説明

グロメット

【課題】グロメット本体によるインナーリングの保持力を高めると共に、グロメット本体にインナーリングを嵌合しやすくする。
【解決手段】グロメット本体11に内嵌されると共に車体パネルPの挿通穴Hの周縁へ係止する車体係止爪23(23a〜23d)を先端周縁より突設した樹脂製のインナーリング21を備えたグロメット10において、インナーリング21の軸方向の基端側から外径方向へ周方向に間隔をあけて複数の固定爪24(24a〜24d)を突設し、かつ、各固定爪24は先端に引掛突起25を設けたカギ状としている一方、グロメット本体11は、インナーリング21を内嵌する大径筒部15の周壁15aに各固定爪24を貫通する複数の貫通穴18(18a〜18d)を設け、該貫通穴18に固定爪24を貫通させると共に固定爪24の先端の引掛突起25を前記周壁15aの外面に当接させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグロメットに関し、詳しくは、弾性材からなるグロメット本体に樹脂製のインナーリングを組みつけた構成で、自動車に配索するワイヤハーネスを内部に挿通させて車体パネルの挿通穴に装着するグロメットにおいて、グロメット本体によるインナーリングの保持力を高めるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に配索するワイヤハーネスを車体パネルの挿通穴に挿通するとき、ワイヤハーネスを内部に挿通させたグロメットを車体パネルの挿通穴に装着して、該挿通穴の挿通部分におけるワイヤハーネスの保護および防水、防塵を図っている。このグロメットの一例として、特開2003−111251号公報(特許文献1)で、図5および図6(A)〜(C)に示すような樹脂インナー付きグロメット1が提案されている。
【0003】
前記樹脂インナー付きグロメット1は、グロメット本体2の小径筒部3の先端に連続した大径筒部4に樹脂インナー7を収容している。具体的には、樹脂インナー7の周壁7aより円環状の係止鍔部7bを突設し、該係止鍔部7bを、グロメット本体2の前記大径筒部4内に凹設した環状凹部5に係止させることにより、樹脂インナー7とグロメット本体2とを嵌合させている。該グロメット1は、樹脂インナー7の外面に突設した係止爪7cを車体パネル8の挿通穴9に撓ませながら押し込み該挿通穴9の周縁に係止することにより、大径筒部4の開口端より突設したシールリップ6が挿通穴9の周縁に圧着した状態で取り付けられる。
【0004】
しかしながら、グロメット1の車体パネル8への取り付けに際しては、前記樹脂インナー7の係止爪7cが車体パネル8の挿通穴9の周縁に係止した状態で、グロメット本体2はハーネス(図示せず)と共に図中矢印方向に引っ張られる。よって、グロメット本体2と樹脂インナー7とが互いに離反方向に外力を受けることになる。ゴム製またはエストラマー製からなるグロメット本体2の前記環状凹部5が開く恐れがあり、該環状凹部5と樹脂インナー7の係止鍔部7bとの嵌合が外れて、樹脂インナー7がグロメット本体2から外れやすい点に課題がある。
【0005】
また、樹脂インナー7の前記係止鍔部7bとグロメット本体2の環状凹部5とを全周にわたって嵌合させる構造であるため、グロメット本体2に樹脂インナー7を嵌合させにくく、作業性が悪い点にも課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−111251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、グロメット本体から樹脂インナーが外れにくく、かつ、グロメット本体への樹脂インナーの嵌合作業が容易なグロメットの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、ワイヤハーネスを密着して挿通させるゴムまたはエストラマーからなるグロメット本体と、該グロメット本体に内嵌されると共に車体パネルの挿通穴周縁へ係止する車体係止爪を備えた樹脂製のインナーリングとからなり、
前記インナーリングの軸方向の先端側に周方向に間隔をあけて複数の前記車体係止爪を突設していると共に、該インナーリングの軸方向の基端側から外径方向へ周方向に間隔をあけて複数の固定爪を突設し、かつ、各固定爪は先端に引掛突起を設けたカギ状としている一方、
前記グロメット本体は、前記ワイヤハーネスを密着して挿通させる小径筒部と中径筒部とを連続して備え、該中径筒部の周壁からは前記インナーリングを内嵌する大径筒部を前記車体パネルと面する方向に突設し、該大径筒部の周壁に前記各固定爪を貫通する複数の貫通穴を設け、該貫通穴に固定爪を貫通させると共に該固定爪の先端の引掛突起を前記大径筒部の周壁外面に当接させていることを特徴とするグロメットを提供している。
