説明

ガラスセラミックスおよびその製造方法

【課題】優れた光触媒活性と可視光応答性を有するとともに、耐久性にも優れた光触媒機能性素材を提供する。
【解決手段】 酸化チタン(TiO)及び/又はこの固溶体を含む結晶相を含有するガラスセラミックスが提供される。このガラスセラミックスは、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%でTiO成分を15.0%以上88.9%以下、及びP成分を11.0%以上84.9%以下含有し、M成分(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)を合計で0.01〜10.0%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)をはじめとする無機チタン化合物は、光触媒として高い触媒活性を有することが知られている。つまり、無機チタン化合物は、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーの光が照射されると、電子や正孔を生成するため、無機チタン化合物を含む成形体の表面近傍において、酸化還元反応が強く促進される。また、無機チタン化合物を含む成形体の表面は、水が濡れ易い親水性を呈するため、雨等の水滴で洗浄される、いわゆるセルフクリーニング作用を有することが知られている
【0003】
ここで、無機チタン化合物を含む層を基材の表面に形成する技術として、基材の表面に光触媒を含む膜を成膜する技術や、光触媒を基材中に含ませる技術などが検討されている。基材の表面に光触媒を含む膜を成膜する方法としては、塗布によって塗布膜を形成する塗布法のほか、スパッタリング、蒸着、ゾルゲル、CVD(化学気相成長)等の方法が知られている。例えば、特許文献1では、基材の表面に無機チタン化合物層を形成するために用いられる塗布剤として、合成樹脂を分散相とする水性エマルジョンに高濃度の無機チタン化合物が含まれた光触媒性塗布剤が開示されている。また、特許文献2では、導電性TiOyをターゲットとして用い、ガスフロースパッタリングにより光触媒酸化チタン薄膜を成膜することが開示されている。
【0004】
一方、無機チタン化合物を基材中に含ませる技術として、特許文献3には、SiO、Al、CaO、MgO、B、ZrO、及びTiOの各成分を所定量含有する光触媒用ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−81712号公報
【特許文献2】特開2009−66497号公報
【特許文献3】特開平9−315837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材の表面に無機チタン化合物を塗布し又はコーティングする場合には、塗布膜やコーティング層の耐久性が十分ではなく、塗布膜やコーティング層が基材から剥離するおそれがあった。例えば、特許文献1で開示される光触媒性塗布剤を用いて塗布膜を形成する場合、塗布膜に残留している樹脂や有機バインダが、紫外線等によって分解されたり、無機チタン化合物の触媒作用で酸化還元されたりする結果、塗布膜の耐久性が経時的に劣化しやすい。また、上記の無機チタン化合物は、十分な光触媒活性を引き出すためにはナノサイズの超微粒子が必要であるが、ナノサイズの超微粒子は作製するコストが高く、凝集しやすいという問題点があった。また、特許文献2のようにスパッタリングによって光触媒膜を形成する場合、微粒子化は必要でなく、基材と光触媒膜との密着性も改善されるが、スパッタリング装置などの大掛かりな設備が必要になること、適用できる基材の材質や大きさ、形状が限定されること、などの問題があった。
【0007】
また、特許文献3で開示される光触媒用ガラスは、ガラス中に酸化チタンを含有させている点で他の従来技術とは考え方を異にしているが、酸化チタンは結晶構造を有しておらず、アモルファスの形でガラス中に存在するため、その光触媒特性が不充分であった。
【0008】
特に、酸化チタンの結晶型としては、アナターゼ(Anatase)型、ルチル(Rutile)型及びブルッカイト(Brookite)型が知られているが、高い光触媒特性をもたらすには、酸化チタンがアナターゼ型、ルチル型及び/又はブルッカイト型の結晶構造を有することが重要であると考えられる。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、表面が耐久性に優れ且つアナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型から選ばれるいずれか1種以上の酸化チタン結晶を表面に有しているガラスセラミックスの製造方法、及びこの製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体及び親水性成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、TiO成分、P成分、及び遷移金属成分を併用し、これらの成分の含有量を所定の範囲内に抑えることによって、ナノサイズの原料を使用する必要がなく、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型から選ばれる1種以上の酸化チタン(TiO)をはじめとする無機チタン化合物の微細な結晶を有するガラスセラミックスが得られること、そして、このガラスセラミックスが光触媒特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%でTiO成分を15.0%以上88.9%以下、及びP成分を11.0%以上84.9%以下含有し、M成分(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)を合計で0.01〜10.0%含有するガラスセラミックス。
【0012】
(2) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
SiO成分 0〜60.0%、及び/又は
GeO成分 0〜60.0%
の各成分をさらに含有する(1)記載のガラスセラミックス。
【0013】
(3) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
LiO成分 0〜40.0%、及び/又は
NaO成分 0〜40.0%、及び/又は
O成分 0〜40.0%、及び/又は
RbO成分 0〜10.0%、及び/又は
CsO成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する(1)又は(2)記載のガラスセラミックス。
【0014】
(4) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
MgO成分 0〜40.0%、及び/又は
CaO成分 0〜40.0%、及び/又は
SrO成分 0〜40.0%、及び/又は
BaO成分 0〜40.0%、及び/又は
ZnO成分 0〜50.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(3)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0015】
(5) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
成分 0〜40.0%、及び/又は
Al成分 0〜30.0%、及び/又は
Ga成分 0〜30.0%、及び/又は
In成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(4)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0016】
(6) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
ZrO成分 0〜20.0%、及び/又は
SnO成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(5)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0017】
(7) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
Nb成分 0〜50.0%、及び/又は
Ta成分 0〜50.0%、及び/又は
WO成分 0〜50.0%、及び/又は
MoO成分 0〜50.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(6)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0018】
(8) 酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
Bi成分 0〜20.0%、及び/又は
TeO成分 0〜20.0%、及び/又は
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ce、Nd、Dy、Yb及びLuからなる群より選択される1種以上、Ceを除く各成分についてはa=2且つb=3、Ceについてはa=1且つb=2とする) 合計で0〜30.0%、及び/又は
As成分及び/又はSb2O3成分 合計で0〜5.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(7)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0019】
(9) F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分が、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する質量比で10.0%以下含まれている(1)から(8)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0020】
(10) Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、及びRhからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分が、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する質量比で10.0%以下含まれている(1)から(9)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0021】
(11) TiO、TiP、及び(TiO)、並びにこれらの固溶体のうち1種以上からなる結晶相が含まれている(1)から(10)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0022】
(12) 前記結晶相がアナターゼ型、ルチル型、及び/又はブルッカイト型から選ばれるいずれか1種以上のTiO結晶を含む(11)記載のガラスセラミックス。
【0023】
(13) 前記結晶相がガラスセラミックス全体積に対する体積比で1.0%以上95.0%以下含まれている(11)又は(12)記載のガラスセラミックス。
【0024】
(14) 紫外領域から可視領域までの波長の光によって触媒活性が発現される(1)から(13)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0025】
(15) JIS R 1703−2:2007に基づくメチレンブルーの分解活性指数が3.0nmol/L/min以上である(14)記載のガラスセラミックス。
【0026】
(16) 紫外領域から可視領域までの波長の光を照射した表面と水滴との接触角が30°以下である(1)から(15)のいずれか記載のガラスセラミックス。
【0027】
(17) (1)から(16)のいずれか記載のガラスセラミックスからなる光触媒機能性ガラスセラミックス成形体。
【0028】
(18) (1)から(17)のいずれか記載のガラスセラミックスからなる親水性ガラスセラミックス成形体。
【0029】
(19) ビーズ又はファイバー形状を有する(17)又は(18)記載のガラスセラミックス成形体。
【0030】
(20) (1)から(16)のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法であって、原料組成混合物を1250℃以上の温度に保持して少なくとも一部に液相を生じさせ、その後冷却して固化させるガラスセラミックスの製造方法。
【0031】
(21) (1)から(16)のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法であって、原料を混合してその融液を得る溶融工程と、前記融液を冷却してガラス体を得る冷却工程と、前記ガラス体の温度をガラス転移温度を超えた温度領域まで上昇させる再加熱工程と、前記温度を前記温度領域内で維持して結晶を生じさせる結晶化工程と、を有するガラスセラミックスの製造方法。
