説明

クリームはんだ印刷装置

【課題】設備コストの増大や設備の大型化を伴うことなく、クリームはんだを基板に十分な位置精度を確保しつつ塗布することが可能なクリームはんだ印刷装置を提供する。
【解決手段】クリームはんだ印刷装置1に、クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部24・24・・・が形成されたステンシルマスク2と、該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージ3と、該スキージに連動して該ステンシルマスクに衝撃を付与するハンマリング機構4と、を具備した。また、該ステンシルマスクの開口部の壁面に凹凸を形成し、かつ、該凹凸の凸部24a・24a・・・の間隔をクリームはんだに含まれるはんだ粒200の平均粒径の二分の一以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にクリームはんだを塗布するはんだ印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にクリームはんだを塗布するはんだ印刷装置は公知となっている。
このようなはんだ印刷装置は、通常はステンシルマスクとスキージを具備し、ステンシルマスクの上面に沿ってスキージを摺動させることにより、ステンシルマスクの上面に供給されたクリームはんだを該ステンシルマスクに形成された開口部に供給する。
該開口部はステンシルマスクの上面と下面とを貫通しており、該下面に当接している基板において該開口部に対応する部分にはんだが塗布される。
【0003】
近年、基板の集積化に伴い、基板に実装される電子部品の端子の個数の増加および端子間距離の狭小化が進んでいる。従って、ステンシルマスクの開口部の数が増加するとともに、個々の開口部が小さくなる傾向にある。
しかし、ステンシルマスクの開口部が小さくなると、クリームはんだ自身の粘性によりクリームはんだが開口部の壁面に付着し、基板側に塗布されないという問題が発生する。
このようなクリームはんだの塗布不良を解消するはんだ印刷装置としては、特許文献1、特許文献2および特許文献3、特許文献4および特許文献5に記載のはんだ印刷装置が挙げられる。
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載のはんだ印刷装置は、いずれも超音波振動板や圧電素子等の振動手段をステンシルマスクに設けてステンシルマスクを振動させることにより、開口部の壁面に付着したクリームはんだを流動化させ、基板にクリームはんだを確実に塗布しようというものである。
【0005】
また、特許文献5に記載のはんだ印刷装置は、開口部の壁面にクリームはんだとの濡れ性が低いニッケル/PTFE複合メッキを施すことにより、クリームはんだが開口部の壁面にクリームはんだが付着することを防止し、基板にクリームはんだを確実に塗布しようというものである。
【特許文献1】特開平4−35090号公報
【特許文献2】特開平8−52853号公報
【特許文献3】特開平8−300612号公報
【特許文献4】特開2001−121673号公報
【特許文献5】特開平10−250032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載のはんだ印刷装置は、超音波振動板や圧電素子等の振動手段および当該振動手段に電力を供給するための電源装置等を設ける必要があり、設備コストの増大、装置自体の大型化、ステンシルマスクの交換作業や清掃作業時における作業性の低下(ハンドリングが困難)、といった問題が発生する。
また、ステンシルマスクを振動させるため、基板に対するステンシルマスクの位置精度が低下し、ひいては基板に塗布されるクリームはんだの位置精度が低下するという問題がある。
さらに、特許文献5に記載のはんだ印刷装置は、ステンシルマスクにニッケル/PTFE複合メッキを施す必要があり、ステンシルマスク自体が高価なものとなるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑み、設備コストの増大や設備の大型化を伴うことなく、クリームはんだを基板に十分な位置精度を確保しつつ塗布することが可能なクリームはんだ印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、
該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
