説明

クリーニングローラの製造方法

【課題】クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有する、クリーニングローラの製造方法を低コストで提供する。
【解決手段】芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラ13の製造方法において、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラ13を円筒状金型14内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体12を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体12中に発生したピンホールを縮小させる。前記熱処理は、好ましくは、80〜200℃に加熱された液体で10〜30分間行われる。前記加熱された液体は、好ましくは、熱水である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する電子写真感光体に接触する帯電ローラにより電子写真感光体の表面を帯電させた後、露光部で露光して静電潜像を形成し、その静電潜像に現像部よりトナーを供給し現像してトナー像を形成し、そのトナー像を記録用紙に転写するように構成した、プリンター、複写機、ファクシミリ、プロッター等の画像形成装置における、前記帯電ローラに接触してトナーを含む異物を除去するクリーニングローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真用感光体(光導電性の感光体)等からなる像担持体を帯電手段で帯電させ、前記像担持体に光書込み等により静電潜像を形成させ、そして、前記像担持体に形成させた静電潜像を現像手段の現像剤で現像して可視画像化した後、前記像担持体上の可視画像を転写手段により転写材に直接(又は中間転写体を介して)転写し、そして、前記転写材に転写された画像を定着して画像を形成する電子写真方式の画像形成装置は、斯界で知られている。この画像形成装置としては、プリンター、複写機、ファクシミリ、及び、プロッターとして実用化されている。
【0003】
近年、電子写真方式の画像形成装置に対する大きな課題として長寿命化が注目されている。この画像形成装置の長寿命化は、電子写真方式の画像形成装置の中心に位置する像担持体の膜減り、帯電手段、及び、転写手段の耐汚染性に対して、より長い時間にわたって、良好な画質形成を持続させるので、画像形成装置のランニングコストの低減に大きな効果をもたらしている。
【0004】
像担持体の膜減りに対しては、帯電手段が大きく影響していることが判明している。前記帯電手段には種々のものがあるが、例えば、接触帯電又は微小空間を持たせた超小ギャップ帯電(近接帯電)がある。この近接帯電は、電気抵抗の調整された弾性体からなる帯電ローラを像担持体に接触又は近接配置させて、従動回転させつつ帯電バイアスを印加するものである。この際の帯電バイアスは、直流(DC)電圧に、該直流電圧の放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する交流(AC)電圧を重畳印加するものであるが、この交流電圧の印加により、像担持体表面の電位は、印加された直流電圧の値に収束するので、結果として、像担持体表面の均一帯電を可能にするものとなる。しかしながら、前述した接触帯電又は近接帯電は、像担持体と帯電ローラとの微小空間に生じるパルス放電により像担持体表面を帯電させるものであるので、像担持体表面を常時エッチングしている状態となり、そのために、像担持体の膜減りをより加速してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、従来においては、像担持体の膜減りを低減させるために、像担持体へ潤滑材を塗布する手段が取られている。この像担持体へ潤滑材を塗布する手段によれば、例えば、像担持体のクリーニング装置、又は、独立した系からなる固体潤滑材塗布装置を用いて、像担持体の表面に潤滑層を形成させるので、像担持体の膜削れを低減させることができる。前記固体潤滑材としては、ステアリン酸亜鉛がある。しかしながら、前記像担持体へ潤滑材を塗布する手段には、以下に示すような問題が存在する。即ち、固体潤滑材を像担持体に塗布する場合には、クリーニングブレードに代表されるクリーニング手段との摩擦係数を低くし安定化させることができるが、このクリーニング手段との摩擦係数を低くし安定化させることによって、前記クリーニングブレードからわずかずつ漏れていくので、トナー(ブレードすり抜けトナー)の量が増加してしまう、という問題が生じた。即ち、像担持体の寿命を確保するあまり、帯電装置の汚れを誘うクリーニング装置からの漏れトナーが増えてしまうという、という問題が新たに生じてしまうことになる。
【0006】
近年の画像形成装置における作像手段には、交換性、及び、メンテナンス性を重視して、像担持体とその回りの装置を一体にさせた構成したプロセスカートリッジ構成を採るものが多い。それ故、像担持体だけの寿命向上だけではカートリッジの寿命向上にならない。即ち、像担持体のみならず像担持体の周りを構成する装置についても寿命を向上させるための対策が必要となってきている。
【0007】
さらに、近年、市場における高画質化の要求から重合トナーを採用したプリンターや複写機等の画像形成装置が発売されているが、一般的に重合トナーはクリーニングが困難であり、上記装置の寿命アップは従来の粉砕トナーよりハードルが高くなっている。この残留トナーの除去方式には、主にウレタンゴムを用いたブレード方式、逆電荷を与える転写方式など、様々な方式が実用化されているが、その中でも回転ブラシによる除去方式は比較的安価で、取り扱いも容易なため多用されている。また、その効率を上げるため、織物以外にも植毛密度の高い静電植毛されたローラを使うなどの多くの工夫もされている。
