説明

キナーゼ活性の阻害剤

本発明は、キナーゼを阻害するピリジンまたはピラジンに関する。特に、本発明の化合物は、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαまたはFLT3のようなクラスIII PTK受容体ファミリー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、SYK、DDR1およびDDR2ならびにRETを阻害する。本発明の化合物は、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝疾患;および血管疾患のような、キナーゼが関与する疾患の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼを阻害するピリジンまたはピラジンに関する。特に、本発明の化合物は、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαまたはFLT3のようなクラスIII PTK受容体ファミリーのメンバー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、SYK、DDR1およびDDR2ならびにRETを阻害する。本発明の化合物は、例えば、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝疾患;および血管疾患のような、キナーゼが関与する疾患の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質における特定の残基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーである。一般的に、プロテインキナーゼは、3つのグループに分けられる;すなわち、優先的にセリンおよび/またはスレオニン残基をリン酸化するもの、優先的にチロシン残基をリン酸化するもの、およびチロシンおよびSer/Thr残基の両方をリン酸化するものである。プロテインキナーゼは、それ故、受容体におけるサイトカインの活性化を含む細胞外シグナルを核に伝達し、種々の生物学的な事象を引き起こすためのシグナル伝達経路における重要な要素である。通常の細胞生理学におけるプロテインキナーゼの多くの役割には、増殖、分化、代謝、アポトーシス、細胞モビリティ、マイトジェネシス、転写、翻訳および他のシグナル伝達工程を含む細胞周期制御が含まれる。
【0003】
プロテインキナーゼファミリー(PTKs)は、細胞質PTKs (CTKs)と受容体PTKs (RTKs)に分けられる。細胞質PTKsには、SRCファミリー(BLK; FGR; FYN; HCK; LCK; LYN; SRC; YESおよびYRKを含む); BRKファミリー(BRK; FRK (PTK5), SAD; およびSRMを含む); CSKファミリー (CSKおよびCTKを含む); TECファミリー(BTK; ITK; TEC; MKK2およびTXKを含む)、Janus キナーゼファミリー(JAK1, JAK2, JAK3およびTyk2を含む)、FAKファミリー(FAKおよびPYK2を含む); Fesファミリー(FESおよびFERを含む)、ZAP70ファミリー (ZAP70およびSYKを含む); ACKファミリー (ACK1およびACK2を含む); Ablファミリー (ABLおよびARGを含む)が含まれる。RTKファミリーには、EGF受容体ファミリー (EGFR, HER2, HER3およびHER4を含む); インスリン受容体ファミリー (INS-RおよびIGF1-Rを含む); PDGF受容体ファミリー(クラスIII受容体としても既知であり、PDGFRα, PDGFRβ, CSF-1R, KIT, FLT3を含む); VEGF受容体ファミリー (FLT1, FDRおよびFLT4を含む); FGF受容体ファミリー (FGFR1, FGFR2, FGFR3およびFGFR4を含む); CCK4ファミリー (CCK4を含む); METファミリー (METおよびRONを含む); TRKファミリー(TRKA, TRKB, およびTRKCを含む); AXLファミリー (AXL, MER,およびSKYを含む); TIE/TEKファミリー(TIEおよびTIE2/TEKを含む); EPHファミリー(EPHA1, EPHA2, EPHA3, EPHA4, EPHA5, EPHA6, EPHA7, EPHA8, EPHB1, EPHB2, EPHB3, EPHB4, EPHB5, EPHB6を含む); RYKファミリー (RYKを含む); MCKファミリー (MCKおよびTYRO10を含む); ROSファミリー (ROSを含む); RETファミリー (RETを含む); LTKファミリー (LTKおよびALKを含む); RORファミリー (ROR1およびROR2を含む); Muskファミリー (Muskを含む); LMRファミリー (LMR1、LMR2およびLMR3を含む); ならびにSuRTK106ファミリー (SuRTK106を含む)が含まれる。
【0004】
同様に、セリン/スレオニン特異的なキナーゼは、多くの異なるサブファミリーを含んでなり、細胞外シグナル制御キナーゼ (p42/ERK2およびp44/ERK1); c-Jun NH2末端キナーゼ(JNK); cAMP応答性配列結合プロテインキナーゼ (CREBK); サイクリン依存性キナーゼ (CDKs); cAMP依存性キナーゼ (CAPK); マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性化プロテインキナーゼ (MAPKおよびその類縁体); ストレス活性化プロテインキナーゼ p38/SAPK2; マイトジェンおよびストレス活性化キナーゼ (MSK); およびプロテインキナーゼ、特にPKA、PKBおよびPKCが含まれる。
【0005】
加えて、多くの病原生物のゲノムは、プロテインキナーゼをコードする遺伝子を有する。例えば、マラリア寄生虫である熱帯熱マラリア原虫ならびにHPVおよび肝炎ウイルスのようなウイルスは、キナーゼ関連遺伝子を有すると思われ、キナーゼを阻害することは、これらの生物により引き起こされる疾患における治療的な選択肢として有用である。
【0006】
不適切に高いプロテインキナーゼ活性は、細胞機能の異常から生じる多くの疾患と関連付けられてきた。これは、直接的または間接的に、例えば酵素の突然変異、過発現または不適切な活性化に関連するキナーゼに対する適切な制御メカニズムの不全により、あるいはキナーゼの上流または下流へのシグナル伝達に関与するサイトカインまたは成長因子の過剰産生または産生不足により生じる。これらの全ての例において、キナーゼ活性の選択的な阻害は、有利な効果を有することが期待される。異常なキナーゼ活性が示される疾患には、アトピー性皮膚炎、喘息、関節リウマチ、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病および1型糖尿病のような免疫性および炎症性の疾患;例えば、前立腺癌、大腸癌、胃腸の腫瘍、乳癌、頭部および頸部の癌、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)を含む白血病ならびにリンパ腫等の癌、新血管形成に関連する疾患のような過剰増殖疾患;同種移植片拒絶のような腎疾患および肝臓または腎臓の繊維症; 骨粗しょう症のような骨再構築疾患; アテローム性動脈硬化症のような代謝疾患; ならびに血管疾患が含まれる。
【0007】
それ故、化合物は、1以上のキナーゼを直接的にターゲッティングし、治療効果を達成する。阻害剤分子の望ましい標的を以下に示す。
【0008】
PDGF受容体ファミリー(クラスIII PTK受容体ファミリー)
血小板由来成長因子(PDGF)は、繊維芽細胞、平滑筋細胞、およびグリア細胞のような間葉細胞由来の細胞に対する主要なマイトジェンである。PDGFは、ジスルフィド結合で結合した2つのポリペプチド鎖AおよびBで通常構成される32 kDaのタンパク質ヘテロダイマーである。PDGF AB ヘテロダイマーに加えて、PDGFの2つのホモダイマーの形態が存在する(AAおよびBB)。血液凝固および血小板付着の間に、PDGFは、血管の損傷部位における顆粒から放出され、PDGFが血管の修復において一定の役割を有することを示す。PDGFは、動脈の平滑筋細胞の中間層から筋肉細胞が増殖する動脈の内膜層への移動を刺激する。PDGFの全てのアイソフォームにより誘発される細胞の増殖は、PDGF受容体に結合するリガンドにより修飾される。PDGF受容体は、クラスIIIチロシンキナーゼファミリーに属し、タイプA(またはタイプα)およびタイプB(またはタイプβ)と呼ばれる2つの受容体サブタイプからなる。PDGF受容体ファミリーの他のメンバーには、CSF-1R、cKITおよびFLT3が含まれる。
【0009】
FMS(CSF-1R)
CSF-1は、骨髄前駆細胞、特に単核貪食細胞系統の細胞に対する強力な増殖および分化因子である。CSF-1は、応答性の細胞における特異的な受容体を介して、成熟マクロファージの増殖および末端細胞(end-cell)機能を刺激する。CSF-1の生物学的な活性は、165 kDaの受容体により修飾される。CSF-1受容体は、プロトオンコジーンc-FMSをコードするc-fms遺伝子によりコードされる。タイプIII受容体チロシンキナーゼファミリーの一員として、CSF-1Rは、全体的に、c-KIT、PDGFRα、PDGFRβおよびFLT3と構造が類似する。前記受容体は、512アミノ酸の細胞外リガンド結合ドメイン、25アミノ酸の膜間ドメイン、および435アミノ酸の細胞質ドメインを有する膜貫通タンパク質であり、いわゆるキナーゼ挿入により中断される2部構成のチロシンキナーゼをコードする。リガンドの結合は、受容体のチロシンキナーゼ活性を活性化する。細胞性c-FMSプロトオンコジーンは、SM-FeSV (Susan McDonough strain of Feline sarcoma virus)によりコードされるv-FMSと呼ばれるウイルスオンコジーンの細胞性同族体である。ウイルスオンコジーンは、恒常的にキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする。
【0010】
CSF-1受容体を活性化する変異は、骨髄形成異常症候群の患者の約10%で観察される。PDGFに対する受容体遺伝子の近くのヒトクロモソーム5q33.2-3に位置づけられるCSF-1R遺伝子座の両方のアレルの欠失は、これらの患者の何人かの骨髄細胞において見られた (5qマイナスシンドロームとして既知)。C-fms遺伝子の標的化された破壊を有するマウスは、本質的にop/opマウスのフェノコピーであり、CSF-1の全ての作用がSCF-1Rにより媒介されることを示す。これらのデータは、CSF-1Rの特異的阻害剤は、インビボで、単球産生およびマクロファージ数を減少させることが期待されることを示す。
【0011】
循環するCSF-1の主要な源は、血管に沿って並ぶ内皮細胞であると考えられるが、繊維芽細胞、骨芽細胞、単球、B細胞、T細胞および骨髄間質細胞を含む一定範囲の他の細胞タイプも、CSF-1を産生する。血漿CSF-1レベルは、リポ多糖またはリステリア菌およびカンジダ・アルビカンスのような感染性病原体への曝露により劇的に増大する。ヒトにおいて、CSF-1レベルは、敗血症の患者において増大するように見え、癌患者へのLPS投与はCSF-1レベルを増大させた。
【0012】
関節リウマチ(RA)のような慢性の非炎症性疾患におけるマクロファージの関与は、よく確立されている。コラーゲン誘発関節炎のマウスモデルにおいて、CSF-1の投与は疾患の重篤度を激化させたが、抗CSF-1抗体は、慢性関節炎の重篤度を下げた。CSF-1は、他の関節炎のモデルにおける疾患重症度にも寄与することが示されている。RA自体におけるCSF-1の関与に対する証拠は、RA患者に由来する滑膜の繊維芽細胞がCSF-1を産生すること;CSF-1レベルがRA患者の血清および関節液において上昇することである。
CSF-1の腎疾患に対する寄与についての多くの文献も存在する。
【0013】
マクロファージ集積は、糸球体腎炎における腎機能の指標となり、ヒトにおける腎機能障害に相関し、腎増のCSF-1レベルの上昇は、糸球体腎炎の患者において見られる。実験的な疾患モデルにおいて、過剰なマクロファージ増殖および組織障害に向かわせることにおけるCSF-1の関与に対する明確な証拠がある。MRL-lprマウスにおけるループス腎炎の重症度は、CSF-1レベルに相関したが、抗CSF-1R抗体を用いた治療は、実験的に誘発した腎臓の炎症の間、局所的なマクロファージ増殖を減少させた。
【0014】
多発性硬化症(MS)は、異種起源の疾患であり、種々の細胞の浸潤が、疾患の異なる段階において生じる。初期の段階において、免疫病理学が、自己反応性のT細胞および自己抗体による特異的抗原の認識に関与する。後の段階において、活性化マクロファージおよびグリア細胞は、多くの炎症メディエーターの産生を支配する。
【0015】
アルツハイマー病(AD)は、結果的に神経障害になる慢性の膿の炎症に寄与する。ミクログリア細胞は、ADの病態生理学に寄与する。ミクログリア活性化因子であるCSF-1は、中枢神経系において高いレベルで見られ、β-アミロイドペプチドが誘発するIL-1、IL-6および一酸化窒素のミクログリアの産生を増大させ、続いて、星状細胞および他のミクログリアを活性化することにより脳の炎症性の状態を増強し、直接的に神経障害を誘発する。
【0016】
CSF-1およびその同起源の受容体であるc-fmsの発現は、結節性硬化症の患者に由来するホジキン病由来の細胞株における転写物およびタンパク質レベルの両方において検出されている。CSF-1に対する抗血清を用いた細胞増殖の阻害は、これらの細胞における自己分泌増殖制御経路の指標となる。
【0017】
CSF-1は、マウスおよびヒトにおける非常に多様な腫瘍細胞により産生され、CSF-1は、全ての固形腫瘍のストローマの重要な要素である多数のマクロファージの誘引に寄与する。CSF-1は、胸部腫瘍の70%以上で産生され、腫瘍細胞の自己分泌刺激、ならびに腫瘍関連免疫抑制を通して、全ての疾患に寄与し得る。
【0018】
CSF-1により腫瘍に引き付けられるマクロファージは、腫瘍の転移性の拡大においてある一定の役割を果たし、抗CSF-1治療が、マウスにおけるヒト腫瘍の異種移植片の増殖を抑え得ることも示されている。興味深いことに、天然のCSF-1Rの異所性の発現は、悪性でない細胞のクローン原性腫瘍への変換をインビトロで生じるのに十分であると思われる。既にクローン原性の細胞において、CSF-1Rの発現は、クローン原性および半固体培地において形成される個々のクローンコロニーの大きさの両方を増大させ得る。
【0019】
CSF-1が、マクロファージ系の外、精巣、子宮および乳腺において、発達のいくつかの段階で発現し得ることを示す多数のレポートがある。マウスにおける乳腺の正常な発達におけるCSF-1の役割は示されているが、これは、枝分かれの形態形成におけるマクロファージの浸潤の重要な役割に貢献し得る。対照的に、CSF-1Rは、特に、胸部、子宮、子宮内膜および前立腺の腫瘍、ならびにBリンパ球悪性腫瘍のような広範なヒトの固形腫瘍において発現される。これらの腫瘍体タイプにおける機能的なオートクリンループは、活性受容体におけるリン酸チロシン部分に対して向けられた抗体を用いた免疫細胞化学的な局在化に基づいて示され、乳癌および子宮癌におけるCSF-1/CSF-1Rオートクリンループの発現は、疾患の進行および悪い予後と強く相関し、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターのような浸潤性のメディエーターの産生を引き起こすras-raf-MAPK-Ets経路の活性化に因果的に関連する可能性が高い。乳癌の進行段階におけるCSF-1/CSF-1オートクリン/パラクリンシグナル伝達の因果的役割に対する最も直接的な証拠は、乳癌になりやすいマウス系とCSF-1欠乏性のop/opマウス系を交雑させることにより得られ、Linおよび共同研究者は、癌の発生には影響しないが、進行および転移は、増殖因子の欠如により抑制されたことを示した。骨は、乳癌、前立腺癌および肺癌の遠位の転移の最も共通の部位であることがよく確立されている。骨は、「肥えた土壌」または癌細胞が生じるための環境を提供するように思われる。いったん腫瘍が骨に転移すると、骨の痛み、骨折、高カルシウム血症および神経圧迫により、疾患が治りにくくなる。骨は、多くの成長因子の貯蔵所であり、組織学的な切片は、腫瘍細胞が破骨細胞に隣接することおよび癌における骨の破壊が破骨細胞により媒介されることを確認する。破骨細胞は血液産生単球と共通の前駆体から生じ、骨再吸収の活性は、CSF-1、fmsに対するリガンドおよびRANKLの活性に依存する。多くの腫瘍が多量のCSF-1を自発的に分泌し、RANKLが骨中の骨芽細胞により発現されることが示されている。この側面において、破骨細胞は、その崩壊活性について、CSF-1およびRANKLに依存している。
【0020】
独占的な骨吸収細胞である破骨細胞は、インビトロで骨髄前駆体から生じる単球/マクロファージファミリーの一員であり、骨髄マクロファージは、最大の貯蔵所を意味する。M-CSFが、単球/マクロファージ系の前駆体の生存および増殖ならびにそれらの成熟した貪食細胞への分化を媒介することは、骨髄系の細胞が破骨細胞前駆体であるという考えを支持し、M-CSFが破骨細胞の生物学において重要な役割を果たしていることを提唱し、実際に、機能的なM-CSFを発現していないop/opマウスは大理石骨病になる。
【0021】
さらに、可溶性のM-CSFのop/opマウスへの投与は、それらを大理石骨病から救う。破骨細胞分化においてCSF-1/FMS軸により果たされる重要な役割は、FMS阻害剤の使用によるこの軸の操作が、破骨細胞機能が高すぎる場合に、薬理学的に有用であることを提唱する。
【0022】
M-CSFは、炎症を含むいくつかの疾患において一定の役割を果たすとして意味づけられる。最も注目すべきは、癌、特に血管由来の癌におけるM-CSFの役割である。それ故、M-CSFの下方制御は、非常に興味深い領域である。
【0023】
アテローム性動脈硬化症は、炎症反応と繊維増殖反応との相互作用から生じる複合的な病理学的プロセスである。マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)モノクローナル抗体(AFS98)を成体のアポリポタンパク質E(アポE)欠乏マウスに投与することにより、脂肪線条領域の発達の間に、マクロファージおよびM-CSF/c-FMS軸が動脈壁において重要な役割を果たすこと、およびM-CSF/c-fms経路の遮断が、少なくとも初期のアテローム発生からの保護として作用し得ることを示した。
【0024】
マクロファージは、先天性の免疫系の主要な要素である。それらの破壊性の能力は、広範な感染に対する保護に不可欠であり、傷の発生および修復の間の正常な組織のターンオーバー、再構築に対して必要である。しかしながら、制御されないマクロファージの組織への浸潤、またはそれらの生成物の活性化された放出は、多くの感染性、炎症性、および悪性の疾患の病態を生じる。マクロファージの産生、補充または活性化を制御する治療は、臨床および獣医学における薬剤において広範な適用があるように思われる。変形性関節症は、特に、関節の滑液におけるマクロファージの過剰産生を生じることが示されており、軟骨減少、炎症および痛みを引き起こす。マクロファージ群の制御のための1つの効果的なアプローチは、本願明細書に記載されているように、CSF-1Rの阻害剤の産生である。これは、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患のような疾患において望ましい。特に、脊髄形成異常症候群、関節リウマチ、多発性硬化症、アルツハイマー病、ホジキン病、腎疾患、胸、子宮、子宮内膜および前立腺の腫瘍を含むヒトの固形腫瘍、大理石骨病、およびアテローム性動脈硬化症に対する治療である。
【0025】
PDGFRβ
2つのPDGF受容体アイソフォームは、それらの明らかに異なるリガンド結合特異性により区別することができる。PDGFβ受容体は、B鎖 (アイソフォームBBおよびAB)にのみ結合し、一方、PDGFα受容体は、全ての形態のPDGF (Aおよび/またはB鎖を含むアイソフォーム)に結合し得る。
【0026】
内皮細胞および血管平滑筋の増殖に対してPDGFが関与する工程が重要であることに伴い、PDGFRβキナーゼドメインの阻害剤が、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患のような疾患に対して有用であるという一定範囲の病原性のプロセスがある。特に、これらには、血管形成術、アテレクトミー、または他のプラーク除去の侵襲的方法の後の冠血管再狭窄、および同じ処置の後の腎臓または末梢血管の再狭窄を含む再狭窄;他の形態の急性の傷害に伴う血管増殖現象および繊維症(例えば、成人の呼吸困難症候群に付随する肺繊維症、腎炎に付随する腎繊維症、川崎病に付随する冠血管狭窄および高安病のような他の動脈炎に付随する血管狭窄);静脈移植における狭窄の予防;促進された平滑筋細胞の遊走および移植された臓器における増殖による狭窄の予防;他の繊維性のプロセス(例えば、強皮症および筋繊維症)ならびにPDGFにより媒介される腫瘍細胞増殖の阻害が含まれる。
【0027】
KIT
肝細胞因子(SCF)(キットリガンド(KL)としても既知)、スチールファクターまたは肥満細胞増殖因子は、c-kitプロトオンコジーン産物のリガンドである。WおよびSlマウスは、色素沈着における同様の表現型を欠損しているマウスの系統である。共に貧血および生殖不能であり、c-kitおよびscf座位にそれぞれ突然変異を有する。SCFは、最初、造血の初期段階、ならびに胚細胞およびメラノサイトの発生および機能に関与する多様性の増殖因子であると述べられた。加えて、SCFは、炎症の過程に関連し得る。Kitタンパク質の30以上の活性化突然変異は、ヒトにおける高度に悪性の腫瘍に付随する。C-kitプロトオンコジーンは、クラスIII RTKであり、胚形成、メラニン形成、および血球新生において重要であると考えられている。この受容体が、肥満細胞症/肥満細胞白血病、消化管の間質性腫瘍(GIST)、小細胞肺癌(SCLC)、鼻腔ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、精巣癌(精上皮腫)、甲状腺癌、悪性黒色腫、子宮癌、アデノイド嚢胞癌、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、小児T細胞急性リンパ芽球性白血病、血管肉腫、未分化大細胞リンパ腫、子宮内膜癌、および前立腺癌の原因に関与するという証拠がある。従って、そのような免疫性および炎症性の疾患(上述したように、癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患)において使用するための、c-KIT受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する化合物の開発が望まれる。
【0028】
FLT3
FMS関連チロシンキナーゼ3 (FLT3)は、造血前駆細胞において優先的に発現する受容体チロシンキナーゼである。そのリガンドであるFLT3-Lは、骨髄、末梢血、および臍帯血に由来する造血前駆体の増殖を刺激する。FLT3-Lは、骨髄系およびリンパ系の両方の前駆体において、多面的な効果を発揮する他の造血性の増殖因子と相乗的に作用するように思われる。顆粒球マクロファージおよび顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSFおよびG-CSF)、またはCSF-1のような骨髄性の増殖因子との組み合わせにおいて、FLT3-Lは、与えられたコロニー形成ユニットから産生される骨髄性のコロニーの数を増大させる。同様に、FLT3-LがインターロイキンIL-7、IL-3、およびIL-11との相乗作用により、インビトロでのBリンパ球新生を刺激し、胸腺ストローマの存在下でIL-12はT細胞の発生を促進し、IL-15は、NK細胞の発生を促進するという証拠がある。合わせて考えると、これらの知見は、FLT3-Lが、他のサイトカインまたはインターロイキンの作用を増強および/または修飾することにより、いくつかの造血系の発生を誘発できることを示す。
【0029】
最近の研究では、急性骨髄性白血病(AML)に罹患している成人の20〜25%において、FLT3遺伝子が内部のタンデム型の複製により変異しており、癌細胞におけるFLT3のリン酸化および過剰な活性を導くことを示している。AMLは、成人の白血病の最も一般的な型であり、毎年10,000の新しい患者が見積もられる。FLT3は、神経冠由来の腫瘍および脊髄形成異常症候群において関連付けられてきた。さらに、アスパラギン酸835(asp835)におけるFLT3の突然変異は、AMLの進行と関連付けられている。AMLを誘発するFLT3受容体キナーゼの活性化は、FLT3遺伝子の遺伝的な変異の非存在下で起こり得ることも考えられる。FLT3の阻害剤は、現在、潜在的なAML治療剤として研究されている。例えば、FLT3の細胞外ドメインに結合し、そのチロシンキナーゼ活性を活性化するアゴニスト抗体について述べられている。より最近の結果では、FLT3阻害剤が、症状発現前のモデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示している。
【0030】
従って、FLT3活性の検出に対する新規および改善された試薬が望まれ、FLT3リン酸化の新しく同定された部位に対する試薬の開発も含まれる。FLT3のリン酸化依存性の過剰活性は、AMLのような疾患に関連するため、FLT3活性を特異的に検出することができる試薬は、研究および臨床適用のための有用なツールになり得る。
さらに、FLT3阻害剤は、AMLのような骨髄増殖性の疾患を含む過剰増殖疾患において有用である可能性がある。
【0031】
VEGF受容体ファミリー
血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞において作用し、これらの細胞の透過性ならびにそれらの増殖を制御するため、血管透過性因子としても既知の二量体タンパク質である。これらの2つの活性は、そのチロシンキナーゼ受容体(FLT1、FLT4およびKDR)により媒介され、血管新生の制御因子でもある。KDR受容体は、内皮細胞のマイトジェネシスおよび増殖の生物学的な活性を媒介する。
【0032】
血管新生は、正常な成人においては、第1に、創傷治癒、妊娠および黄体形成に限定されるが、癌(特に、肺の腺癌および非小細胞癌)、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症および再狭窄を含む多くの疾患において誘導される。特に、固形腫瘍は、それらの増殖について血管新生に依存し、正常な転移は、腫瘍細胞が循環に入ることを可能にするために、血管の存在を必要とする。
【0033】
KDRの阻害剤は、上述したものを含む免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患のような疾患の治療において有用であり得る。
【0034】
SRCファミリー
キナーゼのSRCおよびBTKファミリーは、正常な細胞増殖において重要であるが、それらの過剰発現および過剰活性は、癌の発生を促進し得る。PTKのSRCファミリーには9つあり、c-SRC、YES、FGR、FYN、LYN、LCK、HCK、BLKおよびYRKが含まれる。BRKファミリーには、BRK、FRK (PTK5)、SADおよびSRMが含まれる。
【0035】
c-SRCは、広範な組織において見られ、神経細胞および造血細胞において特に高く発現する。c-SRCは、細胞融合、浸潤および腫瘍細胞の運動性に関与する。
【0036】
高いSRCキナーゼ活性の効果は、種々のヒト腫瘍細胞株を用いてインビトロで、マウスモデルを用いてインビボで大規模に試験された。これらの系を使用することにより、腫瘍発生および進行におけるSRCの効果が研究され、マイトジェネシス、増殖、生存、細胞融合および遊走の制御を含む細胞周期のほとんど全ての側面におけるc-SRCの役割を示し、これらの工程の全ては、癌進行の間に調節解除される。これらの因子は、ヒトの腫瘍形成におけるSRCの可能な役割の研究を導いた。高いSRCキナーゼ活性は、ヒトの乳がんにおいて見られた。Balb/C-nu/nu マウスの左心室に注入されたヒト乳癌細胞株MDA-MB-231を用いて、c-SRC阻害剤が、罹患率および死亡率、ならびに骨および内臓の両方における転移の発生を低下させることを確認した。前記化合物は、破骨細胞形成および骨再吸収も阻害し、破骨細胞活性の直接的な阻害を示し、溶骨性の病変の発生を減少させることに寄与した。癌治療にSRC阻害剤を使用することの1つの利点は、マウスにおけるSRCの欠乏が、他の臓器に影響を与えることなく、骨細胞形成にのみ影響を与えるように思われることである。
【0037】
乳癌に加えて、高いSRC活性は、膵臓癌、肺癌、子宮癌、食道癌、結腸癌、神経芽細胞種、メラノーマ、中皮種、および胃癌を含む多くの他の上皮の腫瘍において報告されている。これらの腫瘍に由来する細胞株は、SRC活性の30倍の上昇を示す。
【0038】
SRC活性化の態様に関して、SRCは、EGFRおよびHGFのような受容体チロシンキナーゼにより活性化されてよく、これらは全て、癌の進行の過程において活性を有することが既知である。この点において、SRCとこれらの受容体チロシンキナーゼとの会合は、悪性転移に寄与する。C-SRCは、CSF-1シグナル伝達を媒介する受容体チロシンキナーゼであるCSF1-RのJMドメインとの相互作用とも結び付けられている。CSF-1は、単核食細胞系統の細胞の増殖および生存に対する鍵となるサイトカインであり、この系統の細胞は、固形腫瘍と関連することが既知であり、腫瘍の転移工程を促進するメディエーターであるVEGF、MMPsおよびuPAを放出する腫瘍関連マクロファージ(TAM)として既知である。さらに、CSF-1およびfmsの上昇した上皮性の共発現は、乳癌の50%以上において見られ、オートクリンCSF1-R活性化は、ヒトの乳房の上皮細胞における胞状構造の接合の完全性に対するSRC依存性の破壊(原発部位からの腫瘍の逸脱に必須)を促進することが示されている。
【0039】
SRC阻害剤であるAP23846は、ヒトの固形腫瘍細胞株におけるVEGFおよびIL-8の発現を低下させ、マウスの皮下に移植されたゲルの泡への血管形成を支持しないことが示されている。IL-8は、血管新生を促進する因子であり、多くの腫瘍に対する予後のマーカーであり、VEGFは、血管新生のサポートにおいて不可欠な因子である。他の実験では、VEGF刺激の後、SRCは、優先的に、Flt-1よりもKDR/VEGFR-2と会合することを示し(血管内皮細胞における2つの主要なVEGF)、それにより、血管新生のプロセスにおいて、上方制御されたKDRに関連するSRCの活性の潜在的な重要性を強調した。
【0040】
キナーゼのSRCファミリーは、骨再構築疾患に関与する。例えば、SRCを欠くマウスは、破骨細胞により骨の再吸収が抑制されることにより骨粗鬆症が進行し、異常に高い骨再吸収の結果として生じる骨粗鬆症は、SRCを阻害することにより治療され得るということを提唱する。SRC阻害は、関節リウマチに罹患している患者において特徴的な関節破壊を妨げ得る。SRCは、B型肝炎ウイルスの複製にも必要であり、ウイルス疾患におけるSRC阻害剤の役割も提案する。
【0041】
それ故、SRCファミリーキナーゼの阻害剤は、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患のような疾患の治療に対して有用であり得る。例えば、乳癌、膵臓癌、肺癌、子宮癌、食道癌、結腸癌、神経芽細胞種、メラノーマ、中皮種および胃癌、肺の腺癌および非小細胞癌、骨粗鬆症、および関節リウマチが含まれる。
【0042】
EPHファミリー
受容体チロシンキナーゼのEphファミリーは、上皮細胞キナーゼであり、EPHA2、EPHA3、およびEPHA8が含まれる。
【0043】
EPHA2は、130kDaのEPHファミリーの一員である。EPHA2の機能には、増殖、分化、および結腸上皮のバリヤー機能の制御、血管ネットワーク構築、上皮遊走、毛細血管形態形成および血管形成、神経系分裂および経路発見が含まれることが示されている。
【0044】
EPHA2のリガンドはエフリン(Ephrin)A1であり、この相互作用は、臓器の表面上の錨細胞を助け、上皮および/または内皮増殖を下方制御すると考えられる。正常な状態において、前記相互作用は上皮細胞の増殖および成長を制御することを助けると解されるが、このバリヤーが形成または脱落できないように妨げられる場合、適切な治癒の阻害が生じ得る。
【0045】
結果として、キナーゼのEPHファミリーの阻害剤、特にEPHA2は、間質性膀胱炎(IC)および炎症性腸(bowl)疾患(IBD)を含む一定範囲の免疫性および炎症性の障害において有用である。
【0046】
RET
RETは、受容体チロシンキナーゼをコードする。RET遺伝子が関与する体細胞性染色体の再構築は、最も一般的な甲状腺の悪性腫瘍である乳頭甲状腺癌(PTC)において最も高頻度の遺伝子変化を表す。チロシンキナーゼをコードする遺伝子の突然変異を活性化は癌進行の初期に起こるため、これらのキナーゼをターゲッティングすることは、有望な治療の機会を与える。
【0047】
結果として、RETの阻害剤は、甲状腺癌のような過剰増殖疾患を含む一定範囲の疾患の治療に対して望ましい。
【0048】
それ故、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含む一定範囲の疾患の治療のために、1以上のFMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、FLT3、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)およびRETの阻害剤を開発することが必要とされる。
【発明の概要】
【0049】
第1の側面において、本発明は、式Iの化合物、およびその塩、アイソマーおよび/またはプロドラッグを提供する:
【化1】

