キチナーゼおよびキチナーゼ様分子、ならびに炎症性疾患に関する方法、組成物およびキット
本発明は、キチナーゼ様分子を阻害することに関する、炎症性疾患(例えば喘息、COPD、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー、アレルギー性鼻炎、強皮症など)の治療のための組成物および方法を包含する。本発明はさらに、限定されるものでないが喘息、COPDなどを挙げることができる炎症性疾患の治療のための新たな化合物の同定方法を包含する。これは、本発明が、IL−13およびキチナーゼ様分子の発現が炎症性疾患を媒介しかつ/もしくはそれと関連すること、ならびにキチナーゼ様分子を阻害することが該疾患を治療しかつ予防さえすることを初めて立証するためである。従って、本発明は、キチナーゼ様分子を阻害することが炎症性疾患を治療かつ予防するという新規発見に関する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
喘息の罹患率は、米国単独で推定1700万症例を伴い、過去20年間、一様に増大してきた。かつては主として気道平滑筋の収縮機構の機能不全であることが考えられたが、最近の研究は、喘息および他の肺疾患における免疫系および炎症の役割を示している。
【0002】
喘息は現在、免疫系の不適切な刺激に帰される複雑な炎症性疾患と特徴づけられている。若干の場合では炎症が風媒抗原により誘発される。他者においては、外因性誘因を定義することができない(内因性喘息)。喘息性炎症に関与する免疫細胞およびメディエーターは、IgE、肥満細胞、好酸球、T細胞、インターロイキン−4(IL−4)、IL−5、IL−9、IL−13および他のサイトカインを包含する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。これらの免疫細胞およびメディエーターのなかで、Tヘルパー2型(Th2)細胞およびサイトカインの役割がますます重要であることが判明している。それらが気道炎症の開始および維持の原因、ならびにB細胞の調節、好酸球の機能、粘液応答および気道のリモデリングの刺激に不可欠であると考えられるからである(非特許文献7;非特許文献8)。
【0003】
免疫に媒介される炎症は、喘息の気道において気道のリモデリングもしくは構造的改変に至ると考えられる。リモデリングの最終結果が、喘息の症状および生理学的調節不能双方に寄与すると考えられる。リモデリングはしばしば、気道の肥厚、粘液化生、上皮細胞肥大および気道線維症を特徴とする。広範囲の線維症は、疾患の重症度、気道の過敏性(AHR)を増大させかつ不完全に可逆的な気道閉塞の生成に寄与すると広く考えられている(非特許文献7)。従って、喘息の治療のための治療薬の成功裏の設計は、炎症の機構ならびに呼吸器系における傷害および創傷治癒の過程の双方の理解を必要とする。
【0004】
2種の顕著なサイトカイン、IL−4およびIL−13は、喘息および他の肺疾患の炎症および気道のリモデリングにおいて重要な役割を演じていると考えられる。IL−4およびIL−13は、それらが双方ともTh2ヘルパーT細胞の同一のサブセットにより産生され、重なり合うエフェクターの特徴を有し、そして受容体成分およびシグナル伝達経路を共有することにおいて類似である。しかしながら、AHR、好酸球の動員、粘液過剰産生および喘息の他の症状における、IL−4を上回るIL−13の決定的に重要な役割が、最終的に立証された(非特許文献4、非特許文献9)。マウス肺におけるIL−13の過剰産生は、メタコリン攻撃後に、好酸球、リンパ球およびマクロファージの豊富な炎症、粘液化生、気道線維症およびAHRをもたらす(非特許文献10)。さらに、IL−13のプロモーターおよびコーディング領域双方の多形が喘息の表現型と関連している(非特許文献11)。これらの結果は、異常なIL−13産生が喘息性炎症および気道のリモデリングの決定的に重要な一成分であることを示唆する。
【0005】
炎症性肺疾患におけるIL−13の役割は喘息に制限されない。慢性閉塞性肺疾患(COPD、臨床上、慢性気管支炎、肺気腫および慢性閉塞性肺(lung)疾患と定義される)は、長く、喘息と別個の疾患として考えられてきた。しかしながら、該2種の疾患の間の類似性が示されており、そして、「オランダ仮説(Dutch Hypothesis)」(1961年に最初に提案された)の形成をもたらした。オランダ仮説の最近の改訂は、喘息およびCOPDがいくつかの個体において別個の過程でないこと、および共通の病因機構がこれらの障害の根底にあることを提案している。該仮説はさらに、アトピー、喘息、AHRおよび/もしくは増大されたレベルのIgEに対する遺伝的素因が、喫煙者がCOPDを発症しやすくすることを述べている(非特許文献12)。さらに、マウス肺におけるIL−13の過剰発現は肺気腫およびCOPD様の粘液化生を引き起こし、IL−13はCOPDを伴う患者からの生検および剖検肺組織中で過剰発現され、そして、COPDの存在と相関するIL−13の多形が記述されている。これらの結果をオランダ仮説の観点からみる場合に、喘息およびCOPDが以前に考えられていたよりも緊密に関連付けられるのみならず、しかしこれらの肺の炎症性障害におけるIL−13の調節不全(dysregulation)の中心的役割がより顕著になる。
【0006】
喘息、COPDおよび関係する肺の炎症性障害の根底にある機構および原因の具体的説明における進歩は、かつて気管支筋収縮の機能異常と考えられたものが、現在では特定のサイトカインおよび細胞型に結び付けられる可能性があるという事実を考えれば目覚ましい。この進歩にもかかわらず、喘息は、結核およびAIDSとともに、増大する死亡率を伴う唯一の慢性疾患のままである。加えて、2020年までに、COPDは全世界の死亡の第4位の原因となると予想される。
【0007】
喘息による増大する罹患率および死亡率に反撃するために、喘息の治療のための医薬の集積は絶えず増大している。
【0008】
喘息薬は2種の一般的範疇、すなわちコントローラー(controller)およびレリーバー(reliever)に属する。コントローラーは症状が生じる前の喘息発作の予防のためであり、そして、レリーバーは喘息発作の最中の間に服用される。コントローラーは、コルチコステロイド(利用できる最も強力かつ有効な抗炎症薬と広く考えられている)、クロモリンナトリウムおよびネドクロミル、小児でしばしば使用されるより穏やかな抗炎症薬、ならびに気管支拡張薬である長時間作用型β−2アゴニストを包含する。レリーバーは、短時間作用型β−2アゴニスト、およびβ−2アゴニストに対する補足もしくは代替をしばしば使用する抗コリン作動薬を包含する。
【0009】
コルチコステロイドおよび他の治療薬は喘息の炎症に媒介される症状を標的とする一方、それらはしばしば、広範な免疫抑制性の特性、ならびに他の有害な副作用を有する。喘息の生理学的および生物学的機構が解明される際に、特異的かつ有効な薬物の開発がすぐ続いて起こるはずであり、そして、喘息の症状、罹患率および死亡率が、その現在の上昇の代わりに下落するはずである。しかしながら、根底にある疾患の機構の増大された理解にもかかわらず、また、喘息の増大する発生率、ならびに罹患率およびそれからの死亡にもかかわらず、現在、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の制限された数の有効かつ安全な治療が存在する。加えて、COPDの進行を変える薬理学的薬物は存在しない。
【0010】
従って、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の特異的な有効な治療に対する、長い間感じられたかつ深刻な必要性が存在する。本発明はこの必要性に合致する。
【非特許文献1】Braddingら、1994、Am.J.Resipir.Cell Mol.Biol.10:471−480
【非特許文献2】Braddingら、1997、Airway Wall Remodeling in Asthma、CRCプレス(CRC Press)、フロリダ州ボカレイトン
【非特許文献3】Nicolaidesら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:13175−13180
【非特許文献4】Wills−Karp、1998、Science 282:2258−2260
【非特許文献5】Hamidら、1991、J.Clin.Invest.87:1541−1546
【非特許文献6】Kotsimbosら、1996、Proc.Assoc.Am.Physicians 108:368−373
【非特許文献7】Eliasら、1999、J.Clin.Invest.104:1001−1006
【非特許文献8】Rayら、1999、J.Clin.Invest.104:985−993
【非特許文献9】Grunigら、1998、Science 282:2261−2263
【非特許文献10】Zhengら、1999 J.Clin.Invest.103:779−788
【非特許文献11】Heinzmannら、2000、Hum.Mol.Genet.9:549−559
【非特許文献12】VestboとPrescott、1997、Lancet 350:1431−1434
【発明の簡単な要約】
【0011】
疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療法。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0012】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0013】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0014】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0015】
なお別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0016】
さらなる一局面において、抗体は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択されるキチナーゼ様分子と特異的に結合する。
【0017】
別の局面において、アンチセンス核酸分子は、キチナーゼ様分子をコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである。
【0018】
なお別の局面において、リボザイムは、キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である。
【0019】
さらなる一局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0020】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の予防方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を予防することを含んで成る。
【0021】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0022】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0023】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0024】
さらなる一局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0025】
なお別の局面において、キチナーゼ様分子はYMタンパク質であり、かつ、さらに、キチナーゼ様分子阻害剤は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチログアニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0026】
別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。
【0027】
本発明は、疾患がキチナーゼの増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0028】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0029】
別の局面において、キチナーゼは酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)であり、かつ、キチナーゼ阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0030】
なお別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0031】
一局面において、抗体はAMCアーゼと特異的に結合する。
【0032】
別の局面において、アンチセンス核酸分子は、AMCアーゼをコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである。
【0033】
なお別の局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0034】
本発明は、疾患がインターロイキン−13の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0035】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0036】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0037】
本発明はまた、疾患がTh2炎症応答と関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法も包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0038】
本発明は、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含する。該方法は、炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および該哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを該化合物の投与前の該哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、化合物の投与前の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較しての化合物の投与後の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のより低いレベルが、該化合物が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る。一局面において、本発明は本方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0039】
一局面において、キチナーゼ様分子のレベルは、キチナーゼ様分子の核酸の発現のレベル、およびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される。
【0040】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0041】
なお別の局面において、哺乳動物はマウスである。
【0042】
さらなる一局面において、該マウスは、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される。
【0043】
別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。なお別の局面において、本発明は、この方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0044】
本発明は、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含する。該方法は、細胞を化合物と接触させること、および、細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを化合物と接触されないそれ以外は同一の細胞中のキチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、化合物と接触されない細胞中のキチナーゼ様分子のレベルと比較しての化合物と接触された細胞中のキチナーゼ様分子のより低いレベルが、該化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る。
【0045】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患を治療するためのキットを包含する。該キットは、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成り、かつ、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る。
【0046】
一局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される。
【0047】
別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0048】
なお別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。
【0049】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患を予防するためのキットを包含する。該キットは、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成り、かつ、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る。
[発明の詳細な記述]
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の発現と関連するかもしくはそれにより媒介される、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤を投与することを含んで成る。本明細書の別の場所に開示されるデータが立証するとおり、キチナーゼ様分子の増大されたレベルは、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症、肺気腫などを挙げることができる炎症性疾患と関連しかつ/もしくはそれを媒介する。
【0050】
本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子の増大された発現、存在および/もしくは活性が、限定されるものでないが、組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液および組織中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織中の増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを挙げることができる、多様な炎症性疾患に関連する病因と関連しかつ/もしくはそれらを媒介することを立証する。
【0051】
本明細書に開示されるデータは、驚くべきことに、いくつかのキチナーゼ様分子、例えばYMが、検出可能な古典的キチナーゼ活性を有しない場合であっても、限定されるものでないがアロサミジンを挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤を投与することが治療上の利益を提供しかつ疾患を治療することを立証する。さらに、本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子の阻害剤、例えばAMCアーゼに対する抗体の投与が治療効果を提供しかつ疾患を治療することを初めて立証する。実際、該データは、疾患状態の発生前のキチナーゼ様分子阻害剤の投与が疾患を予防するのに役立つことを立証する。従って、本発明は、それにより炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、該疾患がキチナーゼ様分子により媒介されるかもしくはそれと関連する場合に、該キチナーゼ様分子が検出可能なキチナーゼ活性を有するかもしれないもしくは有しないかもしれない場合であっても、該疾患を治療かつ/もしくは予防する、新規方法を提供する。
定義:
本明細書で使用されるところの以下の用語のそれぞれは、この節でそれと関連する意味を有する。
【0052】
冠詞「a」および「an」は、1個もしくは1個以上(すなわち最低1個)の該冠詞の文法上の目的語を指すのに本明細書で使用する。例として、「an element(要素)」は1個の要素もしくは1個以上の要素を意味する。
【0053】
該用語が本明細書で使用されるところの「アプリケーター」という用語により、本発明のキチナーゼ様分子阻害剤の化合物、抗体、核酸、タンパク質および/もしくは組成物を哺乳動物に投与するための、限定されるものでないが皮下シリンジ、ピペット、静脈内注入、局所クリームなどを挙げることができるいずれかの装置を意味する。
【0054】
本明細書で使用されるところの「キチナーゼ」は、微生物および哺乳動物のキチナーゼを含んで成るポリペプチドの1ファミリーを指す。本発明のキチナーゼは、それがエンドキチナーゼの様式でキチンを特異的に切断するという点で、検出可能なキチナーゼ活性を示す。
【0055】
該用語が本明細書で使用されるところの「キチナーゼ様分子」は、既知のキチナーゼに対するある程度の相同性により定義されるがしかし検出可能なキチナーゼ活性を立証しなくてもよいタンパク質を含んで成るポリペプチドの1ファミリーを包含する。キチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、酸性哺乳動物キチナーゼ(好酸球走化性サイトカインともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号AF290003およびAF29004により例示される)、YM1(ジェンバンク(GenBank)受託番号M94584により例示されるところのキチナーゼ3−様3、ECF−L前駆体としてもまた知られる)、ジェンバンク(GenBank)受託番号AF461142により例示されるところのYM2、ジェンバンク(GenBank)受託番号XM_131100により例示されるところの卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1(BRP−39、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40ともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号X93035により例示される)、ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_003465により例示されるところのキトトリオシダーゼ、卵管糖タンパク質1(ムチン9、オビダクチンともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号NM_002557により例示されるところの)、軟骨糖タンパク質−39(ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_001276により例示されるところの、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40としてもまた知られる)、ならびに軟骨細胞タンパク質39(ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_004000により例示されるところの、キチナーゼ3−様2、YKL−39としてもまた知られる)を挙げることができる。従って、当業者は、本明細書に提供される教示を一旦身につければ、本発明が、検出可能なキチナーゼ活性を有するキチナーゼ様分子、ならびに、潜在的キチナーゼ様分子がタンパク質の該ファミリーに対する実質的な配列相同性を共有するために前述の分子に類似のものを包含することを認識するであろう。本発明はこれらの特定のキチナーゼ様分子に制限されず;むしろ、本発明は、それらと実質的相同性を共有しかつ/もしくは検出可能なキチナーゼ活性を有する他のキチナーゼ様分子を包含し、また、当該技術分野で既知のこうした分子ならびに今後発見されるものを包含する。
【0056】
「コードすること」は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)の定義される配列もしくはアミノ酸の定義される配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型としてはたらく遺伝子、cDNAもしくはmRNAのようなポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、ならびにそれ由来の生物学的特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞もしくは他の生物学的系中でタンパク質を産生する場合に、該タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列に同一でありかつ通常は配列表に提供されるコーディング鎖、および遺伝子もしくはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖双方を、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードすると称することができる。
【0057】
核酸に適用されるところの、本明細書で使用されるところの「フラグメント」という用語は、通常、長さが最低約20ヌクレオチド、典型的には最低約50ヌクレオチド、より典型的には約50から約200ヌクレオチドまで、好ましくは最低約200ないし約300ヌクレオチド、なおより好ましくは最低約300ヌクレオチドないし約400ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約400ないし約500、なおより好ましくは最低約500ヌクレオチドないし約600ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約600ないし約700、なおより好ましくは最低約700ヌクレオチドないし約800ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約800ないし約900、なおより好ましくは最低約900ヌクレオチドないし約1000ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1000ないし約1100、なおより好ましくは最低約1100ヌクレオチドないし約1200ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1200ないし約1300、なおより好ましくは最低約1300ヌクレオチドないし約1400ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1400ないし約1500、最低約1500ないし約1550、なおより好ましくは最低約1550ヌクレオチドないし約1600ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1600ないし約1620であってよく、そして、最も好ましくは、核酸フラグメントは長さが約1625ヌクレオチド以上であることができる。
【0058】
本明細書で使用されるところの「相同な」は、2種のポリマー分子間、例えば2種の核酸分子、例えば2種のDNA分子もしくは2種のRNA分子間、または2種のポリペプチド分子間のサブユニットの配列の類似性を指す。2種の分子の双方中のあるサブユニット位置が同一単量体サブユニットにより占有される場合、例えば、2種のDNA分子のそれぞれ中のある位置がアデニンにより占有される場合には、それらはその位置で相同である。2種の配列間の相同性は、合致するもしくは相同な位置の数の直接の関数であり、例えば、2種の化合物の配列の位置の半分(例えば長さ10サブユニットのポリマー中の5個の位置)が相同である場合には、該2種の配列は50%相同であり、位置の90%、例えば10個中9個が合致されるもしくは相同である場合は、該2種の配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’−ATTGCC−5’および3’−TATGGC−5’は75%の相同性を共有する。
【0059】
「キチナーゼ様分子阻害剤」は、化合物の非存在下のそれ以外は同一の細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルに比較される場合に、細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルを検出可能に阻害する化合物を意味する。キチナーゼ様分子のレベルは、限定されるものでないが、該分子をコードする核酸の発現のレベル、検出可能なキチナーゼ様分子のレベル、および/もしくはキチナーゼ活性のレベルを挙げることができる。キチナーゼ様分子阻害剤は、限定されるものでないが、化合物(例えばアロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体)、銅、亜鉛、水銀、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸を挙げることができる。
【0060】
該用語が本明細書で使用されるところの「AMCアーゼ阻害剤」は、AMCアーゼを阻害する以前に定義されたところのキチナーゼ様分子阻害剤を包含する。こうした阻害剤は、限定されるものでないが、阻害剤の非存在下の細胞もしくは組織、または阻害剤の非存在下のそれ以外は同一の細胞もしくは組織中でのAMCアーゼの発現および/もしくは活性のレベルに比較して、該細胞もしくは組織中でのAMCアーゼの発現および/もしくは活性のレベルを阻害する、化合物、ならびにリボザイム、アンチセンス分子、抗体などを挙げることができる。阻害剤は、限定されるものでないが、化合物、リボザイム、アンチセンス核酸分子、抗体などを挙げることができる。
【0061】
本明細書で使用されるところの「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、本発明のポリペプチドをコードする1個の読取り枠を含んで成る核酸分子を指す。こうした天然の対立遺伝子変異は、典型的には所定の遺伝子のヌクレオチド配列中の1〜5%の相違をもたらす可能性がある。代替の対立遺伝子は、多数の多様な個体中の目的の遺伝子を配列決定することにより同定することができる。これは、ハイブリダイゼーションプローブを使用して多様な個体中の同一の遺伝子座を同定することにより容易に実施することができる。いずれかのおよび全部のこうしたヌクレオチド変異、ならびに、天然の対立遺伝子変異の結果でありかつ機能的活性を変えない生じるアミノ酸の多形もしくは変異は、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0062】
本明細書で使用されるところの「説明資料」は、本明細書で列挙される多様な疾患もしくは障害の軽減を遂げるためのキット中の本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物の有用性を知らせるのに使用することができる、刊行物、録音(録画)(recording)、図表、もしくはいずれかの他の表現媒体を包含する。場合によっては、もしくはあるいは、説明資料には、哺乳動物の細胞もしくは組織における疾患もしくは障害の1種もしくはそれ以上の軽減方法が記述されるかもしれない。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、化合物および/もしくは組成物を含有する容器に添付してよいか、または、該核酸、ペプチド、化学的組成物および/もしくは組成物を含有する容器と一緒に発送してよい。あるいは、説明資料は、該説明資料および化合物が受領者により共同して使用されるという意図を伴い、容器と別個に発送してもよい。
【0063】
「炎症性疾患」は、組織損傷、細胞の傷害、抗原および/もしくは感染性疾患に対する応答が存在する状態を指すのに本明細書で使用する。いくつかの例においては、因果関係は確立できないことがある。炎症の症状は、限定されるものでないが細胞浸潤および組織腫大を挙げることができる。炎症性疾患の定義で企図される疾患状態は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫を包含する。
【0064】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する核酸から分離されている核酸セグメントもしくはフラグメント、例えば、該フラグメントに通常隣接する配列、例えばそれが天然に存在するゲノム中で該フラグメントに隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを指す。該用語はまた、細胞中で天然にそれに付随する核酸、例えばRNAもしくはDNA、またはタンパク質に天然に付随する他の成分から実質的に精製された核酸にも当てはまる。該用語は、従って、例えば、ベクター、自律的に複製するプラスミドもしくはウイルス、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれる、あるいは他の配列に依存せずに別個の分子として(例えば、cDNA、あるいは、ゲノムまたはPCRもしくは制限酵素消化により生じられるcDNAフラグメントとして)存在する、組換えDNAを包含する。それはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも包含する。
【0065】
「操作可能に連結される」として2種のポリヌクレオチドを記述することにより、一本鎖もしくは二本鎖核酸部分が、該2種のポリヌクレオチドの少なくとも一方が他方に対してそれが特徴づけられる生理学的影響を発揮することが可能であるような様式で核酸部分内に配置された、2種のポリヌクレオチドを含んで成ることを意味する。例として、遺伝子のコーディング領域に操作可能に連結されたプロモーターは、該コーディング領域の転写を促進することが可能である。
【0066】
好ましくは、所望のタンパク質をコードする核酸がプロモーター/調節配列をさらに含んで成る場合、該プロモーター/調節配列は、それが細胞中で所望のタンパク質の発現を駆動するような、所望のタンパク質のコーディング配列の5’に配置される。一緒に、所望のタンパク質をコードする核酸およびそのプロモーター/調節配列は「トランスジーン(transgene)」を含んで成る。
【0067】
「構成的」発現は、遺伝子産物が、細胞の大部分のもしくは全部の生理学的条件下で、生存する細胞中で産生される状態である。
【0068】
「誘導可能な」発現は、遺伝子産物が、細胞中のシグナルの存在に応答して、生存する細胞中で産生される状態である。
【0069】
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現に際して産生されるものである。
【0070】
「ポリペプチド」は、アミノ酸残基より構成されるポリマー、関係する天然に存在する構造変異体、およびペプチド結合を介して連結されるその合成の天然に存在しない類似物、関係する天然に存在する構造変異体、ならびにその合成の天然に存在しない類似物を指す。合成ポリペプチドは例えば自動化ポリペプチド合成機を使用して合成することができる。
【0071】
「タンパク質」という用語は、典型的には大型のポリペプチドを指す。
【0072】
「ペプチド」という用語は、典型的には短いポリペプチドを指す。
【0073】
本明細書で使用されるところの「トランスジェニック哺乳動物」という用語は、その生殖細胞が外因性核酸を含んで成る哺乳動物を意味する。
【0074】
本明細書で使用されるところの「治療する」ことは、炎症性疾患の症状が患者により経験される頻度を低下させること、または、患者における疾患の自然史および/もしくは進行を変えることを意味する。
【0075】
本明細書で使用されるところの「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、その少なくとも一部分が、正常細胞もしくは冒された細胞に存在する核酸に対し相補的である核酸ポリマーを意味する。最も好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約15と約50との間のヌクレオチドを含んで成る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものでないがホスホロチオエートオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの他の修飾物を挙げることができる。
【0076】
本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、抗原上の特定の一エピトープに特異的に結合することが可能である免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然の供給源もしくは組換え供給源由来の無傷の免疫グロブリンであることができ、また、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体および人化抗体を包含する多様な形態で存在してよい(Harlowら、1999、Using Antibodies:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Habor Laboratory Press)、ニューヨーク;Harlowら、1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;Houstonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;Birdら、1988、Science 242:423−426)。
【0077】
本明細書で使用されるところの「合成抗体」という用語により、例えば本明細書に記述されるところのバクテリオファージにより発現される抗体のような、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。該用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成により生成された抗体も意味すると解釈されるべきであり、かつ、このDNA分子は抗体タンパク質もしくは該抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、ここで、該DNAもしくはアミノ酸配列は、利用可能かつ当該技術分野で公知である合成DNAもしくはアミノ酸配列技術を使用して得られている。
【0078】
ポリヌクレオチドの「部分」は、ポリヌクレオチドの最低最低約15ないし約50の連続するヌクレオチド残基を意味する。ポリヌクレオチドの一部分は、該ポリヌクレオチドのすべてのヌクレオチド残基を包含してよいことが理解される。
【0079】
本明細書で使用されるところの「特異的に結合する」という用語により、キチナーゼ様分子を認識かつ結合するがしかしサンプル中の他の分子を実質的に認識もしくは結合しない抗体を意味する。
【0080】
「予防的」治療は、疾患に関連する病状を発生する危険を低下させる目的上、疾患の兆候を表さないかもしくは疾患の初期の兆候のみを表す被験体に投与される治療である。
【0081】
該用語が本明細書で使用されるところの疾患を「予防すること」は、キチナーゼ様分子を投与した場合に、阻害剤の非存在下での発症および/もしくは症状に比較して、疾患の発症が遅らされること、かつ/または疾患の症状が強度および/もしくは頻度において低下されることができることを意味する。
【0082】
「治療的」治療は、病状の兆候を減少もしくは排除させる目的上、それらの兆候を表す被験体に投与される治療である。
I.方法
A.炎症性疾患の治療方法
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、炎症性疾患の治療方法を包含する。キチナーゼ様分子阻害剤を使用する哺乳動物、好ましくはヒトにおける炎症性疾患の治療方法が本発明で企図される。これは、本明細書の開示を提供される場合に当業者により認識されるであろうとおり、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を阻害することが、IL−13により媒介される疾患を包含する炎症性疾患の治療としてはたらくためである。すなわち、本明細書に開示されるデータは、IL−13の発現と関連するかもしくはそれにより媒介される炎症性疾患の一モデルにおけるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、それが確立された後に疾患を治療することを立証する。さらに、本発明は、キチナーゼ様分子およびキチナーゼ様分子のmRNAが、正常組織中のキチナーゼ様分子のレベルに比較して炎症性疾患組織中で増大されたレベルで存在するという発見に関する。従って、本発明は、限定されるものでないがキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤を使用するこうした疾患の治療に関する。
【0083】
驚くべきことに、キチナーゼ様分子阻害剤は、検出可能なキチナーゼ活性が存在しない場合であっても、疾患を治療するために投与することができる。従って、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明は検出可能なキチナーゼ活性が存在する疾患の治療に制限されず;代わりに、本発明は、検出可能なキチナーゼ活性が存在しない場合であってもキチナーゼ様分子の発現と関連するもしくはそれにより媒介される疾患の治療を包含することを認識するであろう。
【0084】
本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の阻害は、とりわけ、キチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害するリボザイムおよび/もしくはアンチセンス分子により媒介されるもののような、キチナーゼ様分子の発現の阻害を包含することが、当業者により理解されるであろう。加えて、当業者は、本発明の教示を一旦身につければ、キチナーゼ様分子の阻害が細胞中でのキチナーゼ様分子の活性の阻害を包含することを認識するであろう。キチナーゼ様分子の活性のこうした阻害は、とりわけ、アロサミジン、1,10−フェナントロリン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛、水銀などを包含するキチナーゼ酵素活性の阻害剤を使用して達成することができる。さらに、キチナーゼ様分子の活性の阻害剤は、キチナーゼ様分子と特異的に結合してそれにより酵素が機能することを予防する抗体を包含する。従って、キチナーゼ様分子阻害剤は、限定されるものでないが、キチナーゼ様分子をコードする核酸の転写、翻訳もしくは双方を阻害することを挙げることができ;そして、それはまた、限定されるものでないがキチンを切断する能力を挙げることができるペプチドのいずれかの活性を阻害することも同様に包含する。
【0085】
本発明は哺乳動物における炎症性疾患の治療もしくは予防方法を包含する。該方法は、こうした治療の必要な哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤を投与することを含んで成る。これは、本発明の教示を身につけた当業者により認識されるであろうとおり、キチナーゼ様分子を阻害することが炎症性疾患を治療もしくは予防するのに有用であるためである。キチナーゼ様分子の阻害は、順に、本明細書に開示されるデータにより十分に立証されるとおり、炎症性疾患に関連する病状を予防する。
【0086】
より具体的には、本発明は多様な阻害剤を使用してキチナーゼ様分子を阻害することに関する。すなわち、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現、活性および/もしくは機能を阻害する化合物は、キチナーゼ様分子およびそれにより炎症性疾患を阻害する、既知もしくは開発されるべきいずれかの、限定されるものでないが抗体、アンチセンス核酸、リボザイム、小分子、ペプチド模倣物および化合物を挙げることができることを理解するであろう。
【0087】
本発明は、インビトロもしくはインビボで検出可能なキチナーゼ活性を立証するもしくはしないキチナーゼ様分子の阻害を包含する。すなわち、いずれかの特定の論理により拘束されることを願わず、キチナーゼ様分子が細胞もしくは組織中または細胞を含まない系のいずれかで検出可能なキチナーゼ活性を立証するかどうかは関係しない。より具体的には、本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、Ym(インビトロもしくはインビボで検出可能なキチナーゼ活性を立証しない)のようなキチナーゼ様分子は、炎症性疾患の病理学を立証しない細胞もしくは組織に比較して、疾患の細胞および組織中で増大されたレベルで発現され、そして、とりわけアロサミジンを使用してYmを阻害することは該疾患を治療かつ/もしくは予防する。加えて、本明細書に開示されるデータは、細胞もしくは組織中のキチナーゼすなわちAMCアーゼの増大されたレベルが炎症性疾患と関連するかもしくはそれを媒介することをさらに立証する。さらに、AMCアーゼの阻害が該疾患を治療する。こうした治療効果は検出不可能なキチナーゼ活性の阻害に関するかもしれないか、または、該治療効果はキチナーゼ様分子のいかなるキチナーゼもしくはキチナーゼ様の活性にも関係しないかもしれず、そして、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、該治療効果が該分子によるいかなるキチナーゼ活性とも相関する可能性があるがしかし相関する必要がないことを認識するであろう。
【0088】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明の阻害剤が、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の発現、活性もしくは機能を予防もしくは阻害する分子および化合物を包含することを認識するであろう。すなわち、本発明は、キチナーゼ様分子が細胞もしくは組織中で検出可能でないようなキチナーゼ様分子の発現を阻害、低下かつ/もしくは廃止するアンチセンスおよび/もしくはアンチセンス分子が、本発明の阻害剤であることを企図する。例えば、キチナーゼ様分子を分解する化合物はその機能を低下させることができ、そして、本発明において企図されるところの阻害剤であることができる。
【0089】
キチナーゼ様分子の阻害は、本明細書に開示されるものを包含する広範な方法、ならびに当該技術分野で公知もしくは今後開発されるべき方法を使用して評価することができる。すなわち、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現の阻害が、キチナーゼ様分子をコードする核酸(例えばmRNA)のレベル、および/または細胞もしくは液体中に存在するキチナーゼ様分子のレベルを評価する方法を使用して容易に評価することができることを認識するであろう。さらに、当業者は、キチナーゼ様分子の阻害が、本明細書の別の場所で例示されるとおり、かつ/または当該技術分野で公知もしくは今後開発されるべき方法を使用して、細胞もしくは体液中のキチナーゼ酵素活性の阻害を測定することにより評価することができることを理解するであろう。
【0090】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫などを挙げることができる多様な炎症性疾患の治療を包含することを理解するであろう。本明細書で開示されるところのこれらの疾患は、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を伴いかつ/もしくはそれらにより媒介され、ここで、増大されたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、増大されたキチナーゼ様分子の発現、増大されたキチナーゼ様分子の活性、もしくは双方を挙げることができる。
【0091】
さらに、当業者は、本明細書に提供される教示に基づき、該疾患が、とりわけ、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4産生により媒介される疾患を包含する、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を含んで成るいかなる疾患も包含することをさらに認識するであろう。これは、本明細書の別の場所でより完全に示されるとおり、本明細書に開示されるデータが、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4がキチナーゼ様分子の増大を媒介し、これが順に、限定されるものでないが組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織でのキチナーゼ様分子を含んで成る結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織における増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを挙げることができる炎症性疾患に関連する多様な変化を媒介かつ/もしくはそれらと関連することを立証するためである。
【0092】
従って、本明細書に開示されるデータは、炎症性疾患(ここで、該疾患はIL−13および/もしくはIL−4の増大された発現で媒介もしくはそれらと関連する)に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の阻害は、キチナーゼ様分子のレベルの低下を媒介し、それが順に該疾患を治療することにより、該疾患を治療することができることを立証する。例えば、こうしたデータは、限定されるものでないが、IL−13の増大された発現が増大されたキチナーゼ様分子活性および増大されたキチナーゼ様分子発現を媒介する哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を投与することによる多様な組織の病状の阻害を挙げることができる。
【0093】