【0008】
近年、植毛された回転ブラシに替わり、スポンジ状材質を使用したクリーニングローラを用いてクリーニングを行なう方式が主流となりつつあるが、中でもメラミンスポンジ材は、そのトナー除去効率と長寿命との面から、また、一度付着したトナーを簡便に取り除き再利用できる性質を利用した低負荷クリーニング方式の面から、多く使用されるようになってきている。
【0009】
このようなスポンジ状材質を使用したクリーニングローラに関する技術としては、(イ)「メラミンスポンジのブロックを所定角柱状に裁断する第1工程と、該角柱状材の断面中心部に長手方向に向かい精密穴加工による貫通穴をあける第2工程と、該角柱状材の貫通穴に予め準備された芯金を挿入して加熱接着し素材Aとする第3工程と、該素材Aのメラミンスポンジ角柱材の外周を所定外径に精密予備研削し素材Bとする第4工程と、前記素材Bをさらに、所定の円筒状金型内に圧入し、所定温度、時間加熱する第5工程と、冷却後円筒状金型より抜出した素材Cの外周をさらに精密仕上げ研削しローラクリーナー製品とする第6工程よりなることを特徴とするローラクリーナーの製造法。」(請求項1)に関する技術(特許文献1)、及び、(ロ)「メラミン樹脂発泡体の成形時にホルムアルデヒドをメラミン樹脂発泡体から除去するメラミン樹脂発泡体のホルムアルデヒド除去方法であって、前記メラミン樹脂発泡体に加水し、該発泡体の気泡内に水分を供給するとともに、前記メラミン樹脂発泡体を100℃以上に加熱し、前記メラミン樹脂発泡体内の気泡を圧縮し、気泡内の水分に溶出したホルムアルデヒドを該水分の水蒸気と一緒に前記メラミン樹脂発泡体から該発泡体外に放出せしめることを特徴とするメラミン樹脂発泡体のホルムアルデヒド除去方法。」(請求項1)に関する技術(特許文献2)が提案されている。
【0010】
前記特許文献1及び特許文献2には、メラミンスポンジをクリーニングローラとして用いると、像担持体、帯電部材、及び、転写部材に付着した残留トナー、紙粉等の汚染物の除去性が向上するので、メラミンスポンジを用いたクリーニングローラが上記寿命アップ策として良好な手段であることが報告されている。
【0011】
前記メラミンスポンジは、数十〜数百ミクロンのセルが連なって形成された三次元網目状構造有するスポンジであるが、小さな異物をその網の表面に吸着し、また、空間的な連なりにより多くの異物を収容することができるので、電子写真方式の画像形成装置等のクリーニングローラとして有用な材料となっている。しかしながら、前記メラミン樹脂を発泡成形したメラミンスポンジは、稀に直径数mm程度の大きな球状セルが発生することがある。この球状セルは、「ピンホール」とよばれているが、そのピンホールが存在する箇所は、当然ながら被クリーニングローラと接触しないので、クリーニングの機能を果さない。それ故、かかるピンホールを有するクリーニングローラは、不良品となるので、破棄することになる。通常、クリーニングローラを作製する時は、大きなブロック状のメラミンスポンジから必要な大きさだけ切り出し、この切り出したメラミンスポンジを支持部材に接着剤によって接着した後、その部品精度を出すために切削、研削を行なう。したがって、クリーニングローラの接触面にそのピンホールが存在するか否かは、切削や、研削を行った後でしか判断できないので、破棄する際のコストデメリットが大きくなる。
【0012】
メラミン樹脂を発泡成形したメラミンスポンジは、元来コピー機やプリンターなどの精密機器用に開発されていない材料であるがゆえ、発泡倍率にばらつきがあり、前述したように精密機器で使用するには致命的なサイズのピンホールが多く存在する。直径φ3(mm)以上の大きな欠落については、部品のレベルで選別を行なうことは可能であるが、直径φ1〜3(mm)程度のピンホールは多数存在しうる。これらのピンホールの存在は、クリーニング対象部材の接触面積を減らすことになるので、部分的なクリーニング性の低下によって帯電不良及び転写不良が発生することになる。前記帯電不良及び転写不良の発生は、特に、カラーの電子写真においては色むらとなって現れるので、コピー、プリンターの品質の画質に対して致命的となる。
【0013】
さらに、メラミンスポンジ素材単体における強度や耐久性にも若干の難がある。これはクリーニングプロセスでの寿命低下に繋がる懸念事項になる。ところが、この発泡密度の不均一性や材料単体の強度については、素材における対策は不可能であることがわかっているので、現時点においては、これらを解消するために200℃以上の高温加熱で圧縮成形して、スポンジ材の強度向上やピンホールの縮小を行なっている。
【0014】
しかしながら、この方法においては、副作用が発生する。即ち、メラミンスポンジに高温加熱処理を施すと、メラミンスポンジの分解も同時に起こるので、還元性の低分子が発生し、そのために、このメラミンスポンジをそのまま使用すると感光体に悪影響を及ぼすという問題があった。したがって、還元性の低分子を除去するために水洗による洗浄、それに付随するスポンジ材水分の乾燥工程を踏まなくてはならないので、生産効率が悪くなるという問題があった。また、メラミンスポンジは、元来断熱材として開発されたものであるので、耐熱性があるが、メラミンスポンジを圧縮する工程では、高温加熱を長時間行なう必要があるので、メラミンスポンジそのものに劣化が発生し、そのために、メラミンスポンジの強度及び耐久性が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2005−241906号公報
【特許文献2】特開2004−211011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0016】
