説明

グルタチオン産生促進剤

【課題】経口投与組成物、経皮投与組成物として好適な、生体内における酸化ストレス防御及び解毒機能を向上せしめるためのグルタチオン産生促進作用を有する物質の提供。
【解決手段】特定のシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はその塩にグルタチオン産生促進作用が存すること、更には、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミンがキク科キク属の植物抽出物に含有される。グルタチオン産生促進作用を有する化合物を含有する経口投与組成物、経皮投与組成物は食品、化粧品、グルタチオン産生促進剤等に応用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの経口投与組成物、化粧料などの経皮投与組成物に好適な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンより構成されるトリペプチドであり、その分子内にチオ−ル基を有する。グルタチオンの生理的機能は、主に2つに分類することが出来る。そのひとつは、生体内における抗酸化成分として働き、活性酸素を不活化することにより、酸化ストレス防御システムとしての役割である。又、この様な抗酸化作用が皮膚において発揮される場合、美白作用や抗老化作用として発現される。生体の構成成分である脂質、蛋白質、酵素、更には、遺伝情報を担う遺伝子などは、生体において過剰に産生された活性酸素よる酸化損傷を生じる危険に晒されている。グルタチオンは、活性酸素種や過酸化物を還元し、消去することにより生体内における酸化防御システムとして働く。もうひとつは、様々な毒性物質、薬物などと結合(抱合)することにより細胞外に排出される抱合及び排出促進作用により、解毒機構としての役割である。グルタチオンは、主として肝臓において、毒性物質と結合(抱合)し、血中を移動し、腎臓から尿として、或いは、肝臓から胆汁として運ばれ腸管内に排出される。この様に、グルタチオンは、生体内における酸化ストレス防御及び解毒システムに深く関与する重要な物質である。
【0003】
生体内におけるグルタチオン産生量は、γ−グルタミンシステイン合成酵素、グルタチオン合成酵素などのグルタチオン合成酵素、更には、γ−グルタミルトランスペプチダ−ゼなどの分解酵素により調整されている。また、生体内におけるグルタチオンには、酸化型(GSH)と還元型(GSSG)が存在し、ストックとしては酸化型で貯蔵され、必要時にグルタチオン還元酵素により、還元型に還元されて、そのバランスが維持されている。グルタチオンは、生体内における酸化防御及び解毒システムとして働くため、薬物中毒、妊娠中毒、角膜損傷、慢性肝疾患、抗癌剤などの医薬品として使用されている。また、「肝臓の解毒作用を促進する」「細胞の老化を抑制する」などの効果を期待し、しみ、にきび、アトピ−性皮膚炎などの皮膚疾患に対しサプリメントなどの食品に配合されている。
【0004】
生体内においてグルタチオンの産生及びグルタチオン抱合体の生成を促進する成分に関する研究が盛んに行われており、特に、グルタチオン産生を促進する成分としては、γ−及びδ−トコフェロ−ルなどのビタミン類(例えば、特許文献1を参照)、植物より単離精製されたクロセチン(例えば、特許文献2を参照)、更にはクロセチンを含有するクチナシ属の植物抽出成分などが知られている。これらの成分は、グルタチオン−S−トランスフェラ−ゼ、グルタチオン−S−トランスグルタミナ−ゼなど関連酵素を活性化し、グルタチオン産生量を顕著に増加させることは知られているが、この様な成分を用いた場合においても、生体内におけるグルタチオン産生量の変化は著しいものではなく、その変化も緩やかである。このため、期待される酸化ストレス防御機構を活性化させる効果が十分に得られているとは言い難く、更に効果の高いグルタチオン産生促進剤が求められている。
【0005】
一方、脂肪族ポリアミン類に属するスペルミン、スペルミン誘導体などは、細胞の成長、分裂及び分化、動物組織の増殖における生物学的な機構の調節に重要な役割を果たす物質として知られている。さらに、脂肪族ポリアミン類の窒素原子上にシンナモイル基を有する化合物に付いては、植物体中に存在することが知られており、特に、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)は、キク科シカギク属のカミツレより抽出、単離精製されている。また、スペルミン、スペルミジン誘導体に関する生物活性としては、タキキニン拮抗作用(例えば、特許文献3を参照)、HIV−1プロテア−ゼ阻害作用(例えば、非特許文献2を参照)が知られているが、その他の生物活性に関する報告は存しない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−284430号公報
【特許文献2】特開2008-074721号公報
【特許文献3】特開2000−256293号公報
【非特許文献1】Atsushi Yamamato, et al., Chem.Pharm.Bull.,50(1),47−52(2002).