【0050】
式中、
QはNR3、OまたはSであり;
Wは、H、3〜8員のシクロアルキル、5〜7員のアリールまたはN、O、S、S(O)およびS(O)2から選択される1〜3のへテロ原子を有するヘテロシクリルであり、ここでのシクロアルキル、リールまたはヘテロシクリルは、R17、置換または非置換のC1〜4 アルキル、OH、NO2、NR7R8、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、SO2C1〜4 アルキル、OC1〜4アルキル、C1〜4アルキル OH、C1〜4アルキルOC1〜4アルキル、C1〜4アルキルNR7R8、CONR7R8、COR9、CO2R9、C3〜8シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく、前記シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルは、置換または非置換のC1〜4アルキルで1〜2回置換されてよく;
Xは、ないか、またはO、NR9、S、SO、SO2、NHCO、CONH、NHCONH、NHCH(CH3)、NHCH(CF3)、NHCH2、N(CH3)CO、N(CH2CH3)CO、N(CH3)CH2、NHSO2、N(CH3)CH(CF3)およびNHC1〜6 アルキレンから選択され、ここで、前記アルキレンの3以内の炭素原子は、任意にNR3、SまたはOで置換され;
Z1〜Z4は、それぞれ独立に、NおよびCR1から選択され、Z1〜Z4のうちの2以下がNであり;
R1は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、CF3、OCF3、置換または非置換のC1〜4アルキルおよび置換または非置換のOC1〜4アルキルから選択され;
R2およびR17は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、置換または非置換のC1〜4アルキルOHおよび置換または非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキルから選択されるか; あるいは、
R2およびR17は、それらが結合する炭素原子と一緒に、置換もしくは非置換のC3〜8シクロアルキルまたは置換もしくは非置換の3〜8員の飽和ヘテロシクリルを形成し;
R3は、Hおよび置換または非置換のC1〜4アルキルから選択され;
AおよびYは、独立に、CR3およびNから選択され;
R4およびR5は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、ハロゲンおよびNR9R10から選択され;
R6は、H、ハロゲン、OR11、NR12R13、置換または非置換のC1〜4アルキル、置換または非置換のC1〜4アルキルOH、CO2R9、CONR7R8、S(O)nR14、アリール、またはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、置換もしくは非置換のOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のOC2〜4アルキレンOH、OC2〜4アルキレンNR7R8、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンNR7R8、CONR7R8、CO2R9、NR7COR9、NR7SO2C14 アルキル、N(SO2C1〜4 アルキル)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR9R10、OP(O)(OR7)2、SO2C1〜4 アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
nは、0〜2であり;
R7およびR8は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16 COC1〜4アルキルおよび置換もしくは非置換のアリールから選択されるか; または
R7およびR8は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、H、C1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R9およびR10は、独立に、Hおよび置換もしくは非置換のC1〜4アルキルから選択され;
R11は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOHおよび置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンNR7R8から選択され;
R12およびR13は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOH、COC1〜4アルキル、COアリールおよびCOヘテロシクリルから選択されるか; または、
R12およびR13は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R14は、アリールまたはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4 アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、OC1〜4アルキル、OC2〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16、CONR15R16、CO2R9、NR7SO2CH3、N(SO2CH3)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR15R16、OP(O)(OR7)2、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロシクリルから選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
R15およびR16は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキル、COC1〜4アルキルおよびS(O)CH3から選択されるか;または、
R15およびR16は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含むか、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜6員のヘテロシクリルを形成する。
【0051】
第2の側面において、Xがアミドまたはスルホンアミドである、上記で定義した式Iの化合物を調製する方法であって、次式IIの化合物とWR’(Wは上記で定義した通りであり、R'は、NH2、NHR、CO2H、COCl、SO2Cl、CORまたはCHOである)とをカップリングすることにより、R’とDとを縮合させて、上記で定義したXを形成すること含んでなる方法が提供される:
【化2】

【0052】
式中、
Dは、NH2、NHRまたはCO2Hであり;
Rは、C1〜4アルキルであり;
Bは、脱離基であり; 且つ、
Z1、Z2、Z3、Z4、R2、R4、R5、R17、Q、YおよびAは、上記で定義した通りである。
【0053】
式Iの化合物は、キナーゼ阻害剤であり、特に、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のようなクラスIII PTK受容体ファミリー、およびKDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、RET、SYK、DDR1またはDDR2の阻害剤である。
【0054】
これらの化合物は、キナーゼが関与する疾患、好ましくは、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患等の、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のようなクラスIII PTK受容体ファミリー、およびKDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、RET、SYK、DDR1またはDDR2に関連する疾患の治療において有用である。
【0055】
第3の側面において、上記で定義した式Iの化合物を含んでなるキナーゼ阻害剤を提供する。
キナーゼ阻害剤としての、上記で定義した式Iの化合物の使用も提供する。
キナーゼ阻害剤としての使用のための、上記で定義した式Iの化合物も提供する。
【0056】
1つの実施形態において、前記式Iの化合物は、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のようなクラスIII PTKファミリー、およびKDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、RET、SYK、DDR1またはDDR2の阻害剤として作用する。
【0057】
式Iの化合物は、薬学的に許容可能なキャリアと共に、医薬組成物の形態で投与されてよい。
【0058】
第4の側面において、上記で定義した式Iの化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物が提供される。
1つの実施形態において、前記医薬組成物は、1以上の付加的な治療剤を含んでもよい。
第5の側面において、上記で定義した式Iの化合物を含んでなるインプラントが提供される。
【0059】
第6の側面において、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含むキナーゼが関与する疾患を治療するための方法であって、治療的に有効な量の式Iの化合物または上記で定義した医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる方法が提供される。
【0060】
免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含むキナーゼが関与する疾患の治療のための薬剤の製造における、上記で定義した式Iの化合物または医薬組成物の使用も提供する。
【0061】
免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含むキナーゼが関与する疾患の治療における、上記で定義した式Iの化合物または医薬組成物の使用も提供する。
【0062】
免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含むキナーゼが関与する疾患の治療における使用のための、上記で定義した式Iの化合物または医薬組成物も提供される。
【0063】
第7の側面において、細胞を上記で定義した式Iの化合物と接触させることを含んでなる、キナーゼを阻害する方法が提供される。
【0064】
第8の側面において、マクロファージ集団を上記で定義した式Iの化合物と接触させることを含んでなる、マクロファージ集団を制御する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【0065】
本発明は、キナーゼ、特に、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のようなクラスPTKIII受容体ファミリー、およびKDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、RET、SYK、DDR1またはDDR2を阻害し、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝性の疾患;および血管疾患を含むキナーゼが関与する疾患の治療において有用である、式Iの化合物に関する。
【0066】
第1の側面において、本発明は、次式Iの化合物を提供する:
【化3】