即ち、本発明は、クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有する、クリーニングローラの製造方法を低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、
芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラを円筒状金型内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体中に発生したピンホールを縮小させる
ことを特徴とするクリーニングローラの製造方法である。
【0018】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理することを特徴とするものである。
【0019】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理することを特徴とするものである。
【0020】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすることを特徴とするものである。
【0021】
請求項5に記載された発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記熱水を前記円筒状金型内に圧入された前記クリーニングローラの一端から流して熱処理することを特徴とするものである。
【0022】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記円筒状金型を脱型した後に前記クリーニングローラを回転させて脱水することを特徴とするものである。
【0023】
請求項7に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記クリーニングローラの一端から前記熱水を流して熱処理した後に100℃以上の熱風を通すことを特徴とするものである。
【0024】
請求項8に記載された発明は、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、
ローラ形状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を2枚の板の間に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体に発生したピンホールを縮小させる
ことを特徴とするクリーニングローラの製造方法である。
【0025】
請求項9に記載された発明は、請求項8に記載された発明において、前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理することを特徴とするものである。
【0026】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載された発明において、前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理することを特徴とするものである。
【0027】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載された発明によれば、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラを円筒状金型内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体中に発生したピンホールを縮小させるので、クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法を低コストで提供することができる。
【0029】
請求項2,9に記載された発明によれば、前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理するので、コストを低く抑えることができる。
【0030】
請求項3,10に記載された発明によれば、前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理するので、前記メラミン樹脂発泡体にスプリングバックによる変形を生じさせないと共に、前記メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じさせないで、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0031】
請求項4,11に記載された発明によれば、前記熱水での熱処理時間を10〜30分とするので、前記メラミン樹脂発泡体にスプリングバックによる変形を生じさせないと共に、前記メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じさせないで、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0032】
請求項5に記載された発明によれば、前記熱水を前記円筒状金型内に圧入された前記ローラの一端から流して熱処理するので、前記メラミン樹脂発泡体を省スペースで熱処理することができ、そのために、生産効率が高くなる。
【0033】
請求項6に記載された発明によれば、前記円筒状金型を脱型した後に前記クリーニングローラを回転させて脱水するので、効率的に脱水することができ、そのために、生産効率が高くなる。
【0034】
請求項7に記載された発明によれば、前記クリーニングローラの一端から前記熱水を流して熱処理した後に100℃以上の熱風を通すので、効率的に脱水することができ、そのために、生産効率が高くなる。
