説明

ガラス溶融炉

本発明は、流路形状の溶融タンクを含むガラス溶融炉に関する。本発明によれば、バッチ材料が上流端で導入され、溶融されたガラスが下流端で回収され、前記炉がバーナーによって加熱される。燃焼エネルギーの少なくとも65%が酸素燃料燃焼によって生成され、バーナーが炉の長さに沿って壁上に分布される。燃焼排ガスの大部分が原材料入口の近くの上流端の近くに放出され、燃焼排ガスの残りが下流部分の近くで放出され、かくして周囲の雰囲気に対して動的封止を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス溶融炉に関し、そこでは溶融エネルギーは燃料及び酸素又は酸素に非常に富むガスを供給されるバーナーによって本質的に生成される。これらの炉は通常、「酸素燃料燃焼(oxy−fuel combustion)」炉と称される。
【背景技術】
【0002】
酸素燃料燃焼バーナーの補助的使用はガス溶融炉において良く知られている。従来空気で運転する炉に対して、酸素燃料燃焼バーナー又はその限定された数が次いで加えられる。これらの追加のバーナーを導入する目的は一般に、炉の性能が長い使用のために低下することが見られるときに存在する炉の能力を高めるためである。この状況は、例えば、かかる炉と関連される熱交換器が劣化し、燃焼のために使用される空気をもはや十分に加熱できないときに見い出される。与えられた炉の能力はまた、追加のエネルギー源を導入することによって簡単に高められることができる。
【0003】
一般的に、追加の酸素燃料燃焼バーナーは、バッチ材料が炉内に充填される領域の近くに置かれる。従って、これらのバーナーはバッチ材料を溶融する。大きな能力の炉における少ない数の酸素燃料バーナーの追加は、特に熱交換器が運転し続け、それゆえ空気で運転するバーナーから起こる燃焼排ガスと酸素で運転するバーナーから起こるものとの両方を扱うという意味で、炉の一般的な運転に実質的な変更を与えずに達成されることが通常である。
【0004】
追加のエネルギー源を持つことに加えて、「酸素ブースト(oxy−boosting)」モードと称されるもので運転するこれらのシステムは、酸素燃料燃焼から生じうる全ての公知の利点の利益を与えない。多数の潜在的な利点のうち、主に低いエネルギー消費と望ましくない燃焼排ガスの少ない放出である。
【0005】
酸素燃料燃焼は、少なくとも燃焼ガスのエネルギーが空気の窒素によって部分的に吸収されないという理由のためにエネルギー節約を与える。従来の炉では、窒素で運び去られたエネルギーの幾らかが熱交換器に回収されたとしても、最終的に放出される燃焼排ガスは有意な量のエネルギーをなお放出する。窒素の存在はこの損失に寄与する。
【0006】
問題の製造ユニットによってエネルギー消費を低下することはさらに、二酸化炭素放出を結果的に制限する利点を持ち、それゆえこの分野の法定の条件を満足する利点を持つ。
【0007】
窒素の存在はまた、NOxと称される窒素酸化物の形成のための出所であり、その放出は、雰囲気中のこれらの化合物の存在のために実際には禁止される。実際には、使用者はできるだけ少ない放出に導く条件下で炉を運転しようと努力する。ガラス炉の場合には、これらの実行は実施されている極めて厳しい標準的条件に合致するには十分でなく、触媒の使用によって高価な燃焼排ガス除去操作を実施することが必要である。
【0008】
酸素を使用することによって、空気中の窒素と関連した問題を回避することができるが、酸素ブースト技術ではそのようなことは当てはまらない。
【0009】
上述の利点にもかかわらず、大きなガラス炉における酸素燃料燃焼の使用は開発されないままである。この理由は幾つか存在する。まず、酸素の使用は必ず空気の使用より高価である。
【0010】
酸素燃料燃焼の使用の経済的評価は、燃焼排ガスからの有意な量の熱を回収することができる場合にのみ肯定的である。これまで、このエネルギーの回収は満足に達成されたように思われず、潜在的なエネルギー節約は実際に達成されていない。
【0011】
さらに、酸素燃料燃焼の実施は、特定の利点に反作用する技術的な問題をなお投げかける。一つの認識された困難性は耐火材の腐食のためであり、この腐食は炉の屋根のシリカ耐火材の寿命を短くする。これは、燃焼雰囲気の高いHO含有量が二つの劣化効果を生じるためである:
−第一のものは耐火ブロックのガラス相中へのHOの拡散のためである;そして
−第二のものは耐火レンガ上の雰囲気に存在する水酸化ナトリウムの凝縮のためであり、それは高い酸化の程度を伴ない、実際、酸素燃料燃焼炉の場合の六倍高い酸化度である。
【0012】
これらの状態を回避するためには、通常選択されるものより耐腐食性の材料を使用することが必要である。通常、様々な理由のため、大きなガラス炉の屋根はシリカレンガから作られる。酸素燃料燃焼炉の場合において、代わりにアルミナ、AZS又はスピネルのような材料を使用することが必要である。しかしながら、これらの材料は高価であり、また有意に重いので問題を投げかける。
【0013】
さらに、新しい問題もまた、実際に出現し、それは、この技術が理論提唱が有利である用途において効果的に使用されることを確実にするために特定の新しい運転条件を要求する。本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲の主題を形成する大きなガラス炉において酸素燃料燃焼技術を実施する方法に関する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、この酸素燃料燃焼技術の経済性の問題に対処した。特に、それらは、炉燃焼排ガスエネルギーが大部分回収され、酸素を、そして適切な場合は消費される燃料を予熱するために使用されることを確実にする方法を提供する。燃焼排ガスの熱の幾らかはまた、炉内に充填されるバッチ材料を予熱するために使用されてもよい。