【非特許文献2】Chao-mei Ma, et al.,Chem.Pharm.Bull.,49(7),915−917(2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な状況下なされたものであり、経口投与組成物、経皮投与組成物として好適な、生体内における酸化ストレス防御及び解毒機能を向上せしめるためのグルタチオン産生促進作用を有する物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、生体内における酸化ストレス防御及び解毒機構に深く関与するグルタチオンの生体内産生量を増強させる技術を求めて、鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)に表されるシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はその塩にグルタチオン産生を促進する作用が存すること、更には、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)が、キク科キク属の植物抽出物に含有されることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。尚、本発明においては、抽出物とは、抽出物自体、抽出物を分画、精製した画分、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
<1> 下記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とする、グルタチオン産生促進剤。
【0009】
【化1】

(1)
[式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、又は、水素原子が置換されていても良いシンナモイル基を表し、R1、R2、R3及びR4の内、少なくとも1つは水素原子が置換されていても良いシンナモイル基である。]
【0010】
<2> 前記水素原子が置換基を有することもある置換されていても良いシンナモイル基において、前記置換基は、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基及び炭素数1〜4のアルキルエステル基から選択されるものであることを特徴とする、<1>に記載のグルタチオン産生促進剤。
<3> 前記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のグルタチオン産生促進剤。
【0011】
【化2】

(2)
[式中、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアルキルエステル基を表す]
【0012】
<4> 前記一般式(1)で表されるテトラシンナモイルスペルミン誘導体が、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミンであることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤。
【0013】
【化3】


N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)
【0014】
<5> <1>〜<4>の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤を含有する組成物。
<6> <1>〜<4>の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤をキク科キク属の植物のエキスとして含有することを特徴とする、<5>に記載の組成物。
<7> キク科キク属の植物として、キク(Chrysanthemum morifolium Ramatulle)又はシマカンギク(Chrysanthemum indicum Linne)乃至はその近縁植物を選択し、花蕾部を採取し、含水エタノ−ルで抽出した後、抽出物を減圧濃縮し、画分精製を行い、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミンの含有量が0.01〜5質量%であることを確認し、組成物に配合したものであることを特徴とする、<5>又は<6>に記載の組成物。
<8> 経口投与組成物であることを特徴とする、<5>〜<7>の何れか一項に記載の組成物。
<9> 前記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はその薬理学的に許容される塩を0.0001〜5重量%含有することを特徴とする、<5>〜<8>の何れか一項に記載の組成物。
<10> 次に示す疾患予防及び/又は改善効果を有することを特徴とする、<5>〜<9>の何れか一項に記載の組成物
(疾患) しみ、にきび、アトピ−性皮膚炎、動脈硬化、糖尿病、薬物中毒、妊娠中毒、角膜損傷、慢性肝疾患
<11> グルタチオン産生促進用の経口投与組成物の製造方法であって、キク科キク属の植物の花頭を溶媒で抽出し、所望により、溶媒を除去した後、分画、精製に付し、抽出物の画分精製物乃至はその溶媒除去物中の一般式(1)の化合物及び/又はその塩の含有量が0.01〜5重量%であることを確認し、しかる後に経口投与組成物に含有させること特徴とする、製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経口投与組成物、経皮投与組成物として好適な、グルタチオン産生促進作用を有する物質を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<1> 本発明のグルタチオン産生促進剤の有効成分であるシンナモイルスペルミン誘導体