【0035】
請求項8に記載された発明によれば、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、ローラ形状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を2枚の板の間に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体に発生したピンホールを縮小させるので、クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法を低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程の流れを説明する説明図である。図2は、本発明の他の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程の流れを説明する説明図である。図3は、本発明の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程を説明する断面説明図である。図4は、本発明の他の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程を説明する断面説明図である。図5は、加熱された液体で熱処理するために芯金を有するメラミン樹脂発泡体を円筒状金型へ挿入した状態を示す説明図である。図6は、熱水で熱処理するために芯金を有するメラミン樹脂発泡体を円筒状金型へ挿入した状態を示す説明図である。図7は、円筒状金型へ挿入した芯金を有するメラミン樹脂発泡体を50%に圧縮した時の加熱媒体別の温度と圧縮率(高さ)との関係を示すグラフである。図8は、2枚の板の間にローラ状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を50%に圧縮した時の加熱媒体別の温度と圧縮率(高さ)との関係を示すグラフである。
【0038】
[A]本発明は、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法である。本発明のクリーニングローラの製造方法においては、図5に示されているように、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラを円筒状金型14内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体12を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体12中に発生したピンホールを縮小させる。
【0039】
このように、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラの製造方法において、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラを円筒状金型14内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体12を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体12中に発生したピンホールを縮小させると、クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体12におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラの製造方法を低コストで提供することができる。
【0040】
図1に示されるように、前記本発明のクリーニングローラの製造方法(工程A)は、裁断工程1a、穴加工工程2a、芯金接着工程3a、予備研削工程4a、メラミン樹脂発泡体圧縮工程5a、脱液工程6a、加熱脱液工程7a、及び、研削工程8aを順次有している。即ち、図3に示されるように、前記本発明のクリーニングローラの製造方法は、メラミン樹脂発泡体のブロックを所定角柱状材(1aa)に裁断又は所定円柱状材(1ab)にくり抜く裁断工程1aと、前記角柱状材(1aa)又は前記円柱状材(1ab)の断面中心部に長手方向に向かい精密穴加工による貫通穴をあけて貫通穴を有する角柱状材(2aa)又は貫通穴を有する円柱状材(2ab)を形成する穴加工工程2aと、前記角柱状材(2aa)又は前記円柱状材(2ab)の貫通穴に予め準備された芯金を挿入して加熱接着し、芯金を有する該角柱状材(3aa)又は芯金を有するローラ(3ab)を形成する芯金接着3aと、前記角柱状材(3aa)のメラミン樹脂発泡体の外周を所定外径に精密予備研削してローラ(4aa)に形成する予備研削工程4aと、前記ローラ(4aa)及びローラ(3ab)を所定の円筒状金型内に圧入して、所定の液体を用いて所定の温度で所定時間にわたって加熱することにより、圧縮したローラ(5aa)とするメラミン樹脂発泡体圧縮5aと、前記円筒状金型より抜出した後にメラミン樹脂発泡体に含有された前記液体を脱液する脱液工程6aと、前記脱液工程6aを経たローラに残留した液体を蒸発させてローラ(7aa)を得る加熱脱液工程7aと、前記ローラ(7aa)の外周を研削して精密仕上げ処理を施すことによりクリーニングローラ(8aa)とする研削工程8aと、を順次有している。
【0041】
本発明のクリーニングローラの製造方法においては、メラミン樹脂発泡体は、予め、成形されてブロック状に切り出されたものが用いられる。前記クリーニングローラの製造方法においては、ローラ(3ab)又はローラ(4aa)の外径寸法D4aに対するローラ(5aa)の外径寸法D5aとの差の割合を圧縮率αaとすると、その値は、使用する金型と液体の温度、浸漬時間の設定により、10〜60%まで自由に決定できる。前記圧縮率αaは、次の数1で示される。
