沸点温度が−184.00℃の空気とを比重の違いによって分離する。分離された極低温空気24は、極低温冷却機18による冷媒用窒素ガス17の圧縮膨張工程で冷却に使用され、極低温冷却機18および窒素液化用ガス圧縮機19の所要動力を削減する働きを行う。
【0054】
一方、メタンガス吸引用パイスライン1Aを通じて採取された高濃度石炭層内メタンガス2Aについては、スパイラル式極低温冷却部11に圧送する前に前記濃縮工程により所定の高濃度メタンガスに濃縮する必要がない場合もあるので、メタンガス吸引用圧縮機3Aでメタンガス貯蔵槽4Aに貯蔵し、高圧乾燥機5Aで水分を除去した後、三方開閉弁9を介してガス圧縮機10によりスパイラル式極低温冷却部11に圧送する。スパイラル式極低温冷却部11以降の工程は、低濃度石炭層内メタンガス2Bの液化工程と同じである。
【0055】
以下に、液化窒素再凝縮装置22と、液化メタン貯蔵槽15と、スパイラル式極低温冷却部11の周囲に設けられた真空容器を構成するクライオスタット25と、クライオスタット25の上部であって極低温冷却機18とクライオスッタト25との間に設けられた振動防止手段26とを備えることを特徴とする極低温冷却メタンガス液化装置および極低温冷却メタンガス液化方法を説明する。
【0056】
図2は、特許文献1に開示された流体抵抗低減用鮫鱗型リブレットの形状の概要を示す図である。
【0057】
リブレット16の高さhと幅sの関係には次式が成立する。
【数1】

リブレット付矩形導管と滑面壁矩形導管を比較した場合の管摩擦抵抗低減率は次式で表される。
【0058】
【数2】

図3は、スパイラル式極低温冷却部11の縦断面図および横断面図である。同図(a)は、リブレット付壁面の熱貫流状況を示す縦断面図である。同図(b)は、スパイラル式極低温冷却部11内の流体のスパイラル流を示す横断面図である。
【0059】
一般に、円筒管壁面の熱伝達量Qは次式で表わされる。
【数3】