【0067】
式中、
QはNR3、OまたはSであり;
Wは、H、3〜8員のシクロアルキル、5〜7員のアリールまたはN、O、S、S(O)およびS(O)2から選択される1〜3のへテロ原子を有するヘテロシクリルであり、ここでのシクロアルキル、リールまたはヘテロシクリルは、R17、置換または非置換のC1〜4 アルキル、OH、NO2、NR7R8、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、SO2C1〜4 アルキル、OC1〜4アルキル、C1〜4アルキル OH、C1〜4アルキルOC1〜4アルキル、C1〜4アルキルNR7R8、CONR7R8、COR9、CO2R9、C3〜8シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく、前記シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルは、置換または非置換のC1〜4アルキルで1〜2回置換されてよく;
Xは、ないか、またはO、NR9、S、SO、SO2、NHCO、CONH、NHCONH、NHCH(CH3)、NHCH(CF3)、NHCH2、N(CH3)CO、N(CH2CH3)CO、N(CH3)CH2、NHSO2、N(CH3)CH(CF3)およびNHC1〜6 アルキレンから選択され、ここで、前記アルキレンの3以内の炭素原子は、任意にNR3、SまたはOで置換され;
Z1〜Z4は、それぞれ独立に、NおよびCR1から選択され、Z1〜Z4のうちの2以下がNであり;
R1は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、CF3、OCF3、置換または非置換のC1〜4アルキルおよび置換または非置換のOC1〜4アルキルから選択され;
R2およびR17は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、置換または非置換のC1〜4アルキルOHおよび置換または非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキルから選択されるか; あるいは、
R2およびR17は、それらが結合する炭素原子と一緒に、置換もしくは非置換のC3〜8シクロアルキルまたは置換もしくは非置換の3〜8員の飽和ヘテロシクリルを形成し;
R3は、Hおよび置換または非置換のC1〜4アルキルから選択され;
AおよびYは、独立に、CR3およびNから選択され;
R4およびR5は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、ハロゲンおよびNR9R10から選択され;
R6は、H、ハロゲン、OR11、NR12R13、置換または非置換のC1〜4アルキル、置換または非置換のC1〜4アルキルOH、CO2R9、CONR7R8、S(O)nR14、アリール、またはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、置換もしくは非置換のOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のOC2〜4アルキレンOH、OC2〜4アルキレンNR7R8、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンNR7R8、CONR7R8、CO2R9、NR7COR9、NR7SO2C14 アルキル、N(SO2C1〜4 アルキル)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR9R10、OP(O)(OR7)2、SO2C1〜4 アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
nは、0〜2であり;
R7およびR8は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16 COC1〜4アルキルおよび置換もしくは非置換のアリールから選択されるか; または
R7およびR8は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、H、C1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R9およびR10は、独立に、Hおよび置換もしくは非置換のC1〜4アルキルから選択され;
R11は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOHおよび置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンNR7R8から選択され;
R12およびR13は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOH、COC1〜4アルキル、COアリールおよびCOヘテロシクリルから選択されるか; または、
R12およびR13は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R14は、アリールまたはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4 アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、OC1〜4アルキル、OC2〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16、CONR15R16、CO2R9、NR7SO2CH3、N(SO2CH3)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR15R16、OP(O)(OR7)2、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロシクリルから選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
R15およびR16は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキル、COC1〜4アルキルおよびS(O)CH3から選択されるか;または、
R15およびR16は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含むか、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜6員のヘテロシクリルを形成する。
【0068】
1つの実施形態において、式Iの化合物は、次式Iaで表される:
【化4】

【0069】
式中、
A、Q、W、Y、X、Z1、Z2、Z3、R2、R4、R6およびR17は、上記で定義した通りである。
【0070】
好ましくは、QはOまたはNR3であり、ここでのR3はHまたはC1〜4アルキルである。
好ましくは、R2およびR18の一方はHであり、他方はHまたはC1〜4アルキルである。
好ましくは、R4およびR5は共に水素原子である。
好ましくは、Z2およびZ3は共にCHであり、Z4はCHまたはC(CH3)でああるか、Z2およびZ3の一方はNであり、Z4はCHである。
好ましくは、Xは、NHCO、NHCH2、NH(CH3)CO、N(CH2CH3)CO、NHSO2、NHCH(CH3)、NHCONH、N(CH3)CH(CF2)またはNR9であり、ここでのR9は上記で定義した通りである。
【0071】
好ましくは、Wは、シクロプロピル、フェニル、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含む飽和または不飽和の5または6員のヘテロシクリル(例えば、ピリジニル、ピラジニル、ピペリジニル、フラニルもしくはピラゾリル)、または窒素原子を含む不飽和の縮合ヘテロシクリル(例えば、インドリルもしくはベンズイミダゾリル)であり、ここでのシクロプロピル、フェニルまたはヘテロシクリルは、飽和もしくは不飽和のC1〜4アルキル、OH、NO2、NR7R8、ハロゲン、CF3、CO2R9、OC1〜4アルキル、COR9、SO2 C1〜4アルキルならびにN、OおよびSから選択される1〜2のヘテロ原子を含む飽和もしくは不飽和の5もしくは6員のヘテロシクリル(例えば、ピペリジニル、ピラゾリル、ピペラジニル、モルフォリニル、チオフェニルもしくはイミダゾリル)から独立に選択される1〜2の置換基で置換されてよく、R2、R7、R8およびR9は、上記で定義した通りである。
【0072】
好ましい実施形態において、式IおよびIaの化合物は、次式Ibで表される:
【化5】

【0073】
式中、A、Q、W、Y、X、Z2、Z3、Z4、R2、R6およびR17は、上記で定義した通りである。
【0074】
好ましくは、YおよびAの一方はNであり、他方はNR3(R3は上記で定義した通り)であるか、両方ともNである。
【0075】
好ましくは、R6は、H、ハロゲン、CO2R9、CONR7R8またはフェニル、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含む飽和もしくは不飽和の5または6員のヘテロシクリル(例えば、ピリジニル、ピラゾリル、チオフェニル、モルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニルもしくはイミダゾリル)または1〜2の酸素原子を含む縮合ヘテロシクリル(例えば1,3-ベンゾジオキソリル)であり、ここでのフェニルまたはヘテロシクリルは、OC1〜4アルキル、OH、NR7CONR8、NR15R16、SO2NR9R10、OP(O)(OH)2、CO2R9、C1〜4アルキルOH、C1〜4アルキレンNR15R16、またはNおよびOから選択される1〜2のへテロ原子を含む置換もしくは非置換の6員のヘテロシクリル(例えば、ピペラジニル、ピペリジニルおよびモルフォリニル)から独立に選択される1〜2の置換基で置換されてよい。
【0076】
好ましくは、Wが置換される場合、置換基の1つは、Xに結合する原子に対してメタ位である。
好ましくは、R2およびR17で置換されたメチレンは、Sキラリティーを有する。
【0077】
以下の表1は、本発明による化合物の非限定的な実施例を提供する。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【表1−12】