【0015】
特にエネルギーに関する経済性は、燃焼排ガスの熱が回収されることを要求する。原理は知られているが、困難性は、炉それ自体を運転するための回収技術を使用することに由来する。
【0016】
本発明者は、燃焼排ガスエネルギーを利用すること、特に酸素を予熱するために燃焼排ガスエネルギーを利用することを選択した。明白な理由のため、この回収のための熱交換器の使用は除外される。運転は特定の熱交換器で実施されなければならず、その運転は、熱い酸素が接触する全ての材料に対して極めて腐食性であるのであまり簡単ではない。この腐食性の特徴は、酸素によって達成される温度が高いほど一層顕著になる。
【0017】
また、本発明によれば、問題の炉が窒素含有雰囲気を実質的に含まないことが必要である。この理由のため、従来提案された特定の解決策と違って、炉の全てのバーナーが酸素燃料燃焼モードで運転することを確実にすることが好ましい。それでもなお、燃焼の一部を空気燃料燃焼モードで維持することができるが、酸素燃料燃焼によって生成されるエネルギーは炉内で消費される全エネルギーの少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%である。
【0018】
空気燃料燃焼画分の使用は、空気燃料燃焼モードで完全に運転するバーナーの限られた数から生じうるが、それは特定の含有量の空気を有する酸素の使用からも生じうる。後者の場合において、酸素燃料燃焼モードで使用されるバーナーは特別な特徴を持つので、酸素/空気混合物は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の酸素含有量を持たなければならない。
【0019】
明細書の残りにおける状況を簡単にするために、酸素燃料燃焼と「酸素」燃焼の両方に言及する。この主題における開発は、特記しない限り、少量の空気を含んでもよい酸素での酸素燃料燃焼の使用、又は大部分を酸素燃料燃焼と組み合わせた空気燃料燃焼モードで運転する限られた部分を含む集成体をカバーする。
【0020】
燃焼から生じる炉雰囲気の構成成分から独立して、外側から来る空気の透過をできるだけ防止すること、他方この空気を加熱することに対応するエネルギー損失を回避することも必要であるが、最も重要なことは、この空気が燃焼炎の高温度に達することによる望ましくないNOx形成をできるだけ防止することである(これらの温度は、選択された酸素バーナーのタイプに依存して1800〜2300℃付近である)。
【0021】
考えられる構成にかかわらず、ガラス炉は外部雰囲気に対して完全に不透過性に維持されることができない。この目的のために報告されている努力は主に、外側から炉内へのガスの流れを制限する物理的バリヤーの設置に関連する。これらの手段は確かに有用であるが、もし燃焼ガスによって本質的に形成される雰囲気を維持することが望ましいなら不十分に見える。
【0022】
本発明によれば、周囲雰囲気の取り込みは結果として、動的封止が発現するような方法で炉を配置することによって防止される。これを行うために、本発明によれば、炉内の燃焼排ガスの流れは、以下に詳細に説明されるような方法で調整されなければならない。
【0023】
大きなガラス溶融炉、特に熱交換器を使用するものでは、ガスは炉内を横断して流れる。バーナーは溶融ガラスを含むタンクのいずれの側にも分布され、それらは交互に運転する。ある期間の間、炉の一方の側に設けられた全てのバーナーが活性化され、対応する燃焼排ガスがそれらに面する壁上に設けられたダクトを介して放出される。燃焼排ガスは問題の側に対応する熱交換器を通り過ぎる。次の期間、作用中にあるものは他の側にあるバーナーであり、空気は予熱された熱交換器上を流れる。
【0024】
酸素燃料燃焼炉の場合において、炉の両側に設けられたバーナーは連続的に運転する。両側のバーナーの分布は、この交互運転が存在しないので、この交互運転の必要性によって決定されず、炎とガラス溶融の間又は炎と上澄みのバッチ材料の間の熱交換を最適化したいために決定される。
【0025】
酸素燃料バーナーの炎は同じ出力に対して空気燃料バーナーの炎より短い。この理由は特に、ガス流れが窒素の不存在のために容量が少ないからである。従って、同じ炉の幅に対して、エネルギー分布ができるだけ均一になるためには、溶融物の表面が最も良好にカバーされるように両側にバーナーを配置することが望ましい。
【0026】
炎を長くすることができる、酸素燃料燃焼ガスの放出速度のいかなる増加も、特にダストの飛び散りを促進しないようにするためには望ましくない。
【0027】
また、炎ができるだけ小さく分布された態様で発生することを確実にすることが好ましい。対向して位置された炎間の衝突を防止するために、バーナーは互い違いにすることが有利である。
【0028】
酸素燃料燃焼の別の特別な特徴によれば、空気燃料燃焼バーナーのように好ましい炎の長さにわたって演じられる燃焼を達成するためには、これらのバーナーからの炎がガラス溶融物の表面に実質的に平行な面にあるシートとして発生することを確実にすることが有利である。これは例えば燃料取り込みノズルの両側に設けられた複数の酸素噴出ノズルを有するバーナーによって得られ、全てのこれらのノズルは溶融物の表面と平行になるように実質的に整列される。
【0029】
炎からの燃焼排ガスは空気燃料燃焼のように横断して流れない。流れは二つの目的に従って作り上げられる。
【0030】
第一に、燃焼排ガスからガラス溶融物への熱伝達ができるだけ大きいことを確実にすることが必要である。換言すれば、酸素燃料燃焼炎が高い温度であること、及び燃焼排ガス全体が空気燃料燃焼モードで高い温度であることも考慮すると、炉の出口の燃焼排ガス温度ができるだけ低いことを確実にする努力がなされる。
