説明

ケラチン誘導体及びそれを製造する方法

可溶性ケラチン誘導体が開示される。可溶性ケラチン誘導体は、可溶性ケラチンタンパク質のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で、少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含む。可溶性ケラチン誘導体は、サクシニル化または四級化によって、または脂肪酸誘導体との反応によって形成される。可溶性ケラチン誘導体は、パーソナルケア配合物に使用してもよく、また、いくつか異なる可溶性ケラチン誘導体の混合物を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第61/001,111号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、可溶性ケラチンタンパク質のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で、少なくとも一つの化学基が置換されて形成される可溶性ケラチン誘導体に関する。置換される化学基は電荷を含むこともある。可溶性ケラチン誘導体は、サクシニル化または四級化によって、または脂肪酸誘導体との反応によって形成され得る。本発明は、また、可溶性ケラチン誘導体の製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ケラチンタンパク質は、当該分野でよく知られており、羊毛、羽毛、毛髪など多数の源に見られる。ケラチン繊維は、ケラチンファミリーの全パーツをなす関連タンパク質の複合混合物で構成される。このようなタンパク質は、ケラチンタンパク質画分と称されることが多く、その構造及び繊維内の役割によって、次のようにグループ化することができる。
【0004】
・繊維皮質で主に見られる繊維性タンパク質である中間径フィラメントタンパク質(intermediate filament protein:IFP)
・繊維皮質のマトリックス並びにキューティクル内で見られる球状タンパク質である高硫黄タンパク質(High sulfur protein:HSP)
・繊維皮質で主に見られる高グリシン‐チロシンタンパク質(High glycine‐tyrosine protein:HGTP)
ケラチン繊維の超微細構造は、当該分野でよく知られており、非特許文献1により詳細に検討されている。
【0005】
ケラチンタンパク質は、整形外科用材料としてそのパーソナルケア配合物、創傷ケア用途、並びに高分子膜の製造における使用を含めて、広範囲の用途で使用される。
【0006】
ケラチンタンパク質は、湿潤剤及び軟化剤として、コンディショニング、膜形成など複数の機能を果たしている。
【0007】
最も一般的に使用されるケラチンタンパク質は、配合物中に容易に含有されるよう、十分な溶解度を与えるために加水分解される。ケラチンタンパク質は、その中に特に高い割合でシステインと架橋しているため、本質的に不溶性である。当該分野には、加水分解の際に、ケラチンタンパク質の機能性などの好ましい性質を多く失うという問題がある。パーソナルケア配合物ではケラチンなど加水分解されたタンパク質を使用した多数の例が、当該分野でよく知られている。
【0008】
特許文献1には、環境及び化学的損傷から毛髪を保護する配合物中での、加水分解されたタンパク質及びそれらの誘導体、特に高硫黄含量の加水分解されたタンパク質及びそれらの誘導体の使用が開示されている。特許文献1の発明者は、望ましい配合物を調製するために、加水分解されたタンパク質とポリアミノカチオン剤の組合せを使用している。
【0009】
特許文献2には、羊毛及び毛髪の染色に補助剤として使用する、酵素加水分解により生成されたS−スルホシステインケラチンペプチドが記載されている。著者は、酵素消化を使用して、低分子量ペプチドを調製し、望ましい溶解度を達成している。
【0010】
特許文献3には、化粧品の調製用、化学及び酵素加水分解により得られたものを含む、広範囲のケラチン分解生成物の使用が開示されている。
【0011】
記載された従来技術では、ケラチンタンパク質は化粧品成分として使用され、利用されるケラチンは、ケラチン源の構成成分への分画は行われず、一材料として加水分解される(例えば、IFP、HSP、HGTP)。加水分解の結果として、ケラチンタンパク質の望ましい性質が多く失われる。低分子量ケラチンペプチドは、凝集秩序がかなり低下し、それらが誘導される高分子量ケラチンよりも、非常に劣る物理的性質を有する物質を生成する。さらに、化学的方法によるケラチン分解ではシステインの不可逆変換が起こり得るので、それにより、他のタンパク質材料と識別する中心となる機能性が失われたペプチド生成物が生ずる。
【0012】
参考文献としてその内容を本願明細書に引用した特許文献4に教示されているように、未加工(intact)ケラチンは、それらが由来する天然ケラチンの多くの望ましい特性を維持し、ケラチン基質への反応性を有する。このような未加工タンパク質の誘導体は、特許文献4には教示されていない。
【0013】
第4級アンモニウム化合物、コハク酸塩及び脂肪酸誘導体などの化学物質は、パーソナルケア製品に使用されて、毛髪や皮膚のコンディショニング、皮膚への持続性、または配合物に界面活性剤特性をもたらすなど、有益な化粧品特性を与えることが多い。しかしながら、これらの化学物質のクラスにはタンパク質とペプチドに関連する有益性がなく、合成化学物質に関連する利点とタンパク性材料に固有の利点の両方を提供するには限界がある。
【0014】
化学的修飾は、タンパク質の官能特性を修飾する有用な方法である。これを達成するために一般的に使用される化学反応には、アシル化、サクシニル化、エステル化、酸化、還元、グリコシル化、リン酸化及びアルキル化がある。これらの反応は、イオン性アミノ酸基と末端アミノ基に関連する。
【0015】
サクシニル化は、一般的に食用タンパク質において使用され、溶解性、起泡性、乳化性、並びに風味を向上させる。タンパク質のサクシニル化は、分子内で静電反発力に影響する、マイナスに帯電したカルボニル基の導入と関連して、タンパク質でコーティングされた表面間での静電反発を改善し、その結果、乳化の安定性がより高くなる。サクシニル化反応は、タンパク質内のアミン基を含み、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸も含む。
【0016】
別の化学的修飾は、プラスに帯電した第四級アンモニウム塩をタンパク質に添加して、より多くのカチオン種を生成する四級化の方法である。カチオン界面活性剤は、洗剤または発泡剤としての効果は少ないが、非常に重要な2つの特性を有する。カチオン界面活性剤の正電荷は、マイナスに帯電した基質上での吸収を可能にし、静電気防止特性と軟化作用を付与し、その一部は殺菌剤でもある。それはコンディショナーなどのヘアケア製品でよく見られる。
【0017】
別の化学的修飾は、タンパク質分子上のアミン基に脂肪酸分子を結合させて、タンパク質の疎水性を増加させることである。
【0018】
従って、例えば、毛髪や皮膚のコンディショニング、皮膚への持続性、または配合物に界面活性剤特性をもたらすなどの化粧品特性を含み、さらに他の望ましいケラチンタンパク質の特徴を維持するようなケラチン誘導体を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第98/51265号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4、948、876号明細書
【特許文献3】米国特許第4、895、722号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0165635号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】R.C.Marshall et al、Structure and Biochemistry of Mammalian Hard Keratin、Electron Microscopy Reviews,(1991)4、47
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本開示の第1の実施形態において、本出願の発明者は、可溶性ケラチンタンパク質上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基の化学基を置換することによって、可溶性ケラチンタンパク質を修飾して可溶性ケラチン誘導体を形成できることを発見した。
【0022】
第1の実施形態の一態様において、置換は、可溶性ケラチンタンパク質上の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基と無水物が反応するサクシニル化反応によって終了する。これは、全体の電荷をよりマエナスにする効果がある。
【0023】
第1の実施形態の別の態様において、置換は、化学基が可溶性ケラチンタンパク質上の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基に添加されたプラスに帯電した第四級アンモニウム塩である、四級化反応によって終了する。これは、全体の電荷をよりプラスにする効果がある。
【0024】
第1の実施形態のさらに別の態様において、置換は、可溶性ケラチンタンパク質上の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基に長鎖脂肪酸を添加し、それによりタンパク質電荷の少なくとも一部を中和することによって起きる。長鎖脂肪酸は、ラウリン酸と塩化オキサリルを結合することによって形成されるような、長鎖脂肪酸塩化物である。または、カップリング工程を通して脂肪酸誘導体が生成される。好ましいカップリング剤には、エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)またはN‐(3−ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩がある。上記の場合において、分子内の静電反発力が変化し、界面活性の促進と他の特性をもたらす。
【0025】
第1の実施形態で使用された可溶性ケラチンタンパク質は、ケラチン全体またはケラチンタンパク質画分である。ケラチンタンパク質画分の例には、IFP画分、HSP画分及びHGTP画分が含まれる。可溶性ケラチンタンパク質は未加工である。ただし、可溶性ケラチンタンパク質は部分的にまたは完全に加水分解されてもよい。可溶性ケラチンタンパク質は、S‐スルホン化ケラチンまたは部分酸化されたケラチンである。一態様において、可溶性ケラチンは、未加工S‐スルホン化ケラチン中間径フィラメントタンパク質画分であってもよい。可溶性ケラチンタンパク質のシステイン含量は約4%である。
【0026】
本開示の第2の実施形態は、可溶性ケラチンタンパク質の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で化学基を置換する方法を使用した、可溶性ケラチン誘導体の調製方法に関するものである。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製後、その水溶液と化学基を含有する溶液を混合する段階を含んでいる。置換された化学基は、可溶性ケラチンタンパク質にその電荷を与えるマイナスに帯電した基、またはプラスに帯電した基を含んでいる。可溶性ケラチンタンパク質は、第1の実施形態で上述された可溶性ケラチンタンパク質と同様のものである。別の任意の成分を追加し、pH調整剤とpH緩衝液など、最終製品の特性を変化させる。この方法は、また反応温度の調節を伴う。
【0027】
第2の実施形態の一態様において、置換はサクシニル化反応を含む。サクシニル化反応の置換の結果として、可溶性ケラチンタンパク質の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基と無水物が反応して可溶性ケラチン誘導体を形成する。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製後、その水溶液と無水物の含有溶液を混合する段階を含んでもよい。
【0028】
第2の実施形態の別の態様において、置換は四級化反応を含む。四級化反応の置換の結果として、可溶性ケラチンタンパク質内の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基にプラスに帯電した四級化アンモニウム塩が添加される。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製後、その水溶液と第四級化アンモニウム塩の含有溶液を混合する段階を含んでもよい。
【0029】
第2の実施形態のさらに別の態様において、置換には酸塩化物置換反応またはカップリング反応を含む。酸塩化物方法またはカップリング反応による置換の結果、可溶性ケラチンタンパク質内の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基に脂肪酸基が追加される。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製後、その水溶液と長鎖脂肪酸の含有溶液を混合する段階を含む。長鎖脂肪酸は、酸塩化物方法によるか、またはN‐(3−ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)カップリング剤による塩化ラウロイルとラウリン酸の混合物であってもよい。
【0030】
本開示の第3の実施形態は、可溶性ケラチン誘導体を含む界面活性剤製品に関するものである。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述したようなものである。
【0031】
本開示の第4の実施形態は、可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物に関するものである。パーソナルケア配合物は、約0.001重量%〜50重量%の可溶性ケラチン誘導体を含む。この比率は、0.001%〜10%または0.001%〜5%である。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述したようなものである。可溶性ケラチン誘導体特性から可溶性ケラチン誘導体が使用され得るパーソナルケア配合物は、次のいずれかを含む。つまり、コンディショニングシャンプー、ボディ/洗顔クレンザー/シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアジェル、ヘアムース、ヘアセッティングローション、ヘアスプレー、パーマ前処理液、パーマ後処理液、保湿クリーム、シャワージェル、発泡バスジェル、マスカラ、マニキュア液、液状ファンデーション、シェービングクリーム及びリップスティックである。別のパーソナルケア配合物も、本発明内に含まれる(例えば、皮膚を保護する洗剤)。
【0032】
本開示の第5の実施形態は、パーソナルケア配合物のための添加剤に関するものである。添加剤は第1の実施形態で上述したような可溶性ケラチン誘導体を含む。
【0033】
本開示の第6の実施形態は、毛髪をトリートメントする方法である。この方法は、0.001%〜50%の可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物を毛髪に適用する段階を含む。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述したようなものである。
【0034】
本開示の第7の実施形態は、毛髪をトリートメントする方法である。この方法は、添加剤を含むパーソナルケア組成物を毛髪に適用する段階を含む。添加剤は可溶性ケラチン誘導体を含む。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述したようなものであってもよい。
【0035】
本開示の第8の実施形態は、可溶性ケラチン誘導体混合物である。可溶性ケラチン誘導体混合物は、二つ以上の可溶性ケラチン誘導体を含む。可溶性ケラチン誘導体混合物は、可溶性ケラチンタンパク質画分上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で少なくとも一つの置換された化学基を有する第1の可溶性ケラチンタンパク質画分を含む。可溶性ケラチン誘導体混合物は、可溶性ケラチンタンパク質画分上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で少なくとも一つの置換された化学基を有する第2の可溶性ケラチンタンパク質画分をさらに含む。第1及び第2の可溶性ケラチン画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質であってもよい。第1の可溶性ケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とは異なってもよい。
【0036】
本開示の第9の実施形態は、可溶性ケラチン誘導体混合物を製造する方法である。この方法は、第1の可溶性ケラチンタンパク質画分上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で少なくとも一つの置換された化学基を有する第1の可溶性ケラチンタンパク質画分と、第2の可溶性ケラチンタンパク質画分上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基で少なくとも一つの置換された化学基を有する第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とを混合する段階を含む。第1及び第2の可溶性ケラチン画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質であてもよい。第1の可溶性ケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とは異なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
添付の図面を参照しながら、一例として記載された以下の説明より本発明の態様をさらに明確にする。
【図1】図1は、サクシニル化タンパク質試料の電荷特性のグラフを示し、ここで、非誘導化タンパク質0%(未加工ケラチン)、試料SPA28%、試料SPB74%、試料SPC79%及び試料SPD83%である。
【図2】図2は、未加工ケラチンとサクシニル化タンパク質のpH‐溶解度曲線を示す。
【図3】図3は、四級化タンパク質試料の電荷特性のグラフを示し、ここで、非誘導化タンパク質0%(未加工ケラチン)、試料QuatA7%、試料QuatB41%、試料QuatC65%及び試料QuatD85%である。
【図4】図4は、未加工ケラチンと四級化タンパク質のpH‐溶解度曲線を示す。
【図5】図5は、非処理毛髪(試料E及びF)の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)イメージを示す(倍率:800x)。
【図6】図6は、非処理毛髪(試料E及びF)のSEMイメージを示す(倍率:2000x)。
【図7】図7は、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)で洗浄した毛髪(試料A及びB)のSEMイメージを示す(倍率:800x)。
【図8】図8は、SLESで洗浄した毛髪(試料A及びB)のSEMイメージを示す(倍率:2000x)。
【図9】図9は、サクシニル化ケラチンタンパク質試料SPCで洗浄した毛髪(試料C及びD)のSEMイメージを示す(倍率:800x)。
【図10】図10は、SPCで洗浄した毛髪(試料C及びD)のSEMイメージを示す(倍率:2000x)。
【図11】図11は、異なる毛髪試料(A〜F)に対して抽出された毛髪脂質のTLC分析を示し、ここで、CEはコレステロールエステル)、FFAEは脂肪酸エステル、FFAは遊離脂肪酸、Cholはコレステロール)、Cerはセラミド)、TGはトリグリセリド)である。
【図12】図12は、平均コーミングストローク力計算(この実験例では(100+160+170+180+200)/5=162のように計算される)及び各力/伸長曲線に対する平均コーミング力の計算時に使用したグラフを示す。
【図13】図13は、二つの実験で処理及び非処理毛髪トレスに対して測定したコーミング力の平均値のグラフを示す。
【図14】図14は、二つの実験で処理及び非処理毛髪トレスに対してコーミング力を測定した最高ピークの平均値のグラフを示す。
【図15】図15は、二つの実験で処理及び非処理毛髪トレスに対したコーミング力測定で記録された最高ピークの平均値のグラフを示す。
【図16】図16は、高分子量の四級化誘導体について、異なる毛髪トレス(処理及び非処理)に関する様々な質問に対する全審査員の選択パーセンテージを示す。
【図17】図17は、低分子量の四級化誘導体について、異なる毛髪トレス(処理及び非処理)に関する様々な質問に対する全審査員の選択パーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
好適な実施形態の詳細な説明
本開示の第1の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体が開示される。可溶性ケラチン誘導体は、可溶性ケラチンタンパク質への修飾を含み、その修飾では、可溶性ケラチンタンパク質上の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基の化学基が置換されることによって、可溶性ケラチンタンパク質が修飾されて誘導体が形成される。
【0039】
ケラチンは、ジスルフィド結合を介してケラチンタンパク質に高度の架橋を与える高含量のアミノ酸システインを特徴とするタンパク質ファミリーである。ケラチンタンパク質は、また、多くの生物組織に基本となる構造的役割を提供する高秩序性のタンパク質である。
【0040】
さらに、ジスルフィド架橋の発生は、体内の酵素分解に、ある程度の回復力を与え、ケラチン由来の任意物質は調節可能期間に特定部位に保持されるようになる。
【0041】
ケラチンは本来不溶性であるため、可溶性ケラチンタンパク質を製造するには、化学的に修飾しなければならない。当該分野で周知の任意のケラチン可溶化方法を使用して、本発明で使用する可溶性ケラチンを提供するのと同時に、可溶性に修飾されたケラチンはいずれも本発明で使用できる
そのような一つの工程は、米国特許第7、148、327号明細書に記載されているように、ケラチンの化学的修飾によるS‐スルホン化ケラチンの形成を含み、その内容は参考文献として本願明細書に引用されている。
【0042】
第1の実施形態の一態様において、可溶性ケラチンはS‐スルホン化ケラチンタンパク質である。S‐スルホン化ケラチンは、ケラチンタンパク質内のシスチンアミノ酸間のジスルフィド結合が可逆的に修飾される、極性官能基の生成工程を受けるケラチンタンパク質を指し、その官能基によりケラチンタンパク質内に本来存在する自然なジスルフィド架橋の再導入が調節可能になる。S‐スルホン化ケラチンは、主にS‐スルホシステインの形態で存在するシステイン/シスチンを有する。この高い極性基は、タンパク質にある程度の溶解度を与える。S‐スルホ基は溶液内で安定である一方、システインなどのチオール及び別の還元剤に対して反応性が高い不安定なシステイン誘導体である。還元剤との反応により、S‐スルホシステイン基のシスチンへの返還反応が導かれる。S‐スルホシステインは、両方の基がSO基を含んでいるが、システイン酸とは化学的に異なる。システイン酸は、システインまたはシスチンの酸化によって不可逆的に生成し、一旦形成されると、再びジスルフィド架橋を形成してシステインに戻ることはできない。S‐スルホシステインは、システインとよく反応し、容易にジスルフィド架橋を形成する。
【0043】
第1の実施形態の別の態様において、可溶性ケラチンは部分酸化ケラチンタンパク質である。部分酸化というのは、ケラチン内の85%を超えるシステインが、システイン酸と、さらに比較的少数の酸化に敏感な別なアミノ酸に酸化されることを意味する。ケラチンタンパク質の部分酸化は、ケラチンタンパク質内のシスチンアミノ酸間のジスルフィド結合をシステイン酸に変換することによって、ケラチンタンパク質を可溶化する。
【0044】
第1の実施形態の可溶性ケラチンタンパク質は、異なる画分へと分解されないケラチンタンパク質全体である。別の実施形態において、ケラチンタンパク質はケラチンタンパク質画分であってもよい。人間の毛髪、羊毛、動物繊維、角、鼓腸症または別の哺乳類源から抽出された硬質αケラチンタンパク質は、その生化学的性質、具体的にその分子量とアミノ酸組成によって特定の構成成分に分類することができる。米国特許出願公開第2006/0165635号明細書には、特定の組成が詳細に記載されており、その内容を参考文献として本願明細書に引用されている。上述のケラチンタンパク質画分は、ケラチンタンパク質ファミリー内から個別基に分類され、中間径フィラメントタンパク質(IFP)、高硫黄タンパク質(HSP)及び高グリシン‐チロシンタンパク質(HGTP)を含む。
【0045】
中間径フィラメントタンパク質は、Orwin et al.(Structure and Biochemistry of Mammalian Hard Keratin,Electron Microscopy Reviews、4、47、1991)によって詳細に記載され、またGillespie(Biochemistry and physiology of the skin、vol.1、Ed.Goldsmith Oxford University Press、London、1983、pp.475‐510)は、低硫黄タンパク質とも称している。中間径フィラメントタンパク質ファミリーの主要特性は、40〜60kD範囲の分子量と約4%のシステイン含量(ハーフシスチンとして測定される)である。
【0046】
高硫黄タンパク質ファミリーも、OrwinとGillespieによって上記と同一の参考文献に十分記載されている。このタンパク質ファミリーは異質性が高いが、10〜30kD範囲の分子量と10%を超えるシステイン含量を特徴とする。このファミリーのサブセットは超高硫黄タンパク質であり、システイン含量を最大34%まで有することができる。
【0047】
高グリシン‐チロシンタンパク質ファミリーもOrwinとGillespieによって上記と同一の参考文献に十分記載されている。このファミリーは高チロシンタンパク質とも称され、10kD未満の分子量、一般的に10%を超えるチロシン含量及び一般的に20%を超えるグリシン含量を特徴とする。
【0048】
本発明の目的では、「ケラチンタンパク質画分」は、精製ケラチンであり、上述のように全体ではないが、主に一つの個別タンパク質基を含有する。
【0049】
第1の実施形態の可溶性ケラチンタンパク質は未加工である。「未加工」という用語は、水の添加による結合開裂と定義される加水分解により、明らかに加水分解されなかったタンパク質のことである。Gillespieは、未加工を角化重合状態のタンパク質であると考え、さらに、羊毛と毛髪内の未加工ケラチンを形成するためのポリペプチドサブユニットであるとしている。この明細書の目的で、「未加工」は、Gillespieによって記載されたポリペプチドサブユニットのことである。これらは、角化の工程を通して形成されるジスルフィド架橋がない、その天然形態のケラチンタンパク質と同等のものである。
【0050】
未加工ケラチンタンパク質とケラチンタンパク質画分は、同時継続出願の米国特許出願公開第2008/0038327号明細書でさらに詳細に検討されており、その全体出願内容を参考文献として本願明細書に引用している。
【0051】
可溶性ケラチンタンパク質は加水分解される。加水分解は、水の添加を通した結合開裂のことである。このように加水分解されたケラチンタンパク質は、ケラチンペプチドまたはオリゴペプチドとも称される。本明細書の目的では、「加水分解されたタンパク質」という用語にはペプチドも含む。本開示に教示された誘導体化が、未加工タンパク質と加水分解されたタンパク質(ペプチド)の両方の誘導体化を含むことは明らかである。例として、本発明者が加水分解時に起こると理解した反応は次式(I)で示される。
【0052】
【化1】