【表1−13】

【表1−14】

【表1−15】

【表1−16】

【表1−17】

【表1−18】

【表1−19】

【表1−20】

【表1−21】

【表1−22】

【表1−23】

【表1−24】

【表1−25】

【表1−26】

【表1−27】

【表1−28】

【表1−29】

【表1−30】

【表1−31】

【表1−32】

【表1−33】

【表1−34】

【表1−35】

【表1−36】

【表1−37】

【表1−38】

【表1−39】

【表1−40】

【表1−41】

【表1−42】

【表1−43】

【表1−44】

【表1−45】

【表1−46】

【表1−47】

【表1−48】

【表1−49】

【表1−50】

【表1−51】

【表1−52】

【表1−53】

【表1−54】

【表1−55】

【表1−56】

【0078】
「C1〜6アルキル」および「C1〜4アルキル」という用語は、1〜6または1〜4の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。例えば、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが含まれる。
「C1〜6アルキレン」および「C1〜4アルキレン」という用語は、上記で定義した「C1〜6アルキル」および「C1〜4アルキル」の2価の均等物を意味する。
【0079】
「C3〜8シクロアルキル」という用語は、3〜8の炭素原子を有する非芳香族の環状炭化水素を意味する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0080】
「アリール」という用語は、芳香族炭化水素の単環、多環、共役または融合残基を意味する。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンキシアントラセニルおよびフェナントレニルが含まれる。フェニルのような5または6員のアリールが好ましい。
【0081】
「ヘテロシクリル」という用語は、N、O、SおよびSO2からなる群より選択される少なくとも1のヘテロ原子を含む飽和または不飽和の単環または多環の炭化水素基を意味する。
【0082】
適切なヘテロシクリルには、以下のものが含まれる:
1〜4の窒素原子を含む不飽和の3〜6員のヘテロ単環基のようなN-含有複素環基(例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリルまたはテトラゾリル);
1〜4の窒素原子を含む飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニルまたはピペラジニル);
1〜5の窒素原子を含む不飽和の縮合へテロ環基(例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ピロリニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルまたはテトラゾロピリダジニル);
酸素原子を含む不飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えばピラニルまたはフラニル);
1〜2の硫黄原子を含む不飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えばチエニル);
1〜2の酸素原子および1〜3の窒素原子を含む不飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えば、オキサゾリル、イソキサゾリルまたはオキサジアゾリル);
1〜2の酸素原子および1〜3の窒素原子を含む飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えばモノフォリニル);
1〜2の酸素原子および1〜3の窒素原子を含む不飽和の縮合へテロ環基(例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリルまたはベンゾジオキソリル);
1〜2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を含む不飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えば、チアゾリルまたはチアジアゾリル);
1〜2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を含む飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えば、チオモフォリノまたはチアゾリジニル);ならびに
1〜2の硫黄原子、1〜3の窒素原子および1〜2の酸素原子を含む飽和の3〜6員のヘテロ単環基(例えば、チオモルフォリノ-1-オキシドおよびチオモルフォリノ-1,1-ジオキシド;
1〜2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を含む不飽和の縮合へテロ環基(例えば、ベンゾチアゾリルまたはベンゾチアジアゾリル)。
【0083】
好ましいヘテロシクリルは、ピリジニル、ピラジニル、ピペリジニル、フラニル、ピラゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ピペラジニル、モルフォリニル、チオフェニルまたはイミダゾリルである。
【0084】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味し、好ましくはフッ素である。
【0085】
「置換または非置換の」という用語は、C1〜6アルキル、Si(C1〜6アルキル)3、C3〜6シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ハロC1〜6アルキル、ハロC3〜6シクロアルキル、ハロC2〜6アルケニル、ハロC2〜6アルキニル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ヒドロキシ、C1〜6アルコキシ、C2〜6アルケニルオキシ、C2〜6アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ハロC2〜6アルケニルオキシ、ハロC2〜6アルキニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロC1〜6アルキル、ニトロC2〜6アルケニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アジド、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C2〜6アルケニルアミノ、C2〜6アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロシクリルアミノアシル(heterocyclamino acyl)、C1〜6アルキルアシル、C2〜6アルケニルアシル、C2〜6アルキニルアシル、アリールアシル、ヘテロシクリルアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルデヒド、C1〜6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C1〜6アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、C1〜6アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、C1〜6アルキルスルフェニル、C2〜6アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、C1〜6アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、シアノ等から選択される1以上の基でさらに置換される、または置換されない基を意味する。好ましい任意の置換基は、C1〜4アルキル、ニトロ、C3〜6シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシ、C1〜4アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アリールアシル、ヘテロシクリルアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、OP(O)(OH)2、アリールスルホニルおよびシアノからなる群より選択される。
【0086】
本発明の化合物は、薬学的に許容可能な塩として調製されてもよいが、薬学的に許容可能な塩の調製における中間体として有用であるため、薬学的に許容可能でない塩も本発明の範囲に含まれる。薬学的に許容可能な塩の例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムのような薬学的に許容可能なカチオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、カルボン酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸のような薬学的に許容可能な無機酸の酸付加塩; または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、バレリアン酸およびオロト酸のような薬学的に許容可能な有機酸の塩が含まれる。
【0087】
前記塩は、通常の方法で形成されてよく、塩が不溶な溶媒もしくは媒質、または減圧もしくはフリーズドライで除去される水のような溶媒において、化合物の遊離塩基形態と1以上の等価な適切な酸とを反応させることにより、あるいは適切な陰イオン交換樹脂において、塩に存在する陰イオンを他の陰イオンと交換することにより行われてよい。
【0088】
化合物がキラル中心を有する場合、該化合物は、純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマー、または任意の割合の立体異性体の混合物として使用され得る。しかしながら、前記混合物は、少なくとも70%、80%、90%、95%、97.5%、または99%の好ましい異性体を含んでなる。前記化合物は、互変異性体として存在してもよい。
【0089】
本発明は、式Iの化合物のプロドラッグも包含する。例えば、遊離のアミノ、アミド、ヒドロキシまたはカルボン酸基を有する式Iの化合物は、プロドラッグに変換され得る。プロドラッグには、アミノ酸残基、または2以上(例えば、2、3、もしくは4)のアミノ酸残基が、ペプチド結合を介して本発明の化合物の遊離アミノ、ヒドロキシおよびカルボン酸基と共有結合性に結合した化合物が含まれる。前記アミノ酸残基には、一般的に3文字で表される20の天然アミノ酸、ならびに4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デモシン(demosine)、イソデモシン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンが含まれる。プロドラッグには、カルボニル炭素プロドラッグ側鎖を介して本発明の化合物の上記置換基と共有結合したカルボン酸塩、カルバメート、アミドおよびアルキルエステルである化合物も含まれる。プロドラッグには、リン−炭素結合を介して式Iの遊離のヒドロキシル基と結合した化合物のリン酸塩誘導体(例えば、酸、酸の塩もしくはエステル)も含まれる。プロドラッグには、式Iにおける適切な窒素および硫黄原子のN-オキシドおよびS-オキシドも含まれてよい。
【0090】
本発明は、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3等のクラスIII PTK受容体ファミリー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、SYK、DDR1およびDDR2ならびにRETに関連する疾患のような、プロテインキナーゼの阻害により治療または予防することができる障害を治療または予防する方法であって、本発明の化合物の薬剤またはプロドラッグを投与することを含んでなる方法も包含する。
【0091】
〔化合物の製造方法〕
一般式Iの化合物は、一般的に、ジハロへテロ環を出発物質として調製される。
第1のステップは、モノアミノ−モノハロ中間体を生成するための求核性芳香族性の置換である。
【0092】
求核性芳香族性の置換は、典型的に、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジオキサン、THF、DMF、エトキシエタノール、トルエンまたはキシレンのような溶媒中で、1級もしくは2級アミンをジハロゲン化されたヘテロ環に添加することにより行われる。この反応は、典型的に、過剰なアミンまたはトリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミンのような非求核塩基、あるいはカルボン酸カリウムもしくはカルボン酸ナトリウムのような無機塩基の存在下、高い温度で行われる。
【0093】
あるいは、アミノ置換基は、遷移金属で触媒されるアミノ化反応を介して導入されてよい。そのような変換に対する典型的な触媒には、Pd(OAc)2/P(t-Bu)3、Pd2(dba)3/BINAPおよびPd(OAc)2/BINAPが含まれる。これらの反応は、典型的に、炭酸セシウムまたはナトリウムもしくはカリウムtert-ブトキシドのような塩基の存在下、室温から還流温度の温度において、トルエンまたはジオキサンのような溶媒中で行われる (例えば、Hartwig, J.F., Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 2046)。
【0094】
これらの化合物の合成の前記第1のステップにおいて使用されるアミンは、商業的に得られるか、または当業者に周知の方法を用いて調製される。特に興味深いのは、オキシムの還元を介して調製することができるα−アルキルベンジルアミンである。典型的な還元剤には、水素化アルミニウムリチウム、パラジウムおよび木炭触媒の存在下における水素ガス、塩酸の存在下におけるZn、TiCl3、ZrCl4、NiCl2およびMoO3のようなルイス酸の存在下における水素化ホウ素ナトリウム、またはアンバーリスト(Amberlyst)H15イオン交換樹脂とLiClとの結合下における水素化ホウ素ナトリウムが含まれる。
【0095】
α-アルキルベンジルアミンは、対応するケトンの還元的なアミノ化によっても調製される。そのような変換の伝統的な方法は、ロイカート・ヴァラッハ(Leuckart-Wallach)反応であり、触媒条件(HCO2NH4, [(CH3)5C5RhCl2]2)または代替方法 (例えばNH4OAc, Na(CN)BH3)が使用されてもよい。
【0096】
α-アルキルベンジルアミンは、対応するα-アルキルベンジルアルコールから調製されてもよい。そのような方法には、メシレートまたはトシレートのようなヒドロキシの誘導体化および通常の合成方法を用いて1級アミンに変換されるフタルイミドもしくはアジドのような窒素求核試薬を用いた置換;またはミツノブ様条件下における適切な窒素求核試薬を用いたヒドロキシルの置換が含まれる。α-アルキルベンジルアルコールは、メタノールのような溶媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を用いて対応するケトンを還元することにより調製されてよい。あるいは、α-アルキルベンジルアルコールは、アルキル金属類(例えばグリニャール試薬)をベンズアルデヒド誘導体に添加することにより得られてよく、典型的に、テトラヒドロフランのような溶媒中、室温以下で行われる。
【0097】
高い光学純度のα-アルキルベンジルアミンは、上記で概要を示した方法を用いて、キラルα-アルキルベンジルアルコールから調製されてよい。キラルα-アルキルベンジルアルコールは、対応するケトンのキラル還元を通して得られてよい。キラル還元方法は、有機化学の分野において現在周知であり、酵素的な工程、非対称の水素化方法、およびキラルオキサ座ぼろリジンが含まれる。
【0098】
上述したアミンおよびジハロへテロ環から形成されるモノアミノ-モノハロ中間体は、その後さらに官能性を持たせてよい。例えば、アミン置換基が付加的な官能基を有する場合、この官能基は、当業者に周知の方法を用いて、誘導体化または官能化されてよい。例えば、遊離の1級アミノ基は、さらに官能化されて、アミド、スルホンアミドまたはウレア官能基とされてよく、またはアルキル化されて、2級または3級アミン誘導体とされてよい。アミドの形成のための好ましい方法には、ジクロロメタン、テトラヒドロフランまたは1,4-ジオキサンのような溶媒中におけるジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドまたはカルボニルジイミダゾールとアミンとのカップリングが含まれる。あるいは、酸成分は、アミンと反応させる前に、酸塩化物(チオニルクロリド、オキザリルクロリド、ビス(トリクロロメチル)カルボネートまたはシアヌルクロリドを用いて)または混合された無水物(例えば、t-ブチルクロロホルメートまたはイソプロピルクロロホルメートを用いて)または活性エステル中間体(例えば、N-ヒドロキシサクシニミジル、ペンタフルオロフェニルまたはp-ニトロフェニルエステル)に変換することにより活性化されてよい。
【0099】
モノアミノ-モノクロロ中間体は、その後、パラジウムに媒介されるクロスカップリング反応において、適切に官能化されたカップリング相手と反応させて、ハロゲン原子を代替の部分で置換してよい。典型的なカップリング相手は、有機ボロン酸またはエステル(Suzukiカップリング: 例えばMiyaura, N. and Suzuki, Chem Rev. 1995, 95 2457を参照されたい)、有機水素化スズ (Stilleカップリング: 例えばStille, J.K., Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 1986, 25, 508を参照されたい)、グリニャール試薬 (Kumadaカップリング: Kumada, M.; Tamao, K.; Sumitani, K. Org. Synth. 1988, Coll. Vol.6, 407.)または有機亜鉛類(Negishiカップリング: Negishi, E.; J. Organomet. Chem. 2002, 653, 34)である。
【0100】
Suzukiカップリングは、好ましいカップリング法であり、炭酸カリウム、水酸化リチウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、フッ化カリウムまたはリン酸カリウムのような塩基の存在下において、DME、THF、DMF、エタノール、プロパノール、トルエン、または1,4-ジオキサンのような溶媒中で典型的に行われる。前記反応は、高い温度で行われてよく、パラジウム触媒は、Pd(PPh3)4、Pd(OAc)2、[PdCl2(dppf)]、Pd2(dba)3/P(t-Bu)3から選択されてよい。
【0101】
モノアミノ-モノクロロ中間体は、上記で概要を示したものと同様の条件を用いて、第2の求核性芳香族性の置換に供されてもよい。
【0102】
当業者は、合成について上述した反応の順序が、ある一定の状況下で変化してよいこと、適切な収率および効率で行うために、ある一定の条件下で、上述した反応に対して誘導体化すること(すなわち保護すること)が必要とされ得ることを理解するであろう。保護する官能基のタイプは、当業者に周知であり、例えば、Greene (Greene, 1999)において述べられている。上述した一連の反応から形成される生成物は、当業者に周知の技術を用いてさらに誘導体化されてよい。
【0103】
脱離基は、本明細書の一部として援用されるJ. March, “Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure” 4th Edition, pp 352-357, John Wiley & Sons, New York, 1992に記載されているような、適切ないずれかの既知のタイプであってよい。好ましくは、前記脱離基はハロゲンであり、より好ましくは塩素である。
【0104】
〔医薬組成物〕
本発明は、少なくとも1の式Iの化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物を提供する。前記キャリアは、「薬学的に許容可能な」キャリアでなくてはならず、前記組成物の他の成分と適合し、患者に対して無害であることを意味する。本発明の組成物は、以下に示すような他の治療剤を含んでよく、例えば、通常の固体もしくは液体の媒体または希釈剤、ならびに望ましい投与形態に適したタイプの薬学的添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、フレーバー剤等)を用いて、医薬製剤の分野で周知の技術により構築されてよい(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0105】
本発明の化合物は、適切な方法、例えば、錠剤、カプセル、顆粒もしくは粉末の形態;舌下から;頬からのように経口的に、または皮下、静脈内、筋肉内、皮内、もしくは大槽内注射または注入技術(例えば、無菌の注射可能な水性または非水性の溶液もしくは懸濁液として);吸入スプレーもしくは吸入剤により鼻に;クリームもしくは眼軟膏、溶液もしくは懸濁液の形態で局所的に;ペッサリー、タンポンもしくはクリームの形態で膣に;または坐剤の形態で直腸に;無毒の薬学的に許容可能な媒体もしくは希釈剤を含む投与単位製剤で投与されてよい。前記化合物は、例えば、即時の放出または遅延した放出に適した形態で投与されてよい。即時の放出または遅延した放出は、本発明の化合物を含んでなる適切な医薬組成物の使用により達成されてよく、または、特に遅延した放出の場合、皮下インプラントまたは浸透圧ポンプのような装置を使用することにより達成されてもよい。
【0106】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、都合よく、投与単位形態であってよく、薬学の分野で周知のいずれかの方法で調製されてよい。これらの方法には、一般的に、式Iの化合物が1以上の補助成分を構成するキャリアとの会合に供されるステップが含まれる。一般的に、医薬組成物は、画一的且つ本質的に、式Iの化合物を液体キャリアもしくは細かく分割された固体のキャリアまたは両方との会合に供することにより、その後、必要な場合には、生成物を望ましい剤形に成型することにより調製される。医薬組成物において、活性対象化合物は、疾患の進行または状況において望ましい効果を生じるのに十分な量で含まれる。ここで使用される場合、「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含んでなる生成物、ならびに、特定の量の特定の成分の組み合わせにより直接的または間接的に生じるいずれかの生成物を包含するものである。
【0107】
式Iの化合物を含む医薬組成物は、経口的な使用に適した形態であってよく、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬カプセルもしくは軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシルが挙げられる。経口的な使用に向けられた組成物は、医薬組成物の製造において既知のいずれかの方法により調製されてよく、そのような組成物は、甘味料、フレーバー剤、着色料および保存剤のような1以上の剤を含み、例えば、薬学的な安定性および味の良い製剤を提供する。錠剤は、混合物中の式Iの化合物および錠剤の製造に適した無毒の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウムのような不活性な希釈剤; 例えば、コーンスターチもしくはアルギン酸のような顆粒化剤もしくは崩壊剤; 例えば、ゼラチンもしくはアカシアのような結合剤;例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリンさんもしくはタルクのような滑沢剤であってよい。錠剤は、コートされないか、または既知の技術によりコートされ、消化管における崩壊および吸収を遅延させ、より長い時間にわたる持続性の作用を提供する。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような時間遅延物質が使用されてよい。それらはコートされ、徐放のための浸透圧性の治療剤を形成してもよい。
【0108】
経口的な使用のための製剤は、硬ゼラチンカプセルとされてよく、この場合、式Iの化合物は、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンのような不活性な固体の希釈剤と混合され、あるいは軟ゼラチンカプセルとされてよく、この場合、式Iの化合物は、例えば、ピーナッツオイル、液体パラフィン、もしくはオリーブオイルのような水性もしくは油性の媒質と混合される。
【0109】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物において、活性物質を含有する。そのような賦形剤は、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムのような懸濁化剤であってよく;分散または湿潤剤は、天然のホスファチドであってよく、例えば、レシチン、もしくはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的なエステルとの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分的なエステルとの縮合産物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート)である。水性懸濁液は、1以上の保存剤(例えば、エチル、n-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート)、1以上の着色料、1以上のフレーバー剤、および1以上の甘味料(例えば、ショ糖もしくはサッカリン)を含んでよい。
【0110】
油性懸濁液は、ピーナッツオイル、オリーブオイル、もしくはココナッツオイルのような植物油、または液体パラフィンのような鉱油中に式Iの化合物を懸濁させることにより構築されてよい。油性懸濁液は、例えば、みつろう、硬パラフィンもしくはセチルアルコールのような増粘剤を含んでよい。上述したような甘味料およびフレーバー剤は、味の良い経口製剤を提供するために添加されてよい。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存されてよい。
【0111】
水の添加により水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末および顆粒は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1以上の保存剤の混合物中における式Iの化合物を提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤は、例えば上述したものである。例えば、甘味料、フレーバー剤および着色剤のような付加的な賦形剤を加えてもよい。
【0112】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、例えばオリーブオイルもしくはピーナッツオイルのような植物油、または例えば液体パラフィンのような鉱油、あるいはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、例えばアラビアゴムもしくはトラガカントゴムのような天然ゴム、例えばダイズ、レシチンのような天然ホスファチド、例えばソルビタンモノステアレートのような脂肪酸および無水ヘキシトールに由来するエステルもしくは部分エステル、および例えばポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合産物であってよい。前記エマルジョンは、甘味料およびフレーバー剤も含んでよい。
【0113】
シロップおよびエリキシルは、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールもしくはショ糖のような甘味料を用いて調製されてよい。そのような製剤は、粘滑薬、保存剤、フレーバー剤、着色料を含んでもよい。
【0114】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性もしくは油性の懸濁液の形態であってよい。この懸濁液は、上述した適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の方法により調製されてよい。無菌の注射可能な製剤は、例えば1,3-ブタンジオールのような無毒の非経口投与可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。使用できる許容可能な媒体および溶媒は、リンゲル液および等張の塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の、定型的なオイルが、溶媒または懸濁媒質として通常使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む無刺激の定型油が使用されてよい。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能な製剤の調製において使用されてよい。
【0115】
鼻腔内投与を含む気道に対する投与のために、活性成分は、気道に対する投与の分野で使用されているいずれかの方法および製剤により投与されてよい。
それ故、一般的に、活性成分は、溶液もしくは懸濁液の形態で、または乾燥粉末として投与されてよい。
【0116】
溶液および懸濁液は、一般的に、例えば、水のみ(例えば滅菌水もしくは発熱物質を含まない水)あるいは水および生理学的に許容可能な共溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールもしくはPG400のようなポリエチレングリコール)から調製されてよい。
【0117】
そのような溶液または懸濁液には、さらに、例えば、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、ポリソルベートのような可溶化剤/界面活性剤(例えば、ツイーン80、スパン80、塩化ベンザルコニウム)、緩衝剤、等張性調節剤(例えば塩化ナトリウム)、吸収増強剤および増粘剤のような他の賦形剤が含まれてよい。懸濁液には、さらに、懸濁剤(例えば微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム)が含まれてよい。
【0118】
溶液または懸濁液は、通常の方法、例えば、スポイト、ピペットまたはスプレーにより、鼻腔に直接適用される。前記製剤は、単一または多用量の形態で提供されてよい。後者の場合、用量測定の平均が、望ましくは提供される。
【0119】
スポイトまたはピペットの場合において、これは、適切な、予め決められた容量の溶液または懸濁液により達成されてよい。スプレーの場合、これは、例えば測定霧吹きスプレーポンプにより達成されてよい。
【0120】
気道への投与は、エアロゾル製剤により達成されてもよく、化合物は、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素または他の適切な気体のような適切な噴霧剤を用いた加圧パックで提供されてよい。エアロゾルは、通常、レシチンのような界面活性剤も含む。活性化合物の量は、測定された値の提供により制御されてよい。
【0121】
あるいは、活性化合物は、乾燥粉末の形態、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなデンプン誘導体、およびポリビニルピロリドン(PVP)のような適切な粉末基材中における化合物の粉末混合物の形態で提供されてよい。通常、粉末キャリアは、鼻腔内においてゲルを形成する。粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジまたは粉末が吸入器により投与されるブリスターパックの単位用量形態で提供されてよい。
【0122】
鼻腔内製剤を含む気道に投与するための製剤において、活性化合物は一般的に粒子サイズが小さく、例えば5ミクロン以下のオーダーである。そのような粒子サイズは、例えば微粉化のように、当業者に既知の方法により得られてよい。
【0123】
望ましい場合、活性化合物が徐放されるように適応した製剤が使用されてよい。
活性化合物は、「ディスクへラー」(グラクソグループLtdの商標)または計量エアロゾル吸入器を通して、流動性の粉末として経口吸入により投与されてよい。
【0124】
本発明の化合物は、薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸の温度で液体になる適切な非刺激性の賦形剤と薬物を混合することにより調製されてよく、それ故、直腸で溶解して薬物を放出する。そのような物質は、ココアバターおよびポリエチレングルコールである。
【0125】
膣投与に適した組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレーとして提供されてよく、適切であるとして当該分野で既知であるキャリア等の、活性成分以外の成分を含む。
【0126】
局所的な使用のために、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液等が使用される(この適用の目的のために、局所的な適用は、洗口剤および含そう薬を含む)。
【0127】
目への適用のために、活性化合物は、適切な無菌の水性もしくは非水性媒体中の溶液または懸濁液の形態であってよい。さらに、例えば、緩衝剤、殺菌剤および殺真菌剤を含む保存剤(例えば、フェニル酢酸水銀もしくは硝酸塩、塩化ベンザルコニウム、またはクロルヘキシジン)およびヒプロメロースのような増粘剤が含まれてよい。
【0128】
本発明の化合物は、リポソームの形態で投与されてもよい。当該分野で既知のように、リポソームは、一般的に、リン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒質中に分散したモノラメラーまたはマルチラメラーの水和した液晶により形成される。リポソームを形成することができるいずれかの無毒の、生理学的に許容可能な、代謝可能な脂質が使用されてよい。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤等を含んでよい。好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質およびホスファチジルコリンである。リポソームを形成する方法は、当該分野で既知である。
【0129】
このクラスの化合物の効果は、薬物溶出ステントに適用可能である。これらの化合物を用いた薬物溶出ステントの潜在的な適用には、肺動脈狭窄、肺静脈狭窄、ならびに冠状動脈狭窄が含まれる。薬物溶出ステントは、伏在静脈移植もしくは動脈移植または導管において使用されてよい。このクラスの化合物を放出する薬物溶出ステントは、腸骨動脈、大腿動脈または膝窩動脈のような大動脈または末梢血管の狭窄を治療するために適用されてもよい。前記化合物は、当該分野で既知の種々の方法のいずれかにより、薬物溶出ステントに結合されてよい。そのような方法の例には、ポリマー、ホスホリルコリン、およびセラミックが含まれる。前記化合物は、生体吸収性のステントに含浸させてもよい。
【0130】
活性化合物は、獣医学の組成物の形態で使用するために提供されてもよく、例えば、当該分野において通常の方法により調製されてよい。そのような獣医学の組成物の例には、
(a)経口投与するもの、例えば水薬(例えば水性もしくは非水性の溶液または懸濁液)のような外用剤;錠剤またはボーラス;飼料原料と混合するための粉末、顆粒またはペレット;舌に適用するためのペースト;
(b)例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内投与(例えば無菌の溶液または懸濁液として)による非経口投与をするもの;または(適切な場合)懸濁液もしくは溶液を乳首を介して乳房に導入する乳房内投与をするもの;
(c)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏もしくはスプレーとして局所的に適用するもの;あるいは
(d)例えば、ペッサリー、クリームもしくは泡として直腸または膣内に適用するものが含まれる。
【0131】
本発明の医薬組成物および方法は、さらに、上述した病態の治療において通常使用される、ここで述べるような他の治療学的に活性な化合物を含んでよい。併用療法において使用するための適切な薬物の選択は、通常の薬学的原理に従って、当業者によりなされる。治療剤の組み合わせは、上述した種々の疾患の治療または予防に効果的であるように相乗的に作用し得る。このアプローチを用いることにより、それぞれの薬物をより低い用量で用いて治療的な効果を達成することができ、副作用に対する可能性を低下させる。
【0132】