【0031】
より大きい熱交換を達成するためには、炉内の滞留時間が延ばされる。
【0032】
消失した同量のエネルギーに対して、燃焼排ガス容積が同一容積の炉について空気燃料燃焼と比較して半分より多く減少されるという事実のため、他の全てのものが等しい条件とすると、燃焼排ガス滞留時間は必ず延ばされるだろう。
【0033】
第二に、燃焼排ガス流れに関する条件はまた、溶融物との熱伝達を改良するのに役立つ。特に、これは、燃焼排ガス出口の位置決め、バーナーの位置、及びこれらのバーナーの各々によって局所的に発現される出力の分布から生じる。
【0034】
本発明によれば、溶融物及びバッチ材料との良好なエネルギー伝達を達成するために、燃焼排ガス又はその少なくとも大部分を溶融物の流れとは反対方向に流すことが必要である。従って、燃焼排ガスの温度は、それが炉を通って進むときにそれが炉から放出される地点まで低下する。
【0035】
この理由のため、燃焼排ガス又はその少なくとも大部分の放出は、バッチ材料が炉内に充填される地点の近くに制限される。一つの選択肢は、燃焼排ガスが、バッチ材料が炉内に供給されるところから分離するダクトを介して放出されることを確実にすることである。別の選択肢は、この放出が充填流路自体を介して、それゆえバッチ材料と向流で起こることである。後者の選択肢では、これらの「冷たい」バッチ材料と接触して凝縮する燃焼排ガスに含まれる水蒸気によるいかなる凝集の危険も避けることが特に必要である。
【0036】
最良の熱伝達を持つためには、燃焼排ガスのほとんどが、バッチ材料が炉内に充填される場所の近くの地点に放出される。実際には、これは燃焼排ガスの少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%を意味する。
【0037】
上で示すように放出されない過剰の燃焼排ガスは、特に外部雰囲気に対する動的封止を維持するために意図された経路に従う。この過剰の少なくとも一部は炉の下流端の方へ放出されることが有利である。示されたように、燃焼排ガスのこの画分はできるだけ少なく、燃焼排ガスの全ての35%未満、好ましくは25%未満であることが有利である。
【0038】
燃焼排ガスの下流の放出は最後のバーナーを超えて起こる。できるだけ完全に熱伝達が起こる前に燃焼ガスが放出されるのを防止することが必要である。これを行うためには、これらのガスはある時間、炉内に留まらなければならず、従って放出ダクトのあまり近くにバーナーを置く必要はない。
【0039】
バーナー領域の下流の出口の存在は、特にこの領域から来る空気がバーナー領域を通過することを防止することができる。なぜならば下流の空気のほとんどが状態調節領域から来るからである。NOx含有量は上流出口で系統的に検出される。もしNOx含有量が高すぎることが判明するなら、本発明によれば放出流れを調整することによってこの含有量を修正することができる。下流の放出を増加することは、炉の下流から来る空気をより多く伴ない、この窒素含有空気が炎を通過してNOxを形成することを防止する。
【0040】
有利には、これらの調整は、上流出口に放出された燃焼排ガスにおいてできるだけ少ない窒素含有量をもたらす。この含有量は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下に維持される。
【0041】
下流の放出ガスの温度は一般に、燃焼排ガスが炉の少なくとも熱い領域と接触するという理由のために、上流に放出された燃焼排ガスの温度よりわずかに高い。なぜならば、特に炉充填地点の近くでは、通常バーナーが存在しないからであり、また、上澄みのバッチ材料のカバーがこれらのバッチ材料の溶融時にエネルギーのかなりの部分を吸収するからである。
【0042】
炉内の燃焼排ガスの滞留時間は多数の条件に依存する。これらは、上で示したような燃焼排ガス流れの構成とは別に、生成された燃焼排ガスの流速を含み、炉内のこの燃焼排ガスによって占有される容積もまた、加えなければならない。所定の燃焼排ガス流速に対して、平均滞留時間は利用可能な容積に依存する。容積が大きいほど、滞留時間が長くなり、原理的に熱伝達がより完全になる。
【0043】
実際には、炉の容積を増大することは限られた影響を有し、もし以下の理由のために十分に制御されない場合はあまり満足のいく経済性に導かなくなる。経験によれば、まず溶融される塊体及び溶融物への熱伝達は主に輻射を通して起こる。燃焼排ガスの対流は供給量の10%未満しか寄与せず、これは8%未満であることが極めて多い。これらの条件下では、燃焼排ガス滞留時間を増加することはこの対流供給にほとんど加わらない。さらに、炉の容積を増大することもまた、耐火物に関する追加の投資に導き、炉の断熱の品質がどのようなものであっても外側に消失されるエネルギーの追加の損失をもたらす。この損失は周囲の雰囲気に露出される壁の面積に依存する。
【0044】
有利には、燃焼排ガスの放出温度は炉内のその滞留の結果としてわずかに低下される。通常、空気燃料燃焼炉では、燃焼排ガスは1650℃以下、好ましくは1600℃以下、特に好ましくは1550℃以下である。しかしながら、酸素燃料燃焼炉の場合において、それは1500℃以下、好ましくは1450℃以下、特に好ましくは1350℃以下の温度である。
【0045】
さらに、炉の容積はまた、その中の燃焼排ガスの速度を決定する。炉内の燃焼排ガス流速が炎を乱すのを避けるように適度に維持されることを確実にすることが好ましい。また、ガスがバッチ材料を通りすぎるときにダストの飛び散りを防止することが必要であり、そのダストはガスが熱交換器を通過する前に除去されなければならないだろう。
【0046】
経験から、空気燃料燃焼炉内の燃焼排ガスの平均滞留時間が1〜3秒であることが見い出される。酸素燃料燃焼炉を有する本発明の場合において、燃焼排ガスの平均滞留時間は10〜40秒であり、有利には15〜30秒である。