【0053】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基、XとYは標準アミノ酸側鎖である。)
式(I)は、誘導体化前の加水分解を示し、代わりに加水分解が誘導体化後に起こる可能性があることは明らかであり、上記式に限定されるものではない。
【0054】
また、他の言及または提案がなければ(例えば、未加工タンパク質を参照する場合)、本願明細書に使用されるような「タンパク質」という用語は、タンパク質全体とペプチドの両方を含むことは明らかである。
【0055】
可溶性ケラチンタンパク質は、水などの、パーソナルケア配合物に使用する任意の適切な溶液内にある。水溶液は、水溶液の調製するために適切な溶液に任意の比率の可溶性ケラチンからなる。可溶性ケラチンタンパク質の水溶液は、パーソナルケア配合物のための0.001〜50重量%の可溶性ケラチンタンパク質である。
【0056】
可溶性ケラチン誘導体を生成するために使用される化学基は、マイナスに帯電した基またはプラスに帯電した基を含み、それらの基が可溶性ケラチンタンパク質にその電荷を与える。
【0057】
化学基は、可溶性ケラチンタンパク質の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基の位置で可溶性ケラチンタンパク質に結合する。化学基は、可溶性ケラチンタンパク質の一つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基との置換によって、ケラチンに結合する。
【0058】
本願明細書に開示された第1の実施形態の一態様で可溶性ケラチン誘導体が開示され、その態様では、可溶性ケラチンタンパク質はサクシニル化反応を通して修飾され、可溶性ケラチンサクシニル化誘導体と呼ばれる。
【0059】
サクシニル化反応による置換の結果、タンパク質内のリジン基及び/または末端アミン基、及び、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基の一つ以上と無水物が反応し、可溶性ケラチン誘導体を形成する。一実施形態において、置換された化学基は次式を含む
【0060】
【化2】