前記他の治療剤の例には以下が含まれる;エンドセリン受容体アンタゴニスト (例えば、アンブリセンタン(ambrisentan)、ボセンタン(bosentan)、シタキセンタン(sitaxsentan))、PDE-V阻害剤 (例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル)、カルシウムチャネルブロッカー (例えば、アムロジピン、フェロジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、メントール)、プロスタサイクリン、トレプロスチニル(treprostinil)、イロプロスト、ベラプロスト、一酸化窒素、酸素、ヘパリン、ワルファリン、利尿薬、ジゴキシン、シクロスポリン (例えばシクロスポリンA)、CTLA4-Ig、ICAM-3のような抗体、抗IL-2受容体(A抗Tac)、抗CD45RB、抗CD2、抗CD3 (OKT-3)、抗CD4、抗CD80、抗CD86、CD40および/またはgp39に対して特異的な抗体のように、CD40とgp39(すなわちCD154)との間の相互作用を遮断する薬剤、CD40およびgp39 (CD401gおよびCD8gp39)から構築される融合タンパク質、デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin (DSG))のようなNF-κB機能の核転位阻害剤のような阻害剤、HMG CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチンおよびシンバスタチン)のようなコレステロール生合成阻害剤、イブプロフェン、アスピリンのような非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、レフルノミド、デオキシスペルグアリン、セレコキシブのようなシクロオキシゲナーゼ阻害剤、プレドニゾロンもしくはデキサメタゾンのようなステロイド、金化合物、サルブタモールのようなβ-アゴニスト、サルメテロールのようなLABA’s、モンテルカストのようなロイコトルエンアンタゴニスト、メトトレキサートのような増殖阻害剤、FK506 (タクロリムス, プログラフ)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、VP-16、エトポシド、フルダラビン、ドキソルビン、アドリアマイシン、アムサクリン、カンプトセシン、シタラビン、ゲムシタビン、フルオロデオキシウリジン、メルファランおよびシクロプラスミドのような細胞障害性の薬剤、メトトレキサートのような代謝拮抗薬、カンプトセシンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、シスプラチンのようなDNAアルキル化剤、ソラフェニブのようなキナーゼ阻害剤、パクリタキセルのような微小管毒素、テニダップのようなTNF-α阻害剤、抗TNF抗体もしくは可溶性TNF受容体、ヒドロキシウレアおよびラパマイシン(シロリムスもしくはラパムン)またはそれらの誘導体。
【0133】
本発明の化合物と組み合わせて他の治療剤が使用される場合、それらは、例えば、医師の卓上参考書(PDR)に記載の量、または当業者により決定された量で使用されてよい。
【0134】
〔治療方法〕
式Iの化合物は、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のような、クラスIII PTK受容体ファミリーのメンバー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、SYK、DDR1およびDDR2ならびにRETに関連する疾患、例えば、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝疾患;および血管疾患を含む、キナーゼが関与する疾患の治療において使用されてよい。
【0135】
一般的に、「治療」という用語は、患者、組織もしくは細胞に影響を与え、望ましい薬理学的および/または生理学的な効果を得ることを意味し、(a)疾患になる可能性があるが、まだ疾患を有するとは診断されていない患者において疾患が発生するのを予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその進行を抑制すること;または(c)疾患の影響を軽減もしくは改善すること、すなわち疾患の影響の退行を生じさせることを含む。
【0136】
「患者」という用語は、式Iの化合物で治療することが必要な疾患を有するいずれかの動物を意味する。
【0137】
ヒトのような霊長類に加え、種々の他の哺乳類が、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療され得る。例えば、限定するものではないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、げっ歯類もしくはマウス種を含む哺乳類が治療され得る。しかしながら、本発明は、鳥類(例えばニワトリ)のような他の種においても実施されてよい。
【0138】
「投与する」という用語は、本発明の化合物を、治療を必要とする患者に与えることを意味すると解されるべきである。
【0139】
「キナーゼが関与する疾患」という用語は、異常なキナーゼ活性、特に、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαもしくはFLT3のようなクラスIII PTK受容体ファミリー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、SYK、DDR1およびDDR2ならびにRETに関連する活性の結果として直接的もしくは間接的に生じる、または異常なキナーゼ活性により悪化する障害および/または1以上のこれらのキナーゼ酵素の阻害により軽減される障害を意味する。
【0140】
好ましい実施形態において、前記キナーゼが関与する疾患には、免疫性および炎症性の疾患;癌を含む過剰増殖疾患および新血管形成に関連する疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝疾患;および血管疾患が含まれる。
【0141】
「免疫性および炎症性の疾患」という用語は、免疫性、炎症性または自己免疫性の疾患を意味し、限定するものではないが、関節リウマチ、多発関節炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、炎症性腸(bowl)疾患、過敏性腸(bowl)症候群、粘膜性大腸炎、潰瘍性大腸炎、糖尿病性(diabrotic)大腸炎、クローン病、自己免疫性の甲状腺障害、胃炎、食道炎、肝炎、膵炎、腎炎、乾癬、湿疹、尋常性挫瘡、皮膚炎、蕁麻疹、多発性硬化症、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、パジェット病、敗血症、結膜炎、腎臓(neranl)カタル、慢性関節リウマチ、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多発性筋炎、皮膚筋炎(DM)、結節性多発動脈炎(PN)、混合結合組織病(MCTD)、シェーグレン症候群、クルゾン症候群、軟骨形成不全、全身性エリテマトーデス、強皮症、脈管炎、死に至る異形成、インスリン耐性、1型糖尿病および糖尿病性合併症、ならびにメタボリックシンドロームが含まれる。
【0142】
「過剰増殖疾患」という用語には、癌ならびに細胞性の増殖疾患のようなネオ増殖疾患(neoproliferative)および骨髄増殖疾患が含まれ、限定するものではないが、心疾患: 肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋融解症、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫; 肺疾患: 気管支原生癌 (扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支癌、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫; 胃腸疾患: 食道 (扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃 (癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓 (腺管癌、膵島細胞腫瘍、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸 (腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸 (腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫); 尿生殖器: 腎臓 (腺癌、ウィルムス腫瘍 [腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道 (扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺 (腺癌、肉腫)、精巣 (精上皮腫、テラトーマ、胚性癌腫、テラトカルシノーマ、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様の腫瘍、脂肪腫); 肝臓: 肝細胞腫 (肝臓癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫; 骨: 骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞脊索腫、骨軟骨腫 (骨軟骨の外骨腫症)、良性の軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨の骨腫および巨細胞腫瘍; 神経系: 頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜 (髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳 (星細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫 [松果体腫]、グリア芽細胞腫多形、オリゴデントログリオーム、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天的な腫瘍)、骨髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫); 婦人科: 子宮(子宮体癌)、頸部 (子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌 [漿液嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類のない癌]、顆粒膜-包膜細胞腫瘍、セルトリ細胞腫瘍、ジスゲルミノーム、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣 (明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫 (胎児性横紋筋肉腫]、ファロピウス管(癌); 血液学: 血液 (骨髄性白血病 [急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫 [悪性リンパ腫; cji: 悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成性母斑奇胎、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;副腎: 神経芽細胞腫; および骨髄増殖性の疾患(例えば、真性一次性赤血球増加症、原発性骨髄増殖、血小板血症、本態性血小板血症 (ET)、特発性骨髄様化生 (AMM)(特発性骨髄線維症(IMF)ともいう)、および慢性骨髄性白血病が含まれる。
【0143】
「腎疾患」という用語は、腎臓および腎臓系に影響を及ぼす疾患を意味し、限定するものではないが、同種移植片拒絶、ならびに糸球体腎炎および尿毒症を含む急性および慢性の腎疾患が含まれる。
【0144】
「骨再構築疾患」という用語は、破骨細胞を含む骨細胞に関連する疾患を意味し、限定するものではないが、骨粗鬆症、骨のパジェット病、骨形成不全症、骨の距状突起、骨腫瘍頭蓋骨癒合症、内軟骨腫、繊維性異形成症、骨の巨細胞腫瘍、感染性関節炎、クリペル-フェーユ症候群、硬化性骨炎、離断性骨軟骨炎、骨軟骨腫、骨髄炎、および骨軟化症が含まれる。
【0145】
「代謝疾患」という用語は、異常な代謝過程により引き起こされる疾患を意味し、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、肥満、肝脂肪変性、高コレステロール、高血漿脂質、インスリン耐性、2型糖尿病、低血糖症、糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン性高血糖症候群、酸塩基不均衡、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシス、アミロイドーシス、カルシウム代謝障害、鉄代謝障害、吸収不良障害、リン代謝障害、ポルフィリン症、代謝性皮膚疾患、萎縮症候群、水-電解質不均衡、脂質代謝障害、メタボリックシンドロームX、ミトコンドリアの疾患、グルコース代謝障害、およびDNA修復-欠損障害が含まれる。
【0146】
「血管疾患」という用語は、限定するものではないが、循環器病、高血圧、肥大、高コレステロール血症、高脂血症、血栓障害、脳卒中、レイノー現象、POEMS症候群、アンギナ、虚血、偏頭痛、末梢動脈疾患、心不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、左室肥大、心筋梗塞、心臓、腎臓、肝臓および脳の虚血疾患、ならびに肺動脈高血圧を含む疾患を意味する。
【0147】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、マクロファージ集団の制御に向けられている。
【0148】
もう1つの好ましい実施形態において、前記疾患は、肥満細胞症/マスト細胞白血病、消化管間質性腫瘍(GIST)、小細胞肺癌(SCLC)、sinonasal ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、精巣癌 (精上皮腫)、甲状腺癌、悪性黒色腫、卵巣癌、腺様嚢胞腫、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、小児T細胞急性リンパ芽球性白血病、血管肉腫、未分化大細胞リンパ腫、子宮内膜癌、および前立腺癌からなる群より選択される。
【0149】
さらにもう1つの好ましい実施形態において、前記疾患は、血管形成術、アテレクトミー、もしくはプラーク除去の他の侵襲性の方法の後の冠血管再狭窄、および同じ方法を施した後の腎臓もしくは末梢の血管の再狭窄を含む再狭窄; 他の形態の急性の傷害に付随する血管増殖現象および線維症(例えば、成人の呼吸困難症候群に関連する肺線維症、腎炎に関連する腎線維症、川崎病に関連する冠血管狭窄、および高安病のような他の動脈炎に関連する血管狭小化; 促進された平滑筋細胞の遊走および移植された臓器における増殖による狭小化の予防; 強皮症、筋線維症のような他の繊維性の過程、ならびに; PDGFにより媒介される腫瘍細胞増殖の阻害からなる群より選択される。
【0150】
特に好ましい実施形態において、前記疾患は、胸、膵臓、肺、卵巣、食道、結腸、甲状腺および消化管の腫瘍、頭部および頸部の癌、胃癌、神経芽細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨および内臓の両方における転移、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)、同種移植片拒絶、肝臓および腎臓の線維症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、喘息、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アルツハイマー病、ホジキン病、肺腺腫、非小細胞癌、間質性膀胱炎(IC)ならびに1型糖尿病からなる群より選択される。
【0151】
用量
「治療的に有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師もしくは他の臨床医により求められている組織、系、動物もしくはヒトの生物学的または医学的な反応を誘発する式Iの化合物の量を意味する。
【0152】
キナーゼ阻害を必要とする状態の治療または予防において、適切な用量レベルは、一般的に、患者の体重kg当り約0.01〜500mgであり、単一または複数用量で投与されてよい。好ましくは、前記用量レベルは、1日当り約0.1〜約250 mg/kg; より好ましくは、1日当り約0.5〜約100 mg/kgである。適切な用量レベルは、1日当り約0.01〜250 mg/kg、1日当り約0.05〜100 mg/kg、または1日当り約0.1〜50 mg/kgであってよい。この範囲内において、用量は、1日当り0.05〜0.5、0.5〜5または5〜50 mg/kgであってよい。経口投与について、組成物は、好ましくは、1.0〜1000mgの活性成分、特に、1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、および1000.0 mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。前記用量は、例えばこれらの範囲内の用量で、治療される患者に対する治療効果および/または症状による用量の調節により選択されてよい。前記化合物は、好ましくは、1日に1〜4回、好ましくは1日に1または2回投与されてよい。
【0153】
いずれかの特定の患者に対する特異的な用量レベルおよび投与頻度は、変化してよく、使用される特異的な化合物の活性、前記化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与の形態および時間、排出速度、薬物の併用、特定の状態の重篤度、および治療を受けるホストに依存することが理解されるであろう。
【0154】
実施例においては、付属の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、化合物28および59で処理した腫瘍を有するマウスにおける肝臓の腫瘍量を、実施例33に記載されている溶媒で処理した場合と比較したグラフを示す。
【図2】図2は、化合物28を投与した後の腫瘍の大きさの発達を、実施例34に記載されている溶媒で処理した場合と比較したグラフを示す。
【実施例】
【0156】
本発明の本質を説明し、より明確に理解するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
【0157】
例1
0℃に冷却したテトラヒドロフラン(100 mL)中の(1S, 2R)-(-)-シス-1-アミノ-2-インダノール (1.49 g, 10 mmol)に、ボラン-N,N-ジエチルアニリン複合体 (17.8 mL, 100 mmol)を加え、混合物を0℃で1時間撹拌した。その後、テトラヒドロフラン(300 mL)中の3’-ニトロアセトフェノン (16.5 g, 100 mL)を4時間にわたって滴下し、混合物を撹拌しながら、一晩かけて室温に温めた。その後、アセトン(40 mL)と共に1時間撹拌することにより混合物を反応停止させ、減圧下で濃縮した。黄色の残留物をトルエン(250 mL)に溶解し、希釈した硫酸水 (1M, 4×100 mL)、水(100 mL)、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)、水(100 mL)およびブライン(100 mL)で連続して洗浄した。MgSO4を用いて有機溶液を乾燥し、減圧下で濃縮して(1R)-1-(3-ニトロフェニル)エタノール(14.3 g, 86%)を得た。
【0158】
0℃に冷却したテトラヒドロフラン(220 mL)中の(1R)-1-(3-ニトロフェニル)エタノール (12 g, 72 mmol)の溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(31 mL, 145 mmol)を一度に加え、その後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(22 mL, 145 mmol)を30分にわたって滴下した。反応混合物を室温までゆっくりと温め、38時間撹拌し、その後、混合物を酢酸エチル(100 mL)および水(100 mL)で希釈し、2つの相に分離し、水相を酢酸エチル(2×100 mL)で抽出した。混合性の有機相をブライン(100 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して、黒い液体を得た。この粗製の液体を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、1-[(1S)-1-アジドエチル]-3-ニトロベンゼン (18 g)を、黄色の液体として、許容可能な純度で得た。
【0159】
トルエン(325 mL)と水(40 mL)との混合物中の1-[(1S)-1-アジドエチル]-3-ニトロベンゼン(16.5 g, 86 mmol)を、トリフェニルホスフィン(44.5 g, 170 mmol)に一度に加えた。混合物を直ちに80℃まで加熱し、3時間撹拌した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(100 mL)で希釈し、2つの相に分離し、有機相を希釈した塩酸(2M, 3 x 100 mL)で抽出した。酸性の抽出物を、固体の水酸化カリウムを用いてpH > 10に塩基性化し、その後、ジクロロメタン(3×100 mL)で抽出した。有機抽出物をブライン(100 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して、(1S)-1-(3-ニトロフェニル)エタンアミド(13.1 g, 92% )を黄色の液体として得た。
【0160】
メタノール(250 mL)中の(1S)-1-(3-ニトロフェニル)エタンアミン(13.1 g, 79.4 mmol)および炭素(0.75 g)上の10%パラジウムの混合物を、水素雰囲気下で19時間、強く撹拌した。その後、混合物をセライト(Celite)のパッドを通してろ過し、そのパッドをメタノール(800 mL)で洗浄した。混合性のろ液を減圧下で濃縮し、3-[(1S)-1-アミノエチル]アニリンを茶色の固体として得た(10.8 g, 100%)。
【0161】
ジオキサン(140 mL)中の3-[(1S)-1-アミノエチル]アニリン(7.5 g, 55 mmol)、2,6-ジクロロピラジン(12.3 g, 82.5 mmol)および炭酸カリウム(15.2 g, 110 mmol)の混合物を、3日間、還流温度に加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮してオレンジの油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、N-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(11.6 g, 85%)を固体として得た。
【0162】
ジクロロメタン(6 mL)中のN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(300 mg, 1.2 mmol)、6-メチルニコチン酸(182 mg, 1.32 mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(277 mg, 1.45 mmol)、4-ピロリジノピリジン(36 mg, 0.24 mmol)およびトリエチルアミン(0.34 mL, 2.4 mmol)の混合物を、室温で72時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチル(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×15 mL)およびブライン(15 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(silica, ethyl acetate/hexanes)で精製して、N-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-6-メチルニコチンアミド(380 mg, 86%)を白い固体として得た。
【0163】
例2
トルエン(3 mL)およびn-プロパノール(1 mL)中のN-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-6-メチルニコチンアミド(74 mg, 0.2 mmol)、3-メトキシフェニルボロン酸(40 mg, 0.26 mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (23 mg, 0.02 mmol)の混合物を、排気し、窒素を3回充填した。この混合物に、希釈した炭酸水素ナトリウム水溶液(0.15 mL, 2M, 0.3 mmol)を加え、混合物を還流温度に17時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×15 mL)およびブライン(15 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)で精製した。残留物をテトラヒドロフラン(3 mL)に溶解し、1.5時間Si-チオールで処理し、セライトを通してろ過し、減圧下で濃縮し、白い泡として生成物(80 mg, 91%)を得た。
【0164】
例3
室温において、テトラヒドロフラン(1 mL)中のアニリン(66 mg, 0.15 mmol)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.014 mL, 0.18 mmol)およびトリエチルアミン(0.052 mL, 0.38 mmol)を連続して滴下した。得られた懸濁液を室温で2.5時間撹拌し、酢酸エチル(10 mL)および水(10 mL)で希釈した。2つの相に分離し、水相を酢酸エチル(2×10 mL)で抽出し、混合性の有機相を希釈した塩酸で抽出した(2M, 3×10 mL)。混合性の酸性抽出物を、固体の水酸化カリウムを用いてpH>12に塩基性化し、酢酸エチル(3×10 mL)で抽出した。有機抽出物をブライン(10 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)によりその成分に分離し、モノスルホン酸塩(58 mg, 75%)およびビススルホン酸塩(15 mg, 17%)を得た。
【0165】
例4
ジクロロエタン(5 mL)中のベンズアルデヒド(0.1 mL, 1 mmol)およびN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(248 mg, 1 mmol)の溶液に、トリアセトキシボロヒドライド(300 mg, 1.4 mmol)を一度に加え、混合物を室温で16時間撹拌した。その後、飽和した炭酸水素ナトリウムの溶液(20 mL)を加え、混合物を10分間撹拌した。混合物を酢酸エチル(2×20 mL)で抽出し、抽出物をブライン(20 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、N-{(1S)-1-[3-(ベンジルアミノ)フェニル]エチル}-6-クロロピラジン-2-アミン(330 mg, 97%)を、適切な純度のオフホワイトの固体として得た。
【0166】
例5
ジクロロメタン(5 mL)中の20%トリフルオロ酢酸中のN-Boc物質(200 mg, 0.38 mmol)を、室温で1.5時間撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮し、残留物を部分的に水に溶解し、アンモニア水を用いて懸濁液をpH 12に塩基性化した。混合物を酢酸エチル(3×20 mL)を用いて抽出し、混合性の抽出物をブライン(10 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、白い泡として2級アミン(155 mg, 95%)を得た。
【0167】
例6
テトラヒドロフラン(5 mL)中のフェノール(45 mg, 0.1 mmol)の溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(12 mg, 0.11 mmol)を加えた。60℃に5分間加熱した後、テトラベンジルピロリン酸(59 mg, 0.11 mmol)を一度に加えた。混合物を1.5時間加熱し、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン(5 mL)で希釈し、セライトを通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、不安定な淡黄色の固体としてジベンジルホスフェート(62 mg, 87%)を得た。
【0168】
メタノール(3 mL)中のジベンジルホスフェート(10 mg, 0.014 mmol)と炭素上の10%パラジウムの混合物を、水素雰囲気下で16時間撹拌し、その後、セライトを通してろ過し、減圧下で濃縮し、淡黄色の固体として脱保護されたリン酸塩(6.7 mg, 89%)を得た。
【0169】
例7
トルエン(1.5 mL)およびn-プロパノール(1.5 mL)中のN-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-3-メチルベンズアミド(73 mg, 0.2 mmol)、3-メトキシフェニルボロン酸(46 mg, 0.3 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (23 mg, 0.02 mmol)および希釈した炭酸ナトリウム水溶液(0.2 mL, 2M, 0.4 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器において、150℃で10分間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(3×15 mL)およびブライン(15 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。残留物をジクロロメタン(3 mL)に溶解し、Si-チオールで1.5時間処理し、セライトを通してろ過し、減圧下で濃縮し、無色の油として生成物(80 mg, 91%)を得た。
【0170】
例8
N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)中の5-アミノニコチン酸(35 mg, 0.25 mmol)、N-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(125 mg, 0.5 mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(95 mg, 0.5 mmol)の混合物に、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(1 mL, N,N-ジメチルホルムアミド中 0.5〜0.7M, 0.5 mmol)、続いてN-メチルモルフォリン(0.055 mL, 0.5 mmol)を加え、混合物を16時間室温で撹拌した。その後、混合物を酢酸エチル(40 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム(2×30 mL)およびブライン(30 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー (シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、淡黄色の固体として5-アミノ-N-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)ニコチンアミド(35 mg, 38%)を得た。
【0171】
例9
メタノール(10 mL)中のN-[1-(3-ブロモフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(312 mg, 1 mmol)の溶液に、[1,1’-ビス(ジフェニル-ホスフィノ)フェロセン]パラジウム[II]クロリド、ジクロロメタン(146 mg, 0.2 mmol)との1:1複合体、続いてトリエチルアミン(0.28 mL, 2 mmol)を加えた。混合物を脱気し、一酸化炭素を4時間充填し、その後、還流温度に加熱し、一酸化炭素雰囲気下で17時間撹拌した。その後、混合物をセライトを通してろ過し、茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー (シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、黄色の油としてメチル6-{[1-(3-ブロモフェニル)エチル]アミノ}ピラジン-2-カルボキシレート(90 mg, 27%)を得た。
【0172】
例10
無水トルエン(4 mL)中の(1S)-1-(3-ニトロフェニル)エタンアミン(365 mg, 2.2 mmol)、2,6-ジブロモピリジン(474 mg, 2 mmol)、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム(0) (92 mg, 0.1 mmol)、(+/-)-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン(125 mg, 0.2 mmol)およびナトリウムtert-ブトキシド(270 mg, 2.8 mmol)の混合物を80℃に17時間加熱した。混合物を冷却し、酢酸エチル(50 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(3×30 mL)およびブライン(30 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黒い油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、6-ブロモ-N-[(1S)-1-(3-ニトロフェニル)エチル]ピリジン-2-アミン(210 mg, 33%)および2-付加生成物(205 mg, 50%)を、共に黄色の油として得た。
【0173】
エタノール(5 mL)中の6-ブロモ-N-[(1S)-1-(3-ニトロフェニル)エチル]ピリジン-2-アミン(100 mg, 0.31 mmol)の溶液に、水(2.5 mL)中の塩化アンモニウム (166 mg, 3.1 mmol)の溶液、続いてインジウム粉末(142 mg, メッシュ100, 1.24 mmol)を加えた。混合物を還流温度に4.5時間加熱し、室温まで冷却し、セライトを通してろ過した。ろ過ケーキを水およびエタノールで洗浄し、混合性のろ液をジクロロメタン(2×30 mL)で抽出し、抽出物をブライン(30 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、暗黄色の油としてN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-ブロモピリジン-2-アミン(70 mg, 77%)を得た。
【0174】
ジクロロメタン(3 mL)中のN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-ブロモピリジン-2-アミン(70 mg, 0.24 mmol)、5-メチルニコチン酸(39 mg, 0.29 mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(69 mg, 0.36 mmol)、4-ピロリジノピリジン(7 mg, 0.05 mmol)およびトリエチルアミン(0.08 mL, 0.58 mmol)の混合物を、室温で17時間撹拌した。その後、混合物をジクロロメタン(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×15 mL)およびブライン(15 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して暗黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、淡黄色の泡としてN-(3-{(1S)-1-[(6-ブロモピリジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-5-メチルニコチンアミド(62 mg, 63%)を得た。
【0175】
例11
ジクロロメタン(5 mL)中のピリジン-3-スルホニルクロリドヒドロクロリド(94 mg, 0.44 mmol)およびN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(100 mg, 0.4 mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.17 mL, 1.2 mmol)を室温で滴下し、混合物を17時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチル(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×20 mL)およびブライン(20 mL)で連続して洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、淡黄色の泡としてN-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)ピリジン-3-スルホンアミド(44 mg, 28%)を得た。
【0176】
例12
1,2-ジクロロエタン(5 mL)中の1-(5-メチルピリジン-3-イル)エタノン(135 mg, 1 mmol)およびN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(248 mg, 1 mmol)の溶液に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(300 mg, 1.4 mmol)を一度に、さらに氷酢酸(0.18 mL, 3 mmol)を加えた。混合物を、マイクロ波反応器において、80℃で1時間加熱した。その後、混合物を希釈した塩酸(2M, 7 mL)と共に15分間撹拌し、2つの相に分離した。固体の水酸化カリウムを用いて水相をpH 9に塩基性化し、ジクロロメタン(2×20 mL)で抽出した。抽出物をブライン(20 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮してオレンジ色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、淡黄色の油として6-クロロ-N-[(1S)-1-(3-{[1-(3-メチルフェニル)エチル]アミノ}フェニル)エチル]ピラジン-2-アミン(52 mg, 14%)を得た。
