説明

グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含有する医薬組成物

本発明は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体をDPP IV阻害薬と組み合わせて含有し、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、および高血糖症から選択される1つ以上の状態を治療または予防するのに適した、請求項1に記載の医薬組成物に関する。さらに、本発明は、代謝障害および関連状態の予防または治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後記式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血中グルコース異常および高血糖症から選択される1種以上の状態を治療または予防するのに適している後で指定するDPP IV阻害薬と組み合わせて含有する医薬組成物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、それを必要とする患者における、
・代謝障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療する方法;
・血糖コントロールを改善し、かつ/または空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法;
・耐糖能異常、空腹時血中グルコース異常、インスリン抵抗性および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防し、減速し、遅延させ、または逆転させる方法;
・糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療する方法;
・体重を低下させる、または体重増加を予防する、または体重低下を促進する方法;
・膵臓β細胞の変性を予防または治療し、かつ/または膵臓β細胞の機能を改善および/または回復し、かつ/または膵臓のインスリン分泌機能を回復する方法;
・肝脂肪の異常な蓄積に帰せられる疾患または状態を予防し、減速し、遅延させ、または治療する方法;
・インスリン感受性を維持および/または改善し、かつ/または高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防する方法;
であって、後で定義する式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法に関する。
【0003】
加えて、本発明は、前記または後記の方法において使用するための薬剤を製造するための、後で定義する式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の使用に関する。
【0004】
加えて、本発明は、前記または後記の方法において使用するための薬剤を製造するための、後で定義するDPP IV阻害薬の使用に関する。
【0005】
本発明は、また、前記または後記の方法において使用するための薬剤を製造するための、本発明による医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0006】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、先行技術、例えば、国際公開第01/27128号、同03/099836号、同2005/092877号、同2006/034489号、同2006/064033号、同2006/117359号、同2006/117360号、同2007/025943号、同2007/028814号、同2007/031548号、同2007/093610号、同2007/128749号、同2008/049923号、同2008/055870号、同2008/055940号中に記載されている。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、尿糖排泄の誘導因子として、および糖尿病治療の薬剤として提案される。
【0007】
数ある機序の中でも、グルコースの腎濾過および再取込みは、血漿中グルコース濃度の定常状態に貢献し、そのため、抗糖尿病の標的として役立つことができる。濾過されたグルコースの腎上皮細胞を横切る再取込みは、細管中の刷子縁膜中に配置されたナトリウム依存性グルコース共輸送体(SGLT)を経由してナトリウム勾配に沿って進行する(1)。それらの発現パターンおよびそれらの物理化学的特性を異にする少なくとも3種のSGLTアイソフォームが存在する(2)。SGLT2は、もっぱら腎臓中で発現され(3)、一方、SGLT1は、さらに、小腸、結腸、骨格および心筋などの他の組織中で発現される(4、5)。SGLT3は、どんな輸送機能も有さない小腸の間質細胞中のグルコースセンサーであることが見出されている(6)。潜在的には、他の関連はしているが未だ特徴付けられていない遺伝子が、さらに、腎臓のグルコース再取込みに寄与している可能性がある(7、8、9)。正常血糖の下で、グルコースは、腎臓中のSGLTによって完全に再吸収されるが、腎臓の再取込み能力は、10mMを超えるグルコース濃度で飽和され、尿糖(「糖尿病」)をもたらす。この閾値濃度を、SGLT2阻害薬で低下させることができる。SGLT阻害薬フロリジンを用いた実験で、SGLTの阻害は、糸球体濾液から血液中へのグルコース再取込みを部分的に阻害し、血中グルコース濃度の低下および糖尿につながることが明らかにされた(10、11)
【0008】
(1)Wright,E.M.(2001)Am.J.Renal Physiol.280,F10〜F18;
(2)Wright,E.M.ら(2004)Pflugers Arch.447(5):510〜8;
(3)You,G.ら(1995)J.Biol.Chem.270(49)29365〜29371;
(4)Pajor AM,Wright EM(1992)J.Biol.Chem.267(6):3557〜3560;
(5)Zhou,L.ら(2003)J.Cell.Biochem.90:339〜346;
(6)Diez−Sampedro,A.ら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(20),11753〜11758;
(7)Tabatabai,N.M.(2003)Kidney Int.64,1320〜1330;
(8)Curtis,R.A.J.(2003)米国特許出願公開第2003/0054453号;
(9)Bruss,M.およびBonisch,H.(2001)Cloning and functional characterization of a new human sugar transporter in kidney(Genbank Acc.No.AJ305237);
(10)Rossetti,L.ら、(987)J.Clin.Invest.79,1510〜1515;
(11)Gouvea,W.L.(1989)Kidney Int.35(4):1041〜1048。
【0009】
DPP IV阻害薬は、2型糖尿病を有する患者における血糖コントロールを治療または改善するために開発されている新規な部類の薬剤を代表する。
【0010】
例えば、DPP IV阻害薬およびそれらの使用は、国際公開第2002/068420号、同2004/018467号、同2004/018468号、同2004/018469号、同2004/041820号、同2004/046148号、同2005/051950号、同2005/082906号、同2005/063750号、同2005/085246号、同2006/027204号、同2006/029769号、同2007/014886号、同2004/050658号、同2004/111051号、同2005/058901号、同2005/097798号、同2006/068163号、同2007/071738号、同2008/017670号、同2007/054201号、または同2007/128761号中に開示されている。
【0011】
さらなるDPP IV阻害薬としては、次の化合物を挙げることができる:
・下記の構造式A
【化1】

を有するシタグリプチン(Sitagliptin)(MK−0431)は、(3R)−3−アミノ−1−[3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−5H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7−イル]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−1−オンであり、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンとも命名される。
【0012】
一実施形態において、シタグリプチンは、そのリン酸二水素塩、すなわちリン酸シタグリプチンの形態である。さらなる実施形態において、リン酸シタグリプチンは、結晶性の無水物または一水和物の形態である。この部類の実施形態は、リン酸シタグリプチン一水和物を指す。シタグリプチンの遊離塩基およびその医薬として許容し得る塩は、米国特許第6699871号および国際公開第03/004498号の実施例7中に開示されている。結晶性のリン酸シタグリプチン一水和物は、国際公開第2005/003135号および同2007/050485号中に開示されている。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造または製剤化方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。シタグリプチンの錠剤型製剤は、Januvia(登録商標)の商標名で市販されている。
【0013】
・下記の構造式B
【化2】

を有するビルダグリプチン(Vildagliptin)(LAF−237)は、(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}ピロリジン−2−カルボニトリルであり、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンとも命名される。
【0014】
ビルダグリプチンは、米国特許第6166063号および国際公開第00/34241号の実施例1中に具体的に開示されている。ビルダグリプチンの具体的な塩は、国際公開第2007/019255号中に開示されている。結晶性形態のビルダグリプチンおよびビルダグリプチン錠剤型製剤は、国際公開第2006/078593号中に開示されている。ビルダグリプチンは、国際公開第00/34241号または同2005/067976号に記載のように製剤化することができる。放出調節ビルダグリプチン製剤は、国際公開第2006/135723号中に記載されている。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造または製剤化方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。ビルダグリプチンの錠剤型製剤は、Galvus(登録商標)の商標名で市販されていると予想される。
【0015】
・下記の構造式C
【化3】

を有するサキサグリプチン(Saxagliptin)(BMS−477118)は、(1S,3S,5S)−2−{(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル}−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルであり、(S)−3−ヒドロキシアダマンチルグリシン−L−シス−4,5−メタノプロリンニトリルとも命名される。
【0016】
サキサグリプチンは、米国特許第6395767号および国際公開第01/68603号の実施例60中に具体的に開示されている。一実施形態において、サキサグリプチンは、国際公開第2004/052850号中に開示されているような、そのHCl塩またはその一安息香酸塩の形態である。さらなる実施形態において、サキサグリプチンは、遊離塩基の形態である。なおさらなる実施形態において、サキサグリプチンは、国際公開第2004/052850号中に開示されているような遊離塩基の一水和物の形態である。サキサグリプチンの調製方法は、また、国際公開第2005/106011号および同2005/115982号中に開示されている。サキサグリプチンは、国際公開第2005/117841号中に記載されているように錠剤に製剤化することができる。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0017】
・下記の構造式D
【化4】

を有するデナグリプチン(Denagliptin)(GSK−823093)は、(2S,4S)−1−[(2S)−2−アミノ−3,3−ビス(4−フルオロフェニル)プロピオニル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルであり、(2S,4S)−4−フルオロ−1−[4−フルオロ−β−(4−フルオロフェニル)−L−フェニルアラニル]−2−ピロリジンカルボニトリルとも命名される。
【0018】
デナグリプチンは、米国特許第7132443号および国際公開第03/002531号中に具体的に開示されている。一実施形態において、デナグリプチンは、国際公開第03/002531号の実施例2中に開示されているようなその塩酸塩、または国際公開第2005/009956号中に開示されているようなそのトシル酸塩の形態である。この部類の実施形態は、トシル酸デナグリプチンを指す。結晶性の無水トリル酸デナグリプチンは、国際公開第2005/009956号中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩の製造方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0019】
・下記の構造式E
【化5】

を有するアログリプチン(Alogliptin)(SYR−322)は、2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリルである。
【0020】
アログリプチンは、米国特許出願公開第2005/261271号、欧州特許第1586571号および国際公開第2005/095381号中に具体的に開示されている。一実施形態において、アログリプチンは、国際公開第2007/035629号中に各々開示されているように、その安息香酸塩、その塩酸塩またはそのトシル酸塩の形態である。この部類の実施形態は、安息香酸アログリプチンを指す。安息香酸アログリプチンの多形体が、国際公開第2007/035372号中に開示されている。アログリプチンの調製方法は、国際公開第2007/112368号、および特に国際公開第2007/035629号中に開示されている。アログリプチン(すなわち、その安息香酸塩)は、国際公開第2007/033266号中に記載のように、錠剤に製剤化し、投与することができる。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0021】
・(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたはその医薬として許容し得る塩、好ましくはメシル酸塩、あるいは
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたはその医薬として許容し得る塩。
【0022】
これらの化合物およびそれらの調製方法は、国際公開第03/037327号中に開示されている。前者の化合物のメシル酸塩およびその結晶性多形体が、国際公開第2006/100181号中に開示されている。後者の化合物のフマル酸塩およびその結晶性多形体が、国際公開第2007/071576号中に開示されている。これらの化合物は、国際公開第2007/017423号中に記載のように、医薬組成物に製剤化することができる。したがって、例えばこれらの化合物またはそれらの塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0023】
・(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンまたはその医薬として許容し得る塩。
【化6】

【0024】
この化合物およびその調製方法は、国際公開第2005/000848号中に開示されている。この化合物(特にその二塩酸塩)の調製方法は、また、国際公開第2008/031749号、同2008/031750号および同2008/055814号中に開示されている。この化合物は、国際公開第2007/017423号中に記載のように、医薬組成物に製剤化することができる。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0025】
・(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノンまたはその医薬として許容し得る塩。
【0026】
この化合物およびその調製方法は、国際公開第2005/116014号および米国特許第7291618号中に開示されている。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0027】
・(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オンまたはその医薬として許容し得る塩。
【化7】

【0028】
この化合物およびその調製方法は、国際公開第2007/148185号および米国特許出願公開第2007/0299076号中に開示されている。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0029】
・(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルまたはその医薬として許容し得る塩。
【化8】

【0030】
この化合物およびその調製方法は、国際公開第2006/040625号および同2008/001195号中に開示されている。具体的に特許請求される塩には、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0031】
・(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリルまたはその医薬として許容し得る塩。
【化9】