【0061】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質であり、Xは必要に応じてに置換されたアルキル基である。より具体的には、Xは(CHであり、ここで、nは2〜6の範囲である。)
具体例では、好ましい試薬の無水コハク酸(X=CHCH)を利用する反応は、次式(II)に示すような工程に基づいて起こると理解される。
【0062】
【化3】

【0063】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質である。)
サクシニル化は、S‐スルホン化中間径フィラメントケラチンタンパク質画分と無水コハク酸を使用して行われる。無水コハク酸はS‐スルホン化ケラチンタンパク質画分(リジンとN‐末端)内の第一級アミン基と反応する。この反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン、チロシン)でも起きる。様々な反応がカルボン酸官能性を与える。理解されるように、リジン基の場合、反応により時には、プラスのアミノ酸を有する可溶性ケラチンタンパク質が、マイナスに帯電したカルボキシレート基を有するように変化する。これは、可溶性ケラチンタンパク質をさらにマイナスに帯電させる効果を有する。
【0064】
サクシニル化工程は、例えば別の様々な無水物化合物(例えば、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水酪酸または無水酢酸)を含む別の試薬を使用することによって変化させることもできる。または、P‐塩化トルエンスルホニルクロライドを試薬として使用すると、芳香環が結合したスルファミド化されたタンパク質を与える。
【0065】
一態様において、無水コハク酸または別の試薬を、可溶性ケラチンタンパク質100に対して無水コハク酸約1〜10の比率で可溶性タンパク質に添加してもよい。より具体的な例では、無水コハク酸は、可溶性ケラチンタンパク質25に対して無水コハク酸約1の比率で添加される。
【0066】
反応段階の間、pHは7.0〜9.0の間で調節される。反応の間、pHが減少する傾向があるので、水酸化ナトリウムなどのpH増加剤の添加によってpHが調整される。
【0067】
また、反応段階の間、温度は約1℃〜10℃の間に、より好ましくは約5℃に調節される。
【0068】
第1の実施形態の別の態様において、可溶性ケラチンタンパク質は四級化反応を通して修飾されてもよい。四級化反応による置換の結果として、プラスに帯電した四級アンモニウム塩がタンパク質内の一つ以上のリジン基及び/または末端アミン基と反応する。反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)によっても起こりうる。一実施形態において、置換された化学基は次式を含む。
【0069】
【化4】

【0070】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、Yは随意に置換されたアルキル鎖、R’はアルキル鎖である。具体例において、XはNH、YはCHCH(OH)CH、そしてR’はCHである。)
一具体例において、好ましい試薬を使用する反応は、次式(III)に示すような工程に基づいて起こると理解される。
【0071】
【化5】

【0072】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質である。)
四級化は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(GTMAC)を使用して行ってもよい。GTMACは可溶性ケラチンタンパク質の第一級アミン基(リジン)及び可溶性ケラチンタンパク質の末端アミン基(N‐末端)と反応する。反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン、チロシン)でも起こりうる。理解されるように、リジン基の場合、反応により、時にはプラスのアミノ酸を有する可溶性ケラチンタンパク質が、可溶性ケラチンタンパク質内のリジン基と末端アミン基に添加されたプラスに帯電した第四級アンモニウム塩を有するように、変化する。これは、可溶性ケラチンタンパク質をさらにプラスに帯電させる効果を有する。
【0073】
GTMACについては上述されたが、本発明の範囲を逸脱せずに別の四級塩を使用可能なことは理解される。主要目的は、可溶性ケラチンタンパク質と反応可能な四級塩に反応基が結合することである。例えば、別の四級塩、特にC10、C12、C14、C16、C40などの長鎖塩を含んでエポキシ基が結合する四級塩を使用してもよい。言及したように、エポキシ基が好ましい。これは、この基がよく反応し、タンパク質の長鎖が四級窒素に結合して、最も一般的にはR1‐‐‐‐N(CH形態の分子を与えるからである(ここで、Rはケラチンタンパク質またはペプチドであり、Rは四級窒素含有部分である)。
【0074】
一態様において、GTMACは、可溶性ケラチンタンパク質80に対してGTMAC約1〜10の比率で、可溶性ケラチンタンパク質に添加される。一具体例では、GTMACは、可溶性ケラチンタンパク質16に対してGTMAC約1の比率で添加されてもよい。
【0075】
反応段階の間、温度は、約40℃に調節される。
【0076】
一実施形態において、GTMACは適切な比率で加水分解された可溶性ケラチンタンパク質に添加され、OPA分析によって決定されるように、全末端及びリジン側鎖アミンが85%を超えて置換される。
第1の実施形態のさらに別の態様では、長鎖脂肪酸を有する可溶性ケラチン誘導体が開示される。このような態様の置換の結果、マイナスに帯電した脂肪酸基が、タンパク質の一つ以上のリジン基及び/または末端アミン基に添加される。反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)でも起こりうる。「長鎖」という用語は、C10より長い脂肪酸を指す。好ましくは、脂肪酸はC10−18鎖である。一態様において、置換された化学基は次式を含む。
【0077】
【化6】

【0078】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、
【0079】
【化7】

【0080】
は反復脂肪酸鎖、そしてnは10〜40である。具体例において、XはNH、
【0081】
【化8】

【0082】
は(CH)であり、nは10〜18の範囲内にある。)
具体例において、好ましい試薬を使用する反応は、次式(IV)に示すような工程に基づいて起こると理解される。
【0083】
【化9】

【0084】
(式中、R=可溶性ケラチンタンパク質、X=PまたはNH、及び
【0085】
【化10】

【0086】
は反復脂肪酸鎖である。)
上記の工程において、長鎖脂肪酸は、ラウリン酸と塩化オキサリルを結合することによって形成されるような脂肪酸塩化物である。別の実施形態では、塩化オキサリルの代わりに別の試薬を使用してもよい(例えば、塩化チオニル、無機ハロゲン化物及び一般的にCOCl基を有する試薬)。このような別の方法で、タンパク質反応中、反応の温度は1℃〜10℃の間に、pHは約8に維持される。
【0087】
または、脂肪酸誘導体はカップリング工程を通して製造される。好ましい試薬を使用するカップリング反応は、次式(V)に示すような工程に基づいて起こると理解される。
【0088】
【化11】

【0089】
(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはOまたはNH、そして
【0090】
【化12】