該スキージに連動して該ステンシルマスクに衝撃を付与するハンマリング機構と、
を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、
前記ハンマリング機構は、
前記ステンシルマスクに設けられ、該ステンシルマスクに衝突するハンマー部材と、
前記スキージに設けられ、該ハンマー部材を作動させるハンマー作動部材と、
を具備するものである。
【0011】
請求項3においては、
前記ハンマー部材は、
前記ステンシルマスクに固定される基部と、
該ステンシルマスクに衝突する衝突部と、
該基部と該衝突部とを連結し、
前記ハンマー作動部材により弾性変形するアーム部と、
を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、
前記ハンマー部材は、前記ステンシルマスクに、上方から下方に向かって衝撃を付与するものである。
【0013】
請求項5においては、
前記ハンマー作動部材は、前記ハンマー部材に当接して該ハンマー部材を弾性変形させるものである。
【0014】
請求項6においては、
前記ステンシルマスクに、前記ハンマリング機構による衝撃付与時の振動数を調整する振動数調整溝を形成したものである。
【0015】
請求項7においては、
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、
該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
を具備し、
該ステンシルマスクの開口部の壁面に凹凸を形成し、かつ、該凹凸の凸部の間隔をクリームはんだに含まれるはんだ粒の平均粒径の二分の一以下としたものである。
【0016】
請求項8においては、
前記開口部の壁面の凹凸は、放電加工により形成されるものである。
【0017】
請求項9においては、
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
該スキージに連動して該ステンシルマスクに衝撃を付与するハンマリング機構と、
を具備し、
該ステンシルマスクの開口部の壁面に凹凸を形成し、かつ、該凹凸の凸部の間隔をクリームはんだに含まれるはんだ粒の平均粒径の二分の一以下としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、設備コストの増大や装置自体の大型化を伴うことが無く、ステンシルマスクの開口部に供給されたクリームはんだを流動化させて確実に基板に塗布することが可能である。
【0020】
請求項2においてはハンマリング機構の小型化および簡素化が可能である。
【0021】
請求項3においては、ハンマー部材の小型化が可能であるとともに、ハンマー部材を安価に製造することが可能である。
【0022】
請求項4においては、ステンシルマスクに衝撃を付与する方向と開口部が貫通する方向とが略一致し、開口部の壁面に付着したクリームはんだを効果的に流動化させて確実に基板に塗布することが可能である。
また、ステンシルマスクに衝撃を付与する方向が基板においてクリームはんだが塗布される面と略直交しているため、ステンシルマスクが基板に対して位置ずれを起こすことを防止することが可能であり、基板に塗布されるクリームはんだの位置精度が高い。
【0023】
請求項5においては、ハンマリング機構を簡素化することが可能である。
【0024】
請求項6においては、ステンシルマスクにおいて開口部に対応する部分の振動数を所望の振動数に調整することが可能である。
【0025】
請求項7においては、クリームはんだに含まれるはんだ粒が開口部の壁面に付着する面積を小さくし、クリームはんだの開口部の壁面への付着を防止して基板にクリームはんだを確実に塗布することが可能である。
【0026】
請求項8においては、開口部の孔開け加工と、開口部の壁面の凹凸の形成とを同時に行うことができ、工数を削減することが可能である。また、開口部の壁面に所望の形状の凹凸を容易に形成することが可能である。
【0027】
請求項9においては、設備コストの増大や装置自体の大型化を伴うことが無く、ステンシルマスクの開口部に供給されたクリームはんだを流動化せるとともに、クリームはんだに含まれるはんだ粒が開口部の壁面に付着する面積を小さくし、クリームはんだの開口部の壁面への付着を防止して、基板にクリームはんだを確実に塗布することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下では、図1および図2を用いて、本発明のはんだ印刷装置の実施の一形態であるクリームはんだ印刷装置1の全体構成について説明する。
