説明

クロック供給装置

【課題】運用系および待機系システムクロックの位相を、バックボード間の配線遅延量、温度変化および電圧変動に起因するバッファ遅延の変化量を含め一致させたシステムクロック供給装置を提供する。
【解決手段】システムクロック1に位相同期した運用系および待機系システムクロック6を出力する冗長構成とされた運用系および待機系システムクロック供給部200と運用系および待機系システムクロックを装置内各部へ分配するためのバックボード8を有する。システムクロック1に位相同期したクロック22を生成するPLL210は、運用系システムクロックを基準とし、待機系システムクロックの位相を制御する位相差調整部211を含んだ構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック供給装置に係り、特に運用系クロック供給部と、待機系クロック供給部とを有するクロック供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照して、従来の伝送装置のシステム構成を説明する。伝送装置100は、信頼性向上のため、冗長構成とされた運用系クロック盤4−1および待機系クロック盤4−2、コントロール盤10、バックボード8、4台のインターフェース盤9とから構成されている。2台のクロック盤4は、それぞれPLL41とCLK(clock)分配部43とから構成されている。バックボード8は、伝送装置100の背面に並行に配置され、クロック盤4、コントロール盤10、インターフェース盤9を挿入接続する複数の図示しないコネクタを備える。バックボード8は、クロック盤4、コントロール盤10、インターフェース盤9を相互接続する。インターフェース盤9は、セレクタ91、PLL92、Serdes(Serializer/deserializer)94、光Mod(Module)95から構成されている。
【0003】
クロック盤4は、上位装置から供給されるシステムクロック1に位相同期したクロック42をPLL41にて生成する。クロック盤4は、さらに、PLL41にて生成されたクロック42について、CLK分配部43とバックボード8を介し、運用系クロック7−1および待機系システムクロック7−2として、インターフェース盤9等の装置内各部に分配する。コントロール盤10は、CLK制御部11にて運用系システムクロック7−1および待機系システムクロック7−2の選択信号12を生成する。コントロール盤10は、選択信号12をインターフェース盤9のセレクタ91に入力する。インターフェース盤9は、PLL92において選択信号12にて選択されたシステムクロック7に位相同期した回線クロック93を生成する。PLL92で生成された回線クロック93は、データ処理を行うSerdes94の基準クロックに使用される。Serdes94は、受信した並列電気信号を高速の直列電気信号に変換して、光Mod95に送信する。Serdes94は、さらに光Mod95から受信した直列電気信号を、低速な並列電気信号に変換する。光モジュール95は、Serdes94から受信した電気信号を光信号に変換して、光ファイバ96に送信する。光モジュール95は、また光ファイバ96から受信した光信号を電気信号に変換して、Serdes94に送信する。
【0004】
上述した伝送装置において、運用系のシステムクロックに異常が発生した場合、インターフェース盤9に影響を及ぼさないよう、待機系のシステムクロックに切り替える。ここで、システムクロックの切り替えを行う際に、運用系および待機系システムクロックに、お互いのクロック間に位相差が発生している場合、インターフェース盤9において、クロックの位相飛び(間延び)およびグリッジ(出力のバタツキ)が生じる。インターフェース盤9ではシステムクロックに基づきデータ処理を行っているため、クロックの位相飛びまたはグリッジの発生は、データの欠落などによる通信障害を引き起こす恐れがある。
【0005】
また、伝送装置などの通信システムにおいては、システムクロックの切り替えにともなう運用系および待機系システムクロック、回線クロックの位相変動量を、ITU−T等の国際規格によって勧告化されている。システムクロックの切り替えにおける通信障害の回避およびITU−T等の国際規格に準拠するために、運用系および待機系システムクロック間の位相合せまたはインターフェース盤等に搭載されるPLLによる位相変動の抑圧などが挙げられる。運用系および待機系システムクロック間で発生する位相差の量によっては、PLL特性に厳しい設計仕様が与えられ回路設計が困難となる。このため、運用系および待機系システムクロック間で発生する位相差は、最小限に抑える必要がある。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1は、上位装置から供給されるシステムクロックと、上位装置から供給されるシステムクロックに位相同期した運用系および待機系システムクロックの出力端までのそれぞれの遅延量を同じとなるように、運用系および待機系システムクロックのクロック間の位相差を調整する技術を開示する。
【0007】
また、特許文献2では、上位装置から供給されるシステムクロックに位相同期した運用系および待機系システムクロックが出力端におけるクロック間の位相差を調整する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−229020号公報