本発明は、さらに、哺乳動物におけるTh2炎症応答により媒介されかつ/もしくはそれと関連する炎症性疾患の治療方法を含んで成る。当業者は、本明細書に提供される本開示および教示を身につけた場合に、Th2炎症応答により媒介されかつ/もしくはそれと関連する炎症性疾患が、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫などを挙げることができる多様な炎症性疾患を包含することを理解するであろう。本明細書に開示されるとおり、これらの疾患は哺乳動物においてTh2炎症応答により媒介され、そして、とりわけ、増大されたIL−13産生および/もしくは発現、増大されたキチナーゼ様分子の活性および/もしくは発現などをもたらす。増大されたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、増大されたキチナーゼ様分子発現、増大されたキチナーゼ様分子活性、もしくは双方を挙げることができる。
【0094】
さらに、当業者は、本発明に提供される教示に基づき、該疾患が、とりわけ、増大されたTh2炎症応答により媒介される疾患を包含する、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を含んで成るいかなる疾患も包含することを認識するであろう。これは、本明細書の別の場所でより完全に示されるとおり、本明細書に開示されるデータが、増大されたTh2炎症応答が、とりわけ、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4活性および/もしくは発現、増大されたキチナーゼ様分子をもたらし、それが順に、限定されるものでないがBAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織中のキチナーゼ様分子を含んで成る結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球などを挙げることができる、炎症性疾患に関連する多様な変化を媒介かつ/もしくはそれと関連することを立証するためである。
【0095】
従って、本明細書に開示されるデータは、炎症性疾患(ここで該疾患は増大されたTh2炎症応答により媒介かつ/もしくはそれと関連する)に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の阻害がキチナーゼ様分子のレベルの低下を媒介し、それが順に疾患を治療することにより、該疾患を治療することができることを立証する。例えば、こうしたデータは、限定されるものでないが、Th2炎症応答が増大されたキチナーゼ様分子活性および増大されたキチナーゼ様分子発現を媒介する哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を投与することによる多様な組織の病状の阻害を挙げることができる。
【0096】
当業者は、キチナーゼ様分子が、それがとりわけそのアミノ酸配列に基づきキチナーゼファミリー分子として分類されているもしくは分類することができるような、既知のキチナーゼに対するかなりの程度の相同性を表す分子であることをさらに認識するであろう。さらに、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子は既知のキチナーゼに対する相同性を表す可能性がある一方、キチナーゼ分子は、それらが当該技術分野で既知のアッセイにおいてキチンを検出可能に切断しなくてもよいために検出可能なキチナーゼ活性を立証する必要がないことを理解するであろう。こうしたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが酸性哺乳動物キチナーゼ(好酸球走化性サイトカイン)、YM1(キチナーゼ3−様3、ECF−L前駆体)、YM2、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1(BRP−39、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40)、キトトリオシダーゼ、卵管糖タンパク質1(ムチン9、オビダクチン)、軟骨糖タンパク質−39(キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40)および軟骨細胞タンパク質39(キチナーゼ3−様2、YKL−39)を挙げることができる。
【0097】
キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、リボザイムおよびアンチセンス核酸分子を包含することができるが、しかしこれらに制限されると解釈されるべきでない。
【0098】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤はキチナーゼ様分子の活性を阻害する化合物を包含することを容易に認識するであろう。キチナーゼ様分子阻害剤は当該技術分野で公知であり、また、キチナーゼ様分子阻害剤の一分類の重要な決定的な要素のいくつかは定義されている(SpindlerとSpindler−Barth、1999、Chitin and Chitinases、バークハウザー フェアラーク バーゼル(Birkhauser Verlag Basel)、スイス)。加えて、キチナーゼ様分子阻害剤は、化学分野の当業者に公知であるとおり、化学的に修飾された化合物および誘導体を包含する。
【0099】
当業者は、キチナーゼ様分子阻害剤が、限定されるものでないが、アロサミジン(アロサミジン(Allosamidine)、カーボハイドレート ケミストリー インダストリアル リサーチ リミテッド(Carbohydrate Chemistry Industrial Research Limited)、ニュージーランド・ローワーハット、およびイーライ リリー アンド カンパニー(Eli Lilly and Co.)、インジアナ州グリーンフィールド)ならびにその誘導体(例えば米国特許第5,413,991号明細書を参照されたい)、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン(Nishimotoら、1991、J.Antibiotics 44:716−722)デメチルアロサミジン(米国特許第5,070,191号明細書)、ならびにジデメチルアロサミジン(Zhouら、1993、J.Antibiotics 46:1582−1588)を挙げることができる、既に知られているキチナーゼ様分子阻害剤を包含することを認識するであろう。さらに企図されるキチナーゼ様分子阻害剤は、スチロガウニジンおよびその誘導体(Katoら、1995、Tetrahedron.Lett.36:2133−2136)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)(Izumidaら、1996、J.Antibiotics 49:76−80)、二価陽イオン(例えばCu2+、Zn2+およびHg2+)(Izumidaら、1995、J.Mar.Biotechnol.2:163−166;FunkeとSpindler、1989、Comp.Biochem Physiol.94B:691−695)、ならびにリボフラビンおよびフラビン誘導体(国際特許公開第WO 02/23991号明細書)を包含する。
【0100】
さらに、当業者は、本開示および本明細書に例示される方法を装備される場合に、キチナーゼ様分子阻害剤が、本明細書で詳細に記述されかつ/もしくは当該技術分野で既知のところのキチナーゼ様分子の阻害の生理学的結果のような薬理学の分野における公知の基準により同定することができるところの、今後発見されるような阻害剤を包含することを認識するであろう。従って、本発明は、本明細書で例示もしくは開示されるところのいずれかの特定のキチナーゼ様分子阻害剤にいかなる方法でも制限されず;むしろ、本発明は、当該技術分野で既知でありかつ今後発見されるところの、有用であることが当業者により理解されるであろう阻害剤を包含する。
【0101】
限定されるものでないが、天然に存在する供給源(すなわちストレプトミセス属スピーシーズ(Streptomyces sp.)、シュードモナス属スピーシーズ(Pseudomonas sp.)、スチロテラ アウランチウム(Stylotella aurantium))から阻害剤を得ることを挙げることができる、キチナーゼ様分子阻害剤のさらなる同定および製造方法が、当業者に公知である。あるいは、キチナーゼ様分子阻害剤は化学的に合成することができる。さらに、当業者は、本明細書に提供される教示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤を組換え生物体から得ることができることを認識するであろう。キチナーゼ様分子阻害剤を化学的に合成するための、および天然の供給源からそれらを得るための組成物および方法は当該技術分野で公知であり、そして、とりわけ、Yamadaら、米国特許第5,413,991号および同第5,070,191号明細書に記述される。
【0102】
当業者はまた、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤が、キチナーゼ様分子、例えばAMCアーゼと特異的に結合してそれによりこれらのタンパク質の作用を阻害する抗体を包含することも認識するであろう。例えば、YMに特異的に結合する抗体は当業者に公知である(Webbら、2001、J.Biol.Chem.276:41969−41976)。同様に、キチナーゼ様分子に対する抗体は、本明細書に開示されるもしくは当業者に公知の標準的方法を使用して製造することができる(Harlowら、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。従って、本発明はいずれかの特定の抗体にいかなる方法でも制限されず;代わりに、本発明は、当該技術分野で既知かつ/もしくは今後同定されるのいずれかのキチナーゼ様分子と特異的に結合するいかなる抗体も包含する。
【0103】
当業者は、抗体はタンパク質、タンパク質をコードする核酸構築物、もしくは双方として投与することができることを認識するであろう。タンパク質もしくはタンパク質をコードする核酸構築物を細胞もしくは組織に投与するための多数のベクターおよび他の組成物ならびに方法が公知である。従って、本発明は、キチナーゼ様分子に特異的である抗体もしくは抗体(例えば合成抗体)をコードする核酸の投与方法を包含する。(Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold SpringHarbor Labratory)、ニューヨーク;Ausubelら、1997、Current Protocols in Molecular Biology、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク)。
【0104】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が目的のキチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体、もしくは該抗体をコードする核酸を投与することを包含することを理解することができ、ここで、抗体分子は、該抗体がキチナーゼ様分子と結合しそして細胞表面でのその発現および/もしくは細胞からのその輸出を予防するような細胞内保持配列をさらに含んで成る。頻繁に「イントラボディ(intrabody)」と称されるこうした抗体は当該技術分野で公知であり、かつ、例えばMarascoら(米国特許第6,004,490号明細書)およびBeerliら(1996、Breast Cancer Research and Treatment 38:11−17)に記述される。従って、本発明は、細胞上でのキチナーゼ様分子の発現および/もしくは細胞からのその分泌を阻害することを含んで成る方法を包含し、ここで、当業者は、こうした阻害が本明細書に提供される開示に基づき利益を提供するであろうことを理解するであろう。
【0105】
本発明は化合物、およびキチナーゼ様分子に対する抗体に制限されない。当業者は、ポリペプチドの発現を阻害することが、同様にポリペプチドの活性および機能の有効な阻害方法であることを認識するであろう。従って、キチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害することによるキチナーゼ様分子の阻害方法が提供される。遺伝子の発現の阻害方法は当業者に公知であり、そしてリボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を包含する。
【0106】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNA分子の何らかの部分に対し相補的であるDNAもしくはRNA分子である。細胞中に存在する場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、存在するmRNA分子にハイブリダイズし、そして遺伝子産物への翻訳を阻害する。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して遺伝子の発現を阻害することは、細胞中でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現方法(Inoue、米国特許第5,190,931号明細書)がそうであるように、当該技術分野で公知である(Marcus−Sekura、1988、Anal.Biochem.172:289)。
【0107】
当業者に公知の方法によって合成かつ細胞に提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドが本発明で企図される。一例として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10と約100との間、より好ましくは約15と約50との間のヌクレオチド長であるように合成することができる。核酸分子の合成は、未修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドに比較して生物学的活性を改良するための修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成(Tullis、1991、米国特許第5,023,243号明細書)がそうであるように、当該技術分野で公知である。
【0108】
同様に、遺伝子の発現は、それにより遺伝子の転写に影響を及ぼす、アンチセンス分子の遺伝子のプロモーターもしくは他の調節要素へのハイブリダイゼーションにより阻害されるかもしれない。目的の遺伝子と相互作用するプロモーターもしくは他の調節要素の同定方法は当該技術分野で公知であり、そして酵母2ハイブリッド系(BartelとFields編、The Yeast Two Hybrid System、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ノースカロライナ州ケアリー中)のような方法を包含する。
【0109】
あるいは、キチナーゼ様分子を発現する遺伝子の阻害はリボザイムの使用により達成することができる。遺伝子発現を阻害するためにリボザイムを使用することは当業者に公知である(例えば、Cechら、1992、J.Biol.Chem.267:17479;Hampelら、1989、Biochemistry 28:4929;Altmanら、米国特許第5,168,053号明細書を参照されたい)。リボザイムは、他の一本鎖RNA分子を切断する能力をもつ触媒的RNA分子である。リボザイムは配列特異的であることが既知であり、そして、従って特定のヌクレオチド配列を認識するように改変することができ(Cech、1988、J.Amer.Med.Assn.260:3030)、特定のmRNA分子の選択的切断を可能にする。ヌクレオチド配列のキチナーゼ様分子を考えれば、当業者は、本明細書に組み込まれる開示および言及を提供されて、過度の実験なしでアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはリボザイムを合成することができよう。
【0110】
当業者は、キチナーゼ様分子の遺伝子発現の阻害剤を、単独でもしくはそのいずれかの組合せで投与することができることを認識するであろう。さらに、キチナーゼ様分子阻害剤は、単独で、またはそれらを相互と同時に、その前および/もしくは後に投与してよいために時宜的な意味でそのいずれかの組合せで投与することができる。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、遺伝子発現を阻害するためのキチナーゼ様分子阻害剤を、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患を治療するのに使用することができること、ならびに、阻害剤は、治療の結果を達成するために単独でもしくは別の阻害剤とのいずれかの組合せで使用することができることを認識するであろう。
B.炎症性疾患の予防方法
当業者が本明細書に詳述される方法を包含する本開示を身につけた場合、本発明は、一旦疾患が確立した炎症性疾患の治療に制限されないことが認識されるであろう。とりわけ、疾患の症状は哺乳動物に対する損害の点までに明示されている必要はなく;実際、疾患は治療が投与される前に哺乳動物において検出される必要はない。すなわち、炎症性疾患からの重大な病状は、本発明が利益を提供しうる前に発生する必要はない。従って、本発明は、本明細書により完全に記述されるとおり、本明細書の別の場所で以前に論考されたところのキチナーゼ様分子阻害剤を炎症性疾患の発症前に哺乳動物に投与して、それにより本明細書で開示されるデータにより立証されるとおり疾患を予防することができるために、哺乳動物における炎症性疾患の予防方法を包含する。
【0111】
当業者は、本明細書の開示を身につけた場合に、炎症性疾患の予防が、炎症性疾患に対する予防手段としてキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与することを包含することを認識するであろう。本明細書で詳述されるとおり、キチナーゼ様分子に関連する炎症性疾患の症状および病因は、組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織中のキチナーゼ様分子より構成される結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織における増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを包含する。これらの病因および本明細書の別の場所に開示される方法を考えれば、当業者は、疾患の病理学を検出することができる前にキチナーゼ様分子阻害剤を使用して哺乳動物における炎症性疾患を認識かつ予防することができる。
【0112】
これは、本明細書に開示されるデータが、限定されるものでないがアロサミジンを挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、該疾患がアレルゲンにより誘発された(例えば卵アルブミン感作)にせよ、哺乳動物が疾患に対し遺伝的に素因を作られた(例えばIL−13を構成的にもしくは誘導可能に過剰発現するトランスジェニックマウス)にせよ、哺乳動物における炎症性疾患の発症を予防したことを立証するためである。従って、当業者は、本明細書の別の場所に提供される開示に基づき、本発明がキチナーゼ様分子阻害剤を使用してキチナーゼ様分子を阻害することを含んで成る疾患の予防方法を包含することを認識するであろう。さらに、本明細書の別の場所により完全に論考されるとおり、キチナーゼ様分子の阻害方法は、キチナーゼ様分子活性を阻害するのみならず、しかしまたキチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害するための極めて多数の技術も包含する。加えて、本明細書の別の場所で開示されるとおり、当業者は、本明細書に提供される教示を一旦身につければ、本発明が、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性が疾患を媒介する広範な疾患の予防方法を包含することを理解するであろう。疾患がキチナーゼ様分子の過剰発現もしくは増大された活性に関係するかどうかの評価方法は、本明細書の別の場所に開示されかつ/もしくは当該技術分野で公知である。さらに、本発明は、今後発見されるこうした疾患の治療もしくは予防を包含する。
【0113】
本発明はさらに、IL−13に媒介される炎症性疾患の治療方法を包含する。これは、本明細書に開示されるデータが立証するとおり、とりわけ肺におけるIL−13の過剰発現が、誘導可能にしろ構成的にしろ、とりわけ、本明細書の別の場所に記述される病状につながる呼吸器組織におけるキチナーゼ様分子の増大された発現を媒介もしくはそれと関連するためである。それにより、本発明は、本発明の方法を使用する、IL−13に媒介される炎症性疾患の治療方法を包含する。
【0114】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキチナーゼ様分子阻害剤の投与を包含し;当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、適切なキチナーゼ様分子阻害剤の処方および哺乳動物への投与方法を理解するであろう。事実、本明細書で例示されたとおり実施するためのキチナーゼ様分子阻害剤の成功裏の投与は、大きく減少されている。しかしながら、本発明はいずれかの特定の投与方法もしくは治療レジメンに制限されない。これは、キチナーゼ様分子阻害剤の投与方法が薬理学的技術の当業者により容易に決定されることができることが、炎症性疾患の技術に認識されるモデルを使用して実施するための大きな低減を包含する本明細書に提供される開示を装備された当業者により認識されるであろう場合に、とりわけ真実である。
【0115】
より具体的には、本明細書に開示されるデータは、IL−13の増大された発現がキチナーゼ様分子(例えばYm、AMCアーゼなど)の増大されたレベルを媒介もしくはそれと相関すること、また、とりわけ、キチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体を使用してキチナーゼ様分子を阻害することが炎症性疾患を予防、軽減かつ/もしくは治療することを立証する。すなわち、例えば、AMCアーゼのmRNAは、炎症性疾患の細胞および/もしくは組織中でより高レベルで発現され、また、AMCアーゼと特異的に結合する抗体の投与は、炎症性疾患の技術に認識された動物モデルにおいて疾患を治療する。さらに、本明細書に開示されるデータは、Ymの発現および化合物すなわち既知のキチナーゼ様分子阻害剤であるアロサミジンを使用するYmの阻害に関する類似の結果を立証する。当業者は、本発明がこれらのキチナーゼ様分子もしくはこれらのキチナーゼ様分子阻害剤に制限されず、かつ、本明細書に開示されるデータが、キチナーゼ様分子の阻害が炎症性疾患を効果的に治療かつ/もしくは予防することができることを十分に立証することを認識するであろう。
【0116】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、適切なキチナーゼ様分子阻害剤を組合せてよく、かつ、組合せの後に適切なキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与するのに使用することができる化学的組成物を意味する。
【0117】
本発明を実施するのに有用な製薬学的組成物は、約0.1ng/kg/日と100mg/kg/日との間の用量を送達するように投与してよい。
【0118】
本発明の方法で有用である製薬学的組成物は、経口の固体製剤、眼、坐剤、エアゾル、局所もしくは他の類似の製剤で全身に投与してよい。適切なキチナーゼ様分子阻害剤に加え、こうした製薬学的組成物は、製薬学的に許容できる担体、および薬物投与を高めかつ助長することが既知の他の成分を含有してよい。ナノ粒子、リポソーム、再封止(resealed)赤血球および免疫学的に基づく系のような他の可能な製剤もまた、本発明の方法に従って適切なキチナーゼ様分子阻害剤を投与するのに使用してもよい。
【0119】
本明細書に開示される疾患の治療のために処方しかつ哺乳動物に投与することができる、目的の疾患の治療および/もしくは予防のための潜在的な有用な化合物として本明細書に記述されるいずれかの方法を使用して同定される化合物を、今や記述する。
【0120】
本発明は、有効成分として本明細書に開示される疾患の治療に有用な化合物を含んで成る、製薬学的組成物の製造および使用を包含する。こうした製薬学的組成物は、被験体への投与に適する形態の有効成分単独よりなってもよいか、あるいは、製薬学的組成物は、有効成分および1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容できる担体、1種もしくはそれ以上の付加的な成分、またはこれらの何らかの組合せを含んでよい。有効成分は、当該技術分野で公知であるところの生理学的に許容できる陽イオンもしくは陰イオンと組合せのような生理学的に許容できるエステルもしくは塩の形態で製薬学的組成物中に存在してよい。
【0121】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、有効成分をそれと組合せてよく、かつ、組合せの後に被験体に有効成分を投与するのに使用することができる化学的組成物を意味する。
【0122】
本明細書で使用されるところの「生理学的に許容できる」エステルもしくは塩という用語は、組成物が投与されるべきである被験体に対し有害でない、製薬学的組成物のいかなる他の成分とも適合性である有効成分のエステルもしくは塩の形態を意味する。
【0123】
本明細書に記述される製薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で既知のもしくは今後開発されるいずれの方法により製造してもよい。一般に、こうした準備方法は、有効成分を担体または1種もしくはそれ以上の他の補助成分との連合にもたらすこと、およびその後、必要もしくは望ましい場合は、所望の単一もしくは複数の用量単位に生成物を造形もしくは包装することの段階を包含する。
【0124】
本明細書で提供される製薬学的組成物の記述は原則としてヒトへの倫理的投与に適する製薬学的組成物に向けられるとは言え、こうした組成物は全部の種類の動物への投与に一般に適することが当業者により理解されるであろう。該組成物を多様な動物への投与に適するようにするための、ヒトへの投与に適する製薬学的組成物の改変は、十分に理解されており、そして、普通に熟練した家畜薬理学者は、あるとしてもただ通常の実験を用いてこうした改変を設計かつ実施することができる。本発明の製薬学的組成物の投与が企図される被験体は、限定されるものでないが、ヒトおよび他の霊長類、畜牛、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に有意義な哺乳動物を包含する哺乳動物、ならびにニワトリ、アヒル、ガチョウおよびシチメンチョウのような商業的に有意義な鳥類を包含する鳥類を挙げることができる。
【0125】
本発明の方法で有用である製薬学的組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、頬側、静脈内、眼、クモ膜下もしくは別の投与経路に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。他の企図される製剤は、有効成分を含有する突起を付けられた(projected)ナノ粒子、リポソーム製剤、再封止赤血球、および免疫学的に基づく製剤を包含する。
【0126】
本発明の製薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、もしくは複数の単一の単位用量として製造、包装もしくは販売してよい。本明細書で使用されるところの「単位用量」は、予め決められた量の有効成分を含んで成る製薬学的組成物の別個の量である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与することができる有効成分の投薬量、または例えばこうした投薬量の半分もしくは1/3のようなこうした投薬量の便宜的画分に等しい。
【0127】
本発明の製薬学的組成物中の有効成分、製薬学的に許容できる担体およびいずれかの付加的成分の相対量は、治療される被験体の正体(identity)、大きさおよび病状に依存して、ならびに該組成物が投与されるべきである経路にさらに依存して、変動することができる。例として、組成物は0.1%と100%(w/w)との間の有効成分を含んでよい。
【0128】
有効成分に加えて、本発明の製薬学的組成物は、1種もしくはそれ以上の付加的な製薬学的有効成分をさらに含んでよい。とりわけ企図される付加的作用物質は、制吐薬ならびにシアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのようなスカベンジャーを包含する。
【0129】
本発明の製薬学的組成物の制御もしくは持続性放出製剤が慣習的技術を使用して作成されるかもしれない。
【0130】
経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の製剤は、それぞれ予め決められた量の有効成分を含有する、限定されるものでないが錠剤、硬もしくは軟カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤(troche)またはトローチ剤(Lozenge)を挙げることができる別個の固体の用量単位の形態で製造、包装もしくは販売してよい。経口投与に適する他の製剤は、限定されるものでないが、粉末にされたもしくは顆粒の製剤、水性もしくは油性懸濁剤、水性もしくは油性溶液、または乳剤を挙げることができる。
【0131】
本明細書で使用されるところの「油性」液体は、炭素を含有する液体分子を含んで成りかつ水より少なく極性の特徴を表すものである。
【0132】
有効成分を含んで成る錠剤は、例えば、有効成分を場合によっては1種もしくはそれ以上の付加的成分とともに圧縮もしくは成形することにより作成してよい。圧縮錠剤は、場合によっては結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤および分散剤の1種もしくはそれ以上と混合された粉末もしくは顆粒製剤のような自由に流動する形態の有効成分を適する装置中で圧縮することにより製造してよい。成形錠剤は、有効成分、製薬学的に許容できる担体、および混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体の混合物を適する装置中で成形することにより作成してよい。錠剤の製造で使用される製薬学的に許容できる賦形剤は、限定されるものでないが不活性希釈剤、顆粒化剤および崩壊剤、結合剤ならびに滑沢剤を挙げることができる。既知の分散剤は、限定されるものでないがバレイショデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを挙げることができる。既知の界面活性剤は、限定されるものでないがラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。既知の希釈剤は、限定されるものでないが炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、微晶質セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムを挙げることができる。既知の顆粒化剤および崩壊剤は、限定されるものでないがトウモロコシデンプンおよびアルギン酸を挙げることができる。既知の結合剤は、限定されるものでないがゼラチン、アラビアゴム、糊化済(pre−gelatinized)トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを挙げることができる。既知の滑沢剤は、限定されるものでないがステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクを挙げることができる。
【0133】
錠剤はコーティングしなくてよいか、もしくは、それらは被験体の消化管での遅らされる崩壊の既知の達成方法を使用してコーティングして、それにより有効成分の持続性の放出および吸収を提供してよい。例として、モノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリルのような物質を使用して錠剤をコーティングしてよい。さらに、例として、錠剤は、浸透圧で制御される放出錠剤を形成するために米国特許第4,526,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号明細書に記述される方法を使用してコーティングしてよい。錠剤は、製薬学的に洗練されかつ味のよい製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色剤、保存剤もしくはこれらの何らかの組合せをさらに含んでもよい。
【0134】
有効成分を含んで成る硬カプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成してよい。こうした硬カプセル剤は有効成分を含んで成り、また、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンのような不活性の固体希釈剤を包含する付加的な成分をさらに含んでもよい。
【0135】
有効成分を含んで成る軟ゼラチンカプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成してよい。こうした軟カプセル剤は、水、またはラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油のような油媒体と混合してよい有効成分を含んで成る。
【0136】
経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態、または使用前に水もしくは別の適するベヒクルを用いる再構成に意図される水分を含まない生成物の形態のいずれかで製造、包装および販売してよい。
【0137】
液体懸濁剤は、水性もしくは油性のベヒクル中の有効成分の懸濁物の慣習的達成方法を使用して製造してよい。水性ベヒクルは例えば水および等張の生理的食塩水を包含する。油性ベヒクルは、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱物油を包含する。液体懸濁剤は、さらに、限定されるものでないが懸濁化剤、分散剤もしくは湿潤剤、乳化剤、緩和剤、保存剤、緩衝剤、塩、着香料、着色剤および甘味料を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。油性懸濁剤は増粘剤をさらに含んでもよい。既知の懸濁化剤は、限定されるものでないが、ソルビトールシロップ、水素化可食脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アラビアゴム、ならびに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体を挙げることができる。既知の分散剤もしくは湿潤剤は、限定されるものでないが、レシチンのような天然に存在するホスファチド、脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステル、もしくは脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとのアルキレンオキシドの縮合生成物(例えば、それぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を挙げることができる。既知の乳化剤は、限定されるものでないがレシチンおよびアラビアゴムを挙げることができる。既知の保存剤は、限定されるものでないが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、エチルもしくはn−プロピル、アスコルビン酸およびソルビン酸を挙げることができる。既知の甘味料は、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖およびサッカリンを包含する。油性懸濁剤のための既知の増粘剤は、例えばミツロウ、固形パラフィンおよびセチルアルコールを包含する。
【0138】
水性もしくは油性溶媒中の有効成分の液体溶液は、液体懸濁剤と実質的に同一の様式で製造してよく、主な差異は有効成分が溶媒中に懸濁されるよりむしろ溶解されることである。本発明の製薬学的組成物の液体溶液は、液体懸濁剤に関して記述された成分のそれぞれを含んでよく、懸濁化剤が溶媒中の有効成分の溶解を必ずしも補助することができるわけでないことが理解される。水性溶媒は例えば水および等張の生理的食塩水を包含する。油性溶媒は、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱物油を包含する。
【0139】
本発明の製薬学的組成物の粉末にされたおよび顆粒の製剤は既知の方法を使用して製造することができる。例えば錠剤を形成するため、カプセルを充填するため、または、それへの水性もしくは油性ベヒクルの添加により水性もしくは油性の懸濁剤もしくは溶液を製造するために使用される、こうした製剤は被験体に直接投与してよい。これらの製剤のそれぞれは、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および保存剤の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。増量剤および甘味料、着香料もしくは着色剤のような付加的な賦形剤もまた、これらの製剤中に包含してよい。
【0140】
本発明の製薬学的組成物は、水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤の形態でもまた製造、包装もしくは販売してよい。油相はオリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、流動パラフィンのような鉱物油、またはこれらの組合せであってよい。こうした組成物はさらに、アラビアゴムもしくはトラガカントガムのような天然に存在するガム、ダイズもしくはレシチンホスファチドのような天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトール無水物の組合せ由来のエステルもしくは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなエチレンオキシドとのこうした部分エステルの縮合生成物のような1種もしくはそれ以上の乳化剤を含んでもよい。これらの乳剤はまた、例えば甘味料もしくは着香料を包含する付加的成分も含有してよい。
【0141】
本発明の製薬学的組成物は直腸投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした組成物は、例えば坐剤、保持浣腸製剤、および直腸もしくは結腸洗浄のための溶液の形態にあってよい。
【0142】
坐剤製剤は、通常の室温(すなわち約20℃)で固体でありかつ被験体の直腸体温(すなわち健康なヒトで約37℃)で液体である、非刺激性の製薬学的に許容できる賦形剤と有効成分を組合せることにより作成してよい。適する製薬学的に許容できる賦形剤は、限定されるものでないがカカオバター、ポリエチレングリコールおよび多様なグリセリドを挙げることができる。坐剤製剤は、さらに、限定されるものでないが抗酸化剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0143】
直腸もしくは結腸洗浄のための保持浣腸製剤もしくは溶液は、有効成分を製薬学的に許容できる液体担体と組合せることにより作成してよい。当該技術分野で公知であるとおり、浣腸製剤は、被験体の直腸の解剖学に適合された送達装置を使用して投与してよく、かつ、それ内に包装してよい。浣腸製剤はさらに、限定されるものでないが抗酸化剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0144】
本発明の製薬学的組成物は膣投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした組成物は、例えば、坐剤、タンポンのような含浸もしくは被覆された膣に挿入可能な物質、灌注製剤、または膣洗浄のためのゲル剤もしくはクリーム剤もしくは溶液の形態にあってよい。
【0145】
化学的組成物での物質の含浸もしくは被覆方法は当該技術分野で既知であり、そして、限定されるものでないが、表面上への化学的組成物の沈着もしくは結合方法、物質(すなわち生理学的に分解可能な物質のような)の合成の間の物質の構造中への化学的組成物の組込み方法、およびその後の乾燥を伴うもしくは伴わない吸着体物質中への水性もしくは油性の溶液もしくは懸濁剤の吸収方法を挙げることができる。
【0146】
膣洗浄のための灌注製剤もしくは溶液は、製薬学的に許容できる液体担体と有効成分を組合わせることにより作成してよい。当該技術分野で公知であるとおり、灌注製剤は、被験体の膣の解剖学に適合された送達装置を使用して投与してよく、かつ、それ内に包装してよい。灌注製剤はさらに、限定されるものでないが抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0147】
本明細書で使用されるところの製薬学的組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的破壊(breaching)および組織の裂け目を通る製薬学的組成物の投与を特徴とするいかなる投与経路も包含する。非経口投与は、従って、限定されるものでないが、組成物の注入、外科的切開を通る組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷を通る組成物の適用などによる製薬学的組成物の投与を挙げることができる。とりわけ、非経口投与は、限定されるものでないが皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、槽内の注入、および腎透析注入技術を挙げることができることを企図している。
【0148】
非経口投与に適する製薬学的組成物の製剤は、滅菌水もしくは滅菌の等張の生理的食塩水のような製薬学的に許容できる担体と組合せられた有効成分を含んで成る。こうした製剤は、ボーラス投与もしくは継続的投与に適する形態で製造、包装もしくは販売してよい。注入可能な製剤は、アンプル、もしくは保存剤を含有する複数用量の容器中のような単位投与剤形で製造、包装もしくは販売してよい。非経口投与のための製剤は、限定されるものでないが、水性もしくは液体のベヒクル中の懸濁剤、溶液、乳剤、パスタ剤、および埋込可能な持続放出もしくは生物分解可能な製剤を挙げることができる。こうした製剤はさらに、限定されるものでないが懸濁化剤、安定剤もしくは分散剤を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。非経口投与のための製剤の一態様において、有効成分は、再構成される組成物の非経口投与前に適するベヒクル(例えば滅菌の発熱性物質を含まない水)との再構成のための水分を含まない(すなわち粉末もしくは顆粒)形態で提供される。
【0149】
該製薬学的組成物は、滅菌の注入可能な水性もしくは油性の懸濁剤もしくは溶液の形態で製造、包装もしくは販売してよい。この懸濁剤もしくは溶液は、既知技術に従って処方してよく、また、有効成分に加えて、本明細書に記述される分散剤、湿潤剤もしくは懸濁化剤のような付加的成分を含んでよい。こうした滅菌の注入可能な製剤は、例えば水もしくは1,3−ブタンジオールのような非毒性の非経口で許容できる希釈剤もしくは溶媒を使用して製造してよい。他の許容できる希釈剤および溶媒は、限定されるものでないが、リンゲル液、等張の塩化ナトリウム溶液、および合成のモノもしくはジグリセリドのような不揮発性油を挙げることができる。有用である他の非経口で投与可能な製剤は、微晶質の形態の、リポソーム製剤中に、もしくは生物分解可能なポリマー系の一成分として有効成分を含んで成るものを包含する。持続性放出もしくは埋込のための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、わずかに可溶性のポリマーもしくはわずかに可溶性の塩のような、製薬学的に許容できるポリマーもしくは疎水性物質を含んでよい。
【0150】
局所投与に適する製剤は、限定されるものでないが、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤もしくはパスタ剤のような水中油もしくは油中水型乳剤、および溶液もしくは懸濁剤のような、液体もしくは半液体製剤を挙げることができる。局所で投与可能な製剤は、例えば約1%から約10%(w/w)までの有効成分を含んでよいが、とは言え、有効成分の濃度は溶媒中の有効成分の溶解性の限度くらい高くてもよい。局所投与のための製剤はさらに、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上を含んでもよい。
【0151】
本発明の製薬学的組成物は、頬腔を介する肺投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、有効成分を含んで成りかつ約0.5から約7ナノメートルまで、および好ましくは約1から約6ナノメートルまでの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んでよい。こうした組成物は、便宜的に、粉末を分散させるためにそれに噴射剤の流れを向けてよい乾燥粉末リザーバを含んで成る装置を使用するか、または封止された溶液中の低沸点噴射剤中に溶解もしくは懸濁された有効成分を含んで成る装置のような自己噴射溶媒/粉末分注容器を使用する投与のための乾燥粉末の形態にある。好ましくは、こうした粉末は、粒子の重量の最低98%が0.5ナノメートル以上の直径を有しかつ粒子数の最低95%が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含んで成る。より好ましくは、粒子の重量の最低95%が1ナノメートル以上の直径を有し、かつ、粒子数の最低90%が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは、糖のような固体の微細な粉末希釈剤を包含し、そして、便宜的には単位投与剤形で提供される。
【0152】
低沸点噴射剤は、一般に、大気圧で65°Fより下の沸点を有する液体噴射剤を包含する。一般に、噴射剤は組成物の50ないし99.9%(w/w)を構成してよく、そして有効成分は組成物の0.1ないし20%(w/w)を構成してよい。噴射剤はさらに、液体の非イオン性もしくは固体の陰イオン性界面活性剤、または固体の希釈剤のような付加的成分(好ましくは有効成分を含んで成る粒子と同一の桁の粒子径を有する)を含んでもよい。
【0153】
肺送達のため処方される本発明の製薬学的組成物はまた、溶液もしくは懸濁剤の液滴の形態で有効成分を提供してもよい。こうした製剤は、有効成分を含んで成る、場合によっては滅菌の、水性もしくは希薄なアルコール溶液もしくは懸濁剤として製造、包装もしくは販売してよく、そして、便宜的には、いずれかの霧状化(nebulization)もしくは霧化(atomization)装置を使用して投与してよい。こうした製剤はさらに、限定されるものでないが、サッカリンナトリウムのような着香料、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、もしくはヒドロキシ安息香酸メチルのような保存剤を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。この投与経路により提供される液滴は、好ましくは約0.1から約200ナノメートルまでの範囲の平均直径を有する。
【0154】
肺送達に有用であるとして本明細書に記述される製剤はまた、本発明の製薬学的組成物の鼻内送達にも有用である。
【0155】
鼻内投与に適する別の製剤は、有効成分を含んで成りかつ約0.2から500マイクロメートルまでの平均粒子を有する粗い粉末である。こうした製剤は、鼻から吸入する薬用粉末が摂取される様式で、すなわち鼻孔近くに保持される粉末の容器から鼻通路を通る迅速吸入により投与される。
【0156】
鼻投与に適する製剤は、例えば約0.1%(w/w)くらい少なくからかつ約100%(w/w)くらい多くの有効成分を含んでよく、また、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。
【0157】
本発明の製薬学的組成物は、頬側投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、例えば、慣習的方法を使用して作成される錠剤もしくはトローチ剤(lozenge)の形態にあってよく、そして、例えば0.1ないし20%(w/w)の有効成分を含有してよく、残余は経口で溶解可能もしくは分解可能な組成物、および場合によっては本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上を含んで成る。あるいは、頬側投与に適する製剤は、有効成分を含んで成る粉末、またはエアゾル化もしくは霧化される溶液もしくは懸濁剤を含んでよい。こうした、粉末にされる、エアゾル化されるもしくはエアゾル化される製剤は、分散される場合に、好ましくは約0.1から約200ナノメートルまでの範囲の平均の粒子もしくは液滴径を有し、かつ、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。
【0158】
本発明の製薬学的組成物は、眼投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、例えば、水性もしくは油性の液体担体中に例えば有効成分の0.1〜1.0%(w/w)の溶液もしくは懸濁剤を包含する点眼薬の形態にあってよい。こうした点剤はさらに、緩衝剤、塩または本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上の他者を含んでよい。有用である、他の眼に投与可能な製剤は、微晶質の形態もしくはリポソーム製剤中に有効成分を含んで成るものを包含する。
【0159】
本明細書で使用されるところの「付加的成分」は、限定されるものでないが、以下、すなわち賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味料;着香料;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性のベヒクルおよび溶媒;油性のベヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤もしくは湿潤剤;乳化剤;緩和剤;緩衝剤;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;ならびに製薬学的に許容できるポリマーもしくは疎水性物質の1種もしくはそれ以上を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物中に包含してよい他の「付加的成分」は当該技術分野で既知であり、かつ、例えばGenaro編、1985、Remington’s Pharmaceutical Sciences、マック パブリッシング カンパニー(Mack Publishing Co.)、フィラデルフィア州イーストン(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述される。
