クリーン搬送装置における空調システム
【課題】搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、必要な箇所のみのダウンフローによる排気流速を高めるようにすることにより、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数にて、局部的で効率的なダウンフローを形成し、かつ設備費及びランニングコストを低廉化できるようにしたクリーン搬送装置における空調システムを提供すること。
【解決手段】液晶基板を収納するカセットKを保管する保管棚Lと、カセットKを走行レールRに沿って搬送する搬送台車Cと、保管棚Lに清浄空気を供給するファンフィルタユニットFFUとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車Cの走行位置及び/又は停止位置に追従して、搬送台車Cの走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成する。
【解決手段】液晶基板を収納するカセットKを保管する保管棚Lと、カセットKを走行レールRに沿って搬送する搬送台車Cと、保管棚Lに清浄空気を供給するファンフィルタユニットFFUとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車Cの走行位置及び/又は停止位置に追従して、搬送台車Cの走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーン搬送装置における空調システムに関し、特に、スタッカークレーン、OHV、RGV、コンベア(CV)等の搬送装置(以下、「搬送装置」という。)の走行位置及び/又は停止位置に追従して、必要な箇所のみのダウンフローの流速を高めることにより、必要最小限度のファンフイルターユニット等の清浄空気噴出装置(以下、「ファンフイルターユニット」という。)の設置数にて、局部的に効率的なダウンフロー流速を形成するようにしたクリーン搬送装置における空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーン搬送装置、特に限定されるものではないが、例えば、図13〜図14に示すように、液晶ガラス基板等の液晶基板の自動保管倉庫Sにおいては、複数枚の液晶基板を収納したカセットKを、自動保管倉庫内に多数配設された保管棚Lに一時的に出し入れ可能にして保管するようにしている。
このカセットKの搬送は、自動保管倉庫内を高速で走行する搬送装置C、例えば、スタッカークレーンにて行われるが、このスタッカークレーンCの高速走行時、走行レールRと車輪部から発塵し、この発塵がスタッカークレーンCの走行に追従して拡散されるとともに、走行停止位置においては舞い上がり拡散される範囲が拡大するものとなる。特にスタッカークレーンCが自動保管倉庫Sの端部壁面近くに停止する場合は、スタッカークレーンCの走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流を発生させ、塵埃が巻き上がるものとなる。これを防止し、かつ半ば露出した状態でカセットKに収納される液晶基板を清浄状態に保って搬送及び保管できるようにするため、自動保管倉庫内に清浄空気を天井面から噴き出し、床面側から排出する所謂清浄空気のダウンフローDを形成するようにし、この清浄空気のダウンフロー内を予め設定した走行路に沿ってスタッカークレーンCを走行させて、カセットの各保管棚への一時的に出し入れして保管するようにしている。
【0003】
ところで、従来のクリーン搬送を可能とした自動保管倉庫Sは、図13〜図14に示すように、その天井面に清浄空気を通気床面に向かって噴出するためのファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に複数配設し、かつ床面側にも固定的で同じ開口率の通気床Fを配設して清浄空気のダウンフローDを、自動保管倉庫S内全体にほぼ均一になるように形成している。
このため、スタッカークレーンCの走行による発生塵埃を拡散させずに自動保管倉庫外へ排出できるため、自動保管倉庫内全体を設定されたクリーン度を保つことができるが、自動保管倉庫内全体に均一な清浄空気のダウンフローDを形成し、かつ必要な流速を得るようにするためには、多数のファンフイルターユニットFFUを配設する必要がある。
【0004】
しかしながら、発塵及び発塵の拡散は、自動保管倉庫内全体において常に均一に生じるものではなく、スタッカークレーンCの走行位置に追従して、さらには停止位置において発塵及びその拡散が特にひどく発生するものである。
ところで、スタッカークレーンCの走行による発生塵埃を拡散させずに自動保管倉庫外へ排出できるように、均一な清浄空気のダウンフローDを自動保管倉庫内全体に形成するためには、ファンフイルターユニットFFUの配設数が多くなり、クリーン搬送装置の空調システムの設備費が高価になるとともに、ランニングコストも高くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クリーン搬送装置における空調システムの有する問題点に鑑み、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、必要な箇所のみのダウンフローによる排気流速を高めるようにすることにより、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数にて、局部的で効率的なダウンフローを形成し、かつ設備費及びランニングコストを低廉化できるようにしたクリーン搬送装置における空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のクリーン搬送装置における空調システムは、液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成することができる。
【0008】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成することができる。
【0009】
また、ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成することができる。
【0010】
また、ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成することができる。
【0011】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成することができる。