本発明のグルタチオン産生促進剤は、シンナモイルスペルミン誘導体を有効成分とするが、かかる誘導体は、一般式(1)で表される化合物及び/又はその薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする。ここで一般式(1)に表される化合物に付いて述べれば、一般式(1)においてR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、芳香族環上に無置換又は置換基を有することもあるシンナモイル基を表す。それぞれ独立に水素原子、芳香族環上に無置換又は置換基を有することもあるシンナモイル基としては、具体的に水素原子、シンナモイル基、(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−エチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−n−プロピルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−i−プロピルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−tert−ブチルフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’,3’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペニル基、(3’,4’,5’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−ブロモフェニル)−2−プロペノル基などが好ましく、例えば、シンナモイル基、(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノル基、(3’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル基、(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基、(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル基が好適に例示出来る。特に好ましいものは、4位に水酸基、メトキシ基などのアルコキシ基等に代表される、置換基を有するものであり、クマロイル基が特に好ましい。
【0017】
さらに、一般式(2)で表される化合物に付いて述べれば、一般式(2)においてR5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアルキルエステル基を表す。それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアルキルエステル基としては、具体的には、水素原子、2−メチル基、3−メチル基、4−メチル基、4−エチル基、4−n−プロピル基、4−i−プロピル基、4−tert−ブチル基、2−ヒドロキシ基、3−ヒドロキシ基、4−ヒドロキシ基、2,3−ジヒドロキシ基、2,4−ジヒドロキシ基、3,4−ジヒドロキシ基、2,3,4−トリヒドロキシ基、3,4,5−トリヒドロキシ基、2−メトキシ基、3−メトキシ基、4−メトキシ基、2−アセチル基、3−アセチル基、4−アセチル基、2−アセトキシ基、3−アセトキシ基、4−アセトキシ基、2,3−ジアセトキシ基、2,4−ジアセトキシ基、3,4−ジアセトキシ基、2,3,4−トリアセトキシ基、3,4,5−トリヒドロキシ基などが好ましく、例えば、水素原子、2−メチル基、3−メチル基、4−メチル基、2−ヒドロキシ基、3−ヒドロキシ基、4−ヒドロキシ基、2−メトキシ基、3−メトキシ基、4−メトキシ基、2−アセチル基、3−アセチル基、4−アセチル基、2−アセトキシ基、3−アセトキ基、4−アセトキシ基が好適に例示でき、特に好ましくは、水酸基が好適に例示できる。又、前記水酸基の置換基位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもとることができるが、パラ位であることが置換基の誘起効果及び/又は共鳴効果を効果的に利用できるので好ましい。
【0018】
この様なシンナモイルスペルミン誘導体は、天然にも存していることから、天然物より抽出し、精製を行い得ることも出来る。例えば、シンナモイルスペルミン誘導体は、キク科キク属の植物体の抽出物に含有される。かかるキク科キク属の抽出物の作製に用いる植物部位としては、地上部が好適に例示でき、中でも花蕾が特に好ましい。前記キク科キク属の植物としては、食用又は薬用に用いられるキク類などが好適に例示でき、中でもキク科キク属キク、キク科キク属シマカンギク乃至はその近縁植物が更に好適に例示できる。抽出に際して、植物体乃至はその乾燥物は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物体乃至はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより製造できる。前記抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示でき、30〜80%、より好ましくは70%含有エタノ−ルが特に好適に例示できる。浸漬後は室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮などにより除去することが出来る。しかる後に、水と酢酸エチル、水とブタノ−ルなどの液液抽出や、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ−などで分画精製し、所望の活性の抽出物を得ることが出来る。活性は、前記一般式(1)に表される化合物をマ−カ−とすることが出来、一般式(1)で表される化合物の中でも、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)の含有量をマ−カ−として、この成分が0.01〜5質量%程度の濃度、より好ましくは0.02〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%になるように調整することが好ましい。これらは、かかる成分自体が前記グルタチオン産生促進作用を有するとともに、前記促進作用を有する分画が前記の、一般式(1)に表される化合物、取り分け、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)が含有される分画と一致するため、これの含有量を前記作用のマ−カ−とすることが出来るためである。この様に、キク科キク属の植物の抽出物(上記画分精製物も包含する)で、生体内における酸化ストレス防御機構を活性化することによりグルタチオン産生を促進し、活性酸素種の関与する多様な疾患に対する治療効果をもたらすことが期待される。即ち、本発明のキク科キク属の植物の抽出物は、酸化ストレス防御機構に関与する因子に作用することにより、グルタチオン産生促進剤として働き、活性酸素種が関与する疾患治療に対する有効成分としての機能を発現する。
