説明

コネクタ自動挿抜装置及びコネクタ挿抜方法

【課題】 多数のRFコネクタを有した供試体において、供試体のRFコネクタから終端器を抜き差しする作業処理を自動化し、RF信号の電気特性試験における手作業の所要時間を短縮する自動装置を得る。
【解決手段】 終端器及びRFコネクタの端末位置を計測する画像処理装置と、終端器を把持する把持部と把持部を3次元方向に移動させる駆動部を有したロボットハンドと、計測用ケーブルを3次元方向に移動可能な計測用ハンドと、ロボットハンドにおける把持部の把持または解放動作、上記ロボットハンド及び計測用ハンドの移動動作を制御する制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波機器のRF(Radio Frequency)コネクタを自動的に挿抜する自動挿抜装置及びコネクタ挿抜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ動作状態において、実時間遅延線路の実際の遅延量を計測し、実時間遅延線路の設定値と実際の遅延量の差異を補正することにより、ビーム指向誤差の低減を可能とするアレーアンテナの測定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この種のアレーアンテナの測定方法では、各アンテナ素子に接続される送受信モジュールの、通過損失や反射損失等のRF信号の電気特性(以下、RF特性)を、直接測定することはできない。送受信モジュールには、各アンテナ素子に接続されるRF端子、送信系の増幅回路、受信系の低雑音増幅器、電力分配器や方向性結合器等が構成されており、RF端子にRF信号を入出力することによって送受信モジュールのRF特性を計測し、各モジュールの性能ばらつきを評価することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−176309号公報
【0004】
一方、無線装置の評価方法として、無線装置の同軸線の給電点に直接電力を供給するとともに、無線装置の受信電界強度を計測して、アンテナ結合による輻射状態で測定した電力値との差をアンテナ結合による損失値として求める例が知られている(例えば、特許文献2参照)。この種の無線装置では、給電点への同軸線の接続を、人手を介して行っており、計測の自動化が図られていない。
【0005】
【特許文献2】特開2000−39460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
APAA(Active Phased Array Antenna;アクティブフェーズドアレイアンテナ)の様な、複数のアンテナ素子や、アンテナ素子に接続される送受信モジュールを備えたRF機器(供試体)では、送受信モジュールの有する各RF端子において、RF特性が測定される。RF端子には送信用及び受信用の少なくとも2つのRFコネクタが装着されており、アンテナ素子面に接続される平面内には、各送受信モジュール毎に複数のRFコネクタが配列されている。この場合、RF特性を計測しない隣接するRFコネクタからの漏れによる電波干渉を防ぐため、供試体における多数のRFコネクタに終端器を装着する。終端器は全RFコネクタに全数装着しておき、ここから手作業により測定個所の終端器を1本抜いて、終端器を抜いたRFコネクタに計測用制御ケーブルを手作業で接続しRF特性を測定する。更に、測定終了後は計測用制御ケーブルを手作業で抜き、先に抜いた終端器を再び手作業で挿入していた。この際、1つのアクティブフェーズドアレイアンテナに対し、RFコネクタが数十〜数百個程度設けられており、測定時間に比して、RFコネクタから手動で終端器を抜き差しする作業に多大な時間を要するという問題があった。
【0007】