【0091】
は反復脂肪酸鎖である。)
上記の工程において、好ましいカップリング剤は、EDCまたはN‐(3−ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩である。本発明の範囲を逸脱することなく、当該分野で周知の別のカップリング剤を使用してもよい。
【0092】
一態様において、脂肪酸は、適切な比率で加水分解された可溶性ケラチンタンパク質に添加され、OPA分析によって決定されるように、全末端及びリジン側鎖アミンが85%を超えて置換される。
【0093】
本開示の第2の実施形態に、可溶性ケラチン誘導体を調製する方法が開示される。この方法は、化学基を、可溶性ケラチンタンパク質の1つ以上のリジン基、末端アミン基及び/またはヒドロキシルアミノ酸基に置換する段階を含む。より具体的には、この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製した後、水溶液を化学基含有溶液と混合する段階を含む。化学基は、可溶性ケラチンタンパク質にその電荷を与えるマイナスに帯電した基またはプラスに帯電した基を含んでもよい。別の選択的な成分が添加されて、最終生成物の特性を変更させることもできる。この方法は、反応温度の調節を伴うこともできる。
【0094】
第2の実施形態の一態様において、可溶性ケラチン誘導体を調製する方法は、サクシニル化反応を行う段階を含む。サクシニル化反応の置換の結果として、可溶性ケラチンタンパク質の1つ以上のリジン基及び/または末端アミン基及び、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基と無水物が反応して、可溶性ケラチン誘導体を形成する。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製した後、その水溶液を無水物含有溶液と混合する段階を含む。
【0095】
サクシニル化は、無水コハク酸を使用して行われる。無水コハク酸は可溶性ケラチンタンパク質の第一級アミン基(リジンとN‐末端)及び、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)と反応して、カルボン酸官能性を与える。既に検討されたような別の試薬を使用してもよい。
【0096】
無水コハク酸が、可溶性ケラチンタンパク質100に対して無水コハク酸約1〜10の比率で、可溶性ケラチンタンパク質に添加されてもよい。一具体例において、無水コハク酸は、可溶性ケラチンタンパク質25に対して無水コハク酸約1の比率で添加される。
【0097】
反応段階の間、pHは8.0〜8.2の間に調整される。反応中、pHが減少する傾向があるので、水酸化ナトリウムなどのpH増加剤の添加によってpHを調整する。
【0098】
また、反応段階の間、温度は約1℃〜10℃の間に、より好ましくは約5℃に調節する。
【0099】
本開示の第2の実施形態の別の態様において、可溶性ケラチン誘導体を調製する方法は、四級化反応段階を含む。四級化反応による置換の結果として、可溶性ケラチンタンパク質内のリジン基及び末端アミン基とプラスに帯電した四級化アンモニウム塩が反応する。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製する段階と、それからその水溶液を四級化アンモニウム塩含有溶液と混合する段階を含む。
【0100】
四級化は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(GTMAC)を使用して行われる。GTMACは、可溶性ケラチンタンパク質の第一級アミン基(リジン)及び可溶性ケラチンタンパク質の末端アミン基(N‐末端)と反応する。反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)でも起こりうる。既に検討されたような別の四級化塩を使用してもよい。
【0101】
GTMACは、可溶性ケラチンタンパク質80に対してGTMAC約1〜10の比率で、可溶性ケラチンタンパク質に添加される。一例において、GTMACは、可溶性ケラチンタンパク質16に対してGTMAC約1の比率で添加されてもよい。
【0102】
反応段階の間、温度は約40℃に調節される。
【0103】
第2の実施形態のさらに別の態様において、可溶性ケラチン誘導体を調製する方法は、酸塩化物方法またはEDCカップリング反応の段階を含んでもよい。酸塩化物方法またはEDCカップリング反応の置換の結果として、可溶性ケラチンタンパク質内の一つ以上のリジン基及び/または末端アミン基に脂肪酸基が添加される。反応は、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)でも起こりうる。この方法は、可溶性ケラチンタンパク質の水溶液を調製する段階と、引き続きその水溶液を長鎖脂肪酸含有の溶液と混合する段階を含む。長鎖脂肪酸は、酸塩化物方法によるか、またはカップリング剤であるN‐(3−ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)と共にラウリン酸を使用して製造された塩化ラウロイルであってもよい。
【0104】
好ましい酸塩化物方法の間、反応溶液の温度は約1℃〜10℃の間に、pHは約8に維持される。
【0105】
第3の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体を含む界面活性剤製品が開示される。本明細書に開示される可溶性ケラチン誘導体は、水などの液体の表面張力を減少させる能力を含む界面活性剤タイプの特性を有し、それによって異なる層間の界面張力をより容易に拡散及び減少させる。これは、本発明の可溶性ケラチンタンパク質が両親媒性であって、疎水性「尾部」と親水性「頭部」の両方を有するからであると理解される。これは、有機溶媒と水の両方に可溶性であることを意味する。また、基本ケラチンタンパク質はある程度の界面活性剤特性を示すが、本発明の可溶性ケラチン誘導体は、置換反応により電荷が変化したため、一層強い界面活性剤特性を示す。例えば、本開示による可溶性ケラチン誘導体は、基本ケラチンタンパク質と比較して、その濃度の半分で同一の水表面張力の減少を達成することができる。本開示の可溶性ケラチン誘導体では、さらに、基本ケラチンタンパク質と比較して、可溶性ケラチン誘導体濃度が著しく減少しても、発泡(界面活性剤の別の特性)はより大きく且つ長く持続する。可溶性ケラチン誘導体は、配合物中の界面活性剤として単独で使用してもよい。そうでない場合は、可溶性ケラチン誘導体は配合物内の別の界面活性剤と共に使用される。
【0106】
本開示の第4の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物が開示される。「パーソナルケア配合物」という用語は、身体の臭気変化、身体の外観変化、身体の洗浄、身体の良好な状態の維持または身体の芳香付けのような効果を達成する目的で、口腔の粘膜及び歯を含め、人体の外部に接触する任意の物質または調製品を含む。
【0107】
パーソナルケア配合物は、約0.001重量%〜50重量%の可溶性ケラチン誘導体を含む。その比率は好ましくは0.001重量%〜10重量%、より好ましくは0.001重量%〜5重量%である。パーソナルケア配合物は、任意の適切な化粧品担体をさらに含んでもよい。
【0108】
可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で詳細に記述したような可溶性ケラチン誘導体であってもよい。
【0109】
可溶性ケラチン誘導体特性の理由から可溶性ケラチン誘導体が使用され得るパーソナルケア配合物には、次のいずれかが含まれる。つまり、コンディショニングシャンプー、ボディ/洗顔クレンザー/シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアジェル、ヘアムース、ヘアセッティングローション、ヘアスプレー、パーマ前処理液、パーマ後処理液、保湿クリーム、シャワージェル、発泡バスジェル、マスカラ、マニキュア液、液状ファンデーション、シェービングクリーム及びリップスティックである。上記で言及したような特性を得るのに役立つ別のパーソナルケア配合物も、本発明内に含まれる(例えば、皮膚を乾燥から保護する洗剤)。
【0110】
本開示の第5の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物用の添加剤が開示される。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で詳細に上述されたような可溶性ケラチン誘導体である。添加剤が、第4の実施形態で上述されたような任意の適切なパーソナルケア配合物に添加される。添加剤は、パーソナルケア配合物の0.1〜5重量%範囲の量でパーソナルケア配合物に添加されてもよい。パーソナルケア配合物は、任意の適切な化粧品担体をさらに含んでもよい。
【0111】
第6の実施形態に、毛髪を処理する方法が開示される。この方法は、約0.001%〜50%の可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物を毛髪に塗布する段階を含む。可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述された可溶性ケラチン誘導体である。上述したものなどの、任意の適切なパーソナルケア配合物を使用してもよい。第6の実施形態の方法で使用されたパーソナルケア配合物が、任意の適量で任意のタイプの毛髪に塗布される。
【0112】
第7の実施形態に、毛髪を処理する代案的な方法が開示される。この方法は、添加剤を含むパーソナルケア配合物を毛髪に塗布する段階を含む。添加剤はケラチンタンパク質誘導体を含む。ケラチンタンパク質誘導体は、第1の実施形態で上述されたケラチンタンパク質誘導体であってもよい。任意の適量の添加剤がパーソナルケア配合物に含まれ、任意の適量のパーソナルケア配合物が毛髪に塗布されてもよい。添加剤含有パーソナルケア配合物は、任意のタイプの毛髪に塗布され、それは、上述されたパーソナルケア配合物のいずれであってもよい。
【0113】
第8の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体混合物が開示される。可溶性ケラチン混合物は、混合された2つ以上の可溶性ケラチン誘導体を含む。可溶性ケラチン誘導体の混合物は、好ましい体積とシステイン含量を有する。システイン含量(具体的に、S‐スルホン化Cys及び酸化Cys(システイン酸))を増加させることによって、パーソナルケア配合物としての材料の効果を向上させることもある。体積を増加させることによって、製造工程をより商業的に実現可能になる。
【0114】
可溶性ケラチン誘導体は、第1の実施形態で上述されたものの何れであってもよい。この実施形態の一態様において、可溶性ケラチン誘導体は、詳細に上述されたような、置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質画分である。混合物に使用される可溶性ケラチン誘導体の可溶性ケラチンタンパク質画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質である。可溶性ケラチンタンパク質画分は、S−スルホン化または部分酸化されてもよい。また、可溶性ケラチンタンパク質画分は、上記でより詳細に検討されたように、未加工であってもまたは加水分解されてもよい。
【0115】
可溶性ケラチン誘導体の混合物は、異なるケラチンタンパク質画分を有する可溶性ケラチン誘導体を含む。すなわち、可溶性ケラチン誘導体混合物が、置換された化学基を有するケラチンタンパク質画分を含む第1の可溶性ケラチン誘導体と、置換された化学基を有するケラチンタンパク質画分を含む第2の可溶性ケラチン誘導体を含む場合、第1の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分とは異なってもよい。一具体例において、第1の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分はケラチン中間径フィラメントタンパク質である。一方、第2の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分はケラチン高硫黄タンパク質またはケラチン高グリシン‐チロシンタンパク質のうち何れであってもよい。ケラチンタンパク質画分の任意の組合せを使用してもよい。
【0116】
この実施形態の別の態様において、可溶性ケラチン誘導体混合物中、異なる可溶性ケラチン誘導体の比率は、可溶性ケラチン誘導体のそれぞれの可溶性ケラチン画分構成成分によって選択される。第1の可溶性ケラチン誘導体が中間径フィラメントタンパク質を含み、第2の可溶性ケラチン誘導体が高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質のうち何れかである場合、第2の可溶性ケラチン誘導体に対する第1の可溶性ケラチン誘導体の比率は、任意の適切な比率であってもよい。一態様において、その比率は使用するケラチン源によって決定される。
【0117】
第9の実施形態では、可溶性ケラチン誘導体混合物を製造する方法が開示される。この方法は、二つ以上の可溶性ケラチン誘導体を一緒に混合することを含む。この実施形態の一態様において、可溶性ケラチン誘導体は、より詳細に上述されたような、置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質画分である。混合物に使用される可溶性ケラチン誘導体の可溶性ケラチンタンパク質画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質であってもよい。可溶性ケラチンタンパク質画分は、S‐スルホン化または部分酸化されてもよい。また、可溶性ケラチンタンパク質画分は、上記でより詳細に検討されたように、未加工または加水分解されてもよい。
【0118】
第9の実施形態の方法で混合された可溶性ケラチン誘導体は、異なるケラチンタンパク質画分を有する可溶性ケラチン誘導体を含む。すなわち、可溶性ケラチン誘導体混合物が、置換化学基を有するケラチンタンパク質画分を含む第1の可溶性ケラチン誘導体と混合された、置換化学基を有するケラチンタンパク質画分を含む第2の可溶性ケラチン誘導体を含む場合、第1の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分とは異なってもよい。一具体例において、第1の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分は中間径フィラメントタンパク質である一方、第2の可溶性ケラチン誘導体のケラチンタンパク質画分はケラチン高硫黄タンパク質またはケラチン高グリシン‐チロシンタンパク質のうち何れであってもよい。可溶性ケラチン誘導体混合物を製造する方法において、ケラチンタンパク質画分の任意の組合せを使用してもよい。
【0119】
この実施形態の別の態様において、異なる可溶性ケラチン誘導体は、可溶性ケラチン誘導体の各々の可溶性ケラチン画分構成成分に基づいた比率で混合されてもよい。例えば、中間径フィラメントタンパク質を含む第1の可溶性ケラチン誘導体が、高硫黄タンパク質または高グリシン‐チロシンタンパク質を含む第2の可溶性ケラチン誘導体と混合される場合、第2の可溶性ケラチン誘導体に対する第1の可溶性ケラチン誘導体の比率は、任意の適切な比率であってよい。一態様において、その比率は使用するケラチン源によって決定される。
【実施例】
【0120】
実施例1−サクシニル化ケラチン誘導体の製造
この実施例では、可溶性ケラチンタンパク質の誘導体化に対する研究が記載される。この実施例では、可溶性ケラチンタンパク質がサクシニル化される手順並びに結果として得られた誘導体の特性が記載される。
【0121】
未加工可溶性ケラチン中間径フィラメントタンパク質のサクシニル化は、反応に無水コハク酸を添加することによって実施された。無水コハク酸は、未加工可溶性ケラチンIFP内の第一級アミン基(リジン及びN‐末端)及び、程度は低いが、ヒドロキシルアミノ酸基(セリン、トレオニン及びチロシン)と反応して、カルボン酸官能性を与える。理解されるように、リジン基の場合、時にはプラスのアミノ酸がマイナスに帯電したカルボキシレート基で置換されたことを意味する。これは、未加工可溶性ケラチンIFPをさらにマイナスに帯電させる効果を有する。
【0122】
より具体的には、前記方法は、次の段階によって行われた。
(i)pH8の未加工可溶性ケラチンIFP(3.2%溶液)100gを水浴内で5℃に冷却した。
(ii)無水コハク酸8.3gを1時間かけて添加した。反応の間、1molL−1NaOHを継続的に添加することによって、pHを8〜8.2の間に維持した。
(iii)pHの変化が止まったら、溶液を1時間攪拌した。
(iv)酸を添加して溶液のpHを3まで減少させ、可溶性ケラチン誘導体を沈殿させた。
(v)可溶性ケラチン誘導体を濾過によって収集し、水で洗浄の上、凍結乾燥させて、試料「SPD」を得た。
【0123】
上記の方法を、同様の手順でより少ない無水コハク酸、すなわち、4.15g(SPC)、2.075g(SPB)及び1g(SPA)を使用して、3回別の時点で繰り返した。次に、これらの試料を分析して反応の範囲を定めた。
【0124】
試料に存在する可溶性ケラチン誘導体の量は、灰化法を使用して定めた。試料を700℃に加熱し、全体固形物に対する残留固形物のパーセンテージを測定した。分析された試料の可溶性ケラチン誘導体固形含量は99.5%を超え、残留固形物が本質的に純粋な固形ケラチン誘導体であることを示した。
【0125】
パーキンエルマー2000FT−IRのKBrディスクに全ての試料に対する赤外線スペクトルが記録された。SPB、SPC及びSPDの赤外線スペクトルは、約1730cm−1にカルボニルによる個別信号を示し、可溶性ケラチン誘導体に結合した酸基の存在を示す。SPAのスペクトルは、ただ弱いカルボニル信号を示す。可溶性ケラチン誘導体の置換程度(DS)は、反応に使用された無水コハク酸の過剰量によって決定される。高いDSを得るには過剰量が大きいことが必要である。
【0126】
Bertrand−Harb らのOPA(ο‐フタルジアルデヒド)法を使用して可溶性ケラチン誘導体中の第一級アミンを検出した。0.1molL−1ホウ酸ナトリウム25ml、20%SDS2.5ml、及びメルカプトエタノール100μLとMeOH1mlに溶解させたOPA40mgから、OPA標準溶液50mlを調製した。水を用いて50mlにした。試薬は毎日調製し、使用するまで25℃の暗所に貯蔵した。未知試料を2g/Lタンパク質濃度の50mmolL−1リン酸ナトリウム緩衝液で調製した。各試料100μLをOPA標準溶液2mlと混合し、340nmでの吸光度を記録する前に2分間インキュベートした。0.25〜2.00mmolL−1のL‐ロイシンを使用して、一連の標準溶液を調製し、それにより検量線を作成した。表1は、OPAを用いて決定したリジン置換の範囲を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
サクシニル化反応において、O‐サクシニルチロシンエステル結合はpH>5で急速に切断され不安定性であるため、一般的にN‐サクシニル化の範囲はO‐サクシニル化よりも高い。
【0129】
コロイド滴定法を用いて分子の電荷が決定された。緩衝液(pH3.5、7または9.5)及び数滴のトルイジンブルーに0.1%可溶性ケラチン誘導体溶液5mlを添加し、1/400Nポリ(ビニル)硫酸カリウム(PVSK)溶液で滴定して、溶液内に存在する正電荷の量を決定した。負電荷の量を決定するために、0.1%の可溶性ケラチン誘導体5ml、緩衝液(pH3.5、7または9.5)及び数滴のトルイジンブルーに既知量の1/400Nポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライド(PDAC)を添加し、またPVSKで逆滴定した。プラスに帯電したリジン基がマイナスに帯電したCOOとなるので、サクシニル化によって、可溶性ケラチン誘導体に存在する負電荷が増加し、正電荷が減少するとことが期待される。コロイド滴定は、このような場合、測定可能な負電荷の量が実質的に増加し、測定可能な正電荷は殆ど検出不可能な程度で増加することを示す(図1及び表2)。存在する負電荷の量は、サクシニル化が増加するとともに増大することが観察され、次第に負電荷種が発生することを示す。
【0130】
【表2】