【0009】
このように前記構成のグロメットは、樹脂製のインナーリングとグロメット本体との嵌合構造を、グロメット本体の周壁に設けた貫通穴に、インナーリングの周壁から突設した固定爪を貫通させて嵌合する構造としている。該グロメット本体の貫通穴は、グロメット本体の内側に凹設された前述の従来の環状凹部と異なり、インナーリングが車体パネルに係止された状態でグロメット本体がハーネス挿通方向に引っ張られても開いたり変形することが殆どないため、該貫通穴から前記固定爪が抜け外れにくく、インナーリングとグロメット本体とが離反方向に外力を受けても互いに外れにくい構造とすることができる。
【0010】
また、前記固定爪の先端をカギ状として引掛突起を形成し、この引掛突起を前記貫通穴の周縁に係止させてグロメット本体の大径筒部の周壁外面に当接させることにより、固定爪が貫通穴から抜け外れることを一層有効に防止することができる。
【0011】
さらに、前記インナーリングとグロメット本体とは、前述の従来例のように全周にわたって嵌合する構造ではなく、周方向に間隔をあけて突設した前記固定爪の位置でのみ嵌合させる構造であるため、インナーリングをグロメット本体に嵌め込みやすく、作業性を高めることができる。
【0012】
前記インナーリングの外周壁から突設した各固定爪に前記先端の引掛突起と同方向に突出した中間突起を設ける一方、
前記グロメット本体の大径筒部の周壁先端からL形状とした内径突出部を設け、前記中間突起を前記内径突出部と周壁との間に嵌合させていることが好ましい。
【0013】
このように、インナーリングの前記固定爪とグロメット本体の前記貫通穴との嵌合に加え、グロメット本体の前記内径突出部と周壁との間にできる断面コ字状の凹部にインナーリングの前記中間突起を嵌合させることにより、グロメット本体とインナーリングとの嵌合構造を二重構造とすることができるため、グロメット本体からインナーリングが外れることをより確実に防止することができる。
【0014】
前記インナーリングに設ける車体係止爪と前記固定爪とは軸線方向で対応する位置に設け、かつ、車体係止爪の周方向幅より固定爪の周方向幅を大としている。
このように、車体係止爪と固定爪とを軸線方向に対応する位置に設けることにより、インナーリングが車体パネルの挿通穴に係止された状態でグロメット本体がハーネス挿通方向に引っ張られたときに、インナーリングとグロメット本体に対する互いに離反方向の外力が同一軸線上の相対位置で作用し、互いが受ける外力を拮抗させることができるため、インナーリングとグロメット本体が歪に変形して嵌合が外れやすくなるのが防止できる。
【0015】
また、グロメット本体は、インナーリングよりも軟質のゴム製またはエストラマー製からなるため、インナーリングを車体パネルの挿通穴に係止させる前記車体係止爪よりも、インナーリングをグロメット本体に嵌合するための前記固定爪の方に強い係止力が必要となることから、車体係止爪の周方向幅よりも固定爪の周方向幅を大とすることにより、インナーリングとグロメット本体との嵌合力を強化して、互いの抜け外れを有効に防止することができる。
【0016】
前記インナーリングに周方向に間隔をあけて3〜8個設ける前記固定爪は、周方向の間隔をすべて相違させていることが好ましい。あるいは、前記インナーリングに周方向に間隔をあけて3〜8個設ける前記固定爪は、その周方向の幅をすべて相違させていることが好ましい。
【0017】
このように、隣接する固定爪の周方向の間隔をすべて相違させる、あるいは、複数の固定爪の周方向幅をすべて相違させることにより、インナーリングとグロメット本体との取り付け向きを規制でき、作業者がインナーリングとグロメット本体との取り付け向きを誤って嵌合させてしまうことを有効に防止できる。また、隣接する固定爪の周方向の間隔をすべて相違させる場合は、インナーリングとグロメット本体との位置合わせを目視により容易に行うことができるため、作業性を向上させることができる。
なお、前記複数の固定爪は、各固定爪の周方向幅をすべて相違させ、かつ、隣接する固定爪の間隔をすべて相違させてもよい。
【0018】