【0012】
また、ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリーン搬送装置における空調システムによれば、液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に合わせて、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成することにより、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数にて、局部的に効率的なダウンフローを形成して搬送台車走行時等の発塵をダウンフローで押さえ込むようにしてその拡散を防止して確実に排出することができるので、設備費及びランニングコストを低廉させることができる。
【0014】
また、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成することにより、簡単な方法で局部的に効率的なダウンフローを形成して、発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0015】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成することにより、簡易な方法で、搬送台車の走行に追従して確実に、かつダウンフロー流速の増減調整を微細に行うことができる。
【0016】
また、ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成することにより、ランニングコストを抑えて発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0017】
また、ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成することにより、ランニングコストを抑えて発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0018】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成することにより、走行する搬送台車位置を正確に検知することができるので、搬送台車の走行速度等に関係なく所定位置でのダウンフロー流速調整が正確に行うことができる。
【0019】
また、ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成することにより、既設の装置においても簡易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例を示す。
この第1実施例のクリーン搬送装置における空調システムでは、搬送台車Cとしてスタッカークレーンを用いた場合で説明する。
これは主に、自動保管倉庫S内に複数枚の液晶基板を収納するようにしたカセットKを保管する保管棚Lを複数列及び複数段形成し、この複数列配設する保管棚列に沿って敷設した走行レールR上を走行し、カセットKを搬送するようにした搬送台車Cと、保管棚L及び該保管棚上に保管した液晶基板、カセットKに清浄空気を供給するようにしたファンフイルターユニットFFUとを備えて構成する。
なお、図示の実施例では、この保管棚L、L列を対峙して配設し、この対峙保管棚L、L列間をスタッカークレーンCを走行可能に配設しているが、この配置方法は限定されるものではない。
【0022】
搬送台車走行用の走行レールRは、自動保管倉庫内底部に配設する通気床上に敷設するが、この通気床Fはその開口率を可変調整可能とする。この通気床Fの開口率可変調整機構は、特に限定されるものではないが、例えば、通気床開口部に開閉可能なシャッター(図示省略)を備え、該シャッターの開口度を調整して行うことができる。このようにして、通気床Fの開口率を可変調整することで、搬送台車Cの停止位置等所定位置でのダウンフローDの流速を局部的に効率的に増加させるようにすることができる。
また、自動保管倉庫内天部には、清浄空気を通気床に向かって噴出するように、ファンフイルターユニットFFUを定間隔、或いは所要間隔にて配設して構成する。
【0023】
なお、ダウンフローの吸込を、この実施例では通気床にて行うようにしているが、これは特に限定されるものではなく、例えば、図10に示すように、自動保管倉庫内側に形成するリターンダクト3の下部、すなわち、自動保管倉庫内側下部に形成した吸込口F4より吸い込むようにすることもできる。この自己循環方式の自動保管倉庫においては、天井部のファンフイルターユニットFFUから吹き出されるダウンフローDを側面下部から吸い込み、リターンダクト3を経て循環させるものである。
【0024】
次に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例の作用について、図3〜図4により説明する。
搬送台車Cが前回走行完了時停止した位置を走行ポジション1、また移動目的位置を走行ポジション2とし、かつこれを初期状態としてこの走行ポジション1における通気床Fの開口率を大になるように設定している。なお、この走行ポジション2の位置は、保管棚Lの位置に合わせて任意に設定することができる。
【0025】
そして、この走行ポジション1から走行ポジション2へ搬送台車Cが移動する場合、走行ポジション1位置における通気床F1の開口率を予め設定した時間、例えば、T1秒後に初期状態の開口率大から開口率小へ作動するようにする。
なお、この通気床F1の開口率小とは、予め設定した清浄空気のダウンフロー流速を得られるようにして設定されている。
また、走行ポジション2位置における通気床F2の開口率を、搬送台車Cの走行距離などにより決定する時間、例えば、T2秒後に開口率小から開口率大へ作動するようにする。その後、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2に向かって走行を開始し、走行ポジション2位置に達すると停止し、搬送台車の走行を終了する。
【0026】
このように、搬送台車Cが移動する前に走行前位置と走行後停止位置での通気床F1、F2の開口率を調整しておくため、搬送台車Cの移動に合わせてダウンフローの流速を局部的に効率的に増加させることができ、搬送台車走行時の発塵は、通常のダウンフローにて通気床側に吸引され外部へ排出され、特に搬送台車Cの停止時に舞い上がらんとする塵埃は、流速を増したダウンフロー流速にて押さえ込まれるようになって通気床側に吸引され塵埃の拡散を未然に防止することができる。
