説明

ゲート駆動回路への信号伝送方式

【課題】電力変換器の各アーム毎に複数個直列接続される半導体スイッチング素子にオン,オフ信号を供給する場合に、各ゲート駆動回路を互いに縦続接続して伝送により順次供給する構成とすることで、絶縁トランスの容量を小さくし得るようにする。
【解決手段】電力変換器の各アーム毎に、例えばIGBT1〜4を複数個直列接続し、低圧側のゲート駆動回路24から高圧側ゲート駆動回路21まで、絶縁トランス14〜11を介し制御装置10から順々にオン,オフ信号を伝送する構成とすることにより、高圧側の絶縁トランス11の一次巻線と二次巻線間に印加される電圧を従来方式のものよりも低減させ、絶縁トランスの小容量化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電圧駆動型半導体素子を各アーム当り複数個直列に接続して構成される電力変換装置、特に電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路への信号伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
図16に、各アームに電圧駆動型半導体素子が複数個直列接続された一般的な電力変換装置の例を示す。
図16において、77は3相交流入力電源、78は整流回路、79は平滑コンデンサ、80〜85はアーム当り複数個直列接続されたIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のような電圧駆動型半導体素子、86はモータ等の負荷である。各電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路(GDU)は、異なる基準電位で動作しているため、ゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し、各ゲート駆動装置にオン信号およびオフ信号を伝送することが必要となる。
【0003】
図17に、例えば特許文献1に開示されている1アーム分の信号伝送回路の従来例を示す。
図17において、1〜4はダイオードが逆並列に接続されたIGBT、10は制御装置、11〜15は絶縁トランス、21〜24はゲート駆動回路(GDU)、31〜34は例えば半導体整流回路、36は絶縁トランス15と半導体素子37,38と、パルス発生回路39とで構成されたDC/AC(直流/交流)変換回路である。
【0004】
図17に示すように、各IGBT1〜4にはゲート駆動回路21〜24が接続され、ゲート駆動回路21〜24の信号入力には半導体整流回路31〜34を介して、絶縁トランス11〜14の二次側が接続されている。また、制御装置10には、DC/AC変換回路36と絶縁トランス15が順に接続されている。そして、図示のように絶縁トランス11〜14の一次側が直列に接続され、その両端が絶縁トランス15の二次側に接続された構成となっている。
【0005】
図18に、例えば特許文献2に開示されている駆動回路の具体例を示す。
同図において、88はダイオードが逆並列に接続されたIGBT、89,92はIGBTをそれぞれターンオンまたはターンオフさせるためのスイッチ素子、90はゲートオン抵抗、91はゲートオフ抵抗、93はオン信号およびオフ信号を出力するインターフェイス回路である。
【0006】
図17も参照して従来例の動作につき説明する。図17において、制御装置10から出力されたオン信号(パルス信号)がDC/AC変換回路36に入力されると、オン信号はパルス発生回路39によって決まる周波数の交流信号に変換され、絶縁トランス15を介して、一次側同士が直列接続された絶縁トランス11〜14に伝送される。絶縁トランス11〜14の二次側にはそれぞれ半導体整流回路31〜34が接続されているので、交流信号が元のオン信号に復元され、それぞれのゲート駆動回路21〜24に伝送される。
【0007】
以上のことから、ゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し、各ゲート駆動回路にオン信号およびオフ信号を伝送することができる。また、DC/AC変換回路36で高周波交流に変換できるため、トランスの周波数特性により、絶縁トランス11〜14の容量を、より小さく設計することが可能となる。
また、ゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し、各ゲート駆動回路にオン信号およびオフ信号を伝送するものとして、図19に示すように、絶縁トランスの代わりにフォトカプラ51〜55を用いるものもある(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−069406号公報(第5−6頁、図1)