【0032】
(22) 前記結晶化工程の温度領域は、510℃以上1200℃以下である(21)記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0033】
(23) 前記方法は、前記結晶化工程後に前記ガラス体に対してドライエッチング及び/又は酸性もしくはアルカリ性溶液への浸漬を行うエッチング工程をさらに有する(20)から(22)のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明のガラスセラミックスは、その内部および表面に光触媒活性を持つ酸化チタン(TiO)の結晶相、および/またはその固溶体の結晶相が均質に存在しているため、優れた光触媒活性を有する。また、仮に表面が削られても性能の低下が少なく、極めて耐久性に優れたものである。また、本発明のガラスセラミックスは、大きさや形状などを加工する場合の自由度が高く、光触媒機能が要求される様々な物品に利用できる。従って、本発明のガラスセラミックスは、光触媒機能性素材として有用である。
【0035】
また、本発明のガラスセラミックスの製造方法によれば、原料の配合組成と熱処理温度の制御によってガラス中に酸化チタン(TiO)の結晶相、および/またはその固溶体の結晶相を生成させることができるため、特殊な設備を用いることなく、光触媒機能性素材として有用なガラスセラミックスを工業的規模で容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明におけるガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料であり、ガラス相及び結晶相から成る材料のみならず、ガラス相が全て結晶相になった材料、すなわち、材料中の結晶量(結晶化度)が100wt%のものも含んでよい。一般に用いられる粉体から得られるエンジニアリングセラミックスやセラミックス焼結体は、ポアフリーの完全焼結体となることが難しい。従って、本発明のガラスセラミックスは、このようなポア(例えば、気孔率)の有無により、それらのガラスセラミックスと区別され得る。ガラスセラミックスは結晶化工程の制御により結晶の粒径、析出結晶の種類、結晶化度をコントロールできるので、光触媒材料を製造するにあたって所望の結晶を生成する有効な手段になる。
【0037】
本発明のガラスセラミックスは、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%でTiO成分を15.0%以上88.9%以下、及びP成分を11.0%以上84.9%以下含有し、M成分を0.01%以上60.0%以下含有する(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)。TiO成分、P成分、およびM成分を併用し、これらの成分の含有量を所定の範囲内に抑えることによって、酸化チタン(TiO)をはじめとする無機チタン化合物の結晶が析出し易くなる。ガラスセラミックスに光触媒特性をもたらすこれらの結晶相がガラスの内部と表面に均一に析出するので、表面の剥離の問題がなく、仮に表面が削られても性能が劣らず、耐久性に優れたガラスセラミックス光触媒を得ることができる。
【0038】
以下、本発明のガラスセラミックス、及びその製造方法の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0039】
[ガラスセラミックス]
まず、本発明のガラスセラミックスの成分及び物性について説明する。
【0040】
以下、本発明のガラスセラミックスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、ガラスセラミックスを構成する各成分の含有量は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するモル%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物へ変化すると仮定し、当該生成酸化物の総物質量を100モル%として、それら酸化物のモル分率×100によってガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0041】
<必須成分、任意成分について>
TiO成分は、結晶化することにより、TiOの結晶、又はリンとの化合物の結晶としてガラスから析出し、光触媒特性をもたらすのに必須で欠かせない成分である。TiOの結晶型としては、アナターゼ(Anatase)型、ルチル(Rutile)型及びブルッカイト(Brookite)型が知られている。いずれの結晶型も光触媒特性を期待できるが、安定性、および光触媒活性の強さから、ガラスから析出するTiO結晶は、アナターゼ型であることが好ましい。なお、本明細書中において、特に断りがない場合は、TiO結晶はアナターゼ(Anatase)型、ルチル(Rutile)型及びブルッカイト(Brookite)型から選ばれるいずれか1種以上を含む結晶相を表すものとする。特に、TiO成分の含有量を15.0%以上にすることで、TiO結晶相が析出し易くなり、ガラスセラミックス中におけるTiO結晶の濃度が高められるため、所望の光触媒特性を確保することができる。一方、TiO成分の含有量が88.9%を超えると、ガラス化が非常に難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するTiO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは25.0%、最も好ましくは30.0%を下限とし、好ましくは88.9%、より好ましくは85.0%、最も好ましくは80.0%を上限とする。TiO成分は、原料として例えばTiO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0042】
成分は、ガラスの網目構造を構成する成分である。本発明のガラスセラミックスを、P成分が網目構造の主成分であるリン酸塩系ガラスにすることにより、より多くのTiO成分をガラスに取り込ませることができる。また、より低い熱処理温度でTiO結晶を析出することが可能であるため、光触媒活性の高いTiO結晶、特にアナターゼ型TiO結晶を形成し易くできる。特に、Pの含有量が11.0%より少ないとガラス化が困難であり、Pの含有量が84.9%を超えるとTiO結晶相が析出し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するP成分の含有量は、好ましくは11.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは20.0%を下限とし、好ましくは84.9%、より好ましくは70.0%、最も好ましくは60.0%を上限とする。P成分は、原料として例えばAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、Na(PO)、BPO、HPO等を用いてガラスセラミックス内に含有することができる。
【0043】
成分(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)は、TiO結晶相に固溶するか、又はその近傍に存在することで、光触媒特性の向上に寄与し、且つ一部の波長の可視光を吸収してガラスセラミックスに外観色を付与する成分であり、本発明のガラスセラミックス中の必須成分である。特に、M成分の含有量を0.01%以上にすることで、TiO結晶が析出されやすくなる。また,吸収した可視光のエネルギーをTiO結晶に遷移することにより,光触媒特性が発現しやすくし,より広い波長範囲の光エネルギーを有効に活用することが期待できる。また、これら成分を含有することで様々な外観色をガラスセラミックスに与えることができるので、製品色のバリエーションを広げることができ、光触媒性能が必要とされるあらゆる場面において利用の幅が広がる。これら成分がガラスセラミックスに与える色は、同じ成分であっても、共存する成分や溶融雰囲気、熔解温度等によって違う色が発現する場合があるため一概に言えないが、青色を出すものとして、Co、黒色を出すものとして、V、Mn、赤色を出すものとして、Mn、緑色を出すものとして、Ni、Cr、黄色を出すものとして、Fe、Niを挙げることができる。一方、M成分の含有量が10.0%を超えると、TiO結晶相が析出し難くなる、ガラス化し難くなる等の問題がある。従って、ガラスセラミックスの安定性を高め、ガラスセラミックスの外観の色を容易に調節するために、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する、M成分の含有量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、最も好ましくは0.1%以上を下限とし、好ましくは10.0%、より好ましくは8%、最も好ましくは5%を上限とする。
【0044】
SiO成分は、ガラスの網目構造を構成し、ガラスの安定性と化学的耐久性を高める成分であるとともに、Si4+イオンが析出したTiO結晶相の近傍に存在し、光触媒活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、SiO成分の含有量が60.0%を超えると、ガラスの溶融性が悪くなり、TiO結晶相が析出し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するSiO成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。SiO成分は、原料として例えばSiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0045】
GeO成分は、上記のSiOと相似な働きを有する成分であり、本発明のガラスセラミックス中に任意に添加できる成分である。特に、GeO成分の含有量を60.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用が抑えられるため、ガラスセラミックスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するGeO成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。GeO成分は、原料として例えばGeO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0046】
本発明のガラスセラミックスは、SiO成分及びGeO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を60.0%以下含有することが好ましい。特に、SiO成分及びGeO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を60.0%以下にすることで、ガラスの溶融性、安定性及び化学耐久性が向上するとともに、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れが生じ難くなるので、より高い機械強度のガラスセラミックスが簡単に得られる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(SiO+GeO)は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。なお、SiO成分及びGeO成分は含有しなくとも光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、SiO成分及び/又はGeO成分を含有することにより、その特性が更に向上する。これらの成分の合計量が0.1%未満であると、効果が十分ではないので、0.1%以上の添加が好ましく、1.0%以上がより好ましく、3.0%以上が最も好ましい。
【0047】
LiO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させ、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れを生じ難くする成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を形成し易くするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、TiO成分を含有する場合に光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、LiO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するLiO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。LiO成分は、原料として例えばLiCO、LiNO、LiF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0048】
NaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させ、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れを生じ難くする成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、NaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するNaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。NaO成分は、原料として例えばNaO、NaCO、NaNO、NaF、NaS、NaSiF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0049】
O成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させ、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れを生じ難くする成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、KO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するKO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。KO成分は、原料として例えばKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0050】
RbO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させ、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れを生じ難くする成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、TiO成分の含有量が10.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するRbO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。RbO成分は、原料として例えばRbCO、RbNO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0051】
CsO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させ、熱処理後のガラスセラミックスにひび割れを生じ難くさせる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、CsO成分の含有量が10.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するCsO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。CsO成分は、原料として例えばCsCO、CsNO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0052】
本発明のガラスセラミックスは、RnO(式中、RnはLi、Na、K、RbおよびCsからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を40.0%以下含有することが好ましい。特に、RnO成分の合計量を40.0%以下にすることで、ガラスの安定性が向上し、TiO結晶相が析出し易くなるため、ガラスセラミックスの触媒活性を確保することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する、RnO成分の合計量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは25.0%を上限とする。
【0053】
MgO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、MgO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するMgO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。MgO成分は、原料として例えばMgCO、MgF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0054】
CaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、CaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するCaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは25.0%を上限とする。CaO成分は、原料として例えばCaCO、CaF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0055】
SrO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、SrO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するSrO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。SrO成分は、原料として例えばSr(NO、SrF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0056】
BaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、BaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなりTiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するBaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。BaO成分は、原料として例えばBaCO、Ba(NO、BaF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0057】
ZnO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、ZnO成分の含有量が50.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するZnO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。ZnO成分は、原料として例えばZnO、ZnF等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0058】
本発明のガラスセラミックスは、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、RO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を50.0%以下にすることで、ガラスの安定性が向上し、TiO結晶相が析出し易くなるため、ガラスセラミックスの触媒活性を確保することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する、RO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。
【0059】
また、本発明のガラスセラミックスは、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分及びRnO(式中、RnはLi、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、RO成分及びRnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の含有量を50.0%以下にすることで、ガラスの安定性が向上し、ガラス転移温度(Tg)が下がり、ひび割れが生じ難く機械的な強度の高いガラスセラミックスをより容易に得られる。一方で、RO成分及びRnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の含有量が50.0%より多いと、ガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の析出も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する(RO+RnO)の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは35.0%を上限とする。なお、RO成分及びRnO成分は含有しなくとも光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、RO成分及びRnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を0.1%以上にすることで、TiO結晶相がより析出し易くなるため、光触媒特性が更に向上する。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(RO+RnO)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
【0060】
ここで、本発明のガラスセラミックスは、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分及びRnO(式中、RnはLi、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる成分のうち2種類以上を含有することにより、ガラスの安定性が大幅に向上し、熱処理後のガラスセラミックスの機械強度がより高くなり、TiO結晶相がガラスからより析出し易くなる。従って、本発明のガラスセラミックスは、RO成分及びRnO成分から選ばれる成分のうち2種類以上を含有することが好ましい。
【0061】
成分は、ガラスの網目構造を構成し、ガラスセラミックスの安定性を高める成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が40.0%を超えると、TiO結晶相が析出しくい傾向が強くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するB成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。B成分は、原料として例えばHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0062】
Al成分は、ガラスの安定性及びガラスセラミックスの化学的耐久性を高め、ガラスからのTiO結晶相の析出を促進し、且つAl3+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が30.0%を超えると、溶解温度が著しく上昇し、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するAl成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Al成分は、原料として例えばAl、Al(OH)、AlF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0063】
Ga成分は、ガラスの安定性を高め、ガラスからのTiO結晶相の析出を促進し、且つGa3+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が30.0%を超えると、溶解温度が著しく上昇し、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するGa成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Ga成分は、原料として例えばGa、GaF等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0064】