【0019】
前記N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)は、公知の化合物であり、例えば、キク科植物などに含有されており、これらの抽出物を精製分離することにより得ることが出来る。又、かかる成分については、合成方法も既に知られており、(例えば、Chem.Pharm.Bull.,50(1),47−50(2002)、かかる合成方法に従えば、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)のみならず、種々の一般式(1)で表される化合物を合成することが出来る。即ち、シンナモイルスペルミジン誘導体及び/又はその薬理学的に許容される塩は、市販のポリアミン誘導体であるスペルミンを原料とし、1)桂皮酸などの大過剰の不飽和カルボン酸をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのペプチド合成試薬により縮合反応する、又は、2)トリエチルアミンなどの塩基存在下、桂皮酸クロリドなどの大過剰な酸クロリドを反応させることにより、全てのアミノ基がアシル化されたテトラシンナモイルスペルミン誘導体を製造することが出来る。又、フリ−のアミノ基を有するポリアミン誘導体は、不飽和カルボン酸又は酸クロリド量を制御することにより得ることも出来るし、全てのアミノ基がアシル化されたポリアミン誘導体を、ペプチダ−ゼなどの酵素により加水分解することによっても得ることが出来る。かかる標品を用いて、高速液体クロマトグラフィ−などを用いて抽出物中のシンナモイルスペルミジン誘導体などの一般式(1)で表される化合物を定量することができる。高速液体クロマトグラフィ−の分析条件としては、例えば、炭素数30のシリカゲル化剤でシリル化したシリカゲルを担体として、移動相を0.1%トリフルオロ酢酸で緩衝した、10%〜50%アセトニトリル水溶液のグラ−ジェント条件で、紫外部300nmの吸収を感知しながら分析することが好ましく例示できる。又、グルタチオン産生促進作用は、GSH/GSSG−412キット(OXIS Research社製)を用いて評価した。すなわち、グルタチオン産生能が顕著で、増殖性を有する細胞として、ヒト肝ガン由来細胞株(HepG2(ATCC社製)を用い、これに抽出物又は試料化合物を添加した後、GSH/GSSG−412キット(OXIS Research社製)を用い、グルタチオン量を測定した。また、細胞沈殿物中のタンパク質量は、プロテインアッセイ法(バイオラッド社製)により測定した。グルタチオン量は、タンパク質あたりのグルタチオン量で表し、グルタチオン産生活性は、ジメチルスルホキシドのみを加えたコントロ−ルのグルタチオン量に対する活性比で示した。
【0020】
斯くして得られた一般式(1)に表される化合物、取り分け、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)を0.01〜5質量%含有する抽出画分は、本発明の経口投与組成物に0.0001〜5質量%、より好ましくは、0.02〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%含有される。本発明の経口投与組成物としては、例えば、医薬、化粧品、食品、飲料などが好適に例示でき、日常的に摂取できることから、食品に適応するのが好ましい。その投与経路も、経口投与、経皮投与何れもが可能であり、解毒(デトックス)の目的では、関連臓器への到達効率の良い経口投与経路を採用し、食品などの経口投与組成物の形態を採用することが好ましい。経皮投与では、メラノサイトを標的細胞とし、効率的に美白作用を具現化できる。
【0021】
斯くして得られた一般式(1)に表されるシンナモイルスペルミン誘導体の内、好ましいものとしては、例えば、次に示す化合物が例示できる。これらの内では、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)が特に好ましい。
N-モノ−(E)−シンナモイルスペルミン、N,N−ジ−(E)−シンナモイルスペルミン、N,N,N−トリ−(E)−シンナモイルスペルミン、N1,N5,N10,N14−テトラ−(E)−シンナモイルスペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N-[モノ−(E)−(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N−[ジ−(E)−(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N-[モノ−(E)−(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N−[ジ−(E)−(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’−メチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−エチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−エチルプロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−エチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−エチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−n−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−n−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−n−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−n−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−i−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−i−