【特許文献2】特開2002−165435号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】特開平11−206106号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図17,18の方式ではゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し、各ゲート駆動回路にオン信号およびオフ信号を伝送すること、DC/AC変換回路36で信号を高周波交流に変換することで、絶縁トランスの容量を小さく設計することができる。しかし、図17において、例えば絶縁トランス15の一次側の対地電位が0[V]、絶縁トランス14の二次側の対地電位も0[V]で、絶縁トランス11の二次側の対地電位はVCE4=VCE3=VCE2=VCE1=VCE[V]とすると、絶縁トランス14の一次〜二次間に印加される電圧は0V、絶縁トランス11の一次〜二次間に印加される電圧は3VCE[V]で、絶縁トランス11に必要な耐圧は絶縁トランス14よりも高くなる。なお、このような点は図17の場合も同様で、信号絶縁回路の必要耐圧は4VCE[V]となる。
【0009】
以上のことから、特に高電圧大容量の電力変換装置の場合には、絶縁耐圧を確保するために、高電圧側の絶縁トランスなどの信号絶縁回路の容量を大きくしなければならず、装置が大型化するという問題がある。
したがって、この発明の課題は、ゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し、各ゲート駆動回路にオン信号およびオフ信号を伝送する場合に、絶縁トランスなどの信号絶縁回路の容量を大きくすることなく絶縁を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、各アームにはゲート駆動回路によりそれぞれ駆動される電圧駆動型半導体素子がn(2以上の整数)個直列接続され、前記ゲート駆動回路の信号入力側には整流回路を介して絶縁トランスの二次側がそれぞれ接続され、その各絶縁トランスを介して各ゲート駆動回路に制御装置からのオン,オフ信号を順次伝送する信号伝送回路を有し、最も低電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子を1段目とし、最も高電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子をn段目として、このn段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの一次側と、n−1段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの二次側とを接続し、以下同様の順序で1段目まで接続し、この1段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの一次側にはDC/AC変換回路を介して前記制御装置を接続し、1段目のゲート駆動回路からn段目のゲート駆動回路へ順々に信号を伝送することを特徴とする。
【0011】
上記請求項1の発明においては、前記DC/AC変換回路の交流出力側を、1段目の代わりにn段目の絶縁トランスの一次側に接続し、n段目の絶縁トランスの二次側とn−1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様に1段目まで接続することができ(請求項2の発明)、または、前記DC/AC変換回路の交流出力側を、1段目の代わりに2段目〜n−1段目のうちのいずれか1つであるm段目の絶縁トランスの一次側に接続し、そのm段目の絶縁トランスの二次側にm+1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様にしてn段目まで接続するとともに、前記m段目の絶縁トランスの二次側にm−1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様にして1段目まで接続することができる(請求項3の発明)。
また、請求項1〜3のいずれかの発明においては、前記制御装置とDC/AC変換回路とを光によって結合することができる(請求項4の発明)。
【0012】
請求項5の発明では、各アームにn(3以上の整数)個直列接続される電圧駆動型半導体素子に対し、制御装置からの信号を絶縁伝送する信号絶縁回路と、この信号絶縁回路からの信号に基いて前記各電圧駆動型半導体素子を駆動する駆動回路と、各電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させるタイミング調整回路とを接続するとともに、最も低電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子を1段目とし、最も高電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子をn段目として、そのm(2〜n−1)段目の電圧駆動型半導体素子に対応するm段目の信号絶縁回路の入力側には、前記制御装置からの信号を受けるインターフェイス回路を接続し、前記m段目の信号絶縁回路の出力側には、それ以外の段の電圧駆動型半導体素子に対応する信号絶縁回路の入力側を接続することを特徴とする。