【0032】
この化合物およびその調製方法ならびに使用は、国際公開第2005/095381号、米国特許出願公開第2007/060530号、国際公開第2007/035629号、同2007/074884号、同2007/112368号、および同2008/033851号中に開示されている。具体的に特許請求される塩には、コハク酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、(R)−マンデル酸塩、および塩酸塩が含まれる。したがって、例えばこの化合物またはその塩の製造、製剤化または使用方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0033】
あるゆる疑いを回避するために、特定のDPP IV阻害薬に関連して前に引用した前述の各文献の開示は、参照によりその全体で本明細書中に具体的に組み込まれる。
【0034】
2型糖尿病は、高い出現率の合併症が平均余命のかなりの短縮をもたらすため、ますます広く認められつつある疾患である。糖尿病に付随する微小血管性合併症のため、2型糖尿病は、現在、工業化社会において、成人発症型視力喪失、腎不全、および切断の最も頻度の高い原因である。加えて、2型糖尿病の存在は、心血管疾患リスクの2〜5倍の増加と関連している。
【0035】
疾患の長い継続期間の後に、2型糖尿病を有する患者のほとんどは、結局、経口療法に失敗し、日々の注射および1日数回のグルコース測定を必要とするインスリン依存性となる。
【0036】
UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)は、メトフォルミン、スルホニルウレアまたはインスリンでの強化治療は、血糖コントロールの限られた改善をもたらすだけであることを立証した(約0.9%のHbA1c差)。加えて、強化治療アーム内の患者においてさえ、血糖コントロールは、長い間に相当に悪化し、このことは、β細胞の機能悪化に帰せられた。重要なことに、強化治療は、大血管性合併症、すなわち心血管事象の相当の低減と関連していなかった。
【0037】
したがって、血糖コントロールに関して、疾患改善特性に関して、および心血管性の病態および死亡率の低減に関して、改善された安全性プロフィールを示すと同時に良好な効力を有する、方法、薬剤および医薬組成物に対するいまだ満たされていない医学的必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明の目的
本発明の目的は、代謝障害、特に2型糖尿病を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療するための医薬組成物および方法を提供することである。
【0039】
本発明のさらなる目的は、それを必要とする患者における血糖コントロールを改善するための医薬組成物および方法を提供することである。
【0040】
本発明の別の目的は、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を、予防し、減速し、または遅延させるための医薬組成物および方法を提供することである。
【0041】
本発明のさらに別の目的は、糖尿病の合併症からなる群に由来する状態または障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療するための医薬組成物および方法を提供することである。
【0042】
本発明のさらなる目的は、それを必要とする患者における、体重を低下させるための、または体重増加を予防するための医薬組成物および方法を提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、代謝障害、特に糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、および/または高血糖症を治療するための高い効力を有し、良好から極めて良好な薬理学的および/または薬物動力学的および/または物理化学的特性を有する新規医薬組成物を提供することである。
【0044】
以上および以下の説明、ならびに実施例によって本発明のさらなる目的も、当業者にとって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0045】
驚くべきことに、本発明の範囲内で、患者における代謝障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療するために、特に血糖コントロールを改善するのに、後で定義する式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含有する医薬組成物を、後で特定するDPP IV阻害薬と併用して有利に使用できることが見出された。このことは、2型糖尿病、過体重、肥満、糖尿病の合併症、および近隣の疾患状態の治療および予防における新たな治療可能性を開く。
【0046】
したがって、第1態様において、本発明は、式I
【化10】

(式中、R1は、Cl、メチルまたはシアノを意味し;R2は、H、メチル、メトキシまたはヒドロキシを意味し;R3は、エチル、シクロプロピル、エチニル、エトキシ、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ、または(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシを意味する)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、
【0047】
第1実施形態(実施形態A)では、
式(I)
【化11】

または式(II)
【化12】

または式(III)
【化13】

または式(IV)
【化14】

(式中、R1は、([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル、(キナゾリン−2−イル)メチル、(キノキサリン−6−イル)メチル、(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル、2−シアノ−ベンジル、(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル、(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル、(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル、または(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチルを意味し、R2は、3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル、(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノまたは(2−(S)−アミノ−プロピル)−メチルアミノを意味する)あるいはその医薬として許容し得る塩のDPP IV阻害薬と組み合わせて;あるいは
【0048】
第2実施形態(実施形態B)では、
シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、デナグリプチン、
(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、
(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン、
(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オン、
(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、および
(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリル、またはその医薬として許容し得る塩、からなる群から選択されるDPP IV阻害薬と組み合わせて含有する医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満、および代謝症候群からなる群から選択される代謝障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0050】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、血糖コントロールを改善し、かつ/または空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0051】
本発明による医薬組成物は、また、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性および/または代謝症候群に関連する疾患または状態について価値ある疾患改善特性を有する可能性がある。
【0052】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防し、減速し、遅延させ、または逆転させる方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0053】
本発明による医薬組成物を使用することによって、それを必要とする患者における血糖コントロールの改善を達成することができ、また、増加した血中グルコース濃度に関連した、またはそれによって引き起こされる状態および/または疾患を治療することができる。
【0054】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、白内障、ならびに腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈閉塞性疾患のような微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防し、進行を減速し、遅延させ、または治療する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。用語「組織虚血」は、詳細には、糖尿病性大血管障害、糖尿病性微小血管障害、創傷治癒異常、および糖尿病性潰瘍を包含する。
【0055】
本発明による医薬組成物を投与することによって、かつグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のSGLT2阻害活性により、過剰な血中グルコース濃度は、脂肪などの不溶性の貯蔵形態に転化されず、患者の尿を経由して排泄される。したがって、結果として、体重増加はなく、体重低下さえある。
【0056】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、体重を低下させる、体重増加を予防する、または体重低下を促進する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0057】
本発明による医薬組成物中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の薬理学的効果は、インスリンに無関係である。したがって、血糖コントロールの改善は、膵臓β細胞に対する付加的負担なしに実行できる。本発明による医薬組成物を投与することによって、β細胞の変性、および例えば膵臓β細胞のアポトーシスまたはネクローシスなどのβ細胞の機能低下を、遅延させ、または予防できる。さらに、膵臓細胞の機能を、改善または回復することができ、膵臓β細胞の数および大きさを増加させることができる。高血糖症によって乱された膵臓β細胞の分化状態および過形成を、本発明による医薬組成物での治療によって正常化できることが明らかにされる可能性がある。
【0058】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防し、減速し、遅延させ、または治療する、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復する、ならびに/あるいは膵臓インスリンの分泌機能を回復する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0059】
本発明による組合せまたは医薬組成物を投与することによって、肝臓での異常な脂肪蓄積を低減または抑制することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、肝脂肪の異常蓄積に帰せられる疾患または状態を予防し、減速し、遅延させ、または治療する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。肝脂肪の異常蓄積に帰せられる疾患または状態は、詳細には、一般的脂肪肝、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、過栄養誘発性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール誘発性脂肪肝、または中毒性脂肪肝からなる群から選択される。
【0060】
これらの結果として、本発明の別の態様は、それを必要とする患者における、インスリン感受性を維持および/または改善する、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防する方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0061】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、
・1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満、および代謝症候群からなる群から選択される代謝異常を予防し、その進行を減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・血糖コントロールを改善するための、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための薬剤;あるいは
・耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性、および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防し、減速し、遅延させ、または逆転させるための薬剤;あるいは
・白内障、ならびに腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈閉塞性疾患のような微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防し、その進行を減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・体重を低下させるための、または体重増加を予防するための、または体重低下を促進するための薬剤;あるいは
・膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防し、減速し、遅延させ、または治療するための、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復するための、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を回復するための薬剤;あるいは
・肝脂肪の異常な蓄積に帰せられる疾患または状態を予防し、減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・インスリン感受性を維持および/または改善するための、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防するための薬剤;
を製造するための前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の使用であって、
該グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする使用が提供される。
【0062】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする患者における、
・1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満、および代謝症候群からなる群から選択される代謝障害を予防し、その進行を減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・血糖コントロールを改善するための、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための薬剤;あるいは
・耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性、および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防し、減速し、遅延させ、または逆転させるための薬剤;あるいは
・白内障、ならびに腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈閉塞性疾患のような微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防し、その進行を減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・体重を低下させるための、または体重増加を予防するための、または体重低下を促進するための薬剤;あるいは
・膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防し、減速し、遅延させ、または治療するための、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復するための、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を回復するための薬剤;あるいは
・肝脂肪の異常な蓄積に帰せられる疾患または状態を予防し、減速し、遅延させ、または治療するための薬剤;あるいは
・インスリン感受性を維持および/または改善するための、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防するための薬剤;
を製造するための前および後で定義するDPP IV阻害薬の使用であって、該DPP IV阻害薬を、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と併用してまたは交互に投与することを特徴とする使用が提供される。
【0063】
本発明の別の態様によれば、前および後で説明する治療および予防方法のための薬剤を製造するための、本発明による医薬組成物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施例の結果を示す。
【図2】第2実施例の結果を示す。
【図3】第3実施例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
(定義)
本発明による医薬組成物に関する用語「活性成分」は、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体および/またはDPP IV阻害薬を意味する。
【0066】
ヒト患者に関する用語「ボディマスインデックス」または「BMI」は、身長(メートル)の二乗で除算された体重(キログラム)と定義され、よって、BMIはkg/m2の単位を有する。
【0067】
用語「過体重」は、個体が、25kg/m2以上30kg/m2未満のBMIを有する状態と定義され、用語「過体重」および「前肥満」は互換的に使用される。
【0068】
用語「肥満」は、個体が、30kg/m2以上のBMIを有する状態と定義される。WHOの定義によれば、用語「肥満」は、次のように類別できる:用語「肥満クラス1」は、BMIが30kg/m2以上かつ35kg/m2未満である状態であり、用語「肥満クラスII」は、BMIが35kg/m2以上かつ40kg/m2未満である状態であり、用語「肥満クラスIII」は、BMIが40kg/m2以上である状態である。
【0069】
用語「内臓肥満」は、男性で1.0以上、女性で0.8以上のウエスト対ヒップ比が測定される状態と定義される。それは、インスリン抵抗性および糖尿病前症の発症に対するリスクを明確にする。
【0070】
用語「腹部肥満」は、通常、ウエスト周囲が、男性で40インチまたは102cmを超え、女性で35インチまたは94cmを超える状態と定義される。日本民族または日本人患者に関して、腹部肥満は、男性で85cm以上、女性で90cm以上のウエスト周囲と定義することができる(日本では、例えば、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会を参照されたい)。
【0071】
用語「正常血糖」は、対象が、正常範囲内、すなわち70mg/dL(3.89ミリモル/L)超で、かつ110mg/dL(6.11ミリモル/L)未満の空腹時血中グルコース濃度を有する状態と定義される。単語「空腹時」は、医学用語としての通常の意味を有する。
【0072】
用語「高血糖症」は、対象が、正常範囲を上回る、すなわち110mg/dL(6.11ミリモル/L)を超える空腹時血中グルコース濃度を有する状態と定義される。単語「空腹時」は、医学用語としての通常の意味を有する。
【0073】
用語「低血糖症」は、対象が、60〜115mg/dL(3.3〜6.3ミリモル/L)の正常範囲未満のグルコース濃度を有する状態と定義される。
【0074】
用語「食後高血糖症」は、対象が、200mg/dL(11.11ミリモル/L)を超える食事2時間後血中グルコースまたは血清中グルコース濃度を有する状態と定義される。
【0075】
用語「空腹時血中グルコース異常」または「IFG」は、対象が、100〜125mg/dL(すなわち、5.6〜6.9ミリモル/L)の、特に、110mg/dLを超えかつ126mg/dL(7.00ミリモル/L)未満の範囲の空腹時血中グルコース濃度または空腹時血清中グルコース濃度を有する状態と定義される。「正常な空腹時グルコース」をもつ対象は、100mg/dLより小さな、すなわち5.6ミリモル/Lより小さな空腹時グルコース濃度を有する。
【0076】
用語「耐糖能異常」または「IGT」は、対象が、140mg/dL(7.78ミリモル/L)を超えかつ200mg/dL(11.11ミリモル/L)未満である食事2時間後血中グルコースまたは血清中グルコース濃度を有する状態と定義される。異常な耐糖能、すなわち食事2時間後血中グルコースまたは血清中グルコース濃度は、絶食後に75gのグルコースを摂取して2時間後の、血漿dL当たりのグルコースmg数での血糖レベルとして測定できる。「正常な耐糖能」をもつ対象は、140mg/dL(7.78ミリモル/L)より小さい食事2時間後血中グルコースまたは血清中グルコース濃度を有する。
【0077】
用語「高インスリン血症」は、正常血糖を有し、または有さないでインスリン抵抗性を有する対象が、1.0未満(男性)または0.8未満(女性)のウエスト対ヒップ比を有する、インスリン抵抗性を有さない。正常な痩せた個体の濃度を超えて高められた空腹時または食後の血清中または血漿中インスリン濃度を有する状態と定義される。
【0078】
用語「インスリンに対して敏感にする」、「インスリン抵抗性を改善する」または「インスリン抵抗性を低下させる」は、同義であり、互換的に使用される。
【0079】
用語「インスリン抵抗性」は、正常血糖状態を維持するのに、グルコース負荷に対する正常な反応を超える循環インスリンレベルが必要とされる状態と定義される(Ford ESら、JAMA.(2002)287:356〜9)。インスリン抵抗性を測定する方法が、正常血糖−高インスリン血クランプ試験である。インスリン/グルコース比を、インスリン−グルコース併用点滴技術の範囲内で測定する。グルコース吸収が、調べた基礎集団の25パーセンタイル未満であるなら、インスリン抵抗性であることがわかる(WHOの定義)。クランプ試験よりも容易なのが、いわゆるミニマルモデルであり、経静脈的なグルコース負荷試験の際に、血中のインスリンおよびグルコース濃度を一定の時間間隔で測定し、これらからインスリン抵抗性を計算する。この方法では、肝と末梢のインスリン抵抗性を区別することができない。
【0080】
さらに、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性を有する患者の療法に対する反応、インスリン感受性、および高インスリン血症を、インスリン抵抗性の信頼できる指標である「インスリン抵抗性に対するホメオスタシスモデル評価(HOMA−IR)」スコアを評価することによって定量化できる(Katsuki Aら、Diabetes Care 2001;24:362〜5)。インスリン感受性に関するHOMA指数の決定法(Matthewsら、Diabetologia 1985、28:412〜19)、完全プロインスリン/インスリン比の決定法(Forstら、Diabetes 2003,52(Suppl.1):A459)、ならびに正常血糖クランプ研究が、さらに参照される。加えて、血漿中アディポネクチン濃度を、インスリン感受性の潜在的代理値としてモニターすることができる。ホメオスタシス評価モデル(HOMA)−IRスコアによるインスリン抵抗性の見積もりは、式を用いて計算される(Galvin Pら、Diabet Med 1992;9:921〜8):
【0081】
HOMA−IR=[空腹時血清中インスリン(μU/mL)]×[空腹時血漿中グルコース(ミリモル/L)/22.5]
【0082】
通常、日常の臨床実践でインスリン抵抗性を評価するには、他のパラメーターが使用される。例えば、高められたトリグリセリド濃度はインスリン抵抗性の存在と有意に相関しているので、好ましくは、患者のトリグリセリド濃度が使用される。
【0083】
IGTもしくはIFGの発症、または2型糖尿病に対する素因を有する患者は、高インスリン血症を伴って正常血糖を有する者であり、定義によってインスリン抵抗性である。インスリン抵抗性を有する典型的な患者は、通常、過体重または肥満である。インスリン抵抗性を検知することができるなら、これは、糖尿病前症の存在の特に強力な証拠である。かくして、グルコースの恒常性を維持するために、健康な人の2〜3倍多いインスリンを必要とし、これなしではいずれかの臨床徴候をもたらす可能性がある。
【0084】
膵臓β細胞の機能を調べる方法は、インスリン感受性、高インスリン血症またはインスリン抵抗性に関する上記方法に類似しており:β細胞機能の改善は、例えば、β細胞機能に関するHOMA指数を(Matthewsら、Diabetologia 1985,28:412〜19)、完全プロインスリン/インスリン比を(Forstら、Diabetes 2003,52(Suppl.1):A459)、経口グルコース負荷試験または食物負荷試験後のインスリン/C−ペプチド分泌を測定することによって、あるいは高血糖クランプ研究および/または頻繁にサンプリングされる経静脈的グルコース負荷試験後のミニマルモデル化を採用することによって測定され得る(Stumvollら、Eur J Clin Invest 2001,31:380〜81)。
【0085】
用語「糖尿病前症」は、個体が、2型糖尿病を発症しやすい状態である。糖尿病前症は、耐糖能異常の定義を拡張し、100mg/dL以上の高正常範囲内の空腹時血中グルコースを有する(J.B.Meigsら、Diabetes 2003;52:1475〜1484)、および空腹時高インスリン血症(高められた血漿中インスリン濃度)を有する個体を包含する。深刻な健康上の脅威としての糖尿病前症を識別するための科学的および医学的基礎は、米国糖尿病学会および米国国立糖尿病消化器腎臓病研究所によって共同で発表された「2型糖尿病の予防と遅延(The Prevention or Delay of Type 2 Diabetes)」と題する見解表明(Position Statement)中で説明されている(Diabetes Care 2002;25:742〜749)。
【0086】
インスリン抵抗性を有する可能性のある個体は、次の属性:1)過体重または肥満、2)高血圧、3)高脂血症、4)IGTまたはIFGまたは2型糖尿病と診断された1人以上の一親等、の中の2つ以上を有する者である。これらの個体において、インスリン抵抗性は、HOMA−IRスコアを計算することによって確認できる。本発明の目的に関して、インスリン抵抗性は、個体が、4.0を超えるHOMA−IRスコア、またはグルコースおよびインスリンのアッセイを実施する実験室に対して規定された正常の上限を超えるHOMA−IRスコアを有する臨床状態と定義される。
【0087】
用語「2型糖尿病」は、対象が、125mg/dL(6.94ミリモル/L)を超える空腹時血中グルコースまたは血清中グルコース濃度を有する状態と定義される。血中グルコース値の測定は、定型的な医学的分析における標準的な方法である。グルコース負荷試験を実施すると、糖尿病患者の血糖レベルは、空腹の胃に75gのグルコースを受け入れて2時間後に、血漿dLにつきグルコース200mg(11.1ミリモル/L)を超える。グルコース負荷試験において、75gのグルコースは、10〜12時間の絶食後に被験患者に経口で投与され、血糖レベルを、グルコース摂取の直前、ならびに摂取の1および2時間後に記録する。健常対象において、血糖レベルは、グルコースを摂取する前で血漿dLにつき60〜110mg、グルコースを摂取して1時間後でdLにつき200mg未満、2時間後でdLにつき140mg未満である。2時間後の値が140〜200mgであるなら、異常な耐糖能と見なされる。
【0088】
用語「後期2型糖尿病」は、二次性薬物障害(secondary drug failure)、インスリン療法の適用、および微小および大血管性合併症、例えば、糖尿病性腎症または冠動脈性心疾患(CHD)への進行を伴う患者を包含する。
【0089】
用語「HbA1c」は、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化産生物を指す。その測定は、当業者に周知である。糖尿病の治療をモニターする上で、HbA1c値は、特別な重要性を有する。その産生が本質的に血糖濃度および赤血球の寿命に依存しているので、HbA1cは、「血糖記憶」の意味で、それ以前の4〜6週間の平均血糖濃度を反映する。そのHbA1c値が強化糖尿病治療によって一貫して十分に調節されている糖尿病患者(すなわち、検体中の総ヘモグロビンが6.5%未満)は、糖尿病性微小血管障害から有意によりよく保護される。例えば、メトフォルミンは、独力で、糖尿病患者において1.0〜1.5%程度のHbA1c値の平均的改善を達成する。HbA1c値のこの低下は、すべての糖尿病患者が所望される6.5%未満、好ましくは6%未満のHbA1cの目標範囲を達成するのに十分ではない。
【0090】
「代謝症候群」は、「シンドロームX」とも呼ばれ(代謝異常の文脈で使用される場合)、「代謝異常症候群」とも呼ばれ、インスリン抵抗性である基本的特徴を有する複合症候群である(Laaksonen DEら、Am J Epidemiol 2002;156:1070〜7)。ATP III/NCEPガイドライン(成人における高血中コレステロールの発見、評価および治療に関する米国コレステロール教育プログラム(NCEP)専門家委員会の第3次報告のエグゼクティブサマリー(成人治療委員会III)JAMA:Journal of the American Medical Association(2001)285:2486〜2497)によれば、次のリスク因子の3つ以上が存在する場合に、代謝症候群の診断がなされる:
1.男性で40インチまたは102cmを超える、女性で35インチまたは94cmを超えるウエスト周囲と定義される、あるいは日本民族または日本人患者に関しては、男性で85cm以上、女性で90cm以上のウエスト周囲と定義される腹部肥満;
2.トリグリセリド:≧150mg/dL;
3.HDL−コレステロール<40mg/dL(男性);
4.血圧≧130/85mmHg(SBP≧130またはDBP≧85);
5.空腹時血中グルコース≧110mg/dL。
【0091】
NCEPの定義は、検証されている(Laaksonen DEら、Am J Epidemiol.(2002)156:1070〜7)。血中トリグリセリドおよびHDLコレステロールも、医学的分析における標準的方法により測定することができ、例えば、Thomas L(編者):「実験および診断(Labor und Diagnose)」、TH−Books Verlagsgesellschaft mbH,Frankfurt/Main,2000中に記載されている。
【0092】
一般的に使用される定義によれば、収縮期血圧(SBP)が140mmHgの値を超え、拡張期血圧(DBP)が90mmHgの値を超えるなら、高血圧と診断される。患者が明白な糖尿病を患っているなら、現在、収縮期血圧を130mmHg未満のレベルまで低下させ、かつ拡張期血圧を80mmHg未満まで低下させることが推奨される。
【0093】
用語「治療」および「治療すること」は、特に明白な形態で前記状態を既に発症している患者の治療処置を含む。治療処置は、特定の徴候の症状を軽減するための対症治療、または徴候の状態を逆転させる、または部分的に逆転させる、あるいは疾患の進行を停止または減速するための原因治療でよい。したがって、本発明の組成物および方法は、例えば、ある期間にわたる治療処置として、および慢性療法のために使用できる。
【0094】
用語「予防的に治療する」、「予防として治療する」および「予防する」は、互換的に使用され、前に挙げた状態を発症するリスクにさらされている患者の治療、したがって前記リスクを低下させることを包含する。
【0095】
(詳細な説明)
本発明による態様、特に、医薬組成物、方法および使用は、前および後で定義する式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を指す。
【0096】
好ましくは、R1は、クロロまたはシアノ、特にクロロを意味する。
好ましくは、R2は、Hを意味する。
好ましくは、R3は、エチル、シクロプロピル、エチニル、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ、または(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシを意味する。さらにより好ましくは、R3は、シクロプロピル、エチニル、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ、または(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシを意味する。
【0097】
好ましいグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、次の化合物(1)〜(10)の群から選択される:

【0098】
さらにより好ましいグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、化合物(6)、(7)、(8)、(9)および(11)から選択される。
【0099】
本発明によれば、前に挙げたグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の定義は、それらの水和物、溶媒和物、およびこれらの多形形態をも包含することを理解されたい。好ましい化合物(7)に関して、その有利な結晶性形態が、その全体で本明細書中に組み込まれる国際公開第2007/028814号中に記載されている。好ましい化合物(8)に関して、その有利な結晶性形態が、その全体で本明細書中に組み込まれる国際公開第2006/117360号中に記載されている。好ましい化合物(9)に関して、その有利な結晶性形態が、その全体で本明細書中に組み込まれる国際公開第2006/117359号中に記載されている。好ましい化合物(11)に関して、その有利な結晶性形態が、その全体で本明細書中に組み込まれる国際公開第2008/049923号中に記載されている。これらの結晶性形態は、SGLT2阻害薬の良好な生物学的利用能を可能にする良好な溶解特性を保持する。さらに、それらの結晶性形態は、物理化学的に安定であり、かくして良好な貯蔵安定性を提供する。
【0100】
本発明による態様、特に医薬組成物、方法、および使用は、前および後で定義するDPP IV阻害薬またはそのプロドラッグ、あるいはそれらの医薬として許容し得る塩を指す。
【0101】
第1実施形態(実施形態A)に関して、好ましいDPP IV阻害薬は、次の化合物およびそれらの医薬として許容し得る塩のいずれかまたはすべてである:
【0102】
(A):1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2004/018468号、実施例2(142)参照)
【化15】

【0103】
(B):1−[([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2004/018468号、実施例2(252)参照)
【化16】

【0104】
(C):1−[(キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2004/018468号、実施例2(80)参照)
【化17】

【0105】
(D):2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−(ブト−2−イニル)−5−(4−メチル−キナゾリン−2−イルメチル)−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−d]ピリダジン−4−オン(国際公開第2004/050658号、実施例136参照)
【化18】

【0106】
(E):1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(国際公開第2006/029769号、実施例2(1)参照)
【化19】

【0107】
(F):1−[(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(30)参照)
【化20】

【0108】
(G):1−(2−シアノ−ベンジル)−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(39)参照)
【化21】

【0109】
(H):1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(S)−(2−アミノ−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(国際公開第2006/029769号、実施例2(4)参照)
【化22】

【0110】
(I):1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(52)参照)
【化23】

【0111】
(J):1−[(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(81)参照)
【化24】

【0112】
(K):1−[(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(82)参照)
【化25】

【0113】
(L):1−[(キノキサリン−6−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(国際公開第2005/085246号、実施例1(83)参照)
【化26】

【0114】
これらのDPP IV阻害薬は、それらが、特別に優れた効力および長期持続効果を、好都合な薬理学的特性、受容体選択性、および好都合な副作用プロフィールと合わせもつか、あるいは他の医薬として活性な物質と併用した場合に予想外の治療上の利点または改善をもたらすので、構造的に類似したDPP IV阻害薬から区別される。それらの調製は、列挙した刊行物中に開示されている。
【0115】
第2実施形態(実施形態B)に関して、好ましいDPP IV阻害薬は、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、およびアログリプチンからなる群から選択される。
【0116】
本発明によれば、前に挙げたDPP IV阻害薬の定義が、それらの医薬として許容し得る塩、ならびにそれらの水和物、溶媒和物および多形形態をも包含することを理解されたい。それらの塩、水和物および多形形態については、前および後で言及する参照文献が特に参照される。
【0117】
本発明による医薬組成物、方法および使用は、最も好ましくは、表1から選択される組合せに関する。
【0118】
【表1】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】