In成分は、上記のAl及びGaと相似な効果がある成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、In成分は高価なため、その含有量を10.0%以下にすることが好ましく、8.0%以下にすることがより好ましく、5.0%以下にすることが最も好ましい。In成分は、原料として例えばIn、InF等を用いてガラスセラミックス内に含有することができる。
【0065】
本発明のガラスセラミックスは、B成分、Al成分、Ga成分、及びIn成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を50.0%以下にすることで、TiO結晶相がより析出し易くなるため、ガラスセラミックスの光触媒特性のさらなる向上に寄与することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(B+Al+Ga+In)は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。なお、B成分、Al成分、Ga成分、及びIn成分はいずれも含有しなくとも高い光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を0.1%以上にすることで、TiO結晶相の析出がさらに促進されるため、ガラスセラミックスの光触媒特性のさらなる向上に寄与することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(B+Al+Ga+In)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
【0066】
ZrO成分は、ガラスセラミックスの化学的耐久性を高め、TiO結晶の析出を促進し、且つZr4+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、ZrO成分の含有量が20.0%を超えると、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するZrO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。ZrO成分は、原料として例えばZrO、ZrF等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0067】
SnO成分は、TiO結晶の析出を促進し、Ti4+の還元を抑制してTiO結晶相を得易くし、且つTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に効果がある成分であり、また、光触媒活性を高める作用のある後述のAgやAuやPtイオンと一緒に添加する場合は還元剤の役割を果たし、間接的に光触媒の活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が10.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するSnO成分は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。SnO成分は、原料として例えばSnO、SnO、SnO等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0068】
本発明のガラスセラミックスは、ZrO成分及びSnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を20.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合計量を20.0%以下にすることで、ガラスセラミックスの安定性が確保されるため、良好なガラスセラミックスを形成することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(ZrO+SnO)は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。なお、ZrO成分及びSnO成分はいずれも含有しなくとも高い光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の合量を0.1%以上にすることで、ガラスセラミックスの光触媒特性をさらに向上することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する(ZrO+SnO)の含有量は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.2%、最も好ましくは0.5%を下限とする。
【0069】
Nb成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Nb成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するNb成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。Nb成分は、原料として例えばNb等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0070】
Ta成分は、ガラスの安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Ta成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するTa成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。Ta成分は、原料として例えばTa等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0071】
WO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、WO成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するWO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。WO成分は、原料として例えばWO等を用いてガラスセラミックス内に含有することができる。
【0072】
MoO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、MoO成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するMoO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。MoO成分は、原料として例えばMoO等を用いてガラスセラミックス内に導入することができる。
【0073】
本発明のガラスセラミックスは、Nb成分、Ta成分、WO成分、及びMoO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分の合計量を50.0%以下にすることで、ガラスセラミックスの安定性が確保されるため、良好なガラスセラミックスを形成することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合量(Nb+Ta+WO+MoO)は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。なお、Nb成分、Ta成分、WO成分、及びMoO成分はいずれも含有しなくとも高い光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、これらの成分の合計量を0.1%以上にすることで、ガラスセラミックスの光触媒特性をさらに向上することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する合計量(Nb+Ta+WO+MoO)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
【0074】
Bi成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、Bi成分の含有量が20.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶の析出が難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するBi成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Bi成分は、原料として例えばBi等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0075】
TeO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、任意に添加できる成分である。また、ガラス転移温度を下げてTiO結晶を生成させやすくするとともに、熱処理温度をより低く抑える成分である。また、熱処理温度を抑えることで、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性がアナターゼ型よりは低いルチル型TiO結晶への相転位を低減する効果も期待できる。しかし、TeO成分の含有量が20.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶の析出が難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するTeO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。TeO成分は、原料として例えばTeO等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0076】
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ce、Nd、Dy、Yb及びLuからなる群より選択される1種以上、Ceを除く各成分についてはa=2且つb=3、Ceについてはa=1且つb=2とする)は、ガラスセラミックスの化学的耐久性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Ln成分の含有量の合計が30.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する、Ln成分の合計量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Ln成分は、原料として例えばLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Gd、GdF、Y、YF、CeO、CeF、Nd、Dy、Yb、Lu等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0077】
As成分及び/又はSb成分は、ガラスセラミックスを清澄させ、脱泡させる成分であり、また、光触媒活性を高める作用のある後述のAgやAuやPtイオンと一緒に添加する場合は、還元剤の役割を果たすので、間接的に光触媒活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が合計で5.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するAs成分及び/又はSb成分の含有量の合計は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。As成分及びSb成分は、原料として例えばAs、As、Sb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。
【0078】
なお、ガラスセラミックスを清澄させ、脱泡させる成分は、上記のAs成分及びSb成分に限定されるものではなく、例えばCeO成分やTeO成分等のような、ガラス製造の分野における公知の清澄剤や脱泡剤、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0079】