また、固定爪の個数を3〜8個としているのは、2個以下ではグロメット本体とインナーリングとの嵌合力が周方向の一部分に偏り、全周にわたって均等で十分な嵌合力を作用させることが難しく、9個以上になると、固定爪をグロメット本体の貫通穴に嵌合させていく作業が煩雑となり、作業性が悪化することに因る。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明のグロメットは、グロメット本体の周壁に貫通穴を設け、該貫通穴に、インナーリングの周壁より突設したカギ状の固定爪を貫通係止させてグロメット本体とインナーリングとを嵌合させている。よって、インナーリングの車体係止爪が車体パネルの挿通穴に係止された状態でグロメット本体がハーネス挿通方向に引っ張られたときでも、前記貫通穴は殆ど変形したり広がることがないため、該貫通穴から前記カギ状の固定爪が抜け外れることを有効に防止することができる。
【0020】
さらに、前記固定爪に加えて、該固定爪に中間突起を設け、該中間突起を、グロメット本体の大径筒部の周壁先端から突設したL形状の内径突出部と周壁との間に嵌合させる構造を設けることにより、グロメット本体とインナーリングとの嵌合構造を二重嵌合構造とすることができ、グロメット本体によるインナーリングの保持力をより一層高めることができる。
【0021】
また、前記固定爪は周方向に間隔をあけて複数設け、インナーリングとグロメット本体とはこの複数の固定爪の位置でのみ嵌合させるため、従来のようにインナーリングとグロメット本体とを全周にわたって嵌合させる構造よりも嵌め込みやすく、作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係るグロメットのグロメット本体を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るグロメットのインナーリングを示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るグロメットを車体パネルに装着した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るグロメットの要部断面図である。
【図5】従来例のグロメットの例を示す断面図である。
【図6】図5に示すグロメットの樹脂インナーを示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
いずれの実施形態のグロメットも、車体パネルPに穿設された真円状の挿通穴Hに挿通するワイヤハーネス30に外嵌して、前記挿通穴Hに取り付けるものである。
また、いずれのグロメットも、ゴムまたはエストラマーの弾性材で一体成形してなるグロメット本体11と、該グロメット本体11に取り付けられる樹脂製のインナーリング21とを備えたインナーリング付きグロメットである。
【0024】
図1乃至図3に本発明の第1実施形態に係るグロメット10を示す。
グロメット本体11は、図1(A)(B)に示すように、中径筒部13と、該中径筒部13の軸線方向両端に第一小径筒部12と第二小径筒部14とを連続一体に備え、中径筒部13の周壁の第一小径筒部12側周縁よりインナーリング21を内嵌する大径筒部15を第一小径筒部12と同一方向に一体に突設している。前記中径筒部13の周壁の第二小径筒部14側周縁からは、車体パネルPの一面に密着するシールリップ16を一体に突設している。
前記第一小径筒部12、中径筒部13、および第二小径筒部14の内部にはワイヤハーネス30を密着させて挿通する両端開口のハーネス挿通空間17を軸線方向に連通させて設けている。
【0025】
前記大径筒部15の周壁15aには、インナーリング21より突設した後述の4つの固定爪24(24a〜24d)を貫通させる4つの貫通穴18(18a〜18d)を、固定爪24a〜24dの各位置に対応するように周方向に間隔をあけて設けている。
また、大径筒部15の周壁15aの先端からは、内径方向に突出した後、その突出端を中径筒部13側に屈曲させたL形状の内径突出部19を全周にわたって設け、該内径突出部19と大径筒部15の周壁15aとの間に環状凹部20を形成している。
【0026】
前記インナーリング21は、図2(A)(B)に示すように、断面真円状の筒部22を備え、該筒部22の先端側外周から4つの車体係止爪23(23a〜23d)を周方向に所要間隔をあけて突設している。前記筒部22の基端側外周からは外径方向に突出する4つの固定爪24(24a〜24d)を周方向に所要間隔をあけて一体に突設している。
前記筒部22の基端側内周からは、グロメット本体11の前記中径筒部13の先端面に当接する円環板部27を突設し、該円環板部27の中央にはグロメット本体11の小径筒部12を貫通させる貫通穴28を設けている。
【0027】
前記各固定爪24の先端は、筒部22の先端方向に屈曲させて引掛突起25を設けたカギ状としている。また、該固定爪24の前記引掛突起25よりも基端側の中間位置には、引掛突起25と同一方向に突出する中間突起26を形成している。