【0013】
上記請求項5の発明においては、(1〜m−1)段目と(m+1〜n)段目に前記電圧駆動型半導体素子が各2段以上あるときは、前記m段目の信号絶縁回路の出力側にはa(1〜m−1のうちのいずれか)段目とb(m+1〜nのうちのいずれか)段目の電圧駆動型半導体素子に対応するa段目,b段目の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続し、このa段目の信号絶縁回路の出力側には1〜m−1の中でa段目以外の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続し、前記b段目の信号絶縁回路の出力側にはm+1〜nの中でb段目以外の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続することができる(請求項6の発明)。
【0014】
請求項7の発明では、各アームにn(3以上の整数)個直列接続される電圧駆動型半導体素子に対し、電圧駆動型半導体素子を駆動する駆動回路と、電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させるタイミング調整回路とをそれぞれ設けるとともに、m段目(2〜n−1段目のうちのいずれか)の駆動回路の信号入力には光信号を電気信号に変換するO/E変換回路の出力を接続し、m段目以外の駆動回路の信号入力には、信号を絶縁して伝送する信号絶縁回路の出力を接続し、前記O/E変換回路の出力と前記信号絶縁回路の入力とを接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4の発明によれば、電圧駆動型半導体素子を各アーム当りn個直列に接続した、電力変換装置のゲート駆動回路にオン,オフ信号を伝送するに当り、入力信号を高周波交流信号に変換し、絶縁トランスを介して1段目のゲート駆動回路からn段目のゲート駆動回路まで、またはn段目のゲート駆動回路から1段目のゲート駆動回路まで、順次信号を伝達供給することにより、絶縁トランスの一次,二次間に印加される電圧を低減し、絶縁トランスの容積を小さくできるようにする。これにより、高電圧大容量電力変換装置の小型化,低コスト化が可能となる。
【0016】
請求項5〜6の発明によれば、電圧駆動型半導体素子を各アーム当りn個直列に接続した、電力変換装置のゲート駆動回路にオン,オフ信号を伝送するに当り、m(2〜n−1)段目のIGBTの電位を基準とし、入力信号をm段目の信号絶縁回路を介して低電圧側および高電圧側のゲート駆動回路に分岐伝送することにより、信号絶縁回路の絶縁耐圧を低くし得るだけでなく、伝送遅れを最小限に抑えることができる。これにより、高電圧大容量電力変換装置の小型化,低コスト化が可能となる。
請求項7の発明によれば、m段目(2段目〜n−1段目のいずれか)のゲート駆動回路(基準電位)にO/E変換器を接続し、このO/E変換器にて光信号から電気信号に変換された制御信号を、低電圧側および高電圧側の各ゲート駆動回路に信号絶縁回路を介して分岐伝送することで、各信号絶縁回路の絶縁耐圧を低く設計することができる。これにより、高電圧大容量電力変換装置の小型化,低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す回路構成図で、IGBTが4直列の例である。
図17の従来例と同様に、各IGBT1〜4にはゲート駆動回路21〜24が接続され、ゲート駆動回路21〜24の信号入力には半導体整流回路31〜34を介して、絶縁トランス11〜14の二次側が接続され、制御装置10にはDC/AC変換回路36と1段目の絶縁トランス14が順に接続されている。
従って、1段目の絶縁トランス14の二次側に2段目の絶縁トランス13の一次側を接続し、2段目の絶縁トランス13の二次側に3段目の絶縁トランス12の一次側を接続し、3段目の絶縁トランス12の二次側に4段目の絶縁トランス11の一次側を接続した信号伝送回路を構成した点が特徴と言える。
【0018】
その動作について、図1を参照して説明する。
図1において、制御装置10から出力されたオン信号(パルス信号)が、DC/AC変換回路36に入力されると、パルス発生回路39によって決まる周波数の交流信号に変換される。交流信号に変換されたオン信号は、絶縁トランス14と半導体整流回路34を介して、1段目のゲート駆動回路24にオン信号が伝達される。これと同時に絶縁トランス13の一次側にオン信号が伝送され、絶縁トランス13を介して2段目のゲート駆動回路23にオン信号が伝達される。このようにして、1段目のゲート駆動回路24から4段目のゲート駆動回路21まで、順々にオン信号が伝送される。なお、オフ信号も上記と同様に伝送される。