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−i−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−i−プロピルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−tert-ブチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−tert−ブチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−tert−ブチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−tert-ブチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−2−クマロイル]スペルミン、N,N−[ジ−(E)−2−クマロイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−2−クマロイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−2−クマロイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−3−クマロイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−3−クマロイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−3−クマロイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−3−クマロイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−4−クマロイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−4−クマロイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−4−クマロイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−4−クマロイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’,3’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’,3’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’,3’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’,3’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’、4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’,4’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’,4’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’,4’−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’,4’,5’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’,4’,5’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’,4’,5’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’,4’,5’−トリヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−アセチルフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−アセトキシフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(2’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(2’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(2’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(2’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(3’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(3’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(3’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(3’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N−[モノ−(E)−(4’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N-[ジ−(E)−(4’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N,N,N−[トリ−(E)−(4’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミン、N1,N5,N10,N14−[テトラ−(E)−(4’−ブロモフェニル)−2−プロペノイル]スペルミンが例示でき、これらの内では、N1,N5,N10,N14−テトラ−4−(E)−クマロイルスペルミンが特に好ましく例示できる。
【0022】
斯くして得られたシンナモイルスペルミン誘導体は、そのまま使用することも出来るし、酸とともに処理して塩の形に変換し、塩として使用することも可能である。塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの鉱酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩などが好適に例示できる。