【特許文献2】特開2007−060180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、運用系および待機系システムクロックのクロック間の位相を調整するために、運用系システムクロックに与える遅延量と待機系システムクロックに与える遅延量をいずれも調整する必要がある。これは装置が運用中であった場合、温度変化または電圧変動に起因するバッファ遅延量を調整するうえで、運用系として選択されているシステムクロックに与える遅延量を調整する。また、待機系のシステムクロック供給装置を交換した場合も、上述と同様に、運用系として選択されているシステムクロックに与える遅延量を調整する。このため、運用系として選択されているシステムクロックに位相飛びまたはグリッジを発生させる恐れがある。なお、上述したクロックの位相飛びまたはグリッジを回避するために、後段にPLLを設ける場合、部品数の増加によるシステムコストが上昇し、小型化への対応が困難である。
【0010】
特許文献2は、運用系として選択されたシステムクロックの位相を基準とし、待機系システムクロックに与える遅延量を調整する。したがって、運用系として選択されたシステムクロックは、位相飛びおよびグリッジは発生しない。しかし、位相調整の手段としてディレイラインによる遅延回路を採用しているため、位相の最大調整可能範囲は、搭載されるディレイラインの数量と遅延量とによって制限されてしまう。さらに、温度変化または電圧変動に起因するディレイラインの遅延量に変化が生じた場合、運用系と選択されているシステムクロックに位相変動が発生する恐れがある。また、ディレイラインによる遅延量は離散的である。さらに、運用系および待機系間の交絡信号の配線遅延に起因する位相差までは調整できない。これらのため、運用系システムクロックから待機系システムクロックに切り替える際に、システムクロックの位相飛びまたはグリッジを発生させる恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題点を解消し、冗長構成とされた運用系および待機系システムクロックの位相を、バックボード間の配線遅延量、温度変化または電圧変動に起因するバッファ遅延の変化量を含め一致させるシステムクロック供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、第1のクロック供給部と、第2のクロック供給部と、第1のクロック供給部からの第1のクロックと第2のクロック供給部とからの第2のクロックとをクロック供給先に接続し、かつ第1のクロック供給部からの第1の交絡信号を第1のクロック供給部と第2のクロック供給部とに接続し、さらに第2のクロック供給部からの第2の交絡信号を第1のクロック供給部と第2のクロック供給部とに接続するプリント基板と、第1のクロックと第2のクロックとの一方を選択するクロック制御部とからなり、第1のクロック供給部と第2のクロック供給部とは、それぞれPLLと入出力バッファとを備え、PLLは、他系のクロックを基準として自系のクロックの位相差を検出する位相差検出部と、この位相差検出部の検出結果を積分する積分器とを備え、積分器の出力を参照して、クロックの位相を制御するクロック供給装置により、達成できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係わるクロック供給装置によれば、冗長構成とされた運用系および待機系システムクロックの位相を、バックボード間の配線遅延量、温度変化または電圧変動に起因するバッファ遅延の変化量を含め一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】伝送装置のブロック図である。
【図2】システムクロック供給部を冗長化したシステムクロック供給装置を説明する伝送装置のブロック図である。
【図3】PLLのブロック図である。
【図4】PLLの他のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には、同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0016】
図2において、伝送装置300は、2系統のシステムクロック供給部200と、4枚のインターフェース盤9と、バックボード8Aと、コントロール盤10とから構成されている。バックボード8Aは、システムクロック供給部200からのシステムクロック6をインターフェース盤9に分配する。
【0017】
システムクロック供給装置は、2系統のシステムクロック供給部200と、バックボード8Aと、CLK制御部とから構成されている。システムクロック供給装置は、2系統のシステムクロック供給部200により、クロックを冗長化している。システムクロック供給部200は、上位装置から供給されるシステムクロック1に位相同期したシステムクロック6をそれぞれ出力する。
【0018】