【0019】
いま、図1で例えば絶縁トランス14の一次側の対地電位が0[V]、二次側の対地電位も0[V]で、VCE4=VCE3=VCE2=VCE1=VCE[V]であるとすると、絶縁トランス11の一次側の対地電位は2VCE[V]、二次側の対地電位は3VCE[V]となり、絶縁トランス11の一次〜二次間に印加される電圧はVCE[V]となる。これにより、図12の場合と比較して、印加電圧が2VCE[V]だけ低くなり、絶縁トランス11に必要な絶縁耐圧を低減させることができる。その結果、高電圧側の絶縁トランスの容量を小さくすることができ、装置が大型化するという問題を回避することが可能となる。
【0020】
図2はこの発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
図1では、制御装置10およびDC/AC変換回路36をゲート駆動回路24に接続しているのに対し、ここではゲート駆動回路21に接続した点、つまり4段目の絶縁トランス11の二次側に3段目の絶縁トランス12の一次側を接続し、3段目の絶縁トランス12の二次側に2段目の絶縁トランス13の一次側を接続し、2段目の絶縁トランス13の二次側に1段目の絶縁トランス14の一次側を接続し、4段目のゲート駆動回路21から1段目のゲート駆動回路24まで、順々に信号を伝送する点が特徴である。
【0021】
図2で例えば絶縁トランス21の一次側の対地電位が0[V]、二次側の対地電位も0[V]で、VCE4=VCE3=VCE2=VCE1=VCE[V]であるとすると、絶縁トランス14の一次側の対地電位は2VCE[V]、二次側の対地電位は3VCE[V]となり、絶縁トランス14の一次〜二次間に印加される電圧はVCE[V]となる。これにより、4段目のIGBTの対地電位が低く、1段目のIGBTの対地電位が高い場合においても、絶縁トランスの容量を小さくすることができ、装置の大型化を回避することが可能となる。
【0022】
図3はこの発明の第3の実施の形態を示す構成図である。
図1では、制御装置10およびDC/AC変換回路36をゲート駆動回路24に接続しているのに対し、ここではゲート駆動回路23に接続した点、つまり2段目の絶縁トランス13の二次側に3段目の絶縁トランス12の一次側と1段目の絶縁トランス14の一次側を接続し、3段目の絶縁トランス12の二次側に4段目の絶縁トランス11の一次側を接続し、2段目のゲート駆動回路23から4段目のゲート駆動回路21および1段目のゲート駆動回路24まで、順々に信号を伝送する点が特徴である。
【0023】
図3で例えば絶縁トランス13の一次側の対地電位が0[V]、二次側の対地電位がVCE[V]になっていたとすると、絶縁トランス11〜14の一次〜二次間に印加される電圧はIGBTの1素子分となり、2段目の絶縁トランス13から1段目の絶縁トランス11と3段目の絶縁トランス12に同時に信号が伝送される。
以上のことから、絶縁トランスの容量を小さくすることが可能で、装置の大型化を回避することができるだけでなく、信号伝送を速くすることが可能となる。
【0024】
図4に図1の変形例を示す。
これは、図1に示すものに対し、制御装置10とDC/AC変換回路36との間に、E/O(電気/光)変換器28とO/E(光/電気)変換器29を設け、制御装置10とDC/AC変換回路36との間を光結合し、電気的に絶縁した点が特徴である。
このように、光で絶縁してオンオフ信号を伝送することで、装置の大型化を回避するとともに、制御装置とゲート駆動回路との絶縁を図り、誤動作を防止することが可能となる。なお、この発明は、図2,図3に示すものにも適用できることは勿論である。
【0025】
図5はこの発明の第4の実施の形態を示す構成図で、図14に示す従来例の改良型といえる。
図5に示すように、これはIGBTを5直列接続し基準電位を3段目のIGBTにした場合の例で、1〜5はダイオードが逆並列に接続されたIGBT、20はインターフェイス回路、21〜25は駆動回路、41〜45は各電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させる機能を持つタイミング調整回路、51〜55はフォトカプラ等の信号絶縁回路、61,62は直流電源、66,67はMOSFET、71はロジックICである。
【0026】
図5に示すように、各IGBT1〜5にはタイミング調整回路41〜45を介して駆動回路21〜25が接続され、駆動回路21〜25の信号入力には信号絶縁回路51〜55がそれぞれ接続されている。3段目の信号絶縁回路53以外の信号絶縁回路の入力はMOSFET67とともに直列に接続され、その両端には直流電源62が接続されている。MOSFET67のゲート端子はロジックIC71を介して3段目の信号絶縁回路53の出力に接続されている。そして、3段目の信号絶縁回路53の入力とMOSFET66のゲート端子と直流電源61のマイナス端子にインターフェイス回路20の出力が接続され、インターフェイス回路20の入力にはオン,オフ信号が入力される構成となっている。