【0028】
前記4つの固定爪24a〜24dは、互いに隣接する固定爪24a、24b間の間隔L1と、固定爪24b、24c間の間隔L2と、固定爪24c、24d間の間隔L3と、固定爪24d、24a間の間隔L4とをすべて相違させている。
また、前記4つの固定爪24a〜24dと4つの車体係止爪23a〜23dとは、筒部22の軸線方向で一対ずつ対応する位置に設けている。
【0029】
前記各固定爪24a〜24dはいずれも、その周方向幅W2を、車体係止爪23a〜23dの周方向幅W1よりも大としている。
また、4つの固定爪24a〜24dの各周方向幅W2a〜W2dはすべて相違させ、かつ、グロメット本体11の前記貫通穴18a〜18dの周方向幅も、それぞれ対応する各固定爪24a〜24dの周方向幅W2a〜W2dに対応させてすべて幅を相違させている。
【0030】
前記インナーリング21とグロメット本体11とは、図3に示すように、インナーリング21の4つの固定爪24a〜24dをグロメット本体11の4つの貫通穴18a〜18dに貫通させて、各固定爪24a〜24dの先端の引掛突起25をグロメット本体11の大径筒部15の周壁15aの外面に当接させると共に、各固定爪24a〜24dから突設した前記中間突起26をグロメット本体11の前記環状凹部20に嵌合させることによって、互いを嵌合させて組み付けている。
【0031】
前記構成のグロメット10を車体パネルPの挿通穴Hに装着する際は、図3に示すように、グロメット本体11の前記ハーネス挿通空間17内にワイヤハーネス30を密着させて挿通した後、車体パネルPの挿通穴Hの一面側周縁にインナーリング21の車体係止爪23を係止させると共に、グロメット本体11の前記シールリップ16を車体パネルPの他面側に密着させる。このとき、グロメット本体11は、図3中矢印で示すハーネス挿通方向に引っ張られるため、該グロメット本体11と、挿通穴Hの周縁に車体係止爪23を係止した状態のインナーリング21とは、互いに離反方向の外力を受けることになる。
【0032】
しかしながら、前記構成のグロメット10は、グロメット本体11に設けた貫通穴18にインナーリング21の固定爪24を貫通させ、かつ、該固定爪24の先端の引掛突起25を貫通穴18の外側周縁に係止させてグロメット11とインナーリング21とを嵌合している。この貫通穴18は、グロメット本体11がハーネス挿通方向に引っ張られても変形したり広がることが殆どないため、該貫通穴18から固定爪24が抜け外れにくい構造となっている。
【0033】
さらに、この固定爪24と貫通穴18との嵌合に加え、該固定爪24に設けた前記中間突起26とグロメット本体11の前記環状凹部20も嵌合しているため、インナーリング21とグロメット本体11とは二重の嵌合構造によって互いに強固に組み付けられている。
【0034】
よって、前記グロメット10は、グロメット本体11とインナーリング21とが互いに離反方向の外力を受けても、グロメット本体11からインナーリング21が外れてしまうことを有効に防止することができる。
【0035】
また、グロメット本体11とインナーリング21とは、前記4つの固定爪24a〜24dの箇所でのみ嵌合され、従来のように全周にわたって互いを嵌合させる構造ではないため、グロメット本体11にインナーリング21を嵌め込みやすく、作業性を高めることができる。
【0036】
さらに、4つの固定爪24a〜24dと4つの車体係止爪23a〜23dは、それぞれ軸線方向で一対ずつ対応する位置に設けているため、グロメット本体11とインナーリング21とが離反方向の外力を受けた際に、インナーリング21の固定爪24a〜24dとグロメット本体11の貫通穴18a〜18dとの各嵌合部に歪み変形が生じて抜け外れやすくなることを防止できる。
また、いずれの固定爪24の周方向幅W2も車体係止爪23の周方向幅W1よりも大として、硬い車体パネルPに係止する車体係止爪23の係止力よりも、軟質のグロメット本体11に嵌合する固定爪24の係止力を強化できるように設定している。
これらにより、インナーリング21とグロメット本体11との嵌合状態を強固で安定したものとすることができる
【0037】
さらにまた、各固定爪24a〜24dの周方向幅W2a〜W2dをすべて相違させ、かつ、隣接する固定爪24a〜24d間の間隔L1〜L4もすべて相違させているため、インナーリング21とグロメット本体11との取り付け向きを規制することができ、誤った向きで取り付けてしまう誤嵌合を防止できる。
