説明

クローポール型モータ及びポンプ

【課題】ポンプの組立作業性を向上させることのできるモータを得る。
【解決手段】ステータ5は、環状コイル52(巻線)が配置される環状の中空部が設けられたステータコア51を備え、前記ステータコア51とポンプケース6とに、ステータコア51をポンプケース6に係止する係止手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローポール型モータ及び当該クローポール型モータを駆動源とするポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、液体を吸排するポンプなどでは、羽根車を回転駆動させるモータとして爪磁極を有したクローポール型モータを使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このクローポール型モータは、構造が比較的単純であることから生産性が良く、しかも製造コストも低く抑えることができるという利点を有している。
【0003】
この特許文献1では、ポンプは、液体を吸排する羽根車と、吸入口及び吐出口を有したポンプケースと、羽根車を回転自在に収容させるポンプ室を前記ポンプケースと対をなして形成する分離板と、羽根車を回転駆動させるマグネットを有したロータと、ロータに回転駆動力を伝達する爪磁極を有したステータとを備え、前記分離板にて前記ロータと前記ステータとを水密状態に分離した構造となっている。
【特許文献1】特表2003−505648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、モータをポンプに搭載させる際に、ステータを分離壁に対して固定し、当該ステータが固定された分離壁をハウジング前側部分とハウジング後側部分とで挟持して、複数のネジで共締めすることにより組立を行っているため、ポンプの組立作業が複雑であるとの問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポンプの組立作業性を向上させることのできるモータを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明は、周方向に沿ってマグネットを有する回転可能なロータと、周方向に沿って複数配置されるとともに隣接するもの同士が軸方向において互いに逆方向に向けて延在する爪磁極を有し、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備え、液体を吸排させるポンプのポンプケースに取り付けられるクローポール型モータであって、前記ステータは、巻線が配置される環状の中空部が設けられたステータコアを備え、前記ステータコアと前記ポンプケースとに、ステータコアをポンプケースに係止する係止手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステータコアとポンプケースとに、ステータコアをポンプケースに係止する係止手段を設けたため、より簡素な構成でポンプの組立作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態のポンプ1を示した図であり、図1は斜視図、図2は、図1中のA−A断面図を示している。本実施形態のポンプ1は、例えば、給湯器や家庭用のシャワーなどで利用されるものであり、液体を吸排する羽根車3と、液体を吸入する吸入口12および液体を吐出する吐出口13を有するポンプケース6と、羽根車3を回転自在に収容させるポンプ室9を前記ポンプケース6と対をなして形成する分離板2と、ポンプ1の駆動源となるクローポール型モータと、を備えている。このクローポール型モータは、羽根車3を回転駆動させるマグネット42を有したロータ4と、ロータ4に回転駆動力を伝達する爪磁極53を有したステータ5と、ステータ5で発生させた磁界を制御する制御基板7と、を備えている。
【0010】
そして、本実施形態のポンプ1に用いられるクローポール型モータは、分離板2を挟んで内側にロータ4を配置し且つ外側にステータ5を配置した、いわゆるインナー型ロータ構造のモータ構成となっている。
【0011】
ポンプ室9は、天面中央に開口された吸入口12と側壁に設けられた吐出口13とを有したポンプケース6に、ロータ4とステータ5とを水密状態に分離(ポンプ部とモータ部を分離)する分離板2が結合されることにより形成されている。なお、ポンプケース6と分離板2の結合部分には、ポンプ部とモータ部を水密状態に仕切るためにシール部材8を介在させている。
【0012】
ロータ4は、羽根車3と一体化されたロータ本体41と、ロータ本体41の外壁(外周側)に設けられた複数のマグネット42とで構成されている。マグネット42は、周方向に沿って等間隔でN極とS極とが交互に並ぶように配置されている。そして、ロータ本体41と分離板2との間には、ロータ4の回転時に接触しない程度の隙間(クリアランス)が確保されており、この隙間に液体が浸入することでロータ本体41が分離板2と接触せずに宙に浮いた状態となり、ロータ4の回転が可能となる。
【0013】
ステータ5は、ロータ4の外周側に対向して配置された環状のステータコア51とこのステータコア51の内部に収容される環状コイル52(巻線)とで構成されている。ステータ5は、電流を流すことにより環状コイル52で発生した磁界を、ステータコア51が備える複数の爪磁極53からロータ4へと伝達する。
【0014】
制御基板7は、分離板2の背面に設けられており、ロータ5の回転位置を検出するセンサ(位置検出部11)からの信号を受けて、環状コイル52に流す電流を制御する。これにより、制御基板6は、ロータ4の回転位置に応じて、環状コイル52で発生した磁界を制御する。
【0015】
なお、本実施形態のポンプ1は、ステータ5及び環状コイル52への通電を制御する制御基板7がモールド樹脂10により被覆されている。このため、制御基板7を含めたモータ部全体をこのモールド樹脂10で保護することができると共に、さらに強度も高めることができる。
