説明

ケース入りコンデンサ

【課題】半田付けに必要な熱量を従来よりも減少させることができ、しかも良好な半田付け作業を行うことの可能なケース入りコンデンサを提供する。
【解決手段】ケース1にフィルムコンデンサ素子2を収納し樹脂を充填し、コンデンサ素子2に接続された電極薄板5と、この電極薄板5よりも板厚の大きいベース電極板7とを接続し、このベース電極板7をケースから外部に導出したケース入りコンデンサである。ベース電極板7には、電極薄板5とベース電極板7との接続部Bの近傍の位置に、貫通孔9を形成することで、接続部Bからベース電極板7の内部に向かう伝熱経路に狭隘部10を形成する。これにより、接続部Bから第2電極板7への熱放散を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケース入りコンデンサに関するもので、特に電極接続作業の作業性を向上したケース入りコンデンサに係るものである。
【背景技術】
【0002】
フィルタ回路やインバータに用いられる平滑用コンデンサとしては、従来より電解コンデンサが用いられている。一方、フィルムコンデンサでは、等価直列抵抗(ESR)が電解コンデンサよりも小さく、その寿命が長いことから、平滑用コンデンサとして電解コンデンサからフィルムコンデンサへの移行が一部進みつつある。平滑用コンデンサとして必要とされる容量が大きい場合、ケース内に複数のコンデンサ素子を収納し、ベース電極板を共通電極として複数のコンデンサ素子を接続すると共に、このベース電極に、外部と接続する端子部を設けている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来のケース入りコンデンサについて、図4、及び図5により説明すると、このコンデンサは、コンデンサ素子22の両側メタリコン電極23、23に接続された電極薄板25、25をそれぞれベース電極板27、27に、接続部Bにおいて半田付けした構造のものである。従来、ベース電極板27は、複数のコンデンサ素子22の共通電極として厚みのある電極板(銅板)を用い、各コンデンサ素子22への接続は、半田付けの際のコンデンサ素子22への熱影響を考慮して、ベース電極板27よりも薄い電極薄板(銅板)25を用い、ベース電極板27と電極薄板25を接続する構成とされている。
【特許文献1】特開2006−245170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のように、予めコンデンサ素子22のメタリコン電極23に電極薄板25を接続した後、ベース電極板27と電極薄板25とを半田付けする構造(図4、及び図5参照)では、ベース電極板27の厚みが厚い(1mm〜2mm)ので、図4に矢線で示すように、ベース電極板27に向けて活発な熱放散がなされる。そのため、半田付けの際の熱量が不足すると充分な温度上昇が行なえず、半田付け性が悪く接合が困難となり、その反面、半田付けの際の熱量を大にすると接合は可能となるが、フィルムコンデンサ素子22が熱損傷を受けて特性が劣化するおそれがある。
【0005】
この発明は上記した従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、半田付けに必要な熱量を従来よりも減少させることができ、しかも良好な半田付け作業を行うことの可能なケース入りコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のケース入りコンデンサは、ケース1にフィルムコンデンサ素子2を収納し樹脂を充填し、コンデンサ素子2に接続された第1電極板5と、この第1電極板5よりも板厚の大きい第2電極板7とを接続し、この第2電極板7を、外部接続用の端子部として、ケース開口部から外部に導出して成るケース入りコンデンサであって、上記第2電極板7には、上記第1電極板5と第2電極板7との接続部Bの近傍の位置に、上記接続部Bから第2電極板7の内部に向かう伝熱経路に狭隘部10を形成し、接続部Bから第2電極板7への熱放散を制限していることを特徴とする。
【0007】
請求項2のケース入りコンデンサは、上記狭隘部10は、第2電極板7に貫通孔9を設けることにより、その両側に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のケース入りコンデンサによれば、半田付けを行う際には、接続部Bから第2電極板7の内部への熱放散が狭隘部10によって制限され、放熱量が従来よりも減少する。従って、付加する熱によって接続部Bが温度上昇し易くなり、この結果、半田付けに必要な熱量を従来よりも減少させることができ、コンデンサ素子2への熱影響を軽減することができる。しかも、接続部Bを充分に温度上昇させることができるので、良好な半田付け作業を行うことが可能となり、半田付け作業の作業性を改善すると共に、接合強度の信頼性を向上することができる。
【0009】
また、請求項2のケース入りコンデンサによれば、接続部Bは、一対の狭隘部10で支持されることになるので、接続部Bに対して捩りが作用しても、その剛性は、狭隘部10が1個の場合よりも向上する。従って、接続部Bの捩りによる変形を抑制でき、これによって半田付け作業の作業性、コンデンサの信頼性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次にこの発明のケース入りコンデンサの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、この実施形態の要部を示す平面図、図2は、図1のA−A線に沿う断面図、図3は要部の斜視図である。同図において、1はケースであって、このケース1内に複数のコンデンサ素子2が収納されている。なお、図においては、説明の便宜上、1個のコンデンサ素子2だけを図示している。コンデンサ素子2は、その両端部にメタリコン電極3、3を有しており、メタリコン電極3、3に電極薄板5、5が、半田付け、スポット溶接などによって接続されている。また、コンデンサ素子2の上側には、一対のベース電極板7、7が、上下に重ねた状態で配置されている。各ベース電極板7、7は、その間に絶縁紙を介設するか、あるいは充填樹脂を介在させて互いに絶縁されている。そして、上記各電極薄板5、5と各ベース電極板7、7とは、接続部Bにおいて、電気的に接続されている。この場合、各電極薄板5、5は、その板厚が0.5mm程度のものであり、一方、各ベース電極板7、7は、その板厚が1〜2mm程度のものである。すなわち、電極薄板5は、ベース電極板7の1/2以下の板厚のものである。なお、この状態において、ケース1内には、エポキシ樹脂などの樹脂が充填される。また、上記ベース電極7がケース1の開口部から外方に導出され、外部接続用の端子部となる。