【0123】
表1に挙げた本発明による番号1〜176の組合せの中で、組合せ番号1、13、25、37、49、61、73、85、97、109、121、および133−176、特に、61、73、85、97、121、153〜168、および173〜176、さらにより好ましくは97、165、166、167および168を重視すべきである。
【0124】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との本発明による組合せは、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかを使用する単剤療法と比較して、特に後で説明するような患者における血糖コントロールを有意に改善する。改善された血糖コントロールは、血中グルコースの低下増進およびHbA1cの低下増進として測定される。患者、特に後で説明するような患者における単剤療法では、ある最高用量を超える薬物を投与しても、血糖コントロールをさらに有意に改善できないのが通常である。加えて、最高用量を使用する長期治療は、潜在的な副作用のため好ましくない可能性がある。したがって、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかを使用する単剤療法によって、すべての患者における十分な血糖コントロールを達成することはできない。このような患者において、糖尿病の進行は、継続する可能性があり、大血管性合併症などの、糖尿病に付随する合併症が発生する可能性がある。本発明による医薬組成物および方法は、HbA1c値の所望される目標範囲、例えば7%未満、好ましくは6.5%未満への低下を、対応する単剤療法に比較してより多数の患者に対して可能にする。
【0125】
加えて、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との本発明による組合せは、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらか、あるいは双方の活性成分の用量の低減を可能にする。用量の低減は、そうでなければグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかのより高い用量を使用する単剤療法における副作用に潜在的に苦しむ患者にとって有益である。したがって、本発明による医薬組成物および方法は、副作用を示すことが少なく、それによって、該療法をより忍容性とし、治療に関する患者のコンプライアンスを向上する。
【0126】
本発明によるDPP IV阻害薬を使用する単剤療法は、患者のインスリン分泌能またはインスリン感受性と無関係ではない。一方、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を投与する治療は、患者のインスリン分泌能またはインスリン感受性に依存しない。したがって、通常的インスリン濃度あるいはインスリン抵抗性および/または高インスリン血症とは無関係に、どんな患者も、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との本発明による組合せを使用する療法から利益を得ることができる。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を併用してまたは交互に投与するため、患者の通常的インスリン濃度あるいは患者のインスリン抵抗性または高インスリン血症とは無関係に、これらの患者を今まで通りDDP IV阻害薬で治療できる。
【0127】
本発明によるDPP IV阻害薬は、−活性GLP−1の濃度増大を介して−、患者のグルカゴン分泌を低下させることができる。したがって、これは、肝臓のグルコース産生を制限する。さらに、DPP IV阻害薬によってもたらされる活性GLP−1の濃度上昇は、β細胞の再生および新生に対して有益な効果を有する。DPP IV阻害薬のすべてのこれらの特徴は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体との併用を、相当に有用でかつ治療上重要なものにする。
【0128】
本発明が治療または予防を必要とする患者に言及する場合、それは、主としてヒトにおける治療および予防に関するが、該医薬組成物は、結果的に、哺乳動物に対する獣医学的薬剤中でも使用できる。
【0129】
前で説明したように、本発明による医薬組成物を投与することによって、特にその中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の高いSGLT2阻害活性のため、過剰な血中グルコースが、患者の尿を通して排泄され、結果として、体重増加がないか、あるいは体重減少さえももたらされる可能性がある。したがって、本発明による治療または予防は、過体重、クラスIの肥満、クラスIIの肥満、クラスIIIの肥満、内臓肥満および腹部肥満からなる群から選択される状態の1つ以上と診断され、このような治療または予防を必要とする患者に、あるいは体重増加が禁忌である個体に対して、有利に適している。
【0130】
本発明による医薬組成物、特にその中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、血糖コントロールに関して、特に空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコールおよび/またはグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)の低下に関して極めて良好な効果を呈示する。本発明による医薬組成物を投与することによって、好ましくは0.5%以上の、さらにより好ましくは1.0%以上のHbA1cの低下を達成することができ、その低下は、特に1.0%〜1.5%の範囲である。
【0131】
さらに、本発明による方法および/または使用は、次の状態の1つ、2つ、またはそれ以上を示す患者で有利に適用できる:
(a)110mg/dLを超える、特に125mg/dLを超える空腹時血中グルコースまたは血清中グルコース濃度;
(b)140mg/dL以上の食後血漿中グルコース;
(c)6.5%以上、特に8.0%以上のHbA1c値。
【0132】
本発明は、また、2型糖尿病を有する、または糖尿病前症の最初の症状を示す患者における血糖コントロールを改善するための医薬組成物の使用を開示する。したがって、本発明は、また、糖尿病の予防を包含する。それゆえ、糖尿病前症の上述の症状の1つが現われるとすぐに、本発明による医薬組成物を使用して血糖コントロールを改善すると、明白な2型糖尿病の開始を遅延させる、または予防することができる。
【0133】
さらに、本発明による医薬組成物は、インスリン依存性を有する患者の、すなわち、インスリン、インスリン誘導体、インスリン代替物、あるいはインスリン、その誘導体または代替物を含有する製剤で治療される、そうでなければ治療予定のまたは治療を必要とする患者における治療に特に適している。これらの患者には、2型糖尿病を有する患者および1型糖尿病を有する患者が含まれる。
【0134】
本発明による医薬組成物を使用することによって、特に抗糖尿病薬での治療にもかかわらず、例えば、メトフォルミン、SGLT2阻害薬、特に本発明によるSGLT2阻害薬、またはDPP IV阻害薬、特に本発明によるDPP IV阻害薬のいずれかでの最大許容用量での経口単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者においてさえ、血糖コントロールの改善を達成できることを見出すことができる。メトフォルミンに関する最大許容用量は、例えば、1日に850mgを3回、またはその任意の等価量である。本発明によるSGLT2阻害薬に関する、特に、化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)に関する最大許容用量は、例えば、1日に100mg、好ましくは50mgまたはさらには30mgを1回、またはその任意の等価量である。本発明によるDPP IV阻害薬に関する、特に化合物(A)(1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンに関する最大許容用量は、例えば、1日に10mgを1回、またはその任意の等価量である。本発明によるDPP IV阻害薬に関する最大許容用量は、例えば、1日にシタグリプチン100mgを1回、またはその任意の等価量である。本発明の範囲内で、用語「不十分な血糖コントロール」は、患者が6.5%を超える、特に8%を超えるHbA1c値を示す状態を意味する。
【0135】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性、代謝症候群、および/または2型もしくは1型糖尿病と診断されたそれを必要とする患者における、血糖コントロールを改善する方法、および/または空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法であって、前および後で定義するグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、前および後で定義するDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0136】
本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の投与による血中グルコース濃度の低下は、インスリンに無関係である。したがって、本発明による医薬組成物は、次の状態の1つ以上を有すると診断される患者を治療するのに特に適している:
・インスリン抵抗性、
・高インスリン血症、
・糖尿病前症、
・特に、後期2型糖尿病を有する2型糖尿病、
・1型糖尿病。
【0137】
さらに、本発明による医薬組成物は、次の状態の1つ以上を有すると診断された患者を治療するのに特に適している:
(a)肥満(クラスI、IIおよび/またはIIIの肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満、
(b)血中トリグリセリド濃度≧150mg/dL、
(c)血中HDL−コレステロール濃度<40mg/dL(女性患者)、<50mg/dL(男性患者)、
(d)収縮期血圧≧130mmHgかつ拡張期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血中グルコース濃度≧110mg/dL。
【0138】
耐糖能異常(IGT)、空腹時血中グルコース異常(IFG)、インスリン抵抗性、および/または代謝症候群と診断された患者は、例えば、心筋梗塞、冠動脈性心疾患、心不全、血栓塞栓事象などの心血管疾患を発症するリスクの増加に苦しむと想定される。本発明による血糖コントロールは、心血管リスクの低下をもたらす可能性がある。
【0139】
本発明による医薬組成物は、特にその中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のため、良好な安全性プロフィールを呈示する。したがって、本発明による治療または予防は、例えばメトフォルミンなどの別の抗糖尿病薬での単剤療法が禁忌である患者および/または治療用量でのこのような薬剤に対して不耐性を有する患者において、有利に実行できる。特に、本発明による治療または予防は、次の障害:腎不全または腎疾患、心疾患、心不全、肝疾患、肺疾患、異化状態および/または乳酸アシドーシスの危険状態の1つ以上に関する高められたリスクを示すまたは有する患者、あるいは妊娠しているまたは授乳中の女性患者において、有利に実行できる。
【0140】
さらに、本発明による医薬組成物の投与は、低血糖症のリスクをもたらすことがないか、あるいは低いことを見出すことができる。したがって、本発明による治療または予防は、低血糖症の高められたリスクを示すまたは有する患者においても、有利に実行できる。
【0141】
本発明による医薬組成物は、前および後で説明するような疾患および/または状態の長期の治療または予防に、特に2型糖尿病を有する患者の長期血糖コントロールに特に適している。
【0142】
前および後で使用するような用語「長期」は、12週間を超える、好ましくは25週間を超える、さらにより好ましくは1年を超える期間内での患者の治療または患者への投与を指す。
【0143】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態は、2型糖尿病を有する患者の、特に後期2型糖尿病を有する患者の、特に、加えて過体重、肥満(クラスI、クラスIIおよび/またはクラスIIIの肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満と診断された患者の、血糖コントロールを改善するための、特に長期に改善するための療法、好ましくは経口療法を提供する。
【0144】
上で挙げた効果は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬を、併用して、例えば同時に投与する場合、およびそれらを、交互に例えば別個の製剤で逐次的に投与する場合の双方で観察される。
【0145】
患者に投与すべき、および本発明による治療または予防での使用に必要とされる本発明による医薬組成物の量は、投与経路、治療または予防を必要とする状態の性質および重症度、患者の年齢、体重および状態、ならびに随伴薬剤により異なり、結局、担当医師の裁量にあることを認識されたい。しかし、一般に、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬は、併用してまたは交互的にそれらを投与することによって、治療すべき患者の血糖コントロールを改善するのに十分な量で医薬組成物または剤形中に含められる。
【0146】
次に、本発明による医薬組成物、方法および使用において採用すべきグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬の量の好ましい範囲を説明する。これらの範囲は、成人患者に対して1日に投与すべき量を指し、1日に2、3、4回またはそれ以上での投与に関して、他の投与経路に関して、および患者の年齢に関して、それに合うように適合させることができる。
【0147】
本発明の範囲内で、医薬組成物は、好ましくは経口で投与される。その他の投与形態も、実施可能であり、後で説明される。好ましくは、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含有する剤形は、経口で投与される。DPP IV阻害薬の投与経路は、経口であり、または通常周知である。
【0148】
一般に、本発明による医薬組成物および方法におけるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の量は、好ましくは、前記グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を使用する単剤療法に通常推奨される量の1/5〜1/1の範囲である。有利には、本発明による併用療法は、単剤療法で使用されるまたは通常の療法で使用される個々のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体または個々のDPP IV阻害薬のより少ない用量を利用し、かくして、それらの薬剤を単剤療法として使用する場合に起こり得る毒性および有害副作用を回避できる。
【0149】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の量は、好ましくは、例えば体重がほぼ70kgのヒトに対して、1日に0.5mg〜200mg、さらにより好ましくは1〜100mg、最も好ましくは5〜50mgの範囲である。経口投与が好ましい。したがって、医薬組成物は、1日1回の投与では前に言及した量、1日2回の投与では0.25〜100mg、さらにより好ましくは0.5〜50mg、最も好ましくは2.5〜25mgを含有することができる。個々の投薬強度(例えば、錠剤またはカプセル当たり)は、例えば、5、10、15、20、25または50mgの化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)である。
【0150】
一般に、本発明による医薬組成物および方法におけるDPP IV阻害薬の量は、好ましくは、前記DPP IV阻害薬を使用する単剤療法に対して通常的に推奨される量の1/5〜1/1の範囲である。
【0151】
第1実施形態(実施形態A)に関して、実施形態Aにおいて本明細書中で言及されるDPP IV阻害薬の典型的に必要とされる用量は、静脈内に投与するなら0.1mg〜10mg、好ましくは0.25mg〜5mg、経口で投与するなら0.5mg〜100mg、好ましくは2.5mg〜50mgまたは0.5mg〜10mg、より好ましくは2.5mg〜10mgまたは1mg〜5mgであり、各場合とも1日1〜4回で投与される。したがって、化合物(A)(1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン)の必要とされる用量は、経口で投与するなら、患者1人につき1日に、0.5mg〜10mg、好ましくは2.5mg〜10mg(より好ましくは5mg〜10mg)または1mg〜5mgである。
【0152】
実施形態Aにおいて本明細書中で言及されるDPP IV阻害薬を含有する医薬組成物を用いて調製される剤形は、活性成分を、0.1〜100mg、特に0.5〜10mgの用量範囲で含有する。したがって、化合物(A)(1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン)の特定の投薬強度は、0.5mg、1mg、2.5mg、5mgおよび10mgであり、そのより特定の投薬強度は、1mg、2.5mgおよび5mgである。
【0153】
第2実施形態(実施形態B)に関して、哺乳動物、例えば体重がほぼ70kgのヒトに投与される予定の実施形態Bにおいて本明細書中で言及されるDPP IV阻害薬の用量は、一般には、1人につき1日に約0.5mg〜約350mg、例えば約10mg〜約250mg、好ましくは20〜200mg、より好ましくは20〜100mgの活性部分、あるいは、例えば同一の大きさでよい好ましくは1〜4回の単回用量に分割された、1人につき1日に約0.5mg〜約20mg、好ましくは2.5〜10mgでよい。単回の投薬強度は、例えば、10、25、40、50、75、100、150および200mgのDPP IV阻害薬の活性部分を含む。
【0154】
DPP IV阻害薬シタグリプチンの投薬強度は、通常、25〜200mgの活性部分である。シタグリプチンの推奨用量は、活性部分(遊離の無水塩基)として計算して100mgを1日1回である。シタグリプチンの遊離無水塩基(活性部分)の単位投薬強度は、25、50、75、100、150および200mgである。シタグリプチンの特定の単位投薬強度(例えば、錠剤当たり)は、25、50および100mgである。シタグリプチン遊離無水塩基に対するリン酸シタグリプチン一水和物の等価量、すなわちそれぞれ、32.13、64.25、96.38、128.5、192.75、および257mgが、医薬組成物中で使用される。25および50mgのシタグリプチンの調節された用量が、腎不全を有する患者に対して使用される。
【0155】
DPP IV阻害薬ビルダグリプチンの用量範囲は、通常、1日に10〜150mg、特に25〜150mg、25〜100mg、あるいは1日に25〜50mgまたは50〜100mgである。1日当たり経口用量の特定の例は、25、30、35、45、50、55、60、80、100または150mgである。より特定の態様において、ビルダグリプチンの1日当たり投与は、25〜150mg、または50〜100mgである。別のより特定の態様において、ビルダグリプチンの1日の投与は50または100mgである。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1回または2回行うことができる。特定の剤形(例えば、錠剤)は、50mgまたは100mgのビルダグリプチンを含有する。
【0156】