【0027】
以上の実施例では、走行ポジション1と走行ポジション2の定点において、通気床の開口率を調節してダウンフロー流速を変えるようにしているが、図9に示すように、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へ、或いはその反対方向へ移動する際、その走行に追従して逐次調節するようにすることもできる。
この場合は、搬送台車Cの走行移動位置を逐次、特に限定されるものではないが、例えば、センサー等(図示省略)にて検知して、搬送台車Cの検知位置に追従して、ダウンフローの流速を順次局部的に変化させるようにする。これにより、搬送台車Cの走行移動に追従して発生する粉塵を確実にダウンフロー流速にて押さえ込み、塵埃の拡散を防止することができる。
【実施例2】
【0028】
図5〜図6に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第2実施例を示す。この第2実施例では、搬送台車CとしてRGVを採用して説明しているが、この搬送台車の種別は特に限定されるものではない。
この場合は、走行ポジション1と走行ポジション2との位置を予め設定した場合で、その構成は大体第1実施例と同じように構成するが、特に異なる構成部分は、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置し、かつこのファンフイルターユニットFFUによるダウンフロー流速を搬送台車走行時の発塵を通気床に吸引できる程度の最小必要なる流速となるようにして設定し、かつ走行ポジション1と走行ポジション2における通気床F1、F2のみを、その開口率が可変式とし、他の部分の通気床F3の開口率を固定式とし、さらに搬送台車Cの走行範囲で、かつ走行ポジション1と走行ポジション2の近傍に搬送台車の通過を検知するセンサーS1及びS2をそれぞれ配設して構成する。
そして、このセンサーS1、S2による検知信号で走行ポジション1或いは走行ポジション2位置における通気床F1、F2の開口率を調整するようにするものである。
【0029】
図5(A)及び図6(A)は、搬送台車が走行ポジション1から走行ポジション2へ移動する場合を示す。
搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へ走行を開始し、この搬送台車Cが走行ポジション1近傍にあるセンサーS1にて検知されると、走行ポジション1位置の可変式の通気床F1が作動してその開口率大から開口率小へ作動するようになり、走行ポジション1近傍の通気床位置のダウンフロー流速が通常のダウンフロー流速に低下する。そして、搬送台車Cがそのまま走行して走行ポジション2近傍のセンサーS2にて検知されると、走行ポジション2近傍の通気床F2の開口率小から開口率大へと作動するようになる。これにより、走行ポジション2近傍のダウンフロー流速が増す。この状態で搬送台車Cが走行ポジション2位置で停止すると流速を増したダウンフローにて搬送台車停止時において舞い上がらんとする塵埃を通気床側に吸引して外部へ排出される。
【0030】
また、搬送台車が走行ポジション2から走行ポジション1へ移動する場合、図5(B)及び図6(B)に示すように、その詳細説明は省略するが、同様に走行ポジション2及び走行ポジション1位置の通気床F1、F2の開口率が反対になるようにそれぞれ調整されるものである。
【実施例3】
【0031】
図7〜図8は、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第3実施例を示す。この第3実施例は、第2実施例の構成において配設するファンフイルターユニットFFUの配置間隔を、搬送台車Cの走行位置においては粗になるように、また、走行ポジション1と走行ポジション2においては密に、望ましくは、主なるファンフイルターユニットFFUと補助ファンフイルターユニットFFU1又は補助ファンフイルターユニットFFU2とを互いに連接するようにして配置して構成し、この走行ポジション1と走行ポジション2位置に配設する補助ファンフイルターユニットFFU1又は補助ファンフイルターユニットFFU2の稼働調整と、同位置における通気床F1、F2の開口率の調整との組み合わせによりダウンフロー流速を調整するようにする。
【0032】
図7及び図8(A)は、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へと移動する場合を示す。
搬送台車が走行ポジション1から走行ポジション2へ走行を開始し、この搬送台車Cが走行ポジション1近傍にあるセンサーS1にて検知されると、走行ポジション1位置の可変式の通気床F1が作動してその開口率大から開口率小へ作動するとともに、同位置の補助ファンフイルターユニットFFU1を停止することで、走行ポジション1位置におけるダウンフロー流速を大流量から小流量の通常流量へと調節する。
【0033】
搬送台車Cがそのまま走行して走行ポジション2近傍のセンサーS2にて検知されると、走行ポジション2近傍の通気床F2の開口率小から開口率大へと作動するようにするとともに、同位置の補助ファンフイルターユニットFFU2を稼働するようになり、走行ポジション2近傍のダウンフロー流速が増す。この状態で搬送台車が走行ポジション2位置で停止すると流速を増したダウンフローにて搬送台車停止時において舞い上がらんとする塵埃を通気床側に吸引して外部へ排出される。
【0034】
また、反対に搬送台車Cが走行ポジション2から走行ポジション1へと移動する場合は、図7及び図8(B)に示すように、同様に走行ポジション2及び走行ポジション1位置の通気床F1、F2の開口率及び補助ファンフイルターユニットFFU1、2が反対になるようにそれぞれ調整されるもので、その詳細説明を省略する。
なお、第2及び第3実施例においても、例えば、図10に示すように、リターンダクト3及びリターンダクト3の下端に配設し、かつ開口率を可変調整できるようにしたダウンフローの吸込口F4を搬送台車走行方向に沿った側面壁下部に備えた自己循環方式の自動保管倉庫にも適することができる。さらに、走行する搬送台車Cをコントローラ或いはセンサーにてその走行位置を検知し、この検知位置に追従して、ダウンフローの流速を順次局部的に変化させるようにすることもできる。
【0035】