【0160】
典型的には、動物、好ましくはヒトに投与してよい本発明の化合物の投薬量は、動物の体重1キログラムあたり約0.01mgから約100gまでの量の範囲にわたる。同時に、投与される正確な投薬量は、限定されるものでないが治療されている動物の型および疾患状態の型、動物の齢ならびに投与経路を挙げることができるいずれかの数の因子に依存して変動することができる。好ましくは、化合物の投薬量は、動物の体重1キログラムあたり約1mgから約100mgまで変動することができる。より好ましくは、投薬量は動物の体重1キログラムあたり約1μgから約1gまで変動することができる。化合物は1日数回くらい頻繁に動物に投与することができるか、あるいは、それは、1日1回、週1回、2週間ごとに1回、月1回のようにより少なく頻繁に、あるいは、数ヶ月ごとに1回またはなお年1回もしくはそれ未満のようななおより少なく頻繁に投与することができる。投与の頻度は当業者に容易に明らかであることができ、そして、限定されるものでないが、治療されている疾患の型および重症度、動物の型および齢などを挙げることができるいずれかの数の因子に依存することができる。
E.有用な化合物の同定方法
本発明は、炎症性疾患を治療する化合物もしくは介入の同定方法を包含する。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を評価することを、とりわけ、細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのレベルなどを評価することにより実施することができ、そしてその後、該レベルを、化合物が投与されない以外は同一の細胞もしくは組織中のレベルと比較することができることを認識するであろう。あるいは、化合物と接触された細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのレベルを、化合物の投与前の該細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそのmRNAのレベルと比較することができる。当業者は、こうした化合物が、炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するため、ならびにIL−13に媒介される炎症性疾患を治療かつ予防するため、ならびに/またはTh2炎症応答に関連しかつ/もしくはそれにより媒介される疾患を治療するための有用な潜在的治療薬である可能性があることを理解するであろう。
【0161】
当業者は、キチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物の同定方法が、化合物を細胞、組織もしくは動物に投与する方法を包含することをさらに認識するであろう。すなわち、当業者は、本開示で武装される場合に、本明細書の教示を使用して、キチナーゼ様分子を発現する細胞もしくは組織中でキチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物を同定することができることを認識するであろう。こうした細胞および組織は当該技術分野で公知であり、そして、変えられた発現のIL−13、IL−4および/もしくはキチナーゼ様分子を有するトランスジェニックの非ヒト動物由来の細胞および組織、あるいは炎症性疾患を含んで成るトランスジェニック動物、ならびに/またはそれ由来の細胞もしくは組織を包含することができる。
【0162】
加えて、キチナーゼ様分子の発現を含んで成る細胞もしくは組織を化合物と接触させることができ、そして、キチナーゼ様分子のレベルを評価しかつ化合物の投与前の細胞および/もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルと比較することができる。さらに、キチナーゼ様分子のレベルを、化合物と接触されないそれ以外は同一の細胞もしくは組織におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較することができる。
【0163】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、該細胞もしくは組織が内在性のキチナーゼ様分子を発現することができることを認識するであろうが、しかし、本発明はさらに、組織中で別の方法で発現されないキチナーゼ様分子を発現するよう改変されている細胞もしくは組織を包含し、例えば、目的のキチナーゼ様分子をコードする核酸を、それが典型的に発現されないかまたは該核酸が該細胞もしくは組織中に導入された後と異なるレベルで発現される細胞もしくは組織中に導入かつ発現させることができる。従って、本発明は、キチナーゼ様分子のレベルを化合物の存在もしくは非存在下で評価することができる、細胞、組織もしくは動物を含んで成る極めて多数のアッセイを包含する。従って、当業者は、本明細書に開示される方法、ならびにキチナーゼ様分子のレベルに影響を及ぼす化合物の能力を評価するための当該技術分野で公知の細胞培養および細胞繁殖技術を使用して、化合物を同定することが可能であろう。従って、本発明はさらに、細胞もしくは組織、ならびに動物中でキチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物の同定方法を包含する。
【0164】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含することを理解するであろう。本明細書に提供される教示で武装される当業者により理解されるであろうとおり、該方法は、細胞もしくは組織における炎症性疾患を治療する化合物を同定することを包含する。該方法は、哺乳動物中(その細胞もしくは組織中を包含する)、好ましくは気道におけるキチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を阻害する物質もしくは化合物を同定することを含んで成る。これは、本明細書の別の場所で論考されるとおり、該データが、キチナーゼ様分子の発現もしくは活性を阻害することが治療上の利益を提供し、それによりキチナーゼ様分子の増大された発現もしくは活性により媒介されるもしくはそれと関連する炎症性疾患を治療もしくは予防することを立証するためである。これは、本発明が、キチナーゼ様分子の増大されたレベルがこうした疾患と関連するもしくはそれを媒介すること、および、キチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン、限定されるものでないがAMCアーゼと特異的に結合する抗体を挙げることができるキチナーゼ様分子に特異的な抗体)を使用してキチナーゼ様分子(例えばYM、AMCアーゼなど)を阻害することが該疾患を予防かつ/もしくは治療することを初めて開示するためである。
【0165】
従って、当業者は、本発明の教示を一旦身につければ、キチナーゼ様分子を阻害する化合物が炎症性疾患の強力な潜在的な治療的もしくは予防的治療となり、その結果こうした化合物の同定がこうした疾患の潜在的治療薬を同定することを認識するであろう。
【0166】
該方法は、炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、ならびに、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを該化合物の投与の前および後に比較することを含んで成る。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、化合物の投与前のキチナーゼ様分子もしくはそのmRNAのレベルと比較しての該化合物の投与後の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのより低いレベルが、該化合物が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることを示すことを理解するであろう。
【0167】
これは、本明細書の別の場所で以前に述べられたとおり、動物においてキチナーゼ様分組成物を阻害することが、増大されたキチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性と関連する疾患、例えば高められた組織リモデリングおよび線維症を伴う炎症性疾患を治療もしくは予防することが発見されたためである。当業者はまた、本明細書に提供される開示を鑑み、その細胞もしくは組織を包含する哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを測定するためのアッセイが、当該技術分野で公知のもの、もしくは今後開発されるべきもの(その全部を、化合物の投与の前および後の哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)中のキチナーゼ様分子のレベルを評価するのに使用することができる)を包含することも認識するであろう。当業者はさらに、本明細書の別の場所に開示されるところのキチナーゼ様分子のレベルが、キチナーゼ様分子の活性のレベルおよびキチナーゼ様分子の発現のレベルを包含することを認識するであろう。さらに、本発明は、本方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0168】
本発明はさらに、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子およびそれにより炎症性疾患を阻害するのに有用な化合物の付加的な同定方法を包含する。より具体的には、該方法は、それに化合物が投与されない同一の哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)に比較して該化合物が投与される哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)におけるキチナーゼ様分子の発現、産生もしくは活性のレベルを評価することを含んで成る。加えて、該方法は、目的の化合物の投与の前および後の同一の哺乳動物またはその細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルを比較することを含んで成る。化合物が投与されない同一の哺乳動物、もしくは該化合物の投与前の同一の哺乳動物に比較した場合の、該化合物を投与された哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の発現、産生もしくは活性のより低いレベルは、該化合物がキチナーゼ様分子を阻害するのに有用であることの指標となり、それは従って、哺乳動物における炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するための有用な潜在的治療薬である。これは、本発明が、キチナーゼ様分子が炎症性疾患の病理学において明瞭な役割を演じていること、および、キチナーゼ様分子を阻害することが、炎症性疾患の技術に認識された動物モデルにおいて疾患を治療かつ/もしくは予防することを初めて開示するためである。明らかに、本明細書の別の場所で立証されるとおり、キチナーゼ様分子を阻害する化合物は、本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、炎症性疾患の治療および予防に有用な、重要な潜在的治療化合物である。
【0169】
本明細書の別の場所で詳述されるとおり、多くの炎症性疾患の病状は冒された細胞もしくは組織中のIL−13の発現により媒介される。さらに、本開示を装備された当業者により認識されるであろうとおり、IL−13に媒介される炎症性疾患の病状は、部分的に、冒された細胞、器官もしくは系におけるキチナーゼ様分子の発現による。上に詳述された方法は、その中のキチナーゼ様分子のレベルを本明細書に記述される方法を使用して容易に評価することができる哺乳動物を包含する。それにより、本発明は、炎症性疾患の治療もしくは予防に使用することができる化合物を同定するのに有用な哺乳動物を包含する。より具体的には、本発明は、気道においてIL−13を構成的にもしくは誘導可能にのいずれかで発現するトランスジェニック動物を包含する。本明細書に提供される開示に基づけば、こうしたトランスジェニック哺乳動物は、化合物を投与される場合に、該アッセイがキチナーゼ様分子の発現についてであるにしろキチナーゼ様分子の活性についてであるにしろ、キチナーゼ様分子のレベルについて容易にアッセイすることができる。また、化合物がキチナーゼ様分子を阻害するかどうかを評価するためのトランスジェニック非ヒト哺乳動物の使用に関する、炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するのに有用な化合物のこうした同定方法が、本発明に包含される。
II.キット
本発明は、本明細書の別の場所で開示されるとおりキチナーゼ様分子を阻害することが哺乳動物における炎症性疾患の治療もしくは予防方法を提供するために有用である、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子を阻害することに関する多様なキットを包含する。従って、一局面において、本発明は哺乳動物における炎症性疾患を治療するためのキットを包含する。該キットは有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成る。該キットはさらに、本明細書で提供される教示に従って使用されるべきアプリケーターおよびその使用のための説明資料を含んで成る。
【0170】
本発明は、キチナーゼ様分子を特異的に結合する抗体、ならびにこうした抗体をコードする核酸、キチナーゼ様分子をコードするがしかし転写に関してアンチセンスの向きの核酸に相補的な核酸、一本鎖のキチナーゼ様分子RNAを切断することが可能なリボザイムのような化合物、アプリケーター、および本発明の方法を実施するための該化合物の使用を記述する説明資料を含んで成る多様なキットを包含する。例示のキットを下述するとは言え、他の有用なキットの内容は本開示に照らして当業者に明らかであろう。これらのキットのそれぞれは本発明内に包含される。
【0171】
一局面において、本発明は、炎症性疾患およびIL−13により媒介される炎症性疾患を治療もしくは予防するためのキットを包含する。該キットは、本発明に開示される方法に従って使用される。簡潔には、該キットを使用して、キチナーゼ様分子を阻害する化合物、またはキチナーゼ様分子の発現を低下させるために転写に関して核酸がアンチセンスの向きにある、キチナーゼ様分子をコードする核酸に相補的な核酸、またはキチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体もしくは該抗体をコードする核酸と、哺乳動物を接触させてよく、ここで、キチナーゼ様分子の低下された発現、量もしくは活性が該哺乳動物における有益な効果を媒介する。さらに、該キットは、アプリケーター、および該キットの使用のための説明資料を含んで成る。これらの説明書は、単純に、本明細書に提供される例を例示する。
【0172】
該キットは製薬学的に許容できる担体を包含する。該組成物は本明細書の別の場所で示されるところの適切な量で提供される。さらに、投与経路および投与頻度は、本明細書の別の場所で以前に示されたとおりである。
実験実施例
本発明は今や、以下の実施例に関して記述される。これらの例は具体的説明のみの目的上提供され、また、本発明は、これらの実施例に制限されるといかなる方法でも解釈されるべきでなく、しかし、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいかなるかつ全部の変形も包含すると解釈されるべきである。
【0173】
本実施例で提示される実験で使用される材料および方法を今や記述する。
材料および方法
トランスジェニックマウスの生成:肺組織特異的IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスはCC10−IL−13構築物を使用して生成させた。Clara細胞10kDaタンパク質(CC10)プロモーター、マウスIL−13 cDNA、逆テトラサイクリントランスアクチベーター(rtTA)、ならびにヒト成長ホルモンのイントロンおよびポリアデニル化配列(hGH)を含んで成る構築物を、Zhuら(1999、J.Clin.Invest.103:779−788)に記述されるとおり調製した。標準的前核注入をHoganら(1986、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述されるとおり実施した。結果として生じるマウスをスクリーニングし、そしてサザンブロットおよびPCR双方を使用して始祖動物を同定した。始祖マウスはZhuら(1999、J.Clin.Invest.103:779−788)に記述されるとおりにC57BL/6背景で繁殖させた。
【0174】
外的に調節可能なトランスジェニックマウス系の生成は2構築物を含んだ(図5)。Zhengら(2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるところの第一の構築物(CC10−rtTA−hGH)は、CC10プロモーター、rtTAトランスアクチベーター、ならびにhGHのイントロン、核局在化およびポリアデニル化配列を含んだ。rtTA融合タンパク質は、突然変異されたtetオペレーター結合タンパク質(tet−OBP)およびヘルペスウイルスVP−16トランスアクチベーター(Gossenら、1995、Science 268:1766−1769)を含んだ。ポリマーのテトラサイクリンオペレーター(tet−O)、最小のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、IL−13 cDNA、ならびにhGHのイントロン、ポリアデニル化および核局在化シグナルを含まれた第二の構築物(tet−O−CMV−IL−13)は、RayらおよびZhengら(1997、J.Clin.Invest.100:2501−2511および2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるとおり調製した。トランスジェニックマウスはHoganら(1986、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述されるところの卵母細胞中への構築物の同時微小注入により調製した。マウスを、ZhuらおよびZhengら(1999、J.Clin.Invest.、103:779−788)に記述されるとおり尾生検DNAからのPCRおよびサザンブロットによりスクリーニングした。その後、4種の始祖マウスを、C57BL/6マウスを用いて繁殖させて、肺における誘導可能なIL−13発現を伴うトランスジェニックマウスを創製した。
【0175】
抗AMCアーゼ抗体の生成および投与
AMCアーゼに対するポリクローナル抗体は、当該技術分野で公知かつ例えばHarlowら(1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述される方法を使用して、AMCアーゼ由来のペプチド(ADKADGLYPVADDRNAFWQ;配列番号13)でウサギを免疫化することにより生成させた。
【0176】
野性型マウスをOVAに感作させ、そして、本明細書の別の場所に記述されるとおり連続する3日にOVAで攻撃した。感作されたマウスに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清を、第一のエアゾル曝露前日に開始して1日おきに腹腔内に投与した。
【0177】
組織学的分析:マウスを頚部脱臼により殺し、そして正中胸骨切開術を実施した。カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で右心を灌流した。心および肺を集団で取り出し、そして、肺を、中性緩衝10%ホルマリンを用いて25cm圧に対し固定した。その後、それらを10%ホルマリン中で一夜固定し、パラフィン中に埋込み、5μmで薄片にしそして染色した。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、マロリー3色、ジアスターゼを用いる断続的酸−シッフ(D−PAS)、pH2.5でのアルシアンブルー、PAS/アルシアンブルー、改変コンゴーレッドおよびパパニコロー染色を組織学的分析に使用した。
【0178】
ヒドロキシプロリンアッセイ
全肺コラーゲンをヒドロキシプロリン含量の分析により測定した。簡潔には、肺を指定された時間に収集し、そして組織断裂器(Tissure Tearor)(プロ−サイエンティフィック(PRO−Scientific)、コネチカット州モンロー)を用いて2mlのPBS、pH7.4中でホモジェナイズした。その後、各サンプル(両肺)の0.5ミリリットルを1mlの6N HCl中120℃で8時間消化した。5マイクロリットルのクエン酸/酢酸緩衝液(5%クエン酸、7.24%酢酸ナトリウム、3.4%水酸化ナトリウムおよび1.2%氷酢酸、pH6.0)および100μlのクロラミン−T溶液(282mgのクロラミン−T、2mlのn−プロパノール、2mlのH2Oおよび16mlのクエン酸/酢酸緩衝液)を5μlのサンプルに添加し、そしてサンプルを室温で20分間放置した。次に、100μlのエールリッヒ液(2.5gの4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(アルドリッチ(Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー)、9.3mlのn−プロパノールおよび3.9mlの70%過塩素酸(イーストマン コダック(Eastman Kodak)、ニューヨーク州ロチェスター)を各サンプルに添加し、そしてサンプルを65℃で15分間インキュベートした。サンプルを10分間冷却し、そしてベックマン(Beckman)DU 640分光測光計(カリフォルニア州フラートン)上で550nmで読み取った。0〜10μg/mlからのヒドロキシプロリン(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)濃度を使用して標準曲線を構築した。(Keaneら、J.Immunol.1999、163:5686−82。)
気管支肺胞洗浄(BAL)およびIL−13レベルの定量:マウスを頚部脱臼により殺し、そして正中胸骨切開術を実施した。気管を鈍的剥離により単離し、そして小内径管を挿入しかつ彼の気道中で固定した。3個の連続する容量の、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む.75mlのPBSを徐々に染み込ませ、そして穏やかに吸引しかつプールした。各BALサンプルを遠心分離しそして上清を−70℃で保存した。細胞数を血球計算器で評価し、そして細胞分化計数(cellular differential count)がサイトスピン調製物において行われた。IL−13レベルを、製造元の説明書(R&D システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス)に従って商業的キットを使用するELISAにより測定した。
【0179】
生理学的気道評価アッセイ:齢および性を合致された同腹子を、侵襲的および非侵襲的双方の生理学的評価技術により評価した。
【0180】
非侵襲的技術を使用して、未拘束の覚醒マウスにおいて基礎の気道抵抗性および気道過敏性(AHR)のレベルを測定した。すなわち、動物は、Hamelmannら(1997、Am.J.Resp.Crit.Care Med.156:766−775)およびKlineら(1998、J.Immunol.160:2555−2559)に記述されるところの全身体積変動記録法(ブクスコ エレクトロニクス インク(Buxco Electronics Inc.)、ニューヨーク州トロイ)を使用する気圧体積変動記録法を使用して評価した。簡潔には、マウスを、多様な圧変換器を使用するコンピュータにインターフェース接続された全身体積変動記録器中に入れた。一回呼吸量、呼吸数および強制停止(enhanced pause)(Penh)の測定を行った。気道抵抗性はPenh=[(Te/0.3Tr)−1]×[2Pef/3Pif]として表され、ここで、Penh=強制停止、Pe=呼気時間(秒)、Tr=弛緩時間(秒)、Pef=ピーク呼気流量(ml)、およびPif=ピーク吸気流量(ml/秒)。増大する用量のメタコリン(シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Company)、ミズーリ州セントルイス)を、ネブライザーを使用して120秒間投与し、そして、Penhを後に続く5分にわたって測定した。
【0181】
侵襲的な生理学的評価は、麻酔され(ペントバルビタール、90mg/kg)かつ造瘻された(18ゲージ血管カテーテル)齢および性を合致されたマウスで実施した。マウスの肺容量の変化を、直列の微小スイッチ圧変換器を使用してプレキシグラス(Plexiglass)チャンバー中の圧を測定することにより、体積変動記録的に測定した。流量は、体積変動記録器および動物の換気装置と直列に配置された第二の微小スイッチ圧変換器により測定されるところの、容量シグナルと経肺圧との間の差異により測定した。抵抗性(気管切開カテーテルによる抵抗が除外された)はAmdurとMead(1958、Am.J.Physiol.192:364−368)の方法を使用して測定した。肺抵抗性の基礎測定値は、容量0.4mlおよび1分あたり150回の呼吸速度でマウスを換気することにより得た。増大する濃度のPBS中メタコリンを、直径約1〜3μmの粒子を生じさせるデビルビス エアロソニック(Devilbiss Aerosonic)ネブライザー(モデル5000、デビルビス ヘルス ケア(Devilbiss Health Care)、フィラデルフィア州サマーセット)を使用する霧状化(20回の1ml呼吸)により投与した。肺抵抗性は正確に1分後に計算した。その後、メタコリン用量の段階的増大を、肺抵抗性が基礎レベルと比較して少なくとも2倍になるまで投与した。全動物は1から100mg/mlまでのメタコリンの連続的な3倍の増大を受領した。データは、肺抵抗性が直線回帰分析により計算されるところの基礎レベルの100%上になった用量であるPC100(刺激攻撃100)として表す。
【0182】
肺容量の評価:肺容量の評価はZhengら(2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるとおりに正確に実施した。
【0183】
ドキシサイクリン投与:全部の誘導可能なトランスジェニックマウスを、トランスジーン活性化が望ましくなるまで通常水で維持した。ドキシサイクリン(dox)は飲用水中で投与した(0.5mg/ml)。doxを含有する水瓶をアルミニウムホイルで包み、光に誘発されるdox分解を予防した。
【0184】
mRNA分析:mRNAレベルはノーザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して評価した。全細胞RNAを、製造元の説明書に従ってトライゾール[TRIZOL]TM(インヴィトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバード)を使用してマウス組織から抽出した。YM(YM−1順プライマー:TGGAATTGGTGCCCCTACAA;配列番号1、YM−1逆プライマー:AACTTGCACTGTGTATATTG;配列番号2、YM−2順プライマー:AACCTCAGACAT TCATTA;配列番号3、YM−2逆プライマー:TGGTCCTTCCAGTAGGTAATA;配列番号4、YM−3順プライマー:TATAAATCTCCATTTGACAC;配列番号5、YM−3逆プライマー:CCTAATTTATTGTCCTTGAC;配列番号6)およびAMCアーゼ(AMCアーゼ順プライマー:ATCTGCAGTGGACACACCTTCATCCTGA;配列番号7、AMCアーゼ逆プライマー:ATGAATTCAACAAGCCCTGCTTGACAAT;配列番号8)に特異的なプライマーをRT−PCRで使用して、これらの転写物を増幅かつ検出した。逆転写およびPCRは、製造元の説明書に従ってプロメガ(Promega)(ウィスコンシン州マディソン)からのアクセス(Access)RT−PCRキットを使用して実施した。
【0185】
マウス肺におけるインサイチューハイブリダイゼーション:インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、トランスジェニック動物におけるYMおよびAMCアーゼ双方の発現の位置を突き止めた。肺組織をホルムアルデヒド中で固定しかつパラフィン中に処理した。5ミクロンの切片を切断し、脱パラフィン化しそしてプロテイナーゼK(20μg/ml、37℃、20分)で処理した。その後、組織を0.1Mトリエチルノールアミン/0.25%無水酢酸(pH8)で室温で10分間処理し、そしてPBSですすいだ。YM(YMアンチセンスプローブ:TCCTCGAGACCCAGGGTACTGC;配列番号9、YMセンスプローブ:TATCTAGAGGATCTTCCTACCAGC;配列番号10)およびAMCアーゼ(AMCアーゼアンチセンスプローブ:TCGCTCGAGAACAAGCCCTGCTTGACAAT;配列番号11、AMCアーゼセンスプローブ:GCTCTAGATGGACACACCTTCATCCTGA;配列番号12)のアンチセンスおよびセンスプローブは、マウスAMCアーゼ cDNAもしくはYM cDNAのフラグメントを、マルチクローニング部位に隣接するT3およびT7プライマー配列をもつベクターpBS II KS(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホヤ)中にクローン化することにより生成させた。XbaIおよびXhoI制限酵素部位が組み込まれたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、IL−13トランスジーン(+)マウスの全肺RNAからDNAフラグメントを増幅した。RT−PCR産物をXbaIおよびXhoIで消化し、そしてベクターpBS II KSにクローン化した。センスおよびアンチセンスRNAプローブを生成させ、ジゴキシゲニンRNA標識キット(ロシュ(Roche)、インジアナ州インジアナポリス)で標識し、65℃で変性させ、そして商業的に入手可能なハイブリダイゼーション緩衝液(アンビオン(Ambion)、テキサス州オースチン)に6ng/μlで添加し、そしてハイブリダイゼーション混合物を組織とともに52℃で一夜インキュベートした。その後、組織を4×SSCで室温で5分間2回、2×SSCで37℃で10分間2回洗浄し、そしてRNアーゼA(10μg/ml)とともに37℃で45分間インキュベートした。この後、2×SSC中での室温で2回の10分洗浄、および0.2×SSC中での50℃で3回の20分洗浄が続いた。プローブを、製造元により記述されたとおり、アルカリホスファターゼで標識されたジゴキシゲニンに対するヒツジ抗体(Ab)(ロシュ(Roche))、次いで塩化4−ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートとともにの一夜インキュベーションにより検出した。
【0186】
結晶の精製および分析:結晶は、Guoら(2000、J.Biol.Chem.275:8032−8037)により記述されたところのフィコール勾配洗浄手順を使用して精製した。簡潔には、IL−13トランスジェニックマウスからのBAL液を、1.119グラム/mlの密度をもつヒストパーク(Histopaque)−1119(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)の上に1:5の比で負荷し、そして250×gで4℃で10分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットをPBSに再懸濁しかつ上のとおりもう2回遠心分離した。生じるペレットをSDS−PAGEサンプル緩衝液に溶解しそして電気泳動前に10分間沸騰させた。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、トリス−グリシン4−20%勾配ゲル(バイオラッド(BioRad)、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して還元条件下で実施した。タンパク質のバンドをクマシーブルーで染色することにより可視化し、小刀で切り出し、そして質量分析前にゲル中トリプシン消化にかけた。約40kDaのクマシーブルー染色されたタンパク質バンドを切り出し、そして、50mM重炭酸アンモニウム、50%アセトニトリルで30分間洗浄し、次いで10mM重炭酸アンモニウム、50%アセトニトリルで追加の30分間洗浄した。洗浄した後にゲル片を乾燥し、そして、15μlの10mM重炭酸アンモニウム中の0.1μgの修飾トリプシン(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)で再水和した。消化を37℃で24時間行った。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)を、マイクロマス トフスペック(Micromass TofSpec)SE質量分析計(マイクロマス(Micromass)、マサチューセッツ州ビバリー)をリフレクトロンモードで使用して、1.0μl(<5%)の消化物で実施した。MALDI−MS前に、サンプルを1.0μlのα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸マトリックス溶液(0.05%トリフルオロ酢酸、50%アセトニトリル中4.5mg/ml)および1μlの内部較正体(calibrant)と混合し、そしてその後新たな単回使用標的にスポットした。その後、サンプルを室温で風乾させた。使用された内部較正体は50フェムトモルのブラジキニン(モノアイソトピックのM+Hは1060.57である)および125fmolのACTH Clip 18−39(モノアイソトピックのM+Hは2465.20である)であった。合計92種のペプチド質量(モノアイソトピック)を、ペプチド サーチ(Peptide Search)(EMBLの非冗長データベース)およびプロファウンド(ProFound)(NCBIの非冗長データベースについてのロックフェラー大学の)を使用するペプチド質量データベース検索に提出した。いずれかのアルゴリズムを使用することにより、92種のペプチド質量のうち24種が、59%の最小適用範囲でマウスキチナーゼ3−様3タンパク質(YM−1およびECFL−前駆体ともまた呼ばれる)に合致した。初回通過の合致されないペプチド質量を使用するその後の検索はいかなる意味のある合致も生じなかった。
【0187】
キチナーゼ活性アッセイ:以前に記述されたとおり収集されたBAL液をキチナーゼ活性アッセイで使用した。BAL中のキチナーゼ活性は蛍光アッセイを使用して評価した。蛍光発生性の4−メチルウンベリフェリルβ−D−N,N’−ジアセチルキトビオシドを基質として使用した。アッセイは以下のとおり実施した。BALサンプルをクエン酸/リン酸緩衝液(0.1M/0.2M)、pH5.2中0.02Mの濃度の基質とともにインキュベートした。37℃で15分後に、1mlの0.3Mグリシン/NaOH緩衝液、pH10.6を添加することにより反応を停止し、そして、蛍光の4−メチルウンベリフェロンを、350nmの励起および発光450nmで蛍光計を用いて測定した。標準曲線は4−メチルウンベリフェロン(シグマ(Sigma))を使用して生成させた。霊菌(Serratia marcescens)からのキチナーゼ抽出物を陽性対照として使用した(シグマ(Sigma))。
【0188】
空気アレルゲン卵アルブミン(OVA)感作および攻撃試験:OVA感作および攻撃は、Yangら(1998、J.Exp.Med.188:1739−1750)により以前に記述されたプロトコルの変法を使用して達成した。簡潔には、野性型マウスが、ミョウバン(レソープター(Resorptar);インダーゲン(Indergen)、ニューヨーク州ニューヨーク)と複合体形成された20μgのトリOVA(シグマ(Sigma))を含有する腹腔内(i.p.)注入を受領した。この過程を5日後に反復した。さらに7日後に、動物は、エンドトキシンを含まないPBS中のOVA(1% w/v)でのエアゾル攻撃を受領したか、もしくは、動物はエンドトキシンを含まないPBS単独を受領した。エアゾル攻撃は、閉鎖された27×20×10cmのプラスチック製エアゾルチャンバー中で達成し、その中にマウスを40分間入れた。エアゾルは、オムロン(Omron)NE−U07超音波ネブライザー(オムロン ヘルスケア(Omron Healthcare)、イリノイ州バーノンヒルズ)を使用して生成させた。マウスをOVA攻撃の24時間、48時間および7日後に殺した。
【0189】
YMおよびAMCアーゼの相対的誘導:12,200種のオリゴヌクレオチドを含んで成るアフィメトリクス(Affymetrix)のマウスジーン チップ(GENE CHIP)アレイ(カリフォルニア州サンタクララ)を使用して、マウス肺中のIL−13に誘導される遺伝子発現を分析した。IL−13を発現する、doxで誘導可能なおよび対照のマウスにおける遺伝子発現のレベルを分析した。発現レベルはハウスキーピング遺伝子(例えばアクチン、GAPDH、ヘキソキナーゼなど)を使用して標準化し、そして、刺激指数を、トランスジーン(−)動物における標的比によりトランスジーン(+)動物における標的比を割ることにより計算した。類似の遺伝子発現研究を、IL−13を構成的に発現するマウスおよび対照で実施した。ジーン チップ(GENE CHIP)アッセイは以下のとおり実施した。全RNAを、トライゾール(Trizol)試薬(ライフ テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲイタースバーグ)を用いて、IL−13トランスジェニックマウスおよび同腹子の陰性対照の肺から単離した。アフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GENECHIP)分析のためのサンプルを調製するために、cDNA合成のためのスーパースクリプト チョイス システム(Superscript Choice System for cDNA Synthesis)(ライフ テクノロジーズ(Life Technologies))とともにの修飾されたオリゴdTプライマーおよび5’T7 RNAポリメラーゼプロモーターのオリゴプライマーの使用により、15μgの全RNAからcDNAを生成させた。フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿後に、cDNA反応の半分(0.5〜1.0μg)を、製造元のプロトコルに従うことによりビオチニル化UTPおよびCTP(バイオアレイ ハイ イールド(BioArray High Yield)キット、エンゾ バイオケム(Enzo Biochem)、ニューヨーク州ファーミングデール)を用いるインビトロ転写反応の鋳型として使用した。生じるcRNAをアフィニティー樹脂カラム(RNイージー(RNeasy)、キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)上で精製し、そして紫外(UV)吸光度により定量した。各反応について、15μgのビオチニル化cRNAを、40mMトリス−酢酸、pH8.1、1,000mM酢酸カリウムおよび30mM酢酸マグネシウム中94℃で35分間それらをインキュベートすることにより、50ヌクレオチドの平均の大きさに無作為に断片化した。断片化されたcRNAを2個のアリコートに分割し、それらをそれぞれ、製造元のプロトコル(アフィメトリクス(Affymetrix)、カリフォルニア州サンタクララ)に従ったMul 1K アフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GEGECHIP)へのハイブリダイゼーションに使用し、二重のデータの組を全サンプルについて生成させた。各標的アレイを洗浄しかつ走査した(ヒューレット−パッカード(Hewlett−Packard)、ジーンアレイ(GeneArray)スキャナー G2500A)。データをアフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GENECHIP)ソフトウェアアルゴリズムで分析して、値を正規化した後の「平均差異」および/もしくは差異の程度を生成させた。野性型C57BL/6同腹子対照から得られた値を基礎として使用し、そして、IL−13トランスジェニックマウスからの値を相対的増大倍数として表した。
【0190】
リボヌクレアーゼ保護アッセイ:リボヌクレアーゼ保護アッセイはmCK−1鋳型キット(ファーミンゲン(PharMingen)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して実施した。リボヌクレアーゼ保護アッセイは、例えばSambrookら(1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク)およびAusubelら、1997(Current Protocols in Molecular Biology、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク)に記述されるとおり実施した。
【0191】
アロサミジン投与:アロサミジン(イーライ リリー アンド カンパニー(Eli Lilly and Co.)、インジアナ州グリーンフィールド、およびインダストリアル リサーチ リミテッド(Industrial Research Limited)、ニュージーランド・ローワーハット)を、誘導可能なIL−13を過剰発現するマウスおよびOVAに曝露された野性型マウスに投与した。マウスに、0.1mg/kgないし10mg/kgのアロサミジンi.p.もしくはベヒクル対照(PBS)を与えた。その後、動物を殺し、そして、BAL液分析、組織学的および形態計測学的分析、ならびに肺容量の評価を、本明細書の別の場所に記述されるとおり実施した。
【0192】
本実施例に提示される実験の結果を今や記述する。
【0193】
IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウス:IL−13を構成的に発現するトランスジーン(+)マウスは、BAL液中の高レベルのIL−13(2.1ng/mlまで)および肺における検出可能なIL−13 mRNAを表した。IL−13 mRNAはトランスジェニックマウスの皮膚および他の内臓器官で検出されることができず、IL−13の肺特異的発現を示した。トランスジーン(−)マウスは、BAL液もしくは肺中で検出可能なレベルのIL−13もしくはIL−13 mRNAを立証しなかった。
【0194】
トランスジーン(+)マウスの組織学的分析は複数の喘息様の特徴を立証した。これらの特徴は、小および大気道周囲ならびに隣接する実質中の好酸球、リンパ球およびマクロファージ豊富な炎症応答を包含する。この応答は、若齢動物もしくは低レベルのBAL IL−13を伴う動物でより軽度であり、そして、より高齢の動物もしくはIL−13のより高いBALレベルを伴うものでより顕著であった。上皮細胞肥大は、誘導気管支および小気道で同様に明らかであった(図2)。
【0195】
肺特異的IL−13の構成的発現は、COPD様肺胞拡大および壁破裂、ならびにマッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化もまたもたらした。さらに、長く細い針様の結晶が、トランスジーン(+)動物のマクロファージ、肺胞およびときに気道でみられた。
【0196】
粘液化生および高められたムチン遺伝子発現は喘息およびCOPD双方の特徴であるため、気道粘液に対する構成的IL−13発現の影響が断言された。PASおよびアルシアンブルー双方の染色は、粘液の蓄積がトランスジーン(+)マウスの気道で顕著であったが、しかしトランスジーン(−)の同腹子でそうでなかったことを立証した(図3)。ムチン遺伝子MUC5AC、MUC2およびMUC4のmRNAの印象的な増大もまた、トランスジーン(+)マウスで明らかであった。
【0197】
上皮下線維症を伴う気道のリモデリングは喘息の気道の十分に実証された特徴であり、そして、混乱した修復および実質線維症はしばしば肺気腫の局面として示される。炎症性疾患のこれらの特徴は増大されたコラーゲン沈着を伴う。従って、マッソンの3色染色、シリウスレッドおよびヒドロキシプロリンアッセイを使用して、トランスジーン(+)および(−)動物の気道におけるコラーゲン沈着を評価した。
【0198】
少量のコラーゲンがトランスジーン(−)動物の気道中および周辺でみられ、また、ゆるく圧縮されたコラーゲンが気管支血管束中で検出された。著しく対照的に、高められたコラーゲン沈着が、ヒト気道の障害における知見と同様に、トランスジーン(+)動物の小および大気道の上皮下領域および外膜でみられた(図4)。瘢痕形成および実質線維症がより高齢の動物で観察され、また、これらの特徴は齢とともに増大した。増大したレベルのヒドロキシプロリンはIL−13産生後約4〜6週で検出されることができ、そして、3月齢の動物は、トランスジーン(−)動物より有意に(4.1倍、p<0.001)より高いヒドロキシプロリンレベルを有した。
【0199】
喘息およびCOPDの患者双方が気道閉塞およびAHR(メタコリンのような非特異的アゴニストに対する誇張された気管支攣縮応答)を立証する。従って、これらの気道変化がIL−13トランスジェニック動物モデルで存在したかどうかを決定するための研究に着手した。基礎の気道抵抗性はトランスジーン(+)動物で軽度に上昇した。加えて、AHRもまた、侵襲的および非侵襲的評価の方法論を使用して測定されるとおり、メタコリン攻撃後にみられた。これらのデータは、喘息およびCOPD様の生理学的変化がIL−13トランスジェニックモデルに存在することを示す。
【0200】
誘導可能なトランスジェニックマウス:肺特異的な誘導可能なトランスジェニック動物系は、マウス肺におけるIL−13発現の一時的制御を可能にする。これは、喘息およびCOPDでみられるIL−13発現の満ち欠けパターンを模倣し、そして、他のトランスジェニックモデルでみられる子宮もしくは新生児における遺伝子発現により引き起こされる異常を回避する。
【0201】
誘導可能なトランスジェニックマウスを1月齢まで通常(doxを含まない)水で飼育した。IL−13は、doxもしくは通常水を摂取するトランスジーン(−)動物からのBAL液中で検出されなかった。doxの非存在下で、≦75pg/mlのBAL IL−13のレベルがトランスジーン(+)動物で見出された。dox投与の24時間以内に、トランスジーン(+)動物は増大されたBAL IL−13レベルを立証し、そして、約0.5から1.5ng/mlまでの範囲にわたる定常状態レベルがdox投与後96時間以内に観察された。BALのIL−13レベルはdox投与を停止した後96時間以内に背景レベルに戻った。IL−13 mRNAはトランスジーン(+)動物の肺組織中でのみ検出可能であった。
【0202】
H&Eおよび3色染色は、通常水もしくはdox含有水を与えられたトランスジーン(−)マウスから得られた肺がいかなる組織学的異常も立証せず、また、それらの肺は通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスから得られた肺と識別できなかったことを立証した。しかしながら、通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスは、D−PAS染色後に軽度の粘液化生を示した。
【0203】
逆に、dox水を与えられたトランスジーン(+)マウスは、著しい炎症、粘液および構造変化を表した。dox投与後約7日で、BAL液中の炎症は顕著であった。この時点で、dox水を与えられたトランスジーン(+)マウスにおいて、BAL液からの細胞回収の7.5倍の増大およびBAL液の好酸球の割合の有意の増大(63%、p<0.001)が存在した。リンパ球およびマクロファージ回収もまたこれらのマウスで有意に増大した(p<0.01)。また、単核、リンパ球および好酸球浸潤が、粘液化生の増大がそうであったように、気道および気管支周囲構造において顕著であった。加えて、MUC−5AC、MUC−2およびMUC−4 mRNAの実質的増大が示された。doxの慢性投与は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスで観察されたものに非常に類似の上皮下線維症、肺胞拡大および結晶沈着をもたらした。
【0204】
COPDにおける肺気腫は、肺の末端気管支に対して遠位の空隙の異常な拡大として病理学的に定義される(SeniorとShapiro、1998、Fishman’s Pulmonary Diseases and Disorders、Vol.1、マグロウ−ヒル(McGraw−Hill)、ニューヨーク)。以前に示されたとおり、IL−13を構成的に発現するマウスは拡大された肺胞を表した。この拡大が、欠陥のある発達によったかもしくは正常に形成された肺における肺組織の破壊によったかを決定するために、誘導可能なトランスジェニック(+)マウスに、完全な肺の発達が完了した後にのみdox水を与えた。dox投与後、IL−13に誘導される肺胞拡大が、組織学的および形態計測学的双方の技術を使用して明白であった。doxの非存在下では、正常な肺胞がトランスジーン(−)および(+)双方の動物でみられた(図6)。
【0205】
IL−13を過剰発現するマウスにおけるYM結晶沈着:以前に示されたとおり、結晶が、誘導可能なおよび構成的双方のIL−13トランスジーンマウスでみられた。結晶の存在は用量および時間双方に依存性であった。構成的IL−13マウスにおいて、結晶は評価された最も早期の時点でみることができ(1ヶ月)、また、印象的な結晶蓄積が3月齢の動物で明白であった。同様に、誘導可能なIL−13マウスは、dox投与後ほぼ同一の時間間隔で気道の多様な組織および細胞中に結晶を表した。若齢マウスにおいて、結晶は、マクロファージ、実質および肺胞で最も普遍的に、そして遠位気道でより少なく普遍的にみられた。より高齢の動物では、結晶性沈着物で完全に満たされた多くの肺胞を包含する、かなりの肺胞および実質の結晶沈着が示された。結晶は多数の切子面をもち、しばしば針状であり、そして長さおよそ20〜120μmであった(図7)。
【0206】
結晶を、本明細書の別の場所に記述されるところのフィコール密度勾配法を使用して、構成的IL−13トランスジェニック(+)マウスからのBAL液から精製した。これらの結晶をアッセイし、そしてYMタンパク質から構成されることを決定した。他のペプチドはサンプル中で見出されず、かつ、YMタンパク質はトランスジーン(−)動物で検出されず、IL−13トランスジーン(+)動物中の結晶がYMタンパク質を含んで成ることを示した。
【0207】