【0042】
【数1】

【0043】
また、本発明においては、前記加熱された液体として、好ましくは、熱水を用いて熱処理する。このように、前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理すると、製造コストを低く抑えることができる。
【0044】
また、本発明においては、前記熱水の温度を、好ましくは、80〜200℃、さらに好ましくは、80〜120℃、として熱処理する。前記熱水の温度を80℃未満とすると、スプリングバック、即ち、圧縮したメラミン樹脂発泡体が圧縮する前の形状に戻ろうとする現象、が生じ、また、前記熱水の温度を200℃を超えるものとすると、メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じるが、前記熱水の温度を80〜200℃とすると、前記メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じさせないで、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができる。また、前記熱水の温度を80〜120℃とすると、加熱装置を大型にしなくても済むので、熱処理コストを下げることができる。したがって、本発明のように、前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理すると、前記メラミン樹脂発泡体にスプリングバックによる変形を生じさせないと共に、前記メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じさせないで、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0045】
また、本発明においては、前記熱水での熱処理時間を、好ましくは、10〜30分とする。このように、前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすると、前記メラミン樹脂発泡体にスプリングバックによる変形を生じさせないと共に、前記メラミン樹脂発泡体に熱による劣化を生じさせないで、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0046】
次ぎに、前記Aに記載した本発明の「クリーニングローラの製造方法」についてさらに詳細に説明する。図3において、1aaは、メラミンスポンジMFを小角状に切り出した角柱状材を示す。1abは、メラミン樹脂発泡体MFを円柱状に切り出した円柱状材を示す。ここでD1aaは、切り出した角柱状の1辺の長さを示し、D1abは、切り出した円柱の直径を示すものとする。また、図に示していないが、L1aa、L1abは、長手方向の長さを示すものとする。また、2aaは、前記角柱状材1aaの中心に芯金を挿入するための貫通穴をあけた角柱状材を示す。前記2abは、前記1abの中心に芯金を挿入するための貫通穴をあけた円柱状材を示す。前記3aaは、前記角柱状材2aaに芯金を挿入し接着した角柱状材を示す。同様に、前記3abは、前記円柱状材2abに芯金を挿入し接着した円柱状材を示す。4aaは、前記角柱状材3aa又は前記円柱状材3abを予備研削したローラを示す。また、このローラ4aaの外径は、D4aである。5aaは、前記ローラ4aaを円筒形状金型によって圧縮したローラを示す。また、このローラ5aaの外径は、D5aである。前記7aaは、前記ローラ5aaを加熱脱水したローラを示す。前記8aaは、前記ローラ7aaに仕上げ研削処理を施したローラ、即ち、クリーニングローラを示す。
【0047】
メラミン樹脂発泡体は、ポリウレタンスポンジやナイロンスポンジなどに比べて、スポンジ構成材の繊維が細くて堅いが、発泡成形体材としての機械的強度が弱くて脆い。また、メラミン樹脂発泡体は、多孔率が大きいので、残余トナーの掻き落としをする清浄効果が極めて優れている。前記裁断工程1aにおいては、メラミンスポンジMF(メラミン樹脂発泡体)をバーチカルカッターで裁断して角柱状材1aa又は円柱状材1abを得る。前記角寸法D1aaは、狙いの圧縮率αaにより異なる。前記穴加工工程2aにおいては、前記角柱状材1aa又は円柱状材1abの中心位置にパイプ状穴あけ器で芯金挿入用の精密な貫通穴をあける。前記芯金接着工程3aにおいては、前記貫通穴に予め精密作成されたホットメルト接着剤を塗布された金属性芯金を挿入して、加熱接着することにより、前記メラミン樹脂発泡体を芯金に固定した角柱状材3aa又は円柱状材3abを得る。前記予備研削工程においては、精密に予備研削された外径D4aは、完成ローラの外径D8aに、圧縮率αa、精密仕上げ加工代、及び、圧縮工程における圧縮処理後の外径スプリングバック量(約2〜10%)を加算した寸法に加工される。メラミン樹脂発泡体圧縮工程は、本発明における最も重要な工程である。即ち、前記予備研削したローラ4aaを、例えば、肉厚t=2.0mm、直径17mmのアルミ製の円筒金型(図5における13を参照。)へ圧入する。その後、下記に示す[工程Aの具体化条件]による溶媒により加熱処理をおこない、メラミン樹脂発泡体に圧縮率αaの圧縮処理を施して圧縮したローラ5aaを得る。前記脱液工程6aにおいては、前記ローラを高速回転及び/又はエアーにより脱水する。前記加熱脱液工程7aにおいては、芯金及びメラミン樹脂発泡体の余熱により液体を蒸発させるために、所定の時間放置する。そして、研削工程8aにおいては、最終的な精密仕上げ研削処理を施して、所要のクリーニングローラの外径寸法D8aに最終的に仕上げる。
【0048】
[工程Aの具体化条件]
メラミン樹脂発泡体:BASF バソテクト (白)
(硬度:Asker−Fタイプ スポンジ硬度60)