アログリプチンは、患者に、5mg/日〜250mg/日、場合によっては10mg〜200mg、場合によっては10mg〜150mg、場合によっては10mg〜100mgのアログリプチンの1日当たり用量で投与できる(いずれの場合も、アログリプチンの遊離塩基形態の分子量を基準にして)。したがって、行使できる具体的な用量には、限定はされないが、1日に10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mg、および100mgのアログリプチンが包含される。アログリプチンは、その遊離塩基形態でまたは医薬として許容し得る塩として投与できる。
【0157】
サキサグリプチンは、患者に、2.5mg/日〜100mg/日、場合によっては2.5mg〜50mgの1日当たり用量で投与できる。行使できる具体的な用量には、限定はされないが、1日に2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mgおよび100mgのサキサグリプチンが包含される。
【0158】
本発明による医薬組成物中のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬の量は、前に示したようなそれぞれの用量範囲に対応する。例えば、医薬組成物は、5〜50mgの量の化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)、および0.5mg〜10mgの量の化合物(A)(1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン)を含有する。
【0159】
医薬組成物の別の例は、5〜50mgの量の化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)、および活性部分が1〜100mgの量のシタグリプチンを含有する。
【0160】
医薬組成物のさらなる例は、5〜50mgの量の化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)、および活性部分が1〜100mgの量のビルダグリプチンを含有する。
【0161】
医薬組成物のさらなる例は、5〜50mgの量の化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)、および活性部分が1〜100mgの量のアログリプチンを含有する。
【0162】
医薬組成物のさらなる例は、5〜50mgの量の化合物(6)、(7)、(8)、(9)または(11)、特に化合物(9)、および活性部分が1〜100mgの量のサキサグリプチンを含有する。
【0163】
本発明による方法および使用において、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬は、併用してまたは交互に投与される。用語「併用投与」は、双方の活性成分を同時に、すなわち、同時的に、または本質的に同時に投与することを意味する。用語「交互投与」は、最初に第1活性成分を投与し、ある時間の後に、第2活性成分を投与すること、すなわち双方の活性成分を逐次的に投与することを意味する。ある時間とは、30分〜12時間の範囲でよい。併用または交互的である投与は、1日に1、2、3または4回でよい。
【0164】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のDPP IV阻害薬との併用投与に関して、双方の活性成分が、単一剤形中、例えば、錠剤またはカプセル中に存在してもよいし、あるいは各活性成分が、別個の剤形、例えば、2つの異なるまたは同一の剤形中に存在してもよい。
【0165】
それらの交互投与に関して、それぞれの活性成分は、別個の剤形、例えば2つの異なるまたは同一の剤形中に存在する。
【0166】
したがって、本発明による医薬組成物は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との双方を含有する単一剤形として、および一方の剤形がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含有し、他方の剤形がDPP IV阻害薬を含有する別個の剤形として存在できる。
【0167】
一方の活性成分を、例えば1日1回の投与を必要とする他方の活性成分よりも、よりしばしば、例えば1日に2回投与しなければならない場合が、発生する可能性がある。したがって、用語「併用または交互投与」には、最初に双方の活性成分を併用してまたは交互に投与し、ある時間後に、一方の活性成分のみを再度投与する、あるいはその逆の投与計画も包含される。
【0168】
したがって、本発明には、一方の剤形がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬を含有し、他方の剤形がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかを含有する、別々の剤形として存在する医薬組成物も含まれる。
【0169】
別々のまたは複数の剤形として、好ましくはパーツからなるキットとして存在する医薬組成物は、併用療法において、患者の個々の治療ニーズに柔軟に適応するのに有用である。
【0170】
パーツからなる好ましいキットは、
(a)グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体および少なくとも1種の医薬として許容し得る担体を含有する剤形を入れる第1収容部、および
(b)DPP IV阻害薬および少なくとも1種の医薬として許容し得る担体を含有する剤形を入れる第2収容部を備える。
【0171】
本発明のさらなる態様は、本発明による別個の剤形として存在する医薬組成物、およびその別個の剤形は併用してまたは交互に投与されるべきであるとの説明を包含するラベルまたは包装挿入物を含む製品である。
【0172】
本発明のいっそうさらなる態様は、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含有する薬剤、および該薬剤は本発明によるDPP IV阻害薬を含む薬剤と併用してまたは交互に投与できること、または投与すべきであるとの説明を包含するラベルまたは包装挿入物を含む製品である。
【0173】
本発明の別のさらなる態様は、本発明によるDPP IV阻害薬を含有する薬剤、および該薬剤は本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を含む薬剤と併用してまたは交互に投与できること、または投与すべきであるとの説明を包含するラベルまたは包装挿入物を含む製品である。
【0174】
本発明による医薬組成物の所望される投与は、好都合には、1日に1回で、または適切な間隔で投与される分割投与として、例えば1日に2、3回またはそれ以上の投与として提供され得る。
【0175】
医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔、局所(頬側および舌下を含む)、経皮、膣または非経口(筋内、皮下および静脈内を含む)での投与に向けて、液体または固形の形態で、あるいは吸入または吹込みによる投与に適した形態で製剤化できる。経口投与が好ましい。製剤は、適切なら、好都合には別々の投与単位で提供することができ、製薬技術の分野で周知のいずれかの方法で調製できる。該方法は、どれも、活性成分を液体担体または微細に粉砕された固体担体あるいはその双方などの1種以上の医薬として許容し得る担体と混合するステップ、次いで必要ならその産出物を所望の製剤に成形するステップを含む。
【0176】
医薬組成物は、錠剤、顆粒、微細顆粒、粉末、カプセル、キャプレッツ、軟質カプセル、ピル、経口溶液、シロップ、ドライシロップ、咀嚼錠剤、トローチ、発泡錠剤、ドロップ、懸濁液、急速溶解錠剤、経口急速分散錠剤などの形態で製剤化できる。
【0177】
医薬組成物および剤形は、製剤中の他の成分と適合性があり、かつその受容者に対して有害でないという意味で「許容し得る」ものでなければならない1種以上の医薬として許容し得る担体を含有することが好ましい。
【0178】
経口投与に適した医薬組成物は、好都合には、軟質ゼラチンカプセルをはじめとするカプセル、カシェ剤または錠剤などの、それぞれ所定量の活性成分を含有する別個の単位として;粉末または顆粒として;溶液、懸濁液または乳液として、例えばシロップ、エリキシル、もしくは自己乳化性送達システム(SEDDS)として提供できる。活性成分は、また、ボーラス、舐剤またはペーストとして提供できる。経口投与用の錠剤およびカプセルは、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤などの通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法により被覆されることができる。経口液体製剤は、例えば、水性または油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルの形態でよく、あるいは使用前に水またはその他の適切なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として提供できる。このような液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用オイルを含むことができる)、または保存剤などの通常の添加剤を含有することができる。
【0179】
本発明による医薬組成物は、また、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または連続点滴)用に製剤化することができ、アンプル、事前充填シリンジ、小容積輸液中の、または保存剤を加えた多回投与容器中の単位投与形態で提供できる。組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳液のような形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤用薬剤を含有することができる。別法として、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリー水を用いて構成するための、無菌固体の無菌分離によって、または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態でもよい。
【0180】
担体が固体である直腸投与に適した医薬組成物は、最も好ましくは、単位用量の坐剤として提供される。適切な担体には、カカオバター、および当技術分野で通常的に使用されるその他の材料が含まれ、坐剤は、好都合には、活性化合物(複数可)を軟化または溶融した担体(複数可)と混合すること、続いて冷却し、型の中で成形することによって形成できる。
【0181】
本発明による医薬組成物および方法は、前述のような疾患および状態の治療および予防において、双方の活性成分の一方のみを含有する医薬組成物および方法と比較して有利な効果を示す。有利な効果は、例えば、効力、投薬強度、投与頻度、薬力学特性、薬物動態特性、より少ない有害作用などに関して認めることができる。
医薬として許容し得る担体の例は、当業者にとって周知である。
【0182】
本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびそのプロドラッグの製造方法は、当業者に周知である。有利には、本発明による化合物は、文献記載の合成方法、特に国際公開第01/27128号、同03/099836号、同2005/092877号、同2006/034489号、同2006/064033号、同2007/025943号、および同2007/031548号中に記載のような合成方法を使用して調製できる。化合物(1)〜(6)は、好ましくは、国際公開第2007/093610号および同2008/055870号中に記載の合成方法に従って調製できる。有利には、化合物(7)は、国際公開第2005/092877号(実施例12参照)中に記載のように調製される。化合物(8)および(9)の有利な合成方法は、国際公開第2005/092877号(実施例2および3参照)、同2006/117360号、同2006/117359号、および同2006/120208号中に記載されている。化合物(10)および(11)は、好ましくは、国際公開第2006/064033号中に記載の合成方法を介して得られる。
【0183】
実施形態Aに関して、本発明の実施形態AによるDPP IV阻害薬の合成方法は、当業者に周知である。有利には、本発明の実施形態AによるDPP IV阻害薬は、文献記載の合成方法を使用して調製できる。かくして、例えば、式(I)のプリン誘導体は、その開示が本明細書に組み込まれる国際公開第2002/068420号、同2004/018468号、同2005/085246号、同2006/029769号、または同2006/048427号中に記載のようにして得ることができる。式(II)のプリン誘導体は、例えば、その開示が本明細書に組み込まれる国際公開第2004/050658号、同2005/110999号中に記載のようにして得ることができる。式(III)および(IV)のプリン誘導体は、例えば、その開示が本明細書に組み込まれる国際公開第2006/068163号、同2007/071738号、または同2008/017670号中に記載のようにして得ることができる。前で具体的に言及したDPP IV阻害薬の調製は、それに関連して挙げられる刊行物中に開示されている。特定のDPP IV阻害薬の多形結晶の改変および製剤は、その開示がその全体で本明細書に組み込まれる国際公開第2007/054201号および同2007/128724号中にそれぞれ開示されている。
【0184】
実施形態Bに関して、実施形態BのDPP IV阻害薬の合成方法は、科学文献および/または公開特許文献、特に「背景技術」の項中で前に引用したものに記載されている。
【0185】
DPP IV阻害薬は、医薬として許容し得る塩の形態で存在できる。医薬として許容し得る塩には、それに限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸およびリン酸のような無機酸の塩;シュウ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、およびグルタミン酸のような有機カルボン酸の塩;およびメタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸の塩が含まれる。塩は、化合物と酸とを溶媒およびデコンポーザー中で適切な量および比率で化合させることによって形成できる。それらの塩は、また、他の塩の形態からカチオンまたはアニオン交換によって得ることができる。DPP IV阻害薬は、医薬として許容し得る塩の形態で存在できる。医薬として許容し得る塩には、例えば、塩酸、硫酸およびリン酸のような無機酸の塩;シュウ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、およびグルタミン酸のような有機カルボン酸の塩;およびメタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸の塩が含まれる。塩は、化合物と酸とを溶媒およびデコンポーザー中で適切な量および比率で化合させることによって形成できる。それらの塩は、また、他の塩の形態からカチオンまたはアニオン交換によって得ることができる。
【0186】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体および/またはDPP IV阻害薬、あるいはそれらの医薬として許容し得る塩は、水和物またはアルコール付加物などの溶媒和物の形態で存在できる。
【0187】
本発明の範囲内の任意の前述の組合せおよび方法は、当技術分野で周知の動物モデルで試験することができる。次に、本発明による医薬組成物および方法に関する薬理学上の関連特性を評価するのに適しているインビボ実験について説明する。
【0188】
本発明による医薬組成物および方法は、db/dbマウス、ob/obマウス、ズッカー肥満(fa/fa)ラット、またはズッカー糖尿病肥満(ZDF)ラットのような遺伝的に高インスリン血症性または糖尿病性の動物で試験できる。加えて、それらは、ストレプトゾトシンで事前処理されたHanWistarまたはSprague Dawleyラットのような実験的に誘導された糖尿病を有する動物で試験できる。
【0189】
本発明による組合せの血糖コントロールに対する効果は、前述の動物モデルでの経口グルコース負荷試験において、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬を、単独および併用で単回投与した後に試験できる。一夜絶食させた動物に経口でグルコースを投与した後に、血中グルコースの時間推移を追跡する。本発明による組合せは、ピーク時グルコース濃度の低下またはグルコースAUCの減少によって測定すると、それぞれの単剤療法に比較してグルコース変動を有意に改善する。加えて、前述の動物モデルにおけるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬の単独および併用での多回投与後に、血糖コントロールの効果は、血中HbA1c値を測定することによって判定できる。本発明による組合せは、それぞれの単剤療法に比較してHbA1cを有意に低下させる。
【0190】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらか、あるいは双方の活性成分の可能な用量の低減は、前述の動物モデルにおけるより少ない用量での併用療法および単剤療法の血糖コントロールに対する効果によって試験することができる。より低用量での本発明による組合せは、プラセボ治療に比較して血糖コントロールを有意に改善するが、より低用量での単剤療法は、そうではない。
【0191】
本発明による治療に関する改善されたインスリン非依存性は、前述の動物モデルでの経口グルコース負荷試験で単回投与した後に示すことができる。一夜絶食させた動物にグルコースを投与した後に、血漿中インスリンの時間経過を追跡する。DPP IV阻害薬と併用したグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、DPP IV阻害薬の単独に比べて、より低いインスリンピーク濃度、またはより低い血中グルコース変動でのインスリンAUCを呈示する。
【0192】
本発明による治療による単回または多回投与の後の活性GLP−1濃度の増加は、空腹時または食後状態のどちらかで前述の動物モデルの血漿中GLP−1濃度を測定することによって判定できる。同様に、血漿中グルカゴン濃度の低下も、同様の条件下で測定できる。DPP IV阻害薬と併用したグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の単独と比べて、より高い活性GLP−1濃度およびより低いグルカゴン濃度を呈示する。
【0193】
本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との組合せのβ細胞の再生および新生に対する、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の単独に比べて優れた効果は、前述の動物モデルでの多回投与の後に、膵臓インスリン含有量の増加を測定することによって、または膵臓断片の免疫組織化学的染色後の形態分析により増大したベータ細胞本体を測定することによって、または単離された膵島中でのグルコースで刺激されるインスリン分泌の増加を測定することによって判定できる。
【0194】
前のおよび以下の文中、ヒドロキシル基のH原子は、それぞれの場合に構造式中に明示しない。後に続く実施例は、本発明を例示することを意図しているが、本発明を限定するものではない。用語「室温」および「外界温度」は、互換的に使用され、約20℃の温度を意味する。次の省略形を使用する:
tBu tert−ブチル
dba ジベンジリデンアセトン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
NMP N−メチル−2−ピロリドン
THF テトラヒドロフラン
【実施例】
【0195】
[出発化合物の調製]
(実施例I)
【化27】