【0047】
既に述べたバーナーの位置付け、さらにエネルギー供給の分布は、炉のエネルギー消費に関してだけでなく、生成されるガラスの品質に関しても重要な因子である。
【0048】
全ての大型のガラス炉は従来から、溶融及び精製のそれぞれに対応する二つの領域を含む。精製領域を超えて、ガラスは状態調節流路を通過しつづけ、そこでガラス温度はそれがガラスの形成温度に到達するまで徐々に低下される。平板ガラスを「フロート」技術によって製造するためには、この温度は1100℃付近である。
【0049】
通常、精製領域はネックによって状態調節領域から分離され、それは特にある領域の雰囲気が他の領域内に行くのを制限することができる。本発明によれば、対応する開口、結果として精製領域に入る状態調節領域から来る雰囲気の流れを最小にする努力がなされる。全ての場合において、燃焼排ガスは状態調節領域内に入ってはならない。燃焼排ガスが状態調節領域内に入ると、なお懸濁中のダストが燃焼排ガスによって連行されてガラスの表面上に付着されてしまうことが起こりうる。
【0050】
燃焼から生じないガス、特にネックを介して入るガスの進入はまた、できるだけ制限され、有利には炉を通過するガスの全容積の15%を超えず、好ましくは10%未満である。
【0051】
溶融領域と精製領域の間の区別は、ガラスの「対流(convection currents)」と従来称されるものを含む。これらの対流は、自然対流と強制対流の二つの現象によって発生される。第一に、自然対流の動きは温度条件及び炉に沿った出力分布(「第一曲線」と称される)と関連される。第二に、強制対流の動きは例えばバブラー、ミキサー又はダムによって起こされる流れの修正と関連される。これらの二つの対流現象はガラス上で進行し、それは溶融領域において前方では表面上を流れる動き、後方では炉の底部の近くを流れる動きに発展する。精製領域では、循環の方向が逆転される。
【0052】
一般に、溶融領域は、最も大きいエネルギー供給を要求するもの、従ってバーナーの全出力が最も大きいものである。分布は、この供給が全体の40%以上、好ましくは50%以上であるようなものである。それは供給の80%までを表すことができるが、送出されるエネルギーの70%以下を表すことが好ましい。問題の百分率は、問題の領域の上に懸架されるバーナーによって送出される出力に関する。
【0053】
炉をできるだけ効率的に運転するために、バーナーは炉に沿って好適に分布されなければならない。しかしながら、この分布は均一でない。
【0054】
燃焼排ガスにおけるエネルギー損失を最小にするように燃焼排ガス出口の近くに最も強力なバーナーの存在を避けることが必要である。しかしながら、もし溶融バッチ材料のブランケットの真下のガラス温度が低すぎ、ガラス凝固の危険があるなら、ブーストバーナーが炉の壁又は屋根のいずれかに装着されてバッチ材料充填地点の近くに位置されなければならない。燃焼排ガスにおけるエネルギー損失を最小にする別の方法は電気ブースターを使用することである(ガラスは炉の底部を通過する電極によって加熱される)。沈められた電極によって加熱することは、局所的な要求に正確に調節される温度制御を与える利点を有する。さらに、この電気エネルギー供給の効率は火炎加熱よりずっと高く、それによってそれを比較的低いレベルで維持することができる。一般に電気エネルギーが供給されるとき、それは炉内で作り出されたエネルギーの全量の10%以下を表し、その5%未満であることが極めて多い。
【0055】
バーナーは、バッチ充填地点と上流燃焼排ガス出口の両方から離れてある距離で設けられる。それゆえ、この領域におけるエネルギーの必要な供給は第一に溶融物内の対流から生じ、これらの対流は、溶融されるバッチ材料でカバーされた表面と溶融ガラスのさらに下流のものとの間の温度差が大きいほど強い。このエネルギー供給は第二に燃焼排ガスから来るものであり、それは向流で流れ、上流に与えられた出口の方に向けられる。全体的に、上流領域の温度は炉内で最も高くはないが、それは溶融を受けるには十分である。
【0056】
第一バーナーは、バッチ溶融を妨害しないように燃焼排ガス放出地点から離れてある距離で設けられるが、それでもなお溶融物が溶融されていないバッチ材料でなおカバーされる炉の領域にこれらの第一バーナーを位置させることが必要である。この領域は炉の長さの1/2を超えないことが好ましく、特に炉の長さの1/3以下であることが好ましい。これは、この「ブランケット」を溶融することを別として、溶融物に分散される材料の粒子が完全に溶融することを確実にすること、そして温度が溶融工程を完了するだけでなく、溶融物を均質化することができる最も高い値まで上昇することを確実にすることが必要であるためである。
【0057】
バーナーの位置決めに加えて、送出される出力の分布は重要である。バーナーの出力は精製領域の近くの溶融領域の部分で最も高く、その部分では到達する温度が最も高い。
【0058】
精製領域では、溶融物の温度は一般的に維持されなければならず、それゆえ必要なエネルギー供給はより多く制限される。好ましくは、この領域のバーナーは溶融領域に最も近い部分に設けられる。好ましくは、エネルギー供給は精製領域を通って前進方向に減少する。
【0059】
炉の運転パラメーター、特に全体の適用される出力を変化させることができることが必要である。バッチ材料の性質、出力の変化などによって命令されるこれらの変化は制限された大きさを持つことが通常である。最適化されたエネルギー分布条件をできるだけ維持するために、変化は本質的に、ガラスの進行方向の下流の最も遠くに位置されるバーナーに関係する。この特別な状況は、この領域に燃焼排ガス容積の変化があるという結果を持つ。結果として、動的平衡の破壊のためのさらに上流の変更を避けるために、本発明によれば、上で示したように、炉の下流領域に位置される出口によって燃焼排ガス流速を調整することが有利である。
