説明

ケーブル等保護管の配管構造及び配管方法。

【課題】配管及び通線の作業性を向上させかつ外観上体裁のよいケーブル等保護管の配管構造及び配管方法を提供すること。
【解決手段】直線配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管と、前記直線配管へ隣接する曲げ配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の端部とが管継手により連結されており、少なくとも前記直線状波付管は壁,床,柱その他の周辺部材へ固定されていることを最も主要な特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブルや電気配線(以下「ケーブル等」と言う。)保護管の配管構造及び配管方法に関するものである。
【0002】
さらに本発明に係るケーブル等保護管の配管構造及び配管方法は、工場,倉庫,屋内駐車場,各種地下構造物その他の構造物の内部や外壁及び屋上等において、埋設配管(床スラブ,壁,柱,梁等の鉄筋コンクリート内へ埋設される配管)を除く次のようなケーブル等保護管の配管に用いられる配管構造及び配管方法に関する。
露出配管:壁面や天井面その他構造物の内外面において露出状態で設置される配管。
隠蔽配管:二重天井内,軽量間仕切(中空間仕切)内,パイプシャフト内その他隠蔽された状態で設置される配管。
【背景技術】
【0003】
この種のケーブル等保護管は、地中に埋設された外管内に配管されるケーブル保護管や地中に埋設されるケーブル保護管の場合と比較して、構造物の内外部構造に沿って配管する必要があるため、配管領域に曲げ配管部(配管領域の客観的条件や配管上の都合により曲げ配管が必要な部分を言う。)がはるかに多い。
発明者らは、この種の配管構造や方法について特許文献等を検索したが本発明に対応し得る先行技術は発見できなかったので、従来技術としてこの種業界で一般的に実施されている配管について以下説明する。
【0004】
従来の配管構造の第1は、表面に防食加工を施した鋼管等の金属管を使用するもので、直線配管部では丸鋸カッターで対応する長さに切断したものを配管し、90゜曲げ配管部には定尺品のエルボを配管して両者を管継手により連結する。しかし、現場の状況によっては、90゜以外の曲げ配管部が存在する場合には、金属管の必要部分をベンダーにより必要量曲げて配管する。
この配管構造によれば、管の切断や曲げ加工に多くの労力を必要として時間がかかり、作業性が悪く、管の曲げ角度の正確性を確保できない(曲げ過ぎや曲げ不足などが生じる)ことから施工性にも問題があった。さらに、切断による切粉の発生や加工時の騒音問題もある。また、金属配管は、樹脂配管に比べて重いため作業者の負担が大きく、摩擦係数μが約0.5で、合成樹脂管の摩擦係数約0.3〜約0.4と比べて大きいことから通線抵抗が大きい等の問題もある。
【0005】
従来の配管構造の第2は、硬質の塩化ビニル管等を使用するもので、直線配管部ではカッターで対応する長さに切断したものを配管し、90゜曲げ配管部には定尺品のエルボを配管して直線配管部と曲げ配管部の両者を管継手により接着により連結する。例えば管をS字状や90゜以外の曲げ配管部が存在する場合には、管の必要部分をバーナー等で加熱することにより必要量曲げて配管する。
この配管構造によれば、配管接続や管の曲げ加工に多くの労力を必要として時間がかかるほか、管の曲げ角度の正確性も確保できないので、作業性がわるいという問題があった。
【0006】
前記第1及び第2の配管構造では、前記のように作業性がわるいので、近時は多くの場合熱可塑性樹脂製のフレキシブル波付管が用いられている。
すなわち、コイル状に巻かれている波付管を巻き解き、直線配管部では直線状に伸ばすとともに曲げ配管部では波付管を適度に曲げて配管し、当該曲り形状が保たれるように必要な部分をサドルや吊ボルトその他の適当な止め金具で壁面,天井面や天井裏部材その他の適当な支持部材に固定している。
なお波付管とは、管の外周方向へ沿って独立した平行な波形状を有する(蛇腹状)か又は外周面へ螺旋状の波形状を有する管を言う。
【0007】
フレキシブル波付管を使用して壁面へ露出配管したケーブル等保護管の配管構造の基本的な例を図8に示す。
コイルから巻き解かれて所定長さに切断されたフレキシブル波付管2は、直線状に伸ばし、壁面の直線配管部aへ垂直方向(又は水平方向)に沿って配置するとともに、止め金具4(例えばサドル)により所定の間隔(通常1500mm以下)で当該波付管2を壁面へ固定する。曲げ配管部bではフレキシブル波付管2を必要量(例えば90゜)曲げ、その曲り形状が保たれるように当該曲げ部の両端部分を止め金具4により壁面へ固定する。