IL−13を過剰発現するマウスにおけるYM遺伝子発現:RT−PCRを本明細書に記述されるとおり実施して、YMタンパク質発現がIL−13により誘導されたかどうかを決定した。トランスジーン(−)動物からの全肺RNAにおいて、YM mRNAはアッセイの感度下限もしくはそれ近くであった(図9)。全く対照的に、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスにおいて、YM mRNAは評価された全時点で検出された(1ないし3月齢のマウス)。doxを受領しなかった誘導可能なトランスジーン(+)マウスは低レベルのYM mRNAを立証し、軽度に「漏れる」系を示した。doxの投与に際して、YM mRNAの著しい増大がdox導入後約48時間で観察され、また、高レベルのYM mRNA発現が、doxを投与された3ヶ月の期間を通じて継続した(図10)。
【0208】
インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、IL−13トランスジェニック動物におけるYMタンパク質産生の部位の位置を突き止めた。YM mRNAはトランスジーン(−)マウスで検出することができなかったが、しかし、印象的なレベルが、アンチセンスプローブを使用してトランスジーン(+)動物で検出された。トランスジーン(+)動物において、YMはマクロファージおよび気道上皮細胞に集中的に限局した。センスオリゴヌクレオチドを使用して同一組織をプロービングした場合にYM染色が検出されず(図11)、これらの結果の特異性を確認したことに注目すべきである。
【0209】
YM mRNA発現のサイトカイン誘導がIL−13特異的であったかどうかを確かめるために、多様な他のトランスジェニックマウスからの全肺RNAを使用してRT−PCR分析に着手した。IL−4トランスジェニックマウスは、IL−13トランスジェニックマウスと同様、それらの肺において誇張されたレベルのYMを発現した。これは、本明細書の別の場所で以前に述べられたとおり、IL−4がヒト気道の障害における別の重要なサイトカインであることを示す証拠と一致する。IL−6、IL−11、血管上皮増殖因子165(VEGF)およびIL−10を構成的に発現するトランスジェニックマウスは、IL−13トランスジーン(−)の同腹子対照のものに匹敵するYM mRNAレベルを立証し、Th2に支配される呼吸器炎症においてある役割を演じると仮定されるサイトカイン、すなわちIL−13およびIL−4がまたYM発現の強力かつ特異的な誘導物質でもあることをさらに確認した。
【0210】
IL−13を過剰発現するマウスからのBAL液中のキチナーゼ活性:IL−13を構成的に発現するトランスジーン(+)および(−)マウスからのBAL液中のキチナーゼ活性を、本明細書の別の場所に記述される方法を使用してアッセイした。トランスジーン(−)マウスから得られたBAL液は、≦75単位/mlのキチナーゼ活性のレベルを有した。対照的に、トランスジーン(+)マウスにおけるキチナーゼ活性の印象的な増大が検出された(図12)。すなわち、キチナーゼ活性は1月齢のトランスジーン(+)動物で検出され、そして動物が加齢する際に増大し続けた。同様に、キチナーゼ活性は、dox投与後約2日で、誘導可能なトランスジーン(+)動物で検出され、そしてこの活性もまた長い間増大した。IL−4を過剰発現するトランスジェニックマウスもまた、増大されたレベルのキチナーゼ活性を立証した。しかしながら、IL−6、IL−11、VEGFおよびIL−10トランスジーン(+)動物からのBAL液は基礎レベルのキチナーゼ活性を有した。これらのデータは、増大されたキチナーゼ活性が肺組織における増大されたIL−13および/もしくはIL−4発現ならびに増大されたYMタンパク質発現および結晶沈着と相関することを示す。
【0211】
IL−13トランスジェニックマウスにおけるAMCアーゼ発現:矛盾する報告が、YMがキチナーゼ活性を有するかももしくは有しないかもしれないことを示している。例えば、精製されたおよび組換え双方のYMは多数のアッセイでキチナーゼ活性を立証することに失敗しており、それがキチナーゼでないがしかしむしろキチナーゼ様分子であることを示した(Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506)。IL−13トランスジーン(+)マウスからのBAL液は検出可能なキチナーゼ活性を立証し、キチナーゼファミリータンパク質がこれらのマウスのBAL液中に存在するかもしれないことを示す。今日まで、AMCアーゼは真のキチナーゼ活性を立証するマウス系で同定された唯一の酵素である。AMCアーゼ発現がIL−13トランスジーン(+)マウス肺で増強されたかどうかを決定するために、上述されたとおりにAMCアーゼに特異的なRT−PCRプライマーを使用した。トランスジーン(−)の同腹子対照におけるmRNAレベルは使用されたアッセイの検出レベル近くもしくはより下であった。逆に、AMCアーゼのmRNAレベルの印象的な増大が、構成的および誘導可能双方のIL−13トランスジェニックモデルで見出された。それぞれ、前者において、それは1月ないし3月齢の動物で、後者において、dox投与後約7日で示された。YMタンパク質発現と同様に、AMCアーゼ発現は、それが本明細書で評価された他のトランスジェニック動物(IL−10、VEGF、IL−6およびIL−11)からの肺で検出されなかったとおり、IL−13トランスジェニック動物に特異的であった。
【0212】
インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、IL−13トランスジェニックマウスにおけるAMCアーゼ産生の位置を突き止めた。AMCアーゼのmRNAの顕著な蓄積は上皮細胞で、そしてより小さい程度でマクロファージで検出された。対照的に、AMCアーゼのmRNAはトランスジーン(−)マウスでは検出されなかった(図14)。
【0213】
OVAに誘導されるマウス喘息モデルにおけるキチナーゼ遺伝子発現:YMタンパク質および/もしくはAMCアーゼが標準的なThに駆動されるマウス喘息モデルで誘導されたかどうかを確かめるための研究を実施した。この目的のため、OVA感作された野性型マウスのBAL液のキチナーゼ活性および肺におけるこれら2種の遺伝子の発現を検討した。OVA感作されたがしかしOVA攻撃を受領しなかった動物において、mRNAレベルおよびBAL液のキチナーゼ活性はアッセイの検出レベルの限界近くであった。しかしながら、OVA攻撃後、YMおよびAMCアーゼのmRNAレベルは容易に検出され、かつ、抗原攻撃後7日間持続した。BAL液のキチナーゼ活性は相応して同様に増大した(図15)。
【0214】
YMおよびAMCアーゼの相対的誘導:12,200種のオリゴヌクレオチドを含んで成るアフィメトリクス(Affymetrix)ジーン チップ(GENE CHIP)を使用して、1から2月齢までdoxを与えられた誘導可能なトランスジェニック動物におけるIL−13に誘導される遺伝子発現の変化を評価し、そしてトランスジーン(−)の同腹子対照と比較した。ジーン チップ(GENE CHIP)分析は、200を超える遺伝子が最低2.5倍だけ増大し、また、およそ140種の遺伝子がdox投与によりダウンレギュレートされたことを示した。重要なことには、dox投与後最も顕著に誘導された遺伝子はYMであった(64.1±0.5の刺激指数)。AMCアーゼは該チップ上に存在しなかったが、しかし、別のキチナーゼファミリー遺伝子BRP39は、該アレイ中で12番目に最も顕著に誘導された遺伝子であった(7.1±0.5の刺激指数)。dox投与はトランスジーン(−)動物の遺伝子発現の有意の変化を引き起こさなかったことに注目すべきである。
【0215】
AMCアーゼがジーン チップ(GENE CHIP)上に存在しなかったため、RT−PCR、ノーザンブロット分析およびリボヌクレアーゼ保護アッセイを包含する他の方法を使用した。全部が、AMCアーゼがIL−13の重要な下流の標的であることを示した。これは、AMCアーゼが、IL−13に誘発される呼吸器炎症の病因の経過の間に誘導されかつそれに潜在的に関与することをさらに立証する。
【0216】
マウス喘息モデルにおけるアロサミジンの効果:アロサミジンはキチナーゼの既知の強力かつ選択的な阻害剤である。野性型マウスをOVAに感作させ、そして多数の日後にOVAで攻撃した。OVA攻撃の1日前にマウスを2群に無作為化し、そしてアロサミジンもしくはベヒクル対照のi.p.投与を連日受領した。ヒト喘息の症状と同様に、OVA感作および攻撃モデルは、顕著な粘液化生および杯細胞過形成を伴う活発な好酸球およびリンパ球豊富な炎症応答をもたらす。アロサミジン投与は、OVA攻撃された肺において全細胞、好酸球およびリンパ球の流入の用量依存性の阻害をもたらした(図16)。該阻害効果は試験された最高用量(10mg/kg)で最も顕著であり、そして最低(1mg/kg)でなお顕著であった。従って、アロサミジンは、ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルにおいて抗原誘発性の炎症を阻害した。
【0217】
同様に、6週齢のトランスジーン(+)IL−13マウスを、アロサミジン(1mg/kg)もしくはベヒクル対照のi.p.投与を14日連日受領するように無作為化した。その後、動物を殺しかつIL−13の表現型を評価した。ベヒクル対照を受領したトランスジーン(+)マウスに比較して、アロサミジン注入を受領したトランスジーン(+)マウスは、著しく低下されたBAL液細胞回収、低下された組織炎症、ならびにBALおよび組織の好酸球およびリンパ球の印象的な減少を表した。形態計測学的、組織学的および肺容量評価分析は、アロサミジン処理された動物が同腹子対照よりも低下された肺容量およびより小さい肺胞を有したことを示し、アロサミジンがIL−13で誘発される炎症および肺のリモデリング双方の強力な阻害剤であることを示した。これらの実験において、アロサミジン投与は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスの誕生6週間後、すなわち喘息様の表現型が開始した後に開始したことに注目することが重要である。従って、これらのマウスおよびCOPDにおけるアロサミジン処理は、病理学的応答が開始した後でさえ、肺の病状の進行を低下させた。これは、呼吸器の炎症性疾患が既に診断されかつ何らかの程度まで進行した後に製薬学的組成物が投与される、ヒトにおける治療状況に類似である。これらの結果は、キチナーゼ様分子の阻害剤が、慢性の病状が確立した後でさえ疾患を成功裏に治療することができることを示す。
【0218】
マウス喘息モデルにおける抗AMCアーゼ抗体の効果
野性型マウスをOVAに感作させ、そして多数の日後にOVAで攻撃した。OVA攻撃の1日前にマウスを2群に無作為化し、そして抗AMCアーゼ抗体もしくは血清対照の連日投与を受領した。ヒト喘息の症状と同様に、OVA感作および攻撃モデルは、顕著な粘液化生および杯細胞過形成を伴う活発な好酸球およびリンパ球豊富な炎症応答をもたらす。抗AMCアーゼ抗体投与は、これらのOVA攻撃された肺のBAL液中への全細胞および好酸球の流入の有意の阻害をもたらした(図18)。全および好酸球性の炎症の類似の低下が、OVA感作かつ攻撃された長組織で示された。従って、抗AMCアーゼ抗体は、ヒト喘息の技術認識されるマウスモデルにおいて抗原誘発性の炎症を阻害した。
【0219】
ヒト肺組織におけるAMCアーゼ発現
ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルにおける観察結果を、インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、剖検で得られたヒト肺組織におけるAMCアーゼの発現を評価することまで拡大適用した。簡潔には、マウスMACアーゼおよびYm−1のmRNAの検出のためのインサイチューハイブリダイゼーションに関して本明細書の別の場所に以前に記述されたプロトコルに同様に、正常および喘息の肺組織を生検により得、そしてホルムアルデヒド中で固定しかつパラフィン中に処理した。5ミクロンの切片を切断し、脱パラフィン化しそしてプロテイナーゼK(20μg/ml、37℃、20分)で処理した。その後、組織を0.1Mトリエチルノールアミン/0.25%無水酢酸(pH8)で室温で10分間処理し、そしてPBSですすいだ。
【0220】
ヒトAMCアーゼのISHプローブのための鋳型を、発現配列タグ(expressed sequence tag)(EST)クローン5182357として、リサーチ ジェネティックス インク(Research Genetics,Inc.)(アラバマ州ハンツビル)から購入した。クローンを、挿入フラグメントに隣接するT7およびSP6プロモーター配列を含んで成るベクターpCMV−SPORT6を使用して生成させた。該クローンの配列はヌクレオチド769−1538からのヒトAMCアーゼ mRNAに合致した(配列番号14)。該クローンの配列を、イェール大学ケック生物工学研究所(Keck Biotechnology Laboratory at Yale University)でヌクレオチド配列決定することにより確認した。センスおよびアンチセンスRNAプローブをインビトロ転写し、そしてジゴキシゲニンRNA標識キット(ロシュ(Roche)、インジアナ州インジアナポリス)で標識し、65℃で変性させ、そして商業的に入手可能なハイブリダイゼーション緩衝液(アンビオン(Ambion)、テキサス州オースチン)に6ng/μlで添加し、そしてハイブリダイゼーション混合物を組織とともに52℃で一夜インキュベートした。その後、組織を、4×SSCで室温で5分間2回、2×SSCで37℃で10分間2回洗浄し、そしてRNアーゼA(10μg/ml)とともに37℃で45分間インキュベートした。この後、2×SSC中での室温で2回の10分洗浄、および0.2×SSC中での50℃で3回の20分洗浄が続いた。プローブは、製造元により記述されるとおり、アルカリホスファターゼと結合されたジゴキシゲニンに対するヒツジ抗体(ロシュ(Roche))、次いで塩化4−ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートとの一夜インキュベーションにより検出した。
【0221】
組織学的に正常なヒト肺組織(「対照組織」)中のAMCアーゼの発現を、致死的喘息により死亡したヒト患者から得られた組織(「致死的喘息」)中のAMCアーゼ発現と比較した。インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、AMCアーゼのmRNAは、センスプローブを使用して致死的喘息肺サンプル中で検出されたがしかし対照肺組織中でされなかった(それぞれ図19Aおよび19B)。AMCアーゼのmRNAは致死的喘息組織中で上皮細胞およびマクロファージに限局された。さらに、センスプローブは致死的喘息もしくは対照いずれの肺組織中でもAMCアーゼをコードするmRNAを検出せず、プローブの特異性を立証した。加えて、ポリ−dTプローブは双方のサンプル中の無傷のmRNAを際立たせた。
【0222】
ヒト肺胞マクロファージ中のAMCアーゼのmRNAの発現もまた評価した。AMCアーゼアンチセンスプローブを使用するインサイチューハイブリダイゼーションは、致死的喘息肺サンプル中の肺胞マクロファージ中の検出可能なAMCアーゼのmRNAを立証した(図19E)が、しかし対照サンプル中でしなかった。AMCアーゼのmRNAは、センスAMCプローブを使用して致死的喘息肺サンプル中で検出されず、インサイチューハイブリダイゼーション手順の特異性を立証した。
【0223】
これらのデータは、ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルを使用して得られた結果がヒトのインビボデータと一致することを確認する。すなわち、本明細書に開示されるデータは、AMCアーゼのmRNA発現がヒトにおける喘息で大きく増大されかつそれと相互に関連付けられることを初めて立証する。AMCアーゼのmRNAは致死的喘息肺組織中に検出可能なレベルで存在するが、しかし組織学的に正常な肺組織中では検出可能でないためである。これらの結果は、キチナーゼ様分子の発現が哺乳動物において炎症性疾患と関連しかつ/もしくはそれを媒介するという実例をさらに支持する。従って、本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子阻害剤を使用するAMCアーゼの阻害が、ヒト患者を包含する哺乳動物における限定されるものでないが喘息を挙げることができる炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防することができることをさらに支持する。
考察
本発明は、アレルギー、アトピー喘息および炎症、ならびにこれらの障害に関連する気道のリモデリング応答のTh2炎症応答の特徴が、寄生虫および他の病原体と闘うために最初に発生されたTh2炎症応答から進化したことを強く示唆する実験的証拠に部分的に基づく。喘息および他の炎症性疾患は、従って、寄生虫および病原体依存性の様式で導き出される不十分に制御されたTh2応答の結果である。
【0224】
極めて多数の寄生虫および他の病原体はキチンを含有する。それは、甲殻類の動物および昆虫の外骨格、真菌の壁、昆虫の消化管、寄生性線虫のミクロフィラリア鞘、ならびに蠕虫寄生虫の成分中の不可欠な一成分である。キチンはβ−1,4結合のN−アセチルグルコサミン残基のポリマーであり、そして、天然でセルロースの次の2番目に最も豊富な多糖であり、かつ、哺乳動物の対応物を有しない。キチンはしばしば寄生虫および他の病原体の外面を構成する。その厚さに依存して、それは宿主の防御および周囲の環境から該生物体を保護するのに不可欠な剛性もしくは可撓性のコーティングとなることができるためである。従って、それが宿主/病原体の界面に存在するため、キチンは顕著な抗原である。それが免疫系に露出されるためである。事実、キチンは、乏しく免疫原性のペプチドに対する免疫グロブリン応答を増強しかつ免疫応答をTh1の方向に移動させることができる、強力なTおよびB細胞アジュバントであることが立証されている(SeferianとMartinez、2000、Vaccine 19:661−668;Shibataら、2000 J.Immunol.164:1314−1321)。
【0225】
とりわけ宿主免疫応答に関しての、寄生虫およびヒトの共進化を立証する多数の一連の証拠、ならびに哺乳動物におけるキチンの全くの欠如を考えれば、いずれかの特定の論理により拘束されることを意図せずに、哺乳動物はキチンを担持する寄生虫に対する生得の防御としてキチナーゼを発生させたと考えることは理にかなっている。キチナーゼは哺乳動物で同定されている。キトトリオシダーゼおよびYKL−39はヒトで記述されており、YMタンパク質はマウスで記述されており、そして酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、オビダクチンおよびYKL−40はマウスおよびヒト双方で記述されている(Bootら、2001、J.Biol.Chem.276:6770−6778;Bootら、1998、J.Biol.Chem.273:25680−25685;Wardら、2001、Am.J.Pathol.158:323−332;Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506;Jinら、1998、Genetics 54:316−322;Bleauら、1999、EXS 87:211−221)。矛盾する報告および微生物のキチナーゼに対する若干の配列相同性にもかかわらず、キトトリオシダーゼおよびAMCのみが真のキチナーゼ活性を立証している(Bootら、2001、J.Biol.Chem.276:6770−6778)。哺乳動物のキチナーゼのなかで、YM−1およびAMCアーゼ双方が走化性および成長因子様の特性を有するとして同定されている。YM−1は生理学的条件下で結晶を容易に形成する45kDaの一本鎖ペプチドである。YMファミリーのタンパク質は好酸球およびCD4+ T細胞双方の誘引物質として、ならびにレクチン活性を有するとして同定されている(Owhashiら、2000、J.Biol.Chem.275:12791286;Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506)。AMCアーゼはキチナーゼ活性を立証する50kDaのタンパク質である。それは線維芽細胞増殖促進剤としてもまた報告されている(Groupingら、1997、J.Cell.Biochem.67:257−264)。本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、YMファミリーのタンパク質およびAMCアーゼ双方は、IL−13に誘導されかつTh2に媒介される喘息モデルの肺において高度に発現される。
【0226】
いずれかの特定の論理により拘束されることを願わずに、喘息の状態でのキチンの役割とともにみられる場合に、喘息および他の呼吸器炎症性疾患におけるキチナーゼの役割の新規発見は以下のとおりみられるかもしれない。非アトピー性の非喘息被験体において、おそらく寄生虫もしくは真菌への曝露後の抗原としてのキチンへの曝露は、免疫応答をTh1経路に向かって分極化し、これは該寄生虫と効果的に闘うかもしれないかもしくは闘わないかもしれない。しかしながら、アトピー性被験体、または喘息もしくはアトピーに対し遺伝的に素因を作られた者においては、IL−13および/もしくはIL−4が産生され、これらはYM、AMCアーゼ、ならびにおそらく他のキチナーゼおよびキチナーゼ様分子の発現をアップレギュレートする。キチンは、先に詳述されたとおりIgE産生を増強する。YMファミリーのタンパク質は、単独でもしくは他の分子とともに、好酸球およびCD4+ T細胞の走化性の特性を有する。従って、YMタンパク質は肺に好酸球を誘引することができ、ならびに、その炭水化物結合および結晶形成の特徴により媒介される組織損傷を引き起こす。AMCアーゼは、ついにはキチンを分解して病原体を排除する。キチンのTh1を誘導する特性のため、AMCアーゼ活性およびその後のキチン分解は、免疫系をアトピーおよび喘息性炎症性疾患のTh2応答の特徴に向ける。
【0227】
本発明は、キチナーゼ様分子阻害剤を使用する喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の治療のための方法および治療薬を包含する。本発明はさらに、喘息、COPD、ならびにIL−13、IL−4キチナーゼおよびキチナーゼ様分子阻害剤に関する他の炎症性疾患の治療のための新規治療薬の同定方法を含んで成る。
【0228】
本明細書で引用されるそれぞれのかつすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、これによりそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0229】
本発明は特定の態様に関して開示された一方、本発明の他の態様および変形物が本発明の真の技術思想および範囲から離れることなく当業者により考案されるかもしれないことが明らかである。付属として付けられる請求の範囲は、全部のこうした態様および同等の変形物を包含すると解釈されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0230】
本発明を具体的に説明する目的上、図面に本発明のある態様が描かれる。しかしながら、本発明は、図面に描かれる態様の正確な配置および手段に制限されない。
【図1】図1は、RT−PCRにより測定されるところの、COPDで死亡した喫煙者(S/C)およびCOPDを伴わない非喫煙者(N)からの剖検肺組織からのIL−13 mRNAのレベルを描く。矢印はIL−13転写物を示す。
【図2】図2は、図2Aから図2Dを含んで成り、対照の正常およびCC10−IL13(IL−13を構成的に発現する)マウスからのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色された肺組織を描く像である。図2A(トランスジーン(−)、100倍)および図2B(トランスジーン(+)、100倍)はそれぞれ対照およびCC10−Il−13マウスからの組織学的組織を具体的に説明する。図2Bは、IL−13を過剰発現するマウスの実質中の好酸球、リンパ球およびマクロファージ豊富な炎症を立証する。図2C(トランスジーン(−)、250倍)および図2D(トランスジーン(+)、250倍)は、それぞれ対照の正常マウスおよびCC10−IL−13トランスジェニックマウスの気道上皮細胞を比較する。図2DはIL−13を過剰発現するマウスの気道における上皮細胞肥大を具体的に説明する。
【図3】図3は、図3Aおよび図3Bを含んで成り、対照およびCC10−IL−13マウスからの気道のジアスターゼを用いる断続的酸−シッフ(D−PAS)染色を描く像である。図3Aはトランスジーン(−)マウスからの気道を描き、そして図3Bはトランスジーン(+)マウスにおける粘液化生および杯細胞過形成を描く。拡大は100倍である。
【図4】図4は、図4Aおよび図4Bを含んで成り、CC10−IL−13マウスの気道のトリクローム染色を描く。図4Aはトランスジーン(−)マウスにおけるコラーゲン沈着を描く。図4Bはトランスジーン(+)マウスにおける高められたコラーゲン沈着を描く。
【図5】図5は、誘導可能なCC10−rtTA−IL−13トランスジェニックマウスを生成させるのに使用されたドキシサイクリン(dox)で誘導可能な構築物の図解である。
【図6】図6は、図6Aから6Eを含んで成り、CC10−rtTA−IL−13誘導可能マウスからの肺の組織学的および形態計測学的分析を描く。肺を取り出し、圧に対し固定し、そしてdox投与後のトランスジーン誘導に際しての肺胞拡大を示すための顕微鏡検査のため処理した。図6Aはdox投与前の誘導可能なトランスジーン(+)マウスを描く。図6Bはdox投与1日後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスを描く。図6Cはdox投与1週間後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスの肺胞を描き、そして図6Dはdox投与1ヶ月後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスにおけるかなりの肺胞拡大を示す。図6Eは誘導可能なトランスジーン(+)マウスの形態計測学的分析を描くグラフである。4週齢のトランスジーン(−)および(+)マウスを通常もしくはdox水に無作為化し、そしてこれらの処理で1ヶ月間維持した。肺を取り出し、圧に対し固定し、そして翼弦長(chord length)測定値をとった。翼弦長は、doxを与えられたトランスジーン(−)マウスもしくは通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスより、doxを与えられたトランスジーン(+)マウスで有意により大きかった。
【図7】図7は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスにおける結晶沈着を描く。結晶は多数の切子面をもちかつしばしば針状であった。
【図8】図8は、CC10−IL−13トランスジェニックマウスの気管支肺胞洗浄(BAL)液からの部分的に精製された結晶を含んで成るクマシーブルー染色されたSDS−PAGEゲルを描く。単一のタンパク質バンドはおよそ45kDaの分子量を有した。
【図9】図9は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定されるところの2月齢のトランスジーン(+)および(−)CC10−IL−13マウスの肺のYM mRNAレベルを描く。
【図10】図10は、図10Aおよび10Bを含んで成り、1月齢で開始する通常もしくはdox水に無作為化されたトランスジーン(−)および(+)CC10−rtTA−IL−13マウスにおけるYM mRNAレベルを描く。図10Aにおいて、無作為化の1ヶ月後に肺を取り出し、全肺RNAを単離し、そしてRT−PCRを使用してYM遺伝子発現を測定した。図10Bは示された時間間隔(w=週、m=月)の間のdoxもしくは通常水投与後のYM mRNAを描く。mRNAレベルは、対照としてβ−アクチンを使用して正規化した。
【図11】図11は、図11Aから図11Hを含んで成り、組織中のYMの発現を検出するためのCC10−IL−13および対照マウスからの肺組織のインサイチューハイブリダイゼーションを描く。図11Aおよび図11Bはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブでプロービングされたトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。図11Cおよび図11Dはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを用いるトランスジーン(−)マウスからの肺組織を描く。図11Eおよび図11Fは、それぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用してプロービングされた4週齢のトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。図11Gおよび図11Hはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブでプロービングされた10週齢のトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。
【図12】図12は、2月齢のトランスジーン(−)およびトランスジーン(+)CC10−IL−13動物から得られたBAL液中のキチナーゼ活性を描くグラフである。(トランスジーン(−)に対しp<0.05)
【図13】図13は、図13Aおよび図13Bを含んで成り、CC10−rtTA−IL−13マウスにおけるそれぞれ酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)の発現およびキチナーゼ活性を描く。図13Aは、1月齢でdoxもしくは通常水に配置されかつ示された期間の間このレジメンで飼育されたトランスジーン(−)および(+)マウス肺からの肺中のAMCアーゼをコードするmRNAのレベルを描く。AMCアーゼおよびβ−アクチン発現をRT−PCRにより評価した。図13Bは、1月齢で通常もしくはdox水に無作為化された誘導可能なトランスジーン(+)および(−)の動物におけるキチナーゼ活性を描くグラフである。BAL液のキチナーゼ活性を、doxもしくは通常水投与後示された間隔で評価した。
【図14】図14は、図14Aから14Dを含んで成り、インサイチューハイブリダイゼーションを使用するCC10−IL−13マウスにおけるAMCアーゼ発現の局在化を描く。図14Aおよび図14Bはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用するトランスジーン(+)マウス肺組織を描く。図14Cおよび図14Dはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用するトランスジーン(−)マウス肺組織を描く。
【図15】図15は、図15Aから図15Cを含んで成り、それぞれRT−PCRおよびキチナーゼ活性アッセイを使用して測定されるところの、卵アルブミン(OVA)で感作かつ攻撃された野性型マウスにおけるYMおよびAMCアーゼのmRNA発現ならびにキチナーゼ活性を描く。図15AはOVAエアゾル攻撃後示された間隔(d=日、h=時間)でのYM mRNA発現を描く。図15BはOVAエアゾル攻撃後示された間隔でのAMCアーゼ mRNA発現を描く。図15Cは、OVAエアゾル攻撃後24時間およびそれ以降の野性型マウスからの気管支肺胞洗浄液(BAL)中で検出された、有意に(*P<0.01)より高いキチナーゼ活性を描く。
【図16】図16は、図16Aから16Gを含んで成り、OVAで感作されかつその後攻撃された野性型動物に対するアロサミジン(allos)の影響を描く。図16Aは全BAL細胞回収に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全BAL細胞回収における有意の(p<0.01)低下を示す。図16BはBAL液中で回収された好酸球の割合に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後に回収された好酸球の割合の有意の(p<0.01)低下を示す。図16CはBAL液中で回収された好酸球の総数に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全好酸球回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16DはBAL液中で回収されたリンパ球の数に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全リンパ球回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16Eは全BAL細胞回収に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。連日のアロサミジン用量を第1日に開始して与え、そして、動物をOVAエアゾル攻撃後第2および7日に全BAL細胞回収について評価した。*印はアロサミジン投与後の全BAL細胞回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16FはBAL中の好酸球回収の割合に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後のBAL細胞回収中の好酸球の割合の有意の(p<0.01)低下を示す。図16GはBAL中の全好酸球回収に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全好酸球BAL細胞回収の有意の(p<0.01)低下を示す。
【図17】図17は、図17Aから図17Dを含んで成り、5週齢のCC10−IL−13トランスジーン(+)および(−)マウスに対するアロサミジン投与(1mg/kgアロサミジンもしくはベヒクル対照に無作為化される、連日腹腔内(i.p.)で14日間投与)の影響を描く。図17Aは全BAL細胞回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。図17BはBAL好酸球回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。*印は好酸球回収の有意の(p<0.01)減少を示す。図17CはBALリンパ球回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。*印はリンパ球回収の有意の(p<0.01)減少を示す。図17Dは肺の大きさに対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。肺を取り出し、圧に対し固定し、そして本明細書の別の場所に記述されたところの容量置換の方法論を使用して評価した。
【図18】図18は、図18Aおよび18Bを含んで成り、卵アルブミンで誘導されるBAL細胞数に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描く。図18Aは合計のアルブミンで誘導されるBAL細胞数に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描くグラフである。未攻撃(未攻撃(unchall))と、卵アルブミンに対し感作されかつ連続する3日に卵アルブミンで攻撃されたマウスとの間の比較を、7日の時間点で行った。マウスは、最初のエアゾル曝露の前日に開始して1日おきに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清(血清(serum))で腹腔内で処理した。図18Bは、われわれの感作かつ攻撃されたマウスからのBAL液中の好酸球の割合に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描くグラフである。未攻撃(未攻撃(unchall))と、卵アルブミンに対し感作されかつ連続する3日に卵アルブミンで攻撃されたマウスとの間の比較を、7日の時間点で行った。マウスは、最初のエアゾル曝露の前日に開始して1日おきに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清(血清(serum))で腹腔内で処理した。
【図19】図19は、図19Aから19Fを含んで成る。図19Aから19Dは、AMCアーゼアンチセンスプローブを使用する喘息を伴う患者からの剖検肺サンプルでのインサイチューハイブリダイゼーションを使用しての検出可能なAMCアーゼのmRNAを描く像であり(図19A)AMCアーゼのmRNAは、アンチセンスプローブを使用しての肺疾患を伴わない患者からの剖検で得られた組織学的に正常な対照肺組織中で検出されなかった(図19B)。センスプローブを使用するインサイチューハイブリダイゼーションは、致死的喘息の組織(図19C)もしくは対照組織(図19D)のいずれでもAMCアーゼを検出しなかった。致死的喘息の上皮細胞(太矢印)およびマクロファージ(細矢印)染色が検出された(図19A)。図19Eおよび19Fは、AMCアーゼアンチセンスプローブを使用して喘息を伴う患者からの剖検肺サンプル中に存在する肺胞マクロファージでのインサイチューハイブリダイゼーションを使用しての検出可能なAMCアーゼのmRNAを描く像である(図19E)。AMCアーゼのmRNAはセンスプローブを使用して検出されなかった(図19F)。さらに、AMCアーゼのmRNAは、アンチセンスもしくはセンスプローブを使用して、肺疾患を伴わない患者から得られた対照肺組織中で検出されなかった。
【配列表】
【背景技術】
【0001】
喘息の罹患率は、米国単独で推定1700万症例を伴い、過去20年間、一様に増大してきた。かつては主として気道平滑筋の収縮機構の機能不全であることが考えられたが、最近の研究は、喘息および他の肺疾患における免疫系および炎症の役割を示している。
【0002】
喘息は現在、免疫系の不適切な刺激に帰される複雑な炎症性疾患と特徴づけられている。若干の場合では炎症が風媒抗原により誘発される。他者においては、外因性誘因を定義することができない(内因性喘息)。喘息性炎症に関与する免疫細胞およびメディエーターは、IgE、肥満細胞、好酸球、T細胞、インターロイキン−4(IL−4)、IL−5、IL−9、IL−13および他のサイトカインを包含する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。これらの免疫細胞およびメディエーターのなかで、Tヘルパー2型(Th2)細胞およびサイトカインの役割がますます重要であることが判明している。それらが気道炎症の開始および維持の原因、ならびにB細胞の調節、好酸球の機能、粘液応答および気道のリモデリングの刺激に不可欠であると考えられるからである(非特許文献7;非特許文献8)。
【0003】
免疫に媒介される炎症は、喘息の気道において気道のリモデリングもしくは構造的改変に至ると考えられる。リモデリングの最終結果が、喘息の症状および生理学的調節不能双方に寄与すると考えられる。リモデリングはしばしば、気道の肥厚、粘液化生、上皮細胞肥大および気道線維症を特徴とする。広範囲の線維症は、疾患の重症度、気道の過敏性(AHR)を増大させかつ不完全に可逆的な気道閉塞の生成に寄与すると広く考えられている(非特許文献7)。従って、喘息の治療のための治療薬の成功裏の設計は、炎症の機構ならびに呼吸器系における傷害および創傷治癒の過程の双方の理解を必要とする。
【0004】
2種の顕著なサイトカイン、IL−4およびIL−13は、喘息および他の肺疾患の炎症および気道のリモデリングにおいて重要な役割を演じていると考えられる。IL−4およびIL−13は、それらが双方ともTh2ヘルパーT細胞の同一のサブセットにより産生され、重なり合うエフェクターの特徴を有し、そして受容体成分およびシグナル伝達経路を共有することにおいて類似である。しかしながら、AHR、好酸球の動員、粘液過剰産生および喘息の他の症状における、IL−4を上回るIL−13の決定的に重要な役割が、最終的に立証された(非特許文献4、非特許文献9)。マウス肺におけるIL−13の過剰産生は、メタコリン攻撃後に、好酸球、リンパ球およびマクロファージの豊富な炎症、粘液化生、気道線維症およびAHRをもたらす(非特許文献10)。さらに、IL−13のプロモーターおよびコーディング領域双方の多形が喘息の表現型と関連している(非特許文献11)。これらの結果は、異常なIL−13産生が喘息性炎症および気道のリモデリングの決定的に重要な一成分であることを示唆する。
【0005】
炎症性肺疾患におけるIL−13の役割は喘息に制限されない。慢性閉塞性肺疾患(COPD、臨床上、慢性気管支炎、肺気腫および慢性閉塞性肺(lung)疾患と定義される)は、長く、喘息と別個の疾患として考えられてきた。しかしながら、該2種の疾患の間の類似性が示されており、そして、「オランダ仮説(Dutch Hypothesis)」(1961年に最初に提案された)の形成をもたらした。オランダ仮説の最近の改訂は、喘息およびCOPDがいくつかの個体において別個の過程でないこと、および共通の病因機構がこれらの障害の根底にあることを提案している。該仮説はさらに、アトピー、喘息、AHRおよび/もしくは増大されたレベルのIgEに対する遺伝的素因が、喫煙者がCOPDを発症しやすくすることを述べている(非特許文献12)。さらに、マウス肺におけるIL−13の過剰発現は肺気腫およびCOPD様の粘液化生を引き起こし、IL−13はCOPDを伴う患者からの生検および剖検肺組織中で過剰発現され、そして、COPDの存在と相関するIL−13の多形が記述されている。これらの結果をオランダ仮説の観点からみる場合に、喘息およびCOPDが以前に考えられていたよりも緊密に関連付けられるのみならず、しかしこれらの肺の炎症性障害におけるIL−13の調節不全(dysregulation)の中心的役割がより顕著になる。
【0006】
喘息、COPDおよび関係する肺の炎症性障害の根底にある機構および原因の具体的説明における進歩は、かつて気管支筋収縮の機能異常と考えられたものが、現在では特定のサイトカインおよび細胞型に結び付けられる可能性があるという事実を考えれば目覚ましい。この進歩にもかかわらず、喘息は、結核およびAIDSとともに、増大する死亡率を伴う唯一の慢性疾患のままである。加えて、2020年までに、COPDは全世界の死亡の第4位の原因となると予想される。
【0007】
喘息による増大する罹患率および死亡率に反撃するために、喘息の治療のための医薬の集積は絶えず増大している。
【0008】
喘息薬は2種の一般的範疇、すなわちコントローラー(controller)およびレリーバー(reliever)に属する。コントローラーは症状が生じる前の喘息発作の予防のためであり、そして、レリーバーは喘息発作の最中の間に服用される。コントローラーは、コルチコステロイド(利用できる最も強力かつ有効な抗炎症薬と広く考えられている)、クロモリンナトリウムおよびネドクロミル、小児でしばしば使用されるより穏やかな抗炎症薬、ならびに気管支拡張薬である長時間作用型β−2アゴニストを包含する。レリーバーは、短時間作用型β−2アゴニスト、およびβ−2アゴニストに対する補足もしくは代替をしばしば使用する抗コリン作動薬を包含する。
【0009】
コルチコステロイドおよび他の治療薬は喘息の炎症に媒介される症状を標的とする一方、それらはしばしば、広範な免疫抑制性の特性、ならびに他の有害な副作用を有する。喘息の生理学的および生物学的機構が解明される際に、特異的かつ有効な薬物の開発がすぐ続いて起こるはずであり、そして、喘息の症状、罹患率および死亡率が、その現在の上昇の代わりに下落するはずである。しかしながら、根底にある疾患の機構の増大された理解にもかかわらず、また、喘息の増大する発生率、ならびに罹患率およびそれからの死亡にもかかわらず、現在、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の制限された数の有効かつ安全な治療が存在する。加えて、COPDの進行を変える薬理学的薬物は存在しない。
【0010】
従って、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の特異的な有効な治療に対する、長い間感じられたかつ深刻な必要性が存在する。本発明はこの必要性に合致する。
【非特許文献1】Braddingら、1994、Am.J.Resipir.Cell Mol.Biol.10:471−480
【非特許文献2】Braddingら、1997、Airway Wall Remodeling in Asthma、CRCプレス(CRC Press)、フロリダ州ボカレイトン
【非特許文献3】Nicolaidesら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:13175−13180
【非特許文献4】Wills−Karp、1998、Science 282:2258−2260
【非特許文献5】Hamidら、1991、J.Clin.Invest.87:1541−1546
【非特許文献6】Kotsimbosら、1996、Proc.Assoc.Am.Physicians 108:368−373
【非特許文献7】Eliasら、1999、J.Clin.Invest.104:1001−1006
【非特許文献8】Rayら、1999、J.Clin.Invest.104:985−993
【非特許文献9】Grunigら、1998、Science 282:2261−2263
【非特許文献10】Zhengら、1999 J.Clin.Invest.103:779−788
【非特許文献11】Heinzmannら、2000、Hum.Mol.Genet.9:549−559
【非特許文献12】VestboとPrescott、1997、Lancet 350:1431−1434
【発明の簡単な要約】
【0011】
疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療法。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0012】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0013】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0014】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0015】
なお別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0016】
さらなる一局面において、抗体は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択されるキチナーゼ様分子と特異的に結合する。
【0017】
別の局面において、アンチセンス核酸分子は、キチナーゼ様分子をコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである。
【0018】
なお別の局面において、リボザイムは、キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である。
【0019】
さらなる一局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0020】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の予防方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を予防することを含んで成る。
【0021】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0022】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0023】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0024】
さらなる一局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0025】
なお別の局面において、キチナーゼ様分子はYMタンパク質であり、かつ、さらに、キチナーゼ様分子阻害剤は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチログアニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0026】
別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。
【0027】
本発明は、疾患がキチナーゼの増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0028】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0029】
別の局面において、キチナーゼは酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)であり、かつ、キチナーゼ阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0030】
なお別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0031】
一局面において、抗体はAMCアーゼと特異的に結合する。
【0032】
別の局面において、アンチセンス核酸分子は、AMCアーゼをコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである。
【0033】
なお別の局面において、炎症性疾患は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される。
【0034】
本発明は、疾患がインターロイキン−13の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0035】
一局面において、哺乳動物はヒトである。
【0036】
別の局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される。
【0037】
本発明はまた、疾患がTh2炎症応答と関連する、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法も包含する。該方法は、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより該哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る。
【0038】
本発明は、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含する。該方法は、炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および該哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを該化合物の投与前の該哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、化合物の投与前の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較しての化合物の投与後の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のより低いレベルが、該化合物が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る。一局面において、本発明は本方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0039】