【0016】
このように構成されたポンプ1は、環状コイル52において発生する磁界が爪磁極53からマグネット42へと伝達されることにより、このマグネット42が吸引反発し、ロータ4と一体化された羽根車3が回転駆動する。そして、この羽根車3の回転にともないポンプ作用が発生し、液体が吸入口12よりポンプ室7内へと吸い込まれ、羽根車3により遠心力を加えられて吐出孔13からポンプ1外へと吐出される。
【0017】
次に、本実施形態の特徴部分であるステータ5の構造について詳しく説明する。
【0018】
上述したように、ステータ5は、複数の爪磁極53を有したステータコア51とこのステータコア51の内部に収容される環状コイル52とで構成されている。ロータ4に回転駆動力を伝達する爪磁極53は、ロータ4のマグネット42の周面と対向するように配置され、周方向で隣接するもの同士が互いに逆の軸方向に向けて爪が延在している。爪の向きの異なる爪磁極53を周方向で交互に配設することで、ロータ4のマグネット42に対向するS極とN極を構成している。
【0019】
このような爪磁極53を有したステータコア51は、当該爪磁極53のうち軸方向の一方の方向に向けて延在する爪磁極53bを周方向に沿って複数配置させた第1コア51bと、他方の軸方向に向けて延在する爪磁極53aを周方向に沿って複数配置させた第2コア51aとを備えており、これらが環状コイル52を収容するため中空部を有した形状で、互いに分離可能となっている。
【0020】
なお、本実施形態のステータコア51は、金型のキャビティ(図示せぬ)内に磁性粉を充填し圧縮することにより成形した圧粉鉄心で構成されている。この圧粉鉄心は、鉄粉個々の表面を例えばリン酸皮膜処理などの無機絶縁皮膜でコーティングし、粒子間を樹脂バインドした構造であり、高周波での鉄損失が低く(渦電流損失が低く)、また飽和磁束密度が大きくしかも耐熱性に優れるという利点を備えている。
【0021】
ここで、本実施形態では、このステータコア51を構成する片側の第1コア51bとポンプケース6とに、ステータコア51をポンプケース6に係止する係止手段を設けたことに最大の特徴が挙げられる。
【0022】
具体的には、第1コア51bは、当該第1コア51bの爪磁極53bとこの爪磁極53bの基端部からモータ軸の径方向に延びる基底部54bと環状コイル52の外周側を覆う外周部55とを有した断面略コの字状に形成され、係止手段はこの第1コア51bの外周部55に設けられている。
【0023】
すなわち、図3に示すように、本実施形態では、係止手段としてのネジ50が第1コア51bの外周部55から突設されており、ポンプケース6の内周面には当該ネジ50に対向するネジ溝60が設けられている。
【0024】
一方、もう片側の第2コア51aは、第1コア51bの爪磁極53bとは逆方向に向けて延在した爪磁極53aと第1コア51bの基底部54bに対向する基底部54aとを有した断面略L字状に形成されている。
【0025】
このようにして構成される本実施形態のポンプ1では、ステータ5をポンプ1に搭載させる際に、第1コア51bの爪磁極53bと第2コア51aの爪磁極53aとが周方向で互いに重ならないようオフセット配置して内部に環状コイル52を収容し、第1コア51bが備えるネジ50をポンプケース6のネジ溝60に螺合させることで、ポンプ1への組み付けを完了させることができる。
【0026】
つまり、図2に示すように、第1コア51bのネジ50がポンプケース6のネジ溝60に螺合される際には、第1コア51bの基底部54bとポンプケース6の内壁15との間に分離板2の端部2aが挟持される。したがって、第1コア51bのネジ50をポンプケース6のネジ溝60に螺合するだけで分離板2の固定も同時に行うことができ、ポンプ1の組立作業性を向上させることができる。
【0027】
また、ステータコア51がポンプケース6に直接固定される構成とすることで、クローポール型モータのポンプケース6への取付状況の確認が容易になるという利点もある。
【0028】
以下、その他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同様の構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のポンプ1Aを示している。本実施形態のポンプ1Aは、上記第1実施形態のポンプ1に対して、第1コア51bとポンプケース6との係止手段が異なるものである。
【0030】
すなわち、図4に示すように、本実施形態では、係止手段として凸部50Aが第1コア51bの外周部55から突設されており、ポンプケース6の内周面には当該凸部50Aに対向する凹部60Aが設けられている点に最大の特徴が挙げられる。
【0031】
第1コア51bの凸部50Aは、例えば、弾性変形が可能な部材により構成され、当該凸部50Aをポンプケース6の内周面に摺接させながら押し込むことで、ポンプケース6の凹部60Aに嵌合させている。
【0032】
このような構成とすることで、第1コア51bの凸部50Aとポンプケース6の凹部60Aの凹凸嵌合によりステータ5をポンプケース6に取付けることができるため、上記第1実施形態のポンプ1に対して、さらにポンプ1Aの組立作業性を向上させることができるという利点がある。
【0033】
なお、本実施形態では、第1コア51bの外周部55に凸部50Aを突設し、ポンプケース6の内周面に当該凸部50Aに対向する凹部60Aを配設したが、この凹凸部はどちらに配設してもよく、第1コア51bの外周部55に凹部60Aを設け、ポンプケース6の内周面に当該凹部に対向する凸部50Aを突設させてもよい。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態のポンプ1Bを示している。本実施形態のポンプ1Bも、上記第1実施形態のポンプ1に対して、第1コア51bとポンプケース6との係止手段が異なるものである。
【0035】