また、システムクロック供給部200は、システムクロック1に位相同期したクロック22および交絡信号24を出力するPLL210と、CLK分配用出力バッファとCLK入力用バッファを備えたバッファIC230とから構成されている。また、運用系および待機系システムクロック供給部200内において、PLL210とバッファIC230間の配線29−1と、配線29−2は、配線長を等長設計とする。また、バックボード8において、装置内各部へ分配される運用系システムクロック6−1の配線81−1および待機系システムクロック6−2の配線81−2は、配線長を等長設計とする。さらに、運用系システムクロック供給部200−1および待機系システムクロック供給部200−2間の交絡信号25と、バックボード8を介して自システムクロック供給装置に折り返し入力される自系位相検出信号26の配線83−1、83−2は、配線長を等長設計とする。
【0019】
コントロール盤10のCLK制御部11は、インターフェース盤9における運用系および待機系システムクロックの選択信号12を生成し、出力する。コントロール盤10のCLK制御部11は、運用系および待機系システムクロック供給部200における系通知信号13を生成し、出力する。なお、運用系通知信号13−1および待機系通知信号13−2は、極性が反転している。
【0020】
また、PLL210は、位相差調整部211を含む。位相差調整部211は、位相制御値をPLLに送信する。なお、運用系の位相差調整部211の位相差調整値は、「0」である。また、待機系の位相差調整部211の位相差調整値は、運用系のクロック位相を基準とした、待機系のクロック位相との差の積分値である。
【0021】
図3を参照して、PLL210の構成を説明する。図3において、PLL210Aは、位相比較部30、LPF(Low Pass Filter)32、D/A変換器33、VCO(Voltage Controlled Oscillator)34、位相差調整部211とから、構成される。位相差調整部211は、さらに位相差検出部36、積分器35、セレクタ37、位相制御部31とから構成されている。
【0022】
位相比較部30は、システムクロック1と、VCO34の出力との位相を比較する。位相比較部30は、システムクロック1と、VCO34の出力との間に位相差を検出すると、誤差信号パルスを生成する。LPF32は、誤差信号パルスを直流電圧信号に変換する。D/A変換器33は、直流電圧信号をD/A変換して、直流電圧に変換する。VCO34は、直流電圧に相当する周波数だけ出力の周波数を変化させる。PLL210を構成する位相差検出部30、位相制御部31、LPF32、D/A変換器32、VCO34、再び位相差検出部36のループを主ループと呼ぶ。
【0023】
位相差検出部36は、他系のクロック位相を基準に、自系のクロック位相との差を検出する。積分器35は、主ループの帰還数N回分の位相差を積分する。セレクタ37は、0(ゼロ)信号と、積分器35の出力と、系通知信号13とを入力とする。セレクタ37は、系通知信号13が運用系通知信号13−1のとき、0信号を出力する。セレクタ37は、系通知信号13が待機系通知信号13−2のとき、積分器35の出力を出力する。位相制御部31は、主ループの帰還数N回につき1回、位相比較部30の出力と、セレクタ37の出力を加算する。位相制御部31、LPF32、D/A33、VCO34、図2のバッファIC230(2段)、位相差検出部36、積分器35、セレクタ37、再び位相制御部31のループを副ループと呼ぶ。なお、位相差調整部211は、PLL210Aの外部に置かれてもよい。
【0024】
図2に戻って、システムクロック供給装置の動作を説明する。なお、説明の都合上、システムクロック供給200−1を運用系、システムクロック供給部200−2を待機系として説明する。
【0025】
図2において、上位装置から供給されるシステムクロック1は、運用系システムクロック供給部および待機系システムクロック供給部200に入力される。PLL210は、システムクロック1に位相同期したクロック22を生成する。PLL210は、さらに、運用系システムクロック供給部200−1および待機系システムクロック供給部200−2間での交絡信号24−1、24−2を生成する。
【0026】
また、バッファIC230は、クロック22を運用系システムクロックまたは待機系システムクロック6としてインターフェース盤9に分配する。バッファIC230は、さらに、交絡信号24について、自系位相検出信号25、他系位相検出信号26として運用系システムクロック供給部200−1および待機系システムクロック供給部200−2に分配する。また、バッファIC230は、運用系または待機系システムクロック供給部200から供給される他系位相検出信号25、自系位相検出信号26を、PLL210に、他系位相検出信号28、自系位相検出信号27として入力する。
【0027】
ここで、待機系システムクロック供給部200−2では、コントロール盤10から入力された待機系通知信号13−2によって、PLL210から出力されるクロック22の位相制御を行なう。なお、運用系システムクロック供給部200−1には極性の反転された制御信号13−1が入力されているため、PLL210から出力されるクロック22の位相制御は行なわない。
【0028】
ここで、運用系システムクロック供給部200−1から出力される運用系システムクロック6−1のインターフェース盤9までの遅延量Act Clk Delayは、(式1)に起因する遅延量で示される。