【0060】
空気燃料燃焼モードで運転する従来の炉では、バーナーは、炎が溶融物の表面の近くで発生するような方法で炉の側壁に位置される。この配置は部分的に燃焼排ガスの炉内の限られた滞留時間に由来し、それはバーナーに面する炉の側上に直接本質的に放出される。この短い滞留時間中に対流熱交換を含む熱交換を最大にすることが必要であるように見え、それゆえ炎が溶融物の表面と接触することを確実にすることが必要である。
【0061】
本発明のような酸素燃料燃焼モードで運転する場合、対流による熱供給の寄与は上で示すように制限される。それゆえ、溶融物の表面からある距離の側壁上にバーナーを位置させ、炎から溶融物の方に及び屋根の方に直接輻射されるエネルギーの好適な分布を保証することが好ましい。
【0062】
好ましくは、バーナーの位置決めは、炎が溶融物の表面にほぼ平行な面において、この表面の少なくとも0.25m上の距離に、好ましくはその少なくとも0.40m上の距離に発生することをもたらす。この距離は1.0m以下であることができるが、0.80m未満であることが好ましい。
【0063】
上で示したように、酸素燃料燃焼の使用は炉の雰囲気を変化させ、それは実際には窒素を全く含まない。他方、それは水蒸気を比較的多く含む。この特徴は溶融挙動に対して有意な効果を持つ。特に、溶融物の上の水含有量の増加はガラス中の水含有量の増加をもたらす。
【0064】
高い水含有量の存在はガラスのガス放出を促進し、精製をより簡単にする。
【0065】
高い水含有量の一つの可能な欠点は溶融物の表面上の泡の形成である。泡の存在は、特にそれが良好な熱交換に対する障害を形成するので望ましくない。万一泡が発生する場合には泡の量を減少させるための手段が知られている。これらの手段は、泡が出現することを防止するためにとられる手段から独立して、例えばEP1046618公報に記載された技術を使用してガラスの表面張力を変化させる。
【0066】
特に問題となりうる領域、特に精製領域における泡形成の危険を最小にするための別の手段は、炉のこの部分に使用される燃料の選択によって水蒸気含有量を制限することにある。
【0067】
酸素燃料燃焼は、上述の利点の利益を失わずに様々なタイプの燃料で実施されることができる。最もよく使用される燃料は天然ガス又は液体燃料のいずれかである。
【0068】
水蒸気含有量に関して、これは液体燃料が使用されるときよりガスが使用されるときの方が高い。この理由のため、上述のエネルギーコストの問題を別にして、本発明によれば精製領域に設けられるバーナーが液体燃料を供給されることが有利でありうる。この方法では、最も不利になりうる炉の部分における泡形成の危険が低下される。
【0069】
酸素燃料燃焼の経済的評価は、一方では酸素のコスト及び適応される耐火物のコストに基づき、他方では燃料節約及び燃焼排ガス汚染の部分的除去に関する節約に基づく。肯定的な結果を持つために、炉を出る燃焼排ガスに含まれる熱の有意な部分を回収することが必要である。実際には、空気燃料燃焼炉の場合のように、回収された熱の最も効率的な使用は炉内に導入される反応体、即ち酸素、燃料及び所望によりバッチ材料を加熱することにある。
【0070】
空気燃料燃焼技術、特に熱交換器を使用するものと比較すると、一つの困難性は必要な設備の性質に由来する。熱交換器は実際に炉の出口で収集されるように燃焼排ガスを受けることができる。その熱交換器の材料、特にライニングは一般に耐火性セラミックから作られ、燃焼排ガス及びこのガスが運ぶことがありうるダストの温度に耐えるのに困難性を持たない。結果として、熱い熱交換器における空気の予熱は特別な予防措置をとることを要求しない。逆に、酸素燃料燃焼のために使用される製品を加熱するとき、特に酸素を加熱するとき、ずっと厳しい予防措置が要求される。酸素が流れる設備は完全に気密で、高温に耐え、かつこれらの温度で運ばれる酸素に耐えなければならない。
【0071】
燃焼排ガスに関して、それらがダストの連行を最小にすることを確実にする努力がなされなければならない。炎を溶融物の表面から離れてある距離に、特にまだ溶融されていない材料で溶融物がカバーされている領域に持たせることが、この連行を最小にすることに寄与する。また、寄与するものとしては、バーナーが互い違いになるときに互いに面するバーナーから発生するガス流の衝撃から生じうる乱流を最小にすることである。
【0072】
長手方向の燃焼排ガスの平均速度は一般的に3m/sを超えず、通常2m/s未満である。火炎中では、この速度はずっと高く、約30〜100m/sであり、この速度は空気燃料燃焼炎中より通常低い。
【0073】
本発明によれば、酸素は、優れた熱い酸素の耐性を示す鋼から作られた熱交換器において有利に予熱される。この用途のために好適な熱交換器及び材料は、公開されていないヨーロッパ特許出願No.07/107942(2007年5月10日出願)に記載されている。
【0074】
熱交換器によって送出される熱い酸素は、最大650℃になりうる温度にもたらされる。この数値は、最良の特性を有する金属合金で達成されうる耐性に依存する。この制限は問題の設備のタイプに対して使用持続期間を保証することができる。
【0075】
一般には、より良い安全性のため、酸素の温度を600℃以下に維持することが好ましい。
【0076】
経済性を有意に改良するために酸素の予熱が十分であるために、350℃以上の温度に設定することが好ましい。
【0077】