【0131】
(必要な場合、15分ごとにpHをモニターし、酸/塩基を添加しながら)1時間振盪したpH2〜10可溶性ケラチン誘導体の1%分散液を調製し、固形物を濾過乾燥及び秤量して、設定pHで溶解した可溶性ケラチン誘導体の量を決定した。pH‐%溶解度曲線から等電点またはイオン化点(pl)の評価が可能となり、並びにpl.pH溶解度曲線(図2)への化学的修飾の効果の推定が可能となった。それによりDSの増加と共に酸性pHでの溶解度が着実に増加することが示される。これは、マイナスに帯電した基を添加したことにより、分子のplが低pHへとシフトし、そのpHを超えると溶解度が増加したことに起因する。
【0132】
Hitachi F‐4000を蛍光分光光度計用いて、可溶性ケラチン誘導体試料のスペクトルを記録した。340nmの励起波長が使用され、励起と発光帯域はともに5nmであった。試料は0.01%水溶液であった。サクシニル化タンパク質の最大発光を表3に示した。
【0133】
【表3】

【0134】
より低いDSを有する試料SPAは、340.0nmへの最大赤方偏移で最大発光に僅かな変化を示す。サクシニル化が増加するほど最大発光の赤方偏移も大きくなり、試料SPDの場合369.8nmで新しいショルダーが増大した。マイナスに帯電したバルキーなサクシニル基が導入された結果、好ましくない電荷反発力により可溶性ケラチン誘導体が強制的に広がることによって、より多くのトリプトファンを極性環境に露出するようになった。
【0135】
本発明者は、上記の方法も使用するが、基本のタンパク質材料として未加工タンパク質よりも加水分解されたケラチンタンパク質を使用して、別の実験を行った。この実験では、変化した電荷と置換に関して得られた結果は比較可能であった。
【0136】
ケラチンタンパク質のサクシニル化の結果、出発ケラチンタンパク質と比較して、ケラチン誘導体に存在する負電荷が増加し、違った特性を有するようになることを、それらの結果は示している。サクシニル化ケラチン誘導体は、非誘導体化ケラチンタンパク質に比べて、正電荷が増加し、plが低くなったことを示す。
【0137】
実施例2‐四級化ケラチン誘導体の製造
この実施例には、可溶性ケラチンタンパク質の誘導体化に対する研究が記載されており、また可溶性ケラチンタンパク質が四級化される手順が記載されている。
【0138】
プラスに帯電した第四級アンモニウム塩を可溶性ケラチンタンパク質内のリジン基及び末端アミン基に添加することによって、可溶性ケラチンタンパク質の四級化が行われた。この反応は、同じ条件化で実験を行うたびに同一特性の化合物が生成し、それが反復可能であることがわかった。より具体的には、次の方法を使用して、可溶性ケラチンタンパク質の四級化が行われた。
(i)未加工可溶性ケラチン溶液40.25gを含む4つのショットボトル(Schott)に(3.2%、pH=7.57、各ボトルは1.25gのタンパク質を含有)、様々な量(QuatA0.625ml(0.5g)、QuatB1.25ml(1g)、QuatC2.5ml(2g)及びQuatD5ml(4g))のグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを添加した。
(ii)ボトルを密封し、よく振ってから、18時間40℃の予熱したインキュベーターシェーカーに置いた。
(iii)18時間後、試料をインキュベーターから除去し、透析の上、凍結乾燥させた。
【0139】
その後、製造された試料を上述のサクシニル化方法を用いて分析して、四級化反応の範囲を決定した。分析結果は以下の通りである。
【0140】
透析後、96%可溶性ケラチン誘導体であるがわかったQuatAを除いて、試料(QuatA〜D)は、99%可溶性ケラチン誘導体より大きいことが灰化によって見出された。置換がそれほど強い赤外線活性信号を伴わなかったことから、各試料(QuatA〜D)に対して測定された赤外線スペクトルは、未加工ケラチンのスペクトルと識別可能な差異を示さなかった。可溶性ケラチン誘導体の置換の程度(DS)は、反応で使用されたグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(GTMAC)の量によって決定された。表4は、OPA法を使用して決定されたリジン置換の範囲を示す。
【0141】
【表4】

【0142】
コロイド滴定法を使用して試料QuatA〜Dの電荷を決定した。この方法は、プラスに帯電した高分子電解質とマイナスに帯電した高分子電解質との反応を用いて、未知の電荷量を決定する。使用された負の高分子電解質であるポリ(ビニル)硫酸カリウム(PVSK)はトルイジンブルーと相互作用して赤紫色溶液を与えるため、青色溶液が赤紫色となるまで、プラスに帯電した種をPVSKで直接滴定する。マイナスに帯電した種は、溶液に添加されたプラスに帯電した高分子電解質ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライド(PDAC)の既知量を有する必要があるので、続いてPVSKで逆滴定する。可溶性ケラチン誘導体の滴定は、イオン化基を考慮して数種類のpHレベルで繰り返す必要がある。この方法は、また、分子内の全ての電荷に接近可能な高分子電解質に依存する。可溶性ケラチン誘導体の場合、可溶性ケラチン誘導体が経験する折り畳みにより、一部の電荷が可溶性ケラチン誘導体の別の部分と強く結合し、よって滴定利用できないこともある。未加工ケラチンに行われる滴定は、pHの増加によって減少する少量の正電荷のみが検出可能である一方、pHの増加によって増加が期待される負電荷は約10倍多く検出可能である。システイン基は低いpHでマイナスに帯電している全てのS‐スルホン酸塩であるので、このような可溶性ケラチン誘導体がマイナスの特徴を有することが、未加工ケラチンに対して知られている。QuatA〜Dの滴定では、負電荷量は非常に減少する一方、A〜C及びさらにDの場合、正電荷量は若干増加することが明らかである(表5及び図3)。試料に存在する負電荷量は、化学反応によって影響を受けないので、負電荷の減少は、負電荷種との結合時に存在する正電荷量の増加に起因する。QuatDの場合、マイナスに帯電した種は検出されないことが観察された。前記試料中のリジンの置換程度は、その挙動がが著しく変化するにも関わらず、Cの置換程度より若干大きいだけである。過剰量がそのように大きい別のアミノ酸と反応するという可能性もある。未反応GTMACがまだ溶液に存在する可能性もあるが、これは試料が透析処理を受けるため起こりそうにない。
【0143】
【表5】

【0144】
異なるpHでの可溶性ケラチン誘導体の溶解度は、そのpHで存在するイオンされた基数に一部依存する。可溶性ケラチン誘導体は、このpHで分子全ての電荷が中和されることから、イオン化点(pl)付近での可溶性が最も低い。これらの試料は、その可溶性が置換程度に強く依存未加工ケラチンと比較すると、酸性溶媒で溶解度が減少した。試料D(85%置換)は、pH7での透析中に多量に沈殿することが観察された。図4は、四級化された試料QuatA〜Dと未加工ケラチンに対するpH溶解度曲線を示す。この曲線から、試料の溶解度は四級化が増加するほど低いpHで減少することが明らかである。試料QuatDは、pH9での溶解度はわずか60%で、非常に不溶性であることがわかった。このようなQuatDの溶解度の欠如は、おそらく、負電荷に伴い相当量の正電荷が存在して自己凝集が起きているためである。このような結果は、予想したようにDSが増加するほど、plはより高いpHへとシフトすることを示唆する。
【0145】
表6には、四級化された試料QuatA〜Dと未加工ケラチンの発光スペクトルに対するλmaxを示す。未加工ケラチンのスペクトルは338.0nmで最大である。QuatCとDではより短い波長へ若干変化する一方、QuatAとBでは非常に小さく、これは、分子の正電荷の増加によって青色シフトが観察されることを意味する。トリプトファン残留物をさらに極性環境に露出させると、発光は赤色シフトするようになり、そのためより少ない極性環境を経験する発光アミノ酸により、青色シフトが起きることもある。正電荷の増加により、予め経験した反発効果の代わりにタンパク質はよりしっかりと折り畳むよう促される。
【0146】
【表6】

【0147】
上記の試験では誘導体を形成するために未加工ケラチンを使用した。加水分解されたケラチンを使用した別の可溶性ケラチン誘導体も製造された(QuatPと称される)。QuatP溶液は次の段階によって製造された。
(i)非変形ペプチドの15.1%溶液250mlを500mlショットボトルに入れた。
(ii)反応可能な遊離アミン基の量を最大化するために、溶液はpH9に調整された。GTMAC(グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド)12.5mlを添加し、ボトルをよく振って、パラフィルムで密封した。そのボトルを40℃、120rpmの予熱された振盪水浴に48時間置いた。
【0148】
四級化ペプチドQuatPの調製が良好であるかは、OPAによって確認した。修飾されたペプチドは、非修飾ペプチドより遊離アミノ基がより少なかった(遊離アミノ基の35.77%が修飾された)。修飾されたペプチドの最終濃度は、14.38%と算出された(本来15.1%)。この追加実験は、基本タンパク質が未加工ケラチン画分または加水分解されたケラチン画分の何れかであることを示す。
【0149】
何が置換の程度に影響を与えるかを理解し、最も効果的な時間と試薬の使用の研究に役立てるために、四級化反応を最適化する別の試験に着手した。要するに、時間とGTMACの添加量の両方によって置換の程度が増加することが認められた。従って、時間を気にかける必要のない工程を最適化する一方法は、より少ない試薬を使用し、工程により長い時間をかけることである。タンパク質溶液の濃度も置換の程度に貢献することが認められた。より高濃度のタンパク質溶液を使用すると、より多くの置換が起きた。試料の状態を改善させる方法(例えば、透析または酸)は置換の程度に影響を与えなかった。反応溶液の開始pHは、最適pHが約9であることにより多少効果があった。
【0150】
上記の結果は、可溶性ケラチンタンパク質の四級化によって、様々な割合の四級化置換を有する可溶性ケラチン誘導体がえられ、それらが出発ケラチンタンパク質に様々な特性を示すことを表している。その結果は、また、四級化されたケラチン誘導体ではplが増加し、正電荷の存在量も増加したことを示す。さらに、工程は反復可能であり、個々に必要性に応じた置換程度に最適化され得る。
【0151】
実施例3‐脂肪酸の置換
可溶性ケラチンタンパク質を化学的に修飾するための代案的な方法が記載されている。第1の方法では、次式(IV)に示すように脂肪酸ケラチン誘導体(FAP)の形成に脂肪酸塩化物が使用される。
【0152】
【化13】