コイルから巻き解かれたフレキシブル波付管2は、配管にあたり前記のように直線状に伸ばされるが、コイルの巻きぐせに伴う収縮により、直線配管部aでは隣合う止め金具4相互の間において「S字状」ないし「くの字状」の曲り部2a,2aが残存することが多い。
【0008】
このように曲り部2aが残存していると、フレキシブルなケーブル(図示しない)を矢印イの方向に沿って通線する際通線抵抗が増大する。また、各曲り部2aではケーブルの先端に集中される通線の力が、最初当該曲り部2aの曲率を大きくする方向(直線に近付く方向)へ作用し、次いで当該曲り部2aの曲率を小さくする方向へ作用するため、波付管2が図の左右に動いてその分通線し難くなる。この傾向は、途中において曲げ配管部bが多くなるのに比例して顕著になる。
【0009】
前記止め金具4をより密に設置すると、曲り部2aはなくなるかあるいは残存していても前記のように通線時に波付管2が動くのを防止できるが、止め金具4の増大と配管手数の増大によって配管費用が増大するので、止め金具4を密に設置するのには限界がある。
したがって、配管長さの途中に例えば90゜の曲げ配管部bが所定個所以上になると、通線用の呼びワイヤをあらかじめ通線する必要が生じるが、程度の差はあるとしても前記曲り部2aの事状は変わらないので呼びワイヤの通線にも時間がかかることになる。
また、前記のように、この種の配管構造において大半を占める露出配管部分で、直線配管の領域に曲り部2aが形成されると、外観を損なうことから、施主からのクレームの対象となる可能性がある。
さらに、天井裏や固定式軽量間仕切内など隠蔽配管として狭い空間へ管を挿入して直線状に配管する場合、フレキシブル管はその先端部が巻き癖や重力により垂れ下がることから、配管空間の周囲における既存の配管その他の既設器物等に当たって配管作業に手間取ることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、直線配管部分における保護管内への通線作業性の改善,露出配管部分における外観の向上、及び配管作業性の向上にある。
本発明の目的は、円滑かつ簡単に通線作業を行なうことができるとともに、外観上好ましいケーブル等保護管の配管構造を提供することにある。
本発明の他の目的は、露出配管領域における配管及び隠蔽配管領域などの狭い直線空間へ直線状に配管する場合に、配管作業を容易かつ能率的に行なうことができるケーブル等保護管の配管構造を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記目的を達成するための配管構造をより円滑に実施することができるケーブル等保護管の配管方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るケーブル等保護管の配管構造は、前記課題を解決するため、熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管と、曲げ配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の端部とが管継手により連結されており、少なくとも前記直線状波付管は壁,床,柱その他の周辺部材へ固定されていることを最も主要な特徴としている。
なお、この明細書及び特許請求の範囲において「非フレキシブル性」とは、フレキシブル性を有しないかあるいはフレキシブル性に乏しい(通常人の腕力のみでは容易に曲げることができない程度)ことを言う。
【0012】
本発明に係るケーブル等保護管の配管方法の一つは、前記課題を解決するため、直線配管部と曲げ配管部とが配管長さ方向に沿って隣接している場合において、前記直線配管可能部へ熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管を配管するとともに、当該直線状波付管の前記曲げ配管部側の端部へ所定長さに切断された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の一端部を連結する工程を含むことを最も主要な特徴としている。
【0013】
本発明に係る配管方法の他の一つは、前記課題を解決するため、直線配管部と曲げ配管部とが配管長さ方向に沿って隣接している場合において、前記直線配管部に対応する長さの熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管の端部へ前記曲げ配管部に対応する長さに切断された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の一端部を連結し、前記直線配管部へ前記直線状波付管を配管するとともに前記曲げ配管部へ前記フレキシブル波付管を配管する工程を含むことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るケーブル等保護管の配管構造によれば、直線配管部に配管される管は非フレキシブル性の直線状波付管であるので、極めて円滑かつ簡単に通線作業を行なうことができるとともに、曲り部分がなく外観上体裁が良い。