同様に、使用される燃料は、これが天然ガス又は液体燃料であるかどうかにかかわらず、予熱されることが有利である。燃料によって達成される温度は設備の耐性に依存しない。しかしながら、それらはこれらの燃料の可能な劣化に依存しうる。特に、それらが部分的にであっても「クラッキング」することを防止することが必要である。「クラッキング」は設備を汚す結果を招くだろう。天然ガスに対しては、予熱温度は、650℃以下が有利であり、550℃以下が好ましい。重油に対しては、その温度は一般に低く、180℃を超えず、150℃を超えないことが好ましい。
【0078】
燃焼排ガスの熱回収は、熱交換が上述の特許出願に与えられた条件下で実施されるときに熱交換の効率から独立して、酸素及び燃料が示された温度に加熱されることを可能にするのにほぼ十分である。また、製造される蒸気の使用がどのようなものであっても、バッチ材料を予熱したり又はボイラーに供給することを過剰に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明は、図面を参照して以下に詳細に記載される。
【0080】
【図1】図1は、本発明による炉の透視概略図である。
【0081】
【図2】図2は、図1に示された装置の平面図を概略的に示す。
【0082】
【図3】図3は、本発明による炉のために使用される熱交換回路の全体の概略図である。
【0083】
【図4】図4は、酸素を予熱するための実施形態における流れに関する概略図の詳細である。
【0084】
【図5】図5は、本発明による炉におけるバーナーの配置の部分的平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1に示された炉は、フロート技術を使用する平板ガラス製造ユニットを供給するために役立つもののような高容量ガラス製造のために使用されるタイプのものである。このタイプの炉は連続的に運転し、1000トン/日までの量でガラスを製造する。この性能を達成するために、炉は60MWまでの出力を持たなければならない。
【0086】
炉1は包囲されたチャンバー内に置かれたタンクを含む。この集成体は、高温、燃焼排ガス腐食、及び溶融材料による攻撃に耐える耐火性材料から作られる。タンク内の溶融物のレベルは点線2によって示される。
【0087】
炉はその端の一つにバッチ材料を供給される。これらのバッチ材料が充填される開口が3で示される。実際には、溶融物の表面上の分布を容易にするために、幾つかの充填場所が通常与えられる。矢印Vによって表される溶融ガラスの出力はタンクのそれと比較して小さい幅のネック4を介して反対端にある。最も普通には、ネック4の底部は炉の底部と同じ高さである。
【0088】
ネックは溶融ガラスにおいて完全に沈められていない。ネックの上部とガラス層の表面の間で間隙が残る。炉内のガス流れに関する運転条件は、懸濁されたダストを連行する危険を避けるように炉の雰囲気がネックを通過しないような方法で調整される。この運転を確実にするために、溶融ガラスの流れと対流で流れる矢印Aによって示されるわずかなガス流れを維持することが好ましい。反対方向のガス流れを妨げることだけを意図しているので、この流れAはできるだけわずかに維持される。それは、ネックの後に続く、図1に示されていない(しかし、図2の参照符号5で示される)状態調節領域の上に存在する空気によって通常形成されるので、それを最小にすることが重要である。
【0089】
6で示されるように位置されるバーナーは、炎がタンクの全幅にわたって実際に広がるように、炉の側壁に沿ってその各側上に位置される。バーナーは、この溶融/精製タンクの長さの大部分にわたるエネルギー供給を分布するように離れて設けられる。
【0090】
燃焼ガスFは、主として最も近いバーナーからある距離で炉充填領域の近くに設けられた出口7を介して放出される。示された図(図1及び2)では、二つの出口7が側壁上に対称的に位置され、一方バッチ材料(MP)が炉の軸に沿って充填される。これは好ましい実施形態であるが、例えば炉をその上流部分で閉鎖する壁8内のガスの出口のような他の配置も可能である。これらの出口はまた、別々に分布されてもよいが、重要な点は燃焼排ガスが炉内のガラスの流れVと向流で流れることを確実にすることである。適切な場合、燃焼排ガスの放出は特に、バッチ充填開口(単数又は複数)を介して少なくとも部分的に起こりうる。
【0091】
上で示したように、本発明によれば、炉の包囲が外部空気の透過に対して実際に不透過であることを確実にする手段がとられる。上流端の方への燃焼排ガスの流れは炉のこの側上での透過を防ぐ。側壁上におそらく与えられる通路はまた、周囲空気の透過に対して本質的に不透過である。状態調節部分5から来る少量の空気を追い払うために、燃焼排ガスの極めて制限された流れが炉の下流端に向かって与えられることが有利である。この燃焼排ガスF′は出口9を介して放出される。
【0092】
バーナーによって発生されるガス流れに加えて、状態調節領域から精製領域に流れる空気の量を調節する際に、前に示したように、炉の下流領域で抽出され、出口9を介して放出される燃焼排ガスの量を調節できることもまた重要である。
【0093】
大規模ガラス炉は通常、二つの領域を含み、一方は溶融領域と呼ばれ、他方は精製領域と呼ばれる。これらの二つの領域は図1及び2において画定されていない。
【0094】
溶融と精製の間の境界は一般に、炉の構造において明らかではない。特に、もしダムがかかる炉の底部に配置されるなら、このダムは通常、この境界がどこに設けられるかを決定する役割を果たしたとしてもこの境界と一致しない。
【0095】
溶融領域と精製領域の間の区別は全ての場合において機能的な区別である。それはタンク内のガラス循環に対応する。これは、溶融部分における第一対流、及び第一対流とは反対方向に回転する精製部分における第二対流を含む。循環に対して直接的な影響を持つ手段がない場合には、溶融領域/精製領域の境界の位置は、特にバーナーによるエネルギーの分布を含む多数の運転パラメーターによって決定される。図2では、これらの二つの領域はI及びIIとして示される。