【0177】
例13
無水メタノール(20 mL)中の3’-ブロモアセトフェノン(2.66 mL, 20 mmol)、ギ酸アンモニウム(6.31 g, 100 mmol)およびジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ロジウム(III)ダイマー(124 mg, 0.2 mmol)の混合物を、窒素雰囲気下、還流温度で5時間加熱し、その後、一晩かけて室温まで冷却した。混合物を水(20 mL)で希釈し、騎士約した塩酸(2M)でpH 2まで酸性化し、ジクロロメタン(2×60 mL)で洗浄した。固体の水酸化カリウムを用いて水溶液をpH 12まで塩基性化し、ジクロロメタン(3×50 mL)で抽出し、抽出物をブライン(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、1-(3-ブロモフェニル)エタンアミン(3.4 mg, 85%)を黄色の液体として得た。
【0178】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の1-(3-ブロモフェニル)エタンアミン(1 g, 5 mmol)、ジ-tert-ブチル-ジカルボネート(1.1 g, 5 mmol)およびトリエチルアミン(0.85 mL, 6 mmol)の溶液を室温で20時間撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮し、残留物を50mlのジクロロエタンに溶解し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(3×20 mL)およびブライン(20 mL)で続けて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、tert-ブチル 1-(3-ブロモフェニル)エチルカルバメート(1.5 g, 100%)を白色の固体として得た。
【0179】
メタノール(10 mL)中のtert-ブチル 1-(3-ブロモフェニル)エチルカルバメート (300 mg, 1 mmol)の溶液に、[1,1’-ビス(ジフェニル-ホスフィノ)フェロセン]パラジウム [II]クロリド、ジクロロメタン(146 mg, 0.2 mmol)との1:1複合体、続いてトリエチルアミン(0.28 mL, 2 mmol)を加えた。混合物を脱気し、一酸化炭素を4回充填し、その後、還流温度まで加熱し、一酸化炭素雰囲気下で17時間撹拌した。その後、混合物をセライトを通してろ過し、茶色の固体とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、メチル3-{1-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(210 mg, 75%)を白色の固体として得た。
【0180】
ジクロロメタン(10 mL)中の20% トリフルオロ酢酸中のメチル 3-{1-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(200 mg, 0.72 mmol)の溶液を、室温で1.5時間撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮し、残留物を水に溶解し、アンモニア水を用いてpH 11まで塩基性化した。混合物を酢酸エチル(2×15 mL)で抽出し、抽出物をブライン(20 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、メチル 3-(1-アミノエチル)ベンゾエート(130 mg, 100%)を淡黄色の油として得た。
【0181】
ジオキサン(5 mL)中のメチル 3-(1-アミノエチル)ベンゾエート(120 mg, 0.67 mmol)、2,6-ジクロロピラジン(150 mg, 1 mmol)および炭酸カリウム(280 mg, 2 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中、150℃で6時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、メチル 3-{1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}ベンゾエート(30 mg, 15%)を淡黄色の油として得た。
【0182】
希釈した水酸化ナトリウム水溶液(0.5 mL, 2M, 1 mmol)、メタノール(2 mL) およびジクロロメタン(1 mL)中のメチル 3-{1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}ベンゾエート (30 mg, 0.1 mmol)の混合物を、室温で16時間撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮し、残留物を水(5 mL)に溶解し、希塩酸(1M)でpH 6まで酸性化した。水溶液を酢酸エチル(3×10 mL)で抽出し、抽出物をブライン(10 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮し、3-{1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}安息香酸 (11 mg, 41%)をベージュ色の油として得た。
【0183】
ジクロロメタン(1 mL)中の3-{1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}安息香酸 (11 mg, 0.04 mmol)、5-メチルピリジン-3-アミン(5 mg, 0.048 mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(11 mg, 0.059 mmol)、4-ピロリジノピリジン(1.2 mg, 0.008 mmol)およびトリエチルアミン(0.013 mL, 0.095 mmol)の混合物を、室温で17時間撹拌した。その後、混合物をジクロロメタン(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×15 mL)およびブライン(15 mL)で続けて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して暗黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、3-{1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}-N-(5-メチルピリジン-3-イル)ベンズアミド(9 mg, 61%)を淡黄色の油として得た。
【0184】
例14
ジクロロメタン(1.2 mL)中のN-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(49 mg, 0.2 mmol)および飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(1.2 mL)の強く撹拌した混合物に、トリホスゲン(20 mg, 0.067 mmol)を一度に加え、混合物を3時間撹拌した。その後、5-メチルピリジン-3-アミン(60 mg, 0.55 mmol)を加え、混合物を17時間撹拌した。その後、混合物をジクロロメタン(20 mL)で希釈し、ブライン(20 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチル(20 mL)に溶解し、希塩酸(0.5M, 3×15 mL)で抽出した。混合性の酸性抽出物を、固体の水酸化カリウムを用いてpH 5まで塩基性化し、その後、ジクロロメタン(3×20 mL)で抽出した。混合性の有機抽出物をブライン(20 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮してオレンジ色の油とし、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスのカラムを通すことにより精製した。N-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-N'-(5-メチルピリジン-3-イル)ウレア(32 mg, 42%)を無色の泡として得た。
【0185】
例15
N-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-5-メチルニコチンアミド(55 mg, 0.15 mmol)およびモルフォリン(1.5 mL)の混合物を、マイクロ波反応器中、160℃で30分間加熱し、その後さらに1時間、180℃で加熱した。混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(30 mL)で希釈し、水(6×15 mL)およびブライン(20 mL)で続けて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して淡黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、淡黄色の油として生成物(32 mg, 51%)を得た。
【0186】
例16
N-(3-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)-3-メチルベンズアミド(183 mg, 0.5 mmol)、4-ヒドロキシピペリジン(61 mg, 0.6 mmol)、ジシクロヘキシルホスフィン(2-ビフェニル) (4.6 mg, 0.012 mmol)、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム(0) (4.6 mg, 0.005 mmol)およびリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド (1.5 mL, テトラヒドロフラン中1M, 1.5 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中において、100℃で30分間、その後140℃で30分間加熱した。混合物を室温まで冷却し、その後、希塩酸(1M, 2 mL)と共に強く撹拌した。混合物を酢酸エチル(15 mL)で希釈し、2つの相に分離し、有機相を乾燥し(MgSO4)、セライトを通してろ過して茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、ジクロロメタン(3mL)に溶解し、Si-トリアミンで処理し、黄色の泡として生成物(100 mg, 46%)を得た。
【0187】
例17
ジクロロメタン(6 mL)中の2,2,2-トリフルオロ-1-(5-メチルピリジン-3-イル)エタノン(200 mg, 1.06 mmol)、N-[(1S)-1-(3-アミノフェニル)エチル]-6-クロロピラジン-2-アミン(263 mg, 1.06 mmol)およびトリエチルアミン(0.44 mL, 3.17 mmol)の混合物に、四塩化チタン(0.52 mL, ジクロロメタン中1M, 0.52 mmol)を滴下し、混合物を室温で72時間撹拌した。その後、メタノール(2.5 mL)中のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(200 mg, 0.94 mmol)の溶液を一度に加え、得られた懸濁液を3時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(2M)を用いて混合物をpH 12に塩基性化し、ジクロロメタン(20 mL)で希釈し、水(2×20 mL)およびブライン(20 mL)で続けて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、その一部を、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスのカラムを通すことにより精製した。ジアステレオ異性体の混合物として、黄色の油の生成物(28 mg)を得た。
【0188】
例18
テトラヒドロフラン(10 mL)中の(S)-(-)-α,α-ジフェニル-2-ピロリジンメタノール (253 mg, 1 mmol)およびトリメチルボラート (0.135 mL, 1.2 mmol)の溶液を室温で1時間撹拌した後、ボラン-メチルスルフィド複合体(10 mL, テトラヒドロフラン中2M, 20 mmol)を一度に加え、混合物を0℃まで冷却した。テトラヒドロフラン(10 mL)中の3-アセチル-5-ブロモピリジン(2 g, 10 mmol)を0℃で2時間にわたって滴下し、その後、混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。その後、最初は冷却しながら希塩酸(2M, 90 mL)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。ジメチルスルフィドおよびテトラヒドロフランを減圧下で除去し、得られた黄色の溶液をアンモニア水を用いてpH 11まで塩基性化し、酢酸エチル(3×50 mL)で抽出し、抽出物をブライン(50 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮し、許容可能な純度で(1R)-1-(5-ブロモピリジン-3-イル)エタノール(1.9 g)を得た。
【0189】
テトラヒドロフラン(40 mL)中の(1R)-1-(5-ブロモピリジン-3-イル)エタノール(10 mmol) の0℃に冷却した溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(4.3 mL, 20 mmol)を一度に、続いて1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(3 mL, 20 mmol)を30分にわたって滴下して加えた。その後、反応混合物をゆっくりと室温まで温め、一晩撹拌した。混合物を酢酸エチル(50 mL)および(50 mL)で希釈し、2つの相に分離し、水相を酢酸エチル(3×50 mL)で抽出した。混合性の有機相をブライン(50 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して黒い液体とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、3-[(1S)-1-アジドエチル]-5-ブロモピリジン(1.7 g, 75%)を無色の液体として得た。
【0190】
ジオキサン(1 mL)中のm-トルアミド(164 mg, 1.21 mmol)、3-[(1S)-1-アジドエチル]-5-ブロモピリジン(227 mg, 1 mmol)、ヨウ化銅(I)(9.6 mg, 0.05 mmol)、N,N-ジメチルエチレンジアミン(0.011 mL, 0.1 mmol)および炭酸カリウム(276 mg, 2 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中において、110℃で30分間、その後160℃でさらに30分間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(5 mL)で希釈し、セライトを通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製し、N-{5-[(1S)-1-アジドエチル]ピリジン-3-イル}-3-メチルベンズアミド(80 mg, 28%)を無色の油として得た。
【0191】
トルエン(2 mL)および水(0.25 mL)の混合物中のN-{5-[(1S)-1-アジドエチル]ピリジン-3-イル}-3-メチルベンズアミド(80 mg, 0.28 mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(150 mg, 0.56 mmol)を一度に加えた。混合物を直ちに80℃に加熱し、3時間撹拌した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(10 mL)で希釈し、2つの相に分離し、有機相を希塩酸(2M, 3×10 mL)で抽出した。
【0192】
酸性抽出物を固体の水酸化カリウムでpH > 10に塩基性化し、その後、ジクロロメタン(3×10 mL)で抽出した。有機抽出物をブライン(10 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、N-{5-[(1S)-1-アミノエチル]ピリジン-3-イル}-3-メチルベンズアミド(65 mg, 91%)を黄色の油として得た。
【0193】
ジオキサン(2 mL)中のN-{5-[(1S)-1-アミノエチル]ピリジン-3-イル}-3-メチルベンズアミド(65 mg, 0.27 mmol)、2,6-ジクロロピラジン(61 mg, 0.41 mmol)および炭酸カリウム(76 mg, 0.54 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中において、150℃で1.5時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、N-(5-{(1S)-1-[(6-クロロピラジン-2-イル)アミノ]エチル}ピリジン-3-イル)-3-メチルベンズアミド(6 mg, 6%)を淡黄色の油として得た。
【0194】
例19
テトラヒドロフラン(1 mL)中のアルコール(50 mg, 0.11 mmol)の0℃に冷却した溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(0.05 mL, 0.23 mmol)を一度に加え、その後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(0.35 mL, 0.23 mmol)を滴下した。その後、反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。混合物を酢酸エチル(10 mL)および水(10 mL)で希釈し、2つの相を分離し、水相を酢酸エチル(2×10 mL)で抽出した。混合性の有機相をブライン(15 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、暗褐色の固体として生成物(40 mg, 55%)を得た。
【0195】
例20
エタノール(3 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(74 mg, 0.16 mmol)の溶液に、水(1.5 mL)中の塩化アンモニウム(85 mg, 1.6 mmol)の溶液を加え、インジウム粉末(73 mg, メッシュ100, 0.64 mmol)を加えた。混合物を還流温度で40時間加熱し、室温まで冷却し、セライトを通してろ過した。ろ過ケークをエタノールで洗浄し、混合性のろ液を減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチル(30 mL)および水(30 mL)で希釈し、相を分離し、有機相をブライン(30 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、(S)-3-アミノ-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(45 mg, 65%)を淡黄色の固体として得た。
【0196】
例21
乾燥トルエン(1 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-メチルベンズアミド(55 mg, 0.15 mmol)、ベンジルアミン(0.033 mL, 0.3 mmol)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0) (8 mg, 0.015 mmol)およびナトリウム tert-ブトキシド(22 mg, 0.225 mmol)の混合物を、マイクロ波反応容器中において、110℃で1時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル (5 mL)/メタノール(5 mL)で希釈し、セライトを通してろ過し、減圧下で濃縮して黄色の固体とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、その後、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスのカラムを通して精製し、(S)-N-(3-(1-(6-(ベンジルアミノ)ピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-メチルベンズアミド(13 mg, 20%)を不安定な青色の油として得た。
【0197】
例22
N, N-ジメチルホルムアミド(1 mL)中の(S)-3-アミノ-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(38 mg, 0.09 mmol)、2-クロロエチルエーテル(0.012 mL, 0.1 mmol)および炭酸カリウム(30 mg, 0.21 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中において、180℃で40分間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、コットンウールを通してろ過し、酢酸エチル(15 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×10 mL)、水(2×10 mL)、ブライン(2×10 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して茶色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、その後、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスのカラムを通して精製し、 (S,Z)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-((ジメチルアミノ)メチレンアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(7 mg, 16%)の副産物を黄色の油として得た。
【0198】
例23
テトラヒドロフラン(1 mL)中の(S)-3-アミノ-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド (43 mg, 0.1 mmol)、ヨードメタン(0.04 mL, 0.5 mmol)および水素化ナトリウム(20 mg, 60% 油分散, 0.5 mmol)の混合物を、60℃で20時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、水(10 mL)で反応を停止させ、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)で希釈し、酢酸エチル(20 mL)で抽出し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)、ブライン(10 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスのカラムを通して精製し、(S)-3-アミノ-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-N-エチル-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、(S)-3-アミノ-N-(3-(1-((6-クロロピラジン-2-イル)(エチル)アミノ)エチル)フェニル)-N-エチル-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミドおよび(S)-N-(3-(1-((6-クロロピラジン-2-イル)(エチル)アミノ)エチル)フェニル)-N-エチル-3-(エチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミドの混合物を得た。
【0199】
例24
メタノール(5 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-メチルベンズアミド(183 mg, 0.5 mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド(73 mg, 0.1 mmol)およびトリエチルアミン(0.14 mL, 1 mmol)の混合物を、一酸化炭素雰囲気下、80℃で40時間加熱した。その後、混合物を冷却し、セライトを通してろ過し、減圧下で濃縮して赤色の固体とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製し、(S)-メチル6-(1-(3-(3-メチルベンズアミド)フェニル)エチルアミノ)ピラジン-2-カルボキシレート(48 mg, 25%)を茶色の油として得た。
【0200】
ジオキサン(2 mL)中の(S)-メチル 6-(1-(3-(3-メチルベンズアミド)フェニル)エチルアミノ)ピラジン-2-カルボキシレート(40 mg, 0.1 mmol)およびアンモニア水(4 mL, 28%)の溶液を、封管中において、130℃で18時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20 mL)で希釈した。2つの相に分離し、水相を酢酸エチル(10 mL)で抽出した。混合性の有機溶液をブライン(15 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、(S)-6-(1-(3-(3-メチルベンズアミド)フェニル)エチルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド(37 mg, 98%)をベージュ色の固体として得た。
【0201】
例25
N, N-ジメチルホルムアミド(0.5 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-メチルベンズアミド(92 mg, 0.25 mmol)、パラジウムアセテート(3 mg, 0.0125 mmol)、(R)-(+)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(8 mg, 0.0125 mmol)、イミダゾール (17 mg, 0.25 mmol)およびナトリウムtert-ブトキシド(36 mg, 0.375 mmol)の混合物を、マイクロ波反応器中において、180℃で20分間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)で希釈し、酢酸エチル(3×15 mL)で抽出し、ブライン(15 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、(S)-N-(3-(1-(6-(1H-イミダゾール-1-イル)ピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-メチルベンズアミド(40 mg, 40%)を茶色の固体として得た。
【0202】
例26
5-ベンズイミダゾールカルボニルクロリド(108 mg, 0.5 mmol)、(S)-N-(1-(3-アミノフェニル)エチル)-6-クロロピラジン-2-アミン(144 mg, 0.5 mmol)およびトリエチルアミン(0.7 mL, 5 mmol)の混合物を室温で72時間撹拌した。その後、混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×15 mL)、ブライン(15 mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシアミドを黄色の粉末として得た。
【0203】
例27
ジクロロメタン(2.5 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(100 mg, 0.2 mmol) (例28により作られる)およびトリフェニルホスフィン(105 mg, 0.4 mmol)の溶液に、ジクロロメタン(1mL)中の四臭化炭素(132 mg, 0.4 mmol)の溶液を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、モルフォリン(0.07 mL, 0.8 mmol)を加え、混合物をさらに17時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチル(30 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×20 mL)で洗浄し、希塩酸(2M, 3×30 mL)で抽出した。酸性抽出物を、固体の水酸化カリウムを用いてpH >12に塩基性化し、その後、酢酸エチル(3×20 mL)で抽出した。有機抽出物をブライン(30 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黄色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/メタノール)により精製し、(S)-N-(3-(1-(6-(4-(モルフォリノメチル)フェニル)ピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(38 mg, 17%)を黄色の固体として得た。
【0204】
例28
N,N-ジメチルホルムアミド(3 mL)中の(S)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(210 mg, 0.5 mmol)、4-(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸(152 mg, 1 mmol)および炭酸ナトリウム水溶液(0.62 mL, 2M, 1.55 mmol)の脱気した溶液に、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II) (24 mg, 0.03 mmol)を加え、混合物を封管内において、80℃で18時間加熱した。その後、混合物を冷却し、ブライン/水(2:3, 50 mL)の混合物中に注ぎ、酢酸エチル/テトラヒドロフランの混合物(4:1, 3×30 mL)で抽出した。混合性有機抽出物を減圧下で濃縮し、残留物を酢酸エチル(50 mL)中に取り、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮して黒色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、(S)-N-(3-(1-(6-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピラジン-2-イルアミノ)エチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(80 mg, 33%)を淡黄色の固体として得た。
【0205】
例29
ジオキサン中の(R)-1-(3-ニトロフェニル)エタノール(167 mg, 1 mmol)および2,6-ジクロロピラジン(164 mg, 1.1 mmol)の溶液に、水酸化ナトリウム(88 mg, 60% 油分散, 2.2 mmol)を一度に加え、混合物を還流温度に4時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(25 mL)および酢酸エチル(25 mL)中に注いだ。2つの相に分離し、水相を酢酸エチル(25 mL)で抽出した。混合性の有機相をブライン(25 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、(R)-2-クロロ-6-(1-(3-ニトロフェニル)エトキシ)ピラジン(250 mg, 89%)をオレンジ色の油として得た。
【0206】
エタノール(12 mL)中の(R)-2-クロロ-6-(1-(3-ニトロフェニル)エトキシ)ピラジン(240 mg, 0.86 mmol)の溶液に、水(6 mL)中の塩化アンモニウムの溶液(460 mg, 8.6 mmol)を加え、さらにインジウム粉末(394 mg, メッシュ100, 3.4 mmol)を加えた。混合物を還流温度で20時間加熱し、室温まで冷却し、セライトを通してろ過した。フィルターケークをエタノールで洗浄し、混合性のろ液を減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチル(25 mL)に溶解し、水(15 mL)、ブライン(15 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、(R)-3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルオキシ)エチル)アニリンを暗黄色の液体(160 mg)として得た。
【0207】
ジクロロメタン(6 mL) 中の(R)-3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルオキシ)エチル)アニリン(160 mg, 0.64 mmol)、3-トリフルオロメチル安息香酸(183 mg, 0.96 mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(246 mg, 1.28 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(4 mg, 0.032 mmol)およびトリエチルアミン(0.36 mL, 2.57 mmol)の混合物を、室温で18時間撹拌した。その後、混合物をジクロロメタン(30 mL)で希釈し、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液(2×20 mL)およびブライン(20 mL)で続けて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で濃縮してオレンジ色の油とし、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ, 酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、(R)-N-(3-(1-(6-クロロピラジン-2-イルオキシ)エチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(110 mg, 30% 2ステップにわたって)を黄色の泡として得た。
【0208】
例30−酵素スクリーニング
化合物の希釈
スクリーニングの目的で、化合物を20μMの濃度で96ウェルプレートに希釈した。試験の前に、プレートを37℃で30分間温めた。
【0209】
CSF1-Rおよびc-KITチロシンキナーゼドメインの産生
キナーゼドメインは、以下の方法で作られた:
CSF-1R
コドンI553からQ961のヒトCSF1-Rのキナーゼドメインが、pDEST-20発現ベクター(インビトロゲン)中にクローン化された。CSF1-Rプラスミドは、その後、コンピテントなDH10Bac細胞(Gibco)に形質転換され、産生された組み換えバキュロウイルスは、Sf9昆虫細胞への形質移入のために準備された。
【0210】
c-KIT
コドンM552から末端までのヒトc-kitのキナーゼドメインが、pDEST-20発現ベクター(インビトロゲン)中にクローン化された。C-kitプラスミドは、その後、コンピテントなDH10Bac細胞(Gibco)に形質転換され、産生された組み換えバキュロウイルスは、Sf9昆虫細胞への形質移入のために準備された。
【0211】
キナーゼドメインの大規模産生
各構築物からのバキュロウイルス標本は、SF-900培地(インビトロゲン)において培養した5 LのSF9 細胞(インビトロゲン)中に蒔き、細胞密度を約1〜2×106 細胞/mlとした。細胞は、0.8〜3.0のMOIでウイルスに感染する。細胞を回収し、溶解した。チロシンキナーゼドメインは、グルタチオン−アガロースカラム(Scientifix Pty. Ltd. catalog #: GSH-200)において、アフィニティークロマトグラフィーにより精製された。
【0212】
FLT-3およびPDGFR βチロシンキナーゼ酵素をアップステートセルシグナリングソリューションズ(Upstate Cell Signalling Solutions), CA, USAから購入した (flt-3 カタログ#: 14-500およびPDGFR β カタログ#: 14-463)。KDRプロテインキナーゼ酵素は、ミリポア(Millipore)から購入した(カタログ # 14-630M)。
【0213】
分析プロトコル
キナーゼ分析は、αスクリーンプロテインチロシンキナーゼキットを用いて、384ウェルオプティプレート(パッカード)において行った。約1〜50ngの親和性の精製されたPTKドメインが、50mM HEPES, pH 7.5, 10mM MgCl2, 150mM NaCl および10μM-1mM ATPの存在下で使用された。c-KITおよびPDGFRβに対してはビオチン化ペプチドであるビオチン-EQEDEPEGDYFEWLEPE-NH2が使用され、CSF1-RおよびFLT-3 に対しては、ビオチン-EGPWLEEEEEAYGWMDF-NH2(最終濃度0.1〜3μM)が基質として使用された。αスクリーンリン酸チロシンアクセプタービーズ、続いてストレプトアビジンドナービーズが抑制された光の下で添加された。αスクリーンプレートは、パッカードフュージョンαにおいて読み取られた。阻害剤は、ATPの添加の30分前に分析系に加えられた。阻害剤はDMSO水溶液中に加えられ、DMSO濃度は1%を超えなかった。
【0214】
表2は、本発明の化合物に対する生物学的な分析の結果を示す。
【表2−1】