【0153】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基、XはNHまたはO、そして[]は反復脂肪酸鎖である。)
より具体的には、第1の試料(FAP1)を形成するために、未加工な可溶性ケラチン中間径フィラメントタンパク質(IFP)と長鎖脂肪酸の反応が、次の方法を用いて行われた。
(i)N通気下35℃で、ラウリン酸0.5gを含む無水CHCl(10ml)に塩化オキサリル0.41gを10分間滴下した。
(ii)真空下で溶媒を除去する前に、反応混合物を35℃で2時間攪拌した。
(iii)得られた固形物をアセトン10mlに溶解し、可溶性ケラチンタンパク質5%溶液25mlまたは250mlに滴下し、pH8の氷浴中で強く攪拌した。
(iv)0.1molLのNaOHを添加することによって、反応中、初期pHを維持した。
(v)pHが減少して可溶性ケラチン誘導体が沈殿する前に、一晩攪拌を続けた。
(vi)固形物を濾過し、アセトンで洗浄して、未反応ラウリン酸を除去した後、凍結乾燥させた。
【0154】
ラウリン酸/塩化オキサリルの添加量を変化させFAP2、FAP3及びFAP4と称する別の試料を生成した。FAP2の場合、pHを7に減少させて生成した。その後、試料を分析して反応の範囲を決定した。
【0155】
「EDCカップリング」と呼ばれる第2の方法において、中間径フィラメントタンパク質を、式(V)に示すような工程を通してカップリング剤EDC(N‐(3−ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩)を使用して、長鎖脂肪酸と反応させた。
【0156】
【化14】

【0157】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基、XはNHまたはO、及び[]は反復脂肪酸鎖である。)
より具体的には、(「EDCP」と呼ばれる)EDC生成物を形成するために使用する方法は、次の段階を含む。
(i)N通気下35℃で、ラウリン酸0.5gを含む無水CHCl(10ml)に塩化オキサリル0.41gを10分間滴下した。
(ii)真空下で溶媒を除去する前に、反応混合物を一晩攪拌した後、濾過して、ジシクロヘキシル尿素を除去した。
(iii)得られた固形物をTHF(テトラヒドロフラン)5mlに溶解し、5x10−4molL−1重炭酸ナトリウムを含有する5%可溶性ケラチンタンパク質溶液50mlに滴下した。
(iv)その後、溶液を一晩攪拌した後、pHを減少させて可溶性ケラチン誘導体を沈殿させた。
(v)固形物を濾過した後、冷凍乾燥させた。
【0158】
その後、試料を分析して反応の範囲を決定した。
【0159】
次表7に、上記実施例で記載した、主工程の変化およびOPA法によって決定したリジン置換の測定範囲の概要が要約されている。
【0160】
【表7】

【0161】
可溶性ケラチン誘導体の置換程度(DS)は、反応に使用されるラウリン酸または塩化ラウロイルの量によって主に決定される。理解されるように、リジン基の一部は可溶性ケラチン誘導体の折り畳みによって遮蔽されるので、接近不能な位置にあり、その100%置換を得ることは難しい。これらの試料で得られた置換量は、四級化及びサクシニル化で得られた量より少なく観察される。これは、大きなサイズのラウリン酸が一部のリジン位置への接近を妨げることに起因する。試薬量が10倍以上過剰となると反応範囲に悪い影響を与えたので、得られる最大置換は約50%と思われる。
【0162】
FAP3の疎水性の測定では、FAP3が非修飾ケラチンタンパク質よりも著しく疎水性であることを示している。
【0163】
本発明者は、上記の方法も使用するが、基本のタンパク質材料として未加工タンパク質ではなくむしろ加水分解されたケラチンタンパク質を使用して、別の実験も行った。
【0164】
この場合、変化した電荷と置換に関して得られた結果は比較可能であった。
【0165】
上記の脂肪酸誘導体に基づいた修飾では、別の脂肪酸を使用することを含む。例えば、別の脂肪酸、特に、C10、C12、C14、C16、C40などの長鎖塩を含む脂肪酸を使用してもよい。別の実施形態において、塩化オキサリルの変わりに別の試薬、例えば、塩化チオニル、無機ハロゲン化物及び一般的にCOCl基を有する試薬を使用してもよい。
【0166】
実施例4‐別のケラチン画分の使用
中間径フィラメントタンパク質(IFP)の画分から得た未加工ケラチンは好ましい画分である。明細書で既に言及したように、ケラチンタンパク質は、繊維皮質のマトリックスやキューティクル内に見られる球状タンパク質である高硫黄タンパク質(HSP)、および繊維皮質で主に見られる高グリシン‐チロシンタンパク質(HGTP)を含む別の画分に分割されることもある。HSP及びHGTP画分にもタンパク質内の同じアミノ酸基及び同じヒドロキシルアミノ酸が含まれているので、本発明はIFP画分だけに限定されるものでないことは、理解されるべきである。
【0167】
例として、HSPとHGTPを使用するサクシニル化工程で起こる化学反応を次式(VI)に示す。
【0168】
【化15】

【0169】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基である。)
同様に、HSPとHGTPを使用する四級化工程で起こる化学反応を次式(VII)に示す。
【0170】
【化16】

【0171】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基である。)
HSPとHGTPを使用する脂肪酸またはEDCのカップリング工程で起こる化学反応を次式(VIII)に示す。
【0172】
【化17】

【0173】
(式中、Rはケラチンタンパク質またはペプチド塩基、XはNまたはO、そして[]は反復脂肪酸鎖である。)
実施例5‐界面活性剤特性テスト
可溶性ケラチン誘導体の界面活性剤特性を、可溶性IFP画分などの非誘導体化ケラチンタンパク質とともに試験し、他の既知測定値と比較した。
【0174】
実施例1及び実施例2でそれぞれ記載した試料SPCとQuatCを使用して表面張力測定を行った。次表8に示すように、可溶性ケラチン誘導体化合物による表面張力の減少特性は、軽度に汚染された水道水及び非誘導体化ケラチンのものと同程度であった。驚いたことに、同じ表面張力減少効果を得るのに誘導体化ケラチン濃度は半分しか必要としなかった。
【0175】
【表8】

【0176】
また、発泡実験を行い、生成した泡の高さと崩壊前に泡が完全な状態で残っている時間をテストした。次表9に示すように、発砲と崩壊する時間に関しては、非誘導体化タンパク質よりも可溶性ケラチン誘導体が実質的に優れていた。驚いたことに、同じ効果を得るために必要な濃度は、可溶性ケラチン誘導体の方が非誘導体化ケラチンより低かった。
【0177】
【表9】

【0178】
水‐油(w/o)エマルジョンの形成によって、可溶性ケラチン誘導体の乳化効果をテストするために別の試験が行われた。この方法は、料理用大豆油(試料1)15mlまたはヒマシ油(試料2)15mlを、可溶性ケラチン誘導体10mlの共存下で水15mlと振盪する段階を含む。その後、この分散液を約1分間放置した後、エマルジョンが存在するか否かを確認するために試験した。両試料において、水‐油(w/o)エマルジョンが形成された。これは、本発明の可溶性ケラチン誘導体が乳化剤として作用し、よって有用な界面活性剤特性を有することを示唆する。
【0179】
要約すると、可溶性ケラチン誘導体は界面活性剤特性を示す。さらに、このような特性は、非誘導体化ケラチンとの著しい差異を示す。
【0180】
実施例6‐誘導体化ケラチンを含有するパーソナルケア製品及び配合物
本実施例では、本発明の可溶性ケラチン誘導体を使用した様々なパーソナルケア製品例が提供されている。多数の有益な特性によって、可溶性ケラチン誘導体がパーソナルケア製品の用途に適合することは明らかである。例えば、可溶性ケラチン誘導体は、皮膚と結合し水分を閉じ込めて、皮膚に潤いを与える能力を有する。本明細書の後半の実施例から理解されるように、可溶性ケラチン誘導体の使用によりコーミング力が減少し「感触」を改善するので毛髪管理が容易となり、可溶性ケラチン誘導体特性がヘア製品に有用である。下記の例はただ例示として提供されるものであって、これだけに限定されるものではない。
【0181】
各配合物では、表示レベルの「ケラチン誘導体」が含まれている。ケラチン誘導体とは、上述された方法などを使用して、正または負の領域を含むように修飾されたケラチンタンパク質を指す。特に明記されない限り、希釈水溶液の形態でケラチン誘導体を提供し、この溶液の適量を配合物含ませ、ケラチン誘導体の表示レベルを得ることが便利である。パーセンテージはw/vで表す。
【0182】
【表17】

【0183】
手順:水35.0g、ラウレス‐2‐硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムを混合する。溶解するまで65℃に加熱する。コカミドDEAを添加して冷却する。ベタインと水を混合し、フェーズAに添加する。ケラチン誘導体を添加し、クエン酸でpHを6.5に調整する。必要によって防腐剤と香料を添加し、塩化ナトリウムで望ましい濃度に調製し、残りの水を添加する。
【0184】
【表18】

【0185】
手順:水60.0gを70℃に加熱し、Carbopol、EDTA及びグリセロールに添加する。強く混合する。冷却する。トリエタノールアミンを添加してpHを6.3に調整する。ケラチン誘導体を添加する。防腐剤と残りの水を混合して添加する。十分混合し、望ましく香料を添加する。
【0186】
【表19】