2−ブロモ−5−ヨード−4−メチル−安息香酸
硫酸(20mL)に溶解した2−ブロモ−4−メチル−安息香酸(18.4g)の氷冷溶液に、N−ヨードコハク酸イミド(19.1g)を分割して添加する。生じた混合物を、5〜10℃で3時間撹拌した後、室温まで一夜温める。次いで、該混合物を、破砕した氷上に注ぎ、生じた溶液を酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を、10%Na223水溶液(2×)、水(3×)、および食塩水(1×)の順で洗浄する。乾燥(MgSO4)後、有機溶媒を減圧下で蒸発させる。残留固体を水に加え、生じたスラリーを70℃で5分間撹拌する。不溶部分を、濾過によって分離し、乾燥して、所望の生成物を得る。
収量:27.2g(理論の96%)。
質量スペクトル(ESI-):m/z=339/341(Br)[M−H]-
【0196】
実施例Iと同様にして次の化合物を得ることができる。
(1)(2−ブロモ−5−ヨード−4−メトキシ−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン
【化28】

質量スペクトル(ESI+):m/z=445/447(Br)[M+H]+
出発原料である(2−ブロモ−4−メトキシ−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノンは、下記の実施例IIおよびIIIに記載のように調製される。
【0197】
(実施例II)
【化29】

(2−ブロモ−5−ヨード−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン
2−ブロモ−5−ヨード−安息香酸(25.0g)のジクロロメタン(50mL)溶液にオキサリルクロリド(9.5mL)を添加する。数滴のDMFを添加し、混合物を室温で一夜撹拌する。次いで、反応溶液を減圧下で濃縮し、残留物をジクロロメタン(50mL)およびエチルベンゼン(23mL)に加える。生じた溶液を氷浴中で冷却し、三塩化アルミニウム(12.5g)を分割して添加する。次いで、冷却浴を取り去り、反応混合物を室温で4時間撹拌する。中間体である置換ベンゾイルクロリドが消費された後、反応混合物を破砕氷上に注ぎ、有機相を分離する。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を、1M塩酸、1M水酸化カリウム溶液、および食塩水の順で洗浄する。有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を減圧下で除去し、オイルとして生成物を得る。該オイルは放置すると結晶化する。
収量:30.8g(理論の97%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=415/417(Br)[M+H]+
【0198】
実施例IIと同様にして次の化合物を得ることができる:
(1)(2−ブロモ−5−ヨード−4−メチル−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン
【化30】

質量スペクトル(ESI+):m/z=429/431(Br)[M+H]+
【0199】
(2)(2−ブロモ−4−フルオロ−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン
【化31】

質量スペクトル(ESI+):m/z=307/309(Br)[M+H]+
【0200】
(実施例III)
【化32】

(2−ブロモ−4−メトキシ−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン
DMF(200mL)に溶解した(2−ブロモ−4−フルオロ−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン(43.0g)に、ナトリウムメトキシド(10.5g)を分割して添加する。溶液を一夜撹拌した後、追加のナトリウムメトキシド(5.5g)を添加する。さらに3時間撹拌した後、水を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を除去し、残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにかける(シクロヘキサン/酢酸エチル 20:1→9:1)。
収量:33.7g(理論の75%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=319/321(Br)[M+H]+
【0201】
(実施例IV)
【化33】

4−ブロモ−3−(4−エチル−ベンジル)−1−ヨード−ベンゼン
(2−ブロモ−5−ヨード−フェニル)−(4−エチル−フェニル)−メタノン(32g)とトリエチルシラン(50mL)とのジクロロメタン(30mL)とアセトニトリル(100mL)との溶液を氷浴中で冷却する。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエテラート(20mL)を5分間にわたって滴加する。冷却浴を取り去り、溶液を45〜50℃まで加熱し、この温度で4時間撹拌する。外界温度まで冷却した後、4M KOH水溶液を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を、2M水酸化カリウム溶液、および食塩水で洗浄し、次いで乾燥(硫酸ナトリウム)する。溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにかける(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:0→9:1)。
収量:21g(理論の68%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=418/420(Br)[M+NH4+
【0202】
実施例IVと同様にして次の化合物を得ることができる:
(1)4−ブロモ−5−(4−エチル−ベンジル)−1−ヨード−2−メチル−ベンゼン
【化34】

質量スペクトル(ESI+):m/z=432/434(Br)[M+NH4+
【0203】
(2)4−ブロモ−5−(4−エチル−ベンジル)−1−ヨード−2−メトキシ−ベンゼン
【化35】

質量スペクトル(ESI+):m/z=448/450(Br)[M+NH4+
【0204】
(実施例V)
【化36】

1−ブロモ−4−シアノ−3−メトキシ−5−(4−エチル−ベンジル)−ベンゼン
撹拌バーを備え、乾燥NMP(40mL)を仕込んで−10℃まで冷却したフラスコに、アルゴン雰囲気下でKOtBu(11.8g)を添加する。(4−エチル−フェニル)酢酸エチル(10.1g)と1−ブロモ−4−シアノ−3,5−ジフルオロ−ベンゼン(11.5g)とのNMP(40mL)溶液を、反応温度を10℃未満に維持するような速度で添加する。室温で1時間撹拌した後、メタノール(50mL)および1M水酸化ナトリウム水溶液(39mL)を添加し、生じた混合物を100℃で一夜撹拌する。次いで、4M塩酸水(100mL)を添加し、混合物を100℃でさらに1時間撹拌する。メタノール留分を蒸発させ、残留物に水(200mL)を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を、水で2回、食塩水で2回洗浄し、乾燥(MgSO4)する。溶媒を蒸発させ、残留物をメタノールで洗浄する。不溶の残留物を濾過により分離し、乾燥して白色生成物を得る。
収量:10.0g(理論の58%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=330/332(Br)[M+H]+
【0205】
(実施例VI)
【化37】

4−ブロモ−3−クロロメチル−1−ヨード−ベンゼン
4−ブロモ−3−ヒドロキシメチル−1−ヨード−ベンゼン(47.0g)のDMF(0.1mL)を含むジクロロメタン(100mL)懸濁液に塩化チオニル(13mL)を添加する。混合物を外界温度で3時間撹拌する。次いで、溶媒および過剰の試薬を減圧下で除去する。残留物を、メタノールと共に磨砕し、乾燥する。
収量:41.0g(理論の82%)。
【0206】
(実施例VII)
【化38】

4−ブロモ−1−ヨード−3−フェノキシメチル−ベンゼン
アセトン(50mL)に溶解した4−ブロモ−3−クロロシメチル−1−ヨード−ベンゼン(41.0g)に4M KOH水溶液(60mL)に溶解したフェノール(13g)を添加する。NaI(0.5g)を添加し、生じた混合物を50℃で一夜撹拌する。次いで、水を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を乾燥(Na2SO4)し、溶媒を減圧下で蒸発させる。残留物を、シリカゲルでのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 19:1)によって精製する。
収量:38.0g(理論の79%)。
【0207】
(実施例VIII)
【化39】

1−ブロモ−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン
THF(11mL)に懸濁した乾燥LiCl(0.47g)に2M iPrMgClのTHF(11mL)溶液を添加する。混合物を、すべてのLiClが溶解するまで室温で撹拌する。この溶液を、4−ブロモ−1−ヨード−3−フェノキシメチル−ベンゼン(8.0g)の−60℃まで冷却されたテトラヒドロフラン(40mL)溶液にアルゴン雰囲気下で滴加する。生じた溶液を−40℃まで温め、次いで2,3,4,6−テトラキス−O−(トリメチルシリル)−D−グルコピラノン(10.7g、純度90%)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を添加する。生じた溶液を冷却浴中で−5℃まで温め、この温度でさらに30分間撹拌する。NH4Cl水溶液を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去する。残留物をメタノール(80mL)に溶解し、メタンスルホン酸(0.6mL)で処理する。反応溶液を35〜40℃で一夜撹拌した後、溶液を固体のNaHCO3で中和し、メタノールを減圧下で除去する。残留物をNaHCO3水溶液で希釈し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を蒸発させて、粗生成物を得る。該粗生成物は、さらなる精製なしで還元に供される。
収量:7.8g(理論の93%)。
【0208】
実施例VIIIと同様にして次の化合物を得ることができる:
(1)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン
【化40】

質量スペクトル(ESI-):m/z=511/513(Br)[M+HCOO]-
【0209】
(2)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メチル−ベンゼン
【化41】

別法として、2,3,4,6−テトラキス−O−(トリメチルシリル)−D−グルコピラノンの代わりに2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノンを用いて反応を実施して、この化合物のテトラ−O−ベンジルで保護された類似の付加生成物を得ることができる。ジクロロメタン中でBCl3を使用してアノマー中心を還元した後に、ベンジル基を除去することができる。
【0210】
(3)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メトキシ−ベンゼン
【化42】

