説明

キャブおよび作業機械

【課題】キャブ後部のリアパネルの剛性向上を図ることでキャブ側面に作用した横荷重に対する強度を高めたキャブを提供する。
【解決手段】キャブ16は、キャブ前部から上部にわたって左右部に設けたフロントピラー21と、キャブ後部の左右部に設けたリアピラー22とを備えている。これらの左右のリアピラー22の上部間に後窓23を設け、下部間にリアパネル24を設ける。このリアパネル24は、中空箱形に形成した閉断面形状のパネル本体の内部に水平方向の中空部を形成し、その左右の両端は開口し、これらの左右開口縁を左右のリアピラー22に溶接付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横荷重に対する強度を向上させたキャブおよびこのキャブを設置した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示されるように、油圧ショベルは、下部走行体1に上部旋回体2が旋回可能に設けられ、この上部旋回体2にキャブ3および作業装置4などが搭載されている。この種の作業機械は、不整地、傾斜地などでも作業をするので、上部旋回体2の旋回角度、作業装置4の作業姿勢およびバケット荷重などによっては横転するおそれもありうる。
【0003】
その場合、図7に示されるように作業装置4とは反対側からキャブ3の上部側面に横荷重Fが作用するので、キャブを補強したりキャブの剛性を向上させたりすることが必要である。なお、機体が図7右側へ横転した場合は、キャブ3よりも先に高剛性の作業装置4が横荷重を受けるので、キャブ3に作用する横荷重を考慮する必要がない。
【0004】
この横荷重Fに対するキャブ強度の向上を図る手段としては、図8および図9に示されるように左右のリアピラー5の間に設けられたリアパネル6の下部に、コントローラやウォッシャタンクなどの取付板を兼ねたアウタパネル7をスポット溶接する構造がある。あるいは、キャブ後部のリアパネルに、保護部材の板壁部を平行に配設したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−76383号公報(第4−6頁、図4,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリアパネル6の下部にアウタパネル7をスポット溶接する構造、あるいは、キャブ後部のリアパネルに板壁部を平行に配設したものでは、リアパネル構造の剛性が十分でなく、横荷重Fに対するキャブ強度も十分でない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、キャブ後部のリアパネルの剛性向上を図ることでキャブ側面に作用した横荷重に対する強度を高めたキャブおよびこのキャブを搭載した作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、作業装置に隣接されたキャブにおいて、キャブ後部に設けられた左右のリアピラーと、左右のリアピラーの下部間に設けられた中空箱形に形成されたリアパネルとを具備したキャブである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のキャブにおけるリアパネルが、複数の中空箱形に分割形成されたものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のキャブにおいて、中空箱形に形成されたリアパネルの一部を、外部に開口可能として、収納部としたものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、機械本体と、機械本体に装着された作業装置と、作業装置に隣接して機械本体に設置され機械本体および作業装置を操作するオペレータを保護する請求項1乃至3のいずれかに記載されたキャブとを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、中空箱形に形成されたリアパネルにより、リアパネルの断面係数を上げ、剛性の向上を図ることで、キャブ側面に作用した横荷重に対するキャブ強度を高めることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、複数の中空箱形に分割形成されたリアパネルは、単数の中空箱形のリアパネルより剛性が上がり、キャブ側面に作用した横荷重に対する強度をより高めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、中空箱形に形成されたリアパネルの内部空間を収納部とすることで、内部空間の有効利用を図れる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、作業機械が機械本体の前後方向軸を中心に横転したときに、作業装置のない側からキャブに横荷重が作用した場合であっても、中空箱形に形成されたリアパネルによりキャブ後部の強度が向上されたので、キャブの変形を確実に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図1乃至図4に示された一実施の形態、図5に示された他の実施の形態、図6に示されたさらに別の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
先ず、図1乃至図4に示された一実施の形態を説明すると、図4は、作業機械としての油圧ショベル11を示し、その機械本体12が、下部走行体13と、この下部走行体13上に旋回可能に設けられた上部旋回体14とにより構成され、この機械本体12の上部旋回体14上に、掘削作業などに用いられる作業装置15が設置されるとともに、この作業装置15に隣接して機械本体12の上部旋回体14上に、機械本体12および作業装置15を操作するオペレータを保護するキャブ16が設置されている。
【0017】