一局面において、キチナーゼ様分子のレベルは、キチナーゼ様分子の核酸の発現のレベル、およびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される。
【0040】
別の局面において、キチナーゼ様分子は、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される。
【0041】
なお別の局面において、哺乳動物はマウスである。
【0042】
さらなる一局面において、該マウスは、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される。
【0043】
別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。なお別の局面において、本発明は、この方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0044】
本発明は、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含する。該方法は、細胞を化合物と接触させること、および、細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを化合物と接触されないそれ以外は同一の細胞中のキチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、化合物と接触されない細胞中のキチナーゼ様分子のレベルと比較しての化合物と接触された細胞中のキチナーゼ様分子のより低いレベルが、該化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る。
【0045】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患を治療するためのキットを包含する。該キットは、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成り、かつ、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る。
【0046】
一局面において、キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される。
【0047】
別の局面において、化合物は、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される。
【0048】
なお別の局面において、キチナーゼ様分子はAMCアーゼである。
【0049】
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における炎症性疾患を予防するためのキットを包含する。該キットは、有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成り、かつ、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る。
[発明の詳細な記述]
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の発現と関連するかもしくはそれにより媒介される、哺乳動物における炎症性疾患の治療方法を包含する。該方法は哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤を投与することを含んで成る。本明細書の別の場所に開示されるデータが立証するとおり、キチナーゼ様分子の増大されたレベルは、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症、肺気腫などを挙げることができる炎症性疾患と関連しかつ/もしくはそれを媒介する。
【0050】
本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子の増大された発現、存在および/もしくは活性が、限定されるものでないが、組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液および組織中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織中の増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを挙げることができる、多様な炎症性疾患に関連する病因と関連しかつ/もしくはそれらを媒介することを立証する。
【0051】
本明細書に開示されるデータは、驚くべきことに、いくつかのキチナーゼ様分子、例えばYMが、検出可能な古典的キチナーゼ活性を有しない場合であっても、限定されるものでないがアロサミジンを挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤を投与することが治療上の利益を提供しかつ疾患を治療することを立証する。さらに、本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子の阻害剤、例えばAMCアーゼに対する抗体の投与が治療効果を提供しかつ疾患を治療することを初めて立証する。実際、該データは、疾患状態の発生前のキチナーゼ様分子阻害剤の投与が疾患を予防するのに役立つことを立証する。従って、本発明は、それにより炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、該疾患がキチナーゼ様分子により媒介されるかもしくはそれと関連する場合に、該キチナーゼ様分子が検出可能なキチナーゼ活性を有するかもしれないもしくは有しないかもしれない場合であっても、該疾患を治療かつ/もしくは予防する、新規方法を提供する。
定義:
本明細書で使用されるところの以下の用語のそれぞれは、この節でそれと関連する意味を有する。
【0052】
冠詞「a」および「an」は、1個もしくは1個以上(すなわち最低1個)の該冠詞の文法上の目的語を指すのに本明細書で使用する。例として、「an element(要素)」は1個の要素もしくは1個以上の要素を意味する。
【0053】
該用語が本明細書で使用されるところの「アプリケーター」という用語により、本発明のキチナーゼ様分子阻害剤の化合物、抗体、核酸、タンパク質および/もしくは組成物を哺乳動物に投与するための、限定されるものでないが皮下シリンジ、ピペット、静脈内注入、局所クリームなどを挙げることができるいずれかの装置を意味する。
【0054】
本明細書で使用されるところの「キチナーゼ」は、微生物および哺乳動物のキチナーゼを含んで成るポリペプチドの1ファミリーを指す。本発明のキチナーゼは、それがエンドキチナーゼの様式でキチンを特異的に切断するという点で、検出可能なキチナーゼ活性を示す。
【0055】
該用語が本明細書で使用されるところの「キチナーゼ様分子」は、既知のキチナーゼに対するある程度の相同性により定義されるがしかし検出可能なキチナーゼ活性を立証しなくてもよいタンパク質を含んで成るポリペプチドの1ファミリーを包含する。キチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、酸性哺乳動物キチナーゼ(好酸球走化性サイトカインともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号AF290003およびAF29004により例示される)、YM1(ジェンバンク(GenBank)受託番号M94584により例示されるところのキチナーゼ3−様3、ECF−L前駆体としてもまた知られる)、ジェンバンク(GenBank)受託番号AF461142により例示されるところのYM2、ジェンバンク(GenBank)受託番号XM_131100により例示されるところの卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1(BRP−39、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40ともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号X93035により例示される)、ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_003465により例示されるところのキトトリオシダーゼ、卵管糖タンパク質1(ムチン9、オビダクチンともまた称されかつジェンバンク(GenBank)受託番号NM_002557により例示されるところの)、軟骨糖タンパク質−39(ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_001276により例示されるところの、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40としてもまた知られる)、ならびに軟骨細胞タンパク質39(ジェンバンク(GenBank)受託番号NM_004000により例示されるところの、キチナーゼ3−様2、YKL−39としてもまた知られる)を挙げることができる。従って、当業者は、本明細書に提供される教示を一旦身につければ、本発明が、検出可能なキチナーゼ活性を有するキチナーゼ様分子、ならびに、潜在的キチナーゼ様分子がタンパク質の該ファミリーに対する実質的な配列相同性を共有するために前述の分子に類似のものを包含することを認識するであろう。本発明はこれらの特定のキチナーゼ様分子に制限されず;むしろ、本発明は、それらと実質的相同性を共有しかつ/もしくは検出可能なキチナーゼ活性を有する他のキチナーゼ様分子を包含し、また、当該技術分野で既知のこうした分子ならびに今後発見されるものを包含する。
【0056】
「コードすること」は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)の定義される配列もしくはアミノ酸の定義される配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型としてはたらく遺伝子、cDNAもしくはmRNAのようなポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、ならびにそれ由来の生物学的特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞もしくは他の生物学的系中でタンパク質を産生する場合に、該タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列に同一でありかつ通常は配列表に提供されるコーディング鎖、および遺伝子もしくはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖双方を、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードすると称することができる。
【0057】
核酸に適用されるところの、本明細書で使用されるところの「フラグメント」という用語は、通常、長さが最低約20ヌクレオチド、典型的には最低約50ヌクレオチド、より典型的には約50から約200ヌクレオチドまで、好ましくは最低約200ないし約300ヌクレオチド、なおより好ましくは最低約300ヌクレオチドないし約400ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約400ないし約500、なおより好ましくは最低約500ヌクレオチドないし約600ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約600ないし約700、なおより好ましくは最低約700ヌクレオチドないし約800ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約800ないし約900、なおより好ましくは最低約900ヌクレオチドないし約1000ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1000ないし約1100、なおより好ましくは最低約1100ヌクレオチドないし約1200ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1200ないし約1300、なおより好ましくは最低約1300ヌクレオチドないし約1400ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1400ないし約1500、最低約1500ないし約1550、なおより好ましくは最低約1550ヌクレオチドないし約1600ヌクレオチド、なおさらにより好ましくは最低約1600ないし約1620であってよく、そして、最も好ましくは、核酸フラグメントは長さが約1625ヌクレオチド以上であることができる。
【0058】
本明細書で使用されるところの「相同な」は、2種のポリマー分子間、例えば2種の核酸分子、例えば2種のDNA分子もしくは2種のRNA分子間、または2種のポリペプチド分子間のサブユニットの配列の類似性を指す。2種の分子の双方中のあるサブユニット位置が同一単量体サブユニットにより占有される場合、例えば、2種のDNA分子のそれぞれ中のある位置がアデニンにより占有される場合には、それらはその位置で相同である。2種の配列間の相同性は、合致するもしくは相同な位置の数の直接の関数であり、例えば、2種の化合物の配列の位置の半分(例えば長さ10サブユニットのポリマー中の5個の位置)が相同である場合には、該2種の配列は50%相同であり、位置の90%、例えば10個中9個が合致されるもしくは相同である場合は、該2種の配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’−ATTGCC−5’および3’−TATGGC−5’は75%の相同性を共有する。
【0059】
「キチナーゼ様分子阻害剤」は、化合物の非存在下のそれ以外は同一の細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルに比較される場合に、細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルを検出可能に阻害する化合物を意味する。キチナーゼ様分子のレベルは、限定されるものでないが、該分子をコードする核酸の発現のレベル、検出可能なキチナーゼ様分子のレベル、および/もしくはキチナーゼ活性のレベルを挙げることができる。キチナーゼ様分子阻害剤は、限定されるものでないが、化合物(例えばアロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体)、銅、亜鉛、水銀、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸を挙げることができる。
【0060】
該用語が本明細書で使用されるところの「AMCアーゼ阻害剤」は、AMCアーゼを阻害する以前に定義されたところのキチナーゼ様分子阻害剤を包含する。こうした阻害剤は、限定されるものでないが、阻害剤の非存在下の細胞もしくは組織、または阻害剤の非存在下のそれ以外は同一の細胞もしくは組織中でのAMCアーゼの発現および/もしくは活性のレベルに比較して、該細胞もしくは組織中でのAMCアーゼの発現および/もしくは活性のレベルを阻害する、化合物、ならびにリボザイム、アンチセンス分子、抗体などを挙げることができる。阻害剤は、限定されるものでないが、化合物、リボザイム、アンチセンス核酸分子、抗体などを挙げることができる。
【0061】
本明細書で使用されるところの「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、本発明のポリペプチドをコードする1個の読取り枠を含んで成る核酸分子を指す。こうした天然の対立遺伝子変異は、典型的には所定の遺伝子のヌクレオチド配列中の1〜5%の相違をもたらす可能性がある。代替の対立遺伝子は、多数の多様な個体中の目的の遺伝子を配列決定することにより同定することができる。これは、ハイブリダイゼーションプローブを使用して多様な個体中の同一の遺伝子座を同定することにより容易に実施することができる。いずれかのおよび全部のこうしたヌクレオチド変異、ならびに、天然の対立遺伝子変異の結果でありかつ機能的活性を変えない生じるアミノ酸の多形もしくは変異は、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0062】
本明細書で使用されるところの「説明資料」は、本明細書で列挙される多様な疾患もしくは障害の軽減を遂げるためのキット中の本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物の有用性を知らせるのに使用することができる、刊行物、録音(録画)(recording)、図表、もしくはいずれかの他の表現媒体を包含する。場合によっては、もしくはあるいは、説明資料には、哺乳動物の細胞もしくは組織における疾患もしくは障害の1種もしくはそれ以上の軽減方法が記述されるかもしれない。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、化合物および/もしくは組成物を含有する容器に添付してよいか、または、該核酸、ペプチド、化学的組成物および/もしくは組成物を含有する容器と一緒に発送してよい。あるいは、説明資料は、該説明資料および化合物が受領者により共同して使用されるという意図を伴い、容器と別個に発送してもよい。
【0063】
「炎症性疾患」は、組織損傷、細胞の傷害、抗原および/もしくは感染性疾患に対する応答が存在する状態を指すのに本明細書で使用する。いくつかの例においては、因果関係は確立できないことがある。炎症の症状は、限定されるものでないが細胞浸潤および組織腫大を挙げることができる。炎症性疾患の定義で企図される疾患状態は、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫を包含する。
【0064】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する核酸から分離されている核酸セグメントもしくはフラグメント、例えば、該フラグメントに通常隣接する配列、例えばそれが天然に存在するゲノム中で該フラグメントに隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを指す。該用語はまた、細胞中で天然にそれに付随する核酸、例えばRNAもしくはDNA、またはタンパク質に天然に付随する他の成分から実質的に精製された核酸にも当てはまる。該用語は、従って、例えば、ベクター、自律的に複製するプラスミドもしくはウイルス、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれる、あるいは他の配列に依存せずに別個の分子として(例えば、cDNA、あるいは、ゲノムまたはPCRもしくは制限酵素消化により生じられるcDNAフラグメントとして)存在する、組換えDNAを包含する。それはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも包含する。
【0065】
「操作可能に連結される」として2種のポリヌクレオチドを記述することにより、一本鎖もしくは二本鎖核酸部分が、該2種のポリヌクレオチドの少なくとも一方が他方に対してそれが特徴づけられる生理学的影響を発揮することが可能であるような様式で核酸部分内に配置された、2種のポリヌクレオチドを含んで成ることを意味する。例として、遺伝子のコーディング領域に操作可能に連結されたプロモーターは、該コーディング領域の転写を促進することが可能である。
【0066】
好ましくは、所望のタンパク質をコードする核酸がプロモーター/調節配列をさらに含んで成る場合、該プロモーター/調節配列は、それが細胞中で所望のタンパク質の発現を駆動するような、所望のタンパク質のコーディング配列の5’に配置される。一緒に、所望のタンパク質をコードする核酸およびそのプロモーター/調節配列は「トランスジーン(transgene)」を含んで成る。
【0067】
「構成的」発現は、遺伝子産物が、細胞の大部分のもしくは全部の生理学的条件下で、生存する細胞中で産生される状態である。
【0068】
「誘導可能な」発現は、遺伝子産物が、細胞中のシグナルの存在に応答して、生存する細胞中で産生される状態である。
【0069】
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現に際して産生されるものである。
【0070】
「ポリペプチド」は、アミノ酸残基より構成されるポリマー、関係する天然に存在する構造変異体、およびペプチド結合を介して連結されるその合成の天然に存在しない類似物、関係する天然に存在する構造変異体、ならびにその合成の天然に存在しない類似物を指す。合成ポリペプチドは例えば自動化ポリペプチド合成機を使用して合成することができる。
【0071】
「タンパク質」という用語は、典型的には大型のポリペプチドを指す。
【0072】
「ペプチド」という用語は、典型的には短いポリペプチドを指す。
【0073】
本明細書で使用されるところの「トランスジェニック哺乳動物」という用語は、その生殖細胞が外因性核酸を含んで成る哺乳動物を意味する。
【0074】
本明細書で使用されるところの「治療する」ことは、炎症性疾患の症状が患者により経験される頻度を低下させること、または、患者における疾患の自然史および/もしくは進行を変えることを意味する。
【0075】
本明細書で使用されるところの「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、その少なくとも一部分が、正常細胞もしくは冒された細胞に存在する核酸に対し相補的である核酸ポリマーを意味する。最も好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約15と約50との間のヌクレオチドを含んで成る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものでないがホスホロチオエートオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの他の修飾物を挙げることができる。
【0076】
本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、抗原上の特定の一エピトープに特異的に結合することが可能である免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然の供給源もしくは組換え供給源由来の無傷の免疫グロブリンであることができ、また、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体および人化抗体を包含する多様な形態で存在してよい(Harlowら、1999、Using Antibodies:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Habor Laboratory Press)、ニューヨーク;Harlowら、1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;Houstonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;Birdら、1988、Science 242:423−426)。
【0077】
本明細書で使用されるところの「合成抗体」という用語により、例えば本明細書に記述されるところのバクテリオファージにより発現される抗体のような、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。該用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成により生成された抗体も意味すると解釈されるべきであり、かつ、このDNA分子は抗体タンパク質もしくは該抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、ここで、該DNAもしくはアミノ酸配列は、利用可能かつ当該技術分野で公知である合成DNAもしくはアミノ酸配列技術を使用して得られている。
【0078】
ポリヌクレオチドの「部分」は、ポリヌクレオチドの最低最低約15ないし約50の連続するヌクレオチド残基を意味する。ポリヌクレオチドの一部分は、該ポリヌクレオチドのすべてのヌクレオチド残基を包含してよいことが理解される。
【0079】
本明細書で使用されるところの「特異的に結合する」という用語により、キチナーゼ様分子を認識かつ結合するがしかしサンプル中の他の分子を実質的に認識もしくは結合しない抗体を意味する。
【0080】
「予防的」治療は、疾患に関連する病状を発生する危険を低下させる目的上、疾患の兆候を表さないかもしくは疾患の初期の兆候のみを表す被験体に投与される治療である。
【0081】
該用語が本明細書で使用されるところの疾患を「予防すること」は、キチナーゼ様分子を投与した場合に、阻害剤の非存在下での発症および/もしくは症状に比較して、疾患の発症が遅らされること、かつ/または疾患の症状が強度および/もしくは頻度において低下されることができることを意味する。
【0082】
「治療的」治療は、病状の兆候を減少もしくは排除させる目的上、それらの兆候を表す被験体に投与される治療である。
I.方法
A.炎症性疾患の治療方法
本発明は、疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、炎症性疾患の治療方法を包含する。キチナーゼ様分子阻害剤を使用する哺乳動物、好ましくはヒトにおける炎症性疾患の治療方法が本発明で企図される。これは、本明細書の開示を提供される場合に当業者により認識されるであろうとおり、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を阻害することが、IL−13により媒介される疾患を包含する炎症性疾患の治療としてはたらくためである。すなわち、本明細書に開示されるデータは、IL−13の発現と関連するかもしくはそれにより媒介される炎症性疾患の一モデルにおけるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、それが確立された後に疾患を治療することを立証する。さらに、本発明は、キチナーゼ様分子およびキチナーゼ様分子のmRNAが、正常組織中のキチナーゼ様分子のレベルに比較して炎症性疾患組織中で増大されたレベルで存在するという発見に関する。従って、本発明は、限定されるものでないがキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤を使用するこうした疾患の治療に関する。
【0083】
驚くべきことに、キチナーゼ様分子阻害剤は、検出可能なキチナーゼ活性が存在しない場合であっても、疾患を治療するために投与することができる。従って、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明は検出可能なキチナーゼ活性が存在する疾患の治療に制限されず;代わりに、本発明は、検出可能なキチナーゼ活性が存在しない場合であってもキチナーゼ様分子の発現と関連するもしくはそれにより媒介される疾患の治療を包含することを認識するであろう。
【0084】
本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の阻害は、とりわけ、キチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害するリボザイムおよび/もしくはアンチセンス分子により媒介されるもののような、キチナーゼ様分子の発現の阻害を包含することが、当業者により理解されるであろう。加えて、当業者は、本発明の教示を一旦身につければ、キチナーゼ様分子の阻害が細胞中でのキチナーゼ様分子の活性の阻害を包含することを認識するであろう。キチナーゼ様分子の活性のこうした阻害は、とりわけ、アロサミジン、1,10−フェナントロリン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛、水銀などを包含するキチナーゼ酵素活性の阻害剤を使用して達成することができる。さらに、キチナーゼ様分子の活性の阻害剤は、キチナーゼ様分子と特異的に結合してそれにより酵素が機能することを予防する抗体を包含する。従って、キチナーゼ様分子阻害剤は、限定されるものでないが、キチナーゼ様分子をコードする核酸の転写、翻訳もしくは双方を阻害することを挙げることができ;そして、それはまた、限定されるものでないがキチンを切断する能力を挙げることができるペプチドのいずれかの活性を阻害することも同様に包含する。
【0085】
本発明は哺乳動物における炎症性疾患の治療もしくは予防方法を包含する。該方法は、こうした治療の必要な哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤を投与することを含んで成る。これは、本発明の教示を身につけた当業者により認識されるであろうとおり、キチナーゼ様分子を阻害することが炎症性疾患を治療もしくは予防するのに有用であるためである。キチナーゼ様分子の阻害は、順に、本明細書に開示されるデータにより十分に立証されるとおり、炎症性疾患に関連する病状を予防する。
【0086】
より具体的には、本発明は多様な阻害剤を使用してキチナーゼ様分子を阻害することに関する。すなわち、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現、活性および/もしくは機能を阻害する化合物は、キチナーゼ様分子およびそれにより炎症性疾患を阻害する、既知もしくは開発されるべきいずれかの、限定されるものでないが抗体、アンチセンス核酸、リボザイム、小分子、ペプチド模倣物および化合物を挙げることができることを理解するであろう。
【0087】
本発明は、インビトロもしくはインビボで検出可能なキチナーゼ活性を立証するもしくはしないキチナーゼ様分子の阻害を包含する。すなわち、いずれかの特定の論理により拘束されることを願わず、キチナーゼ様分子が細胞もしくは組織中または細胞を含まない系のいずれかで検出可能なキチナーゼ活性を立証するかどうかは関係しない。より具体的には、本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、Ym(インビトロもしくはインビボで検出可能なキチナーゼ活性を立証しない)のようなキチナーゼ様分子は、炎症性疾患の病理学を立証しない細胞もしくは組織に比較して、疾患の細胞および組織中で増大されたレベルで発現され、そして、とりわけアロサミジンを使用してYmを阻害することは該疾患を治療かつ/もしくは予防する。加えて、本明細書に開示されるデータは、細胞もしくは組織中のキチナーゼすなわちAMCアーゼの増大されたレベルが炎症性疾患と関連するかもしくはそれを媒介することをさらに立証する。さらに、AMCアーゼの阻害が該疾患を治療する。こうした治療効果は検出不可能なキチナーゼ活性の阻害に関するかもしれないか、または、該治療効果はキチナーゼ様分子のいかなるキチナーゼもしくはキチナーゼ様の活性にも関係しないかもしれず、そして、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、該治療効果が該分子によるいかなるキチナーゼ活性とも相関する可能性があるがしかし相関する必要がないことを認識するであろう。
【0088】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明の阻害剤が、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の発現、活性もしくは機能を予防もしくは阻害する分子および化合物を包含することを認識するであろう。すなわち、本発明は、キチナーゼ様分子が細胞もしくは組織中で検出可能でないようなキチナーゼ様分子の発現を阻害、低下かつ/もしくは廃止するアンチセンスおよび/もしくはアンチセンス分子が、本発明の阻害剤であることを企図する。例えば、キチナーゼ様分子を分解する化合物はその機能を低下させることができ、そして、本発明において企図されるところの阻害剤であることができる。
【0089】
キチナーゼ様分子の阻害は、本明細書に開示されるものを包含する広範な方法、ならびに当該技術分野で公知もしくは今後開発されるべき方法を使用して評価することができる。すなわち、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現の阻害が、キチナーゼ様分子をコードする核酸(例えばmRNA)のレベル、および/または細胞もしくは液体中に存在するキチナーゼ様分子のレベルを評価する方法を使用して容易に評価することができることを認識するであろう。さらに、当業者は、キチナーゼ様分子の阻害が、本明細書の別の場所で例示されるとおり、かつ/または当該技術分野で公知もしくは今後開発されるべき方法を使用して、細胞もしくは体液中のキチナーゼ酵素活性の阻害を測定することにより評価することができることを理解するであろう。
【0090】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫などを挙げることができる多様な炎症性疾患の治療を包含することを理解するであろう。本明細書で開示されるところのこれらの疾患は、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を伴いかつ/もしくはそれらにより媒介され、ここで、増大されたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、増大されたキチナーゼ様分子の発現、増大されたキチナーゼ様分子の活性、もしくは双方を挙げることができる。
【0091】
さらに、当業者は、本明細書に提供される教示に基づき、該疾患が、とりわけ、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4産生により媒介される疾患を包含する、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を含んで成るいかなる疾患も包含することをさらに認識するであろう。これは、本明細書の別の場所でより完全に示されるとおり、本明細書に開示されるデータが、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4がキチナーゼ様分子の増大を媒介し、これが順に、限定されるものでないが組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織でのキチナーゼ様分子を含んで成る結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織における増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを挙げることができる炎症性疾患に関連する多様な変化を媒介かつ/もしくはそれらと関連することを立証するためである。
【0092】
従って、本明細書に開示されるデータは、炎症性疾患(ここで、該疾患はIL−13および/もしくはIL−4の増大された発現で媒介もしくはそれらと関連する)に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の阻害は、キチナーゼ様分子のレベルの低下を媒介し、それが順に該疾患を治療することにより、該疾患を治療することができることを立証する。例えば、こうしたデータは、限定されるものでないが、IL−13の増大された発現が増大されたキチナーゼ様分子活性および増大されたキチナーゼ様分子発現を媒介する哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を投与することによる多様な組織の病状の阻害を挙げることができる。
【0093】
本発明は、さらに、哺乳動物におけるTh2炎症応答により媒介されかつ/もしくはそれと関連する炎症性疾患の治療方法を含んで成る。当業者は、本明細書に提供される本開示および教示を身につけた場合に、Th2炎症応答により媒介されかつ/もしくはそれと関連する炎症性疾患が、限定されるものでないが喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫などを挙げることができる多様な炎症性疾患を包含することを理解するであろう。本明細書に開示されるとおり、これらの疾患は哺乳動物においてTh2炎症応答により媒介され、そして、とりわけ、増大されたIL−13産生および/もしくは発現、増大されたキチナーゼ様分子の活性および/もしくは発現などをもたらす。増大されたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが、増大されたキチナーゼ様分子発現、増大されたキチナーゼ様分子活性、もしくは双方を挙げることができる。
【0094】
さらに、当業者は、本発明に提供される教示に基づき、該疾患が、とりわけ、増大されたTh2炎症応答により媒介される疾患を包含する、組織中の増大されたキチナーゼ様分子を含んで成るいかなる疾患も包含することを認識するであろう。これは、本明細書の別の場所でより完全に示されるとおり、本明細書に開示されるデータが、増大されたTh2炎症応答が、とりわけ、増大されたIL−13および/もしくは増大されたIL−4活性および/もしくは発現、増大されたキチナーゼ様分子をもたらし、それが順に、限定されるものでないがBAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織中のキチナーゼ様分子を含んで成る結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球などを挙げることができる、炎症性疾患に関連する多様な変化を媒介かつ/もしくはそれと関連することを立証するためである。
【0095】
従って、本明細書に開示されるデータは、炎症性疾患(ここで該疾患は増大されたTh2炎症応答により媒介かつ/もしくはそれと関連する)に苦しめられる哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の阻害がキチナーゼ様分子のレベルの低下を媒介し、それが順に疾患を治療することにより、該疾患を治療することができることを立証する。例えば、こうしたデータは、限定されるものでないが、Th2炎症応答が増大されたキチナーゼ様分子活性および増大されたキチナーゼ様分子発現を媒介する哺乳動物にキチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン)を投与することによる多様な組織の病状の阻害を挙げることができる。
【0096】
当業者は、キチナーゼ様分子が、それがとりわけそのアミノ酸配列に基づきキチナーゼファミリー分子として分類されているもしくは分類することができるような、既知のキチナーゼに対するかなりの程度の相同性を表す分子であることをさらに認識するであろう。さらに、当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子は既知のキチナーゼに対する相同性を表す可能性がある一方、キチナーゼ分子は、それらが当該技術分野で既知のアッセイにおいてキチンを検出可能に切断しなくてもよいために検出可能なキチナーゼ活性を立証する必要がないことを理解するであろう。こうしたキチナーゼ様分子は、限定されるものでないが酸性哺乳動物キチナーゼ(好酸球走化性サイトカイン)、YM1(キチナーゼ3−様3、ECF−L前駆体)、YM2、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1(BRP−39、キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40)、キトトリオシダーゼ、卵管糖タンパク質1(ムチン9、オビダクチン)、軟骨糖タンパク質−39(キチナーゼ3−様1、GP−39、YKL−40)および軟骨細胞タンパク質39(キチナーゼ3−様2、YKL−39)を挙げることができる。
【0097】
キチナーゼ様分子阻害剤は、化合物、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、リボザイムおよびアンチセンス核酸分子を包含することができるが、しかしこれらに制限されると解釈されるべきでない。
【0098】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤はキチナーゼ様分子の活性を阻害する化合物を包含することを容易に認識するであろう。キチナーゼ様分子阻害剤は当該技術分野で公知であり、また、キチナーゼ様分子阻害剤の一分類の重要な決定的な要素のいくつかは定義されている(SpindlerとSpindler−Barth、1999、Chitin and Chitinases、バークハウザー フェアラーク バーゼル(Birkhauser Verlag Basel)、スイス)。加えて、キチナーゼ様分子阻害剤は、化学分野の当業者に公知であるとおり、化学的に修飾された化合物および誘導体を包含する。
【0099】
当業者は、キチナーゼ様分子阻害剤が、限定されるものでないが、アロサミジン(アロサミジン(Allosamidine)、カーボハイドレート ケミストリー インダストリアル リサーチ リミテッド(Carbohydrate Chemistry Industrial Research Limited)、ニュージーランド・ローワーハット、およびイーライ リリー アンド カンパニー(Eli Lilly and Co.)、インジアナ州グリーンフィールド)ならびにその誘導体(例えば米国特許第5,413,991号明細書を参照されたい)、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン(Nishimotoら、1991、J.Antibiotics 44:716−722)デメチルアロサミジン(米国特許第5,070,191号明細書)、ならびにジデメチルアロサミジン(Zhouら、1993、J.Antibiotics 46:1582−1588)を挙げることができる、既に知られているキチナーゼ様分子阻害剤を包含することを認識するであろう。さらに企図されるキチナーゼ様分子阻害剤は、スチロガウニジンおよびその誘導体(Katoら、1995、Tetrahedron.Lett.36:2133−2136)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)(Izumidaら、1996、J.Antibiotics 49:76−80)、二価陽イオン(例えばCu2+、Zn2+およびHg2+)(Izumidaら、1995、J.Mar.Biotechnol.2:163−166;FunkeとSpindler、1989、Comp.Biochem Physiol.94B:691−695)、ならびにリボフラビンおよびフラビン誘導体(国際特許公開第WO 02/23991号明細書)を包含する。
【0100】
さらに、当業者は、本開示および本明細書に例示される方法を装備される場合に、キチナーゼ様分子阻害剤が、本明細書で詳細に記述されかつ/もしくは当該技術分野で既知のところのキチナーゼ様分子の阻害の生理学的結果のような薬理学の分野における公知の基準により同定することができるところの、今後発見されるような阻害剤を包含することを認識するであろう。従って、本発明は、本明細書で例示もしくは開示されるところのいずれかの特定のキチナーゼ様分子阻害剤にいかなる方法でも制限されず;むしろ、本発明は、当該技術分野で既知でありかつ今後発見されるところの、有用であることが当業者により理解されるであろう阻害剤を包含する。
【0101】
限定されるものでないが、天然に存在する供給源(すなわちストレプトミセス属スピーシーズ(Streptomyces sp.)、シュードモナス属スピーシーズ(Pseudomonas sp.)、スチロテラ アウランチウム(Stylotella aurantium))から阻害剤を得ることを挙げることができる、キチナーゼ様分子阻害剤のさらなる同定および製造方法が、当業者に公知である。あるいは、キチナーゼ様分子阻害剤は化学的に合成することができる。さらに、当業者は、本明細書に提供される教示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤を組換え生物体から得ることができることを認識するであろう。キチナーゼ様分子阻害剤を化学的に合成するための、および天然の供給源からそれらを得るための組成物および方法は当該技術分野で公知であり、そして、とりわけ、Yamadaら、米国特許第5,413,991号および同第5,070,191号明細書に記述される。
【0102】
当業者はまた、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子阻害剤が、キチナーゼ様分子、例えばAMCアーゼと特異的に結合してそれによりこれらのタンパク質の作用を阻害する抗体を包含することも認識するであろう。例えば、YMに特異的に結合する抗体は当業者に公知である(Webbら、2001、J.Biol.Chem.276:41969−41976)。同様に、キチナーゼ様分子に対する抗体は、本明細書に開示されるもしくは当業者に公知の標準的方法を使用して製造することができる(Harlowら、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。従って、本発明はいずれかの特定の抗体にいかなる方法でも制限されず;代わりに、本発明は、当該技術分野で既知かつ/もしくは今後同定されるのいずれかのキチナーゼ様分子と特異的に結合するいかなる抗体も包含する。
【0103】
当業者は、抗体はタンパク質、タンパク質をコードする核酸構築物、もしくは双方として投与することができることを認識するであろう。タンパク質もしくはタンパク質をコードする核酸構築物を細胞もしくは組織に投与するための多数のベクターおよび他の組成物ならびに方法が公知である。従って、本発明は、キチナーゼ様分子に特異的である抗体もしくは抗体(例えば合成抗体)をコードする核酸の投与方法を包含する。(Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold SpringHarbor Labratory)、ニューヨーク;Ausubelら、1997、Current Protocols in Molecular Biology、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク)。
【0104】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が目的のキチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体、もしくは該抗体をコードする核酸を投与することを包含することを理解することができ、ここで、抗体分子は、該抗体がキチナーゼ様分子と結合しそして細胞表面でのその発現および/もしくは細胞からのその輸出を予防するような細胞内保持配列をさらに含んで成る。頻繁に「イントラボディ(intrabody)」と称されるこうした抗体は当該技術分野で公知であり、かつ、例えばMarascoら(米国特許第6,004,490号明細書)およびBeerliら(1996、Breast Cancer Research and Treatment 38:11−17)に記述される。従って、本発明は、細胞上でのキチナーゼ様分子の発現および/もしくは細胞からのその分泌を阻害することを含んで成る方法を包含し、ここで、当業者は、こうした阻害が本明細書に提供される開示に基づき利益を提供するであろうことを理解するであろう。
【0105】
本発明は化合物、およびキチナーゼ様分子に対する抗体に制限されない。当業者は、ポリペプチドの発現を阻害することが、同様にポリペプチドの活性および機能の有効な阻害方法であることを認識するであろう。従って、キチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害することによるキチナーゼ様分子の阻害方法が提供される。遺伝子の発現の阻害方法は当業者に公知であり、そしてリボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を包含する。
【0106】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNA分子の何らかの部分に対し相補的であるDNAもしくはRNA分子である。細胞中に存在する場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、存在するmRNA分子にハイブリダイズし、そして遺伝子産物への翻訳を阻害する。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して遺伝子の発現を阻害することは、細胞中でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現方法(Inoue、米国特許第5,190,931号明細書)がそうであるように、当該技術分野で公知である(Marcus−Sekura、1988、Anal.Biochem.172:289)。
【0107】
当業者に公知の方法によって合成かつ細胞に提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドが本発明で企図される。一例として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10と約100との間、より好ましくは約15と約50との間のヌクレオチド長であるように合成することができる。核酸分子の合成は、未修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドに比較して生物学的活性を改良するための修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成(Tullis、1991、米国特許第5,023,243号明細書)がそうであるように、当該技術分野で公知である。
【0108】
同様に、遺伝子の発現は、それにより遺伝子の転写に影響を及ぼす、アンチセンス分子の遺伝子のプロモーターもしくは他の調節要素へのハイブリダイゼーションにより阻害されるかもしれない。目的の遺伝子と相互作用するプロモーターもしくは他の調節要素の同定方法は当該技術分野で公知であり、そして酵母2ハイブリッド系(BartelとFields編、The Yeast Two Hybrid System、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ノースカロライナ州ケアリー中)のような方法を包含する。
【0109】