【表2−2】

【0215】
表中:
+++=IC50が100nM未満である
++=IC50が1μM未満である
+=IC50が10μM未満である
−=IC50が10μMより高い
NT=試験していない
ことを意味する。
【0216】
例31−付加的な酵素スクリーニング
さらなる酵素分析は、キナーゼプロファイラー(商標)アッセイシステムにおいて、アップステートバイオテクノロジー(Dundee, UK)おいて行われた。
一般的なプロトコルを以下に示す。全てのキナーゼは、分析系に加える前に、10×実験濃度に予め希釈する。キナーゼに対する希釈緩衝液の組成は、20 mM MOPS pH 7.0、1 mM EDTA、0.1% β-メルカプトエタノール、0.01% Brij-35、5% グリセロール、1 mg/ml BSAである。全ての基質は溶解し、希釈して、脱イオン化された水中における実験保存液とする。
【0217】
スクリーニングされる各キナーゼについての詳細を以下に示す:
EphA2(h)
25μlの最終反応容積において、EphA2 (h) (5-10 mU)を8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、0.1 mg/ml ポリ(Glu, Tyr) 4:1、10 mM Mgアセテートおよび[γ-33P-ATP] (特異的な活性約500 cpm/pmol、必要な場合濃縮) と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスの添加により惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、フィラメントAにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0218】
EphA3(h)
25μlの最終反応容積において、EphA3 (h) (5-10 mU)を8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、0.1 mg/ml ポリ(Glu, Tyr) 4:1、10 mM Mgアセテートおよび[γ-33P-ATP] (特異的な活性約500 cpm/pmol, 必要な場合に濃縮) と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスを添加することにより惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、フィラメントAにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0219】
Fltl(h)
25μlの最終反応容積において、Flt1 (h) (5-10 mU)を8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、250μM KKKSPGEYVNIEFG、10 mM Mgアセテートおよび [γ-33P-ATP] (特異的な活性約500 cpm/pmol, 必要な場合に濃縮) と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスを添加することにより惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、P30フィラメントにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0220】
Hck(h)
25μlの最終反応容積において、Hck (h) (5-10 mU)を8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、250μM KVEKIGEGTYGVVYK (Cdc2 ペプチド)、10 mM Mgアセテートおよび[γ-33P-ATP] (特異的な活性約500 cpm/pmol, 必要な場合に濃縮) と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスを添加することにより惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、P30フィラメントにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0221】
Lck(h)
25μlの最終反応容積において、Lck (h) (5-10 mU)を50 mM トリスpH 7.5、0.1 mM EGTA、0.1 mM Na3VO4、250μM KVEKIGEGTYGVVYK (Cdc2 ペプチド)、10 mM Mgアセテートおよび[γ-33P-ATP](特異的な活性約500 cpm/pmol, 必要な場合に濃縮)と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスを添加することにより惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、P30フィラメントにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0222】
Ret(h)
25μlの最終反応容積において、Ret (h) (5-10 mU)を8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、250μM KKKSPGEYVNIEFG、10 mM Mgアセテートおよび[γ-33P-ATP] (特異的な活性約500 cpm/pmol, 必要な場合に濃縮)と共にインキュベートする。反応は、MgATPミックスを添加することにより惹起される。室温で40分間インキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。10μlの反応物を、その後、P30フィラメントにスポットし、75 mMリン酸中で5分間、3回、メタノールで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーションカウントする。
【0223】
結果の概要を、%阻害として表3に表す。
【表3】

【0224】
例32−細胞の分析
細胞の分析は、以下のように行った:
分析のための細胞は、培地から細胞を回収することにより調製し、その後、それらを適切な増殖培地において、細胞株に応じて40,000細胞/mL〜600,000細胞/mLに希釈した。
【0225】
試験対象の化合物を平底の96ウェルプレートに加えた(10μL, 10X 最終濃度)。細胞の懸濁液(80μL/ウェル)を加え、1時間後に、培養因子を加えた(mNFS-60に対してはヒトM-CSF(20ng/ml)、Baf3-WTに対してはマウスIL-3(5ng/ml))。その後、プレートを72時間、37°C、5% CO2でインキュベートした。アラマーブルー(10μL/ウェル)を加え、プレートをさらに4〜8時間インキュベーターに戻した。
【0226】
その後、プレートを蛍光プレートリーダーを用いて、励起544nmおよび発光590nmで読み取った。
【0227】
結果の概要を、以下の表4に示す。
【表4】