天井裏や軽量間仕切内などの直線状空間部へ配管する際も、当該空間部近傍に既設器物類があっても、直線状波付管は直線性が優れるため、前記空間部へ円滑に挿入して配管することができる。
また、端部相互を連結する管はともに波付管であるので管継手により簡単かつ迅速に連結することができることと、配管に当たって管の曲げ加工を要しないこととによって、配管作業性が飛躍的に向上する。このことから小規模工事はもとより、特に新設や改修等大規模構造物の配管工事においては配管工期の短縮と、配管コストの一層の低減が可能になる。
【0015】
本発明に係るケーブル等保護管の配管方法によれば、前記本発明に係る配管構造を円滑に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照しながら本発明に係るケーブル等保護管の配管構造の最適実施形態を説明する。
第1実施形態
図1は本発明に係る配管構造を屋内配管に適用した第1実施形態を示す部分断面図、図2は図1のA部拡大断面図、図3は図1の実施形態において管継手による連結部分の部分拡大半裁断面図である。
【0017】
屋内6の一方の鉄筋コンクリートよりなる垂直壁60の壁面と、当該垂直壁60と連続する鉄筋コンクリートよりなる天井61の天井面と、当該天井61と連続し前記垂直壁60と相対する垂直な軽量間仕切壁(中空)62の中空部分は、それぞれ直線配管部aである。各隣合う垂直配管部a相互の間の角部は曲げ配管部bである。
垂直壁60における壁面にはボックス(接続ボックス)5が設置され、軽量間仕切壁62の内部には屋内6側に露出する状態にボックス(スイッチボックス)5aが設置されている。
【0018】
垂直壁60の直線配管部aには、ボックス5の上下部にはそれぞれ必要な長さに切断された熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管1,1が垂直方向に沿って配置されている。
これらの直線状波付管1,1は、それらの対応する端部が接続具3aによりボックス5へ接続された状態で固定され、それらの端部寄り部分は各止め金具4によりそれぞれ垂直壁60の壁面へ固定されている。
【0019】
軽量間仕切壁62の直線配管部aには、前記垂直壁60の各直線状波付管1と相対する状態に必要な長さの同様な非フレキシブル性の直線状波付管1が垂直に配置されている。
当該直線状波付管1は、その下端部が接続具3aにより対応するボックス5aへ接続された状態で固定され、その上端寄り部分は止め金具4により軽量間仕壁62の内壁へ固定されている。
【0020】
天井61の直線配管部aには、両端部が既に配管されている両側の垂直方向の直線状波付管1,1の上端部と対応する各曲げ配管部bを介してほぼ直交する状態に、熱可塑性合成樹脂よりなる必要な長さの非フレキシブル性の直線状波付管1が配置されている。この直線状波付管1の少なくとも両端寄り部分は、止め金具4により天井61の面へ固定されている。
なお、各一箇所の直線配管部aへ配置される直線状波付管1は一本とは限らず、当該直線配管部aの全長と見合うように短い数本の直線状波付管1を後記の管継手3等により直線状に連結して使用する場合も含まれる。
【0021】
天井61と垂直壁60との間及び天井61と軽量間仕切壁62との間の各曲げ配管部b,bには、当該曲げ配管部bの配管長さに対応するように切断された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管2,2がほぼ90゜に曲げられた状態で配置されている。
これらのフレキシブル波付管2,2の各端部は、管継手3によりそれぞれ対応する直線状波付管1の対応端部と連結されている。
この実施形態において、各フレキシブル波付管2は、その曲率半径Rが図7で示すように当該波付管2の内径Dのほぼ六倍(6D)となるように曲げるのが、後の通線作業の円滑性と当該波付管2の配管スペースとのバランス上好ましい。
【0022】
この実施形態の配管構造において、各止め金具4は図2で示すように、各直線状波付管1,1を抱き込み状に保持して両端部にフランジ部を有するU字状の本体40と、各フランジ部を壁面に固定する各ねじ釘(ボルト)42とにより構成されている。
【0023】