あるいは、キチナーゼ様分子を発現する遺伝子の阻害はリボザイムの使用により達成することができる。遺伝子発現を阻害するためにリボザイムを使用することは当業者に公知である(例えば、Cechら、1992、J.Biol.Chem.267:17479;Hampelら、1989、Biochemistry 28:4929;Altmanら、米国特許第5,168,053号明細書を参照されたい)。リボザイムは、他の一本鎖RNA分子を切断する能力をもつ触媒的RNA分子である。リボザイムは配列特異的であることが既知であり、そして、従って特定のヌクレオチド配列を認識するように改変することができ(Cech、1988、J.Amer.Med.Assn.260:3030)、特定のmRNA分子の選択的切断を可能にする。ヌクレオチド配列のキチナーゼ様分子を考えれば、当業者は、本明細書に組み込まれる開示および言及を提供されて、過度の実験なしでアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはリボザイムを合成することができよう。
【0110】
当業者は、キチナーゼ様分子の遺伝子発現の阻害剤を、単独でもしくはそのいずれかの組合せで投与することができることを認識するであろう。さらに、キチナーゼ様分子阻害剤は、単独で、またはそれらを相互と同時に、その前および/もしくは後に投与してよいために時宜的な意味でそのいずれかの組合せで投与することができる。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、遺伝子発現を阻害するためのキチナーゼ様分子阻害剤を、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患を治療するのに使用することができること、ならびに、阻害剤は、治療の結果を達成するために単独でもしくは別の阻害剤とのいずれかの組合せで使用することができることを認識するであろう。
B.炎症性疾患の予防方法
当業者が本明細書に詳述される方法を包含する本開示を身につけた場合、本発明は、一旦疾患が確立した炎症性疾患の治療に制限されないことが認識されるであろう。とりわけ、疾患の症状は哺乳動物に対する損害の点までに明示されている必要はなく;実際、疾患は治療が投与される前に哺乳動物において検出される必要はない。すなわち、炎症性疾患からの重大な病状は、本発明が利益を提供しうる前に発生する必要はない。従って、本発明は、本明細書により完全に記述されるとおり、本明細書の別の場所で以前に論考されたところのキチナーゼ様分子阻害剤を炎症性疾患の発症前に哺乳動物に投与して、それにより本明細書で開示されるデータにより立証されるとおり疾患を予防することができるために、哺乳動物における炎症性疾患の予防方法を包含する。
【0111】
当業者は、本明細書の開示を身につけた場合に、炎症性疾患の予防が、炎症性疾患に対する予防手段としてキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与することを包含することを認識するであろう。本明細書で詳述されるとおり、キチナーゼ様分子に関連する炎症性疾患の症状および病因は、組織炎症、増大された肺容量、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の増大された好酸球、BAL液中の増大されたリンパ球、BAL液中の増大された全細胞、増大された肺胞の大きさ、肺組織中のキチナーゼ様分子より構成される結晶の増大された沈着、増大された気道抵抗性、増大された粘液化生、増大されたムチン発現、増大された実質線維症、増大された気道リモデリング、増大された上皮下線維症、気道組織における増大されたコラーゲン沈着、肺組織における上皮細胞肥大、マッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化などを包含する。これらの病因および本明細書の別の場所に開示される方法を考えれば、当業者は、疾患の病理学を検出することができる前にキチナーゼ様分子阻害剤を使用して哺乳動物における炎症性疾患を認識かつ予防することができる。
【0112】
これは、本明細書に開示されるデータが、限定されるものでないがアロサミジンを挙げることができるキチナーゼ様分子阻害剤の投与が、該疾患がアレルゲンにより誘発された(例えば卵アルブミン感作)にせよ、哺乳動物が疾患に対し遺伝的に素因を作られた(例えばIL−13を構成的にもしくは誘導可能に過剰発現するトランスジェニックマウス)にせよ、哺乳動物における炎症性疾患の発症を予防したことを立証するためである。従って、当業者は、本明細書の別の場所に提供される開示に基づき、本発明がキチナーゼ様分子阻害剤を使用してキチナーゼ様分子を阻害することを含んで成る疾患の予防方法を包含することを認識するであろう。さらに、本明細書の別の場所により完全に論考されるとおり、キチナーゼ様分子の阻害方法は、キチナーゼ様分子活性を阻害するのみならず、しかしまたキチナーゼ様分子をコードする核酸の発現を阻害するための極めて多数の技術も包含する。加えて、本明細書の別の場所で開示されるとおり、当業者は、本明細書に提供される教示を一旦身につければ、本発明が、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性が疾患を媒介する広範な疾患の予防方法を包含することを理解するであろう。疾患がキチナーゼ様分子の過剰発現もしくは増大された活性に関係するかどうかの評価方法は、本明細書の別の場所に開示されかつ/もしくは当該技術分野で公知である。さらに、本発明は、今後発見されるこうした疾患の治療もしくは予防を包含する。
【0113】
本発明はさらに、IL−13に媒介される炎症性疾患の治療方法を包含する。これは、本明細書に開示されるデータが立証するとおり、とりわけ肺におけるIL−13の過剰発現が、誘導可能にしろ構成的にしろ、とりわけ、本明細書の別の場所に記述される病状につながる呼吸器組織におけるキチナーゼ様分子の増大された発現を媒介もしくはそれと関連するためである。それにより、本発明は、本発明の方法を使用する、IL−13に媒介される炎症性疾患の治療方法を包含する。
【0114】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキチナーゼ様分子阻害剤の投与を包含し;当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、適切なキチナーゼ様分子阻害剤の処方および哺乳動物への投与方法を理解するであろう。事実、本明細書で例示されたとおり実施するためのキチナーゼ様分子阻害剤の成功裏の投与は、大きく減少されている。しかしながら、本発明はいずれかの特定の投与方法もしくは治療レジメンに制限されない。これは、キチナーゼ様分子阻害剤の投与方法が薬理学的技術の当業者により容易に決定されることができることが、炎症性疾患の技術に認識されるモデルを使用して実施するための大きな低減を包含する本明細書に提供される開示を装備された当業者により認識されるであろう場合に、とりわけ真実である。
【0115】
より具体的には、本明細書に開示されるデータは、IL−13の増大された発現がキチナーゼ様分子(例えばYm、AMCアーゼなど)の増大されたレベルを媒介もしくはそれと相関すること、また、とりわけ、キチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体を使用してキチナーゼ様分子を阻害することが炎症性疾患を予防、軽減かつ/もしくは治療することを立証する。すなわち、例えば、AMCアーゼのmRNAは、炎症性疾患の細胞および/もしくは組織中でより高レベルで発現され、また、AMCアーゼと特異的に結合する抗体の投与は、炎症性疾患の技術に認識された動物モデルにおいて疾患を治療する。さらに、本明細書に開示されるデータは、Ymの発現および化合物すなわち既知のキチナーゼ様分子阻害剤であるアロサミジンを使用するYmの阻害に関する類似の結果を立証する。当業者は、本発明がこれらのキチナーゼ様分子もしくはこれらのキチナーゼ様分子阻害剤に制限されず、かつ、本明細書に開示されるデータが、キチナーゼ様分子の阻害が炎症性疾患を効果的に治療かつ/もしくは予防することができることを十分に立証することを認識するであろう。
【0116】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、適切なキチナーゼ様分子阻害剤を組合せてよく、かつ、組合せの後に適切なキチナーゼ様分子阻害剤を哺乳動物に投与するのに使用することができる化学的組成物を意味する。
【0117】
本発明を実施するのに有用な製薬学的組成物は、約0.1ng/kg/日と100mg/kg/日との間の用量を送達するように投与してよい。
【0118】
本発明の方法で有用である製薬学的組成物は、経口の固体製剤、眼、坐剤、エアゾル、局所もしくは他の類似の製剤で全身に投与してよい。適切なキチナーゼ様分子阻害剤に加え、こうした製薬学的組成物は、製薬学的に許容できる担体、および薬物投与を高めかつ助長することが既知の他の成分を含有してよい。ナノ粒子、リポソーム、再封止(resealed)赤血球および免疫学的に基づく系のような他の可能な製剤もまた、本発明の方法に従って適切なキチナーゼ様分子阻害剤を投与するのに使用してもよい。
【0119】
本明細書に開示される疾患の治療のために処方しかつ哺乳動物に投与することができる、目的の疾患の治療および/もしくは予防のための潜在的な有用な化合物として本明細書に記述されるいずれかの方法を使用して同定される化合物を、今や記述する。
【0120】
本発明は、有効成分として本明細書に開示される疾患の治療に有用な化合物を含んで成る、製薬学的組成物の製造および使用を包含する。こうした製薬学的組成物は、被験体への投与に適する形態の有効成分単独よりなってもよいか、あるいは、製薬学的組成物は、有効成分および1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容できる担体、1種もしくはそれ以上の付加的な成分、またはこれらの何らかの組合せを含んでよい。有効成分は、当該技術分野で公知であるところの生理学的に許容できる陽イオンもしくは陰イオンと組合せのような生理学的に許容できるエステルもしくは塩の形態で製薬学的組成物中に存在してよい。
【0121】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、有効成分をそれと組合せてよく、かつ、組合せの後に被験体に有効成分を投与するのに使用することができる化学的組成物を意味する。
【0122】
本明細書で使用されるところの「生理学的に許容できる」エステルもしくは塩という用語は、組成物が投与されるべきである被験体に対し有害でない、製薬学的組成物のいかなる他の成分とも適合性である有効成分のエステルもしくは塩の形態を意味する。
【0123】
本明細書に記述される製薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で既知のもしくは今後開発されるいずれの方法により製造してもよい。一般に、こうした準備方法は、有効成分を担体または1種もしくはそれ以上の他の補助成分との連合にもたらすこと、およびその後、必要もしくは望ましい場合は、所望の単一もしくは複数の用量単位に生成物を造形もしくは包装することの段階を包含する。
【0124】
本明細書で提供される製薬学的組成物の記述は原則としてヒトへの倫理的投与に適する製薬学的組成物に向けられるとは言え、こうした組成物は全部の種類の動物への投与に一般に適することが当業者により理解されるであろう。該組成物を多様な動物への投与に適するようにするための、ヒトへの投与に適する製薬学的組成物の改変は、十分に理解されており、そして、普通に熟練した家畜薬理学者は、あるとしてもただ通常の実験を用いてこうした改変を設計かつ実施することができる。本発明の製薬学的組成物の投与が企図される被験体は、限定されるものでないが、ヒトおよび他の霊長類、畜牛、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に有意義な哺乳動物を包含する哺乳動物、ならびにニワトリ、アヒル、ガチョウおよびシチメンチョウのような商業的に有意義な鳥類を包含する鳥類を挙げることができる。
【0125】
本発明の方法で有用である製薬学的組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、頬側、静脈内、眼、クモ膜下もしくは別の投与経路に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。他の企図される製剤は、有効成分を含有する突起を付けられた(projected)ナノ粒子、リポソーム製剤、再封止赤血球、および免疫学的に基づく製剤を包含する。
【0126】
本発明の製薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、もしくは複数の単一の単位用量として製造、包装もしくは販売してよい。本明細書で使用されるところの「単位用量」は、予め決められた量の有効成分を含んで成る製薬学的組成物の別個の量である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与することができる有効成分の投薬量、または例えばこうした投薬量の半分もしくは1/3のようなこうした投薬量の便宜的画分に等しい。
【0127】
本発明の製薬学的組成物中の有効成分、製薬学的に許容できる担体およびいずれかの付加的成分の相対量は、治療される被験体の正体(identity)、大きさおよび病状に依存して、ならびに該組成物が投与されるべきである経路にさらに依存して、変動することができる。例として、組成物は0.1%と100%(w/w)との間の有効成分を含んでよい。
【0128】
有効成分に加えて、本発明の製薬学的組成物は、1種もしくはそれ以上の付加的な製薬学的有効成分をさらに含んでよい。とりわけ企図される付加的作用物質は、制吐薬ならびにシアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのようなスカベンジャーを包含する。
【0129】
本発明の製薬学的組成物の制御もしくは持続性放出製剤が慣習的技術を使用して作成されるかもしれない。
【0130】
経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の製剤は、それぞれ予め決められた量の有効成分を含有する、限定されるものでないが錠剤、硬もしくは軟カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤(troche)またはトローチ剤(Lozenge)を挙げることができる別個の固体の用量単位の形態で製造、包装もしくは販売してよい。経口投与に適する他の製剤は、限定されるものでないが、粉末にされたもしくは顆粒の製剤、水性もしくは油性懸濁剤、水性もしくは油性溶液、または乳剤を挙げることができる。
【0131】
本明細書で使用されるところの「油性」液体は、炭素を含有する液体分子を含んで成りかつ水より少なく極性の特徴を表すものである。
【0132】
有効成分を含んで成る錠剤は、例えば、有効成分を場合によっては1種もしくはそれ以上の付加的成分とともに圧縮もしくは成形することにより作成してよい。圧縮錠剤は、場合によっては結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤および分散剤の1種もしくはそれ以上と混合された粉末もしくは顆粒製剤のような自由に流動する形態の有効成分を適する装置中で圧縮することにより製造してよい。成形錠剤は、有効成分、製薬学的に許容できる担体、および混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体の混合物を適する装置中で成形することにより作成してよい。錠剤の製造で使用される製薬学的に許容できる賦形剤は、限定されるものでないが不活性希釈剤、顆粒化剤および崩壊剤、結合剤ならびに滑沢剤を挙げることができる。既知の分散剤は、限定されるものでないがバレイショデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを挙げることができる。既知の界面活性剤は、限定されるものでないがラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。既知の希釈剤は、限定されるものでないが炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、微晶質セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムを挙げることができる。既知の顆粒化剤および崩壊剤は、限定されるものでないがトウモロコシデンプンおよびアルギン酸を挙げることができる。既知の結合剤は、限定されるものでないがゼラチン、アラビアゴム、糊化済(pre−gelatinized)トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを挙げることができる。既知の滑沢剤は、限定されるものでないがステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクを挙げることができる。
【0133】
錠剤はコーティングしなくてよいか、もしくは、それらは被験体の消化管での遅らされる崩壊の既知の達成方法を使用してコーティングして、それにより有効成分の持続性の放出および吸収を提供してよい。例として、モノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリルのような物質を使用して錠剤をコーティングしてよい。さらに、例として、錠剤は、浸透圧で制御される放出錠剤を形成するために米国特許第4,526,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号明細書に記述される方法を使用してコーティングしてよい。錠剤は、製薬学的に洗練されかつ味のよい製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色剤、保存剤もしくはこれらの何らかの組合せをさらに含んでもよい。
【0134】
有効成分を含んで成る硬カプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成してよい。こうした硬カプセル剤は有効成分を含んで成り、また、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンのような不活性の固体希釈剤を包含する付加的な成分をさらに含んでもよい。
【0135】
有効成分を含んで成る軟ゼラチンカプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成してよい。こうした軟カプセル剤は、水、またはラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油のような油媒体と混合してよい有効成分を含んで成る。
【0136】
経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態、または使用前に水もしくは別の適するベヒクルを用いる再構成に意図される水分を含まない生成物の形態のいずれかで製造、包装および販売してよい。
【0137】
液体懸濁剤は、水性もしくは油性のベヒクル中の有効成分の懸濁物の慣習的達成方法を使用して製造してよい。水性ベヒクルは例えば水および等張の生理的食塩水を包含する。油性ベヒクルは、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱物油を包含する。液体懸濁剤は、さらに、限定されるものでないが懸濁化剤、分散剤もしくは湿潤剤、乳化剤、緩和剤、保存剤、緩衝剤、塩、着香料、着色剤および甘味料を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。油性懸濁剤は増粘剤をさらに含んでもよい。既知の懸濁化剤は、限定されるものでないが、ソルビトールシロップ、水素化可食脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アラビアゴム、ならびに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体を挙げることができる。既知の分散剤もしくは湿潤剤は、限定されるものでないが、レシチンのような天然に存在するホスファチド、脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステル、もしくは脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとのアルキレンオキシドの縮合生成物(例えば、それぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を挙げることができる。既知の乳化剤は、限定されるものでないがレシチンおよびアラビアゴムを挙げることができる。既知の保存剤は、限定されるものでないが、パラヒドロキシ安息香酸メチル、エチルもしくはn−プロピル、アスコルビン酸およびソルビン酸を挙げることができる。既知の甘味料は、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖およびサッカリンを包含する。油性懸濁剤のための既知の増粘剤は、例えばミツロウ、固形パラフィンおよびセチルアルコールを包含する。
【0138】
水性もしくは油性溶媒中の有効成分の液体溶液は、液体懸濁剤と実質的に同一の様式で製造してよく、主な差異は有効成分が溶媒中に懸濁されるよりむしろ溶解されることである。本発明の製薬学的組成物の液体溶液は、液体懸濁剤に関して記述された成分のそれぞれを含んでよく、懸濁化剤が溶媒中の有効成分の溶解を必ずしも補助することができるわけでないことが理解される。水性溶媒は例えば水および等張の生理的食塩水を包含する。油性溶媒は、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱物油を包含する。
【0139】
本発明の製薬学的組成物の粉末にされたおよび顆粒の製剤は既知の方法を使用して製造することができる。例えば錠剤を形成するため、カプセルを充填するため、または、それへの水性もしくは油性ベヒクルの添加により水性もしくは油性の懸濁剤もしくは溶液を製造するために使用される、こうした製剤は被験体に直接投与してよい。これらの製剤のそれぞれは、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および保存剤の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。増量剤および甘味料、着香料もしくは着色剤のような付加的な賦形剤もまた、これらの製剤中に包含してよい。
【0140】
本発明の製薬学的組成物は、水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤の形態でもまた製造、包装もしくは販売してよい。油相はオリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、流動パラフィンのような鉱物油、またはこれらの組合せであってよい。こうした組成物はさらに、アラビアゴムもしくはトラガカントガムのような天然に存在するガム、ダイズもしくはレシチンホスファチドのような天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトール無水物の組合せ由来のエステルもしくは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなエチレンオキシドとのこうした部分エステルの縮合生成物のような1種もしくはそれ以上の乳化剤を含んでもよい。これらの乳剤はまた、例えば甘味料もしくは着香料を包含する付加的成分も含有してよい。
【0141】
本発明の製薬学的組成物は直腸投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした組成物は、例えば坐剤、保持浣腸製剤、および直腸もしくは結腸洗浄のための溶液の形態にあってよい。
【0142】
坐剤製剤は、通常の室温(すなわち約20℃)で固体でありかつ被験体の直腸体温(すなわち健康なヒトで約37℃)で液体である、非刺激性の製薬学的に許容できる賦形剤と有効成分を組合せることにより作成してよい。適する製薬学的に許容できる賦形剤は、限定されるものでないがカカオバター、ポリエチレングリコールおよび多様なグリセリドを挙げることができる。坐剤製剤は、さらに、限定されるものでないが抗酸化剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0143】
直腸もしくは結腸洗浄のための保持浣腸製剤もしくは溶液は、有効成分を製薬学的に許容できる液体担体と組合せることにより作成してよい。当該技術分野で公知であるとおり、浣腸製剤は、被験体の直腸の解剖学に適合された送達装置を使用して投与してよく、かつ、それ内に包装してよい。浣腸製剤はさらに、限定されるものでないが抗酸化剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0144】
本発明の製薬学的組成物は膣投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした組成物は、例えば、坐剤、タンポンのような含浸もしくは被覆された膣に挿入可能な物質、灌注製剤、または膣洗浄のためのゲル剤もしくはクリーム剤もしくは溶液の形態にあってよい。
【0145】
化学的組成物での物質の含浸もしくは被覆方法は当該技術分野で既知であり、そして、限定されるものでないが、表面上への化学的組成物の沈着もしくは結合方法、物質(すなわち生理学的に分解可能な物質のような)の合成の間の物質の構造中への化学的組成物の組込み方法、およびその後の乾燥を伴うもしくは伴わない吸着体物質中への水性もしくは油性の溶液もしくは懸濁剤の吸収方法を挙げることができる。
【0146】
膣洗浄のための灌注製剤もしくは溶液は、製薬学的に許容できる液体担体と有効成分を組合わせることにより作成してよい。当該技術分野で公知であるとおり、灌注製剤は、被験体の膣の解剖学に適合された送達装置を使用して投与してよく、かつ、それ内に包装してよい。灌注製剤はさらに、限定されるものでないが抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を挙げることができる多様な付加的成分を含んでもよい。
【0147】
本明細書で使用されるところの製薬学的組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的破壊(breaching)および組織の裂け目を通る製薬学的組成物の投与を特徴とするいかなる投与経路も包含する。非経口投与は、従って、限定されるものでないが、組成物の注入、外科的切開を通る組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷を通る組成物の適用などによる製薬学的組成物の投与を挙げることができる。とりわけ、非経口投与は、限定されるものでないが皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、槽内の注入、および腎透析注入技術を挙げることができることを企図している。
【0148】
非経口投与に適する製薬学的組成物の製剤は、滅菌水もしくは滅菌の等張の生理的食塩水のような製薬学的に許容できる担体と組合せられた有効成分を含んで成る。こうした製剤は、ボーラス投与もしくは継続的投与に適する形態で製造、包装もしくは販売してよい。注入可能な製剤は、アンプル、もしくは保存剤を含有する複数用量の容器中のような単位投与剤形で製造、包装もしくは販売してよい。非経口投与のための製剤は、限定されるものでないが、水性もしくは液体のベヒクル中の懸濁剤、溶液、乳剤、パスタ剤、および埋込可能な持続放出もしくは生物分解可能な製剤を挙げることができる。こうした製剤はさらに、限定されるものでないが懸濁化剤、安定剤もしくは分散剤を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。非経口投与のための製剤の一態様において、有効成分は、再構成される組成物の非経口投与前に適するベヒクル(例えば滅菌の発熱性物質を含まない水)との再構成のための水分を含まない(すなわち粉末もしくは顆粒)形態で提供される。
【0149】
該製薬学的組成物は、滅菌の注入可能な水性もしくは油性の懸濁剤もしくは溶液の形態で製造、包装もしくは販売してよい。この懸濁剤もしくは溶液は、既知技術に従って処方してよく、また、有効成分に加えて、本明細書に記述される分散剤、湿潤剤もしくは懸濁化剤のような付加的成分を含んでよい。こうした滅菌の注入可能な製剤は、例えば水もしくは1,3−ブタンジオールのような非毒性の非経口で許容できる希釈剤もしくは溶媒を使用して製造してよい。他の許容できる希釈剤および溶媒は、限定されるものでないが、リンゲル液、等張の塩化ナトリウム溶液、および合成のモノもしくはジグリセリドのような不揮発性油を挙げることができる。有用である他の非経口で投与可能な製剤は、微晶質の形態の、リポソーム製剤中に、もしくは生物分解可能なポリマー系の一成分として有効成分を含んで成るものを包含する。持続性放出もしくは埋込のための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、わずかに可溶性のポリマーもしくはわずかに可溶性の塩のような、製薬学的に許容できるポリマーもしくは疎水性物質を含んでよい。
【0150】
局所投与に適する製剤は、限定されるものでないが、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤もしくはパスタ剤のような水中油もしくは油中水型乳剤、および溶液もしくは懸濁剤のような、液体もしくは半液体製剤を挙げることができる。局所で投与可能な製剤は、例えば約1%から約10%(w/w)までの有効成分を含んでよいが、とは言え、有効成分の濃度は溶媒中の有効成分の溶解性の限度くらい高くてもよい。局所投与のための製剤はさらに、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上を含んでもよい。
【0151】
本発明の製薬学的組成物は、頬腔を介する肺投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、有効成分を含んで成りかつ約0.5から約7ナノメートルまで、および好ましくは約1から約6ナノメートルまでの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んでよい。こうした組成物は、便宜的に、粉末を分散させるためにそれに噴射剤の流れを向けてよい乾燥粉末リザーバを含んで成る装置を使用するか、または封止された溶液中の低沸点噴射剤中に溶解もしくは懸濁された有効成分を含んで成る装置のような自己噴射溶媒/粉末分注容器を使用する投与のための乾燥粉末の形態にある。好ましくは、こうした粉末は、粒子の重量の最低98%が0.5ナノメートル以上の直径を有しかつ粒子数の最低95%が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含んで成る。より好ましくは、粒子の重量の最低95%が1ナノメートル以上の直径を有し、かつ、粒子数の最低90%が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは、糖のような固体の微細な粉末希釈剤を包含し、そして、便宜的には単位投与剤形で提供される。
【0152】
低沸点噴射剤は、一般に、大気圧で65°Fより下の沸点を有する液体噴射剤を包含する。一般に、噴射剤は組成物の50ないし99.9%(w/w)を構成してよく、そして有効成分は組成物の0.1ないし20%(w/w)を構成してよい。噴射剤はさらに、液体の非イオン性もしくは固体の陰イオン性界面活性剤、または固体の希釈剤のような付加的成分(好ましくは有効成分を含んで成る粒子と同一の桁の粒子径を有する)を含んでもよい。
【0153】
肺送達のため処方される本発明の製薬学的組成物はまた、溶液もしくは懸濁剤の液滴の形態で有効成分を提供してもよい。こうした製剤は、有効成分を含んで成る、場合によっては滅菌の、水性もしくは希薄なアルコール溶液もしくは懸濁剤として製造、包装もしくは販売してよく、そして、便宜的には、いずれかの霧状化(nebulization)もしくは霧化(atomization)装置を使用して投与してよい。こうした製剤はさらに、限定されるものでないが、サッカリンナトリウムのような着香料、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、もしくはヒドロキシ安息香酸メチルのような保存剤を挙げることができる1種もしくはそれ以上の付加的成分を含んでもよい。この投与経路により提供される液滴は、好ましくは約0.1から約200ナノメートルまでの範囲の平均直径を有する。
【0154】
肺送達に有用であるとして本明細書に記述される製剤はまた、本発明の製薬学的組成物の鼻内送達にも有用である。
【0155】
鼻内投与に適する別の製剤は、有効成分を含んで成りかつ約0.2から500マイクロメートルまでの平均粒子を有する粗い粉末である。こうした製剤は、鼻から吸入する薬用粉末が摂取される様式で、すなわち鼻孔近くに保持される粉末の容器から鼻通路を通る迅速吸入により投与される。
【0156】
鼻投与に適する製剤は、例えば約0.1%(w/w)くらい少なくからかつ約100%(w/w)くらい多くの有効成分を含んでよく、また、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。
【0157】
本発明の製薬学的組成物は、頬側投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、例えば、慣習的方法を使用して作成される錠剤もしくはトローチ剤(lozenge)の形態にあってよく、そして、例えば0.1ないし20%(w/w)の有効成分を含有してよく、残余は経口で溶解可能もしくは分解可能な組成物、および場合によっては本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上を含んで成る。あるいは、頬側投与に適する製剤は、有効成分を含んで成る粉末、またはエアゾル化もしくは霧化される溶液もしくは懸濁剤を含んでよい。こうした、粉末にされる、エアゾル化されるもしくはエアゾル化される製剤は、分散される場合に、好ましくは約0.1から約200ナノメートルまでの範囲の平均の粒子もしくは液滴径を有し、かつ、本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上をさらに含んでもよい。
【0158】
本発明の製薬学的組成物は、眼投与に適する製剤で製造、包装もしくは販売してよい。こうした製剤は、例えば、水性もしくは油性の液体担体中に例えば有効成分の0.1〜1.0%(w/w)の溶液もしくは懸濁剤を包含する点眼薬の形態にあってよい。こうした点剤はさらに、緩衝剤、塩または本明細書に記述される付加的成分の1種もしくはそれ以上の他者を含んでよい。有用である、他の眼に投与可能な製剤は、微晶質の形態もしくはリポソーム製剤中に有効成分を含んで成るものを包含する。
【0159】
本明細書で使用されるところの「付加的成分」は、限定されるものでないが、以下、すなわち賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味料;着香料;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性のベヒクルおよび溶媒;油性のベヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤もしくは湿潤剤;乳化剤;緩和剤;緩衝剤;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;ならびに製薬学的に許容できるポリマーもしくは疎水性物質の1種もしくはそれ以上を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物中に包含してよい他の「付加的成分」は当該技術分野で既知であり、かつ、例えばGenaro編、1985、Remington’s Pharmaceutical Sciences、マック パブリッシング カンパニー(Mack Publishing Co.)、フィラデルフィア州イーストン(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述される。
【0160】
典型的には、動物、好ましくはヒトに投与してよい本発明の化合物の投薬量は、動物の体重1キログラムあたり約0.01mgから約100gまでの量の範囲にわたる。同時に、投与される正確な投薬量は、限定されるものでないが治療されている動物の型および疾患状態の型、動物の齢ならびに投与経路を挙げることができるいずれかの数の因子に依存して変動することができる。好ましくは、化合物の投薬量は、動物の体重1キログラムあたり約1mgから約100mgまで変動することができる。より好ましくは、投薬量は動物の体重1キログラムあたり約1μgから約1gまで変動することができる。化合物は1日数回くらい頻繁に動物に投与することができるか、あるいは、それは、1日1回、週1回、2週間ごとに1回、月1回のようにより少なく頻繁に、あるいは、数ヶ月ごとに1回またはなお年1回もしくはそれ未満のようななおより少なく頻繁に投与することができる。投与の頻度は当業者に容易に明らかであることができ、そして、限定されるものでないが、治療されている疾患の型および重症度、動物の型および齢などを挙げることができるいずれかの数の因子に依存することができる。
E.有用な化合物の同定方法
本発明は、炎症性疾患を治療する化合物もしくは介入の同定方法を包含する。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、キチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を評価することを、とりわけ、細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのレベルなどを評価することにより実施することができ、そしてその後、該レベルを、化合物が投与されない以外は同一の細胞もしくは組織中のレベルと比較することができることを認識するであろう。あるいは、化合物と接触された細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのレベルを、化合物の投与前の該細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子もしくはそのmRNAのレベルと比較することができる。当業者は、こうした化合物が、炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するため、ならびにIL−13に媒介される炎症性疾患を治療かつ予防するため、ならびに/またはTh2炎症応答に関連しかつ/もしくはそれにより媒介される疾患を治療するための有用な潜在的治療薬である可能性があることを理解するであろう。
【0161】
当業者は、キチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物の同定方法が、化合物を細胞、組織もしくは動物に投与する方法を包含することをさらに認識するであろう。すなわち、当業者は、本開示で武装される場合に、本明細書の教示を使用して、キチナーゼ様分子を発現する細胞もしくは組織中でキチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物を同定することができることを認識するであろう。こうした細胞および組織は当該技術分野で公知であり、そして、変えられた発現のIL−13、IL−4および/もしくはキチナーゼ様分子を有するトランスジェニックの非ヒト動物由来の細胞および組織、あるいは炎症性疾患を含んで成るトランスジェニック動物、ならびに/またはそれ由来の細胞もしくは組織を包含することができる。
【0162】
加えて、キチナーゼ様分子の発現を含んで成る細胞もしくは組織を化合物と接触させることができ、そして、キチナーゼ様分子のレベルを評価しかつ化合物の投与前の細胞および/もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルと比較することができる。さらに、キチナーゼ様分子のレベルを、化合物と接触されないそれ以外は同一の細胞もしくは組織におけるキチナーゼ様分子のレベルと比較することができる。
【0163】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、該細胞もしくは組織が内在性のキチナーゼ様分子を発現することができることを認識するであろうが、しかし、本発明はさらに、組織中で別の方法で発現されないキチナーゼ様分子を発現するよう改変されている細胞もしくは組織を包含し、例えば、目的のキチナーゼ様分子をコードする核酸を、それが典型的に発現されないかまたは該核酸が該細胞もしくは組織中に導入された後と異なるレベルで発現される細胞もしくは組織中に導入かつ発現させることができる。従って、本発明は、キチナーゼ様分子のレベルを化合物の存在もしくは非存在下で評価することができる、細胞、組織もしくは動物を含んで成る極めて多数のアッセイを包含する。従って、当業者は、本明細書に開示される方法、ならびにキチナーゼ様分子のレベルに影響を及ぼす化合物の能力を評価するための当該技術分野で公知の細胞培養および細胞繁殖技術を使用して、化合物を同定することが可能であろう。従って、本発明はさらに、細胞もしくは組織、ならびに動物中でキチナーゼ様分子を阻害するのに有用な化合物の同定方法を包含する。
【0164】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、本発明が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法を包含することを理解するであろう。本明細書に提供される教示で武装される当業者により理解されるであろうとおり、該方法は、細胞もしくは組織における炎症性疾患を治療する化合物を同定することを包含する。該方法は、哺乳動物中(その細胞もしくは組織中を包含する)、好ましくは気道におけるキチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性を阻害する物質もしくは化合物を同定することを含んで成る。これは、本明細書の別の場所で論考されるとおり、該データが、キチナーゼ様分子の発現もしくは活性を阻害することが治療上の利益を提供し、それによりキチナーゼ様分子の増大された発現もしくは活性により媒介されるもしくはそれと関連する炎症性疾患を治療もしくは予防することを立証するためである。これは、本発明が、キチナーゼ様分子の増大されたレベルがこうした疾患と関連するもしくはそれを媒介すること、および、キチナーゼ様分子阻害剤(例えばアロサミジン、限定されるものでないがAMCアーゼと特異的に結合する抗体を挙げることができるキチナーゼ様分子に特異的な抗体)を使用してキチナーゼ様分子(例えばYM、AMCアーゼなど)を阻害することが該疾患を予防かつ/もしくは治療することを初めて開示するためである。
【0165】
従って、当業者は、本発明の教示を一旦身につければ、キチナーゼ様分子を阻害する化合物が炎症性疾患の強力な潜在的な治療的もしくは予防的治療となり、その結果こうした化合物の同定がこうした疾患の潜在的治療薬を同定することを認識するであろう。
【0166】
該方法は、炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、ならびに、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを該化合物の投与の前および後に比較することを含んで成る。当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、化合物の投与前のキチナーゼ様分子もしくはそのmRNAのレベルと比較しての該化合物の投与後の哺乳動物におけるキチナーゼ様分子もしくはそれをコードするmRNAのより低いレベルが、該化合物が哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることを示すことを理解するであろう。
【0167】
これは、本明細書の別の場所で以前に述べられたとおり、動物においてキチナーゼ様分組成物を阻害することが、増大されたキチナーゼ様分子の発現および/もしくは活性と関連する疾患、例えば高められた組織リモデリングおよび線維症を伴う炎症性疾患を治療もしくは予防することが発見されたためである。当業者はまた、本明細書に提供される開示を鑑み、その細胞もしくは組織を包含する哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを測定するためのアッセイが、当該技術分野で公知のもの、もしくは今後開発されるべきもの(その全部を、化合物の投与の前および後の哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)中のキチナーゼ様分子のレベルを評価するのに使用することができる)を包含することも認識するであろう。当業者はさらに、本明細書の別の場所に開示されるところのキチナーゼ様分子のレベルが、キチナーゼ様分子の活性のレベルおよびキチナーゼ様分子の発現のレベルを包含することを認識するであろう。さらに、本発明は、本方法を使用して同定される化合物を包含する。
【0168】
本発明はさらに、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子およびそれにより炎症性疾患を阻害するのに有用な化合物の付加的な同定方法を包含する。より具体的には、該方法は、それに化合物が投与されない同一の哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)に比較して該化合物が投与される哺乳動物(またはその細胞もしくは組織)におけるキチナーゼ様分子の発現、産生もしくは活性のレベルを評価することを含んで成る。加えて、該方法は、目的の化合物の投与の前および後の同一の哺乳動物またはその細胞もしくは組織中のキチナーゼ様分子のレベルを比較することを含んで成る。化合物が投与されない同一の哺乳動物、もしくは該化合物の投与前の同一の哺乳動物に比較した場合の、該化合物を投与された哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の発現、産生もしくは活性のより低いレベルは、該化合物がキチナーゼ様分子を阻害するのに有用であることの指標となり、それは従って、哺乳動物における炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するための有用な潜在的治療薬である。これは、本発明が、キチナーゼ様分子が炎症性疾患の病理学において明瞭な役割を演じていること、および、キチナーゼ様分子を阻害することが、炎症性疾患の技術に認識された動物モデルにおいて疾患を治療かつ/もしくは予防することを初めて開示するためである。明らかに、本明細書の別の場所で立証されるとおり、キチナーゼ様分子を阻害する化合物は、本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、炎症性疾患の治療および予防に有用な、重要な潜在的治療化合物である。
【0169】
本明細書の別の場所で詳述されるとおり、多くの炎症性疾患の病状は冒された細胞もしくは組織中のIL−13の発現により媒介される。さらに、本開示を装備された当業者により認識されるであろうとおり、IL−13に媒介される炎症性疾患の病状は、部分的に、冒された細胞、器官もしくは系におけるキチナーゼ様分子の発現による。上に詳述された方法は、その中のキチナーゼ様分子のレベルを本明細書に記述される方法を使用して容易に評価することができる哺乳動物を包含する。それにより、本発明は、炎症性疾患の治療もしくは予防に使用することができる化合物を同定するのに有用な哺乳動物を包含する。より具体的には、本発明は、気道においてIL−13を構成的にもしくは誘導可能にのいずれかで発現するトランスジェニック動物を包含する。本明細書に提供される開示に基づけば、こうしたトランスジェニック哺乳動物は、化合物を投与される場合に、該アッセイがキチナーゼ様分子の発現についてであるにしろキチナーゼ様分子の活性についてであるにしろ、キチナーゼ様分子のレベルについて容易にアッセイすることができる。また、化合物がキチナーゼ様分子を阻害するかどうかを評価するためのトランスジェニック非ヒト哺乳動物の使用に関する、炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防するのに有用な化合物のこうした同定方法が、本発明に包含される。
II.キット
本発明は、本明細書の別の場所で開示されるとおりキチナーゼ様分子を阻害することが哺乳動物における炎症性疾患の治療もしくは予防方法を提供するために有用である、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子を阻害することに関する多様なキットを包含する。従って、一局面において、本発明は哺乳動物における炎症性疾患を治療するためのキットを包含する。該キットは有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を含んで成る。該キットはさらに、本明細書で提供される教示に従って使用されるべきアプリケーターおよびその使用のための説明資料を含んで成る。
【0170】
本発明は、キチナーゼ様分子を特異的に結合する抗体、ならびにこうした抗体をコードする核酸、キチナーゼ様分子をコードするがしかし転写に関してアンチセンスの向きの核酸に相補的な核酸、一本鎖のキチナーゼ様分子RNAを切断することが可能なリボザイムのような化合物、アプリケーター、および本発明の方法を実施するための該化合物の使用を記述する説明資料を含んで成る多様なキットを包含する。例示のキットを下述するとは言え、他の有用なキットの内容は本開示に照らして当業者に明らかであろう。これらのキットのそれぞれは本発明内に包含される。
【0171】
一局面において、本発明は、炎症性疾患およびIL−13により媒介される炎症性疾患を治療もしくは予防するためのキットを包含する。該キットは、本発明に開示される方法に従って使用される。簡潔には、該キットを使用して、キチナーゼ様分子を阻害する化合物、またはキチナーゼ様分子の発現を低下させるために転写に関して核酸がアンチセンスの向きにある、キチナーゼ様分子をコードする核酸に相補的な核酸、またはキチナーゼ様分子と特異的に結合する抗体もしくは該抗体をコードする核酸と、哺乳動物を接触させてよく、ここで、キチナーゼ様分子の低下された発現、量もしくは活性が該哺乳動物における有益な効果を媒介する。さらに、該キットは、アプリケーター、および該キットの使用のための説明資料を含んで成る。これらの説明書は、単純に、本明細書に提供される例を例示する。
【0172】
該キットは製薬学的に許容できる担体を包含する。該組成物は本明細書の別の場所で示されるところの適切な量で提供される。さらに、投与経路および投与頻度は、本明細書の別の場所で以前に示されたとおりである。