また、図9に示す実施例は、第2実施例及び第3実施例の変形例で、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置し、かつこのファンフイルターユニットFFUによるダウンフロー流速を搬送台車走行時の発塵を通気床に吸引できる程度の最小必要なる流速となるようにして設定し、搬送指示(From−To)に従い、コントローラが搬送台車の通過の床開口率を大きくし、通過後の床開口率を元に戻すように、指示を出すようにする。なお、この場合、ストッカーの異常時には一定時間後に床開口率を元に戻すようにする。
また、移載ポジションにおける床は、すべて可変開口率の床とし、エリア分けされており、搬送台車の走行通過に応じてその開口率を切り替えるようにする。
【実施例4】
【0036】
また、図11は、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第4実施例を示す。
この実施例においては、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置すること、搬送台車の走行に沿った床を通気床とすること、及び搬送台車の走行に追従してファンフイルターユニットFFUの稼働制御、通気床の開口率制御を行うことは、すべて上記実施例と同じように構成する。ただし、この第4実施例においては、自動保管倉庫Sの端部壁面にリターンダクト3を配設する。
このリターンダクト3の下端には、開口率を可変調整できるようにしたダウンフローの吸込口F5を配設し、このダウンフローの吸込口F4の開口率を搬送台車が端部壁面位置或いはその近くに停止する場合、搬送台車の走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流を発生させ、塵埃が巻き上がるようになるのを、このダウンフローの吸込口F5の開口率を大きくすることで、該乱流による巻き上がる塵埃をも吸い込むようにするものである。
また、図12は、第4実施例の変形例を示す。
この変形例は、搬送台車の走行に沿った床を通気床を自動保管倉庫Sの端部壁面よりさらに外側まで配設するようにしたものである。これにより、搬送台車の走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流発生により塵埃が巻き上がるのを、搬送台車の走行終端位置の通気床より吸引するようにするものであり、その制御は上記実施例と同じようにする。
【0037】
以上、本発明のクリーン搬送装置における空調システムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その実施例の組み合わせ及びその構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のクリーン搬送装置における空調システムは、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数で、かつ搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して必要な箇所のみのダウンフロー流速を高めることにより、局部的に効率的なダウンフローを形成するという特性を有していることから、自動保管倉庫内空調システムの用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面縦断面図、(C)は正面縦断面図である。
【図2】搬送台車の走行動作の説明図で、(A)は平面図、(B)は側面縦断面図である。
【図3】搬送台車の走行動作後における発塵排出の説明図である。
【図4】搬送台車の走行動作フロー図である。
【図5】本発明の第2実施例を示し、(A)は搬送台車の走行動作前の側面縦断面図、(B)は停止時の側面縦断面図である。
【図6】第2実施例における搬送台車の走行動作フロー図で、(A)は走行ポジション1から走行ポジション2へ走行する場合の走行動作フロー図、(B)は走行ポジション2から走行ポジション1へ走行する場合の走行動作フロー図である。
【図7】本発明の第3実施例を示す側面縦断面図である。
【図8】第3実施例における搬送台車の走行動作フロー図で、(A)は走行ポジション1から走行ポジション2へ走行する場合の走行動作フロー図、(B)は走行ポジション2から走行ポジション1へ走行する場合の走行動作フロー図である。
【図9】第2実施例及び第3実施例の変形例を示す側面縦断面図である。
【図10】本発明のクリーン搬送装置における空調システムをリターンダクトを備えた自己循環方式の自動保管倉庫に適用した実施例の正面縦断面図である。
【図11】本発明の第4実施例を示し、(A)は搬送台車の始動時を示す側面縦断面図、(B)は搬送台車の終点位置での停止時を示す側面縦断面図である。
【図12】第4実施例の変形を示す側面縦断面図である。
【図13】従来のクリーン搬送装置における空調システムの説明図である。
【図14】従来の異なるクリーン搬送装置における空調システムの説明図である。
【符号の説明】
【0040】
C 搬送台車
F 通気床
F1 走行ポジション1位置の通気床
F2 走行ポジション2位置の通気床
F3 開口率固定式の通気床
F4 ダウンフローの吸込口
F5 ダウンフローの吸込口
K カセット
L 保管棚
S 自動保管倉庫
S1 走行ポジション1近傍のセンサー
S2 走行ポジション2近傍のセンサー
R 走行レール
FFU ファンフイルターユニット
FFU1 補助ファンフイルターユニット
FFU2 補助ファンフイルターユニット
1 走行ポジション
2 走行ポジション
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーン搬送装置における空調システムに関し、特に、スタッカークレーン、OHV、RGV、コンベア(CV)等の搬送装置(以下、「搬送装置」という。)の走行位置及び/又は停止位置に追従して、必要な箇所のみのダウンフローの流速を高めることにより、必要最小限度のファンフイルターユニット等の清浄空気噴出装置(以下、「ファンフイルターユニット」という。)の設置数にて、局部的に効率的なダウンフロー流速を形成するようにしたクリーン搬送装置における空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーン搬送装置、特に限定されるものではないが、例えば、図13〜図14に示すように、液晶ガラス基板等の液晶基板の自動保管倉庫Sにおいては、複数枚の液晶基板を収納したカセットKを、自動保管倉庫内に多数配設された保管棚Lに一時的に出し入れ可能にして保管するようにしている。