この実施形態において、各直線状波付管1及び各フレキシブル波付管2は、蛇腹状の独立波を有する波付管が使用されているが、一つ又は複数の螺旋状の連続した波を有する波付管を使用することができる。つまり、直線状波付管1及びフレキシブル波付管2はともに、螺旋状の波付管とすることもできるし、直線状波付管1あるいはフレキシブル波付管2のいずれか一方を螺旋状の波付管とし、他方を蛇腹状の独立波の波付管とすることもできる。この場合は、継ぎ手の構造も螺旋状波付管に対応する部分と独立波形状を有する波付管に対応する部分とで、構造を異なるものにする必要があるが、継手としては公知の構造の継手を用いることができる。
各波付管1,波付管2及び各管継手3は、いずれも難燃性ないし耐燃性(燃焼炎がなくなると一定時間内に自然に火が消える性質を言う。)を有する熱可塑性合成樹脂により成形されている。
直線状波付管1とフレキシブル波付管2は、各部において例えば後述のように同じ構造の管継手3の使用を可能とし、同じ金型を使用して成形し得るようにするため、それらの外周部の形状及び寸法はほぼ等しいか近似するように設計されている。
【0024】
この実施形態において各直線状波付管1及び各フレキシブル波付管2の材質には、耐燃性、剛性、耐衝撃性、耐候性及び電気特性(電気絶縁性)を有する高密度ポリエチレンが使用されている。
直線状波付管1の各谷部肉厚がフレキシブル波付管2の各谷部肉厚の1.8倍以上(この実施形態では、管の呼び径がともに22φである場合、後者は0.7〜0.8mm、前者は少なくとも1.3〜1.44mm以上である。)となるように成形することにより、一方の波付管1はフレキシブル性を有しないかフレキシブル性が乏しいのに対し、他方の波付管2は通常人が手で容易に曲げることができる程度のフレキシブル性を有するようになっている。
なお、波付管1,2の材質が異なる場合であって、一方の波付管1を非フレキシブル性のものとし、他方の波付管2をフレキシブル性を有するものとするためには、一方の波付管1の各谷部肉厚に強度を乗じたものが他方の波付管2の各谷部肉厚に強度を乗じたものの1.8倍以上となるように設計すればよい。
各直線状波付管1は、山部内径が谷部外径より小さくなるように(各山部が中実になるように)成形することにより、その最大内径と最小内径の差が小さく(この実施形態では約1mm以下)なるように成形されている。
【0025】
管継手3の構成は特に限定されないが、管相互の連結の際における操作の簡便性と波付管1,2相互の波形状を利用できるようにするため、例えば以下のように構成するのが好ましい。
管継手3は図3で示すように、内周面中央部にリング状のストッパ30aを有し両端部分外周へ雄ねじ部を有する円筒状の本体30と、本体30の両端へセットされる円筒状の各チャックリング31と、内周部へ対応するチャックリング31を係止した状態で本体30の両端部外周へねじ合わされる各締付円筒32とから構成されている。
【0026】
各チャックリング31は、本体30の端部へのセット状態で内外周方向へ可撓性を有する多数の内向き爪片31aを外端部分周方向に所定の間隔で有し、外周部に対応する締付円筒32の内周部へ係止される突起部を有する。
各締付円筒32は、一端部内周へ前記本体30の雄ねじ部と適合する雌ねじ部32aを有するほか、当該雄ねじ部32aの基端部側内周にチャックリング31の突起部を係止する係止片32bを有し、他端部へ前記内向き爪片31aを内周方向へ締付ける締付部32cを有する。
【0027】
以上の構成により、図示のように各締付円筒32を本体30の両端部へねじ締め、この状態で管継手3の一方の端部を一方の波付管1の対応する端部へ合わせて圧入状態に押し付けると、当該波付管1の端部の谷部へ当該部分のチャックリング31の各内向き爪片31aが引っ掛かり、管継手3が波付管1の端部へ固定される。そして、管継手3の他方の端部から他方の波付管2の端部を押し込むと、当該端部の各内向き爪片31aが対応する2の谷部へ引っ掛かって両波付管1,2の端部相互が連結される。
他方、各締付円筒32を取外し方向へ限界まで緩めると、管継手3の各対応する端部のチャックリング31の各内向き爪片31aが外周方向へ開くように緩むので、各波付管1,2を管継手3から引き抜くことができる。
【0028】
前記実施形態の配管構造においては、フレキシブル波付管2の曲げ角度は90゜でなくそれ以外の角度に曲げる場合やS字状その他の形態に曲げる場合があり、したがって、各直線状波付管1の配管状態も垂直ないし水平であるとは限らない。
また、フレキシブル波付管2の曲げ部が二箇所存在する場合には、各曲げ部の境界部を止め金具4により壁面その他の周辺部材へ固定する。
【0029】