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、第1コア51bは、当該第1コア51bの基底部54bの基端から径方向外側に延出された延出片58を備えており、この延出片58に係止手段としての孔部50Bが設けられている。
【0036】
そして、ポンプケース6の開口端には、第1コア51bの孔部50Bに係合させる突起部60Bが突設されており、この突起部60Bを延出片58の孔部50Bに貫通させ、例えば、当該突起部60Bが備える爪を延出片58の側面に係止させることで固定が行われる。
【0037】
このような構成とすることで、ポンプケース6の突起部60Bを第1コア51bの孔部50Bに係合させるだけでステータ5をポンプケース6に取付けることができるため、上記第2実施形態と同様、ポンプ1Bの組立作業性をさらに向上させることができるという利点がある。
【0038】
なお、本実施形態では、第1コア51bに孔部50Bを設け、ポンプケース6に突起部60を配設させる形態を例に挙げて説明したが、こちらも第2実施形態と同様に孔部50Bと突起部60Bはどちらに配設してもよく、第1コア51bに突起部60Bを突設させ、ポンプケース6に孔部50Bを設けるように構成してもよい。
【0039】
なお、上述した各実施形態では、ステータコア51を圧粉鉄心で構成する形態を例示したが本発明はこれに限定されない。例えば、ステータコア51は、磁性粉と樹脂バインダとを混合した混合材料をインジェクション成形にて作成してもよい。このケースでは、表面にリン酸皮膜処理などの絶縁処理を行った磁性粉とナイロンなどの熱可塑性樹脂を混ぜ合わせた混合材料を用いることができる。なお、ステータコア51を圧粉鉄心で構成した場合には、電磁軟鉄材を用いる場合と比較して損失を小さくすることができ、同体積でより高出力のモータを構成することができるという利点がある。これに対して、インジェクション成形の場合には、圧粉体で構成された場合と比較して製造コストを低減することができるという利点がある。
【0040】
また、ステータコア51は、例えば、金属ガラスで構成してもよい。ステータコア51を金属ガラスで構成した場合には、圧粉鉄心で構成された場合と比較して、渦電流損を低く抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるポンプの斜視図を示している。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるポンプの分解図を示している。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるポンプの断面図を示している。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるポンプの断面図を示している。
【符号の説明】
【0042】
1 ポンプ
4 ロータ
5 ステータ
6 ポンプケース
42 マグネット
51 ステータコア
52 環状コイル(巻線)
53 爪磁極
50、50A、50B、60、60A、60B 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿ってマグネットを有する回転可能なロータと、周方向に沿って複数配置されるとともに隣接するもの同士が軸方向において互いに逆方向に向けて延在する爪磁極を有し、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備え、液体を吸排させるポンプのポンプケースに取り付けられるクローポール型モータであって、
前記ステータは、巻線が配置される環状の中空部が設けられたステータコアを備え、
前記ステータコアと前記ポンプケースとに、ステータコアをポンプケースに係止する係止手段が設けられていることを特徴とするクローポール型モータ。
【請求項2】
前記係止手段が、互いに螺合するネジとネジ溝とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクローポール型モータ。
【請求項3】
前記係止手段が、互いに嵌合する凸凹部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクローポール型モータ。
【請求項4】
前記係止手段が、互いに係合する孔部と突起部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクローポール型モータ。
【請求項5】
前記ステータコアを、磁性粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したことを特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項に記載のクローポール型モータ。
【請求項6】
前記ステータコアを、磁性粉と樹脂バインダとを混合した混合材料をインジェクション成形することで構成したことを特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項に記載のクローポール型モータ。
【請求項7】
前記ステータコアを、金属ガラスで構成したことを特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項に記載のクローポール型モータ。
【請求項8】
前記ステータ及び前記巻線への通電を制御する制御基板がモールド樹脂により被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のうち何れか1項に記載のクローポール型モータ。
【請求項9】
請求項1〜8のうち何れか1項に記載の前記クローポール型モータを駆動源とするポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−11577(P2010−11577A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165713(P2008−165713)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】