本発明のガラスセラミックスには、F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分が含まれていてもよい。これらの成分は、TiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が合計で10.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、良好な特性を確保するために、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する非金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは3.0%を上限とする。これらの非金属元素成分は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、塩化物、臭化物、硫化物、窒化物、炭化物等の形でガラスセラミックス中に導入するのが好ましい。なお、本明細書における非金属元素成分の含有量は、ガラスセラミックスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体の質量を100%として、非金属元素成分の質量を質量%で表したもの(酸化物基準の質量に対する外割り質量%)である。非金属元素成分の原料は特に限定されないが、例えば、F成分の原料としてZrF、AlF、NaF、CaF等、Cl成分の原料としてNaCl、AgCl等、Br成分の原料としてNaBr等、S成分の原料としてNaS,Fe,CaS等、N成分の原料としてAlN、SiN等、C成分の原料としてTiC、SiC又はZrC等を用いることで、ガラスセラミックス内に導入することができる。なお、これらの原料は、2種以上を組み合わせて添加してもよいし、単独で添加してもよい。
【0080】
本発明のガラスセラミックスには、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、及びRhから選ばれる少なくとも1種の金属元素成分が含まれていてもよい。これらの金属元素成分は、TiO結晶相の近傍に存在することで、光触媒活性を向上させる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの金属元素成分の含有量の合計が10.0%を超えるとガラスの安定性が著しく悪くなり、光触媒特性がかえって低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する上記金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。これらの金属元素成分は、原料として例えばCuO、CuO、AgO、AuCl、PtCl、PtCl、HPtCl、PdCl等を用いてガラスセラミックスに導入することができる。なお、本明細書における金属元素成分の含有量は、ガラスセラミックスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体の質量を100%として、金属元素成分の質量を質量%で表したもの(酸化物基準の質量に対する外割り質量%)である。
【0081】
本発明のガラスセラミックスには、上記成分以外の成分をガラスセラミックスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。但し、PbO等の鉛化合物、Th、Cd、Tl、Os、Se、Hgの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスセラミックスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、ガラスセラミックスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、このガラスセラミックスを製造し、加工し、及び廃棄することができる。
【0082】
本発明の組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対するモル%で表されているため直接的に質量%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たす組成物中に存在する各成分の質量%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
TiO成分 13.0〜80.0質量%、
成分 12.0〜85.0質量%及び
成分 合計で0.01〜10質量%
並びに
LiO成分 0〜15.0質量%及び/又は
NaO成分 0〜30.0質量%及び/又は
O成分 0〜45.0質量%及び/又は
RbO成分 0〜25.0質量%及び/又は
CsO成分 0〜30.0質量%及び/又は
MgO成分 0〜20.0質量%及び/又は
CaO成分 0〜25.0質量%及び/又は
SrO成分 0〜45.0質量%及び/又は
BaO成分 0〜60.0質量%及び/又は
ZnO成分 0〜45.0質量%及び/又は
SiO成分 0〜45.0質量%及び/又は
GeO成分 0〜70.0質量%及び/又は
成分 0〜35.0質量%及び/又は
Al成分 0〜35.0質量%及び/又は
Ga成分 0〜65.0質量%及び/又は
In成分 0〜35.0質量%及び/又は
ZrO成分 0〜30.0質量%及び/又は
SnO成分 0〜15.0質量%及び/又は
Nb成分 0〜65.0質量%及び/又は
Ta成分 0〜70.0質量%及び/又は
WO成分 0〜55.0質量%及び/又は
MoO成分 0〜60.0質量%及び/又は
Bi成分 0〜60.0質量%及び/又は
TeO成分 0〜20.0質量%及び/又は
Ln成分 合計で0〜50.0質量%及び/又は
As成分及びSb成分 合計で0〜10.0質量%
さらに
前記酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量100%に対して、
F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分 0〜10.0質量%及び/又は
Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、及びRhからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分 0〜10.0質量%
【0083】
[物性]
本発明のガラスセラミックスは、ガラスを熱処理することにより結晶相が含まれる。特に、結晶相にはTiO、TiP、及び(TiO)、並びにこれらの固溶体のうち1種以上からなる結晶が含まれていることが好ましく、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型から選ばれるいずれか1種以上のTiO結晶が含まれていることがより好ましい。これらの結晶が含まれていることにより、ガラスセラミックスが高い光触媒機能を有することができる。その中でも、アナターゼ型TiO結晶は、ルチル(Rutile)型に比べても特に光触媒機能が高いため、ガラスセラミックスがより高い光触媒機能を有することができる。なお、上記以外の結晶相として、LiTi(PO、NaTi(PO、KTi(PO、MgTi(PO、CaTi(PO、SrTi(PO、BaTi(PO、ZnTi(PO等のナシコン型チタン化合物の結晶が共存しても問題がない。
【0084】
また、本発明のガラスセラミックスは、ガラスセラミックスの全体に対する、結晶相を示す粒子の存在比率である結晶化率が、体積比で1.0%以上95.0%以下であることが好ましい。結晶化率が1.0%以上であることにより、ガラスセラミックスが良好な光触媒特性を有することができる。一方で、結晶化率が95.0%以下であることにより、ガラスセラミックスが良好な機械的な強度を得ることができる。従って、本発明のガラスセラミックスの結晶化率は、好ましくは1.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは10.0%を下限とし、好ましくは95.0%、より好ましくは90.0%、最も好ましくは85.0%を上限とする。
【0085】
このとき、結晶相を示す粒子のうちアナターゼ型TiO結晶粒の大きさ(結晶粒径)は、球近似したときの平均径が5nm以上3μm以下であることが好ましい。特に、有効な光触媒特性を引き出すことができる観点から、アナターゼ型TiO結晶の結晶粒径は、好ましくは5nm以上3μm以下、より好ましくは10nm以上1μm以下、最も好ましくは10nm以上600nm以下の範囲とする。ここで、結晶粒径及びその平均値は、X線回折装置(XRD)の回折ピークの半値幅から、シェラー(Scherrer)の式:
D=0.9λ/(βcosθ)
を用いて見積もることができる。ここで、Dは結晶の大きさであり、λはX線の波長であり、θはブラッグ角(回折角2θの半分)である。特に、XRDの回折ピークが弱かったり、回折ピークが他のピークと重なったりする場合は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結晶粒子面積から、これを円と仮定してその直径を求めることでも見積もることができる。顕微鏡を用いて結晶粒径の平均値を算出する際には、無作為に100個以上の結晶直径を測定することが好ましい。なお、結晶相を示す粒子の大きさは、以下に述べる結晶化工程における熱処理条件をコントロールすることで、所望の大きさに制御することができる。
【0086】
また、本発明のガラスセラミックスは、平均線膨張係数が70×10−7/℃以下であることが好ましい。これにより、特に建材及び太陽電池パネルのような温度変化の激しい用途に使用される場合にも、ガラスセラミックスが高い耐久性を維持することができる。従って、本発明のガラスセラミックスの平均線膨張係数は、好ましくは70×10−7/℃、より好ましくは60×10−7/℃、さらに好ましくは55×10−7/℃を上限とする。
【0087】
なお、本発明のガラスセラミックスの平均線膨張係数は、上述の範囲に限定されず、ガラスセラミックスの用途に応じて適宜設定される。例えば、他の基材等と組み合わせて用いる場合、ガラスセラミックスの平均線膨張係数は、その基材の平均線膨張係数と略等しい値にしてもよい。これにより、ガラスセラミックスと他の基材との剥離が低減されるため、これらを組み合わせることで形成される部材の耐久性を高めることができる。
【0088】
また、本発明のガラスセラミックスは、紫外領域から可視領域までの波長の光によって触媒活性が発現されることが好ましい。ここで、本発明でいう紫外領域の波長の光は、波長が可視光線より短く軟X線よりも長い不可視光線の電磁波のことであり、その波長はおよそ10〜400nmの範囲にある。また、本発明でいう可視領域の波長の光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の電磁波のことであり、その波長はおよそ400nm〜700nmの範囲にある。これら紫外領域から可視領域までの波長の光がガラスセラミックスの表面に照射されたときに触媒活性が発現されることにより、ガラスセラミックスの表面に付着した汚れ物質や細菌等が酸化又は還元反応により分解されるため、ガラスセラミックスを防汚用途や抗菌用途等に用いることができる。なお、TiO結晶は紫外線の照射に対して高い触媒効果を示す一方で、可視光に対する応答性は紫外線より弱いが、本発明ではガラスセラミックス作製時に他のイオンがTiO結晶相に固溶され、TiOのバンドギャップエネルギーが小さくなるため、可視光に対しても有効な応答効果を示すガラスセラミックスを得ることができる。ここで、本発明のガラスセラミックスの触媒活性は、分解活性指数で表した場合、好ましくは3.0nmol/l/min、より好ましくは4.0nmol/l/min、最も好ましくは5.0nmol/l/minを下限とする。ここで、本発明のガラスセラミックスの分解活性指数は、日本工業規格JIS R 1703−2:2007に基づいて求めることができる。
【0089】
また、本発明のガラスセラミックスは、光を照射した表面と水滴との接触角が30°以下であることが好ましい。これにより、ガラスセラミックスの表面が親水性を呈し、セルフクリーニング作用を有するため、ガラスセラミックスの表面を水で容易に洗浄することができ、汚れによる光触媒特性の低下を抑制することができる。光を照射したガラスセラミックス表面と水滴との接触角は、30°以下が好ましく、25°以下がより好ましく、20°以下が最も好ましい。
【0090】
[ガラスセラミックスの製造方法]
次に、本発明のガラスセラミックスの製造方法について、以下の第1の実施の形態および第2の実施の形態を例示することにより説明する。ただし、本発明のガラスセラミックスの製造方法は、第1の実施の形態および第2の実施の形態に示す方法に限定されるものではない。
【0091】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態のガラスセラミックスの製造方法は、原料の混合物を1250℃以上の温度に保持して溶融し、その後冷却して固化させることにより行うことができる。より具体的には、所定の出発原料を均一に混合して白金又は耐火物などからなる容器に入れて、電気炉で1250℃以上の所定温度で加熱し保持して、溶融液を作製する。その後、溶融液を金型に流し込み固化させて、目的の結晶化ガラスを得る。ここで、溶融液が冷却する過程で結晶核の生成及び成長が起きる。この手法は、例えば所望の結晶相をリッチに析出し、且つガラス溶融液の状態が比較的不安定な場合などにおいて有効である。ここで、熔融液は、少なくとも1種以上の原料組成から生成されてよく、2以上の種類の化合物が加わることによる熔融液の生成温度の低下も考慮することができる。従って、保持する温度は、混合する原料の種類及び量により適宜変更することが好ましいが、一般に1250℃以上が好ましく、1300℃以上がより好ましく、1350℃以上が最も好ましい。