出来上がり寸法:D8a=14、16.5、18、20、25mm
:L=280mm、330mm、355mm
(芯金d=6mmφ、l=340mm)
接着剤:ホットメルト形接着剤
圧縮率αa:20、30、40、50、60%
加熱媒体:水、エタノール、トルエン
精密仕上げ研削後放置時間:3日
【0049】
(実施例1)
図5に示すように、芯金11の表面にメラミン樹脂発泡体12を有するクリーニングローラ13を円筒状金型13へ挿入した後、円筒状金型14ごと溶媒で満たしたステンレスの容器(図示せず)へ沈めて、加熱圧縮処理を施した。前記円筒状金型14を前記ステンレスの容器に沈めた後5分放置し、次ぎに、これを恒温槽へ投入し各温度に達してから1時間放置した。その後、溶媒を飛ばし3日間の養生を経たときの外径D5aについて調査した。その結果は、温度と高さ(圧縮率)との関係として、図7に示される。リファレンスは、メラミン樹脂発泡体12をつぶした状態でオーブンへ投入して所定時間放置したものである。図7より、従来における熱風を使用するものよりも、本発明のように、比較的温度の低い加熱された液体を使用するものの方が、比較的低い温度で戻りが少なく生産できることが分かる。これは、液体であるがゆえのメラミン樹脂発泡体12への浸透性の良さと、メラミン樹脂発泡体12が親水性を持っているためである。特に、熱水を用い、80℃〜200℃であるとき、効果的な圧縮が期待できる。
【0050】
また、熱水の含浸時間についての検討を行なったところ同様の結果が得られた。即ち、図6に示すように、円筒状金型24の一端に給湯口25を押し付けて、これに熱水を通した。前記熱水は、10分間で通し、30分間放置して湯を切り、その後、円筒状金型24より芯金21の表面にメラミン樹脂発泡体22を有するクリーニングローラ23を取り出した。さらに、このクリーニングローラ23を乾燥するために室温環境で30分間放置した。この生産方式によれば、恒温槽の必要がなくなるので、より効率的な生産が可能になる。次に、円筒状金型24の一端に給湯口25を押し付けて、これに熱水を通した。前記熱水は、10分間で通し、円筒状金型24よりクリーニングローラ23を取り出した。次ぎに、このクリーニングローラを高速で回転させて、遠心力によりメラミン樹脂発泡体から水分を除去した。その後、前記クリーニングローラを室温環境で10分間放置した。この生産方式によれば、恒温槽の必要がなくなるので、より効率的な生産が可能になる。次に、上記のように、円筒状金型14の一端に給湯口15を押し付け、これに熱水を通した。前記熱水は、10分間で通し、その後、熱水の代わりに100℃の温風が1分間吹き込まれた。そして、円筒状金型24よりクリ−ニングローラ23を取り出した。この生産方式によれば、クリーニングローラ23の乾燥時間が短くなるので、より効率的な生産が可能になる。
【0051】
[B]本発明は、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法である。本発明のクリーニングローラの製造方法においては、ローラ形状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を2枚の板の間に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体に発生したピンホールを縮小させる(図示せず)。
【0052】
このように、ローラ形状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を2枚の板の間に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体に発生したピンホールを縮小させると、クリーニングローラに対する清浄効果を損じることなく、該クリーニングローラを構成するメラミン樹脂発泡体におけるピンホールによる歩留りを改善した、芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法を低コストで提供することができる。
【0053】
図2に示されるように、前記本発明のクリーニングローラの製造方法(工程B)は、メラミン樹脂発泡体圧縮工程1b、裁断工程2b、脱液工程3b、加熱脱液工程4b、裁断工程5b、穴加工工程6b、芯金接着工程7b、予備研削工程8b、研削工程9bを順次有している。即ち、図4に示されるように、本発明のクリーニングローラの製造方法は、高さ(Hb1)のメラミン樹脂発泡体(1b1)を所定の金型へ押し込み、所定の液体を用いて所定温度、時間加熱し、圧縮した高さ(Hb2)のブロック(1b2)を得るメラミン樹脂発泡体圧縮工程1bと、メラミン樹脂発泡体のブロック(1b2)をバーチカルカッター等で裁断してシート(2b)を得る裁断工程2bと、前記シート(2b)を脱液する脱液工程3bと、前記脱液したシートを加熱乾燥する加熱脱液工程4bと、前記加熱乾燥したシートを所定角柱状材(5ba)に裁断又は所定円柱状材(5ba)に裁断する裁断工程5bと、前記所定角柱状材(5ba)に裁断又は所定円柱状材(5bb)に精密穴加工による貫通穴を開けて貫通穴を有する角柱状材(6ba)又は貫通穴を有する円柱状材(6bb)を得る穴加工工程6bと、前記角柱状材(6ba)又は前記円柱状材(6bb)の貫通穴に予め準備された芯金を挿入して加熱接着して、前記芯金を有する前記角柱状材(7ba)又は芯金を有するローラ(7bb)とする芯金接着工程7bと、前記角柱状材(7ba)のメラミン樹脂発泡体の外周を所定外径に精密予備研削してローラ(8ba)とする予備研削工程8bと、前記ローラ(8ba)及びローラ(7bb)の外周を研削して精密仕上げ処理を施すことにより、クリーニングローラ(8aa)及びクリーニングローラ(8ab)とする研削工程9bと、を順次有している。
【0054】