クリームはんだ印刷装置1は基板100にクリームはんだを塗布する装置である。
ここで、基板100は、絶縁性材料からなる板状の部材の表面または内部に、導電性材料からなる回路が形成されたものである。
上記絶縁性材料の具体例としては、紙フェノールやガラスエポキシ等の樹脂系の材料、あるいは、AlN等のセラミックスが挙げられる。また、上記導電性材料は銅やアルミニウム等が挙げられる。
【0029】
また、本出願における「クリームはんだ」は、直径が10μmから50μm程度の粒状に成形されたはんだとフラックスとを混合したペースト状のものである。
【0030】
ここで、本出願における「はんだ」は、錫を母材とし、かつ、鉛、銀、銅、亜鉛、ニッケル、アンチモン、インジウム、ビスマスのうち、いずれか一つまたは二つ以上を添加材として含む合金を含むが、半導体素子等の電子部品と基板に形成された回路とを導通可能に接合し得る材料であれば、他の元素を含む材料でも良い。
はんだの具体例としては、錫−鉛合金といった一般的な共晶はんだの他、錫−銀合金や錫−銀−銅合金等の高融点の鉛フリーはんだ、錫−インジウム合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム−ビスマス合金等の低融点の鉛フリーはんだ等が挙げられる。
また、本出願における「フラックス」は、ロジン系やアクリル系等の樹脂と、アルコールや芳香族系等の溶剤と、活性剤(不要の場合もある)とを混合したものである。
【0031】
クリームはんだ印刷装置1は、主にステンシルマスク2、スキージ3、ハンマリング機構4等を具備する。
【0032】
以下では、図1および図2を用いて、ステンシルマスク2の詳細構成について説明する。
ステンシルマスク2はクリームはんだを基板100の所定の位置に選択的に塗布するための部材である。ここで、「所定の位置」の例としては、基板100の表面に形成された回路と、後の工程で実装される半導体素子等の電子部品との接合箇所等が挙げられる。
ステンシルマスク2は、主に枠部材21と、マスク部材22等を具備する。
【0033】
枠部材21はアルミニウム等の金属材料からなる略矩形の枠状の部材であり、クリームはんだ印刷装置1の構造体(図示せず)にステンシルマスク2を取り付ける際の取り付け部材としての機能と、後述するマスク部材22の上面に供給されたクリームはんだが周囲に漏洩するのを防止する機能と、を果たす。
【0034】
マスク部材22はアルミニウム等の金属材料からなる板状の部材である。マスク部材22には、上面と下面とを貫通する開口部24・24・・・が形成され、マスク部材22の上面の周縁部には枠部材21が固設される。
ステンシルマスク2のマスク部材22の上面にはクリームはんだが供給される。また、マスク部材22の下面は基板100と対向し、作業時には基板100の上面と当接する。
【0035】
なお、開口部24・24・・・の数や配置は本実施例に限定されず、クリームはんだ印刷装置1がクリームはんだを塗布する対象である基板100に形成された回路のパターンに応じて適宜選択される。
また、本実施例のステンシルマスク2は、枠部材21とマスク部材22とを別部材としたが、一体に成形しても良い。さらに、ステンシルマスク2は、金属板を打ち抜いて開口部24・24・・・を形成したメタルマスクをマスク部材22として用いているが、メッシュスクリーンをマスク部材22として用いることもできる。
【0036】
以下では、図1および図2を用いて、スキージ3の詳細構成について説明する。
スキージ3は板状の部材であり、ステンシルマスク2の上面、より厳密にはマスク部材22の上面に沿って摺動することにより、マスク部材22の上面に供給されたクリームはんだをマスク部材22の上面全体に薄く伸ばし、開口部24・24・・・に供給する。本実施例の場合、スキージ3は図1中の矢印Aの方向(紙面左から右)に摺動する。
【0037】
以下では、図1、図2、図3および図4を用いて、ハンマリング機構の詳細構成について説明する。
ハンマリング機構は、スキージ3に連動してステンシルマスク2に衝撃を付与するものであり、ハンマー部材41・41・・・、ハンマー作動部材42・42等で構成される。