【0027】
その動作について説明する。
図示されない制御装置から信号を受けたインターフェイス回路20より出力されたオン信号(パルス信号)は、MOSFET66のゲート端子に入力され、MOSFET66がオンする。MOSFET66がオンすると、直流電源61を電源として3段目の信号絶縁回路53が動作し、3段目の駆動回路23に信号が絶縁伝送される。これと同時に3段目の信号絶縁回路53から出力されたオン信号が、ロジックIC71を介してMOSFET67のゲート端子に入力され、MOSFET67がオンする。
【0028】
MOSFET67がオンすると、直流電源62を電源とする3段目以外の駆動回路21,22,24,25に信号が絶縁伝送される。このとき、3段目の信号絶縁回路53の出力に対して、3段目以外の信号絶縁回路51,52,54,55の出力が遅れることに対して、タイミング調整回路41〜45で調整することにより、各IGBT1〜5のスイッチングタイミングを一致させることができる。このことから、ゲート駆動装置ごとに絶縁を確保しつつ、オン,オフ信号を伝送することが可能となる。
【0029】
いま、例えば信号絶縁回路53の入力側の対地電位が0[V]、信号絶縁回路55の出力側の対地電位が0[V]で、VCE1=VCE2=VCE3=VCE4=VCE5=VCEとすると、信号絶縁回路53の出力側の対地電位が2VCE[V]、信号絶縁回路55の入力側の対地電位が2VCE[V]となるため、信号絶縁回路55と53の入力〜出力間に印加される電圧は2VCE[V]となる。このことにより、従来例(4VCE[V])と比較して印加電圧が低くなるため、信号絶縁回路に必要な絶縁耐圧は低くなる。このように、(2段目〜n−1段目)の中のいずれかのIGBTの電位を基準として、信号を絶縁伝送することにより、信号絶縁回路に必要な絶縁耐圧を低くすることができ、さらに信号絶縁回路による伝送遅れを最小限に抑えることが可能になる。
【0030】
図6に図5の第1変形例を示す。これは図5の駆動回路とタイミング調整回路の接続位置を入れ替えただけで、基本的には図5と同じなので詳細は省略する。
図7に図5の第2変形例を示す。これは、タイミング調整回路として図示のような磁気結合回路41a,42a,43a,44aを用いる例である(詳細は、必要ならば、例えば特開2002−204578号公報を参照されたい)。
【0031】
図8に図5の第3変形例を示す。図5ではIGBTを5直列とし第3段目を基準電位としたが、ここではIGBTを4直列とし第2段目を基準電位としたもので、基本的には図5と同じなので詳細は省略する。
図9に図5の第4変形例を示す。これは、図5の信号絶縁回路として絶縁トランスを用いる他は図5と同様なので、詳細は省略する。
【0032】
図10はこの発明の第5の実施の形態を示す構成図で、IGBTを7直列接続し基準電位を4段目のIGBTにするとともに、新たな基準電位を2段目と6段目のIGBTにそれぞれ設けて信号分岐数を増やした場合の例である。
図10において、1〜7はダイオードが逆並列に接続されたIGBT、20はインターフェイス回路、21〜27は駆動回路、41〜47は各電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させる機能を持つタイミング調整回路、51〜55はフォトカプラ等の信号絶縁回路、61〜64は直流電源、66〜69はMOSFET、71〜73はロジックICである。
【0033】
図10に示すように、各IGBT1〜7にはタイミング調整回路41〜47を介して駆動回路21〜27が接続され、駆動回路21〜27の信号入力には信号絶縁回路51〜57がそれぞれ接続されている。1段目の信号絶縁回路57の入力と、3段目の信号絶縁回路55の信号絶縁回路の入力はMOSFET69とともに直列に接続され、その両端には直流電源64が接続されている。MOSFET69のゲート端子はロジックIC73を介して2段目の信号絶縁回路56の出力に接続されている。5段目の信号絶縁回路53の入力と、7段目の信号絶縁回路51の入力はMOSFET68とともに直列に接続され、その両端には直流電源63が接続されている。MOSFET68のゲート端子は、ロジックIC72を介して6段目の信号絶縁回路52の出力に接続されている。
【0034】
2段目の信号絶縁回路56の入力と、6段目の信号絶縁回路52の入力は、MOSFET67とともに直列に接続され、その両端には直流電源62が接続されている。MOSFET67のゲート端子は、ロジックIC71を介して4段目の信号絶縁回路54の出力に接続されている。そして、4段目の信号絶縁回路54とMOSFET66を直列に接続し、その両端には直流電源61が接続され、MOSFET66のゲート端子と直流電源61のマイナス端子にインターフェイス回路20の出力が接続され、インターフェイス回路20の入力にはオン,オフ信号が入力される構成となっている。