【0211】
(実施例IX)
【化43】

6−(4−エチルベンジル)−2−メトキシ−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
1−ブロモ−4−シアノ−5−(4−エチル−ベンジル)−3−メトキシ−ベンゼン(5.0g)の−78℃まで冷却したヘキサン(40mL)とTHF(20mL)との溶液に、−78℃まで冷却した1.7M tBuLi/ペンタン溶液(18.3mL)を滴加する。tBuLiの代わりにnBuLiまたはsBuLiも同様に使用できる。添加を完了し、さらに15分間撹拌した後、2,3,4,6−テトラキス−O−(トリメチルシリル)−D−グルコピラノン(90%、7.9g)の−78℃まで冷却したヘキサン(30mL)溶液を、移送用注射針を経由して添加する。生じた溶液を、−70℃で2時間撹拌し、次いで−5℃まで徐々に温める。1%酢酸水(100mL)で反応を止め、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)する。溶媒を除去した後、残留物をメタノール(50mL)に溶解し、メタンスルホン酸(2.5mL)で処理して、所望のより安定なアノマー結合を生じさせる。溶液を50℃で一夜撹拌し、次いで固体のNaHCO3を添加して中和する。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチルに加える。有機溶液を、水および食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)する。溶媒を除去した後、粗生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0→2:1)によって精製する。
収量:0.5g(理論の7%)。
別法として、2,3,4,6−テトラキス−O−(トリメチルシリル)−D−グルコピラノンの代わりに2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノンを用いて反応を実施して、この化合物のテトラ−O−ベンジルで保護された類似の付加生成物を得ることができる。ジクロロメタン中でBCl3を使用してアノマー中心を還元した後に、ベンジル基を除去することができる。
【0212】
(実施例X)
【化44】

1−ブロモ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン
1−ブロモ−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン(8.7g)とトリエチルシラン(9.1mL)とのジクロロメタン(35mL)とアセトニトリル(50mL)との−20℃まで冷却した溶液に、三フッ化ホウ素エテラート(4.9mL)を、温度を−10℃未満に維持するような速度で添加する。生じた溶液を、1.5時間にわたって0℃まで温め、次いで炭酸水素ナトリウム水溶液で処理する。生じた混合物を0.5時間撹拌し、有機溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去する。残留物を、ジクロロメタン(50mL)およびピリジン(9.4mL)に加え、この溶液に無水酢酸(9.3mL)および4−ジメチルアミノピリジン(0.5g)を続いて添加する。該溶液を外界温度で1.5時間撹拌し、次いでジクロロメタンで希釈する。この溶液を1M塩酸で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を除去した後、残留物をエタノールから再結晶し、無色固体として生成物を得る。
収量:6.78g(理論の60%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=610/612(Br)[M+NH4+
【0213】
実施例Xと同様にして次の化合物を得ることができる:
(1)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン
【化45】

質量スペクトル(ESI+):m/z=622/624[M+NH4+
【0214】
(2)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メトキシ−ベンゼン
【化46】

質量スペクトル(ESI+):m/z=652/654(Br)[M+NH4+
【0215】
(3)6−(4−エチルベンジル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−メトキシ−ベンゾニトリル
【化47】

質量スペクトル(ESI+):m/z=599[M+NH4+
前述の手順と同様にして、6−(4−エチルベンジル)−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−2−メトキシ−ベンゾニトリルに向けて還元が実施される。
【0216】
(4)1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メチル−ベンゼン
【化48】

質量スペクトル(ESI+):m/z=468/470(Br)[M+NH4+
この化合物は、前述の手順による還元を終えた後に、遊離ヒドロキシル基を伴って単離される。
【0217】
(実施例XI)
【化49】

2−(フェノキシメチル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
撹拌バーを備え、1−ブロモ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン(5.4g)、シアン化亜鉛(1.0g)、亜鉛(30mg)、Pd2(ジベンジリデンアセトン)3*CHCl3(141mg)およびトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(111mg)を仕込んだフラスコをアルゴンでフラッシュする。次いで、0.1%の水を含む脱気NMP(12mL)を添加し(別法として、NMPに溶解したグルコシドを添加)、生じた混合物を室温で18時間撹拌する。酢酸エチルで希釈した後、混合物を濾過し、濾液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を除去する。残留物をエタノールから再結晶する。
収量:4.10g(理論の84%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=557[M+NH4+
別法として、該化合物は、また、下記実施例XIIおよび3に記載の手順を採用して得ることができる。
【0218】
(実施例XII)
【化50】

2−(4−エチルベンジル)−5−メトキシ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
撹拌バーを備え、1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−5−メトキシ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(1.6g)、シアン化銅(I)(0.56g)およびNMP(10mL)を仕込んだフラスコを215℃で3時間撹拌する。次いで、水を添加し、沈殿物を濾過して分離する。沈殿物を、酢酸エチル(50mL)に溶解し、セライト上で濾過する。濾液を乾燥(Na2SO4)し、濃縮する。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 2:1→1:2)で精製する。
収量:1.1g(理論の75%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=583[M+NH4+
この化合物は、また、実施例XIおよび3について記載した手順を使用して調製できる。
【0219】
(実施例XIII)
【化51】

2−ブロモメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
2−フェニルオキシメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル(0.71g)と無水酢酸(0.12mL)の酢酸(10mL)溶液に33%臭化水素酸/酢酸溶液(15mL)を添加する。生じた溶液を55℃で6時間撹拌し、次いで氷浴中で冷却する。反応混合物を冷却した炭酸カリウム水溶液で中和し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去する。残留物を酢酸エチル/シクロヘキサン(1:5)に加え、沈殿物を濾過して分離し、50℃で乾燥して生成物を得る。
収量:0.52g(理論の75%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=543/545(Br)[M+NH4+
【0220】
(実施例XIV)
【化52】

4−シクロプロピル−フェニルボロン酸
1−ブロモ−4−シクロプロピル−ベンゼン(5.92g)のTHF(14mL)とトルエン(50mL)との−70℃まで冷却した溶液に、2.5M n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(14.5mL)を滴加する。生じた溶液を−70℃で30分間撹拌した後、ホウ酸トリイソプロピル(8.5mL)を添加する。溶液を−20℃まで温め、次いで4M塩酸水(15.5mL)で処理する。反応混合物を、さらに室温まで温め、次いで有機相を分離する。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)する。溶媒を蒸発させ、残留物を、エーテルとシクロヘキサンとの混合物と共に磨砕し、無色の固体として生成物を得る。
収量:2.92g(理論の60%)。
質量スペクトル(ESI-):m/z=207(Cl)[M+HCOO]-
【0221】
(目的化合物の調製)
実施例(1):6−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−メトキシ−ベンゾニトリル
【化53】

メタノール(1mL)とTHF(1mL)とに溶解した6−(4−エチルベンジル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−メトキシ−ベンゾニトリル(0.16g)に、水酸化ナトリウム水溶液(1.4mL、1モル/L)を添加する。溶液を室温で1時間撹拌し、次いで塩酸(1モル/L)で中和する。有機溶媒を除去した後、残留物を重炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を、乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を蒸発させる。残留物を、シリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0→8:1)で精製する。
収量:65mg(理論の57%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=431[M+NH4+
【0222】
実施例1と同様にして次の化合物が得られる:
実施例(2):2−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メトキシ−ベンゾニトリル
【化54】

質量スペクトル(ESI+):m/z=431[M+NH4+
【0223】
実施例(3):1−シアノ−2−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メチル−ベンゼン
【化55】

撹拌バーを備え、1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−メチル−ベンゼン(0.40g)、Ni(CN)2(0.10g)およびNMP(4mL)を仕込み、アルゴンでフラッシュしたマイクロ波オーブンに適合した容器を、マイクロ波オーブン中、220℃で1時間加熱する。次いで、水を添加し、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を蒸発させる。残留物を、逆相HPLC(YMC C18、アセトニトリル/水)で精製する。
収量:0.30g(理論の85%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=415[M+NH4+
【0224】
実施例(4):2−(4−エチルベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−5−ヒドロキシ−ベンゾニトリル
【化56】

2−(4−エチルベンジル)−5−メトキシ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル(0.80g)と塩酸ピリジニウム(9.0g)との混合物を215℃で1時間加熱する。外界温度まで冷却した後、水を添加し、生じた溶液を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を乾燥(MgSO4)し、溶媒を減圧下で除去する。残留物をメタノール(10mL)に溶解し、4M NaOH水溶液(2.2mL)で処理する。溶液を室温で1時間撹拌し、次いで塩酸(4モル/L)を使用して酸性とする。有機溶媒を除去した後、残留物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を蒸発させる。残留物を、逆相HPLC(YMC C18、アセトニトリル/水)で精製する。
収量:0.25g(理論の46%)。
質量スペクトル(ESI-):m/z=398[M−H]-
【0225】
実施例(5):2−(4−エチル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
【化57】

撹拌バーを備えたフラスコに、亜鉛(10mg)、シアン化亜鉛(0.12g)、Pd2(dba)3*CHCl3(42mg)およびトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(26mg)を仕込み、Ar雰囲気下に置いた。次いで、0.1%の水を含む脱気NMP(2mL)に溶解した1−ブロモ−2−(4−エチルベンジル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(1.0g)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌する。次いで、酢酸エチルを添加し、生じた混合物を濾過し、濾液をNaHCO3水溶液で洗浄する。有機溶液を乾燥(硫酸ナトリウム)した後、溶媒を減圧下で除去し、残留物をメタノール(10mL)に溶解する。4M水酸化カリウム水溶液(2mL)を添加し、溶液を外界温度で1時間撹拌する。溶液を1M塩酸で中和し、メタノールを蒸発させる。残留物を酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去する。残留物を、シリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0→4:1)で精製する。
収量:0.51g(理論の81%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=401[M+NH4+
【0226】
実施例(6):2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル
【化58】

撹拌バーを備えArで満たしたフラスコに、2−ブロモメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル(1.78g)、4−シクロプロピル−フェニルボロン酸(1.00g)、炭酸カリウム(1.85g)、および脱気アセトンと水との3:1混合物(22mL)を仕込む。混合物を、室温で5分間撹拌した後、氷浴中で冷却する。次いで、二塩化パラジウム(30mg)を添加し、反応混合物を外界温度で16時間撹拌する。次いで、混合物を食塩水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去する。残留物をメタノール(20mL)に溶解し、4M水酸化カリウム水溶液(3.8mL)で処理する。生じた溶液を外界温度で1時間撹拌し、次いで1M塩酸で中和する。メタノールを蒸発させ、残留物を食塩水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を集め、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去する。残留物を、シリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 1:0→8:1)にかける。
収量:0.91g(理論の76%)。
質量スペクトル(ESI+):m/z=413[M+NH4+
【0227】
実施例(7):1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(4−エチニル−ベンジル)−ベンゼン
【化59】

化合物(7)は、有利には、国際公開第2005/092877号中に記載の実施例12に従って調製できる。
【0228】
実施例(8):1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼン
【化60】

化合物(8)は、有利には、国際公開第2005/092877号中に記載の実施例2に従って調製できる。
【0229】
実施例(9):1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼン
【化61】

化合物(9)は、有利には、国際公開第2005/092877号中に記載の実施例3に従って調製できる。
【0230】
実施例(10):1−メチル−2−[4−((R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン
【化62】

化合物(10)は、有利には、国際公開第2006/064033号中に記載の実施例2に従って調製できる。
【0231】
実施例(11):1−メチル−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン
【化63】