【0187】
【表20】

【0188】
【表21】

【0189】
【表22】

【0190】
【表23】

【0191】
【表24】

【0192】
【表25】

【0193】
【表26】

【0194】
【表27】

【0195】
【表28】

【0196】
実施例7‐サクシニル化が毛髪の物理的特性に与える影響
ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)などの業界標準と比較して、サクシニル化ケラチン誘導体含有溶液で反復洗浄後の毛髪トレス(tress)の物理的状態を決定する試験を行った。トレスに実施した異なるトリートメントによる毛髪繊維の脂質含量及び表面形態の変化を検討するために、走査型電子顕微鏡(SEM)及びTLC分析を行った。
【0197】
約1.5gの天然赤毛を秤量し、毛髪をひもでトレスとして固定することにより、6本のトレスを作成した。トレスは、2%ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)溶液(70%SLESから調製し、希釈して2%溶液とした)で2分間洗浄し、さらに2分間温水(約40℃)で十分すすぎ(泡と界面活性剤が残らなくなるまで)、前処理した。次に、毛髪トレスを空気中で乾燥させた。
【0198】
その後、次の方法を用いて、異なる洗浄処理を毛髪トレスに行った(各洗浄処理は2回行った)。
【0199】
SLES洗浄処理:一週間SLESを用いて毛髪を洗浄した。毛髪トレスをロッキングテーブル中で1時間5%SLES溶液に入れて、洗浄を行い、その後、2分間温水(40℃まで)で毛髪を十分すすぎ(泡と界面活性剤が残らなくなるまで)、空気中で乾燥させた。洗浄工程は1日2回行い、計10回の洗浄を行った。
【0200】
ケラチン誘導体洗浄処理:一週間サクシニル化ケラチン誘導体(上記の実施例では試料「SPC」と称される)で毛髪を洗浄した。上述したように、毛髪トレスをロッキングテーブル中で1時間5%サクシニル化ケラチン誘導体溶液に入れ洗浄し、その後、2分間温水(約40℃)で毛髪を十分すすぎ(泡と界面活性剤が残らなくなるまで)、空気中で乾燥させた。このような洗浄工程は1日2回行い、計10回の洗浄を行った。
【0201】
洗浄後、二つずつ同じラベルを貼った毛髪試料、すなわち、SLESで洗浄した毛髪(A、B)、SPCで洗浄した毛髪(C、D)及び未処理毛髪(E、F)を得た。
【0202】
走査型電子顕微鏡(SEM)分析
全ての毛髪試料(A〜F)にSEM試験を行い、異なる処理によって毛髪繊維の表面形態に起こり得る変化を評価した。
【0203】
このために、導電性カーボン接着テープを用いて毛髪試料を10mm真ちゅうスタブ(brass stub)に取り付け、金/パラジウム源からスパッタリングコーティングを行った。コーティング厚さは200Aまでであった。走査型電子顕微鏡(Jeol JSM 6100)を使用して試料を試験した。顕微鏡は7.0kVで作動し、15mmの作業距離で試料を観察した。各毛髪試料に10本の繊維が観察され、典型的なイメージを撮影した。得られたイメージが図5〜図10に示されている。
【0204】
得られたイメージから、試料A(SLES洗浄された毛髪)が全ての試料のキューティクルに対して一番大きい損傷を示し、SLES洗浄工程が毛髪表面に最も大きい損傷を誘発することを意味している。このような損傷、具体的にはキューティクルの剥離は、製品が毛髪表面から洗い落とされるので起こる。SPCで処理した毛髪ではより少ない損傷が観察された。
【0205】
また、残留物は全ての試料に存在するが、予想の通り、未処理毛髪試料(試料E及びF)の残留物が最も少なかったことを、結果は示している。ケラチン誘導体溶液SPCで洗浄された毛髪試料(試料C及びD)で最も多い残留物が観察された。これらの試料領域ではキューティクルの詳細状態は不明瞭であり、これは、キューティクルを保護するサーファクタントタンパク質が比較的持続性が長い層であること示唆している。
【0206】
脂質抽出分析
全ての毛髪試料(A〜F)の脂質をクロロホルム/メタノール(2:1)共沸混合物で7時間ソックスレー抽出し、最後に一晩クロロホルム/メタノール混合物に浸漬した。異なる抽出物が凝縮され、分析の前にクロロホルム‐メタノール(2:1)10mlで溶解された。抽出後、次の3種類の抽出物が(それぞれ2つずつ)得られた。つまり、SLES洗浄した毛髪からの抽出物(A、B)、SPC洗浄した毛髪からの抽出物(C、D)、及び未処理毛髪からの抽出物(E、F)である。
【0207】
下表10に示すように、洗浄した毛髪試料(SLESとSPC処理の両方)から抽出した脂質レベルは、未処理毛髪試料からの抽出量に比べて低い。2つの異なる洗浄処理間では、抽出された脂質量に差異が認められなかった。
【0208】
【表10】

【0209】
脂質分析
抽出物をN通気下で一定量に到達するまで乾燥させることによって、抽出脂質の総量をさらに分析した。エーテルと石油エーテル40〜60とアセトンの比率が100:97:3である溶媒系の薄層クロマトグラフィー用いて、各抽出物を定性分析した。TLCプレートを溶液に10秒間浸漬した後、180℃で10分間加熱し、10%CuSO/8%HPO溶液でスポットが検出された。
【0210】
異なる毛髪試料の脂質に対する薄層クロマトグラフィー分析結果が、図11に示されている。異なる毛髪試料に対し、あるクラスの脂質量に若干の差が認められたことを結果は示している。さらに、これらの差は有意とするには非常に小さく、内部の毛髪脂質はトレス処理により変化しなかったことを示唆する。
【0211】
試験のまとめ
この例において、異なる二つの洗浄工程、すなわち、工業用界面活性剤を使用した場合(SLES)とサクシニル化ケラチンタンパク質誘導体を使用した場合(SPC)の損傷効果を比較した。両洗浄方法は毛髪繊維を変化させ、処理された毛髪繊維の滑らかさ及び柔らかさなど感覚効果に変化をもたらし、これは減少したように見えることを毛髪繊維の初期処理は示している。
【0212】
SEM試験は、各試料が受けた処理よる、毛髪試料の表面形態の差を証明する。異なる二つの処理を比較すると、SEMによる結果は、SLES処理は最も損傷が大きく、SPC処理は毛髪繊維をコーティングして、キューティクルの保護作用を可能とする持続性のあるサーファクタントタンパク質層を形成することを示す。
【0213】
抽出物のTLC分析では、異なる試料間で差が示されず、これは、処理の相違により毛髪繊維の内部脂質が変化していなかった可能性を示唆する。
【0214】
実施例8‐加水分解された四級化ケラチン誘導体が毛髪の物理的特性に与える影響
この研究の目的は、加水分解された四級化ケラチン誘導体が毛髪に与える効果を決定することであった。ケラチン誘導体を含むヘアケア配合物と含まないヘアケア配合物を毛髪トレスに塗布し、コーミング力(扱いやすさ)などの関連特性を測定し、可溶性羊毛ケラチンペプチド及び別の重合コンディショニング剤と比較した。コーミング力の結果をサポートするために、パネルテストを用いて毛髪トレスの感覚特性(柔らかさなど)を評価した。このテストに用いられたケラチン誘導体試料は上述されたQuatPであった。
【0215】
各トレスに約3.3gの毛髪を使用して四つの毛髪トレスを作成した。
【0216】
各毛髪トレスを2%SLES溶液(70%SLESを調製し、希釈して2%溶液とした)で2分間洗浄し、温水(約40℃)でさらに2分間十分に(泡と界面活性剤が残らなくなるまで)すすいだ。次に毛髪トレスを空気中で乾燥した。
【0217】
毛髪トレスの洗浄後、いずれの処理を行う前に、毛髪トレスにコーミング力実験を行って、起こりうるもつれ、絡みなどを除去し、全てのトレスが同じ初期特性を有することを確認した。くしでトレスを上方に引っ張り、力‐伸長グラフを記録した。最初に梳いた後、これを各トレスに対して総10回繰り返した。梳く回数とテスト中の任意の問題(例えば、もつれ、絡みなど)を記録した。
【0218】
各力/伸長グラフに対して、3つの相違するパラメータを記録した。つまり、最初の突出ピークから最後の突出ピークまで測定し、5つの同等部に区切り、各コラムで最高ピークを取って、図12に示すように力軸に外挿して得た平均力と、最高ピークグラフと、Instronによって得られた最高ピークである。幾何平均及びパーセント相対標準偏差を計算した後、それらの値を使用して処理された毛髪トレスのコーミング力を決定した。
【0219】
毛髪試料には次の処理を行った。
・未処理:試料1は未処理対照として処理をしなかった。
・コンディショナーベース処理:試料2を希釈水で2分間ぬらした。その間、コンディショナーベース3gを塗布し、毛髪に2分間放置した後、毛髪を温水(約40℃)で2分間十分にすすいだ。次に、毛髪を空気中で乾燥させた。
・1%非誘導体化加水分解ケラチンタンパク質コンディショナー処理:加水分解されたケラチン1.0gを添加し、コンディショナーベースで最大100.0gにした後、完全に混合し、加水分解されたケラチンコンディショナーを作成した。試料3を希釈水で2分間ぬらした。その間、1%加水分解ケラチンを含有するコンディショナー3gを塗布し、毛髪に2分間放置した後、毛髪を温水(約40℃)で2分間十分にすすいだ。次に、毛髪を空気中で乾燥させた。
・1%四級化ケラチン誘導体(「QUATP」と称される)コンディショナー処理:QUATP1.0gを添加し、コンディショナーベース(加水分解ケラチンに使用したものと同様)で最大100.0gにした後、完全に混合し、QUATPケラチン誘導体(実施例2に記載の方法によって製造される)コンディショナーを作成した。試料4を希釈水で2分間ぬらした。その間、1%QUATPを含有するコンディショナー3gを塗布し、毛髪に2分間放置した後、毛髪を温水(約40℃)で2分間十分にすすいだ。次に、毛髪を空気中で乾燥させた。
【0220】
全ての毛髪トレスを処理及び乾燥させた後、コーミング力を測定した。コーミング力測定は、前処理コーミング力測定の項目で上述したように実施した。測定は各トレスに対して総10回繰り返され、前処理結果及び片側スチューデントt‐検定に関連して、幾何平均が計算された。
【0221】
表11〜13には、異なる毛髪試料に対するコーミングパラメータを決定するための2つの実験で得られた平均値がまとめられている。図13〜図15は、これらの結果に対するグラフを示す。
【0222】
【表11】

【0223】
上記で示すように、結果は、測定されたコーミング力は、未処理毛髪試料と処理毛髪試料間で有意な差(t‐スチューデント p<0.05)を示した。全ての処理で毛髪を梳くのに必要な力が減少し、これは毛髪の扱いやすさの向上を意味する。異なる処理間の評価は、最良の結果が得られた原因が、コンディショナーベース処理によりコーミング力が未処理毛髪では約60%減少し(有意差あり、p<0.05)または残りの処理では約30%減少(有意差あり、p<0.05)したことであると示している。平均コーミング力値を考慮する場合、Keratec−Pep処理とQUATP処理の間には大きな差が見られなかった。
【0224】
【表12】

【0225】
【表13】

【0226】
最高ピークのデータ(グラフ及び記録)は、また、3つの処理は未処理の値に比べて毛髪を梳くために必要な力を減少させ、毛髪の取り扱いを向上させることを示している(有意差あり、t−スチューデント p<0.05)。3つの異なる処理の評価は、コンディショナーとQUATPコンディショナー処理の間で有意差が見られないことを示す。コンディショナーベースの処理は、わずかに良好な結果をもたらしている。すなわち、未処理毛髪値に関する両コーミング力パラメータとも約58%減少させ(t‐スチューデント、p<0.05)、加水分解されたケラチンコンディショナー処理値に比べ、約35%減少させた(t‐スチューデント、p<0.05)。
【0227】
12名の審査員がパネルテストを使用して、処理された毛髪トレスの感覚特性を評価した。テストは環境条件を整えた部屋(20℃及び60%RH)で、4つの全ての毛髪トレス(未処理及び処理)を2つ1組にして各組の試料に対して次の質問がなされた。
1.どちらの毛髪トレスがより柔らかいか?
2.どちらの毛髪トレスがより滑らかであるか?
3.どちらの毛髪トレスをより好むか?
それから全ての結果に対して統計分析を行った。スピアマンの順位相関係数(PEARMAN’S RANK Correlation Coefficient)を使用して審査員間の意見一致の程度を調査し、カイ2乗検定(Chi−Square Test)により実験ボランティアの応答分布が互いに異なったか否かを調査した。
【0228】
図16は、パネルテストで審査員の選択パーセンテージの結果を示す。第1の統計分析は、3つの質問において、全ての審査員の意見一致程度が高いことを示したことを示唆している(有意性レベルp<0.05)。データは、3つの異なるテストで、QUATPコンディショナーとコンディショナーベース処理された試料を選択する際の審査員の確実な傾向があることを明示している。この2つの試料を比較すると、QUATPコンディショナー処理に対する結果がわずかに良好である。
【0229】
テスト1の結果では、パネルの40%がQUATPコンディショナーで処理された試料がより柔らかいと答えた一方、34%はコンディショナーベース試料がより柔らかいと答え、17%が加水分解ケラチンコンディショナー試料がより柔らかいと答え、8%が未処理毛髪試料が最も柔らかいと考えた(未処理とQUATPコンディショナー処理試料の間には有意差あり(p<0.05))。
【0230】
第2のテストにおいても、QUATPコンディショナーで処理された試料のパーセンテージが最も高く、より滑らかな試料として審査員の44%が選択した(QUATPコンディショナーと、未処理および加水分解ケラチンコンディショナーの処理試料の間には有意差あり、p<0.05。QUATPとコンディショナーベースの処理試料の間には有意差なし。)一方、32%がコンディショナーベースで処理された試料を選択し、18%が加水分解ケラチンコンディショナーで処理された試料をより滑らかと考え、6%が未処理試料が最も滑らかだと示した。
【0231】
最終的に、最後のテストでも同様の反応が見られ、審査員はQUATP(42%)及びコンディショナーベース(38%)で処理された毛髪試料をより好んだ(未処理及び加水分解ケラチン処理毛髪試料に対しては有意差ありp<0.05、両者間では有意差なし)。一方、加水分解ケラチンコンディショナー(15%)及び未処理(6%)毛髪試料に対するパーセンテージが最も低かった。
【0232】
試験のまとめ
データは、テストした3つの異なるコンディショナー(QUATPコンディショナー、ベースコンディショナー及び加水分解ケラチンコンディショナー)の毛髪に対するコンディショニング効果を確証している。これは、より健康でより若い毛髪表面を反映するコーミング力の減少によって証明され、消費者が毛髪の扱いやすさの向上を認識したことにも関連する。
【0233】
結果は、また、低分子量の四級化ケラチンを含有しても、他のコンディショニング剤と比べてヘアコンディショニングの有意な改善は見られないことを明示している。しかし、2つのペプチド処理を比較すると、QUATPペプチドが加水分解ケラチンペプチドより良好に機能するように思われる。
【0234】
実施例9‐未加工な四級化ケラチン誘導体が毛髪の物理的特性に与える影響
この実施例の目的は、羊毛由来の未加工四級化ケラチンが毛髪に与える影響を評価することであった。この実施例に使用した方法は、実施例8で使用された加水分解四級化ケラチン試料(QuatP)の代わりに、この実施例では未加工四級化ケラチン誘導体(QUATCと称され、上記の実施例2で検討される)を用いていることを除いては、実施例8と同一のものである。
【0235】
行われた2つの実験を平均した、コーミング力の結果が以下の表14〜16に示される。
【0236】
【表14】