また、多層円筒管であるスパイラル式導管壁面での熱貫流量Qは次式で表される。
【0060】
【数4】

ここで、kは熱貫流率、rは円筒半径、lは円筒長、t1、t2は窒素とメタンガスの温度である。
【0061】
図4は、リブレット付矩形導管を示す図である。同図(a)は、並流式リブレット付矩形導管を示す図である。同図(b)は、逆流式リブレット付矩形導管を示す図である。同図(c)は、リブレットシートの平面図および立面図である。同図(d)は、片面用リブレットおよび両面用リブレットの断面図である。
【0062】
図5は、リブレット付矩形導管内を液化窒素とメタンガスが並流および逆流する場合の熱交換状況を示す。同図(a)は、リブレット付矩形導管内における並流する液化窒素とメタンガスとの間の熱交換状況を示す図である。同図(b)は、リブレット付矩形導管内における逆流する液化窒素とメタンガスとの間の熱交換状況を示す図である。
【0063】
図6は、リブレットが近傍を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制し、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生している流体速度分布を示す図である。同図(a)は、X方向の速度分布を示す図である。同図(b)は、Y方向の速度分布を示す図である。同図(c)は、Z方向の速度分布を示す図である。同図(d)は、Y−Z方向の速度分布を示す図である。
【0064】
図7は、本実施の形態に係る極低温冷却メタンガス液化装置を炭鉱に導入した場合における石炭層内メタンガスの採取法と利用概要を示す図である。
【0065】
このようにして、本実施の形態では、極低温冷却メタンガス液化装置は、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23をスパイラル状に接触させて配管したスパイラル式極低温冷却部11の窒素用リブレット付矩形導管23内に極低温度冷却用液化窒素13を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触するメタン用リブレット付矩形導管12内を流れる石炭層内メタンガス2A,2Bを極低温に冷却し液化する。
【0066】
これにより、スパイラル式極低温冷却部11により石炭層内メタンガス2A,2Bを連続的に効率よく極低温に冷却し液化することにより、液化メタン14の製造に必要な圧縮機等の消費動力の節減と、大気中に排出されるCO2と石炭層内メタンガス2A,2Bの放出量の減少を可能とする。また、産業用冷却機および高層ビル用空調機への応用ができるので、広く節電効果の向上が期待できる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、石炭層内メタンガス2A,2Bからの熱貫流により極低温度冷却用液化窒素13が気化した冷媒用窒素ガス17を再凝縮して極低温度冷却用液化窒素13とする極低温冷却機18と、スパイラル式極低温冷却部11で液化された液化メタン14と空気を比重の違いによって分離する液化メタン貯蔵槽15とを備え、極低温冷却機18は、液化メタン貯蔵槽15で分離した極低温空気により冷媒用窒素ガス17を冷却する。
【0068】
これにより、石炭層内メタンガス2A,2Bの液化工程において分離された極低温空気を冷媒用窒素ガス17の再凝縮工程で冷媒用窒素ガス17の冷却に再利用することにより、極低温度冷却用液化窒素13の再生に必要な圧縮機等の消費動力の節減と、大気中に排出されるCO2の放出量の減少を可能とする。また、従来の極低温冷却機と比較してその温度制御と設置工事および保守を容易にし、極低温冷却機18の容積を約1/10とすることができる。
【0069】
さらに、本実施の形態では、リブレット付矩形導管12,23は、スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面に、リブレット16の溝方向と流れの方向を一致させてリブレット16を設けてなる。
【0070】
これにより、スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面の断面積を増大させるとともにリブレット16が当該導管内を流れる流体のX方向の渦流の発生を抑制して流体抵抗を低減させ、さらに壁面近傍のY方向、Z方向、Y−Z方向の流れに微小渦流が発生して熱貫流を促進するので、スパイラル式極低温冷却部11の導管壁面を介して接触する温度の異なる石炭層内メタンガス2A,2Bと極低温度冷却用液化窒素13との間の熱貫流効果を高めることができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、スパイラル式極低温冷却部11は、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23をスパイラル状に接触させて円筒型冷却部を構成し周囲を真空容器で包んでなる。
【0072】
これにより、石炭層内メタンガス2A,2Bと極低温度冷却用液化窒素13との間で効果的に熱貫流が行われるので冷却効率を向上することができる。
【0073】
本実施の形態において、スパイラル式極低温冷却部11は、発明1、4ないし6または10のスパイラル式冷却部に対応し、メタン用リブレット付矩形導管12は、発明1、2、4ないし7の第1リブレット付導管に対応し、窒素用リブレット付矩形導管23は、発明1、2、4ないし7の第2リブレット付導管に対応している。また、極低温冷却機18は、発明3の極低温冷却手段に対応し、液化メタン貯蔵槽15は、発明3の空気分離手段に対応し、極低温冷却機18による再凝縮工程は、発明8の極低温冷却工程に対応し、液化メタン貯蔵槽15による分離工程は、発明8の空気分離工程に対応している。
【0074】
なお、上記実施の形態においては、濃度が80%以上の石炭層内メタンガスを高濃度石炭層内メタンガス2Aとして採取したが、これに限らず、濃度が低濃度石炭層内メタンガス2Bよりも高ければよい。
【0075】
また、上記実施の形態においては、濃度が30%以下の石炭層内メタンガスを低濃度石炭層内メタンガス2Bとして採取したが、これに限らず、濃度が高濃度石炭層内メタンガス2Aよりも低ければよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、メタン用リブレット付矩形導管12を矩形状として構成したが、これに限らず、任意の形状とすることができる。
【0077】
また、上記実施の形態においては、窒素用リブレット付矩形導管23を矩形状として構成したが、これに限らず、任意の形状とすることができる。
【0078】
また、上記実施の形態において、スパイラル式極低温冷却部11は、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23をスパイラル状に接触させて配管したが、これに限らず、メタン用リブレット付矩形導管12および窒素用リブレット付矩形導管23を、所定の間隔をあけてスパイラル状に配管してもよい。
【0079】
また、上記実施の形態においては、冷媒として液化窒素を用いたが、これに限らず、任意の冷媒を用いることができる。
【0080】
また、上記実施の形態においては、本発明を、メタンガスを冷却し液化する場合について適用したが、これに限らず、任意の冷却対象ガスを冷却し液化する場合についても同様に適用することができる。例えば、原子炉の冷却(原子炉から発生する水蒸気を冷却し液化する場合)にも適用することができる。
【0081】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、伝熱の分野において、スパイラル式極低温冷却部11により熱貫流率の向上と流体抵抗の低減を図り、冷却効率の向上、消費動力の省力化およびCO2排出量の削減を目的とした熱交換器に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B…メタンガス吸引用パイスライン、 2A…高濃度石炭層内メタンガス、 2B…低濃度石炭層内メタンガス、 3A,3B…メタンガス吸引用圧縮機、 4A,4B,8B…メタンガス貯蔵槽、 5A,5B…高圧乾燥機、 6…低濃度ガス圧縮機、 7…メタンガス濃縮機、 8…活性炭、 9…三方開閉弁、 10…ガス圧縮機、 11…スパイラル式極低温冷却部、 12…メタン用リブレット付矩形導管、 13…極低温度冷却用液化窒素、 14…液化メタン、 15…液化メタン貯蔵槽、 16…リブレット、 17…冷媒用窒素ガス、 18…極低温冷却機、 19…窒素液化用ガス圧縮機、 20…高圧フレキシブル配管、 21…低圧フレキシブル配管、 22…液化窒素再凝縮装置、 23…窒素用リブレット付矩形導管、 24…極低温空気、 25…クライオスタット、 26…振動防止手段、 28…スプリングサス、 29…防振ベローズ、 30…ラジエイションシールド、 31…圧力制御装置連結部、 32…真空装置連結部、 33…真空