ここで、「ハンマリング機構がスキージに連動する」とは、スキージおよびハンマリング機構が同一の駆動源で駆動されることを指す。
【0038】
ハンマー部材41はステンシルマスク2に衝突する部材である。本実施例の場合、図1および図2に示す如く、計六個のハンマー部材41・41・・・がステンシルマスク2に設けられる。より詳細には、ハンマー部材41・41・・・は、ステンシルマスク2の枠部材21において、スキージ3の摺動方向に平行な二辺の上面にそれぞれ三個ずつ、スキージ3の摺動方向に並んで固定される。
【0039】
なお、ステンシルマスクに具備されるハンマー部材の個数は、ステンシルマスクの形状、大きさ、材質、厚み、ならびに開口部の数、径、および配置、あるいはクリームはんだの粘度等の性状等に応じて適宜選択されるものであり、本実施例の如く六個に限定されるものではない。
すなわち、ステンシルマスクに具備されるハンマー部材の個数は、単数または複数のいずれでも良い。
【0040】
図3に示す如く、ハンマー部材41は、バネ鋼等の弾性変形可能な金属片を出発材とし、該出発材を屈曲して一体的に成形した部材であり、基部41aと、衝突部41bと、アーム部41cと、スキッド部41dと、を具備する。
基部41aはハンマー部材41の一端を成し、ステンシルマスク2に固定される部分である。本実施例の場合、基部41aはステンシルマスク2の上面にネジ止めされる。
衝突部41bはハンマー部材41の他端を成し、ハンマー部材41においてステンシルマスク2に衝突する部分である。本実施例の場合、衝突部41bは出発材となる金属片の端部を折り曲げて二重に重ねることにより形成される。
アーム部41cはハンマー部材41の胴体部を成す部分であり、基部41aと衝突部41bとを連結し、ハンマー作動部材42により弾性変形する部分である。
スキッド部41dはハンマー作動部材42と当接する部分であり、衝突部41bの側方に突出している。
【0041】
ハンマー部材41は、基部41aがスキージ3の摺動方向(図1の矢印Aの方向)の前方、衝突部41bが後方を向き、かつ、スキッド部41dがステンシルマスク2の中央側に向かって突出するように枠部材21の上面に固定される。
【0042】
なお、本実施例のハンマー部材41はバネ鋼等の弾性変形可能な金属片を出発材とし、該出発材を屈曲して一体的に成形した部材であるが、複数の部材から成形しても良い。
また、アーム部のみ弾性変形可能な材質とし、他の部分は別の材質で構成しても良い。
さらに、アーム部の一部または衝突部の一部にスキッド部としての機能を付与することにより、スキッド部を省略することも可能である。
【0043】
ハンマー作動部材42・42はハンマー部材41・41・・・を作動させる部材であり、スキージ3に設けられる。
ここで、「ハンマー部材41を作動させる」とは、ハンマー部材41をステンシルマスク2に衝突させることを指す。
【0044】
ハンマー作動部材42・42はスキージ3の左右側方に突設され、スキージ3と一体となってスキージ3の摺動方向(図1の矢印Aの方向)に移動する。このとき、平面視で、ハンマー作動部材42・42の一部が枠部材21においてハンマー部材41・41・・・が固定されている辺と重なっており、該辺の上面の上方を移動する。
ハンマー作動部材42は金属片を側面視略「へ」の字型に屈曲したものであり、スキージ3の摺動方向の前方側が登り斜面部42aを形成し、スキージ3の摺動方向の後方側が水平面部42bを形成する。
【0045】
図4に示す如く、スキージ3が摺動していくと、ハンマー部材41のスキッド部41dの下面がハンマー作動部材42の登り斜面部42aの上面と当接し、スキッド部41dは該上面に沿って移動する。その結果、ハンマー部材41のスキッド部41dおよび衝突部41bはステンシルマスク2の上方に持ち上げられ、アーム部41cが上方に反る形で弾性変形する。
更にスキージ3が摺動していくと、ハンマー部材41のスキッド部41dは水平面部42bと当接する。そして、スキッド部41dが水平面部42bの後端に到達すると、スキッド部41dが水平面部42bから外れ、アーム部41cが元の形状に戻ろうとする結果、衝突部41bが下方に振り下ろされ、ステンシルマスク2の枠部材21の上面に衝突する。
すなわち、ハンマー部材41は、ステンシルマスク2に、上方から下方に向かって衝撃を付与することとなる。
【0046】
このように、ハンマー作動部材42はハンマー部材41に当接してハンマー部材41を弾性変形させ、続いてハンマー部材41から離間することによりハンマー部材41に蓄積された弾性エネルギーを解放させる。そして、ハンマー部材41の一部である衝突部41bをステンシルマスク2に衝突させ、ステンシルマスク2に衝撃を付与する。