実験実施例
本発明は今や、以下の実施例に関して記述される。これらの例は具体的説明のみの目的上提供され、また、本発明は、これらの実施例に制限されるといかなる方法でも解釈されるべきでなく、しかし、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいかなるかつ全部の変形も包含すると解釈されるべきである。
【0173】
本実施例で提示される実験で使用される材料および方法を今や記述する。
材料および方法
トランスジェニックマウスの生成:肺組織特異的IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスはCC10−IL−13構築物を使用して生成させた。Clara細胞10kDaタンパク質(CC10)プロモーター、マウスIL−13 cDNA、逆テトラサイクリントランスアクチベーター(rtTA)、ならびにヒト成長ホルモンのイントロンおよびポリアデニル化配列(hGH)を含んで成る構築物を、Zhuら(1999、J.Clin.Invest.103:779−788)に記述されるとおり調製した。標準的前核注入をHoganら(1986、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述されるとおり実施した。結果として生じるマウスをスクリーニングし、そしてサザンブロットおよびPCR双方を使用して始祖動物を同定した。始祖マウスはZhuら(1999、J.Clin.Invest.103:779−788)に記述されるとおりにC57BL/6背景で繁殖させた。
【0174】
外的に調節可能なトランスジェニックマウス系の生成は2構築物を含んだ(図5)。Zhengら(2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるところの第一の構築物(CC10−rtTA−hGH)は、CC10プロモーター、rtTAトランスアクチベーター、ならびにhGHのイントロン、核局在化およびポリアデニル化配列を含んだ。rtTA融合タンパク質は、突然変異されたtetオペレーター結合タンパク質(tet−OBP)およびヘルペスウイルスVP−16トランスアクチベーター(Gossenら、1995、Science 268:1766−1769)を含んだ。ポリマーのテトラサイクリンオペレーター(tet−O)、最小のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、IL−13 cDNA、ならびにhGHのイントロン、ポリアデニル化および核局在化シグナルを含まれた第二の構築物(tet−O−CMV−IL−13)は、RayらおよびZhengら(1997、J.Clin.Invest.100:2501−2511および2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるとおり調製した。トランスジェニックマウスはHoganら(1986、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述されるところの卵母細胞中への構築物の同時微小注入により調製した。マウスを、ZhuらおよびZhengら(1999、J.Clin.Invest.、103:779−788)に記述されるとおり尾生検DNAからのPCRおよびサザンブロットによりスクリーニングした。その後、4種の始祖マウスを、C57BL/6マウスを用いて繁殖させて、肺における誘導可能なIL−13発現を伴うトランスジェニックマウスを創製した。
【0175】
抗AMCアーゼ抗体の生成および投与
AMCアーゼに対するポリクローナル抗体は、当該技術分野で公知かつ例えばHarlowら(1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述される方法を使用して、AMCアーゼ由来のペプチド(ADKADGLYPVADDRNAFWQ;配列番号13)でウサギを免疫化することにより生成させた。
【0176】
野性型マウスをOVAに感作させ、そして、本明細書の別の場所に記述されるとおり連続する3日にOVAで攻撃した。感作されたマウスに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清を、第一のエアゾル曝露前日に開始して1日おきに腹腔内に投与した。
【0177】
組織学的分析:マウスを頚部脱臼により殺し、そして正中胸骨切開術を実施した。カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で右心を灌流した。心および肺を集団で取り出し、そして、肺を、中性緩衝10%ホルマリンを用いて25cm圧に対し固定した。その後、それらを10%ホルマリン中で一夜固定し、パラフィン中に埋込み、5μmで薄片にしそして染色した。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、マロリー3色、ジアスターゼを用いる断続的酸−シッフ(D−PAS)、pH2.5でのアルシアンブルー、PAS/アルシアンブルー、改変コンゴーレッドおよびパパニコロー染色を組織学的分析に使用した。
【0178】
ヒドロキシプロリンアッセイ
全肺コラーゲンをヒドロキシプロリン含量の分析により測定した。簡潔には、肺を指定された時間に収集し、そして組織断裂器(Tissure Tearor)(プロ−サイエンティフィック(PRO−Scientific)、コネチカット州モンロー)を用いて2mlのPBS、pH7.4中でホモジェナイズした。その後、各サンプル(両肺)の0.5ミリリットルを1mlの6N HCl中120℃で8時間消化した。5マイクロリットルのクエン酸/酢酸緩衝液(5%クエン酸、7.24%酢酸ナトリウム、3.4%水酸化ナトリウムおよび1.2%氷酢酸、pH6.0)および100μlのクロラミン−T溶液(282mgのクロラミン−T、2mlのn−プロパノール、2mlのH2Oおよび16mlのクエン酸/酢酸緩衝液)を5μlのサンプルに添加し、そしてサンプルを室温で20分間放置した。次に、100μlのエールリッヒ液(2.5gの4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(アルドリッチ(Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー)、9.3mlのn−プロパノールおよび3.9mlの70%過塩素酸(イーストマン コダック(Eastman Kodak)、ニューヨーク州ロチェスター)を各サンプルに添加し、そしてサンプルを65℃で15分間インキュベートした。サンプルを10分間冷却し、そしてベックマン(Beckman)DU 640分光測光計(カリフォルニア州フラートン)上で550nmで読み取った。0〜10μg/mlからのヒドロキシプロリン(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)濃度を使用して標準曲線を構築した。(Keaneら、J.Immunol.1999、163:5686−82。)
気管支肺胞洗浄(BAL)およびIL−13レベルの定量:マウスを頚部脱臼により殺し、そして正中胸骨切開術を実施した。気管を鈍的剥離により単離し、そして小内径管を挿入しかつ彼の気道中で固定した。3個の連続する容量の、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む.75mlのPBSを徐々に染み込ませ、そして穏やかに吸引しかつプールした。各BALサンプルを遠心分離しそして上清を−70℃で保存した。細胞数を血球計算器で評価し、そして細胞分化計数(cellular differential count)がサイトスピン調製物において行われた。IL−13レベルを、製造元の説明書(R&D システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス)に従って商業的キットを使用するELISAにより測定した。
【0179】
生理学的気道評価アッセイ:齢および性を合致された同腹子を、侵襲的および非侵襲的双方の生理学的評価技術により評価した。
【0180】
非侵襲的技術を使用して、未拘束の覚醒マウスにおいて基礎の気道抵抗性および気道過敏性(AHR)のレベルを測定した。すなわち、動物は、Hamelmannら(1997、Am.J.Resp.Crit.Care Med.156:766−775)およびKlineら(1998、J.Immunol.160:2555−2559)に記述されるところの全身体積変動記録法(ブクスコ エレクトロニクス インク(Buxco Electronics Inc.)、ニューヨーク州トロイ)を使用する気圧体積変動記録法を使用して評価した。簡潔には、マウスを、多様な圧変換器を使用するコンピュータにインターフェース接続された全身体積変動記録器中に入れた。一回呼吸量、呼吸数および強制停止(enhanced pause)(Penh)の測定を行った。気道抵抗性はPenh=[(Te/0.3Tr)−1]×[2Pef/3Pif]として表され、ここで、Penh=強制停止、Pe=呼気時間(秒)、Tr=弛緩時間(秒)、Pef=ピーク呼気流量(ml)、およびPif=ピーク吸気流量(ml/秒)。増大する用量のメタコリン(シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Company)、ミズーリ州セントルイス)を、ネブライザーを使用して120秒間投与し、そして、Penhを後に続く5分にわたって測定した。
【0181】
侵襲的な生理学的評価は、麻酔され(ペントバルビタール、90mg/kg)かつ造瘻された(18ゲージ血管カテーテル)齢および性を合致されたマウスで実施した。マウスの肺容量の変化を、直列の微小スイッチ圧変換器を使用してプレキシグラス(Plexiglass)チャンバー中の圧を測定することにより、体積変動記録的に測定した。流量は、体積変動記録器および動物の換気装置と直列に配置された第二の微小スイッチ圧変換器により測定されるところの、容量シグナルと経肺圧との間の差異により測定した。抵抗性(気管切開カテーテルによる抵抗が除外された)はAmdurとMead(1958、Am.J.Physiol.192:364−368)の方法を使用して測定した。肺抵抗性の基礎測定値は、容量0.4mlおよび1分あたり150回の呼吸速度でマウスを換気することにより得た。増大する濃度のPBS中メタコリンを、直径約1〜3μmの粒子を生じさせるデビルビス エアロソニック(Devilbiss Aerosonic)ネブライザー(モデル5000、デビルビス ヘルス ケア(Devilbiss Health Care)、フィラデルフィア州サマーセット)を使用する霧状化(20回の1ml呼吸)により投与した。肺抵抗性は正確に1分後に計算した。その後、メタコリン用量の段階的増大を、肺抵抗性が基礎レベルと比較して少なくとも2倍になるまで投与した。全動物は1から100mg/mlまでのメタコリンの連続的な3倍の増大を受領した。データは、肺抵抗性が直線回帰分析により計算されるところの基礎レベルの100%上になった用量であるPC100(刺激攻撃100)として表す。
【0182】
肺容量の評価:肺容量の評価はZhengら(2000、J.Clin.Invest.106:1081−1093)に記述されるとおりに正確に実施した。
【0183】
ドキシサイクリン投与:全部の誘導可能なトランスジェニックマウスを、トランスジーン活性化が望ましくなるまで通常水で維持した。ドキシサイクリン(dox)は飲用水中で投与した(0.5mg/ml)。doxを含有する水瓶をアルミニウムホイルで包み、光に誘発されるdox分解を予防した。
【0184】
mRNA分析:mRNAレベルはノーザンブロットおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して評価した。全細胞RNAを、製造元の説明書に従ってトライゾール[TRIZOL]TM(インヴィトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバード)を使用してマウス組織から抽出した。YM(YM−1順プライマー:TGGAATTGGTGCCCCTACAA;配列番号1、YM−1逆プライマー:AACTTGCACTGTGTATATTG;配列番号2、YM−2順プライマー:AACCTCAGACAT TCATTA;配列番号3、YM−2逆プライマー:TGGTCCTTCCAGTAGGTAATA;配列番号4、YM−3順プライマー:TATAAATCTCCATTTGACAC;配列番号5、YM−3逆プライマー:CCTAATTTATTGTCCTTGAC;配列番号6)およびAMCアーゼ(AMCアーゼ順プライマー:ATCTGCAGTGGACACACCTTCATCCTGA;配列番号7、AMCアーゼ逆プライマー:ATGAATTCAACAAGCCCTGCTTGACAAT;配列番号8)に特異的なプライマーをRT−PCRで使用して、これらの転写物を増幅かつ検出した。逆転写およびPCRは、製造元の説明書に従ってプロメガ(Promega)(ウィスコンシン州マディソン)からのアクセス(Access)RT−PCRキットを使用して実施した。
【0185】
マウス肺におけるインサイチューハイブリダイゼーション:インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、トランスジェニック動物におけるYMおよびAMCアーゼ双方の発現の位置を突き止めた。肺組織をホルムアルデヒド中で固定しかつパラフィン中に処理した。5ミクロンの切片を切断し、脱パラフィン化しそしてプロテイナーゼK(20μg/ml、37℃、20分)で処理した。その後、組織を0.1Mトリエチルノールアミン/0.25%無水酢酸(pH8)で室温で10分間処理し、そしてPBSですすいだ。YM(YMアンチセンスプローブ:TCCTCGAGACCCAGGGTACTGC;配列番号9、YMセンスプローブ:TATCTAGAGGATCTTCCTACCAGC;配列番号10)およびAMCアーゼ(AMCアーゼアンチセンスプローブ:TCGCTCGAGAACAAGCCCTGCTTGACAAT;配列番号11、AMCアーゼセンスプローブ:GCTCTAGATGGACACACCTTCATCCTGA;配列番号12)のアンチセンスおよびセンスプローブは、マウスAMCアーゼ cDNAもしくはYM cDNAのフラグメントを、マルチクローニング部位に隣接するT3およびT7プライマー配列をもつベクターpBS II KS(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホヤ)中にクローン化することにより生成させた。XbaIおよびXhoI制限酵素部位が組み込まれたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、IL−13トランスジーン(+)マウスの全肺RNAからDNAフラグメントを増幅した。RT−PCR産物をXbaIおよびXhoIで消化し、そしてベクターpBS II KSにクローン化した。センスおよびアンチセンスRNAプローブを生成させ、ジゴキシゲニンRNA標識キット(ロシュ(Roche)、インジアナ州インジアナポリス)で標識し、65℃で変性させ、そして商業的に入手可能なハイブリダイゼーション緩衝液(アンビオン(Ambion)、テキサス州オースチン)に6ng/μlで添加し、そしてハイブリダイゼーション混合物を組織とともに52℃で一夜インキュベートした。その後、組織を4×SSCで室温で5分間2回、2×SSCで37℃で10分間2回洗浄し、そしてRNアーゼA(10μg/ml)とともに37℃で45分間インキュベートした。この後、2×SSC中での室温で2回の10分洗浄、および0.2×SSC中での50℃で3回の20分洗浄が続いた。プローブを、製造元により記述されたとおり、アルカリホスファターゼで標識されたジゴキシゲニンに対するヒツジ抗体(Ab)(ロシュ(Roche))、次いで塩化4−ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートとともにの一夜インキュベーションにより検出した。
【0186】
結晶の精製および分析:結晶は、Guoら(2000、J.Biol.Chem.275:8032−8037)により記述されたところのフィコール勾配洗浄手順を使用して精製した。簡潔には、IL−13トランスジェニックマウスからのBAL液を、1.119グラム/mlの密度をもつヒストパーク(Histopaque)−1119(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)の上に1:5の比で負荷し、そして250×gで4℃で10分間遠心分離した。上清を除去し、そしてペレットをPBSに再懸濁しかつ上のとおりもう2回遠心分離した。生じるペレットをSDS−PAGEサンプル緩衝液に溶解しそして電気泳動前に10分間沸騰させた。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、トリス−グリシン4−20%勾配ゲル(バイオラッド(BioRad)、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して還元条件下で実施した。タンパク質のバンドをクマシーブルーで染色することにより可視化し、小刀で切り出し、そして質量分析前にゲル中トリプシン消化にかけた。約40kDaのクマシーブルー染色されたタンパク質バンドを切り出し、そして、50mM重炭酸アンモニウム、50%アセトニトリルで30分間洗浄し、次いで10mM重炭酸アンモニウム、50%アセトニトリルで追加の30分間洗浄した。洗浄した後にゲル片を乾燥し、そして、15μlの10mM重炭酸アンモニウム中の0.1μgの修飾トリプシン(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)で再水和した。消化を37℃で24時間行った。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)を、マイクロマス トフスペック(Micromass TofSpec)SE質量分析計(マイクロマス(Micromass)、マサチューセッツ州ビバリー)をリフレクトロンモードで使用して、1.0μl(<5%)の消化物で実施した。MALDI−MS前に、サンプルを1.0μlのα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸マトリックス溶液(0.05%トリフルオロ酢酸、50%アセトニトリル中4.5mg/ml)および1μlの内部較正体(calibrant)と混合し、そしてその後新たな単回使用標的にスポットした。その後、サンプルを室温で風乾させた。使用された内部較正体は50フェムトモルのブラジキニン(モノアイソトピックのM+Hは1060.57である)および125fmolのACTH Clip 18−39(モノアイソトピックのM+Hは2465.20である)であった。合計92種のペプチド質量(モノアイソトピック)を、ペプチド サーチ(Peptide Search)(EMBLの非冗長データベース)およびプロファウンド(ProFound)(NCBIの非冗長データベースについてのロックフェラー大学の)を使用するペプチド質量データベース検索に提出した。いずれかのアルゴリズムを使用することにより、92種のペプチド質量のうち24種が、59%の最小適用範囲でマウスキチナーゼ3−様3タンパク質(YM−1およびECFL−前駆体ともまた呼ばれる)に合致した。初回通過の合致されないペプチド質量を使用するその後の検索はいかなる意味のある合致も生じなかった。
【0187】
キチナーゼ活性アッセイ:以前に記述されたとおり収集されたBAL液をキチナーゼ活性アッセイで使用した。BAL中のキチナーゼ活性は蛍光アッセイを使用して評価した。蛍光発生性の4−メチルウンベリフェリルβ−D−N,N’−ジアセチルキトビオシドを基質として使用した。アッセイは以下のとおり実施した。BALサンプルをクエン酸/リン酸緩衝液(0.1M/0.2M)、pH5.2中0.02Mの濃度の基質とともにインキュベートした。37℃で15分後に、1mlの0.3Mグリシン/NaOH緩衝液、pH10.6を添加することにより反応を停止し、そして、蛍光の4−メチルウンベリフェロンを、350nmの励起および発光450nmで蛍光計を用いて測定した。標準曲線は4−メチルウンベリフェロン(シグマ(Sigma))を使用して生成させた。霊菌(Serratia marcescens)からのキチナーゼ抽出物を陽性対照として使用した(シグマ(Sigma))。
【0188】
空気アレルゲン卵アルブミン(OVA)感作および攻撃試験:OVA感作および攻撃は、Yangら(1998、J.Exp.Med.188:1739−1750)により以前に記述されたプロトコルの変法を使用して達成した。簡潔には、野性型マウスが、ミョウバン(レソープター(Resorptar);インダーゲン(Indergen)、ニューヨーク州ニューヨーク)と複合体形成された20μgのトリOVA(シグマ(Sigma))を含有する腹腔内(i.p.)注入を受領した。この過程を5日後に反復した。さらに7日後に、動物は、エンドトキシンを含まないPBS中のOVA(1% w/v)でのエアゾル攻撃を受領したか、もしくは、動物はエンドトキシンを含まないPBS単独を受領した。エアゾル攻撃は、閉鎖された27×20×10cmのプラスチック製エアゾルチャンバー中で達成し、その中にマウスを40分間入れた。エアゾルは、オムロン(Omron)NE−U07超音波ネブライザー(オムロン ヘルスケア(Omron Healthcare)、イリノイ州バーノンヒルズ)を使用して生成させた。マウスをOVA攻撃の24時間、48時間および7日後に殺した。
【0189】
YMおよびAMCアーゼの相対的誘導:12,200種のオリゴヌクレオチドを含んで成るアフィメトリクス(Affymetrix)のマウスジーン チップ(GENE CHIP)アレイ(カリフォルニア州サンタクララ)を使用して、マウス肺中のIL−13に誘導される遺伝子発現を分析した。IL−13を発現する、doxで誘導可能なおよび対照のマウスにおける遺伝子発現のレベルを分析した。発現レベルはハウスキーピング遺伝子(例えばアクチン、GAPDH、ヘキソキナーゼなど)を使用して標準化し、そして、刺激指数を、トランスジーン(−)動物における標的比によりトランスジーン(+)動物における標的比を割ることにより計算した。類似の遺伝子発現研究を、IL−13を構成的に発現するマウスおよび対照で実施した。ジーン チップ(GENE CHIP)アッセイは以下のとおり実施した。全RNAを、トライゾール(Trizol)試薬(ライフ テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲイタースバーグ)を用いて、IL−13トランスジェニックマウスおよび同腹子の陰性対照の肺から単離した。アフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GENECHIP)分析のためのサンプルを調製するために、cDNA合成のためのスーパースクリプト チョイス システム(Superscript Choice System for cDNA Synthesis)(ライフ テクノロジーズ(Life Technologies))とともにの修飾されたオリゴdTプライマーおよび5’T7 RNAポリメラーゼプロモーターのオリゴプライマーの使用により、15μgの全RNAからcDNAを生成させた。フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿後に、cDNA反応の半分(0.5〜1.0μg)を、製造元のプロトコルに従うことによりビオチニル化UTPおよびCTP(バイオアレイ ハイ イールド(BioArray High Yield)キット、エンゾ バイオケム(Enzo Biochem)、ニューヨーク州ファーミングデール)を用いるインビトロ転写反応の鋳型として使用した。生じるcRNAをアフィニティー樹脂カラム(RNイージー(RNeasy)、キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)上で精製し、そして紫外(UV)吸光度により定量した。各反応について、15μgのビオチニル化cRNAを、40mMトリス−酢酸、pH8.1、1,000mM酢酸カリウムおよび30mM酢酸マグネシウム中94℃で35分間それらをインキュベートすることにより、50ヌクレオチドの平均の大きさに無作為に断片化した。断片化されたcRNAを2個のアリコートに分割し、それらをそれぞれ、製造元のプロトコル(アフィメトリクス(Affymetrix)、カリフォルニア州サンタクララ)に従ったMul 1K アフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GEGECHIP)へのハイブリダイゼーションに使用し、二重のデータの組を全サンプルについて生成させた。各標的アレイを洗浄しかつ走査した(ヒューレット−パッカード(Hewlett−Packard)、ジーンアレイ(GeneArray)スキャナー G2500A)。データをアフィメトリクス(Affymetrix)ジーンチップ(GENECHIP)ソフトウェアアルゴリズムで分析して、値を正規化した後の「平均差異」および/もしくは差異の程度を生成させた。野性型C57BL/6同腹子対照から得られた値を基礎として使用し、そして、IL−13トランスジェニックマウスからの値を相対的増大倍数として表した。
【0190】
リボヌクレアーゼ保護アッセイ:リボヌクレアーゼ保護アッセイはmCK−1鋳型キット(ファーミンゲン(PharMingen)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して実施した。リボヌクレアーゼ保護アッセイは、例えばSambrookら(1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク)およびAusubelら、1997(Current Protocols in Molecular Biology、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク)に記述されるとおり実施した。
【0191】
アロサミジン投与:アロサミジン(イーライ リリー アンド カンパニー(Eli Lilly and Co.)、インジアナ州グリーンフィールド、およびインダストリアル リサーチ リミテッド(Industrial Research Limited)、ニュージーランド・ローワーハット)を、誘導可能なIL−13を過剰発現するマウスおよびOVAに曝露された野性型マウスに投与した。マウスに、0.1mg/kgないし10mg/kgのアロサミジンi.p.もしくはベヒクル対照(PBS)を与えた。その後、動物を殺し、そして、BAL液分析、組織学的および形態計測学的分析、ならびに肺容量の評価を、本明細書の別の場所に記述されるとおり実施した。
【0192】
本実施例に提示される実験の結果を今や記述する。
【0193】
IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウス:IL−13を構成的に発現するトランスジーン(+)マウスは、BAL液中の高レベルのIL−13(2.1ng/mlまで)および肺における検出可能なIL−13 mRNAを表した。IL−13 mRNAはトランスジェニックマウスの皮膚および他の内臓器官で検出されることができず、IL−13の肺特異的発現を示した。トランスジーン(−)マウスは、BAL液もしくは肺中で検出可能なレベルのIL−13もしくはIL−13 mRNAを立証しなかった。
【0194】
トランスジーン(+)マウスの組織学的分析は複数の喘息様の特徴を立証した。これらの特徴は、小および大気道周囲ならびに隣接する実質中の好酸球、リンパ球およびマクロファージ豊富な炎症応答を包含する。この応答は、若齢動物もしくは低レベルのBAL IL−13を伴う動物でより軽度であり、そして、より高齢の動物もしくはIL−13のより高いBALレベルを伴うものでより顕著であった。上皮細胞肥大は、誘導気管支および小気道で同様に明らかであった(図2)。
【0195】
肺特異的IL−13の構成的発現は、COPD様肺胞拡大および壁破裂、ならびにマッソン小体様線維性細胞増殖巣への結晶性物質の病巣性組織化もまたもたらした。さらに、長く細い針様の結晶が、トランスジーン(+)動物のマクロファージ、肺胞およびときに気道でみられた。
【0196】
粘液化生および高められたムチン遺伝子発現は喘息およびCOPD双方の特徴であるため、気道粘液に対する構成的IL−13発現の影響が断言された。PASおよびアルシアンブルー双方の染色は、粘液の蓄積がトランスジーン(+)マウスの気道で顕著であったが、しかしトランスジーン(−)の同腹子でそうでなかったことを立証した(図3)。ムチン遺伝子MUC5AC、MUC2およびMUC4のmRNAの印象的な増大もまた、トランスジーン(+)マウスで明らかであった。
【0197】
上皮下線維症を伴う気道のリモデリングは喘息の気道の十分に実証された特徴であり、そして、混乱した修復および実質線維症はしばしば肺気腫の局面として示される。炎症性疾患のこれらの特徴は増大されたコラーゲン沈着を伴う。従って、マッソンの3色染色、シリウスレッドおよびヒドロキシプロリンアッセイを使用して、トランスジーン(+)および(−)動物の気道におけるコラーゲン沈着を評価した。
【0198】
少量のコラーゲンがトランスジーン(−)動物の気道中および周辺でみられ、また、ゆるく圧縮されたコラーゲンが気管支血管束中で検出された。著しく対照的に、高められたコラーゲン沈着が、ヒト気道の障害における知見と同様に、トランスジーン(+)動物の小および大気道の上皮下領域および外膜でみられた(図4)。瘢痕形成および実質線維症がより高齢の動物で観察され、また、これらの特徴は齢とともに増大した。増大したレベルのヒドロキシプロリンはIL−13産生後約4〜6週で検出されることができ、そして、3月齢の動物は、トランスジーン(−)動物より有意に(4.1倍、p<0.001)より高いヒドロキシプロリンレベルを有した。
【0199】
喘息およびCOPDの患者双方が気道閉塞およびAHR(メタコリンのような非特異的アゴニストに対する誇張された気管支攣縮応答)を立証する。従って、これらの気道変化がIL−13トランスジェニック動物モデルで存在したかどうかを決定するための研究に着手した。基礎の気道抵抗性はトランスジーン(+)動物で軽度に上昇した。加えて、AHRもまた、侵襲的および非侵襲的評価の方法論を使用して測定されるとおり、メタコリン攻撃後にみられた。これらのデータは、喘息およびCOPD様の生理学的変化がIL−13トランスジェニックモデルに存在することを示す。
【0200】
誘導可能なトランスジェニックマウス:肺特異的な誘導可能なトランスジェニック動物系は、マウス肺におけるIL−13発現の一時的制御を可能にする。これは、喘息およびCOPDでみられるIL−13発現の満ち欠けパターンを模倣し、そして、他のトランスジェニックモデルでみられる子宮もしくは新生児における遺伝子発現により引き起こされる異常を回避する。
【0201】
誘導可能なトランスジェニックマウスを1月齢まで通常(doxを含まない)水で飼育した。IL−13は、doxもしくは通常水を摂取するトランスジーン(−)動物からのBAL液中で検出されなかった。doxの非存在下で、≦75pg/mlのBAL IL−13のレベルがトランスジーン(+)動物で見出された。dox投与の24時間以内に、トランスジーン(+)動物は増大されたBAL IL−13レベルを立証し、そして、約0.5から1.5ng/mlまでの範囲にわたる定常状態レベルがdox投与後96時間以内に観察された。BALのIL−13レベルはdox投与を停止した後96時間以内に背景レベルに戻った。IL−13 mRNAはトランスジーン(+)動物の肺組織中でのみ検出可能であった。
【0202】
H&Eおよび3色染色は、通常水もしくはdox含有水を与えられたトランスジーン(−)マウスから得られた肺がいかなる組織学的異常も立証せず、また、それらの肺は通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスから得られた肺と識別できなかったことを立証した。しかしながら、通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスは、D−PAS染色後に軽度の粘液化生を示した。
【0203】
逆に、dox水を与えられたトランスジーン(+)マウスは、著しい炎症、粘液および構造変化を表した。dox投与後約7日で、BAL液中の炎症は顕著であった。この時点で、dox水を与えられたトランスジーン(+)マウスにおいて、BAL液からの細胞回収の7.5倍の増大およびBAL液の好酸球の割合の有意の増大(63%、p<0.001)が存在した。リンパ球およびマクロファージ回収もまたこれらのマウスで有意に増大した(p<0.01)。また、単核、リンパ球および好酸球浸潤が、粘液化生の増大がそうであったように、気道および気管支周囲構造において顕著であった。加えて、MUC−5AC、MUC−2およびMUC−4 mRNAの実質的増大が示された。doxの慢性投与は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスで観察されたものに非常に類似の上皮下線維症、肺胞拡大および結晶沈着をもたらした。
【0204】
COPDにおける肺気腫は、肺の末端気管支に対して遠位の空隙の異常な拡大として病理学的に定義される(SeniorとShapiro、1998、Fishman’s Pulmonary Diseases and Disorders、Vol.1、マグロウ−ヒル(McGraw−Hill)、ニューヨーク)。以前に示されたとおり、IL−13を構成的に発現するマウスは拡大された肺胞を表した。この拡大が、欠陥のある発達によったかもしくは正常に形成された肺における肺組織の破壊によったかを決定するために、誘導可能なトランスジェニック(+)マウスに、完全な肺の発達が完了した後にのみdox水を与えた。dox投与後、IL−13に誘導される肺胞拡大が、組織学的および形態計測学的双方の技術を使用して明白であった。doxの非存在下では、正常な肺胞がトランスジーン(−)および(+)双方の動物でみられた(図6)。
【0205】
IL−13を過剰発現するマウスにおけるYM結晶沈着:以前に示されたとおり、結晶が、誘導可能なおよび構成的双方のIL−13トランスジーンマウスでみられた。結晶の存在は用量および時間双方に依存性であった。構成的IL−13マウスにおいて、結晶は評価された最も早期の時点でみることができ(1ヶ月)、また、印象的な結晶蓄積が3月齢の動物で明白であった。同様に、誘導可能なIL−13マウスは、dox投与後ほぼ同一の時間間隔で気道の多様な組織および細胞中に結晶を表した。若齢マウスにおいて、結晶は、マクロファージ、実質および肺胞で最も普遍的に、そして遠位気道でより少なく普遍的にみられた。より高齢の動物では、結晶性沈着物で完全に満たされた多くの肺胞を包含する、かなりの肺胞および実質の結晶沈着が示された。結晶は多数の切子面をもち、しばしば針状であり、そして長さおよそ20〜120μmであった(図7)。
【0206】
結晶を、本明細書の別の場所に記述されるところのフィコール密度勾配法を使用して、構成的IL−13トランスジェニック(+)マウスからのBAL液から精製した。これらの結晶をアッセイし、そしてYMタンパク質から構成されることを決定した。他のペプチドはサンプル中で見出されず、かつ、YMタンパク質はトランスジーン(−)動物で検出されず、IL−13トランスジーン(+)動物中の結晶がYMタンパク質を含んで成ることを示した。
【0207】
IL−13を過剰発現するマウスにおけるYM遺伝子発現:RT−PCRを本明細書に記述されるとおり実施して、YMタンパク質発現がIL−13により誘導されたかどうかを決定した。トランスジーン(−)動物からの全肺RNAにおいて、YM mRNAはアッセイの感度下限もしくはそれ近くであった(図9)。全く対照的に、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスにおいて、YM mRNAは評価された全時点で検出された(1ないし3月齢のマウス)。doxを受領しなかった誘導可能なトランスジーン(+)マウスは低レベルのYM mRNAを立証し、軽度に「漏れる」系を示した。doxの投与に際して、YM mRNAの著しい増大がdox導入後約48時間で観察され、また、高レベルのYM mRNA発現が、doxを投与された3ヶ月の期間を通じて継続した(図10)。
【0208】
インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、IL−13トランスジェニック動物におけるYMタンパク質産生の部位の位置を突き止めた。YM mRNAはトランスジーン(−)マウスで検出することができなかったが、しかし、印象的なレベルが、アンチセンスプローブを使用してトランスジーン(+)動物で検出された。トランスジーン(+)動物において、YMはマクロファージおよび気道上皮細胞に集中的に限局した。センスオリゴヌクレオチドを使用して同一組織をプロービングした場合にYM染色が検出されず(図11)、これらの結果の特異性を確認したことに注目すべきである。
【0209】
YM mRNA発現のサイトカイン誘導がIL−13特異的であったかどうかを確かめるために、多様な他のトランスジェニックマウスからの全肺RNAを使用してRT−PCR分析に着手した。IL−4トランスジェニックマウスは、IL−13トランスジェニックマウスと同様、それらの肺において誇張されたレベルのYMを発現した。これは、本明細書の別の場所で以前に述べられたとおり、IL−4がヒト気道の障害における別の重要なサイトカインであることを示す証拠と一致する。IL−6、IL−11、血管上皮増殖因子165(VEGF)およびIL−10を構成的に発現するトランスジェニックマウスは、IL−13トランスジーン(−)の同腹子対照のものに匹敵するYM mRNAレベルを立証し、Th2に支配される呼吸器炎症においてある役割を演じると仮定されるサイトカイン、すなわちIL−13およびIL−4がまたYM発現の強力かつ特異的な誘導物質でもあることをさらに確認した。
【0210】
IL−13を過剰発現するマウスからのBAL液中のキチナーゼ活性:IL−13を構成的に発現するトランスジーン(+)および(−)マウスからのBAL液中のキチナーゼ活性を、本明細書の別の場所に記述される方法を使用してアッセイした。トランスジーン(−)マウスから得られたBAL液は、≦75単位/mlのキチナーゼ活性のレベルを有した。対照的に、トランスジーン(+)マウスにおけるキチナーゼ活性の印象的な増大が検出された(図12)。すなわち、キチナーゼ活性は1月齢のトランスジーン(+)動物で検出され、そして動物が加齢する際に増大し続けた。同様に、キチナーゼ活性は、dox投与後約2日で、誘導可能なトランスジーン(+)動物で検出され、そしてこの活性もまた長い間増大した。IL−4を過剰発現するトランスジェニックマウスもまた、増大されたレベルのキチナーゼ活性を立証した。しかしながら、IL−6、IL−11、VEGFおよびIL−10トランスジーン(+)動物からのBAL液は基礎レベルのキチナーゼ活性を有した。これらのデータは、増大されたキチナーゼ活性が肺組織における増大されたIL−13および/もしくはIL−4発現ならびに増大されたYMタンパク質発現および結晶沈着と相関することを示す。
【0211】
IL−13トランスジェニックマウスにおけるAMCアーゼ発現:矛盾する報告が、YMがキチナーゼ活性を有するかももしくは有しないかもしれないことを示している。例えば、精製されたおよび組換え双方のYMは多数のアッセイでキチナーゼ活性を立証することに失敗しており、それがキチナーゼでないがしかしむしろキチナーゼ様分子であることを示した(Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506)。IL−13トランスジーン(+)マウスからのBAL液は検出可能なキチナーゼ活性を立証し、キチナーゼファミリータンパク質がこれらのマウスのBAL液中に存在するかもしれないことを示す。今日まで、AMCアーゼは真のキチナーゼ活性を立証するマウス系で同定された唯一の酵素である。AMCアーゼ発現がIL−13トランスジーン(+)マウス肺で増強されたかどうかを決定するために、上述されたとおりにAMCアーゼに特異的なRT−PCRプライマーを使用した。トランスジーン(−)の同腹子対照におけるmRNAレベルは使用されたアッセイの検出レベル近くもしくはより下であった。逆に、AMCアーゼのmRNAレベルの印象的な増大が、構成的および誘導可能双方のIL−13トランスジェニックモデルで見出された。それぞれ、前者において、それは1月ないし3月齢の動物で、後者において、dox投与後約7日で示された。YMタンパク質発現と同様に、AMCアーゼ発現は、それが本明細書で評価された他のトランスジェニック動物(IL−10、VEGF、IL−6およびIL−11)からの肺で検出されなかったとおり、IL−13トランスジェニック動物に特異的であった。
【0212】
インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、IL−13トランスジェニックマウスにおけるAMCアーゼ産生の位置を突き止めた。AMCアーゼのmRNAの顕著な蓄積は上皮細胞で、そしてより小さい程度でマクロファージで検出された。対照的に、AMCアーゼのmRNAはトランスジーン(−)マウスでは検出されなかった(図14)。
【0213】
OVAに誘導されるマウス喘息モデルにおけるキチナーゼ遺伝子発現:YMタンパク質および/もしくはAMCアーゼが標準的なThに駆動されるマウス喘息モデルで誘導されたかどうかを確かめるための研究を実施した。この目的のため、OVA感作された野性型マウスのBAL液のキチナーゼ活性および肺におけるこれら2種の遺伝子の発現を検討した。OVA感作されたがしかしOVA攻撃を受領しなかった動物において、mRNAレベルおよびBAL液のキチナーゼ活性はアッセイの検出レベルの限界近くであった。しかしながら、OVA攻撃後、YMおよびAMCアーゼのmRNAレベルは容易に検出され、かつ、抗原攻撃後7日間持続した。BAL液のキチナーゼ活性は相応して同様に増大した(図15)。
【0214】
YMおよびAMCアーゼの相対的誘導:12,200種のオリゴヌクレオチドを含んで成るアフィメトリクス(Affymetrix)ジーン チップ(GENE CHIP)を使用して、1から2月齢までdoxを与えられた誘導可能なトランスジェニック動物におけるIL−13に誘導される遺伝子発現の変化を評価し、そしてトランスジーン(−)の同腹子対照と比較した。ジーン チップ(GENE CHIP)分析は、200を超える遺伝子が最低2.5倍だけ増大し、また、およそ140種の遺伝子がdox投与によりダウンレギュレートされたことを示した。重要なことには、dox投与後最も顕著に誘導された遺伝子はYMであった(64.1±0.5の刺激指数)。AMCアーゼは該チップ上に存在しなかったが、しかし、別のキチナーゼファミリー遺伝子BRP39は、該アレイ中で12番目に最も顕著に誘導された遺伝子であった(7.1±0.5の刺激指数)。dox投与はトランスジーン(−)動物の遺伝子発現の有意の変化を引き起こさなかったことに注目すべきである。
【0215】
AMCアーゼがジーン チップ(GENE CHIP)上に存在しなかったため、RT−PCR、ノーザンブロット分析およびリボヌクレアーゼ保護アッセイを包含する他の方法を使用した。全部が、AMCアーゼがIL−13の重要な下流の標的であることを示した。これは、AMCアーゼが、IL−13に誘発される呼吸器炎症の病因の経過の間に誘導されかつそれに潜在的に関与することをさらに立証する。
【0216】
マウス喘息モデルにおけるアロサミジンの効果:アロサミジンはキチナーゼの既知の強力かつ選択的な阻害剤である。野性型マウスをOVAに感作させ、そして多数の日後にOVAで攻撃した。OVA攻撃の1日前にマウスを2群に無作為化し、そしてアロサミジンもしくはベヒクル対照のi.p.投与を連日受領した。ヒト喘息の症状と同様に、OVA感作および攻撃モデルは、顕著な粘液化生および杯細胞過形成を伴う活発な好酸球およびリンパ球豊富な炎症応答をもたらす。アロサミジン投与は、OVA攻撃された肺において全細胞、好酸球およびリンパ球の流入の用量依存性の阻害をもたらした(図16)。該阻害効果は試験された最高用量(10mg/kg)で最も顕著であり、そして最低(1mg/kg)でなお顕著であった。従って、アロサミジンは、ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルにおいて抗原誘発性の炎症を阻害した。
【0217】
同様に、6週齢のトランスジーン(+)IL−13マウスを、アロサミジン(1mg/kg)もしくはベヒクル対照のi.p.投与を14日連日受領するように無作為化した。その後、動物を殺しかつIL−13の表現型を評価した。ベヒクル対照を受領したトランスジーン(+)マウスに比較して、アロサミジン注入を受領したトランスジーン(+)マウスは、著しく低下されたBAL液細胞回収、低下された組織炎症、ならびにBALおよび組織の好酸球およびリンパ球の印象的な減少を表した。形態計測学的、組織学的および肺容量評価分析は、アロサミジン処理された動物が同腹子対照よりも低下された肺容量およびより小さい肺胞を有したことを示し、アロサミジンがIL−13で誘発される炎症および肺のリモデリング双方の強力な阻害剤であることを示した。これらの実験において、アロサミジン投与は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスの誕生6週間後、すなわち喘息様の表現型が開始した後に開始したことに注目することが重要である。従って、これらのマウスおよびCOPDにおけるアロサミジン処理は、病理学的応答が開始した後でさえ、肺の病状の進行を低下させた。これは、呼吸器の炎症性疾患が既に診断されかつ何らかの程度まで進行した後に製薬学的組成物が投与される、ヒトにおける治療状況に類似である。これらの結果は、キチナーゼ様分子の阻害剤が、慢性の病状が確立した後でさえ疾患を成功裏に治療することができることを示す。
【0218】
マウス喘息モデルにおける抗AMCアーゼ抗体の効果
野性型マウスをOVAに感作させ、そして多数の日後にOVAで攻撃した。OVA攻撃の1日前にマウスを2群に無作為化し、そして抗AMCアーゼ抗体もしくは血清対照の連日投与を受領した。ヒト喘息の症状と同様に、OVA感作および攻撃モデルは、顕著な粘液化生および杯細胞過形成を伴う活発な好酸球およびリンパ球豊富な炎症応答をもたらす。抗AMCアーゼ抗体投与は、これらのOVA攻撃された肺のBAL液中への全細胞および好酸球の流入の有意の阻害をもたらした(図18)。全および好酸球性の炎症の類似の低下が、OVA感作かつ攻撃された長組織で示された。従って、抗AMCアーゼ抗体は、ヒト喘息の技術認識されるマウスモデルにおいて抗原誘発性の炎症を阻害した。
【0219】
ヒト肺組織におけるAMCアーゼ発現
ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルにおける観察結果を、インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、剖検で得られたヒト肺組織におけるAMCアーゼの発現を評価することまで拡大適用した。簡潔には、マウスMACアーゼおよびYm−1のmRNAの検出のためのインサイチューハイブリダイゼーションに関して本明細書の別の場所に以前に記述されたプロトコルに同様に、正常および喘息の肺組織を生検により得、そしてホルムアルデヒド中で固定しかつパラフィン中に処理した。5ミクロンの切片を切断し、脱パラフィン化しそしてプロテイナーゼK(20μg/ml、37℃、20分)で処理した。その後、組織を0.1Mトリエチルノールアミン/0.25%無水酢酸(pH8)で室温で10分間処理し、そしてPBSですすいだ。
【0220】
ヒトAMCアーゼのISHプローブのための鋳型を、発現配列タグ(expressed sequence tag)(EST)クローン5182357として、リサーチ ジェネティックス インク(Research Genetics,Inc.)(アラバマ州ハンツビル)から購入した。クローンを、挿入フラグメントに隣接するT7およびSP6プロモーター配列を含んで成るベクターpCMV−SPORT6を使用して生成させた。該クローンの配列はヌクレオチド769−1538からのヒトAMCアーゼ mRNAに合致した(配列番号14)。該クローンの配列を、イェール大学ケック生物工学研究所(Keck Biotechnology Laboratory at Yale University)でヌクレオチド配列決定することにより確認した。センスおよびアンチセンスRNAプローブをインビトロ転写し、そしてジゴキシゲニンRNA標識キット(ロシュ(Roche)、インジアナ州インジアナポリス)で標識し、65℃で変性させ、そして商業的に入手可能なハイブリダイゼーション緩衝液(アンビオン(Ambion)、テキサス州オースチン)に6ng/μlで添加し、そしてハイブリダイゼーション混合物を組織とともに52℃で一夜インキュベートした。その後、組織を、4×SSCで室温で5分間2回、2×SSCで37℃で10分間2回洗浄し、そしてRNアーゼA(10μg/ml)とともに37℃で45分間インキュベートした。この後、2×SSC中での室温で2回の10分洗浄、および0.2×SSC中での50℃で3回の20分洗浄が続いた。プローブは、製造元により記述されるとおり、アルカリホスファターゼと結合されたジゴキシゲニンに対するヒツジ抗体(ロシュ(Roche))、次いで塩化4−ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートとの一夜インキュベーションにより検出した。
【0221】
組織学的に正常なヒト肺組織(「対照組織」)中のAMCアーゼの発現を、致死的喘息により死亡したヒト患者から得られた組織(「致死的喘息」)中のAMCアーゼ発現と比較した。インサイチューハイブリダイゼーションを使用して、AMCアーゼのmRNAは、センスプローブを使用して致死的喘息肺サンプル中で検出されたがしかし対照肺組織中でされなかった(それぞれ図19Aおよび19B)。AMCアーゼのmRNAは致死的喘息組織中で上皮細胞およびマクロファージに限局された。さらに、センスプローブは致死的喘息もしくは対照いずれの肺組織中でもAMCアーゼをコードするmRNAを検出せず、プローブの特異性を立証した。加えて、ポリ−dTプローブは双方のサンプル中の無傷のmRNAを際立たせた。
【0222】
ヒト肺胞マクロファージ中のAMCアーゼのmRNAの発現もまた評価した。AMCアーゼアンチセンスプローブを使用するインサイチューハイブリダイゼーションは、致死的喘息肺サンプル中の肺胞マクロファージ中の検出可能なAMCアーゼのmRNAを立証した(図19E)が、しかし対照サンプル中でしなかった。AMCアーゼのmRNAは、センスAMCプローブを使用して致死的喘息肺サンプル中で検出されず、インサイチューハイブリダイゼーション手順の特異性を立証した。
【0223】