【0092】
より具体的には、所定の出発原料を均一に混合して白金又は耐火物などからなる容器に入れて、電気炉で1250℃以上の所定温度で加熱し保持して、熔融液を作製する。その後、熔融液の冷却速度を制御しつつ、金型に流し込み固化させて、目的のガラスセラミックスを得る。ここで、熔融液が冷却する過程で結晶核の生成及び成長が起きる。冷却する際の速度及び温度が結晶相の形成や結晶サイズに大きな影響を及ぼすので、これらを精密に制御することが重要である。
【0093】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態のガラスセラミックスの製造方法は、原料を混合してその融液を得る溶融工程と、前記融液を冷却してガラス体を得る冷却工程と、前記ガラス体の温度を結晶化温度領域まで上昇させる再加熱工程と、前記温度を前記結晶化温度領域内で維持して結晶を生じさせる結晶化工程と、前記温度を前記結晶化温度領域外まで低下させて結晶分散ガラスを得る再冷却工程と、を有することができる。なお、第1の実施の形態の製造方法と同様の工程については適宜説明を省略する。
【0094】
(溶融工程)
溶融工程は、上述の組成を有する原料を混合し、その融液を得る工程である。より具体的には、ガラスセラミックスの各成分が所定の含有量の範囲内になるように原料を調合し、均一に混合して、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して電気炉で1200〜1600℃の温度範囲で1〜24時間溶融して攪拌均質化して融液を作製する。なお、原料の溶融の条件は上記温度範囲に限定されず、原料組成物の組成及び配合量等に応じて、適宜設定することができる。
【0095】
(冷却工程)
冷却工程は、溶融工程で得られた融液を冷却してガラス化することで、ガラスを作製する工程である。具体的には、融液を流出して適宜冷却することで、ガラス化されたガラス体を形成する。ここで、ガラス化の条件は特に限定されるものではなく、原料の組成及び量等に応じて適宜設定されてよい。また、本工程で得られるガラス体の形状は特に限定されず、板状、粒状等であってよいが、ガラス体を迅速且つ大量に作製できる点では、板状であることが好ましい。
【0096】
(再加熱工程)
再加熱工程は、冷却工程で得られたガラスの温度を結晶化温度領域まで上昇させる工程である。結晶化温度領域は、第1の実施の形態と同様である。この工程では、昇温速度が結晶相の形成や結晶サイズに大きな影響を及ぼすので、これらを精密に制御することが重要である。
【0097】
(結晶化工程)
結晶化工程は、結晶化温度領域で所定の時間保持することによりTiO等の結晶を生成させる工程である。この結晶化工程で結晶化温度領域に所定時間保持することにより、ナノからミクロン単位までの所望のサイズを有するTiO等の結晶をガラス体の内部に均一に分散させて形成できる。結晶化温度領域は、例えばガラス転移温度を超える温度領域である。ガラス転移温度はガラス組成ごとに異なるため、ガラス転移温度に応じて結晶化温度を設定することが好ましい。また、結晶化温度領域は、ガラス転移温度より10℃以上高い温度領域とすることが好ましい。好ましい結晶化温度領域の下限は510℃であり、より好ましくは530℃であり、最も好ましくは550℃である。他方、結晶化温度が高くなり過ぎると、目的以外の未知相が析出する傾向が強くなり、光触媒特性が消失し易くなるので、結晶化温度領域の上限は1200℃が好ましく、1100℃がより好ましく、1050℃が最も好ましい。この工程では、昇温速度及び温度が結晶のサイズに大きな影響を及ぼすので、組成や熱処理温度に応じて適切に制御することが重要である。また、結晶化のための熱処理時間は、ガラスの組成や熱処理温度などに応じて結晶をある程度まで成長させ、かつ十分な量の結晶を析出させ得る条件で設定する必要がある。熱処理時間は、結晶化温度によって様々な範囲で設定でき、昇温速度を遅くすれば、熱処理温度まで加熱するだけでいい場合もあるが、目安としては高い温度の場合は短く、低い温度の場合は、長く設定することが好ましい。
【0098】
(再冷却工程)
再冷却工程は、結晶化が完了した後、温度を結晶化温度領域外まで低下させてTiO等の結晶相を有する結晶分散ガラスを得る工程である。
【0099】
なお、上記のガラス化及び再加熱による結晶化過程を経由せず、冷却速度を制御しながら溶液を冷却し、液体から直接にTiO結晶相を析出させることにより、目的のガラスセラミックスを作製することも可能である。
【0100】
(エッチング工程)
結晶が生じた後のガラスセラミックスは、そのままの状態でも高い光触媒特性を奏することが可能であるが、このガラスセラミックスに対してエッチングを行うことにより、結晶相の周りのガラス相が取り除かれ、表面に露出する結晶相の比表面積が大きくなるため、ガラスセラミックスの光触媒特性をより高めることが可能である。また、エッチング工程に用いる溶液やエッチング時間をコントロールすることにより、TiO等の結晶を含む結晶相が残る多孔質体を得ることが可能である。ここで、エッチングの方法としては、例えば、ドライエッチング、溶液への浸漬によるウェットエッチング、およびこれらの組み合わせなどの方法が挙げられる。浸漬に使用される酸性もしくはアルカリ性の溶液は、ガラスセラミックスの表面を腐食できれば特に限定されず、例えばフッ素又は塩素を含む酸(フッ化水素酸、塩酸)であってよい。なお、このエッチング工程は、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、フッ化水素酸、塩酸等を、ガラスセラミックスの表面に吹き付けることで行ってよい。
【0101】
上記第1の実施の形態および第2の実施の形態の製造方法では、必要に応じて成形工程を設けてガラスもしくはガラスセラミックスを任意の形状に加工することができる。
【0102】
[ガラスセラミックス成形体]
以上のようにして製造されるガラスセラミックスは、任意の形状に成形することにより、光触媒機能性のガラスセラミックス成形体及び/又は親水性のガラスセラミックス成形体として様々な機械、装置、器具類等の用途に利用できる。特に、タイル、窓枠、建材等の用途に用いることが好ましい。これにより、ガラスセラミックス成形体の表面に光触媒機能が奏され、ガラスセラミックス成形体の表面に付着した菌類が殺菌されるため、これらの用途に用いたときに表面を衛生的に保つことができる。また、ガラスセラミックス成形体の表面は親水性を持つため、これらの用途に用いたときにガラスセラミックス成形体の表面に付着した汚れを雨滴等で容易に洗い流すことができる。
【0103】
また、本発明のガラスセラミックス成形体は、用途に応じて、種々の形態に加工することができる。特に、例えばビーズや繊維の形態を採用することにより、TiO結晶相の露出面積が増えるため、ガラスセラミックス成形体の光触媒活性をより高めることができる。以下、ガラスセラミックスの代表的な加工形態として、ビーズおよび繊維を例に挙げて説明する。
【0104】
[ビーズ]
本発明におけるガラスセラミックスビーズは、装飾用、手芸用のビーズではなく、工業用のビーズに関する。工業用のビーズは、耐久性などの利点から、主にガラスを用いて作られており、一般にガラス製の微小球(直径数μmから数mm)をガラスビーズと呼んでいる。代表的な用途として例えば道路の標識板、路面表示ラインに使われる塗料、反射クロス、濾過材、ブラスト研磨材などがある。道路標識塗料、反射クロス等にガラスビーズを混入、分散させると、夜間、車のライト等から出た光がビーズを介して元のところへ反射(再帰反射)し、視認性が高くなる。ガラスビーズのこのような機能は、ジョギング用ウエアー、工事用チョッキ、バイクドライバー用ベスト等にも使用されている。塗料に本発明のガラスセラミックスビーズを混入すると、光触媒機能により、標識板やラインに付着した汚れが分解されるので、常に清潔な状態を維持でき、メンテナンスの手間を大幅に減少できる。さらに、本発明のガラスセラミックスビーズは、組成、析出結晶のサイズ、及び結晶相の量を調整することで、再帰反射機能と光触媒機能を同時に持たせることも可能である。なお、より再帰反射性の高いガラスセラミックスビーズを得るためには、該ビーズを構成するガラスマトリックス相及び/または結晶相の屈折率が1.8〜2.1の範囲内であることが好ましく、特に1.9前後がより好ましい。
【0105】
その他の用途として、工業用のガラスビーズは、濾過材として利用されている。ガラスビーズは砂や石等と異なり、すべて球形であるため充填率が高く間隙率も計算できるので、単独または、他の濾過材と組み合わせて、広く使用されている。本発明のガラスセラミックスビーズは、このようなガラスビーズ本来の機能に加え、光触媒機能を合わせ持つものである。特に、膜やコーティング層などを有さず、単体で光触媒特性を呈するので、剥離による触媒活性劣化がなく、交換やメンテナンスの手間が省け、例えばフィルタ及び浄化装置に好適に用いられる。また、光触媒機能を利用したフィルタ部材及び浄化部材は装置内で光源となる部材に隣接した構成である場合が多いが、ガラスセラミックスのビーズは、装置内の容器などに簡単に納められるので好適に利用できる。
【0106】
さらに、ガラスビーズは、化学的安定性に優れ、球状であることから、被加工物をあまり傷めないので、ブラスト研磨用材に利用される。ブラストとは、粒材を噴射して被加工面に衝突させることによって、掃除、美装、ピーニングなどを行うことをいう。本発明のガラスセラミックスビーズは当該メリットに加え、光触媒機能を併せ持つので、ブラストと同時に光触媒反応を応用した同時加工が可能である。
【0107】
本発明のガラスセラミックスビーズの粒径は、その用途に応じて適宜決めることができる。例えば、塗料に配合する場合は、100〜2500μm、好ましくは100〜2000μmの粒径とすることができる。反射クロスに使用する場合は、20〜100μm、好ましくは20〜50μmの粒径とすることができる。濾過材に使用する場合は、30〜8000μm、好ましくは50〜5000μmの粒径とすることができる。
【0108】
次に、本発明のガラスセラミックスビーズの製造方法について説明する。本発明のガラスセラミックスビーズの製造方法は、原料を混合してその融液を得る溶融工程と、融液または融液から得られるガラスを用いてビーズ体に成形する成形工程と、ビーズ体の温度を、ガラス転移温度を超える結晶化温度領域に上昇させ、その温度で所定の時間保持し、所望の結晶を析出させる結晶化工程を含むことができる。なお、上記第1および第2の実施の形態で説明したガラスセラミックスの一般的な製造方法も矛盾しない範囲でこの具体例に適用できるため、それらを適宜援用して重複する記載を省略する。
【0109】
(熔融工程)
上記第2の実施の形態と同様に実施できる。
【0110】
(成形工程)
その後、溶融工程で得られた融液から微粒状のビーズ体へ成形する。ビーズ体の成形方法には様々なものがあり、適宜選択すれば良いが、一般的に、ガラス融液又はガラス→粉砕→粒度調整→球状化のプロセスを辿って作ることができる。粉砕工程においては、冷却固化したガラスを粉砕したり、融液状のガラスを水に流し入れ水砕したり、さらにボールミルにて粉砕するなどして粒状ガラスを得る。その後篩等を使って粒度を調整し、再加熱して表面張力にて球状に成形したり、黒鉛などの粉末材料と一緒にドラムに入れ、回転させながら物理力で球状に成形する、などの方法がある。または、粉砕工程を経ることなく溶融ガラスから直接球状化させる方法を取ることもできる。例えば溶融ガラスを空気中に噴射して表面張力にて球状化する、流出ノズルから出る溶融ガラスを回転する刃物のような部材で細かく切り飛ばして球状化する、流体の中に滴下して落下中に球状化させる、などの方法がある。通常、成形後のビーズは再度粒度を調整した後に製品化される。成形温度におけるガラスの粘性や失透し易さなどを考慮し、これらの方法から最適なものを選べば良い。
【0111】
(結晶化工程)
上記プロセスによって得られたビーズ体を、再加熱し、所望の結晶を析出させる結晶化工程を行う。結晶化工程では、ガラス組成ごとにガラス転移温度に応じて結晶化温度を設定する必要があるが、具体的にガラス転移温度より10℃以上の高い温度領域で熱処理することが好ましい。例えばガラス転移温度が500℃以上である場合、好ましい熱処理温度の下限は510℃で、より好ましくは600℃で、最も好ましくは650℃である。他方、熱処理温度が高くなり過ぎると、TiO、TiP、(TiO)の結晶相が減少する傾向が強くなり、光触媒特性が消失し易くなる。従って、熱処理温度の上限は1200℃が好ましく、1100℃がより好ましく、1050℃が最も好ましい。1200℃より高いとTiO結晶の析出が少なくなるとともに、結晶型がアナターゼ型より活性度の低いルチル型になりやすくなる。特に、光触媒特性を期待できるRnTi(PO、及びRTi(POを一緒に析出させるという点では1000℃以下が好ましい。結晶化の温度及び時間は、結晶相の形成や結晶サイズに大きな影響を及ぼすので、これらを精密に制御することが非常に重要である。所望の結晶が得られたら結晶化温度領域外まで冷却し結晶が分散したガラスセラミックスビーズを得る。