【0096】
一般的に、バッチ材料を溶融するために必要とされるエネルギー供給は、ガラスを精製のための温度に維持するためのそれより大きい。結果として、バーナーの数、特にそれらが送出する出力は溶融領域においてより大きい。
【0097】
溶融のために最大量のエネルギーを供給する価値があり、それゆえ炉をバッチ材料で充填することが適切であるが、燃焼排ガス出口7の非常に近くに第一バーナーを位置させることを避けることも必要であり、そうでなければこの極めて熱い燃焼排ガスはそれとともに過剰量のエネルギーを運び去るだろう。それゆえ、第一バーナーが配置される選択は妥協の結果である。第一バーナーは、それらが上澄み材料の上に設けられるような方法で位置される。
【0098】
上で示すように、燃焼排ガスによるエネルギー損失を再び制限するために、バーナーの出力をそれらの位置に従って変化することもできる。第一バーナーは、さらに下流に位置されたバーナーのそれより低い出力で特別に運転してもよい。
【0099】
最も有利であることが判明している運転モードでは、「第一曲線」、即ち炉に沿った温度分布は、まず上流端から精製領域の開始の近くの中央部分まで進む。その後、温度は少し変化し、状態調節領域内への通路を作るネック4までわずかに減少する。この理由のため、炉の下流端は通常、バーナーが全くない。
【0100】
バーナーの分布はその軸によって図2に示される。それらは、対向する方向で発生する炎が互いに衝突しないことを確実にするようにタンクの両側で互い違いに配列されることが好ましい。それらは、溶融物の表面を最良にカバーするように横方向に互いに分離される。この意味においても、使用されるバーナーが、溶融物の表面にほぼ平行なシートの形で炎を作るタイプのものであることが有利である。各バーナーの公称出力は、どのバーナーが選択されるか及び使用されるバーナーの数に依存する。
【0101】
炉11の側壁上で利用可能な空間(図5)は、炉の屋根を支持する金属補強具12の存在によって制限される。この補強具を構成するビームは、炉が幅広く耐火性セラミック材料が重いほど間隔が詰まる。極めて幅広い炉に対して、WO2004/094902公報に記載されたタイプの二つの平らなバーナー13だけが炉の各側上に一つずつ二つの連続するビーム間に適合されることができる。これらのバーナーは、第一酸素供給15と同心の中央燃料供給14から出発して、設定された燃焼を作り、次いで幾つかの第二酸素供給16,17によって第一のものと平行に設定された燃焼を作る。これらは間隔をあけられ、同じほぼ水平面に位置される。これらの燃焼バーナー13は、溶融物の表面にほぼ平行な面で発生する炎を作る。それらの構成によって、これらのバーナーは特定の幅を有し、従って二つのビーム間にそれを限られた数で持つ。
【0102】
図1に示されているように、バーナーは、炉の囲い内で溶融物の表面の上のある距離のところで広がる。この配置は、上で説明したように、炎からの輻射エネルギーを正確に分布させることができ、また屋根の高さと組み合わせると、燃焼ガスの正しい流れ、特に炉の上流端の方へ戻る主出口7の方に向けられるものを確実にすることができる。燃焼排ガスが本質的に横方向の通路に従う空気燃料燃焼炉とは違って、本発明による酸素燃料燃焼の場合には、燃焼排ガスは炉の長さに沿って向けられ、それゆえ燃焼排ガスが乱してはいけない炎の方向に対して横切る。炎の下と炎の上の両方に空間を与えることによって、燃焼排ガスは、炎の発達を正しくするのに有害な過剰な乱流なしで進むことができる。
【0103】
炉から放出される燃焼排ガスは、このガスによって運ばれるエネルギーの幾らかを回収することを意図される装置に使用される。原理的には燃焼排ガスと予熱される製品との間の直接的な熱交換を実施することは可能であるが、効率性及び安全性に関して最適に運転するためには、より複雑な熱交換設備が使用される。
【0104】
しかしながら、図3では、簡単のために、熱交換設備は18及び19として全体的に示されている。これらの設備では、酸素及び/又は燃料は、ライン20,21によってバーナーに運搬される前に加熱される。
【0105】
炉を出ていく際の燃焼排ガスは最初、約1200〜1400℃の温度である。かかる温度では、燃焼排ガスが回収熱交換器(recuperator)、換言すれば燃焼排ガスの温度を低下させることができる熱交換器を通過することが好ましい。燃焼排ガスを処理してからそれを煙突24を介して雰囲気中に放出するためである。回収熱交換器は、流体が燃焼排ガスと向流で流れるシステムである。その最も基本的な形態では、これは二つの同心パイプを含む。より複雑なシステムは、熱伝達流体が流れるチャンバーを貫通する管の束によって形成される。二つのタイプを組み合わせてもよい。
【0106】
この回収熱交換器の後、燃焼排ガスは、極めて大きい回収熱交換器が使用される場合を除いて、高温、一般には700℃以上である。放出される前に、燃焼排ガスは、特に硫黄酸化物を除去するように汚染除去処理を受ける。この除去操作は例えば電気フィルターで実施される。これらのフィルターの損傷を避けるために、温度はさらに約300〜400℃に低下されなければならない。これを行うための一つの経済的な方法は、燃焼排ガスを周囲空気で希釈することにある。
【0107】
これらの温度に低下されると、混合物は、例えば蒸気発生ボイラーに供給するための手段としてなお使用されることができる。問題の蒸気は特に液体燃料を予熱するために使用されることができる。これらは100〜150℃、好ましくは120〜140℃の温度に予熱されることが有利である。
【0108】
回収熱交換器に使用される流体熱交換器は、その一部に対して図4を参照して以下に示されるように使用される。
【0109】