このカセットKの搬送は、自動保管倉庫内を高速で走行する搬送装置C、例えば、スタッカークレーンにて行われるが、このスタッカークレーンCの高速走行時、走行レールRと車輪部から発塵し、この発塵がスタッカークレーンCの走行に追従して拡散されるとともに、走行停止位置においては舞い上がり拡散される範囲が拡大するものとなる。特にスタッカークレーンCが自動保管倉庫Sの端部壁面近くに停止する場合は、スタッカークレーンCの走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流を発生させ、塵埃が巻き上がるものとなる。これを防止し、かつ半ば露出した状態でカセットKに収納される液晶基板を清浄状態に保って搬送及び保管できるようにするため、自動保管倉庫内に清浄空気を天井面から噴き出し、床面側から排出する所謂清浄空気のダウンフローDを形成するようにし、この清浄空気のダウンフロー内を予め設定した走行路に沿ってスタッカークレーンCを走行させて、カセットの各保管棚への一時的に出し入れして保管するようにしている。
【0003】
ところで、従来のクリーン搬送を可能とした自動保管倉庫Sは、図13〜図14に示すように、その天井面に清浄空気を通気床面に向かって噴出するためのファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に複数配設し、かつ床面側にも固定的で同じ開口率の通気床Fを配設して清浄空気のダウンフローDを、自動保管倉庫S内全体にほぼ均一になるように形成している。
このため、スタッカークレーンCの走行による発生塵埃を拡散させずに自動保管倉庫外へ排出できるため、自動保管倉庫内全体を設定されたクリーン度を保つことができるが、自動保管倉庫内全体に均一な清浄空気のダウンフローDを形成し、かつ必要な流速を得るようにするためには、多数のファンフイルターユニットFFUを配設する必要がある。
【0004】
しかしながら、発塵及び発塵の拡散は、自動保管倉庫内全体において常に均一に生じるものではなく、スタッカークレーンCの走行位置に追従して、さらには停止位置において発塵及びその拡散が特にひどく発生するものである。
ところで、スタッカークレーンCの走行による発生塵埃を拡散させずに自動保管倉庫外へ排出できるように、均一な清浄空気のダウンフローDを自動保管倉庫内全体に形成するためには、ファンフイルターユニットFFUの配設数が多くなり、クリーン搬送装置の空調システムの設備費が高価になるとともに、ランニングコストも高くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クリーン搬送装置における空調システムの有する問題点に鑑み、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、必要な箇所のみのダウンフローによる排気流速を高めるようにすることにより、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数にて、局部的で効率的なダウンフローを形成し、かつ設備費及びランニングコストを低廉化できるようにしたクリーン搬送装置における空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のクリーン搬送装置における空調システムは、液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成することができる。
【0008】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成することができる。
【0009】
また、ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成することができる。
【0010】
また、ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成することができる。
【0011】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成することができる。
【0012】
また、ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリーン搬送装置における空調システムによれば、液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に合わせて、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成することにより、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数にて、局部的に効率的なダウンフローを形成して搬送台車走行時等の発塵をダウンフローで押さえ込むようにしてその拡散を防止して確実に排出することができるので、設備費及びランニングコストを低廉させることができる。
【0014】
また、搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成することにより、簡単な方法で局部的に効率的なダウンフローを形成して、発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0015】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成することにより、簡易な方法で、搬送台車の走行に追従して確実に、かつダウンフロー流速の増減調整を微細に行うことができる。
【0016】
また、ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成することにより、ランニングコストを抑えて発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0017】
また、ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成することにより、ランニングコストを抑えて発塵の拡散を防止し、かつ排出することができる。
【0018】
また、ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成することにより、走行する搬送台車位置を正確に検知することができるので、搬送台車の走行速度等に関係なく所定位置でのダウンフロー流速調整が正確に行うことができる。
【0019】
また、ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成することにより、既設の装置においても簡易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例を示す。