【0112】
なお、前述したような、ビーズ体成形後に結晶化する手法の他に、融液から直接球状化・冷却する過程で結晶相が析出されるようにしても良い。
【0113】
結晶化工程を行って結晶が生じた後のガラスセラミックスビーズは、そのままの状態でも高い光触媒特性を奏することが可能であるが、このガラスセラミックスビーズに対してエッチング工程を行うことにより、結晶相の周りのガラス相が取り除かれ、表面に露出する結晶相の比表面積が大きくなるため、ガラスセラミックスビーズの光触媒特性をより高めることが可能である。また、エッチング工程に用いる溶液やエッチング時間をコントロールすることにより、光触媒結晶相のみが残る多孔質体ビーズを得ることが可能である。エッチング工程は、上記第1および第2の実施の形態と同様に実施できる。
【0114】
[ガラスセラミックス繊維]
本発明のガラスセラミックス繊維は、ガラス繊維の一般的な性質を有する。すなわち、通常の繊維に比べ引っ張り強度・比強度が大きい、弾性率・比弾性率が大きい、寸法安定性が良い、耐熱性が大きい、不燃性である、耐化学性が良いなどの物性上のメリットを有し、これらを活かした様々な用途に利用できる。また、繊維の内部及び表面に光触媒結晶を有するので、前述したメリットに加え光触媒特性を有し、さらに幅広い分野に応用できる繊維構造体を提供できる。ここで繊維構造体とは、繊維が、織物、編制物、積層物、又はそれらの複合体として形成された三次元の構造体をいい、例えば不織布を挙げられる。
【0115】
ガラス繊維の、耐熱性、不燃性を活かした用途としてカーテン、シート、壁貼クロス、防虫網、衣服類、又は断熱材等があるが、本発明のガラスセラミックス繊維を用いると、さらに前記用途における物品に光触媒作用による、消臭機能、汚れ分解機能などを与え、掃除やメンテナンスの手間を大幅に減らすことができる。
【0116】
また、ガラス繊維はその耐化学性から濾過材として用いられることが多いが、本発明のガラスセラミックス繊維は、単に濾過するだけでなく、光触媒反応によって被処理物中の悪臭物質、汚れ、菌などを分解するので、より積極的な浄化機能を有する浄化装置及びフィルタを提供できる。さらには、光触媒層の剥離・離脱による特性の劣化がほとんど生じないので、これらの製品の長寿命化に貢献する。
【0117】
次に、本発明のガラスセラミックス繊維の製造方法について説明する。本発明のガラスセラミックス繊維の製造方法は、原料を混合してその融液を得る溶融工程と、融液または融液から得られるガラスを用いて繊維状に成形する紡糸工程と、該繊維の温度を、ガラス転移温度を超える温度領域に上昇させ、その温度で所定の時間保持し、所望の結晶を析出させる結晶化工程を含むことができる。なお、上記第1および第2の実施の形態で説明したガラスセラミックスの一般的な製造方法も矛盾しない範囲でこの具体例に適用できるため、それらを適宜援用して重複する記載を省略する。
【0118】
(熔融工程)
上記第2の実施の形態と同様に実施できる。
【0119】
(紡糸工程)
次に、溶融工程で得られた融液からガラス繊維へ成形する。繊維体の成形方法は特に限定されず、公知の手法を用いて成形すれば良い。巻き取り機に連続的に巻き取れるタイプの繊維(長繊維)に成形する場合は、公知のDM法(ダイレクトメルト法)またはMM法(マーブルメルト法)で紡糸すれば良く、繊維長数十cm程度の短繊維に成形する場合は、遠心法を用いたり、もしくは前記長繊維をカットしても良い。繊維径は、用途によって適宜選択すれば良い。ただ、細いほど可撓性が高く、風合いの良い織物になるが、紡糸の生産効率が悪くなりコスト高になり、逆に太すぎると紡糸生産性は良くなるが、加工性や取り扱い性が悪くなる。織物などの繊維製品にする場合、繊維径を3〜24μmの範囲にすることが好ましく、浄化装置、フィルタなどの用途に適した積層構造体などにする場合は繊維径を9μm以上にすることが好ましい。その後、用途に応じて綿状にしたり、ロービング、クロスなどの繊維構造体を作ることができる。
【0120】
(結晶化工程)
次に、上記プロセスによって得られた繊維又は繊維構造体を再加熱し、繊維の中及び表面に所望の結晶を析出させる結晶化工程を行う。この結晶化工程は、ガラスビーズの結晶化工程と同様に実施できる。所望の結晶が得られたら結晶化温度領域外まで冷却し光触媒結晶が分散したガラスセラミックス繊維又は繊維構造体を得ることができる。
【0121】
なお、前述したような、繊維体成形後に結晶化する手法の他に、紡糸工程におけるガラス繊維の温度を制御し、結晶化工程が同時に行われるようにしても良い。
【0122】
結晶化工程を行って結晶が生じた後のガラスセラミックス繊維は、そのままの状態でも高い光触媒特性を奏することが可能であるが、このガラスセラミックス繊維に対してエッチング工程を行うことにより、結晶相の周りのガラス相が取り除かれ、表面に露出する結晶相の比表面積が大きくなるため、ガラスセラミックス繊維の光触媒特性をより高めることが可能である。また、エッチング工程に用いる溶液やエッチング時間をコントロールすることにより、光触媒結晶相のみが残る多孔質体繊維を得ることが可能である。エッチング工程は、上記第1および第2の実施の形態と同様に実施できる。
【0123】
以上のように、本発明のガラスセラミックスは、その内部および表面に光触媒活性を持つ酸化チタン(TiO)および/またはその固溶体の結晶相が均質に析出しているため、優れた光触媒活性と可視光応答性を有するとともに、耐久性にも優れている。従って、基材の表面にのみ光触媒層が設けられている従来技術の光触媒機能性部材のように、光触媒層が剥離して光触媒活性が失われる、ということがない。また、仮に表面が削られても内部に存在する酸化チタン(TiO)及び/又はその固溶体の結晶相が露出して光触媒活性が維持される。また、本発明のガラスセラミックスは、熔融ガラスの形態から製造できるので、大きさや形状などを加工する場合の自由度が高く、光触媒機能が要求される様々な物品に加工できる。
【0124】
また、本発明のガラスセラミックスの製造方法によれば、原料の配合組成と熱処理温度の制御によって酸化チタン(TiO)および/またはその固溶体の結晶相を生成させることができるため、光触媒技術における大きな課題であった結晶粒子の微細化に要する手間が不要になり、優れた光触媒活性と可視光応答性を有するガラスセラミックスを工業的規模で容易に製造することができる。
【実施例】
【0125】
本発明の実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体の組成及び結晶化条件、並びに、これらのガラスセラミックス成形体から析出した主結晶相の種類を表1〜4に示す。結晶相の種類において(A)はアナターゼ型、(R)はルチル型を意味する。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0126】
本発明の実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体は、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常のガラスに使用される高純度の原料を選定し、表1〜24に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1200℃〜1600℃の温度範囲で1〜24時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1500℃以下に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。得られたガラスについて、表1〜4の各実施例及び比較例に記載された結晶化温度に加熱し、記載された時間にわたり保持して結晶化を行った後、結晶化温度から冷却して目的の結晶相を有するガラスセラミックスを得た。
【0127】
ここで、実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体の析出結晶相の種類は、X線回折装置(フィリップス社製、商品名:X’Pert−MPD)で同定した。
【0128】
また、実施例(No.1〜No.20)の試料について、日本工業規格JIS R 1703−2:2007に基づき、メチレンブルーの分解活性指数(nmol/l/min)を求めた。
【0129】
より具体的には、以下のような手順でメチレンブルーの分解活性指数を求めた。
0.020mMのメチレンブルー水溶液(以下、吸着液とする)と0.010mMのメチレンブルー水溶液(以下、試験液とする)を調製した。
そして、光触媒特性が認められた実施例の試料の表面と、石英管(内径10mm、高さ30mm)の一方の開口と、を高真空用シリコーングリース(東レ・ダウコーニング株式会社製)で固定し、石英管の他方の開口から吸着液を注入して試験セルを吸着液で満たした。その後、石英管の他方の開口と吸着液の液面とをカバーガラス(松浪ガラス工業株式会社製、商品名:白縁磨フロストNo.1)で覆い、光が当たらないようにしながら、12〜24時間にわたって吸着液を試料に十分に吸着させた。吸着後の吸着液について、分光光度計(日本分光株式会社製、型番:V−650)を用いて波長664nmの光に対する吸光度を測定し、この吸着液の吸光度が試験液について同様に測定された吸光度よりも大きくなった時点で、吸着を完了させた。
このとき、試験液について測定された吸光度(Abs(0))とメチレンブルー濃度(c(0)=10[μmol/L])の値から、下式(1)を用いて換算係数K[μmol/L]を求めた。
K=c(0)/Abs(0) ・・(1)
次いで、カバーガラスを取り外して石英管内の液を試験液に入れ替えた後、石英管の他方の開口と吸着液の液面とをカバーガラスで再度覆い、1.0mW/cmの紫外線を照射した。そして、紫外線を60分、120分及び180分間にわたり照射した後における波長664nmの光に対する吸光度を測定した。
紫外光の照射を開始してt分後に測定された吸光度Abs(t)の値から、下式(2)を用いて、紫外光の照射を開始してt分後のメチレンブルー試験液の濃度C(t)[μmol/L]を求めた。ここで、Kは上述の換算係数である。
C(t)=K×Abs(t) ・・(2)
そして、上述により求められたC(t)を縦軸にとり、紫外線の照射時間t[min]を横軸にとってプロットを作成した。このとき、プロットから得られる直線の傾きa[μmol/L/min]を最小二乗法によって求め、下式(3)を用いて分解活性指数R[nmol/L/min]を求めた。
R=|a|×1000 ・・(3)
【0130】
一方、実施例9、13、19に記載された組成のガラスセラミックスを、HF濃度が46%(質量百分率)のフッ酸溶液(和光純薬工業株式会社製)に3分間浸漬させ、エッチング工程を行った。結晶化工程及びエッチング工程を行う前後のガラスセラミックスに対して、上述のメチレンブルー分解試験を行い、結晶化工程及びエッチング工程の前後における分解活性指数(nmol/l/min)を求めた。
【0131】
また、実施例1〜20の一部のガラスセラミックスの親水性についてθ/2法によりサンプル表面と水滴との接触角を測定することにより評価した。すなわち、紫外線照射前および照射後のガラスセラミックスの表面にそれぞれ水を滴下し、ガラスセラミックスの表面から水滴の頂点までの高さhと、水滴の試験片に接している面の半径rと、を協和界面科学社製の接触角計(DM501)を用いて測定し、θ=2tan−1(h/r)の関係式より、水との接触角θを求めた。なお、紫外線照射は、水銀ランプを用い、照度10mW/cm、照射時間30分で行った。
【0132】
また、実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックスの化学的耐久性(耐水性及び耐酸性)は、粒度425〜600μmに破砕してメタノールで洗浄したガラスセラミックス試料を作製し、日本光学硝子工業会規格「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法」JOGIS06−2008に準じて測定した。
【0133】
耐水性は、ガラスセラミックス試料を白金かごの中に入れ、この白金かごを純水(pH6.5〜7.5)の入った石英ガラス製の丸底フラスコに浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理した後のガラス試料の減量率(%)を用いて測定した。ここで、減量率(wt%)が0.05未満の場合をクラス1、減量率が0.05〜0.10未満の場合をクラス2、減量率が0.10〜0.25未満の場合をクラス3、減量率が0.25〜0.60未満の場合をクラス4、減量率が0.60〜1.10未満の場合をクラス5、減量率が1.10以上の場合をクラス6としたものであり、クラスの数が小さいほど、ガラスの耐水性が優れていることを意味する。