【0047】
ステンシルマスク2に衝撃を付与すると、スキージ3によりステンシルマスク2の開口部24・24・・・に供給されたクリームはんだは流動化し、開口部24・24・・・との付着が弱まる。その結果、該クリームはんだは確実に基板100に塗布される。
【0048】
なお、本実施例では左右のハンマー作動部材42・42を別体としたが、一体としても良い。また、ハンマー部材をスキージ3の摺動方向に複数個並べて設け、スキージの一回の摺動により一個のハンマー部材を複数回作動させることも可能である。
また、本実施例のハンマー部材41はステンシルマスク2の上面(より厳密には、枠部材21の上面)に設けられているが、ステンシルマスク2の側面に設けても良い。
また、ハンマー部材による衝撃付与の方向については、ステンシルマスクの上方から下方、ステンシルマスクの側方のいずれでも良いが、ステンシルマスクと基板との位置ずれを防止するという観点から、ステンシルマスクの上方から下方に衝撃を付与することが望ましい。
さらに、本実施例のハンマリング機構4におけるハンマー部材41は、弾性変形することによりステンシルマスクに衝撃を付与する構成としたが、ハンマー部材をステンシルマスクの上下方向に摺動または揺動可能な錘とし、ハンマー作動部材により該錘を持ち上げて落下させることによりステンシルマスクに衝撃を付与する構成としても良い。
【0049】
以上の如く、本発明のクリームはんだ印刷装置の実施の一形態であるクリームはんだ印刷装置1は、
クリームはんだが供給される上面と、基板100と対向する下面と、を貫通する開口部24・24・・・が形成されたステンシルマスク2と、
該ステンシルマスク2の上面に沿って摺動し、該ステンシルマスク2の開口部24・24・・・にクリームはんだを供給するスキージ3と、
該スキージ3に連動して該ステンシルマスク2に衝撃を付与するハンマリング機構4と、
を具備するものである。
【0050】
このように構成することにより、クリームはんだ印刷装置1は、ハンマリング機構4によりステンシルマスク2に衝撃を付与し、ステンシルマスク2の開口部24・24・・・に供給されたクリームはんだを流動化させて確実に基板に塗布することが可能である。特に、開口部24・24・・・が小さい場合に有効である。
また、超音波振動板や圧電素子等の振動手段によりステンシルマスクを振動させ、ステンシルマスクの開口部に供給されたクリームはんだを流動化させる従来のクリームはんだ印刷装置と比較すると、本発明に係るクリームはんだ印刷装置1のハンマリング機構4はスキージ3に連動するために専用の駆動源等を必要とせず、装置を簡素化することが可能である。従って、設備コストの増大や装置自体の大型化を伴うことが無く、ステンシルマスク2の交換作業や清掃作業時における作業性に優れる。
さらに、超音波振動板や圧電素子等の振動手段によりステンシルマスクを振動させると、振動する回数が多いためにステンシルマスクがクリームはんだ印刷装置の構造体からずれ、基板に塗布されるクリームはんだの位置精度が低下する場合があるが、本発明に係るクリームはんだ印刷装置1はステンシルマスク2に衝撃を付与する回数を調整することが容易であり、基板100に塗布されるクリームはんだの位置精度が高い。
【0051】
また、クリームはんだ印刷装置1のハンマリング機構4は、
前記ステンシルマスク2に設けられ、該ステンシルマスク2に衝突するハンマー部材41と、
前記スキージ3に設けられ、該ハンマー部材41を作動させるハンマー作動部材42と、
を具備するものである。
【0052】
このように構成することにより、ハンマリング機構4の小型化および簡素化が可能である。
【0053】
また、クリームはんだ印刷装置1のハンマー部材41は、
前記ステンシルマスク2に固定される基部41aと、
該ステンシルマスク2に衝突する衝突部41bと、
該基部41aと該衝突部41bとを連結し、前記ハンマー作動部材42により弾性変形するアーム部41cと、
を具備する。
【0054】
このように構成することにより、ハンマー部材41の小型化が可能であるとともに、ハンマー部材41を安価に製造することが可能である。
【0055】
また、クリームはんだ印刷装置1のハンマー部材41は、
前記ステンシルマスク2に、上方から下方に向かって衝撃を付与するものである。
【0056】