この第1実施例のクリーン搬送装置における空調システムでは、搬送台車Cとしてスタッカークレーンを用いた場合で説明する。
これは主に、自動保管倉庫S内に複数枚の液晶基板を収納するようにしたカセットKを保管する保管棚Lを複数列及び複数段形成し、この複数列配設する保管棚列に沿って敷設した走行レールR上を走行し、カセットKを搬送するようにした搬送台車Cと、保管棚L及び該保管棚上に保管した液晶基板、カセットKに清浄空気を供給するようにしたファンフイルターユニットFFUとを備えて構成する。
なお、図示の実施例では、この保管棚L、L列を対峙して配設し、この対峙保管棚L、L列間をスタッカークレーンCを走行可能に配設しているが、この配置方法は限定されるものではない。
【0022】
搬送台車走行用の走行レールRは、自動保管倉庫内底部に配設する通気床上に敷設するが、この通気床Fはその開口率を可変調整可能とする。この通気床Fの開口率可変調整機構は、特に限定されるものではないが、例えば、通気床開口部に開閉可能なシャッター(図示省略)を備え、該シャッターの開口度を調整して行うことができる。このようにして、通気床Fの開口率を可変調整することで、搬送台車Cの停止位置等所定位置でのダウンフローDの流速を局部的に効率的に増加させるようにすることができる。
また、自動保管倉庫内天部には、清浄空気を通気床に向かって噴出するように、ファンフイルターユニットFFUを定間隔、或いは所要間隔にて配設して構成する。
【0023】
なお、ダウンフローの吸込を、この実施例では通気床にて行うようにしているが、これは特に限定されるものではなく、例えば、図10に示すように、自動保管倉庫内側に形成するリターンダクト3の下部、すなわち、自動保管倉庫内側下部に形成した吸込口F4より吸い込むようにすることもできる。この自己循環方式の自動保管倉庫においては、天井部のファンフイルターユニットFFUから吹き出されるダウンフローDを側面下部から吸い込み、リターンダクト3を経て循環させるものである。
【0024】
次に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例の作用について、図3〜図4により説明する。
搬送台車Cが前回走行完了時停止した位置を走行ポジション1、また移動目的位置を走行ポジション2とし、かつこれを初期状態としてこの走行ポジション1における通気床Fの開口率を大になるように設定している。なお、この走行ポジション2の位置は、保管棚Lの位置に合わせて任意に設定することができる。
【0025】
そして、この走行ポジション1から走行ポジション2へ搬送台車Cが移動する場合、走行ポジション1位置における通気床F1の開口率を予め設定した時間、例えば、T1秒後に初期状態の開口率大から開口率小へ作動するようにする。
なお、この通気床F1の開口率小とは、予め設定した清浄空気のダウンフロー流速を得られるようにして設定されている。
また、走行ポジション2位置における通気床F2の開口率を、搬送台車Cの走行距離などにより決定する時間、例えば、T2秒後に開口率小から開口率大へ作動するようにする。その後、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2に向かって走行を開始し、走行ポジション2位置に達すると停止し、搬送台車の走行を終了する。
【0026】
このように、搬送台車Cが移動する前に走行前位置と走行後停止位置での通気床F1、F2の開口率を調整しておくため、搬送台車Cの移動に合わせてダウンフローの流速を局部的に効率的に増加させることができ、搬送台車走行時の発塵は、通常のダウンフローにて通気床側に吸引され外部へ排出され、特に搬送台車Cの停止時に舞い上がらんとする塵埃は、流速を増したダウンフロー流速にて押さえ込まれるようになって通気床側に吸引され塵埃の拡散を未然に防止することができる。
【0027】
以上の実施例では、走行ポジション1と走行ポジション2の定点において、通気床の開口率を調節してダウンフロー流速を変えるようにしているが、図9に示すように、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へ、或いはその反対方向へ移動する際、その走行に追従して逐次調節するようにすることもできる。
この場合は、搬送台車Cの走行移動位置を逐次、特に限定されるものではないが、例えば、センサー等(図示省略)にて検知して、搬送台車Cの検知位置に追従して、ダウンフローの流速を順次局部的に変化させるようにする。これにより、搬送台車Cの走行移動に追従して発生する粉塵を確実にダウンフロー流速にて押さえ込み、塵埃の拡散を防止することができる。
【実施例2】
【0028】
図5〜図6に、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第2実施例を示す。この第2実施例では、搬送台車CとしてRGVを採用して説明しているが、この搬送台車の種別は特に限定されるものではない。
この場合は、走行ポジション1と走行ポジション2との位置を予め設定した場合で、その構成は大体第1実施例と同じように構成するが、特に異なる構成部分は、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置し、かつこのファンフイルターユニットFFUによるダウンフロー流速を搬送台車走行時の発塵を通気床に吸引できる程度の最小必要なる流速となるようにして設定し、かつ走行ポジション1と走行ポジション2における通気床F1、F2のみを、その開口率が可変式とし、他の部分の通気床F3の開口率を固定式とし、さらに搬送台車Cの走行範囲で、かつ走行ポジション1と走行ポジション2の近傍に搬送台車の通過を検知するセンサーS1及びS2をそれぞれ配設して構成する。
そして、このセンサーS1、S2による検知信号で走行ポジション1或いは走行ポジション2位置における通気床F1、F2の開口率を調整するようにするものである。
【0029】
図5(A)及び図6(A)は、搬送台車が走行ポジション1から走行ポジション2へ移動する場合を示す。
搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へ走行を開始し、この搬送台車Cが走行ポジション1近傍にあるセンサーS1にて検知されると、走行ポジション1位置の可変式の通気床F1が作動してその開口率大から開口率小へ作動するようになり、走行ポジション1近傍の通気床位置のダウンフロー流速が通常のダウンフロー流速に低下する。そして、搬送台車Cがそのまま走行して走行ポジション2近傍のセンサーS2にて検知されると、走行ポジション2近傍の通気床F2の開口率小から開口率大へと作動するようになる。これにより、走行ポジション2近傍のダウンフロー流速が増す。この状態で搬送台車Cが走行ポジション2位置で停止すると流速を増したダウンフローにて搬送台車停止時において舞い上がらんとする塵埃を通気床側に吸引して外部へ排出される。
【0030】
また、搬送台車が走行ポジション2から走行ポジション1へ移動する場合、図5(B)及び図6(B)に示すように、その詳細説明は省略するが、同様に走行ポジション2及び走行ポジション1位置の通気床F1、F2の開口率が反対になるようにそれぞれ調整されるものである。
【実施例3】
【0031】
図7〜図8は、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第3実施例を示す。この第3実施例は、第2実施例の構成において配設するファンフイルターユニットFFUの配置間隔を、搬送台車Cの走行位置においては粗になるように、また、走行ポジション1と走行ポジション2においては密に、望ましくは、主なるファンフイルターユニットFFUと補助ファンフイルターユニットFFU1又は補助ファンフイルターユニットFFU2とを互いに連接するようにして配置して構成し、この走行ポジション1と走行ポジション2位置に配設する補助ファンフイルターユニットFFU1又は補助ファンフイルターユニットFFU2の稼働調整と、同位置における通気床F1、F2の開口率の調整との組み合わせによりダウンフロー流速を調整するようにする。
【0032】
図7及び図8(A)は、搬送台車Cが走行ポジション1から走行ポジション2へと移動する場合を示す。
搬送台車が走行ポジション1から走行ポジション2へ走行を開始し、この搬送台車Cが走行ポジション1近傍にあるセンサーS1にて検知されると、走行ポジション1位置の可変式の通気床F1が作動してその開口率大から開口率小へ作動するとともに、同位置の補助ファンフイルターユニットFFU1を停止することで、走行ポジション1位置におけるダウンフロー流速を大流量から小流量の通常流量へと調節する。
【0033】
搬送台車Cがそのまま走行して走行ポジション2近傍のセンサーS2にて検知されると、走行ポジション2近傍の通気床F2の開口率小から開口率大へと作動するようにするとともに、同位置の補助ファンフイルターユニットFFU2を稼働するようになり、走行ポジション2近傍のダウンフロー流速が増す。この状態で搬送台車が走行ポジション2位置で停止すると流速を増したダウンフローにて搬送台車停止時において舞い上がらんとする塵埃を通気床側に吸引して外部へ排出される。
【0034】
また、反対に搬送台車Cが走行ポジション2から走行ポジション1へと移動する場合は、図7及び図8(B)に示すように、同様に走行ポジション2及び走行ポジション1位置の通気床F1、F2の開口率及び補助ファンフイルターユニットFFU1、2が反対になるようにそれぞれ調整されるもので、その詳細説明を省略する。
なお、第2及び第3実施例においても、例えば、図10に示すように、リターンダクト3及びリターンダクト3の下端に配設し、かつ開口率を可変調整できるようにしたダウンフローの吸込口F4を搬送台車走行方向に沿った側面壁下部に備えた自己循環方式の自動保管倉庫にも適することができる。さらに、走行する搬送台車Cをコントローラ或いはセンサーにてその走行位置を検知し、この検知位置に追従して、ダウンフローの流速を順次局部的に変化させるようにすることもできる。
【0035】
また、図9に示す実施例は、第2実施例及び第3実施例の変形例で、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置し、かつこのファンフイルターユニットFFUによるダウンフロー流速を搬送台車走行時の発塵を通気床に吸引できる程度の最小必要なる流速となるようにして設定し、搬送指示(From−To)に従い、コントローラが搬送台車の通過の床開口率を大きくし、通過後の床開口率を元に戻すように、指示を出すようにする。なお、この場合、ストッカーの異常時には一定時間後に床開口率を元に戻すようにする。
また、移載ポジションにおける床は、すべて可変開口率の床とし、エリア分けされており、搬送台車の走行通過に応じてその開口率を切り替えるようにする。
【実施例4】
【0036】
また、図11は、本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第4実施例を示す。
この実施例においては、天井部に配設するファンフイルターユニットFFUをほぼ定間隔に配置すること、搬送台車の走行に沿った床を通気床とすること、及び搬送台車の走行に追従してファンフイルターユニットFFUの稼働制御、通気床の開口率制御を行うことは、すべて上記実施例と同じように構成する。ただし、この第4実施例においては、自動保管倉庫Sの端部壁面にリターンダクト3を配設する。
このリターンダクト3の下端には、開口率を可変調整できるようにしたダウンフローの吸込口F5を配設し、このダウンフローの吸込口F4の開口率を搬送台車が端部壁面位置或いはその近くに停止する場合、搬送台車の走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流を発生させ、塵埃が巻き上がるようになるのを、このダウンフローの吸込口F5の開口率を大きくすることで、該乱流による巻き上がる塵埃をも吸い込むようにするものである。
また、図12は、第4実施例の変形例を示す。
この変形例は、搬送台車の走行に沿った床を通気床を自動保管倉庫Sの端部壁面よりさらに外側まで配設するようにしたものである。これにより、搬送台車の走行によって発生した走行方向の風がこの壁面に衝突し、乱流発生により塵埃が巻き上がるのを、搬送台車の走行終端位置の通気床より吸引するようにするものであり、その制御は上記実施例と同じようにする。
【0037】