【0023】
前記成分及び/又は植物の抽出物の製剤化にあたっては、前記成分及び/又は植物の抽出物以外に、通常医薬、化粧品、食品、飲料の製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意性分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロ−スなどの崩壊剤、アラビアゴムやヒドロキシプロピルセルロ−スなどの結合剤、マルチト−ルやソルビト−ルなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤などが好適にに例示できる。経皮投与組成物であれば、油剤、界面活性剤、増粘剤、多価アルコール、水溶性高分子、水などが好適に例示できる。製造は、常法に従ってこれらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
【0024】
かかるシンナモイルスペルミン誘導体乃至はその薬理学的に許容される塩は、生体の細胞に予め備わっている酸化ストレス防御機構を制御する因子に作用することにより、グルタミルシステイン合成酵素、グルタチオン−S−トランスグルタミナ−ゼなど酸化ストレス防御に深く関連する酵素群を活性化していると考えられ、グルタチオン産生量を顕著に増加させる効果を有する。
【0025】
以下に、具体例を挙げて本発明に付いて、更に詳細に説明を加えるが、本発明はかかる実施例に限定さえないことは言うまでもない。
【0026】
<抽出物の製造>
(1)製造例1
「菊花」の名称で株式会社ウチダ和漢薬より販売されているキク科キクの花蕾の乾燥物を10(g)秤取り、200(mL)の70%含水エタノ−ル水溶液を加え、ホモジナイザ−でホモジナイズ処理を行い、室温で2時間浸漬し、不溶物を濾過で取り除いた後、減圧濃縮し、菊花70%エタノ−ル抽出物 3.0(g)を得た。
(2)製造例2
1) 「菊花」の名称で株式会社ウチダ和漢薬より販売されているキク科キクの花蕾の乾燥物を200(g)秤取り、4(L)の70%含水エタノ−ル水溶液を加え、ホモジナイザ−でホモジナイズ処理を行い、室温で2時間浸漬し、不溶物を濾過で取り除いた後、減圧濃縮し、約1(L)の水溶液とした。
2)この様にして得た水溶液にノルマルヘキサン 1(L)を加え、液液抽出を行った。同様の抽出操作を、さらに2回行った。各溶媒相を合わせ、減圧濃縮し、2.6(g)の菊花ノルマルへキサン抽出物を得た。
3)2)の水相に酢酸エチル 1(L)を加え、液液抽出を行った。同様の抽出操作を、さらに2回行った。
各溶媒相を合わせ、減圧濃縮し、5,3(g)の菊花酢酸エチル抽出物を得た。
4)3)の水相にノルマルブタノ−ル 1(L)を加え、液液抽出を行った。同様の抽出操作を、さらに2回行った。各溶媒相を合わせ、減圧濃縮し、菊花ノルマルブタノ−ル抽出物2.6(g)を得た。
5)5)の水相を減圧濃縮し、17.3(g)の菊花水抽出物を得た。
【0027】
<2> グルタチオン産生促進活性試験
(1) グルタチオン量測定試験
試験にはヒト肝ガン由来細胞株HepG2(ATCC社製)を用いた。10容量%牛胎児血清(GIBCO社製)を含む細胞用培地(ATCC社製)に細胞を懸濁し、培養プレ−トに播種し、CO2インキュベ−タ−(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で24時間培養した。
24時間培養後、各抽出物の乾燥固形物量が培地中に20μg/mLの濃度で含まれる試料添加培地に交換した。すなわち、培養プレートから上記のように培養した培地を除去し、予め各抽出物が20μg/mLの濃度で含まれるように添加された、細胞用培地(ATCC社製)を培養プレ−トに入れ換え、CO2インキュベ−タ−(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で24時間培養した。
このように24時間培養した後に、GSH/GSSG−412キット(OXIS Research社製)を用いて、同説明書に従ってグルタチオン量を測定した。すなわち、上記のようなHepG2細胞の培地を除去した後にPBSにて、上清を除去することにより洗浄した。洗浄を再度繰り返した。細胞を回収し、その後−30℃で凍結、融解することで細胞内のグルタチオンを溶出させた。すなわち、培養プレ−トを1000gで15分間、20℃で遠心し、上清を測定試料とした。沈殿物はタンパク定量に用いた。
グルタチオン濃度の測定はキットの説明書に従い実施した。グルタチオン標準品、ブランク、測定試料200μLを、各々のキュベットへ入れ、キット付属のクロモジェン 200μLと酵素液 200μLを各キュベットに加え、室温で5分間インキュベートした。その後各キュベットにキット付属のNADPH液 200μLを添加し、412nmの吸光度の変化を3分間を測定した。グルタチオン濃度は、同時に設定したグルタチオン標準品にて作成した検量線から計算した。また、上記のようにして得られた細胞沈殿物中のタンパク質量はプロテインアッセイ(バイオラッド社製)を用いて求めた。グルタチオン量は、タンパク質量あたりのグルタチオン量であらわした。なお、各サンプルのグルタチオン産生活性はジメチルスルホキシドのみ添加したコントロ−ルのグルタチオン量に対する比活性で示した。
【0028】
<3> 菊花酢酸エチル画分のカラム画分及びテトラクマロイルスペルミンの分離精製
菊花酢酸エチル抽出物1.11(g)をMCII-GEL CHP−20P(三菱化学)を充填した中圧カラムクロマトグラフィ−にて精製し、フラクション1〜9に分画した。グルタチオン産生増加作用の認められたフラクション7〜9、124(mg)をさらにC−30カラムを装着した分取高速液体クロマトグラフィ−で精製しテトラクマロイルスペルミン 30(mg)を得た。

1H−NMR(d6−DMSO)δ:1.29−1.37(4H,m),1.48−1.59(4H,m),2.24−2.31(4H,m),2.43−2.51(4H,m),2.64−2.72(8H,m),2.94−3.30(4H,m),3.11−3.21(8H,m),6.61−6.66(8H,m),6.93−7.01(8H,m),7.71−7.75(1H,m),7.78−7.82(1H,m),9.14(4H,brs).