このように構成することにより、ステンシルマスクに衝撃を付与する方向と開口部が貫通する方向とが略一致し、開口部の壁面に付着したクリームはんだを効果的に流動化させて確実に基板に塗布することが可能である。
また、ステンシルマスクに衝撃を付与する方向が基板においてクリームはんだが塗布される面と略直交しているため、ステンシルマスクが基板に対して位置ずれを起こすことを防止することが可能であり、基板に塗布されるクリームはんだの位置精度が高い。
【0057】
また、クリームはんだ印刷装置1のハンマー作動部材42は、前記ハンマー部材41に当接して該ハンマー部材41を弾性変形させるものである。
【0058】
このように構成することにより、ハンマリング機構を簡素化することが可能である。
【0059】
以下では、図1、図2、および図5を用いて、振動数調整溝25・26の詳細構成について説明する。
振動数調整溝25・26はハンマリング機構4による衝撃付与時のステンシルマスク2の振動数を調整するためにステンシルマスク2に形成される溝である。本実施例の場合、一対の振動数調整溝25・26は、開口部24・24・・・を挟んで配置される。
【0060】
ハンマリング機構4によりステンシルマスク2に衝撃を付与すると、ステンシルマスク2は以下の式(1)で表される自己の固有振動数F1で振動する。
F1=(4.2×L)×(E×ρ/M)0.5 式(1)
ここで、Lはステンシルマスク2の長さ(図1中のLに相当)、Eはヤング率、ρはステンシルマスク2を構成する材料の密度、Mはステンシルマスク2の線密度(単位長さ当たりの質量)を指す。
【0061】
しかし、クリームはんだの性状やステンシルマスク2の材質、形状によっては、当該固有振動数がステンシルマスク2の開口部24・24・・・に供給され、該開口部24・24・・・の壁面に付着したクリームはんだを流動化し、基板100に塗布するのに適した振動数から大きく外れている場合もあり得る。
このような場合に、ステンシルマスク2に振動数調整溝25・26を形成することにより、ステンシルマスク2において開口部24・24・・・に対応する部分の衝撃付与時の振動数を所望の振動数に調整することが可能である。
本実施例の場合において、振動数調整溝25・26で挟まれた領域の振動数F2は以下の式(2)で表される。
F2={E×t/(ρ×π×d×H×D×α)}0.5 式(2)
ここで、Eはヤング率、tはマスク部材22において振動数調整溝25・26に対応する部分の板厚(図5中のtに相当)、ρはステンシルマスク2を構成する材料の密度、dは隣り合う振動数調整溝25・26の内側の壁面間の距離(図5中のdに相当)、Hはマスク部材22の板厚、Dは隣り合う振動数調整溝25・26の外側の壁面間の距離(図5中のDに相当)、αはステンシルマスク2の形状係数であり、0.6≦d/D≦0.8の場合に0.05≦α≦0.005である。
【0062】
なお、本実施例においては、一対の振動数調整溝25・26を開口部24・24・・・を挟む形で配置したが、開口部24・24・・・を囲むようにリング状の振動数調整溝を形成することも可能である。
【0063】
以下では、図1および図6を用いてステンシルマスク2の開口部24・24・・・の壁面構造について説明する。
図6に示す如く、本実施例のステンシルマスク2の開口部の壁面には凹凸が形成され、いわゆる梨地加工が施されている。そして、該凹凸の凸部24a・24a・・・の間隔を、クリームはんだに含まれるはんだ粒200の平均粒径の二分の一以下としている。
このように構成することにより、クリームはんだに含まれる粒状のはんだであるはんだ粒200が開口部24・24・・・の壁面に付着する面積を小さくすることが可能である。
結果として、クリームはんだの開口部24・24・・・の壁面への付着を防止して基板100にクリームはんだを確実に塗布することが可能である。
なお、開口部24・24・・・の壁面の凹凸の凸部24a・24a・・・の間隔を、クリームはんだに含まれるはんだ粒200の平均粒径の二分の一以下としているのは、当該間隔が大きすぎると、クリームはんだに含まれるはんだ粒が隣り合う凸部24a・24aの間に入り込み、却って開口部24・24・・・の壁面へのクリームはんだの付着を招く可能性があるためである。
【0064】
また、本実施例のステンシルマスク2の開口部24・24・・・は、放電加工により形成される。放電加工後の開口部24・24・・・には図6に示す如き凹凸(凸部24a・24a・・・)が形成されるため、開口部24・24・・・の孔開け加工と、開口部24・24・・・の壁面の凹凸の形成とを同時に行うことができ、工数を削減することが可能である。