【0134】
一方、耐酸性は、ガラスセラミックス試料を白金かごの中に入れ、この白金かごを0.01N硝酸水溶液の入った石英ガラス製の丸底フラスコに浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理した後のガラス試料の減量率(%)を用いて測定した。ここで、減量率(wt%)が0.20未満の場合をクラス1、減量率が0.20〜0.36未満の場合をクラス2、減量率が0.35〜0.65未満の場合をクラス3、減量率が0.65〜1.20未満の場合をクラス4、減量率が1.20〜2.20未満の場合をクラス5、減量率が2.20以上の場合をクラス6としたものであり、クラスの数が小さいほど、ガラスの耐酸性が優れていることを意味する。








【0135】
【表1】


【0136】
【表2】






【0137】
【表3】





【0138】
【表4】









【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
表1〜4に表されるように、実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体の析出結晶相には、いずれも光触媒活性の高いアナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型から選ばれる1種以上のTiO結晶が含まれていた。このため、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体は、高い光触媒特性及び親水性を有することが推察された。
【0142】
これらの実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体は、表1〜4に示すように、分解活性指数が3.0nmol/l/min以上、より具体的には5nmol/l/min以上であった。
【0143】
エッチング工程を行った後の実施例9、13、19のガラスセラミックス成形体は、表5に示すように、分解活性指数が17〜25nmol/l/minであり、エッチング工程前の分解活性指数に比べて高い値であった。そのため、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体は、エッチング工程を行うことで分解活性指数が高められるため、より高い光触媒特性を得ることが可能であることが明らかになった。
【0144】
また、実施例(1、4、8、14、16、19、20)のガラスセラミックス成形体について親水性を評価したところ、表6に示すように、30分間の紫外線の照射によって水との接触角が30°以下となることが確認された。これにより、本発明の実施例のガラスセラミックスは、高い親水性を有することが明らかになった。
【0145】
また、実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックの耐水性及び耐酸性は、いずれも1級であった。
【0146】
従って、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体では、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型から選ばれる1種以上の酸化チタン(TiO)をはじめとする無機チタン化合物の結晶が容易に析出し、しかも無機チタン化合物の結晶が均一にガラスに分散しているため、剥離による光触媒機能の損失がなく、耐久性の優れた光触媒機能体を得られることが確認された。
【0147】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
【0148】
また、実施例16の組成を用いて、それぞれ直径が500μmのビーズと50μmのガラス繊維を作製した。その結果、熱処理後は、いずれもサイズ100nm以下のTiO結晶相(アナターゼ型)の析出が確認された。
【0149】
以上の実験結果が示すように、TiO結晶を含む結晶相を含有する実施例1〜20のガラスセラミックスは、可視光応答性の光触媒活性を有していた。しかも、TiO結晶が均一にガラスに分散しているため、剥離による光触媒機能の損失がなく、耐久性に優れた光触媒機能性素材として利用できることが確認された。
【0150】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%でTiO成分を15.0%以上88.9%以下、及びP成分を11.0%以上84.9%以下含有し、M成分(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)を合計で0.01〜10.0%含有するガラスセラミックス。
【請求項2】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
SiO成分 0〜60.0%、及び/又は
GeO成分 0〜60.0%
の各成分をさらに含有する請求項1記載のガラスセラミックス。
【請求項3】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
LiO成分 0〜40.0%、及び/又は
NaO成分 0〜40.0%、及び/又は
O成分 0〜40.0%、及び/又は
RbO成分 0〜10.0%、及び/又は
CsO成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1又は2記載のガラスセラミックス。
【請求項4】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
MgO成分 0〜40.0%、及び/又は
CaO成分 0〜40.0%、及び/又は
SrO成分 0〜40.0%、及び/又は
BaO成分 0〜40.0%、及び/又は
ZnO成分 0〜50.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から3のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項5】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
成分 0〜40.0%、及び/又は
Al成分 0〜30.0%、及び/又は
Ga成分 0〜30.0%、及び/又は
In成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から4のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項6】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
ZrO成分 0〜20.0%、及び/又は
SnO成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から5のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項7】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
Nb成分 0〜50.0%、及び/又は
Ta成分 0〜50.0%、及び/又は
WO成分 0〜50.0%、及び/又は
MoO成分 0〜50.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から6のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項8】
酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対して、モル%で
Bi成分 0〜20.0%、及び/又は
TeO成分 0〜20.0%、及び/又は
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ce、Nd、Dy、Yb及びLuからなる群より選択される1種以上、Ceを除く各成分についてはa=2且つb=3、Ceについてはa=1且つb=2とする) 合計で0〜30.0%、及び/又は
As成分及び/又はSb2O3成分 合計で0〜5.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から7のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項9】
F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分が、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する質量比で10.0%以下含まれている請求項1から8のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項10】
Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、及びRhからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分が、酸化物換算組成のガラスセラミックス全質量に対する質量比で10.0%以下含まれている請求項1から9のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項11】
TiO、TiP、及び(TiO)、並びにこれらの固溶体のうち1種以上からなる結晶相が含まれている請求項1から10のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項12】
前記結晶相がアナターゼ型、ルチル型、及び/又はブルッカイト型から選ばれるいずれか1種以上のTiO結晶を含む請求項11記載のガラスセラミックス。
【請求項13】
前記結晶相がガラスセラミックス全体積に対する体積比で1.0%以上95.0%以下含まれている請求項11又は12記載のガラスセラミックス。
【請求項14】
紫外領域から可視領域までの波長の光によって触媒活性が発現される請求項1から13のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項15】
JIS R 1703−2:2007に基づくメチレンブルーの分解活性指数が3.0nmol/L/min以上である請求項14記載のガラスセラミックス。
【請求項16】
紫外領域から可視領域までの波長の光を照射した表面と水滴との接触角が30°以下である請求項1から15のいずれか記載のガラスセラミックス。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか記載のガラスセラミックスからなる光触媒機能性ガラスセラミックス成形体。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか記載のガラスセラミックスからなる親水性ガラスセラミックス成形体。
【請求項19】
ビーズ又はファイバー形状を有する請求項17又は18記載のガラスセラミックス成形体。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法であって、
原料組成混合物を1250℃以上の温度に保持して少なくとも一部に液相を生じさせ、その後冷却して固化させるガラスセラミックスの製造方法。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法であって、
原料を混合してその融液を得る溶融工程と、
前記融液を冷却してガラス体を得る冷却工程と、
前記ガラス体の温度をガラス転移温度を超えた温度領域まで上昇させる再加熱工程と、
前記温度を前記温度領域内で維持して結晶を生じさせる結晶化工程と、
を有するガラスセラミックスの製造方法。
【請求項22】
前記結晶化工程の温度領域は、510℃以上1200℃以下である請求項21記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項23】
前記方法は、前記結晶化工程後に前記ガラス体に対してドライエッチング及び/又は酸性もしくはアルカリ性溶液への浸漬を行うエッチング工程をさらに有する請求項20から22のいずれか記載のガラスセラミックスの製造方法。

【公開番号】特開2011−93767(P2011−93767A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251546(P2009−251546)
【出願日】平成21年10月31日(2009.10.31)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】