前記実施形態のように、直線配管部aと曲げ配管部bとが配管長さ方向に沿って隣接している場合の好ましい配管方法の一つは、直線配管部aへ非フレキシブル性の直線状波付管1を配管するとともに、当該直線状波付管1の前記曲げ配管部b側の端部へ所定長さに切断されたフレキシブル波付管2の一端部を連結する方法である。
この配管方法により図1の配管形態を実施する場合は、例えば一方のボックス5の側から他方のボックス5a側に向かって(又は逆方向に向かって)、非フレキシブル性の直線状波付管1とフレキシブル波付管2とを交互に連結しつつ配管することになる。あるいは、各直線配管部aへそれぞれ直線状波付管1を配管し、各曲げ配管部bへ対応するフレキシブル波付管2を配置してそれらの端部を隣接する直線状波付管1の対応端部へ連結することになる。
【0030】
配管方法の他の一つは、直線配管部aに対応する長さの非フレキシブル性を有する直線状波付管1の端部へ、前記曲げ配管部bに対応する長さに切断されたフレキシブル波付管2の一端部を連結し、前記直線配管部aへ前記直線状波付管1を配管するとともに前記曲げ配管部bへ前記フレキシブル波付管2を配管する方法である。
この配管方法により図1の配管形態を実施する場合は、直線状波付管1の一端部へ対応するフレキシブル波付管2の対応端部を連結する。そして、各直線状波付管1を対応する直線配管部aへ固定し、各フレキシブル波付管2の他方の端部を当該端部と対応する直線状波付管1の対応端部へ連結することになる。
【0031】
第1実施形態の配管構造において、ケーブル(図示しない)を通線する場合には、図示の状態に配管した後、各ボックス5,5aを開き、一方のボックス5(又は5a)から他方のボックス5a(又は5)の方向へ通線する。
【0032】
第1実施形態の配管構造によれば、各直線状波付管1はフレキシブル性を有しないかフレキシブル性に乏しく直線状態を保っているので、通線作業を円滑にかつ効率的にすることができる。また、前記各直線状波付管1は配管時に不規則な曲り部を生じる余地がないため外観上体裁がよい。曲げ配管部bにはフレキシブル管を使用するため、曲げ状態は、自由に選択することができるとともに、曲げ加工を要しないため簡単迅速に配管することができ、配管効率も向上する。
直線状波付管1とフレキシブル波付管2は、それらの外周部の形状及び寸法がほぼ等しいか近似するので、外径がほぼ等しく肉厚の異なるパイプをともに同じ金型によって押出成形することができる。
また、直線状波付管1とフレキシブル波付管2を同じ材質として、直線状波付管1の溝部肉厚をフレキシブル波付管2の溝部肉厚の1.8倍以上にすれば、実質的な肉厚を考慮した溝部強度を1.8倍以上とすることにより、直線状波付管1はフレキシブル性を有しないかフレキシブル性を乏しくし、他方の波付管2はフレキシブル性を有するように成形することができる。
直線状波付管1は管の山部内径が谷部外径より小さくなるように成形することにより、その最大内径と最小内径の差が小さくなり、ケーブル等の通線性がさらに向上する。
【0033】
第2実施形態(通線試験)
図4は本発明に係る配管構造において、通線試験を行なうために配管した第2実施形態の配管構造を示す部分模式図である。
この配管構造では、四個所の異なる位置に非フレキシブル性の直線状波付管を所定本数連結した配管を配置し、前記四個所の直線状波付管を連結した配管の間に、ほぼ90°に曲げたフレキシブル波付管2を交互に各一本づつ両者を繋ぐように三個所に配置し、直線状波付管からなる連結配管と各フレキシブル波付管2は、フレキシブル波付管2の両端部を管継手3により直線状波付管1からなる連結配管の対応端部へ連結している。
各フレキシブル波付管2は、その中の一本を水平方向へ、他の二本を垂直方向へそれぞれそれらの曲率半径(R=6D)がほぼ等しくなるように曲げられているので、配管構造の全体は三次元方向に曲った配管ルートを構成している。また、所定本数連結した直線状配管は、直線状配管を連結したものであって、連結する本数は直線状配管の定尺により異なるが任意の本数で良く、直線状配管を複数本連結しても良く、連結しないで一本で構成しても良い。従って、本発明においては、連結した配管には、連結していない一本の直線状配管も含むものとする。配管ルートの全長は20〜30mとなるように設計されていれば良い。配管ルートにおける両端部の各直線状波付管1の端部は接続具3aにより各ボックス5へ接続している。
例えば、呼び径22φ〜28φの範囲の波付管を使用し、本発明に係る配管構造の直線性に優れる直線状波付管1を用いて前記のような配管ルート構造とした場合には、ケーブルを呼びワイヤを使用することなく円滑に通線することができる。
【0034】
比較例として、フレキシブル波付管を使用した他は第2実施形態の配管構造と同様に構成した配管構造を試作(比較例配管構造)した。