【0011】
そして、この実施形態において特徴的な点は、上記各ベース電極板7、7には、接続部Bの近傍に長方形状の貫通孔9、9が設けられていることである。この点について、さらに詳しく説明する。上記各ベース電極板7は、図1に示しているように、コンデンサ素子3の並設方向に延びる本体部11と、本体部11から各コンデンサ素子3側へと延びる複数の延設部12と、延設部12から各メタリコン電極3側へと延びる取付部13とを有しており、各取付部13の上側に、上記電極薄板5を載置して、両者の接触部が接続部Bとして半田付けされるようになっている。そして、図に示す実施形態においては、各取付部13において、接続部Bの近傍、延設部12寄りの位置に、接続部Bとは直交する方向に延びる貫通孔9が穿設されている。貫通孔9の長辺の長さは、電極薄板5の幅と略等しく、また、具体的には取付部13の幅の約40〜90%程度の長さとしている。
【0012】
上記した実施形態においては、貫通孔9を設けることにより、この貫通孔9の両側に一対の狭隘部10、10を形成している。すなわち、上記接続部Bからベース電極板7の延設部12、つまりベース電極板7の内部に向かう伝熱経路の断面積を、その前後よりも小さくして成る狭隘部10を形成しているのである。この結果、半田付けを行う際には、接続部Bから取付部13を経由して延設部12(ベース電極板7の内部)への熱放散が狭隘部10によって制限され(図1における矢線参照)、放熱量が従来よりも減少する。従って、半田付け時に付加する熱によって取付部13、すなわち接続部Bが温度上昇し易くなり、この結果、半田付けに必要な熱量を従来よりも減少させることができ、コンデンサ素子2への熱影響を軽減することができる。しかも、接続部Bを充分に温度上昇させることができるので、良好な半田付け作業を行うことが可能となり、半田付け作業の作業性を改善すると共に、接合強度の信頼性を向上することができる。
【0013】
以上にこの発明のケース入りコンデンサの具体的な実施の形態について説明をしたが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記においては、貫通孔9を長方形状にしているが、菱形、長円形などの種々の形状を採用することができる。また、上記実施の形態では、貫通孔9を形成することで、その両側に狭隘部10を形成しているが、取付部13の両側から内側に向かって切り込み部を形成し、その両者間に狭隘部を形成するようにしてもよい。もっとも実施形態のように、狭隘部10を、ベース電極板7に貫通孔9を設けることにより、その両側に形成した場合には、接続部Bは、一対の狭隘部10で支持されることになるので、接続部Bに対して捩りが作用しても、その剛性は、狭隘部10が1個の場合よりも向上する。従って、接続部Bの捩りによる変形を抑制でき、これによって半田付け作業の作業性、コンデンサの信頼性を確保できることになる。さらに、上記においては、複数のコンデンサ素子2を並設した構造のケース入りコンデンサを例示しているが、単数のコンデンサ素子2を用いる場合にも、上記同様に実施可能である。なお、複数のコンデンサ素子2を並設し、これらをベース電極板7に接続する構造のコンデンサでは、インピーダンスを減少させるため、ベース電極板7を比較的厚板で構成することが多いので、適用効果は一段と有効に発揮される。また、本願特許請求の範囲などにおける第1電極板5とは、具体的には上記電極薄板5として例示し、また、第2電極板7とは、具体的には上記ベース電極板7として例示したものに相当するが、形状などは上記実施の形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のケース入りコンデンサの実施形態を示す要部の平面図である。
【図2】上記コンデンサのA−A線に沿う断面図である。
【図3】上記コンデンサの実施形態を示す要部の斜視図である。
【図4】従来のケース入りコンデンサの実施形態を示す要部の平面図である。
【図5】上記コンデンサのX−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1・・ケース、2・・コンデンサ素子、3・・メタリコン電極、5・・電極薄板、7・・ベース電極板、9・・貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)にフィルムコンデンサ素子(2)を収納し樹脂を充填し、コンデンサ素子(2)に接続された第1電極板(5)と、この第1電極板(5)よりも板厚の大きい第2電極板(7)とを接続し、この第2電極板(7)を、外部接続用の端子部として、ケース開口部から外部に導出して成るケース入りコンデンサであって、上記第2電極板(7)には、上記第1電極板(5)と第2電極板(7)との接続部(B)の近傍の位置に、上記接続部(B)から第2電極板(7)の内部に向かう伝熱経路に狭隘部(10)を形成し、接続部(B)から第2電極板(7)への熱放散を制限していることを特徴とするケース入りコンデンサ。
【請求項2】
上記狭隘部(10)は、第2電極板(7)に貫通孔(9)を設けることにより、その両側に形成されていることを特徴とする請求項1のケース入りコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−135420(P2008−135420A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318103(P2006−318103)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】