この発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、例えば複数の送受信モジュールを有しRFコネクタを多数備えたアクティブフェーズドアレイアンテナのように、多数のRFコネクタを有した供試体において、供試体のRFコネクタから終端器を抜き差しする作業処理を自動化し、RF信号の電気特性試験における手作業の所要時間を短縮する自動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるコネクタ自動挿抜装置は、終端器及びRFコネクタの端末位置を計測する画像処理装置と、終端器を把持する把持部と把持部を3次元移動させる駆動部を有したロボットハンドと、計測用ケーブルを3次元方向に移動可能な計測用ハンドと、ロボットハンドにおける把持部の把持または解放動作、ロボットハンド及び計測用ハンドの移動動作を制御する制御装置とを備え、制御装置は、画像処理装置により計測された終端器の端末位置にロボットハンドの把持部を移動して終端器を把持し、終端器を引き抜いてから退避した後、画像処理装置により計測されたRFコネクタの端末位置に計測用ハンドを移動させ、計測用ケーブルをRFコネクタに接続した後、ロボットハンドを用いて画像処理装置により計測された終端器の端末位置に退避した終端器を移動させ、再び終端器をRFコネクタに接続する制御を行うものである。
【0009】
また、この発明によるコネクタ挿抜方法は、各RFコネクタに終端器を装着した後、終端器の画像に基づいて終端器の位置計測を行うステップ、上記計測された終端器の位置にロボットハンドを移動した後、上記ロボットハンドにより終端器を把持し、上記RFコネクタから終端器を引き抜くステップ、上記終端器を引き抜いたRFコネクタの画像に基づいてRFコネクタの位置計測を行うステップ、上記終端器を引き抜いたRFコネクタに計測用ハンドにより計測用ケーブルを装着するステップ、上記計測用ケーブルを用いたRF信号の計測が完了した後、RFコネクタから計測用ケーブルを引き抜くステップ、上記計測用ケーブルを引き抜いたRFコネクタの位置に、ロボットハンドにより終端器を移動させるステップ、上記ロボットハンドにより終端器移動位置で終端器をRFコネクタに装着するステップ、の順序で、コネクタを挿抜するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、RFコネクタから自動で終端器を挿抜するとともに、自動でRF信号の計測用ケーブルを挿抜することにより、多数のRFコネクタの電気特性を自動で連続測定することができ、電気特性の試験時間短縮に繋がるとういう効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明に係る実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置について、図を用いて説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態1におけるコネクタ自動挿抜装置の構成を示すブロック図である。図において、コネクタ自動挿抜装置は、RFコネクタ13及び終端器11の位置情報を取得する画像処理装置20と、電動アクチュエータロボット1とエアスライダ2を併用して構成される2段式のロボットハンド21と、XPI−SMA変換アダプタ9を装着し計測用制御ケーブル8を取り着け取り外し可能な計測用ハンド22と、制御装置23を具備したものである。
【0013】
ロボットハンド21は、三爪チャック(3)の各爪の先端に3本のフィンガ(後述の終端器側フィンガ4)を取付けて把持部24が構成される。フィンガの内1本は終端器把持検知用光ファイバセンサ5が取付けられ、検知センサを構成する。画像処理装置20は、画像処理装置用カメラユニット10と画像処理部25から構成される。
【0014】
制御装置23は計算機により構成され、予め制御シーケンスプログラムが格納されたROMと、ROMに格納されたプログラムに基づいて制御シーケンス処理や各種演算処理を実行する制御演算プロセッサ(CPU)と、画像処理装置用カメラユニット10により計測された位置情報を読み書き可能なメモリを備えている。制御装置23は画像処理装置20、ロボットハンド21、計測用ハンド22、及び終端器把持検知用光ファイバセンサ5に接続される。また、制御装置23は計測装置26に接続される。計測装置26としては、制御装置23からの制御信号によって計測制御や計測データの信号入出力を自在に行うことが可能な波形アナライザが用いられる。計測装置26は計測用制御ケーブル8に接続される。計測用制御ケーブル8は、XPI−SMA変換アダプタ9を介して供試体12のRFコネクタに接続される。
【0015】