【0035】
動作について説明する。
図示されない制御装置から信号を受けたインターフェイス回路20より出力されたオン信号(パルス信号)は、MOSFET66のゲート端子に入力され、MOSFET66がオンする。MOSFET66がオンすると、直流電源61を電源として4段目の信号絶縁回路54が動作し、4段目の駆動回路24に信号が絶縁伝送される。これと同時に4段目の信号絶縁回路54から出力されたオン信号が、ロジックIC71を介してMOSFET67のゲート端子に入力され、MOSFET67がオンする。MOSFET67がオンすると、直流電源62を電源とする2段目の信号絶縁回路56と6段目の信号絶縁回路52が動作し、2段目の駆動回路26と6段目の駆動回路22に信号が絶縁伝送される。
【0036】
同時に、2段目の信号絶縁回路56から出力されたオン信号が、ロジックIC73を介してMOSFET69のゲート端子に入力され、MOSFET69がオンする。MOSFET69がオンすると、直流電源64を電源とする1段目の信号絶縁回路57と3段目の信号絶縁回路55が動作し、1段目の駆動回路27と3段目の駆動回路25に信号が絶縁伝送され、さらに6段目の信号絶縁回路52から出力されたオン信号が、ロジックIC72を介してMOSFET68のゲート端子に入力され、MOSFET68がオンする。MOSFET68がオンすると、直流電源63を電源とする5段目の信号絶縁回路53と7段目の信号絶縁回路51が動作し、5段目の駆動回路23と7段目の駆動回路21に信号が絶縁伝送される。また、信号絶縁回路による信号の伝送遅れは、図5の場合と同様に、タイミング調整回路41〜47で調整することにより。各IGBTのスイチングタイミングを一致させることが可能となる。
【0037】
いま、例えば信号絶縁回路54の入力側の対地電位が0[V]、信号絶縁回路57の出力側の対地電位が0[V]で、VCE1=VCE2=VCE3=VCE4=VCE5=VCE6=VCE7=VCEとすると、4段目の信号絶縁回路54の入力〜出力間に印加される電圧は3VCE[V]、2段目の信号絶縁回路56と6段目の信号絶縁回路52の入力〜出力間に印加される電圧は2VCE[V]、1段目の信号絶縁回路57と、3段目の信号絶縁回路55と、5段目の信号絶縁回路53と、7段目の信号絶縁回路51の入力〜出力間に印加される電圧はVCE[V]となる。このことにより、従来例(6VCE[V])と比較して印加電圧が低くなるため、信号絶縁回路に必要な絶縁耐圧は低くなる。
【0038】
このように、(2段目〜n−1段目)の中でm段目のIGBTの電位を基準とし、新たに(2段目〜m−1段目)の中と、(m+1段目〜n−1段目)の中にそれぞれ基準電位を設けて信号を絶縁伝送することにより、信号絶縁回路に必要な絶縁耐圧を低くすることができ、さらに信号絶縁回路による伝送遅れを最小限に抑えることが可能になる。その結果、高電圧大容量電力変換装置の小型化,低コスト化が可能となる。なお、図10の信号絶縁回路として、絶縁トランスを用いても機能,作用等は全く同様である。
【0039】
図11はこの発明の第6の実施の形態を示す構成図で、IGBTを5直列接続し基準電位を3段目のIGBTにするとともに、信号絶縁回路としてフォトカプラを用いた場合の例である。
図11において、1〜5はダイオードが逆並列に接続されたIGBT、21〜25は駆動回路、29は光信号を電気信号に変換するO/E変換器、41〜45は各電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させるタイミング調整回路、51,52,54,55はフォトカプラ(信号絶縁回路)、62は直流電源、67はMOSFET、71はロジックICを示す。
【0040】
図11のように、3段目のIGBTにはタイミング調整回路43、駆動回路23およびO/E変換器29が順に接続され、それ以外のIGBT1,2,4,5にはタイミング調整回路41,42,44,45、駆動回路21,22,24,25およびフォトカプラ51,52,54,55がそれぞれ接続されている。フォトカプラ51,52,54,55の入力はMOSFET67とともに直列に接続され、その両端には直流電源62が接続されている。MOSFET67のゲート端子は、ロジックIC71を介してO/E変換器29に接続されている。そして、O/E変換器29に光ケーブル等を接続し、制御装置からのオン・オフ光信号を入力するように構成されている。
【0041】
図11の動作を説明する。
いま、ゲート駆動装置にオン・オフ光信号が入力されると、O/E変換器29で電気信号に変換され、そのオン信号(ハイレベル信号)が3段目の駆動回路23に入力される。これと同時に、ロジックIC71によってMOSFET67のゲート端子にローレベル信号が入力され、MOSFET67がオフする。MOSFET67がオフすると、直流電源62からフォトカプラ51,52,54,55の入力に電流が流れないので、フォトカプラ51,52,54,55の出力にハイレベル信号が絶縁伝送され、駆動回路21,22,24,25にオン信号が入力される。