【0228】
表中:
+++=IC50が200nM未満である
++=IC50が1μM未満である
+=IC50が10μM未満である
−=IC50が10μMより高い
NT=試験していない
ことを意味する。
【0229】
例33−腫瘍増殖および転位
哺乳類の腫瘍細胞株における化合物28および59の効果を検討した。
【0230】
ネオマイシン耐性腫瘍株を、α-MEM+5% 胎児ウシ血清およびペニシリン/ストレプトマイシン中で培養した。細胞をEDTA (0.03%)を用いて取り出し、血球計算器(haemacytometer)中で計数し、注射のためのリン酸緩衝食塩水(PBS)中において1×107 細胞/mlの濃度とした。化合物28および59を、1:9:10の割合で、DMSO:PEG:水を含有する溶媒に溶解した。化合物28を6mg/ml で溶解し、化合物59は4mg/mlで調製した。前記2つの化合物を、60mg/Kg (化合物28)および40mg/Kg (化合物59)で、腹腔内投与で1日に2回投与した。マウスの対照群には、溶媒のみを投与した。
【0231】
肝臓からの腫瘍負荷分析のための組織は、液体窒素中にスナップ(snap)冷凍し、液体窒素温度に冷却したステンレススチールホモジナイザーにおいて微粉砕した。プロテイナーゼK消化、フェノール:クロロホルム抽出およびエタノール沈降を用いて、ゲノムDNAを単離した。肝臓に対する腫瘍負荷は、RTQ-PCRを組み込んだタックマン(TaqMan:登録商標)ケミストリー(アプライドバイオシステムズ, Foster City, CA)を用いて測定した。RTQ-PCRは、ビメンチンDNA (内在性マウス組織)およびネオマイシンDNA (腫瘍細胞のみ)について、サイクル閾値(Ct)を測定する。これら2つのCt値を比較することにより、相対的な腫瘍負荷(RTB)に対するスコアを、以下の式を用いて計算した:
RTB=10000×1/2eΔCt
この式を用いると、腫瘍のない組織はスコアが0となり、全体的に腫瘍細胞を含む組織は10,000のスコアとなる。PCRは、ABI プリズム7000 サーモサイクラー (アプライドバイオシステムズ)を用いて行った。全てのPCR試薬は、ネオマイシンよびビメンチンのフォワードおよびリバースプライマーを除いて(GeneWorks, Australia)、アプライドバイオシステムズから購入した。タックマン(登録商標)分析において使用するプライマーおよびプローブは、プライマーエクスプレスバージョン2.0ソフトウェア(アプライドバイオシステムズ)を用いて設計した。
【0232】
溶媒の場合と比較して、化合物28および化合物59の存在下において報告された腫瘍負荷は、図1に示す。
【0233】
例34−中皮腫モデル
中皮腫のモデルにおいて、Balb/Cマウスに本来由来する中皮腫細胞株を、20匹のマウスの2つの群に、マウス当り106細胞で皮下注射した。溶媒 (1:9:10の割合のDMSO:PEG400:水)またはこの溶媒中の化合物28 60 mg/kgを、1日に2回200μl腹腔内注射することにより、腫瘍播種のときから各群に与えた。実験は19日間行い、毎日体重を記録した。書くマウスの腫瘍の大きさは、7日目から実験の終わりまで測定した。実験の最後に、マウスをと殺し、腫瘍を取り出し、計量した。
【0234】
溶媒の場合と比較した化合物28の投与後における腫瘍の大きさの経過は、図2に示す。
【0235】
例35
膵臓癌、肺癌、卵巣癌、食道癌、結腸癌、神経芽細胞腫、黒色腫、中皮腫および胃癌を含むヒトの腫瘍に由来する細胞株は、キナーゼ阻害剤分子の効果を確認するために使用することができる。上昇したSRCキナーゼ活性の効果は、種々のヒト腫瘍細胞株を用いてインビトロで、およびマウスモデルを用いてインビボで大規模に試験される。これらの系を用いることにより、腫瘍の惹起および発達におけるSRCの効果が試験され、マイトジェネシス、増殖、生存、細胞融合の制御および遊走が含まれる細胞周期のほとんど全ての側面におけるc-SRCの役割が示唆されている。これら過程の全ては、癌進行の間に調節解除される。SRCキナーゼ活性の増大は、ヒトの乳癌において見られている。1つの確認モデルにおいて、ヒトの乳癌細胞株であるMDA-MB-231は、Balb/C-nu/nuマウスの左心室に注入されてよい。c-SRC阻害剤は、p.o.経路により投与され、罹患率および死亡率における効果、ならびに骨および内臓の両方における転移の頻度における効果が調べられてよい。破骨細胞形成および骨再吸収は、破骨細胞活性における効果を立証することが評価される。癌治療にSRC阻害剤を使用することの1つの利点は、マウスにおけるSRCの欠乏が骨細胞形成にのみ影響を与え、他の臓器に影響を与えないと思われることである。
【0236】
アテローム性動脈硬化症のような循環器病は、FMS阻害剤に対する他の潜在的な治療的な使用を提供する。実験的に、FMS阻害剤の効果は、アテローム性動脈硬化症の2匹のマウスモデルにおいて検討されてよい。第1のアプローチにおいて、阻害剤または溶媒対照は、17週間通常の固形飼料を与えられたアポリポタンパク質Eノックアウト(apoE-KO)マウスに与えられる。このモデルにおいて、初期の病変は、細胞内脂質蓄積(AHAタイプII)または細胞外の脂質プール(AHAタイプIII)を用いて、マクロファージに由来する泡沫細胞を含む脂肪線条の組織形態計測的な分析により評価することができ、一方、進行した病変は、細胞外の脂質、脂質コア(AHAタイプIV)および/または線維性の(bifrous)キャップ(AHAタイプVa-c)として見られる。他の評価パラメータには、T細胞およびマクロファージ含量、脂質コア含量、コラーゲン含量およびα-平滑筋アクチン(ASMA)含量を評価する免疫組織化学的な分析が含まれる。他のモデルは、腫瘍を誘発するために13週間コレステロールの高い食事を与えられたLDL-R欠損マウスを利用する。阻害剤は、さらなる13週間の間与えられ、その後、コンピュータ補助のイメージ定量化が、大動脈の壁、内側、および内膜の領域の厚さを測定するために使用される。興味深い他のパラメータは、マクロファージ、脂質、平滑筋細胞(SMC)およびコラーゲン陽性領域である。
【0237】
腎臓の同種移植片拒絶の急性の発症は、補充および局所的な増殖によりマクロファージが移植片中で蓄積した場合に使用されるFMS阻害剤を用いた治療的介入の機会を提供する。マウスモデルにおいて、C57BL/6マウスに由来する腎臓は、Balb/Cマウスに同種移植された。50 mg/kg/日で毎日腹腔内投与することにより手術後すぐに与えられた抗fms抗体は、マクロファージの増殖を82%、間質性マクロファージの蓄積を53%、糸球体マクロファージを71%低下させた。マクロファージは、CD68染色により検出された。さらに、尿細管間質性の拒絶の重篤度は、尿細管炎の減少により示されるように、減少した。尿細管炎の程度は、腎臓の同種移植の病態のBANFF 97分類により定義され、尿細管基底膜の破壊の程度および単核細胞の浸潤の数により、各尿細管の断面を、(1)正常な尿細管、(2)尿細管萎縮、(3)軽い尿細管炎、(4)中程度の尿細管炎および(5)重篤な尿細管炎として評価する。他の測定には、タンパク質の排出についての血清クレアチニン+検尿および骨髄における影響についての全血測定が含まれる。このモデルは、それ故、本発明のようなFMSの他の小分子阻害剤に対する有用な検証である。
【0238】
関節リウマチ(RA)は、受動的な滑膜増殖および炎症細胞の内膜下浸潤により特徴付けられる、慢性の、破壊的な炎症性の多関節の接合疾患である。病因学は解明されないままであるが、一般的に、RAは自己免疫疾患であり、関節炎は、軟骨特異的な自己抗原に対する耐性の低下の結果として生じることが既知である。本明細書中において、動物モデルは、1.タイプIIコラーゲン誘導関節炎(CIA)および2.グラム陽性細菌(LPS)と4のモノクローナル抗体のパネル(mAb)との組み合わせのような自己抗原によりRAの誘発が促進されることを確立した。関節炎の第3のモデルは、アジュバント誘発性の関節炎(AIA)であり、主にラットにおいて行われる。AIAの根底にあるメカニズムは、まだ議論の余地がある。しかしながら、65kDのミコバクテリアの熱ショックタンパク質は、プロテオグリカンのコアタンパク分子においてノナペプチド配列を有することが示され、AIAも自己の抗原により引き起こされ得る疾患であることを示唆する。
【0239】
AIAにおいて、8週齢の年老いたルイスラットに、熱で死滅させたミコバクテリアブチリカムのエマルジョンとして液体パラフィン中に12mg/mlで懸濁することにより調製されるフロイント完全アジュバント(CFA)が与えられる。CFA誘発性の関節炎は、50μlのCFAエマルジョンを足蹠または尾の根元に皮内注射することにより刺激され得る。7日目(関節炎の発症)から、ラットは、毎日、0〜4のスケールの臨床的な関節炎のスコアについて試験される(0、正常;1、最小の腫脹;2、中程度の腫脹;3、重篤な腫脹;4、重篤且つ体重と関係がない)。各肢について、足の中ほど、手首、手の指の関節、脚の中ほど、足首および足の指の関節は、ラット当り48の最大臨床スコアを記録した。動物は17日目に屠殺され、後肢が切断され、7.4%のホルマリン中に固定される。脱灰およびパラフィン中への包埋の後、肢は中間の矢状切片に切片化し、エオシンおよびヘマトキシリンで染色し、パンヌス形成(軟骨および骨の侵食および破壊)、血管分布(CD31染色による血管形成)および単核細胞浸潤(T、B、およびマクロファージ)について顕微鏡で試験される。
【0240】
CIAにおいて、H-2qMHC ハプロタイプを有するDBA/1マウスが、それらがCIAtに対してより感受性である場合に使用される。一般的に、異種性のコラーゲンは、それらが相同性のタイプIIコラーゲンよりも免疫原性/関節炎発生性である場合に使用される。マウスは、1:1の割合のウシタイプIIコラーゲンおよびフロイント完全アジュバント (最終濃度 = 2 mg/ml)からなるエマルジョンで初回抗原刺激を受ける。前記エマルジョン(0.1ml)は、各マウスの尾のつけ根から1〜2cmのところに注入される。真皮の下に、白っぽいボーラスが見えるべきである。タイプIIコラーゲン追加免疫 (マウス当り200μg)は、21日目に、PBS中において腹腔内に投与される。高いCIA-感受性のマウス(DBA/1)は、一般的に、最初の初回抗原刺激から4〜5週間後に関節炎を生じる。赤く、腫大した足を含む完全に発達した関節炎は、発生から3〜5日に観察され、活性な炎症性の関節炎は、3〜4週間以上持続する。炎症は最終的に鎮静するが、強直として見られるような関節障害は持続する。CIA症状の評価は、本質的に、臨床的な徴候が疾患の重篤度に基づいて臨床スコア(0〜4)が割り当てられるAIAモデルと同様である。組織学的な測定は、ホルマリン固定された関節において行われ、エオシン、細胞浸潤および増殖を評価する。
【0241】
混合性のLPS-mAB誘発関節炎において、タイプIIコラーゲンのCB11領域内に位置する83アミノ酸ペプチド断片内にクラスター形成される個々のエピトープを認識するmABカクテルとLPSとの組み合わせにより、重篤で均一な関節炎がマウスにおいて誘発される。このモデルは、GI管を通して吸収される細菌性の毒素が、RAをトリガーすることにおいて、やや関節炎発生性レベルの自己抗体により、タイプIIコラーゲンに対して相乗的且つ病理的な役割を果たすという仮説に基づいて開発された。このモデルの利点は: 1. 同期性の関節炎(100%)が7日以内に急速に誘発されること、2. 抗タイプIIコラーゲンmABカクテルの投与がタイプIIコラーゲンに対する自己抗体の宿主による産生に対する必要性を回避する場合、種々のマウス系統を使用することができ、CIA感受性のMHCハプロタイプを有さないマウスにおいて関節炎を引き起こすことができること、および3. 静脈内または腹腔内経路によりmABおよびLPSを投与する容易さである。
【0242】
クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の炎症により特徴付けられる一群の慢性的な障害を意味する。CDは、消化管のいずれかの部分に影響し得る一方で、UCは、大腸および直腸のみに影響する。UCは、通常S字結腸および直腸において炎症および潰瘍を引き起こす。細胞の浸潤は複雑であり、炎症誘発性のサイトカインは、CDおよびUCの証拠となる。
【0243】
UCの実験モデルは、Leuconostoc spp.から単離されたデキストラン硫酸ナトリウム (3%DSS)を飲料水に投与することにより、Balb/Cマウスにおいて確立される。実験は、相対的に短い時間コース(8日)で行われ、大腸炎の評価のためのパラメータには、体重の減少、便の硬さ、直腸の出血、大腸の長さの短縮、陰窩の障害および結腸環のサイトカイン分析が含まれる。
【0244】
CDにおいて、Balb/Cマウスは、0日目において、剪毛した腹部および足の上皮に2×50μlの5 mg/mlのジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を適用することにより感作される。DNFBは、典型的に、アセトン:オリーブオイル(4:1)において可溶化される。5日目に、マウスは、10%エタノール中6 mg/mlの50μlジニトロベンゼンスルホン酸(DNS)が結腸内に投与される。このマウスは、8日目に屠殺される。測定されるべきパラメータには、全血細胞数の抑制および細胞タイプ、血清中の粘膜マスト細胞プロテアーゼ1(MMCP-1)、結腸ホモジネートにおけるTNFαレベル、便の硬さ、血管透過性ならびに結腸の斑点の数が含まれる。好中球およびマスト細胞の数は、結腸障害の指標となり、細胞流入は、組織学的および顕微鏡的な試験により評価される。
【0245】
本明細書全体において、「含んでなる(comprise)」または「含んでなる(comprises)」もしくは「含んでなる(comprising)」のような変形は、一定の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するが、いずれかの他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の排除を意味するものではないと解されるであろう。
【0246】
本明細書において言及されている全ての出版物は、本明細書の一部として援用される。本明細書中に含まれる文書、行為、物質、装置、論文等は、単に、本発明に対する説明を提供するためのものである。これらのもののいくつかまたは全ては、本願の各特許請求の範囲の優先日前にオーストラリアまたは他の場所に存在する、本発明に関連する分野の先行技術の一部を形成するか、またはその分野における一般的な知識であることを承認するものとして扱われるべきではない。
【0247】
特定の実施形態に示されるように、広く記載された本発明の精神または範囲から離れることなく、多数の変形および/または修飾が本発明に対してなされてよいことは、当業者により理解されるであろう。本発明の実施形態は、それ故、全ての側面において、説明として、限定せずに解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、ならびにその塩、アイソマーおよび/またはプロドラッグ:
【化1】

式中、
QはNR3、OまたはSであり;
Wは、H、3〜8員のシクロアルキル、5〜7員のアリールまたはN、O、S、S(O)およびS(O)2から選択される1〜3のへテロ原子を有するヘテロシクリルであり、ここでのシクロアルキル、リールまたはヘテロシクリルは、R17、置換または非置換のC1〜4 アルキル、OH、NO2、NR7R8、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、SO2C1〜4 アルキル、OC1〜4アルキル、C1〜4アルキル OH、C1〜4アルキルOC1〜4アルキル、C1〜4アルキルNR7R8、CONR7R8、COR9、CO2R9、C3〜8シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく、前記シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルは、置換または非置換のC1〜4アルキルで1〜2回置換されてよく;
Xは、ないか、またはO、NR9、S、SO、SO2、NHCO、CONH、NHCONH、NHCH(CH3)、NHCH(CF3)、NHCH2、N(CH3)CO、N(CH2CH3)CO、N(CH3)CH2、NHSO2、N(CH3)CH(CF3)およびNHC1〜6 アルキレンから選択され、ここで、前記アルキレンの3以内の炭素原子は、任意にNR3、SまたはOで置換され;
Z1〜Z4は、それぞれ独立に、NおよびCR1から選択され、Z1〜Z4のうちの2以下がNであり;
R1は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、CF3、OCF3、置換または非置換のC1〜4アルキルおよび置換または非置換のOC1〜4アルキルから選択され;
R2およびR17は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、置換または非置換のC1〜4アルキルOHおよび置換または非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキルから選択されるか; あるいは、
R2およびR17は、それらが結合する炭素原子と一緒に、置換もしくは非置換のC3〜8シクロアルキルまたは置換もしくは非置換の3〜8員の飽和ヘテロシクリルを形成し;
R3は、Hおよび置換または非置換のC1〜4アルキルから選択され;
AおよびYは、独立に、CR3およびNから選択され;
R4およびR5は、独立に、H、置換または非置換のC1〜4アルキル、CF3、ハロゲンおよびNR9R10から選択され;
R6は、H、ハロゲン、OR11、NR12R13、置換または非置換のC1〜4アルキル、置換または非置換のC1〜4アルキルOH、CO2R9、CONR7R8、S(O)nR14、アリール、またはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、置換もしくは非置換のOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のOC2〜4アルキレンOH、OC2〜4アルキレンNR7R8、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンNR7R8、CONR7R8、CO2R9、NR7COR9、NR7SO2C14 アルキル、N(SO2C1〜4 アルキル)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR9R10、OP(O)(OR7)2、SO2C1〜4 アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロシクリルから独立に選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
nは、0〜2であり;
R7およびR8は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16 COC1〜4アルキルおよび置換もしくは非置換のアリールから選択されるか; または
R7およびR8は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、H、C1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R9およびR10は、独立に、Hおよび置換もしくは非置換のC1〜4アルキルから選択され;
R11は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOHおよび置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンNR7R8から選択され;
R12およびR13は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC2〜4アルキレンOH、COC1〜4アルキル、COアリールおよびCOヘテロシクリルから選択されるか; または、
R12およびR13は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜2のへテロ原子を含み、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜7員のヘテロシクリルを形成し;
R14は、アリールまたはN、O、S、SOおよびSO2から選択される1〜3のへテロ原子を有する5〜7員のヘテロシクリルから選択され、ここでのアリールまたはヘテロシクリルは、置換もしくは非置換のC1〜4 アルキル、OH、NR15R16、ハロゲン、CF3、OCF3、CN、OC1〜4アルキル、OC2〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOH、C1〜4アルキレンOC1〜4アルキル、C1〜4アルキレンNR15R16、CONR15R16、CO2R9、NR7SO2CH3、N(SO2CH3)2、NR7CONR8C1〜4アルキル、SO2NR15R16、OP(O)(OR7)2、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロシクリルから選択される1〜3の置換基で置換されてよく;
R15およびR16は、独立に、H、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOH、置換もしくは非置換のC1〜4アルキルOC1〜4アルキル、COC1〜4アルキルおよびS(O)CH3から選択されるか;または、
R15およびR16は、それらが結合する窒素原子と一緒に、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含むか、置換もしくは非置換のC1〜4アルキル、OR9またはNR9R10で置換されてよい5〜6員のヘテロシクリルを形成する。
【請求項2】
前記式Iの化合物が次式Iaで表される、請求項1に記載の化合物:
【化2】

式中、A、Q、W、Y、X、Z1、Z2、Z3、R2、R4、R6およびR17は、請求項1において定義した通りである。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のQはOまたはNR3であり、ここでのR3は請求項1において定義した通りである化合物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のR2およびR18の一方はHであり、他方はHまたはC1〜4アルキルである化合物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のR4およびR5は共に水素である化合物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のZ2およびZ3は共にCHであり、Z4はCHもしくはC(CH3)であるか、またはZ2およびZ3の一方がNであり、Z4はCHである化合物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のXは、NHCO、NHCH2、NH(CH3)CO、N(CH2CH3)CO、NHSO2、NHCH(CH3)、NHCONH、N(CH3)CH(CF2)またはNR9であり、ここでのR9は請求項1において定義した通りである化合物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の化合物であって、式中のWは、シクロプロピル、フェニル、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含む飽和または不飽和の5または6員のヘテロシクリルであり、ここでのシクロプロピル、フェニルまたはヘテロシクリルは、飽和もしくは不飽和のC1〜4アルキル、OH、NO2、NR7R8、ハロゲン、CF3、CO2R9、OC1〜4アルキル、COR9、SO2 C1〜4アルキルならびにN、OおよびSから選択される1〜2のヘテロ原子を含む飽和もしくは不飽和の5もしくは6員のヘテロシクリルから独立に選択される1〜2の置換基で置換されてよく、R2、R7、R8およびR9は、請求項1において定義した通りである化合物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の化合物であって、前記式Iおよび式Iaの化合物は、次式Ibで表される化合物:
【化3】

式中、A、Q、W、Y、X、Z2、Z3、Z4、R2、R6およびR17は、請求項1において定義した通りである。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物であって、式中のYおよびAの一方はNであり、他方はNR3(ここでのR3は請求項1で定義した通り)であるか、またはYおよびAは共にNである化合物。
【請求項11】
請求項9に記載の化合物であって、式中のR6は、H、ハロゲン、CO2R9、CONR7R8またはフェニル、N、OおよびSから選択される1〜2のへテロ原子を含む飽和もしくは不飽和の5または6員のヘテロシクリルまたは1〜2の酸素原子を含む縮合ヘテロシクリルであり、ここでのフェニルまたはヘテロシクリルは、OC1〜4アルキル、OH、NR7CONR8、NR15R16、SO2NR9R10、OP(O)(OH)2、CO2R9、C1〜4アルキルOH、C1〜4アルキレンNR15R16、またはNおよびOから選択される1〜2のへテロ原子を含む置換もしくは非置換の6員のヘテロシクリルから独立に選択される1〜2の置換基で置換される化合物。
【請求項12】
請求項1または2に記載の化合物であって、Wが置換される場合、置換基の1つは、Xに結合する原子に対してメタ位である化合物。
【請求項13】
請求項1または2に記載の化合物であって、R2およびR17で置換されたメチレンは、Sキラリティーである化合物。
【請求項14】
キナーゼ阻害剤である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物であって、前記キナーゼ阻害剤は、クラスIII PTK受容体ファミリー、KDR、SRC、EphA2、EphA3、EphA8、FLT1、FLT4、HCK、LCK、PTK5 (FRK)、RET、SYK、DDR1またはDDR2である化合物。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物であって、前記クラスIII PTK受容体ファミリーのメンバーは、FMS (CSF-1R)、c-KIT、PDGFRβ、PDGFRαまたはFLT3である化合物。
【請求項17】
Xがアミドまたはスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物を調製する方法であって、次式IIの化合物とWR’(Wは請求項1で定義した通りであり、R'は、NH2、NHR、CO2H、COCl、SO2Cl、CORまたはCHOである)とをカップリングすることにより、R’とDとを縮合させて、請求項1で定義したXを形成すること含んでなる方法:
【化4】

式中、
Dは、NH2、NHRまたはCO2Hであり;
Rは、C1〜4アルキルであり;
Bは、脱離基であり; 且つ、
Z1、Z2、Z3、Z4、R2、R4、R5、R17、Q、YおよびAは、請求項1で定義した通りである。
【請求項18】
請求項1に記載の式Iの化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の式Iの化合物を含んでなるインプラント。
【請求項20】
キナーゼが関与する疾患を治療するための方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物または請求項18に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記キナーゼが関与する疾患は、免疫性および炎症性の疾患;過剰増殖疾患;腎疾患;骨再構築疾患;代謝疾患;および血管疾患である方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記過剰増殖疾患は、癌または新血管新生に関連する疾患である方法。
【請求項23】
キナーゼが関与する疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式Iの化合物または請求項18に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
キナーゼが関与する疾患の治療における、請求項1に記載の式Iの化合物または請求項18に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
キナーゼが関与する疾患の治療における使用のための、請求項1に記載の式Iの化合物または請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項26】
細胞を請求項1に記載の式Iの化合物と接触させることを含んでなる、細胞においてキナーゼを阻害する方法。
【請求項27】
マクロファージ集団を請求項1に記載の式Iの化合物と接触させることを含んでなる、マクロファージ集団の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−509375(P2010−509375A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536562(P2009−536562)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001761
【国際公開番号】WO2008/058341
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509138121)サイトピア・リサーチ・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】