さらに、凸部24a・24a・・・の高さは放電加工のパルス幅で調整することが可能であり、隣り合う凸部24a・24aの間隔は放電加工の送り速度で調整することが可能であることから、開口部24・24・・・の壁面に所望の形状の凹凸を容易に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るクリームはんだ印刷装置の側面断面図。
【図2】本発明に係るクリームはんだ印刷装置の平面図。
【図3】ハンマー部材の斜視図。
【図4】ハンマリング機構の作動状況を示す図。
【図5】ステンシルマスクの要部断面図。
【図6】ステンシルマスクの開口部の壁面を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0066】
1 クリームはんだ印刷装置
2 ステンシルマスク
3 スキージ
4 ハンマリング機構
24 開口部
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、
該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
該スキージに連動して該ステンシルマスクに衝撃を付与するハンマリング機構と、
を具備することを特徴とするクリームはんだ印刷装置。
【請求項2】
前記ハンマリング機構は、
前記ステンシルマスクに設けられ、該ステンシルマスクに衝突するハンマー部材と、
前記スキージに設けられ、該ハンマー部材を作動させるハンマー作動部材と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項3】
前記ハンマー部材は、
前記ステンシルマスクに固定される基部と、
該ステンシルマスクに衝突する衝突部と、
該基部と該衝突部とを連結し、前記ハンマー作動部材により弾性変形するアーム部と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項4】
前記ハンマー部材は、前記ステンシルマスクに、上方から下方に向かって衝撃を付与することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項5】
前記ハンマー作動部材は、前記ハンマー部材に当接して該ハンマー部材を弾性変形させることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項6】
前記ステンシルマスクに、前記ハンマリング機構による衝撃付与時の振動数を調整する振動数調整溝を形成したことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項7】
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、
該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
を具備し、
該ステンシルマスクの開口部の壁面に凹凸を形成し、かつ、該凹凸の凸部の間隔をクリームはんだに含まれるはんだ粒の平均粒径の二分の一以下としたことを特徴とするクリームはんだ印刷装置。
【請求項8】
前記開口部の壁面の凹凸は、放電加工により形成されることを特徴とする請求項7に記載のクリームはんだ印刷装置。
【請求項9】
クリームはんだが供給される上面と、基板と対向する下面と、を貫通する開口部が形成されたステンシルマスクと、
該ステンシルマスクの上面に沿って摺動し、該ステンシルマスクの開口部にクリームはんだを供給するスキージと、
該スキージに連動して該ステンシルマスクに衝撃を付与するハンマリング機構と、
を具備し、
該ステンシルマスクの開口部の壁面に凹凸を形成し、かつ、該凹凸の凸部の間隔をクリームはんだに含まれるはんだ粒の平均粒径の二分の一以下としたことを特徴とするクリームはんだ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−116776(P2006−116776A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305805(P2004−305805)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】