作業装置15は、キャブ16の側方に隣接して配置されたブーム17が、上部旋回体14に上下方向回動自在に軸連結されてブームシリンダ17cにより回動され、このブーム17の先端にアーム18が回動自在に軸連結されてアームシリンダ18cにより回動され、このアーム18の先端にバケット19が回動自在に軸連結されてバケットシリンダ19cにより回動される。
【0018】
この作業装置15に隣接されたキャブ16は、図3に示されるように、キャブ前部から上部にわたって、左右部にフロントピラー21が設けられ、キャブ後部には左右のリアピラー22が設けられ、これらの左右のリアピラー22の上部間には後窓23が設けられ、下部間にはリアパネル24が設けられている。
【0019】
このリアパネル24は、図1および図2に示されるように閉じられた中空の垂直断面を有する中空箱形に形成された閉断面形状のパネル本体25の上部に窓枠26が溶接付けされたもので、パネル本体25の内部には水平方向の中空部27が形成され、その左右の両端は開口され、これらの左右開口縁は図3に示されるように左右のリアピラー22に溶接付けされている。
【0020】
リアピラー22の一部には、開口部28が設けられ、この開口部28を通して中空箱形のリアパネル24は外部に開口可能な収納部となっている。すなわち、パネル本体25の中空部27に被収納物29を脱着可能に収納できるように構成されている。例えば、キャブ16内に設置された空調装置(図示せず)の吸込口に外気を導入するためのエアコン用フィルタなどを、リアピラー22の開口部28を通してリアパネル24内に横から抜き差しできるようにしておくとよい。この場合は、パネル本体25に通気孔(図示せず)を穿設しておく。
【0021】
そして、上部旋回体14上に図2に示されるようにマウント部材31を介して固定された床板32に、キャブ16の下部フレーム33を図示されないボルトにより固定するとともに、図2に示されるようにリアパネル24の底部をボルト34により床板32に固定する。
【0022】
このようにして、リアパネル24を中空箱形の閉断面構造とすることにより、リアパネル24の断面係数を上げることができ、一対のリアピラー22の変形を防止する剛性も向上するので、油圧ショベル11が機械本体12の前後方向軸を中心に横転したときに、作業装置15のない側からキャブ16の側面に横荷重Fが作用した場合であっても、中空箱形に形成されたリアパネル24により強度が向上されたキャブ後部により、キャブ16の変形を確実に抑制できる。
【0023】
また、中空箱形構造のリアパネル24は、中空部27を収納空間として利用することもできる。また、中空箱形構造のリアパネル24は、防音、防振、断熱効果もあり、内部に防音材、断熱材を充填すれば、さらにそれらの効果を向上できる。
【0024】
次に、図5は、他の実施の形態を示し、そのリアパネル24は、複数の中空箱形に分割形成された複数のパネル本体25を上下に配置して溶接付けにより一体化したもので、上下のパネル本体25が溶接付けされた中仕切板部35により、単数の中空箱形リアパネルより断面係数をさらに上げ、一対のリアピラー22の変形を防止する剛性もより向上させることができ、キャブ側面に作用した横荷重に対する強度をより高めることができる。
【0025】
次に、図6は、さらに別の実施の形態を示し、そのリアパネル24は、大きさの異なる複数のパネル本体25を上下に配置して溶接付けにより一体化したもので、図5に示されたリアパネル24と同様の効果が得られるとともに、中空部27を大きく形成された下側のパネル本体25には、収納箱としての機能を持たせ、前記エアコン用フィルタだけでなく、配線、配管、工具類などを収納させるようにしても良い。このように、中空箱形に形成されたリアパネル24の内部空間を収納部とすることで、内部空間の有効利用を図れる。
【0026】
本発明は、油圧ショベル用のキャブのみでなく、他の作業機械用、例えばブルドーザ用またはローダ用のキャブにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るキャブの一実施の形態を示す側断面図である。
【図2】同上キャブのリアパネルの断面図である。
【図3】同上キャブの斜視図である。
【図4】本発明に係る作業機械の側面図である。
【図5】同上キャブのリアパネルの他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】同上キャブのリアパネルのさらに別の実施の形態を示す断面図である。
【図7】作業機械が転倒した際にかかる横荷重とキャブの変形について説明する作業機械背面図である。
【図8】従来のキャブを示す斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
【0028】
12 機械本体
15 作業装置
16 キャブ
22 リアピラー
24 リアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置に隣接されたキャブにおいて、
キャブ後部に設けられた左右のリアピラーと、
左右のリアピラーの下部間に設けられた中空箱形に形成されたリアパネルと
を具備したことを特徴とするキャブ。
【請求項2】
リアパネルは、複数の中空箱形に分割形成された
ことを特徴とする請求項1記載のキャブ。
【請求項3】
中空箱形に形成されたリアパネルの一部は、外部に開口可能として、収納部とした
ことを特徴とする請求項1または2記載のキャブ。
【請求項4】
機械本体と、
機械本体に装着された作業装置と、
作業装置に隣接して機械本体に設置され機械本体および作業装置を操作するオペレータを保護する請求項1乃至3のいずれかに記載されたキャブと
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−55445(P2007−55445A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243103(P2005−243103)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】