【0042】
また、O/E変換器29の出力信号に対し、フォトカプラ51,52,54,55の出力信号が遅れることに対して、タイミング調整回路41,42,44,45で調整することによって、各IGBT1〜5のスイッチングタイミングを一致させることが可能となる。このことから、ゲート駆動回路ごとに絶縁を確保し各IGBT1〜5にオン・オフ信号を伝送することができる。
【0043】
図11において、例えばO/E変換器29の出力の対地電位が2VCE[V]になっているとすると、VCE1=VCE2=VCE3=VCE4=VCE5=VCE[V]としたとき、フォトカプラ52,54の入力〜出力間に印加される電圧はVCE[V]、フォトカプラ51,55の入力〜出力間に印加される電圧は2VCE[V]となる。このことにより、図19に示す従来例(4VCE[V])と比較して印加電圧が低くなるため、信号絶縁回路(フォトカプラ)に必要な絶縁耐圧は低くなる。このように、(2段目〜n−1段目)の中のいずれかのIGBTを基準電位とし、その基準電位にO/E変換器29を接続し、制御信号を各ゲート駆動回路に信号絶縁回路を介して分岐伝送することにより、信号絶縁回路に必要な絶縁耐圧を低くすることができ、さらには信号絶縁回路による伝送遅れを最小限に抑えることができる。なお、この例でも、駆動回路とタイミング調整回路の接続位置を入れ替えても、効果が変わることはない。
【0044】
図12に図11の第1変形例を示す。
これは図7と同じく、タイミング調整回路として磁気結合回路41a,42a,43a,44aを用いるもので、その他は図11と同様なので詳細は省略する。
図13に図11の第2変形例を示す。
これはIGBTが4直列に接続され、基準電位(O/E変換器を接続)を2段目のIGBTとする他は図11と同様なので詳細は省略する。
【0045】
図14に図11の第3変形例を示す。
これは図11の信号絶縁回路として、図1〜4のような絶縁トランス11,12,14,15を用いるもので、その他は図11と同様なので詳細は省略する。
図15に図11の第4変形例を示す。
これは図11の信号絶縁回路(フォトカプラ)を、O/E変換器29の出力に並列接続した他は図11と同様なので詳細は省略する。
【0046】
図1〜4では37,38を半導体素子とし、31〜34を半導体整流回路としたが、これに限らないのは勿論である。また、図5〜9においても、制御装置とインターフェイス回路との間を、図4と同じく光信号で結合できるのは云う迄もない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す回路図
【図2】この発明の第2の実施の形態を示す回路図
【図3】この発明の第3の実施の形態を示す回路図
【図4】図1の変形例を示す回路図
【図5】この発明の第4の実施の形態を示す回路図
【図6】図5の第1変形例を示す回路図
【図7】図5の第2変形例を示す回路図
【図8】図5の第3変形例を示す回路図
【図9】図5の第4変形例を示す回路図
【図10】この発明の第5の実施の形態を示す回路図
【図11】この発明の第6の実施の形態を示す回路図
【図12】図11の第1変形例を示す回路図
【図13】図11の第2変形例を示す回路図
【図14】図11の第3変形例を示す回路図
【図15】図11の第4変形例を示す回路図
【図16】電力変換装置の一般的な例を示す回路図
【図17】信号伝送方式の従来例を示す回路図
【図18】ゲート駆動回路例を示す回路図
【図19】信号伝送方式の別の従来例を示す回路図
【符号の説明】
【0048】
1〜7…IGBT、10…制御装置、11〜15…絶縁トランス、20…インターフェイス回路、21〜27…ゲート駆動回路、28…E/O(電気/光)変換器、29…O/E(光/電気)変換器、31〜34…半導体整流回路、36…DC/AC変換回路、37,38…半導体スイッチング素子、39…パルス発生回路、41〜47…タイミング調整回路、41a〜44a…磁気結合回路、51〜57…信号絶縁回路(フォトカプラ)、61〜64…は直流電源、66〜69…MOSFET、71〜73…ロジックIC。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各アームにはゲート駆動回路によりそれぞれ駆動される電圧駆動型半導体素子がn(2以上の整数)個直列接続され、前記ゲート駆動回路の信号入力側には整流回路を介して絶縁トランスの二次側がそれぞれ接続され、その各絶縁トランスを介して各ゲート駆動回路に制御装置からのオン,オフ信号を順次伝送する信号伝送回路を有し、最も低電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子を1段目とし、最も高電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子をn段目として、このn段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの一次側と、n−1段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの二次側とを接続し、以下同様の順序で1段目まで接続し、この1段目の電圧駆動型半導体素子のゲート駆動回路に接続された絶縁トランスの一次側にはDC/AC変換回路を介して前記制御装置を接続し、1段目のゲート駆動回路からn段目のゲート駆動回路へ順々に信号を伝送することを特徴とするゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項2】