図3に示された描写では、二つの熱交換器18,19が炉の各側上に一つずつ位置されている。二つの燃焼排ガスラインはライン22によって接続される。この後者のラインは、万一設備の一つにメンテナンス又は修理を実施することが必要な場合に、燃焼排ガスの少なくとも幾らかを第二設備に瞬間的に移動することができ、残りはライン27又はライン28を介して放出されてもよい。同様に、ライン23は、もし必要なら、炉の両側に熱伝達流体を供給するために使用される。
【0110】
ライン27及び28は、適切な場合には、燃焼排ガスが回収熱交換器を通過するのを避けてそれらを放出場所24に直接送るために使用される。
【0111】
図3では、下流に出る燃焼排ガスF′は熱交換器へのパイプとして示されていない。設備の構成に依存して、全ての燃焼排ガスが回収されるような方法でこれらの出口を接続することもできる。もし「回収可能な」エネルギーが利用可能なものより多いなら、この回収は適切な場合には省略されてもよい。
【0112】
上で示した理由のため、熱交換を二つの工程で実施することが有利である。第一の「回収熱交換器」では、燃焼排ガスは中間流体、例えば空気、窒素、CO又は例えばこの回収熱交換器と熱交換器の間のループ内を循環する適切な流体を加熱するか、又はさらに良好には幾つかの熱交換器を加熱し、その熱交換器においてそれは酸素又は燃料を加熱する。空気のような中間流体に関する代替的な状況は、ループを使用せずに、ボイラー又は別のエネルギー回収手段によって第二熱交換器の出口で熱い空気を回収することである。
【0113】
図4は、この原理を示す。回収熱交換器25は燃焼排ガスFを受け、それと向流で流体A、例えば空気を受ける。加熱された空気は一連の熱交換器26に送られ、そこでそれは酸素と向流で流れ、それはバーナー13に送られる前に加熱される。
【0114】
実際には、長いラインにわたって熱い酸素を送る困難性のため、ラインのコストのため、又は熱的損失のため、本発明によれば、酸素が消費されるバーナーの近くで酸素を予熱することが有利に提案される。この理由のため、熱交換器の数を増加することが必要であり、それらの各々は、状況に依存してそのすぐ近くに設けられた一つのバーナー又は少数のバーナーに供給するだろう。
【0115】
図4では、各バーナー13は熱交換器26によって供給される。
【0116】
空気は、酸素を予熱した後、回収熱交換器25に戻るか、又は炉の燃焼排ガスダクトに戻り、ボイラーに送られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路形状の溶融タンクを含むガラス溶融炉であって、バッチ材料が上流端で導入され、溶融されたガラスが下流端で回収され、前記炉がバーナーによって加熱され、燃焼エネルギーの少なくとも65%が酸素燃料燃焼によって生成され、バーナーが炉の長さに沿って壁上に分布され、燃焼排ガス放出の大部分が、バッチ材料が導入される開口の近くの上流端の近くに局在化され、燃焼排ガスの残りが下流部分の近くで除去され、かくして周囲の雰囲気に対して動的封止を維持し、バーナーが、炉への出力の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%が溶融領域に送出されるように分布される、溶融炉。
【請求項2】
溶融領域に送出される出力が炉の全出力の80%を超えない、好ましくはその70%を超えない、請求項1に記載の溶融炉。
【請求項3】
活性バーナーがバッチ材料充填領域及び燃焼排ガス充填地点からある距離に位置される、請求項1又は2に記載の溶融炉。
【請求項4】
第一活性バーナー、即ちガラスが進む方向に沿った第一のバーナーが、上澄み材料が存在する領域の上に炉の長さに沿って設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項5】
最大出力が溶融領域と精製領域の間の境界で炉の長さに沿って送出される、請求項1〜4のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項6】
第一バーナーを運転する出力と最後のバーナーを運転する出力が、他のバーナーを運転する出力より低い、請求項1〜5のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項7】
バーナーが溶融物の上にある距離で炉の囲い内に広がり、その距離は0.25m以上、好ましくは0.40m以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項8】
バーナーが溶融物の上にある距離で炉の囲い内に広がり、その距離は1.0m以下、好ましくは0.8m以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項9】
充填領域において、この領域に限られた量のエネルギーを供給するための電極を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の溶融炉。
【請求項10】
電極によって供給されるエネルギーの量が、炉内で使用されるエネルギーの全量の10%を超えない、好ましくはその最大5%である、請求項9に記載の溶融炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−519804(P2011−519804A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501218(P2011−501218)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053518
【国際公開番号】WO2009/118337
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】