同じケーブルを用いて、呼びワイヤを使用しないで一方のボックス5側から他方のボックス5a側へ通線する通線試験(単線)を行なった。直線状波付管1を用いた第2実施形態の配管構造では、直線状配管部の蛇行がなく、通線時にケーブルと管が接触しても管の剛性が高いため管にケーブルの接触によるぶれが起こりにくいので、全長にわたって通線することができたが、比較例配管構造では一方から第3番目の曲げ配管部まで到達した後は通線不可能となった。
この相違は、直線配管部における管材の直線性が保たれているか否かによることは明らかである。
【0035】
第3実施形態
図5は、壁面等に取り付けられた接続ボックスやスイッチボックス等のボックスへ接続配管した配管構造の他の形態を示す部分正面図、図6は波付管とボックスとの接続部の部分拡大半裁断面図である。
【0036】
壁面に取り付けられたボックス(接続ボックス)5の下面の近傍は、何らかの理由によりその下方部分で各縦配管相互の間隔を離す必要があるため曲げ配管部bとなっている。
したがって、曲げ配管部bへ面するボックス5の下面側には接続具3aによりそれぞれフレキシブル波付管2,2の上端部が接続されている。
曲げ配管部bの下方へ隣接する直線配管部aには、前記フレキシブル波付管2,2相互の間隔よりも広い間隔で非フレキシブル性の直線状波付管1,1がほぼ垂直に配管され、これらの各直線状波付管1,1の上端部には、対応するフレキシブル波付管2,2が間隔を広げる方向へ曲げられた状態で各管継手3により連結されている。
【0037】
他方、ボックス5の側面側は直線配管部aであるため、当該部分には非フレキシブル性の直線状波付管1,1がほぼ水平に配管され、それらの直線状波付管1,1の端部は接続具3aによりボックス5の側面側へそれぞれ接続されている。
垂直方向に配管されて連結されている各波付管1,2内へ通線されたケーブル等(図示しない)は、水平方向へ配管されている対応する波付管1へ通線されたケーブル等とボックス5内で接続される。
【0038】
各接続具3aは以下のように構成されているのが好ましい。
各接続具3aは、図6で示すように、フランジ部33bの一方へ突出する管状ボルト部33aを一端部に有する円筒状の本体33と、当該本体33の他端部にセットされるチャックリング34と、内周部へチャックリング34を係止した状態で本体33の他端部外周へねじ合わされる締付円筒35とから構成されている。
【0039】
チャックリング34は、本体33の端部へのセット状態で内外周方向へ可撓性を有する多数の内向き爪片34aを外端部分周方向に沿って所定の間隔で有し、外周部に対応する締付円筒35の内周部へ係止される突起部を有する。
締付円筒35は、一端部内周へ前記本体33の雄ねじ部と適合する雌ねじ部35aを有するほか、当該雄ねじ部35aの基端部側内周にチャックリング34の突起部を係止する係止片35bを有し、他端部へ前記内向き爪片34aを内周方向へ締付ける締付部35cを有する。
37は通線しない状態のときにボックス5の内側から接続具3aへ閉じるために押込まれるキャップである。
【0040】
波付管2(1)をボックス5へ接続するには、先ず本体33の管状ボルト部33aをボックス5の側壁に形成された孔50へ外側から挿入し、ボックス内5へ突入した管状ボルト部33aへナット36をねじ締めて当該本体33をボックス5へ固定する。
締付円筒35をねじ締め、接続具3の外端部のチャックリング34内へ波付管2(1)の端部を押し込むと、波付管2(1)の端部外周における山部へチャックリング34の内向き爪片34aへ引っ掛かり、波付管2(1)の端部がボックス5へ接続状態で固定される。
第3実施形態の他の構成や作用効果は、第1実施形態の配管構造と同様であるのでそれらの説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る配管構造を屋内配管に適用した第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】第1実施形態の配管構造における波付管相互の連結部分の部分拡大半裁断面図である。
【図4】本発明の通線試験を行なうために配管した第2実施形態の配管構造を示す部分模式図である。
【図5】壁面等の接続ボックスへ接続配管した第3実施形態の配管構造の部分正面図である。
【図6】波付管とボックスとの接続部の部分拡大半裁断面図である。
【図7】フレキシブル波付管の曲率半径と当該波付管の内径との関係を示す模式図である。
【図8】従来の配管形態の一例を示す部分正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 直線状波付管
2 フレキシブル波付管