前記クリーニングローラの製造方法(工程B)においては、ブロック(1b1)の高さHb1に対する、メラミン樹脂発泡体のブロック(1b2)の高さ(Hb2)との差の割合を圧縮率αbとすると、その値は、前記αaと同様に、使用する金型と液体の温度、浸漬時間の設定により、10〜60%まで自由に決定できる。前記圧縮率αbは、次の数2で示される。
【0055】
【数2】

【0056】
また、本発明においては、前記加熱された液体として、好ましくは、熱水を用いて熱処理する。このように、前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理すると、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0057】
また、本発明においては、前記熱水の温度を、好ましくは、80〜200℃、さらに好ましくは、80〜200℃として熱処理する。このように、前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理すると、前記メラミン樹脂発泡体を効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをいっそう低く抑えることができる。
【0058】
また、本発明においては、前記熱水での熱処理時間を、好ましくは、10〜30分とする。このように、前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすると、前記メラミン樹脂発泡体をさらに効率的に圧縮することができ、そのために、製造コストをさらに低く抑えることができる。
【0059】
次ぎに、前記Bに記載した本発明の「クリーニングローラの製造方法」についてさらに詳細に説明する。図4において、1b1は、メラミンスポンジMFを角状に切り出したメラミン樹脂発泡体を示す。Hb1は、切り出した角柱状の高さを示す。1b2は、圧縮後のメラミンスポンジを示す。Hb2は、圧縮後のメラミンスポンジの高さを示す。2bは、1b2を所定の厚さにスライスしたメラミンスポンジのシートを示す。5baは、前記シート2bを角柱状にスライスした角柱状材を示し、5bbは、円柱状に切り出した円柱状材を示す。6baは、角柱状材5baの中心に芯金を挿入するための貫通穴をあけた角柱状材を示す。6bbは、円柱状材5bbの中心に芯金を挿入するための貫通穴をあけた円柱状材を示す。7baは、角柱状材6baに芯金を挿入し接着した角柱状材を示す。同様に7bbは、円柱状材6bbに芯金を挿入し接着した円柱状材を示す。8baは、角柱状材7ba又は円柱状材7bbを予備研削して得た円柱状材を示す。9baは、円柱状材8baを仕上げ研削をして得たクリーニングローラを示す。
【0060】
前記スポンジ圧縮工程1bにおいては、下記に示す[工程Bの具体化条件]によるメラミン樹脂発泡体に圧縮率αbの圧縮処理を施す。まず、メラミンスポンジMFをバーチカルカッター等で角状に切り出した角状材1b1を得る。この際、角状材1b1の高さはHb1であり、圧縮後の角状材1b2の高さはHb2となる。角状材Hb1と角状材Hb2の寸法は、狙いの圧縮率αbにより異なる。溶媒が滴らない程度に放置した後、圧縮された角状材1b2をハンドリング性の改善のためにシート状にカットする裁断工程2bを経て、シート状のメラミン樹脂発泡体2b1を得る。その後、シート状のメラミン樹脂発泡体2bを、例えば、遠心脱水機を用いて脱水し、例えば、100℃のオーブンへ2時間放置して乾燥させる。次に、前記乾燥させたメラミン樹脂発泡体2bを角状又は円柱状に切断して角柱状材5ba又は円柱状材5bbを作成する。芯金穴形成工程6bにおいて、角柱状材5ba又は円柱状材5bbの中心位置に芯金挿入用の精密な貫通穴をあけ、図4に示す角柱状材6ba又は円柱状材6bbを得る。前記角柱状材6ba又は前記円柱状材6bbにできた貫通穴に、予め精密作成され、ホットメルト接着剤を塗布された金属性芯金を挿入して、加熱接着することにより、前記メラミン樹脂発泡体を芯金に固定して、角柱状材7ba又は円柱状材7bbを得る。円柱状材8baは、前記角柱状材7ba又は前記円柱状材7bbの外周を予備研削して得る。円柱状材7bbの場合には、7bbと8baとは同一となる。この予備研削により加工された円柱状材8baを精密に研削して、目的のクリーニングローラ9baを得る。
【0061】
[工程Bの具体化条件]
メラミン樹脂発泡体材料:BASF バソテクト (白)
(硬度:Asker−Fタイプ スポンジ硬度60)
Hb1(高さ)=600mm、縦×横=600mm×600mm
出来上がり寸法:D8a=16.5mm
:L=330mm
(芯金d=6mmφ、l=340mm)
接着剤:ホットメルト形接着剤
圧縮率αa:20、30、40、50、60%
加熱媒体:水、エタノール、トルエン
精密仕上げ研削後放置時間:3日
【0062】
(実施例2)
2枚の板をメラミン樹脂発泡体1b1の上下から挟み、圧縮率50%まで押しつぶした状態で、所定の溶媒を入れた620×620×700の加圧可能なステンレスの容器にゆっくり沈めた。沈めた後5分放置して、恒温槽へ投入し各温度に達してから1時間放置した。その後、溶媒を飛ばし3日間の養生を経たときの高さHb1について調査した。その結果は、温度と圧縮率との関係として、図8に示す。使用した溶媒は、熱水、エタノール、トルエンであり、リファレンスとして従来の熱風による圧縮の結果を示した。リファレンスは、メラミン樹脂発泡体をつぶした状態でオーブンへ投入し所定時間放置したものである。図8より、従来における熱風を使用するものよりも、本発明のように、温度の低い液体を使用するものの方が、低い温度で戻りが少なく生産できることが分かる。これは、液体であるがゆえのメラミン樹脂発泡体への浸透性の良さと、メラミン樹脂発泡体が親水性を持っているためである。特に、熱水を用い、80℃〜200℃であるとき、効果的な圧縮が期待できる。