【0029】
<結果1>
単離精製されたN1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)のグルタチオン産生促進効果を評価した。DMSOのみ添加したものをコントロ−ルとして用い、グルタチオン及びタンパク量を測定した。グルタチオン産生活性は、コントロ−ルのグルタチオン量に対する活性比で示した。結果を図1に示す。N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)は、グルタチオン産生促進作用を有することがわかる。
【0030】
<結果2>
製造例1に従い作製された菊花70%エタノ−ル抽出物(抽出物1)に関し、グルタチオン産生促進効果を評価した。グルタチオン産生促進効果は、菊花70%エタノ−ル抽出物を添加することによる単位タンパク質あたりのグルタチオン産生量で示した。結果を図2に示した。菊花70%エタノ−ル抽出物は、100μg/mLの濃度においてグルタチオン産生促進作用を有することがわかる。
【0031】
<結果3>
製造例2に従い作製された菊花ノルマルヘキサン抽出物(抽出物2)、菊花酢酸エチル抽出物(抽出物3)、菊花ノルマルブタノ−ル抽出物(抽出物4)及び水画分(抽出物5)に関し、グルタチオン産生促進効果を評価した。ジメチルスルホキシドのみ添加したものをコントロ−ルとして用い、グルタチオン及びタンパク量を測定した。グルタチオン産生活性は、コントロ−ルのグルタチオン量に対する活性比で示した。結果を図2に示す。ノルマルへキサン画分(抽出物2)及び酢酸エチル画分(抽出物3)においてグルタチオン産生促進作用を有することがわかる。
【0032】
下記処方に従って、本発明の経口投与組成物である、錠剤状の食品を作製した。即ち、10%エタノ−ル10質量部を噴霧しながら、処方成分100質量部をニュ−マルメライザ−(不二パウダル株式会社製)で造粒し、40℃で3時間送風乾燥した後、150mg錠に打錠し、本発明の食品1〜5を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、機能性食品などの食品に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)のグルタチオン産生活性を示すずである。
【図2】菊花70%エタノ−ル抽出物のグルタチオン産生活性を示す図である。
【図3】菊花ノルマルへキサン抽出物(抽出物2)、菊花酢酸エチル抽出物(抽出物3)、菊花ノルマルブタノ−ル抽出物(抽出物4)及び水画分(抽出物5)のグルタチオン産生促進作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とする、グルタチオン産生促進剤。
【化1】

(1)
[式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、又は、水素原子が置換されていても良いシンナモイル基を表し、R1、R2、R3及びR4の内、少なくとも1つは水素原子が置換されていても良いシンナモイル基である。]
【請求項2】
前記水素原子が置換基を有することもある置換されていても良いシンナモイル基において、前記置換基は、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基及び炭素数1〜4のアルキルエステル基から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のグルタチオン産生促進剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグルタチオン産生促進剤。
【化2】

(2)
[式中、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアルキルエステル基を表す]
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるテトラシンナモイルスペルミン誘導体が、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミンであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤。
【化3】


N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミン(3)
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤を含有する組成物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載のグルタチオン産生促進剤をキク科キク属の植物のエキスとして含有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
キク科キク属の植物として、キク(Chrysanthemum morifolium Ramatulle)又はシマカンギク(Chrysanthemum indicum Linne)乃至はその近縁植物を選択し、花蕾部を採取し、含水エタノ−ルで抽出した後、抽出物を減圧濃縮し、画分精製を行い、N1,N5,N10,N14−テトラ−p−(E)−クマロイルスペルミンの含有量が0.01〜5質量%であることを確認し、組成物に配合したものであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
経口投与組成物であることを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)で表されるシンナモイルスペルミン誘導体及び/又はその薬理学的に許容される塩0.0001〜5重量%含有することを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
次に示す疾患予防及び/又は改善効果を有することを特徴とする、請求項5〜9の何れか一項に記載の組成物
(疾患) しみ、にきび、アトピ−性皮膚炎、動脈硬化、糖尿病、薬物中毒、妊娠中毒、角膜損傷、慢性肝疾患
【請求項11】
グルタチオン産生促進用の経口投与組成物の製造方法であって、キク科キク属の植物の花頭を溶媒で抽出し、所望により、溶媒を除去した後、分画、精製に付し、抽出物の画分精製物乃至はその溶媒除去物中の一般式(1)の化合物及び/又はその塩の含有量が0.01〜5重量%であることを確認し、しかる後に経口投与組成物に含有させること特徴とする、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−37247(P2010−37247A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200485(P2008−200485)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】