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを冷却し液化することを特徴とするガス液化装置。
【請求項2】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式極低温冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを極低温に冷却し液化することを特徴とするガス液化装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記冷却対象ガスからの熱貫流により前記冷媒が気化した冷媒ガスを再凝縮して前記冷媒とする極低温冷却手段と、
前記スパイラル式極低温冷却部で液化された冷却対象と空気を比重の違いによって分離する空気分離手段とを備え、
前記極低温冷却手段は、前記空気分離手段で分離した極低温空気により前記冷媒ガスを冷却することを特徴とするガス液化装置。
【請求項4】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の導管壁面に、リブレットの溝方向と流れの方向を一致させて当該リブレットを設けたことを特徴とするリブレット付導管。
【請求項5】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に接触させて円筒型冷却部を構成し周囲を真空容器で包んだことを特徴とするスパイラル式冷却部。
【請求項6】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを冷却し液化することを特徴とするガス液化方法。
【請求項7】
第1リブレット付導管および第2リブレット付導管をスパイラル状に配管したスパイラル式極低温冷却部の前記第2リブレット付導管内に冷媒を流すことにより、当該リブレット付壁面を介して接触する前記第1リブレット付導管内を流れる冷却対象ガスを極低温に冷却し液化することを特徴とするガス液化方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記冷却対象ガスからの熱貫流により前記冷媒が気化した冷媒ガスを再凝縮して前記冷媒とする極低温冷却工程と、
前記スパイラル式極低温冷却部で液化された冷却対象と空気を比重の違いによって分離する空気分離工程とを含み、
前記極低温冷却工程は、前記空気分離工程で分離した極低温空気により前記冷媒ガスを冷却することを特徴とするガス液化方法。
【請求項9】
請求項4記載のリブレット付導管により冷却対象ガスを冷却することを特徴とするガス冷却方法。
【請求項10】
請求項5記載のスパイラル式冷却部により冷却対象ガスを冷却することを特徴とするガス冷却方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−233652(P2012−233652A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103738(P2011−103738)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(510176754)
【出願人】(502284162)日本サーマルエンジニアリング株式会社 (3)
【出願人】(511111220)達磨電業株式会社 (1)
【出願人】(510238111)株式会社東宏トレーディング (1)
【出願人】(509271613)セキュリティージャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】