以上、本発明のクリーン搬送装置における空調システムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その実施例の組み合わせ及びその構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のクリーン搬送装置における空調システムは、必要最小限度のファンフイルターユニットの設置数で、かつ搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して必要な箇所のみのダウンフロー流速を高めることにより、局部的に効率的なダウンフローを形成するという特性を有していることから、自動保管倉庫内空調システムの用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のクリーン搬送装置における空調システムの第1実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面縦断面図、(C)は正面縦断面図である。
【図2】搬送台車の走行動作の説明図で、(A)は平面図、(B)は側面縦断面図である。
【図3】搬送台車の走行動作後における発塵排出の説明図である。
【図4】搬送台車の走行動作フロー図である。
【図5】本発明の第2実施例を示し、(A)は搬送台車の走行動作前の側面縦断面図、(B)は停止時の側面縦断面図である。
【図6】第2実施例における搬送台車の走行動作フロー図で、(A)は走行ポジション1から走行ポジション2へ走行する場合の走行動作フロー図、(B)は走行ポジション2から走行ポジション1へ走行する場合の走行動作フロー図である。
【図7】本発明の第3実施例を示す側面縦断面図である。
【図8】第3実施例における搬送台車の走行動作フロー図で、(A)は走行ポジション1から走行ポジション2へ走行する場合の走行動作フロー図、(B)は走行ポジション2から走行ポジション1へ走行する場合の走行動作フロー図である。
【図9】第2実施例及び第3実施例の変形例を示す側面縦断面図である。
【図10】本発明のクリーン搬送装置における空調システムをリターンダクトを備えた自己循環方式の自動保管倉庫に適用した実施例の正面縦断面図である。
【図11】本発明の第4実施例を示し、(A)は搬送台車の始動時を示す側面縦断面図、(B)は搬送台車の終点位置での停止時を示す側面縦断面図である。
【図12】第4実施例の変形を示す側面縦断面図である。
【図13】従来のクリーン搬送装置における空調システムの説明図である。
【図14】従来の異なるクリーン搬送装置における空調システムの説明図である。
【符号の説明】
【0040】
C 搬送台車
F 通気床
F1 走行ポジション1位置の通気床
F2 走行ポジション2位置の通気床
F3 開口率固定式の通気床
F4 ダウンフローの吸込口
F5 ダウンフローの吸込口
K カセット
L 保管棚
S 自動保管倉庫
S1 走行ポジション1近傍のセンサー
S2 走行ポジション2近傍のセンサー
R 走行レール
FFU ファンフイルターユニット
FFU1 補助ファンフイルターユニット
FFU2 補助ファンフイルターユニット
1 走行ポジション
2 走行ポジション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成したことを特徴とするクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項2】
搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成したことを特徴とする請求項1記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項3】
ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項4】
ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項5】
ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項6】
ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項7】
ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項1】
液晶基板を収納するカセットを保管する保管棚と、カセットをレールに沿って搬送する搬送台車と、保管棚に清浄空気を供給するファンフイルターユニットとを備えたクリーン搬送装置において、ダウンフロー内を走行可能とした搬送台車の走行位置及び/又は停止位置に追従して、該搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すように調整可能に構成したことを特徴とするクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項2】
搬送台車の走行位置及び/又は停止位置のダウンフローの流速を増すようにダウンフローの吸込口の開口率を可変調整可能に構成したことを特徴とする請求項1記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項3】
ダウンフロー流速の増減調整を、ダウンフローの吸込口の開口率の可変調整と、ファンフイルターユニットの風量調整との組み合わせにより行うように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項4】
ダウンフロー流速の増加を、ファンフイルターユニットの稼働運転数を切り替えて行うように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項5】
ダウンフロー流速の増加を、風量調整可能なファンフイルターユニットを用いて行うように構成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項6】
ダウンフロー流速の増減調整を、走行する搬送台車の走行位置をセンサーにて検出して行うように構成したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【請求項7】
ダウンフローの吸込口を、搬送台車の走行方向に沿う壁面下部位置に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のクリーン搬送装置における空調システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−12927(P2009−12927A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176424(P2007−176424)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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