化合物(10)は、有利には、国際公開第2006/064033号中に記載の実施例3に従って調製できる。
【0232】
(薬理学的実施例)
以下の実施例は、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との組合せの、それぞれの単剤療法と比較した場合の血糖コントロールに対する有益な効果を示す。実験動物の使用に関するすべての実験プロトコルは、連邦倫理委員会により審査され、かつ政府当局によって承認されている。
【0233】
第1実施例:
第1実施例により、一夜絶食させた9週齢の雄性ズッカー糖尿病肥満(ZDF)ラット(ZDF/Crl−Leprfa)における経口グルコース負荷試験を実施する。投与前の血液検体は、尾部採血によって得られる。血中グルコースはグルコメーターで測定され、動物は血中グルコースに関して無作為化される(n=5/群)。続いて、群は、ビヒクル単独(3mM HClおよび0.015%ポリソルベート80を含む0.5%ヒドロキシエチルセルロース水)の、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかを含むビヒクルの、あるいはグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との併用の単回経口投与を受け入れる。動物は、化合物投与の30分後に経口でのグルコース負荷(2g/kg)を受け入れる。グルコース負荷の30分、60分、90分、120分、および180分後に、尾部血の血中グルコースを測定する。グルコース変動は、反応性グルコース(reactive glucose)のAUCを計算することによって定量化される。データは、平均±SEMとして表す。対照群と活性群との統計的比較には、アンペアード両側スチューデントt検定を使用する。
【0234】
結果を図1に示す。「化合物.A」は、DPP IV阻害薬、すなわち1mg/kgの用量での1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンである。化合物Bは、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(9)、すなわち3mg/kgの用量での1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼンである。併用A+Bは、同一用量での前記DPP IV阻害薬と前記グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体との併用である。対照に対するP値は、横棒上の記号によって示される。単剤療法に対する併用のP値は、図の下に示される(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)。DPP IV阻害薬はグルコース変動(glucose excursion)を56%縮小し、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体はグルコース変動を51%縮小する。併用は、経口グルコース負荷試験でのグルコース変動を84%縮小し、グルコースAUCのこの縮小は、それぞれの単剤療法に対して統計的に有意である。
【0235】
第2実施例:
第2実施例により、一夜絶食させた約200gの体重を有する雄性Sprague Dawleyラット(Crl:CD(SD))における経口グルコース負荷試験を実施する。投与前の血液検体は、尾部採血によって得られる。血中グルコースはグルコメーターで測定され、動物は、血中グルコースに関して無作為化される(n=5/群)。続いて、群は、ビヒクル単独(0.015%ポリソルベート80を含む0.5%ヒドロキシエチルセルロース水)の、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体またはDPP IV阻害薬のどちらかを含むビヒクルの、あるいはグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体とDPP IV阻害薬との併用の単回経口投与を受け入れる。動物は、化合物投与の30分後に経口グルコース負荷(2g/kg)を受け入れる。グルコース負荷の30分、60分、90分、および120分後に、尾部血の血中グルコースを測定する。グルコース変動は、反応性グルコースのAUCを計算することによって定量化される。データは、平均±SEMとして表す。統計的比較は、スチューデントのt検定によって実施する。
【0236】
結果を図2に示す。「化合物A」は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(9)、すなわち3mg/kgの用量で投与された1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼンである。DPP IV阻害薬サキサグリプチンは、0.3mg/kgの用量で投与される。併用では、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびサキサグリプチンをそれぞれの単剤療法と同じ用量で一緒に投与する。対照に対するP値は、横棒上の記号で示される(*、p<0.05)。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびサキサグリプチンは、グルコース変動をそれぞれ21%および12%縮小するが、その縮小は、これらの非糖尿病性動物において統計的に有意ではない。併用は、経口グルコース負荷試験におけるグルコース変動を50%縮小し、グルコースAUCにおけるこの縮小は、統計的に有意である。
【0237】
第3実施例:
第3実施例では、本明細書中の前述の第2実施例と同一の実験設定を採用する。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(9)、すなわち1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼンを3mg/kgの用量で投与する。DPP IV阻害薬シタグリプチンは、10mg/kgの用量で投与される。併用では、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびシタグリプチンを、それぞれの単剤療法と同一の用量で一緒に投与する。結果を図3に示す。図中、「化合物A」は、前記グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体(9)である。対照に対するP値は、横棒上の記号で示される(*、p<0.05)。グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびシタグリプチンは、グルコース変動をそれぞれ21%および16%縮小するが、その縮小は、これらの非糖尿病性動物において統計的に有意ではない。併用は、経口グルコース負荷試験におけるグルコース変動を51%縮小し、グルコースAUCにおけるこの縮小は、統計的に有意である。
【0238】
(製剤に関する実施例)
当技術分野で周知の方法と同様にして得ることのできる、製剤に関する以下の実施例は、本発明をより完全に例示するのに役立つが、本発明をこれらの実施例の内容に限定するものではない。用語「活性物質」は、本発明による1種以上の化合物を意味する、すなわち、本発明によるグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体または本発明によるDPP IV阻害薬、あるいは例えば表1に列挙した組合せ1〜176から選択される、前記グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体と前記DPP IV阻害薬との組合せを意味する。実施形態AのDPP IV阻害薬に関するさらなる適切な製剤は、その開示がその全体で本明細書に組み込まれる国際公開第2007/128724号中に開示されている製剤でよい。実施形態BのDPP IV阻害薬に関するさらなる適切な製剤は、市場で入手可能である製剤、または前に「背景技術」の項で引用した特許出願中に記載されている製剤、または文献中に記載の、例えば「Rote Liste(登録商標)」(Editio Cantor Verlag Aulendorf ドイツ)もしくは「Physician’s Desk Reference」の最新版中に開示されているものでよい。
【0239】
実施例1:10mLにつき75mgの活性物質を含むドライアンプル
組成:
活性物質 75.0mg
マンニトール 50.0mg
注射用水 10.0mLまで
調製:
活性物質およびマンニトールを水に溶解する。充填後、溶液を凍結乾燥する。即用溶液を作るには、製品を注射用水に溶解する。
【0240】
実施例2:2mLにつき35mgの活性物質を含むドライアンプル
組成:
活性物質 35.0mg
マンニトール 100.0mg
注射用水 2.0mLまで
調製:
活性物質およびマンニトールを水に溶解する。充填後、溶液を凍結乾燥する。即用溶液を作るには、製品を注射用水に溶解する。
【0241】
実施例3:50mgの活性物質を含む錠剤
組成:
(1)活性物質 50.0mg
(2)乳糖 98.0mg
(3)トウモロコシデンプン 50.0mg
(4)ポリビニルピロリドン 15.0mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
215.0mg
調製:
(1)、(2)および(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液を用いて顆粒化する。顆粒化し乾燥した材料に(5)を添加する。この混合物を圧縮して、両側に切子面を有し一方の側に分割用切り欠きを有する2平面型の錠剤にする。
錠剤の直径:9mm。
【0242】
実施例4:350mgの活性物質を含む錠剤
調製:
(1)活性物質 350.0mg
(2)乳糖 136.0mg
(3)トウモロコシデンプン 80.0mg
(4)ポリビニルピロリドン 30.0mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
600.0mg
(1)、(2)および(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液を用いて顆粒化する。顆粒化し乾燥した材料に(5)を添加する。この混合物を圧縮して、両側に切子面を有し一方の側に分割用切り欠きを有する2平面型の錠剤にする。
錠剤の直径:12mm。
【0243】
実施例5:50mgの活性物質を含むカプセル
組成:
(1)活性物質 50.0mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 58.0mg
(3)粉末乳糖 50.0mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
160.0mg
調製:
(1)を(3)と共に摩砕する。この摩砕物を、(2)と(4)との混合物に激しく混合しながら添加する。この粉末混合物を、カプセル充填機中で3号サイズの硬質ゼラチンカプセル中に充填する。
【0244】
実施例6:350mgの活性物質を含むカプセル
組成:
(1)活性物質 350.0mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 46.0mg
(3)粉末乳糖 30.0mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
430.0mg
調製:
(1)を(3)と共に摩砕する。この摩砕物を、(2)と(4)との混合物に激しく混合しながら添加する。この粉末混合物を、カプセル充填機中で0号サイズの硬質ゼラチンカプセル中に充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、R1は、Cl、メチルまたはシアノを意味し;R2は、H、メチル、メトキシまたはヒドロキシを意味し;R3は、エチル、シクロプロピル、エチニル、エトキシ、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシまたは(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシを意味する]のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、
第1実施形態(実施形態A)では、
式(I)
【化2】

または式(II)
【化3】

または式(III)
【化4】

または式(IV)
【化5】

[式中、R1は、([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル、(キナゾリン−2−イル)メチル、(キノキサリン−6−イル)メチル、(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル、2−シアノ−ベンジル、(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル、(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル、(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル、または(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチルを意味し;R2は、3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル、(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ、または(2−(S)−アミノ−プロピル)−メチルアミノを意味する]あるいはその医薬として許容し得る塩のDPP IV阻害薬と組み合わせて、あるいは
第2実施形態(実施形態B)では、
シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、デナグリプチン、
(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、
(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン、
(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オン、
(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、および
(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリル、
またはこれらの医薬として許容し得る塩からなる群から選択されるDPP IV阻害薬と組み合わせて含有する医薬組成物。
【請求項2】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が、化合物(1)〜(11):

の群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
DPP IV阻害薬が、
1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−[([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−[(キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−(ブト−2−イニル)−5−(4−メチル−キナゾリン−2−イルメチル)−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−d]ピリダジン−4−オン、
1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン、
1−[(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−(2−シアノ−ベンジル)−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(S)−(2−アミノ−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン、
1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−[(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
1−[(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンおよび
1−[(キノキサリン−6−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、
またはこれらの医薬として許容し得る塩からなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
DPP IV阻害薬が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、およびアログリプチン、またはこれらの医薬として許容し得る塩からなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬の併用または同時または逐次的使用に適していることを特徴とする、請求項1から4までの1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬が、単一剤形中に存在することを特徴とする、請求項1から5までの1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体およびDPP IV阻害薬が、それぞれ別個の剤形中に存在することを特徴とする、請求項1から6までの1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
それを必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血中グルコース異常、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満、および代謝症候群からなる群から選択される代謝障害を予防する、進行を減速する、遅延させる、または治療する方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項9】
それを必要とする患者における、血糖コントロールを改善する、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項10】
それを必要とする患者における、耐糖能異常、空腹時血中グルコース異常、インスリン抵抗性および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防する、減速する、遅延させる、または逆転させる方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項11】
それを必要とする患者における、白内障、ならびに腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈閉塞性疾患のような微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防する、進行を減速する、遅延させる、または治療する方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項12】
それを必要とする患者における、体重を減少させる、または体重増加を予防する、または体重減少を促進する方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項13】
それを必要とする患者における、膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防する、減速する、遅延させる、または治療する、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復する、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を回復する方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項14】
それを必要とする患者における、肝脂肪の異常な蓄積に帰せられる疾患または状態を予防する、減速する、遅延させる、または治療する方法であって、請求項1に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項15】
それを必要とする患者における、インスリン感受性を維持および/または改善する、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防する方法であって、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体を、請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬と併用してまたは交互に投与することを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項8、9、10、11、12、13、14または15に記載の方法において使用するための薬剤を製造するための、請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体の使用。
【請求項17】
請求項8、9、10、11、12、13、14または15に記載の方法において使用するための薬剤を製造するための、請求項1または3に記載のDPP IV阻害薬の使用。
【請求項18】
それを必要とする患者における、
・1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血中グルコース異常、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満、および代謝症候群からなる群から選択される代謝障害を予防する、進行を減速する、遅延させる、または治療するための、あるいは
・血糖コントロールを改善するための、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための、あるいは
・耐糖能異常、インスリン抵抗性および/または代謝症候群から2型糖尿病への進行を予防する、減速する、遅延させる、または逆転させるための、あるいは
・白内障、ならびに腎症、網膜症、神経障害、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈閉塞性疾患のような微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症からなる群から選択される状態または障害を予防する、進行を減速する、遅延させる、または治療するための、あるいは
・体重を減少させるための、または体重増加を予防するための、または体重減少を促進するための、あるいは
・膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防する、減速する、遅延させる、または治療するための、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復するための、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を回復するための、あるいは
・肝脂肪の異常な蓄積に帰せられる疾患または状態を予防する、減速する、遅延させる、または治療するための、あるいは
・インスリン感受性を維持および/または改善するための、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防するための、
薬剤を製造するための、請求項1から7までの1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
患者が、過体重、肥満、内臓肥満、および腹部肥満からなる群から選択される状態の1つ以上と診断された個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。
【請求項20】
患者が、次の状態:
(a)110mg/dLを超える、特に125mg/dLを超える空腹時血中グルコースまたは血清中グルコース濃度;
(b)140mg/dL以上の食後血漿中グルコース;
(c)6.5%以上、特に8.0%以上のHbA1c値
の1つ、2つ、またはそれ以上を示す個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。
【請求項21】
患者が、次の状態:
(a)肥満、内臓肥満、および/または腹部肥満;
(b)血中トリグリセリド濃度≧150mg/dL;
(c)血中HDL−コレステロール濃度<40mg/dL(女性患者)、<50mg/dL(男性患者);
(d)収縮期血圧≧130mmHg、かつ拡張期血圧≧85mmHg;
(e)空腹時血中グルコース濃度≧110mg/dL
の1つ、2つ、3つまたはそれ以上が存在する個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。
【請求項22】
患者が、メトフォルミンでの単剤療法が禁忌である、かつ/または治療用量でのメトフォルミンに対して不耐性を有する個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。
【請求項23】
患者が、SGLT2阻害薬、特に請求項1または2に記載の式Iのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体での単剤療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。
【請求項24】
患者が、DPP IV阻害薬、特に請求項1、3または4に記載のDPP IV阻害薬での単剤療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な個体である、請求項8から15までの1項に記載の方法、または請求項16、17または18の1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535850(P2010−535850A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520594(P2010−520594)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060736
【国際公開番号】WO2009/022007
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】