供試体12は、アクティブフェーズドアレイアンテナを構成する複数の送受信モジュールから構成される。供試体12は、各送受信モジュールに設けられた複数のRFコネクタを備えている。以下の説明では、RFコネクタを被測定端子13と呼ぶ。被測定端子13はプッシュオンコネクタ型のコネクタが用いられる。
各供試体12は多数(数十〜数百個程度)の被測定端子13を有する。供試体12は、コネクタ自動挿抜装置に設けられた取付台に設置されて、RF特性の自動計測が実行される。なお、RF特性の自動計測を実行する前に、全ての被測定端子13には、予め終端器11が取付けられる。また、全ての被測定端子13の位置座標の情報は、予めポジションファイルとしてROMにプログラム入力されている。
【0016】
図2は実施の形態1におけるコネクタ自動挿抜装置の詳細構造を簡易的に示した三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は把持部24を下方から見た部分詳細図である。図において、電動アクチュエータロボット1の可動部にエアスライダ2が取付けられ、エアスライダ2の先端に三爪チャック3が保持されている。電動アクチュエータロボット1は、可動部が水平面内(X軸方向、Y軸方向)及び鉛直方向(Z軸方向)の3軸方向に可動する。エアスライダ2は電動アクチュエータロボット1の可動部に対し鉛直方向(Z軸方向)に可動する。また、三爪チャック3は、水平面内で可動方向が120°間隔で異なる3つの爪31を有する。各爪31には、それぞれ終端器側フィンガ4が保持されている。3つの終端器側フィンガ4は、各爪31の移動に伴い、水平面内で相互に離間または接近するように移動する。
【0017】
また、1つの終端器側フィンガ4には、上述した通り終端器把持検知用光ファイバセンサ5が取付けられている。終端器把持検知用光ファイバセンサ5は、光ファイバ27と検知部28から構成される。検知部28は、光電変換器とCPUまたは論理回路を備えている。画像処理装置用カメラユニット10は電動アクチュエータロボット1に保持され、電動アクチュエータロボット1における可動部のZ軸可動方向と並列に設置されている。画像処理装置用カメラユニット10の下部には照明14が設けられている。照明14は、互いに離間した2箇所の位置に1つもしくは複数のLEDが、互いにV字形状を成すように傾斜配置される。V字型に配置された2箇所のLEDから発光された光は、画像処理装置用カメラユニット10のレンズ焦点位置の上方で互いに交差し、このレンズ焦点位置付近が周囲に比べて明るくなるように照射される。
【0018】
3つの終端器側フィンガ4のうち、1つには、終端器把持検知用光ファイバセンサ5が取付けられている。三爪チャック3における爪の移動に応じて、終端器側フィンガ4と終端器との距離Lが相対的に変化する。終端器11が3つの終端器側フィンガ4に把持されている状態で、光ファイバ27の端面の直下に終端器端末の上面が位置するように、光ファイバ27が終端器側フィンガ4に保持されている。終端器把持検知用光ファイバセンサ5は、光ファイバ27の端面から光を出射し、物体で反射して戻ってきた光を再び光ファイバ27の端面で受光する。光ファイバ27の端面で受光した光は検知部28に入力され、受光した光の強度が計測されて、物体すなわち終端器11の有無を検知する。例えば、検知部28に入力された光信号は光電変換により電気信号に変換される。検知部28は、光電変換後の電気信号を電圧信号に変換し、電圧の大きさに基づいて光の強度変化を求める。この電圧が所定の閾値以上であるときに、検知部28のCPUまたは論理回路が、終端器側フィンガ4に対して終端器11が所定の距離内に存在すると判断し、終端器11が被測定端子13に確実に接続されていることを検知する。また、この電圧が所定の閾値よりも小さいとき、検知部28のCPUまたは論理回路は終端器側フィンガ4に対して終端器11が所定距離以遠に位置すると判断し、終端器11の把持が解放されたことを検知する。
【0019】