これらのデータは、ヒト喘息の技術に認識されるマウスモデルを使用して得られた結果がヒトのインビボデータと一致することを確認する。すなわち、本明細書に開示されるデータは、AMCアーゼのmRNA発現がヒトにおける喘息で大きく増大されかつそれと相互に関連付けられることを初めて立証する。AMCアーゼのmRNAは致死的喘息肺組織中に検出可能なレベルで存在するが、しかし組織学的に正常な肺組織中では検出可能でないためである。これらの結果は、キチナーゼ様分子の発現が哺乳動物において炎症性疾患と関連しかつ/もしくはそれを媒介するという実例をさらに支持する。従って、本明細書に開示されるデータは、キチナーゼ様分子阻害剤を使用するAMCアーゼの阻害が、ヒト患者を包含する哺乳動物における限定されるものでないが喘息を挙げることができる炎症性疾患を治療かつ/もしくは予防することができることをさらに支持する。
考察
本発明は、アレルギー、アトピー喘息および炎症、ならびにこれらの障害に関連する気道のリモデリング応答のTh2炎症応答の特徴が、寄生虫および他の病原体と闘うために最初に発生されたTh2炎症応答から進化したことを強く示唆する実験的証拠に部分的に基づく。喘息および他の炎症性疾患は、従って、寄生虫および病原体依存性の様式で導き出される不十分に制御されたTh2応答の結果である。
【0224】
極めて多数の寄生虫および他の病原体はキチンを含有する。それは、甲殻類の動物および昆虫の外骨格、真菌の壁、昆虫の消化管、寄生性線虫のミクロフィラリア鞘、ならびに蠕虫寄生虫の成分中の不可欠な一成分である。キチンはβ−1,4結合のN−アセチルグルコサミン残基のポリマーであり、そして、天然でセルロースの次の2番目に最も豊富な多糖であり、かつ、哺乳動物の対応物を有しない。キチンはしばしば寄生虫および他の病原体の外面を構成する。その厚さに依存して、それは宿主の防御および周囲の環境から該生物体を保護するのに不可欠な剛性もしくは可撓性のコーティングとなることができるためである。従って、それが宿主/病原体の界面に存在するため、キチンは顕著な抗原である。それが免疫系に露出されるためである。事実、キチンは、乏しく免疫原性のペプチドに対する免疫グロブリン応答を増強しかつ免疫応答をTh1の方向に移動させることができる、強力なTおよびB細胞アジュバントであることが立証されている(SeferianとMartinez、2000、Vaccine 19:661−668;Shibataら、2000 J.Immunol.164:1314−1321)。
【0225】
とりわけ宿主免疫応答に関しての、寄生虫およびヒトの共進化を立証する多数の一連の証拠、ならびに哺乳動物におけるキチンの全くの欠如を考えれば、いずれかの特定の論理により拘束されることを意図せずに、哺乳動物はキチンを担持する寄生虫に対する生得の防御としてキチナーゼを発生させたと考えることは理にかなっている。キチナーゼは哺乳動物で同定されている。キトトリオシダーゼおよびYKL−39はヒトで記述されており、YMタンパク質はマウスで記述されており、そして酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、オビダクチンおよびYKL−40はマウスおよびヒト双方で記述されている(Bootら、2001、J.Biol.Chem.276:6770−6778;Bootら、1998、J.Biol.Chem.273:25680−25685;Wardら、2001、Am.J.Pathol.158:323−332;Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506;Jinら、1998、Genetics 54:316−322;Bleauら、1999、EXS 87:211−221)。矛盾する報告および微生物のキチナーゼに対する若干の配列相同性にもかかわらず、キトトリオシダーゼおよびAMCのみが真のキチナーゼ活性を立証している(Bootら、2001、J.Biol.Chem.276:6770−6778)。哺乳動物のキチナーゼのなかで、YM−1およびAMCアーゼ双方が走化性および成長因子様の特性を有するとして同定されている。YM−1は生理学的条件下で結晶を容易に形成する45kDaの一本鎖ペプチドである。YMファミリーのタンパク質は好酸球およびCD4+ T細胞双方の誘引物質として、ならびにレクチン活性を有するとして同定されている(Owhashiら、2000、J.Biol.Chem.275:12791286;Changら、2001、J.Biol.Chem.276:17497−17506)。AMCアーゼはキチナーゼ活性を立証する50kDaのタンパク質である。それは線維芽細胞増殖促進剤としてもまた報告されている(Groupingら、1997、J.Cell.Biochem.67:257−264)。本明細書に開示されるデータにより立証されるとおり、YMファミリーのタンパク質およびAMCアーゼ双方は、IL−13に誘導されかつTh2に媒介される喘息モデルの肺において高度に発現される。
【0226】
いずれかの特定の論理により拘束されることを願わずに、喘息の状態でのキチンの役割とともにみられる場合に、喘息および他の呼吸器炎症性疾患におけるキチナーゼの役割の新規発見は以下のとおりみられるかもしれない。非アトピー性の非喘息被験体において、おそらく寄生虫もしくは真菌への曝露後の抗原としてのキチンへの曝露は、免疫応答をTh1経路に向かって分極化し、これは該寄生虫と効果的に闘うかもしれないかもしくは闘わないかもしれない。しかしながら、アトピー性被験体、または喘息もしくはアトピーに対し遺伝的に素因を作られた者においては、IL−13および/もしくはIL−4が産生され、これらはYM、AMCアーゼ、ならびにおそらく他のキチナーゼおよびキチナーゼ様分子の発現をアップレギュレートする。キチンは、先に詳述されたとおりIgE産生を増強する。YMファミリーのタンパク質は、単独でもしくは他の分子とともに、好酸球およびCD4+ T細胞の走化性の特性を有する。従って、YMタンパク質は肺に好酸球を誘引することができ、ならびに、その炭水化物結合および結晶形成の特徴により媒介される組織損傷を引き起こす。AMCアーゼは、ついにはキチンを分解して病原体を排除する。キチンのTh1を誘導する特性のため、AMCアーゼ活性およびその後のキチン分解は、免疫系をアトピーおよび喘息性炎症性疾患のTh2応答の特徴に向ける。
【0227】
本発明は、キチナーゼ様分子阻害剤を使用する喘息、COPDおよび他の炎症性疾患の治療のための方法および治療薬を包含する。本発明はさらに、喘息、COPD、ならびにIL−13、IL−4キチナーゼおよびキチナーゼ様分子阻害剤に関する他の炎症性疾患の治療のための新規治療薬の同定方法を含んで成る。
【0228】
本明細書で引用されるそれぞれのかつすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、これによりそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0229】
本発明は特定の態様に関して開示された一方、本発明の他の態様および変形物が本発明の真の技術思想および範囲から離れることなく当業者により考案されるかもしれないことが明らかである。付属として付けられる請求の範囲は、全部のこうした態様および同等の変形物を包含すると解釈されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0230】
本発明を具体的に説明する目的上、図面に本発明のある態様が描かれる。しかしながら、本発明は、図面に描かれる態様の正確な配置および手段に制限されない。
【図1】図1は、RT−PCRにより測定されるところの、COPDで死亡した喫煙者(S/C)およびCOPDを伴わない非喫煙者(N)からの剖検肺組織からのIL−13 mRNAのレベルを描く。矢印はIL−13転写物を示す。
【図2】図2は、図2Aから図2Dを含んで成り、対照の正常およびCC10−IL13(IL−13を構成的に発現する)マウスからのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色された肺組織を描く像である。図2A(トランスジーン(−)、100倍)および図2B(トランスジーン(+)、100倍)はそれぞれ対照およびCC10−Il−13マウスからの組織学的組織を具体的に説明する。図2Bは、IL−13を過剰発現するマウスの実質中の好酸球、リンパ球およびマクロファージ豊富な炎症を立証する。図2C(トランスジーン(−)、250倍)および図2D(トランスジーン(+)、250倍)は、それぞれ対照の正常マウスおよびCC10−IL−13トランスジェニックマウスの気道上皮細胞を比較する。図2DはIL−13を過剰発現するマウスの気道における上皮細胞肥大を具体的に説明する。
【図3】図3は、図3Aおよび図3Bを含んで成り、対照およびCC10−IL−13マウスからの気道のジアスターゼを用いる断続的酸−シッフ(D−PAS)染色を描く像である。図3Aはトランスジーン(−)マウスからの気道を描き、そして図3Bはトランスジーン(+)マウスにおける粘液化生および杯細胞過形成を描く。拡大は100倍である。
【図4】図4は、図4Aおよび図4Bを含んで成り、CC10−IL−13マウスの気道のトリクローム染色を描く。図4Aはトランスジーン(−)マウスにおけるコラーゲン沈着を描く。図4Bはトランスジーン(+)マウスにおける高められたコラーゲン沈着を描く。
【図5】図5は、誘導可能なCC10−rtTA−IL−13トランスジェニックマウスを生成させるのに使用されたドキシサイクリン(dox)で誘導可能な構築物の図解である。
【図6】図6は、図6Aから6Eを含んで成り、CC10−rtTA−IL−13誘導可能マウスからの肺の組織学的および形態計測学的分析を描く。肺を取り出し、圧に対し固定し、そしてdox投与後のトランスジーン誘導に際しての肺胞拡大を示すための顕微鏡検査のため処理した。図6Aはdox投与前の誘導可能なトランスジーン(+)マウスを描く。図6Bはdox投与1日後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスを描く。図6Cはdox投与1週間後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスの肺胞を描き、そして図6Dはdox投与1ヶ月後の誘導可能なトランスジーン(+)マウスにおけるかなりの肺胞拡大を示す。図6Eは誘導可能なトランスジーン(+)マウスの形態計測学的分析を描くグラフである。4週齢のトランスジーン(−)および(+)マウスを通常もしくはdox水に無作為化し、そしてこれらの処理で1ヶ月間維持した。肺を取り出し、圧に対し固定し、そして翼弦長(chord length)測定値をとった。翼弦長は、doxを与えられたトランスジーン(−)マウスもしくは通常水を与えられたトランスジーン(+)マウスより、doxを与えられたトランスジーン(+)マウスで有意により大きかった。
【図7】図7は、IL−13を構成的に発現するトランスジェニックマウスにおける結晶沈着を描く。結晶は多数の切子面をもちかつしばしば針状であった。
【図8】図8は、CC10−IL−13トランスジェニックマウスの気管支肺胞洗浄(BAL)液からの部分的に精製された結晶を含んで成るクマシーブルー染色されたSDS−PAGEゲルを描く。単一のタンパク質バンドはおよそ45kDaの分子量を有した。
【図9】図9は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定されるところの2月齢のトランスジーン(+)および(−)CC10−IL−13マウスの肺のYM mRNAレベルを描く。
【図10】図10は、図10Aおよび10Bを含んで成り、1月齢で開始する通常もしくはdox水に無作為化されたトランスジーン(−)および(+)CC10−rtTA−IL−13マウスにおけるYM mRNAレベルを描く。図10Aにおいて、無作為化の1ヶ月後に肺を取り出し、全肺RNAを単離し、そしてRT−PCRを使用してYM遺伝子発現を測定した。図10Bは示された時間間隔(w=週、m=月)の間のdoxもしくは通常水投与後のYM mRNAを描く。mRNAレベルは、対照としてβ−アクチンを使用して正規化した。
【図11】図11は、図11Aから図11Hを含んで成り、組織中のYMの発現を検出するためのCC10−IL−13および対照マウスからの肺組織のインサイチューハイブリダイゼーションを描く。図11Aおよび図11Bはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブでプロービングされたトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。図11Cおよび図11Dはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを用いるトランスジーン(−)マウスからの肺組織を描く。図11Eおよび図11Fは、それぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用してプロービングされた4週齢のトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。図11Gおよび図11Hはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブでプロービングされた10週齢のトランスジーン(+)マウスからの肺組織を描く。
【図12】図12は、2月齢のトランスジーン(−)およびトランスジーン(+)CC10−IL−13動物から得られたBAL液中のキチナーゼ活性を描くグラフである。(トランスジーン(−)に対しp<0.05)
【図13】図13は、図13Aおよび図13Bを含んで成り、CC10−rtTA−IL−13マウスにおけるそれぞれ酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)の発現およびキチナーゼ活性を描く。図13Aは、1月齢でdoxもしくは通常水に配置されかつ示された期間の間このレジメンで飼育されたトランスジーン(−)および(+)マウス肺からの肺中のAMCアーゼをコードするmRNAのレベルを描く。AMCアーゼおよびβ−アクチン発現をRT−PCRにより評価した。図13Bは、1月齢で通常もしくはdox水に無作為化された誘導可能なトランスジーン(+)および(−)の動物におけるキチナーゼ活性を描くグラフである。BAL液のキチナーゼ活性を、doxもしくは通常水投与後示された間隔で評価した。
【図14】図14は、図14Aから14Dを含んで成り、インサイチューハイブリダイゼーションを使用するCC10−IL−13マウスにおけるAMCアーゼ発現の局在化を描く。図14Aおよび図14Bはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用するトランスジーン(+)マウス肺組織を描く。図14Cおよび図14Dはそれぞれアンチセンスおよびセンスのプローブを使用するトランスジーン(−)マウス肺組織を描く。
【図15】図15は、図15Aから図15Cを含んで成り、それぞれRT−PCRおよびキチナーゼ活性アッセイを使用して測定されるところの、卵アルブミン(OVA)で感作かつ攻撃された野性型マウスにおけるYMおよびAMCアーゼのmRNA発現ならびにキチナーゼ活性を描く。図15AはOVAエアゾル攻撃後示された間隔(d=日、h=時間)でのYM mRNA発現を描く。図15BはOVAエアゾル攻撃後示された間隔でのAMCアーゼ mRNA発現を描く。図15Cは、OVAエアゾル攻撃後24時間およびそれ以降の野性型マウスからの気管支肺胞洗浄液(BAL)中で検出された、有意に(*P<0.01)より高いキチナーゼ活性を描く。
【図16】図16は、図16Aから16Gを含んで成り、OVAで感作されかつその後攻撃された野性型動物に対するアロサミジン(allos)の影響を描く。図16Aは全BAL細胞回収に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全BAL細胞回収における有意の(p<0.01)低下を示す。図16BはBAL液中で回収された好酸球の割合に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後に回収された好酸球の割合の有意の(p<0.01)低下を示す。図16CはBAL液中で回収された好酸球の総数に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全好酸球回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16DはBAL液中で回収されたリンパ球の数に対する連日のアロサミジン投与(1mg/kg)の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全リンパ球回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16Eは全BAL細胞回収に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。連日のアロサミジン用量を第1日に開始して与え、そして、動物をOVAエアゾル攻撃後第2および7日に全BAL細胞回収について評価した。*印はアロサミジン投与後の全BAL細胞回収の有意の(p<0.01)低下を示す。図16FはBAL中の好酸球回収の割合に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後のBAL細胞回収中の好酸球の割合の有意の(p<0.01)低下を示す。図16GはBAL中の全好酸球回収に対するアロサミジンの用量依存性の影響を描くグラフである。*印はアロサミジン投与後の全好酸球BAL細胞回収の有意の(p<0.01)低下を示す。
【図17】図17は、図17Aから図17Dを含んで成り、5週齢のCC10−IL−13トランスジーン(+)および(−)マウスに対するアロサミジン投与(1mg/kgアロサミジンもしくはベヒクル対照に無作為化される、連日腹腔内(i.p.)で14日間投与)の影響を描く。図17Aは全BAL細胞回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。図17BはBAL好酸球回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。*印は好酸球回収の有意の(p<0.01)減少を示す。図17CはBALリンパ球回収に対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。*印はリンパ球回収の有意の(p<0.01)減少を示す。図17Dは肺の大きさに対するアロサミジン投与の影響を描くグラフである。肺を取り出し、圧に対し固定し、そして本明細書の別の場所に記述されたところの容量置換の方法論を使用して評価した。
【図18】図18は、図18Aおよび18Bを含んで成り、卵アルブミンで誘導されるBAL細胞数に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描く。図18Aは合計のアルブミンで誘導されるBAL細胞数に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描くグラフである。未攻撃(未攻撃(unchall))と、卵アルブミンに対し感作されかつ連続する3日に卵アルブミンで攻撃されたマウスとの間の比較を、7日の時間点で行った。マウスは、最初のエアゾル曝露の前日に開始して1日おきに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清(血清(serum))で腹腔内で処理した。図18Bは、われわれの感作かつ攻撃されたマウスからのBAL液中の好酸球の割合に対する抗AMCアーゼ抗体の影響を描くグラフである。未攻撃(未攻撃(unchall))と、卵アルブミンに対し感作されかつ連続する3日に卵アルブミンで攻撃されたマウスとの間の比較を、7日の時間点で行った。マウスは、最初のエアゾル曝露の前日に開始して1日おきに、0.5mlの抗AMCアーゼ抗体もしくは対照血清(血清(serum))で腹腔内で処理した。
【図19】図19は、図19Aから19Fを含んで成る。図19Aから19Dは、AMCアーゼアンチセンスプローブを使用する喘息を伴う患者からの剖検肺サンプルでのインサイチューハイブリダイゼーションを使用しての検出可能なAMCアーゼのmRNAを描く像であり(図19A)AMCアーゼのmRNAは、アンチセンスプローブを使用しての肺疾患を伴わない患者からの剖検で得られた組織学的に正常な対照肺組織中で検出されなかった(図19B)。センスプローブを使用するインサイチューハイブリダイゼーションは、致死的喘息の組織(図19C)もしくは対照組織(図19D)のいずれでもAMCアーゼを検出しなかった。致死的喘息の上皮細胞(太矢印)およびマクロファージ(細矢印)染色が検出された(図19A)。図19Eおよび19Fは、AMCアーゼアンチセンスプローブを使用して喘息を伴う患者からの剖検肺サンプル中に存在する肺胞マクロファージでのインサイチューハイブリダイゼーションを使用しての検出可能なAMCアーゼのmRNAを描く像である(図19E)。AMCアーゼのmRNAはセンスプローブを使用して検出されなかった(図19F)。さらに、AMCアーゼのmRNAは、アンチセンスもしくはセンスプローブを使用して、肺疾患を伴わない患者から得られた対照肺組織中で検出されなかった。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択されるキチナーゼ様分子と特異的に結合する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記アンチセンス核酸分子が、前記キチナーゼ様分子をコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記リボザイムが、前記キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を予防することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の予防方法。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記キチナーゼ様分子がYMタンパク質であり、かつ、さらに、前記キチナーゼ様分子阻害剤が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチログアニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項10記載の方法。
【請求項17】
有効量のキチナーゼ阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼの増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記キチナーゼが酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)であり、かつ、前記キチナーゼ阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がAMCアーゼと特異的に結合する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記アンチセンス核酸分子が、AMCアーゼをコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項24】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がインターロイキン−13の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項25】
前記哺乳動物がヒトである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がTh2炎症応答と関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項28】
炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および前記哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物の投与後の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が前記哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項29】
キチナーゼ様分子の前記レベルが、キチナーゼ様分子の核酸発現のレベルおよびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がマウスである、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記マウスが、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項28記載の方法を使用して同定される化合物。
【請求項34】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項28記載の方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法を使用して同定される化合物。
【請求項36】
細胞を化合物と接触させること、および、前記細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物と接触されない以外は同一の細胞中の前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物と接触されない前記細胞中の前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物と接触された前記細胞中の前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項37】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を治療するためのキット。
【請求項38】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される、請求項37記載のキット。
【請求項39】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項38記載のキット。
【請求項40】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項39記載のキット。
【請求項41】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を予防するためのキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の治療剤。
【請求項3】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項4】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項5】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項4記載の治療剤。
【請求項6】
前記キチナーゼ様分子が、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)である、請求項3記載の治療剤。
【請求項7】
前記アンチセンス核酸分子が、前記酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)をコードする単離された核酸分子またはそのフラグメントに相補的な単離された核酸である、請求項4記載の治療剤。
【請求項8】
前記リボザイムが、前記キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である、請求項4記載の治療剤。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項10】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10記載の治療剤。
【請求項12】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項13】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体およびキメラ抗体から成る群より選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項14】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項12記載の治療剤。
【請求項15】
前記抗体が、完全長抗体、Fab分子、Fv分子、scFv分子およびイントラボディーから成る群より選択される、請求項13記載の治療剤。
【請求項16】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項17】
有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるインターロイキン−13の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17記載の治療剤。
【請求項19】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項17記載の治療剤。
【請求項20】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるインターロイキン−13の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項21】
炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および前記哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物の投与後の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が前記哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項22】
キチナーゼ様分子の前記レベルが、キチナーゼ様分子の核酸発現のレベルおよびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がマウスである、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記マウスが、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項21記載の方法。
【請求項27】
細胞を化合物と接触させること、および、前記細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物と接触されない以外は同一の細胞中の前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物と接触されない前記細胞中の前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物と接触された前記細胞中の前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項28】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を治療するためのキット。
【請求項29】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される、請求項28記載のキット。
【請求項30】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項29記載のキット。
【請求項31】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項30記載のキット。
【請求項32】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を予防するためのキット。
【請求項33】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項32記載のキット。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20記載の治療剤。
【請求項35】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項36】
前記キチナーゼ様分子が、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)である、請求項20記載の治療剤。
【請求項37】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体およびキメラ抗体から成る群より選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項38】
前記抗体が、完全長抗体、Fab分子、Fv分子、scFv分子およびイントラボディーから成る群より選択される、請求項37記載の治療剤。
【請求項39】
前記抗体がAMCアーゼに特異的に結合する、請求項20記載の治療剤。
【請求項40】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項41】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項20記載の治療剤。
【請求項42】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項10記載の治療剤。
【請求項43】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項1記載の治療剤。
【請求項1】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択されるキチナーゼ様分子と特異的に結合する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記アンチセンス核酸分子が、前記キチナーゼ様分子をコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記リボザイムが、前記キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を予防することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の予防方法。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記キチナーゼ様分子がYMタンパク質であり、かつ、さらに、前記キチナーゼ様分子阻害剤が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチログアニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項10記載の方法。
【請求項17】
有効量のキチナーゼ阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がキチナーゼの増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記キチナーゼが酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)であり、かつ、前記キチナーゼ阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がAMCアーゼと特異的に結合する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記アンチセンス核酸分子が、AMCアーゼをコードする単離された核酸に相補的な単離された核酸、もしくはそのフラグメントである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項24】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がインターロイキン−13の増大されたレベルと関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項25】
前記哺乳動物がヒトである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物における炎症性疾患を治療することを含んで成る、前記疾患がTh2炎症応答と関連する、前記哺乳動物における前記炎症性疾患の治療方法。
【請求項28】
炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および前記哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物の投与後の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が前記哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項29】
キチナーゼ様分子の前記レベルが、キチナーゼ様分子の核酸発現のレベルおよびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がマウスである、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記マウスが、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項28記載の方法を使用して同定される化合物。
【請求項34】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項28記載の方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法を使用して同定される化合物。
【請求項36】
細胞を化合物と接触させること、および、前記細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物と接触されない以外は同一の細胞中の前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物と接触されない前記細胞中の前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物と接触された前記細胞中の前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項37】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を治療するためのキット。
【請求項38】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、抗体、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される、請求項37記載のキット。
【請求項39】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項38記載のキット。
【請求項40】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項39記載のキット。
【請求項41】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を予防するためのキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の治療剤。
【請求項3】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項4】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項5】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項4記載の治療剤。
【請求項6】
前記キチナーゼ様分子が、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)である、請求項3記載の治療剤。
【請求項7】
前記アンチセンス核酸分子が、前記酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)をコードする単離された核酸分子またはそのフラグメントに相補的な単離された核酸である、請求項4記載の治療剤。
【請求項8】
前記リボザイムが、前記キチナーゼ様分子をコードする核酸から転写されたmRNAを特異的に切断する単離された酵素的核酸である、請求項4記載の治療剤。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項1記載の治療剤。
【請求項10】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるキチナーゼ様分子の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10記載の治療剤。
【請求項12】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項13】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体およびキメラ抗体から成る群より選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項14】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項12記載の治療剤。
【請求項15】
前記抗体が、完全長抗体、Fab分子、Fv分子、scFv分子およびイントラボディーから成る群より選択される、請求項13記載の治療剤。
【請求項16】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項10記載の治療剤。
【請求項17】
有効量のキチナーゼ様分子阻害剤を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるインターロイキン−13の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17記載の治療剤。
【請求項19】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、核酸およびアンチセンス核酸分子よりなる群から選択される、請求項17記載の治療剤。
【請求項20】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を活性成分として含んでなる、哺乳動物におけるインターロイキン−13の増大したレベルと関連する炎症性疾患の治療剤。
【請求項21】
炎症性疾患に苦しめられる哺乳動物に化合物を投与すること、および前記哺乳動物におけるキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物の投与前の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物の投与後の前記哺乳動物における前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が前記哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、哺乳動物における炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項22】
キチナーゼ様分子の前記レベルが、キチナーゼ様分子の核酸発現のレベルおよびキチナーゼ様分子の酵素活性のレベルよりなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がマウスである、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記マウスが、インターロイキン13を構成的に発現するトランスジェニックマウス、およびインターロイキン13を誘導可能に発現するトランスジェニックマウスよりなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項21記載の方法。
【請求項27】
細胞を化合物と接触させること、および、前記細胞中のキチナーゼ様分子のレベルを前記化合物と接触されない以外は同一の細胞中の前記キチナーゼ様分子のレベルと比較し、ここで、前記化合物と接触されない前記細胞中の前記キチナーゼ様分子の前記レベルと比較しての前記化合物と接触された前記細胞中の前記キチナーゼ様分子のより低いレベルが、前記化合物が炎症性疾患を治療するのに有用であることの指標となり、それにより炎症性疾患を治療するのに有用な化合物を同定することを含んで成る、炎症性疾患を治療するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項28】
有効量のキチナーゼ様分子の阻害剤を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を治療するためのキット。
【請求項29】
前記キチナーゼ様分子阻害剤が、化合物、リボザイム、アンチセンス分子および核酸よりなる群から選択される、請求項28記載のキット。
【請求項30】
前記化合物が、アロサミジン、グルコアロサミジンA、グルコアロサミジンB、メチル−N−デメチルアロサミジン、デメチルアロサミジン、ジデメチルアロサミジン、スチロガウニジン、スチログアニジン誘導体、ジペプチドシクロ−(L−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(L−Arg−L−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−D−Pro)、ジペプチドシクロ−(D−Arg−L−Pro)、リボフラビン、フラビン誘導体、銅、亜鉛および水銀よりなる群から選択される、請求項29記載のキット。
【請求項31】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項30記載のキット。
【請求項32】
有効量のキチナーゼ様分子に特異的に結合する抗体を含んで成り、アプリケーターおよびその使用のための説明資料をさらに含んで成る、炎症性疾患がキチナーゼ様分子の増大されたレベルと関連する、哺乳動物における前記疾患を予防するためのキット。
【請求項33】
前記キチナーゼ様分子がAMCアーゼである、請求項32記載のキット。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20記載の治療剤。
【請求項35】
前記キチナーゼ様分子が、YM−1、YM−2、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)、卵管糖タンパク質1、軟骨糖タンパク質1、キトトリオシダーゼ、ムチン9、軟骨糖タンパク質−39および軟骨細胞タンパク質39よりなる群から選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項36】
前記キチナーゼ様分子が、酸性哺乳動物キチナーゼ(AMCアーゼ)である、請求項20記載の治療剤。
【請求項37】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体およびキメラ抗体から成る群より選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項38】
前記抗体が、完全長抗体、Fab分子、Fv分子、scFv分子およびイントラボディーから成る群より選択される、請求項37記載の治療剤。
【請求項39】
前記抗体がAMCアーゼに特異的に結合する、請求項20記載の治療剤。
【請求項40】
前記炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺(lung)疾患、慢性気管支炎、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎、肺炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、アトピー、アレルギー、アレルギー性鼻炎、特発性肺線維症、強皮症および肺気腫よりなる群から選択される、請求項20記載の治療剤。
【請求項41】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項20記載の治療剤。
【請求項42】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項10記載の治療剤。
【請求項43】
前記炎症性疾患が喘息である、請求項1記載の治療剤。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A−6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16Ea】
【図16Eb】
【図16F】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A−6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16Ea】
【図16Eb】
【図16F】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【公表番号】特表2006−508014(P2006−508014A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−515201(P2003−515201)
【出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2002/023516
【国際公開番号】WO2003/009808
【国際公開日】平成15年2月6日(2003.2.6)
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】イエール・ユニバーシテイ
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】エリアス,ジヤツク・エイ
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】ズー,ツアウ
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2002/023516
【国際公開番号】WO2003/009808
【国際公開日】平成15年2月6日(2003.2.6)
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】イエール・ユニバーシテイ
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】エリアス,ジヤツク・エイ
【出願人】
【識別番号】
【氏名又は名称】ズー,ツアウ
【Fターム(参考)】
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