【0063】
次に、熱水の含浸時間を検討したところ、次の表1に示す結果が得られた。
【0064】
【表1】

【0065】
表1によると、10分以降では、圧縮率に大きな影響を与えないことが分かった。生産効率からも10分から30分程度の液体(熱水)の含浸が効果的である。
【0066】
以上、実施例で得られたクリーニングローラを搭載したユニットを有する画像形成装置(IMAGIO MP C3300、リコー社製)で試験したところ、クリーニング不良の発生するまでの枚数が10%向上した。これは、圧縮方式で無理な熱がかからないためメラミンスポンジの劣化が少なく良好なクリーニング性能を長く保持できたためである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程の流れを説明する説明図である。
【図2】本発明の他の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程の流れを説明する説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程を説明する断面説明図である。
【図4】本発明の他の一実施の形態を示すクリーニングローラの製造方法における製造工程を説明する断面説明図である。
【図5】加熱された液体で熱処理するために芯金を有するメラミン樹脂発泡体を円筒状金型へ挿入した状態を示す説明図である。
【図6】熱水で熱処理するために芯金を有するメラミン樹脂発泡体を円筒状金型へ挿入した状態を示す説明図である。
【図7】円筒状金型へ挿入した芯金を有するメラミン樹脂発泡体を50%に圧縮した時の加熱媒体別の温度と圧縮率(高さ)との関係を示すグラフである。
【図8】2枚の板の間にローラ状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を50%に圧縮した時の加熱媒体別の温度と圧縮率(高さ)との関係高さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
11,21 芯金
12、22 メラミン樹脂発泡体
13,23 クリーニングローラ
14,24 円筒状金型
25 給湯口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、
芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラを円筒状金型内に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体中に発生したピンホールを縮小させる
ことを特徴とするクリーニングローラの製造方法。
【請求項2】
前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理することを特徴とする請求項1に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項3】
前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理することを特徴とする請求項2に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項4】
前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすることを特徴とする請求項3に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項5】
前記熱水を前記円筒状金型内に圧入された前記クリーニングローラの一端から流して熱処理することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項6】
前記円筒状金型を脱型した後に前記クリーニングローラを回転させて脱水することを特徴とする請求項5に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項7】
前記クリーニングローラの一端から前記熱水を流して熱処理した後に100℃以上の熱風を通すことを特徴とする請求項5に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項8】
芯金の表面にメラミン樹脂発泡体を有するクリーニングローラの製造方法において、
ローラ形状に裁断する前のメラミン樹脂発泡体を2枚の板の間に圧入し、前記メラミン樹脂発泡体を加熱された液体で熱処理して、前記メラミン樹脂発泡体に発生したピンホールを縮小させる
ことを特徴とするクリーニングローラの製造方法。
【請求項9】
前記加熱された液体として熱水を用いて熱処理することを特徴とする請求項8に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項10】
前記熱水の温度を80〜200℃として熱処理することを特徴とする請求項9に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項11】
前記熱水での熱処理時間を10〜30分とすることを特徴とする請求項10に記載のクリーニングローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−48880(P2010−48880A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210732(P2008−210732)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】