3 管継手
3a 接続具
4 止め具
5 ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管と、曲げ配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の端部とが管継手により連結されており、少なくとも前記直線状波付管は壁,床,柱その他の周辺部材へ固定されていることを特徴とするケーブル等保護管の配管構造。
【請求項2】
前記直線状波付管とフレキシブル波付管の材質は難燃性ないし耐燃性を有する熱可塑性合成樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル等保護管の配管構造。
【請求項3】
前記直線状波付管は山部内径が谷部外径より小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のケーブル等保護管の配管構造。
【請求項4】
前記直線状波付管とフレキシブル波付管は、それらの外周部の形状及び寸法がほぼ等しいか近似していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル等保護管の配管構造。
【請求項5】
前記直線状波付管とフレキシブル波付管は同じ材質であり、前記直線状波付管の谷部肉厚は前記フレキシブル波付管の谷部肉厚の1.8倍以上である、請求項4に記載のケーブル等保護管の配管構造。
【請求項6】
前記直線状波付管とフレキシブル波付管は異なる材質であり、前記直線状波付管の谷部肉厚に強度を乗じたものが前記フレキシブル波付管の谷部肉厚に強度を乗じたものの1.8倍以上である請求項4に記載のケーブル等保護管の配管構造。
【請求項7】
直線配管部と曲げ配管部とが配管長さ方向に沿って隣接している場合において、前記直線配管部へ熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管を配管するとともに、当該直線状波付管の前記曲げ配管部側の端部へ所定長さに切断された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の一端部を連結する工程を含むことを特徴とする、ケーブル等保護管の配管方法。
【請求項8】
直線配管部と曲げ配管部とが配管長さ方向に沿って隣接している場合において、前記直線配管部に対応する長さの熱可塑性合成樹脂よりなる非フレキシブル性の直線状波付管の端部へ前記曲げ配管部に対応する長さに切断された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の一端部を連結し、前記直線配管部へ前記直線状波付管を配管するとともに前記曲げ配管部へ前記フレキシブル波付管を配管する工程を含むことを特徴とするケーブル等保護管の配管方法。
【請求項9】
熱可塑性合成樹脂よりなる直線性に優れる非フレキシブル性の直線状波付管の端部と、曲げ配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなるフレキシブル波付管の端部とが管継手により連結され、前記直線状波付管を壁,床,柱その他の周辺部材へ固定した配管構造を有する配管に、ケーブルを呼びワイヤ無しに通線することを特徴とするケーブル等保護管へのケーブルの通線方法。
【請求項10】
四箇所の異なる位置に非フレキシブル性の直線状波付管を所定本数連結した配管を配置し、前記四個所の直線状波付管を連結した配管の間に、ほぼ90゜に曲げたフレキシブル波付管を交互に各一本づつ両者を繋ぐように三箇所に配置し、両者の管端部を管継手により互いに連結した配管を、全長約20〜30mに全体として三次元方向へ配管した配管ルートの両端部へボックスを接続した配管構造において、ケーブルを呼びワイヤ無しに通線することを特徴とするケーブル等保護管の三次元配管ルートへのケーブル通線方法。
【請求項11】
請求項10に記載の三次元配管ルートへのケーブル通線方法に用いる直線状波付管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178271(P2008−178271A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11595(P2007−11595)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(592091529)東光電気工事株式会社 (10)
【出願人】(501314396)古河樹脂加工株式会社 (26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】