【0237】
測定結果は、測定されたコーミング力において、未処理毛髪試料と処理毛髪試料に有意差があること(t‐スチューデント p<0.05)を明示している。全ての処理は、毛髪を梳くために必要な力を減少させ、これは毛髪の扱いやすさの向上を意味する。異なる処理間の評価は、最良の結果が得られた原因が、QUATC処理によりコーミング力が未処理毛髪では約55%減少し(t‐スチューデント、p<0.05)または残りの処理では約30%減少(t‐スチューデント、p<0.05)したことであると示している。
【0238】
【表15】

【0239】
【表16】

【0240】
最高ピークのデータ(グラフ及び記録)は、3つの処理では未処理の値に比べて毛髪を梳くために必要な力が減少しており、毛髪の扱いやすさを向上させることを明示する(有意差あり、t−スチューデント p<0.05)。3つの異なる処理の評価は、QUATCコンディショナー処理で最も有意な結果が見られたことを示している。つまり未処理毛髪の値については両コーミング力パラメータを約60%減少させ(t‐スチューデント、p<0.05)、他のコンディショナー処理に比べつろ、約30%減少させた(t‐スチューデント、p<0.1)
図17は、パネルテストで審査員の選択パーセンテージに対する結果を示す。第1の統計分析は、3つの質問において、全ての審査員の意見一致程度が高いことを示したことを示唆している(有意性レベルp<0.05)。データは、3つの異なるテストで、QUATCと未加工ケラチンコンディショナーで処理された試料を選択する際に審査員の確実な傾向があることを明示している。
【0241】
テスト1の結果では、応答者の70%がQUATCと未加工ケラチンコンディショナーで処理された試料がより柔らかいと選択した一方、12%は未処理試料がより柔らかいと答え(未処理とタンパク質処理された試料間の有意差ありP<0.05)、そして18%がコンディショナーベース処理された毛髪試料が最も柔らかいと答えたが、異なる処理間に有意差は見られなかった。
【0242】
第2のテストにおいても、審査員の70%がQUATCと未加工ケラチンコンディショナーの処理試料をより滑らかな試料として選択した一方、11%が未処理試料をより滑らかだと選択し(未処理と処理タンパク質間の有意差p<0.05)、そして19%がコンディショナーベースで処理された試料を選択した。このテストにおいて、QUATCコンディショナー処理試料では他の処理と統計的な有意差がみられ、つまり全体で42%が最も滑らかであると選択された。
【0243】
最終的に、最後のテストでは、審査員により好む試料を選択するように依頼した。同様の反応が見られ、審査員の71%がQUATCと未加工ケラチンコンディショナーで処理された試料を選択し、一方、20%がコンディショナーベースで処理された試料を選択し、9%が未処理試料を選択した(未処理と処理タンパク質間の有意差ありp<0.05、処理間で有意差なし)。
【0244】
試験のまとめ
この研究は、毛髪に対する未加工四級化ケラチンのコンディショニング効果を実証している。これは、より健康でより若い毛髪表面を反映するコーミング力の減少によって証明され、消費者が毛髪の扱いやすさの向上を認識したことにも関連する。
【0245】
本発明の態様はただ例として記載されたものであり、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲を逸脱することなく変更及び付加が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含む可溶性ケラチン誘導体。
【請求項2】
可溶性ケラチンタンパク質が未加工であることを特徴とする請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項3】
可溶性ケラチンタンパク質が加水分解されることを特徴とする請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項4】
置換された化学基がマイナスに帯電した基を含む請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項5】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチンサクシニル化誘導体である請求項4に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項6】
置換された化学基が下記の構造式
【化18】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、Xは選択的に置換されたアルキル基を示す。)を含む請求項4に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項7】
Xは(CH、nは2〜6をである請求項6に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項8】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン脂肪酸誘導体を含む請求項4に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項9】
置換された化学基が下記の構造式
【化19】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、
【化20】


は繰り返し脂肪酸鎖、nは1〜40である。)含む請求項4に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項10】
XはNH、
【化21】


は(CH)、nは10〜18である請求項9に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項11】
置換された化学基がプラスに帯電した基を含む請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項12】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン四級化誘導体を含む請求項11に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項13】
置換された化学基が下記の構造式
【化22】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、Yは選択的に置換されたアルキル鎖、R’はアルキル鎖である。)含む請求項11に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項14】
XはNH、YはCHCH(OH)CH、R’はCHである請求項13に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項15】
可溶性ケラチンタンパク質がS‐スルホン化されることを特徴とする請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項16】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン中間径フィラメントタンパク質画分を含む請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項17】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン高硫黄タンパク質画分を含む請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項18】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン高グリシン‐チロシンタンパク質画分を含む請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項19】
可溶性ケラチン誘導体を製造する方法であって、
リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質のある位置で化学基の置換反応を行う段階を含む方法。
【請求項20】
可溶性ケラチンタンパク質が未加工である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
可溶性ケラチンタンパク質が加水分解されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
化学基がマイナスに帯電した基を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチンサクシニル化誘導体を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化学基が下記の構造式
【化23】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、Xは選択的に置換された低アルキル基である。)を含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
Xは(CH、nは2〜6である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン脂肪酸誘導体を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
化学基が下記の構造式
【化24】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、
【化25】


は繰り返し脂肪酸鎖、nは1〜40である。)を含む請求項22に記載の方法。
【請求項28】
XはNH、
【化26】


は(CH)、nは10〜18である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
化学基がプラスに帯電した基を含む請求項19に記載の方法。
【請求項30】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン四級化誘導体を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
化学基が下記の構造式
【化27】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、Yは選択的に置換されたアルキル鎖、R’はアルキル鎖である。)を含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
XはNH、YはCHCH(OH)CH、R’はCHである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
可溶性ケラチンタンパク質がS‐スルホン化される請求項19に記載の方法。
【請求項34】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン中間径フィラメントタンパク質を含む請求項19に記載の方法。
【請求項35】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン高硫黄タンパク質を含む請求項19に記載の方法。
【請求項36】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン高グリシン‐チロシンを含む請求項19に記載の方法。
【請求項37】
可溶性ケラチン誘導体を含む界面活性剤製品であって、
可溶性ケラチン誘導体は、リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれたタンパク質のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含む、界面活性剤製品。
【請求項38】
約0.001重量%〜50重量%の可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物。
【請求項39】
可溶性ケラチン誘導体は、リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれたある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含む、請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項40】
可溶性ケラチンタンパク質が未加工である請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項41】
可溶性ケラチンタンパク質が加水分解されることを特徴とする請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項42】
置換された化学基がマイナスに帯電した基を含む請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項43】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチンサクシニル化誘導体を含む請求項42に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項44】
置換された化学基が下記の構造式
【化28】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、Xは選択的に置換された低アルキル基である。)を含む請求項42に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項45】
Xは(CH、nは2〜6である請求項44に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項46】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン脂肪酸誘導体を含む請求項42に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項47】
置換された化学基が下記の構造式
【化29】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、
【化30】


は繰り返し脂肪酸鎖、nは1〜40である。)を含む請求項42に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項48】
XはNH、
【化31】


は(CH)、nは10〜18である請求項47に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項49】
置換された化学基がプラスに帯電した基を含む請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項50】
可溶性ケラチン誘導体が可溶性ケラチン四級化誘導体を含む請求項49に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項51】
置換された化学基が下記の構造式
【化32】


(式中、Rは可溶性ケラチンタンパク質、XはNHまたはO、Yは選択的に置換されたアルキル鎖、R’はアルキル鎖である。)を含む請求項49に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項52】
XはNH、YはCHCH(OH)CH、R’はCHである請求項51に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項53】
可溶性ケラチンタンパク質がS‐スルホン化されることを特徴とする請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項54】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン中間径フィラメントタンパク質画分を含む請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項55】
可溶性ケラチンタンパク質がケラチン高硫黄タンパク質画分を含む請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項56】
可溶性ケラチンタンパク質はケラチン高グリシン‐チロシン画分を含む請求項38に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項57】
可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物用の添加剤であって、
可溶性ケラチンタンパク質誘導体は、リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれたタンパク質のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含む添加剤。
【請求項58】
毛髪または皮膚を処理する方法であって、
約0.001%〜50%の可溶性ケラチン誘導体を含むパーソナルケア配合物を塗布する段階を含む方法。
【請求項59】
添加剤を含むパーソナルケア配合物を塗布する段階によって毛髪または皮膚を処理する方法であって、添加剤は可溶性ケラチン誘導体を含み、可溶性ケラチン誘導体は、リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれたタンパク質のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する可溶性ケラチンタンパク質を含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質画分のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する第1の可溶性ケラチンタンパク質と、
リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質画分のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する第2の可溶性ケラチンタンパク質と、を含む可溶性ケラチン誘導体混合物であって、
第1の可溶性ケラチンタンパク質画分及び第2の可溶性ケラチンタンパク質画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質及び高グリシン‐チロシンタンパク質からなる群から選ばれたそれぞれであって、
第1の可溶性ケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とは異なる、可溶性ケラチン誘導体混合物。
【請求項61】
可溶性ケラチン誘導体混合物を製造する方法であって、
リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質画分のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する第1の可溶性ケラチンタンパク質画分と、リジン基、末端アミン基、ヒドロキシルアミノ酸基及びそれらの組合せからなる群から選ばれた可溶性ケラチンタンパク質画分のある位置で少なくとも一つの置換された化学基を有する第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とを混合する段階を含み、
第1の可溶性ケラチンタンパク質画分及び第2の可溶性ケラチンタンパク質画分は、中間径フィラメントタンパク質、高硫黄タンパク質及び高グリシン‐チロシンタンパク質からなる群からそれぞれ選ばれたものであって、
第1の可溶性ケラチンタンパク質画分は、第2の可溶性ケラチンタンパク質画分とは異なる、方法。
【請求項62】
可溶性ケラチンタンパク質が部分酸化されることを特徴とする請求項1に記載の可溶性ケラチン誘導体。
【請求項63】
可溶性ケラチンタンパク質が部分酸化されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項64】
可溶性ケラチンタンパク質誘導体が部分酸化されることを特徴とする請求項38に記載のパーソナルケア配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−502171(P2011−502171A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532288(P2010−532288)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082025
【国際公開番号】WO2009/059161
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510123220)ケラテック, リミテッド (1)
【出願人】(510123231)
【Fターム(参考)】