【0029】
Act Clk Delay
=PLL210-1+配線29-1+バッファ230-1+配線81-1 …(式1)
同様に、待機系システムクロック供給部200−2から出力される待機系システムクロック6−2のインターフェース盤9までの遅延量Stb Clk Delayは、(式2)に起因する遅延量で示される。
【0030】
Stb Clk Delay
=PLL210-2+配線29-2+バッファ230-2+配線81-2 …(式2)
ここで、インターフェース盤9における運用系システムクロック6−1および待機系システムクロック6−2のクロック位相差Clk Ph Diffは、(式1)と(式2)の差分である。さらに配線29−1と29−2、配線81−1と81−2はそれぞれ配線長が等長設計であることを考慮すると、(式3)に起因する位相差が発生する。
【0031】
Clk Ph Diff
=Act Clk Delay−Stb Clk Delay
=PLL210-1−PLL210-2+バッファ230-1−バッファ230-2(式3)
従って、(式3)に起因する位相差をゼロにすることで、位相の一致した運用系システムクロック6−1および待機系システムクロック6−2をインターフェース盤9に供給することが可能となる。
【0032】
さらに、待機系システムクロック供給部200−2のPLL210−2内の位相差調整部211において、運用系システムクロック供給部200−1からの他系位相検出信号28の遅延量Act Sig Delayは、(式4)に起因する遅延量で示される。
【0033】
Act Sig Delay
=PLL210-1+配線29-1+バッファ230-1
+配線83-1+バッファ230-2+配線29-2…(式4)
また、待機系システムクロック供給部200−2に折り返し入力される自系位相検出信号27の遅延量Stb Sig Delayは、(式5)に起因する遅延量で示される。
【0034】
Stb Sig Delay
=PLL210-2+配線29-2+バッファ230-2
+配線83-2+バッファ230-2+配線29-2…(式5)
ここで、待機系システムクロック供給部200−2のPLL210内の位相差調整部211にて得られる運用系システムクロック供給部200−1からの他系位相検出信号28と待機系システムクロック供給部200−2に折り返し入力される自系位相検出信号27の位相差Sig Ph Diffは、(式4)と(式5)の差分である。さらに、配線29−1と29−2、配線83−1と83−2はそれぞれ配線長が等長設計であることを考慮すると、(式6)に起因する位相差が得られる。
【0035】
Sig Ph Diff
=Act Sig Delay−Stb Sig Delay
=PLL210-1−PLL210-2+バッファ230-1−バッファ230-2(式6)
なお、待機系システムクロック供給部200−2のPLL210内の位相制御部31は、(式6)にて得られる位相差をゼロとするようにクロック22の位相制御を行なう。
(式3)と(式6)は、同一であるから、(式6)にて得られる位相差をゼロにするということは、(式3)にて発生する位相差をゼロにすることと同一である。すなわち、位相の一致した運用系システムクロック6−1および待機系システムクロック6−2をインターフェース盤9に供給することが可能となる。
【0036】
図3において、待機系のPLL210−2は、運用系システムクロック供給部200−1からの他系位相検出信号28と待機系システムクロック供給部200−2に折り返し入力される自系位相検出信号27を入力される。さらに、位相差検出部36は、他系位相検出信号28を基準として、他系位相検出信号28と自系位相検出信号27の位相差を遅れまたは進みに伴い、正または負の位相差検出結果51として出力する。さらに位相差検出結果51は、積分器35に入力される。積分器35は、位相差積分結果52を出力する。位相差積分結果52は、セレクタ37に入力される。セレクタ37は、さらにコントロール盤10より入力される待機系通知信号13−2により、セレクタ37は位相差積分結果52を選択し位相制御値53として出力する。なお、運用系システムクロック供給部200−1においては、コントロール盤10より入力される運用系通知信号13−1により、ゼロを選択し、位相比較結果50をそのまま出力することで、運用系システムクロック供給部200−1は、クロック間の位相制御を行われない。
【0037】
また、位相比較部30は、上位装置から供給されるシステムクロック1に位相同期したクロック22を生成するための位相比較結果50を出力する。位相制御部31は、主ループの位相比較結果50と、副ループの位相制御値53の加算を行なう。位相制御部31は、位相制御結果54として出力する。なお、位相制御部31における位相比較結果50と位相制御値53の加算サイクルは、主ループ特性に影響を及ぼさない程度の加算サイクルにて実施する。位相制御結果54は、LPF32、D/A変換33にて制御電圧55に変換される。VCO34は、制御電圧55によりクロック22の周波数を変化させる。なお、クロック22−2の周波数を変化させることは位相も変化することになる。この結果、位相比較部30の出力である位相比較結果50と、位相差検出部36の出力である位相差検出結果51も変化する。なお、この動作を位相制御部31の出力結果である位相制御結果54が定常状態となる一定値に収束するまで繰り返す。