前記DC/AC変換回路の交流出力側を、1段目の代わりにn段目の絶縁トランスの一次側に接続し、n段目の絶縁トランスの二次側とn−1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様に1段目まで接続することを特徴とする請求項1に記載のゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項3】
前記DC/AC変換回路の交流出力側を、1段目の代わりに2段目〜n−1段目のうちのいずれか1つであるm段目の絶縁トランスの一次側に接続し、そのm段目の絶縁トランスの二次側にm+1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様にしてn段目まで接続するとともに、前記m段目の絶縁トランスの二次側にm−1段目の絶縁トランスの一次側を接続し、以下同様にして1段目まで接続することを特徴とする請求項1に記載のゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項4】
前記制御装置とDC/AC変換回路とを光によって結合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項5】
各アームにn(3以上の整数)個直列接続される電圧駆動型半導体素子に対し、制御装置からの信号を絶縁伝送する信号絶縁回路と、この信号絶縁回路からの信号に基いて前記各電圧駆動型半導体素子を駆動する駆動回路と、各電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させるタイミング調整回路とを接続するとともに、最も低電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子を1段目とし、最も高電圧側に接続された電圧駆動型半導体素子をn段目として、そのm(2〜n−1)段目の電圧駆動型半導体素子に対応するm段目の信号絶縁回路の入力側には、前記制御装置からの信号を受けるインターフェイス回路を接続し、前記m段目の信号絶縁回路の出力側には、それ以外の段の電圧駆動型半導体素子に対応する信号絶縁回路の入力側を接続することを特徴とするゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項6】
(1〜m−1)段目と(m+1〜n)段目に前記電圧駆動型半導体素子が各2段以上あるときは、前記m段目の信号絶縁回路の出力側にはa(1〜m−1のうちのいずれか)段目とb(m+1〜nのうちのいずれか)段目の電圧駆動型半導体素子に対応するa段目,b段目の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続し、このa段目の信号絶縁回路の出力側には1〜m−1の中でa段目以外の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続し、前記b段目の信号絶縁回路の出力側にはm+1〜nの中でb段目以外の信号絶縁回路の入力側をそれぞれ接続することを特徴とする請求項5に記載のゲート駆動回路への信号伝送方式。
【請求項7】
各アームにn(3以上の整数)個直列接続される電圧駆動型半導体素子に対し、電圧駆動型半導体素子を駆動する駆動回路と、電圧駆動型半導体素子のスイッチングタイミングを一致させるタイミング調整回路とをそれぞれ設けるとともに、m段目(2〜n−1段目のうちのいずれか)の駆動回路の信号入力には光信号を電気信号に変換するO/E変換回路の出力を接続し、m段目以外の駆動回路の信号入力には、信号を絶縁して伝送する信号絶縁回路の出力を接続し、前記O/E変換回路の出力と前記信号絶縁回路の入力とを接続したことを特徴とするゲート駆動回路への信号伝送方式。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−109686(P2006−109686A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379230(P2004−379230)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】