また、隣接する固定爪24a〜24d間の間隔L1〜L4をすべて相違させていることで、インナーリング21とグロメット本体11との位置合わせを目視により容易に行うことが可能となる。
【0038】
図4に、本発明の第二実施形態に係るグロメット10−1を示す。
グロメット10−1は、インナーリング21の固定爪24に中間突起26を形成せず、かつ、グロメット本体11の大径筒部15の先端側周縁に内径突出部19を形成していない点で前記グロメット10と相違しているが、その他の構成は前記グロメット10と同一構成としている。
【0039】
グロメット10−1は、グロメット本体11とインナーリング21との嵌合構造が二重構造でなく、インナーリング21の固定爪24とグロメット本体11の貫通穴18の嵌合のみで互いに組み付けられているが、前述のとおり、貫通穴18は、グロメット本体11がハーネス挿通方向に引っ張られても広がったり変形することが殆どないうえ、固定爪24からカギ状に突設した引掛突起25が貫通穴18の外側周縁に係止されているため、貫通穴18から固定爪24が抜け外れることを有効に防止することができ、よって、グロメット本体11によるインナーリング21の保持力を十分高めることができる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。グロメットの筒部の断面形状は長円形でも楕円形でもよい。車体係止爪23および固定爪24の個数は3個でも、5個〜8個でもよい。また、各固定爪24a〜24dの周方向幅をすべて相違させる構造と、隣接する固定爪24a〜24d間の間隔L1〜L4をすべて相違させる構造は、いずれか一方のみを採用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10、10−1 グロメット
11 グロメット本体
15 大径筒部
18(18a〜18d) 貫通穴
21 インナーリング
23(23a〜23d) 車体係止爪
24(24a〜24d) 固定爪
25 引掛突起
26 中間突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを密着して挿通させるゴムまたはエストラマーからなるグロメット本体と、該グロメット本体に内嵌されると共に車体パネルの挿通穴周縁へ係止する車体係止爪を備えた樹脂製のインナーリングとからなり、
前記インナーリングの軸方向の先端側に周方向に間隔をあけて複数の前記車体係止爪を突設していると共に、該インナーリングの軸方向の基端側から外径方向へ周方向に間隔をあけて複数の固定爪を突設し、かつ、各固定爪は先端に引掛突起を設けたカギ状としている一方、
前記グロメット本体は、前記ワイヤハーネスを密着して挿通させる小径筒部と中径筒部とを連続して備え、該中径筒部の周壁からは前記インナーリングを内嵌する大径筒部を前記車体パネルと面する方向に突設し、該大径筒部の周壁に前記各固定爪を貫通する複数の貫通穴を設け、該貫通穴に固定爪を貫通させると共に該固定爪の先端の引掛突起を前記大径筒部の周壁外面に当接させていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記インナーリングの外周壁から突設した各固定爪に前記先端の引掛突起と同方向に突出した中間突起を設ける一方、
前記グロメット本体の大径筒部の周壁先端からL形状とした内径突出部を設け、前記中間突起を前記内径突出部と周壁との間に嵌合させている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記インナーリングに設ける車体係止爪と前記固定爪とは軸線方向で対応する位置に設け、かつ、車体係止爪の周方向幅より固定爪の周方向幅を大としている請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記インナーリングに周方向に間隔をあけて3〜8個設ける前記固定爪は、周方向の間隔をすべて相違させている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項5】
前記インナーリングに周方向に間隔をあけて3〜8個設ける前記固定爪は、その周方向の幅をすべて相違させている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61930(P2011−61930A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207109(P2009−207109)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】