【0038】
ここで位相制御部31における位相制御結果54が一定値に収束するということは、セレクタ37で選択された位相制御値53と位相比較部30における位相比較結果50が一定値に収束することを意味している。さらにセレクタ37で選択された位相制御値53が一定値に収束するということは、積分器35に入力される位相差検出結果51がゼロになることを意味している。さらにこれは、位相差検出部36において他系位相検出信号28と自系位相検出信号27の位相が一致していることである。すなわち、運用系システムクロック6−1および待機系システムクロック6−2の位相が一致していることを示すものである。
【0039】
図4を参照して、他の実施例によるPLLの構成を説明する。図4において、PLL210Bは、周波数比較部38、積分部39、位相差調整部211、LPF32、D/A33、VCO34から構成される。位相差調整部211、LPF32、D/A33、VCO34は、図3と同じなので、説明を省く。図3との対比から明らかなように、PLL120Bは、位相比較部30について、周波数比較部38と積分器39とで置き換えた構成である。周波数比較部38は、システムクロック1の周波数と、VCO34の出力の周波数を比較する。周波数比較部38は、両者に差があったとき、誤差信号を出力する。積分器39は、誤差信号を積分して、位相差誤差信号パルスに変換する。なお、位相差調整部211は、PLL210Bの外部に置かれてもよい。
【0040】
主ループに関して、周波数比較を行う周波数比較部38と積分器39による構成とした場合においても、位相制御部31の出力結果である位相制御結果54が定常状態となる一定値に収束するまで繰り返す。これは、セレクタ37で選択された位相制御値53が一定値に収束するということである。さらにこれは、積分器35に入力される位相差検出結果51がゼロになることを意味しており、同様の効果を得ることが可能となる。
【0041】
以上説明したように本実施例によれば、冗長構成された運用系システムクロックおよび待機系システムクロックの位相を、バックボード間の配線遅延量、温度変化または電圧変動に起因するバッファ遅延の変化量を含め一致させることができる。
【符号の説明】
【0042】
8…バックボード、9…インターフェース盤、10…コントロール盤、11…CLK制御部、30…位相比較部、31…位相制御部、32…LPF、33…D/A変換器、34…VCO、35…積分器、36…位相差検出部、37…セレクタ、38…周波数比較部、39…積分器、91…セレクタ、92…PLL、100…伝送装置、200…システムクロック供給部、210…PLL、211…位相差調整部、230…バッファIC、300…伝送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック供給部と、第2のクロック供給部と、前記第1のクロック供給部からの第1のクロックと前記第2のクロック供給部とからの第2のクロックとをクロック供給先に接続し、かつ前記第1のクロック供給部からの第1の交絡信号を前記第1のクロック供給部と前記第2のクロック供給部とに接続し、さらに前記第2のクロック供給部からの第2の交絡信号を前記第1のクロック供給部と前記第2のクロック供給部とに接続するプリント基板と、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの一方を選択するクロック制御部とからなるクロック供給装置であって、
前記第1のクロック供給部と前記第2のクロック供給部とは、それぞれPLLと入出力バッファとを備え、
前記PLLは、他系のクロックを基準として自系のクロックの位相差を検出する位相差検出部と、この位相差検出部の検出結果を積分する積分器とを備え、前記積分器の出力を参照して、クロックの位相を制御することを特徴とするクロック供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクロック供給装置であって、
前記入出力バッファは、前記PLLが出力したクロックと交絡信号とを前記プリント基板に接続し、さらに前記プリント基板からの自系交絡信号と他系交絡信号とを前記PLLに接続することを特徴とするクロック供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載のクロック供給装置であって、
前記プリント基板は、前記第1のクロックと前記第2のクロックとの配線長差を予め定めた第1の値以下、かつ前記第1の交絡信号と前記第2の交絡信号との配線長差を予め定めた第2の値以下とされていることを特徴とするクロック供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−226162(P2010−226162A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67902(P2009−67902)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】