計測用ハンド22は、電動アクチュエータロボット1に取付けられた計測側エアスライダ6と計測側ハンド7から構成される。計測側ハンド7は電動アクチュエータロボット1に駆動されて3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z方向)に可動する。また、エアスライダ6は鉛直方向(Z軸方向)に可動し、計測側ハンド7を電動アクチュエータロボット1に対して鉛直方向に移動させる。計測側ハンド7には、計測用制御ケーブル8が保持され、計測用制御ケーブル8の先端にはXPI−SMA変換アダプタ9が設けられている。
【0020】
また、計測用制御ケーブル8及びXPI−SMA変換アダプタ9は計測側ハンド7に保持され、計測側ハンド7の移動に応じて3軸方向に可動する。画像処理装置用カメラユニット10は、電動アクチュエータロボット1の移動に応じて2軸方向(X軸方向、Y軸方向)に可動し、終端器11及び被測定端子13のXY面内の位置座標を計測する。メモリには、予めXPI−SMA変換アダプタ9と三爪チャック3との、XY面内における相対位置座標が格納されている。勿論、この相対位置座標は、適宜校正可能なことは言うまでもない。また、XPI−SMA変換アダプタ9の3次元位置座標と、三爪チャック3の3次元位置座標は、エアスライダ6、計測側ハンド7、電動アクチュエータロボット1の駆動による3次元方向の移動に伴い、正確に計測されるように図示しない位置計測センサが設けられている。
【0021】
XPI−SMA変換アダプタ9は被測定端子13に嵌合し、XPI−SMA変換アダプタ9は被測定端子13に接続される。XPI−SMA変換アダプタ9が被測定端子13に接続されると、XPI−SMA変換アダプタ9の接続された被測定端子13を除き、それ以外の全ての被測定端子13に終端器11が取付けられる。また、XPI−SMA変換アダプタ9が何れの被測定端子13にも接続されていないときには、全ての被測定端子13に終端器11が取付けられる。XPI−SMA変換アダプタ9が被測定端子13に接続されると、計測用制御ケーブル8を通じて、計測装置26と供試体12との間でRF信号が入出力される。制御装置23は、計測装置26を通じて供試体12の通過特性や反射特性を計測する。
【0022】
この実施の形態1では、多数の被測定端子13を有する供試体12をコネクタ自動挿抜装置に接続し、全ての被測定端子13に終端器11を取付けた後、コネクタ自動挿抜装置は終端器11やXPI−SMA変換アダプタ9を手動で着脱すること無く、測定の自動化を図ることができる。従来の試験方法では、人手により制御ケーブルを接続保持した状態で、終端器の着脱や制御ケーブルの着脱を実施していたので、着脱時に手ぶれが発生し、測定再現性が低下していた。また、手動で終端器や制御ケーブルを着脱するのに伴って、作業効率が著しく悪かった。
【0023】
これに対し、実施の形態1のコネクタ自動挿抜装置では、全ての被測定端子13を終端するように終端器11を自動的に取付けるとともに、被測定端子13に対して計測用ケーブル8を自動的に接続する。これによって、多数(数十〜数百個程度)の被測定端子を有した供試体12のRF特性自動測定が可能となる。
【0024】
また、この実施の形態1のコネクタ自動挿抜装置は、Z軸アクチュエータロボット1と、計測側エアスライダ6と、計測側ハンド7と、画像処理装置用カメラユニット10を用いて、終端器11や被測定端子13の位置に基づいて終端器11やXPI−SMA変換アダプタ9を被測定端子13に接続するため、繰り返し位置決めを行う際に高い位置決め精度を確保出来る。このことから、手動で位置決めを行う場合に比べて、測定再現性の向上も可能になるという効果がある。
【0025】
一般に、終端器11の内径は終端器11の外径に対して偏芯している。このため、終端器11を被測定端子13の外径に嵌合させる際、被測定端子13の外径の中心軸に対し終端器11の外径の中心軸が位置ずれを生じる。終端器11を被測定端子13に嵌合させる際、この位置ずれによって終端器11が旨く嵌合せず、場合によってはRF特性変化を生じることもある。
この実施の形態1のコネクタ自動挿抜装置では、画像処理装置用カメラユニット10を用いて終端器端末の外径と被測定端子端末の外径を個別に計測し、両者の位置ずれ補正を行う。これによって、被測定端子13と終端器11の外径の位置ずれに伴う、嵌合不良や、RF特性変化を防止する効果がある。
【0026】
なお、計測用制御ケーブル8を取り外す際に、XPI−SMA変換アダプタ9を計測側ハンド7から取り外してしまうと、画像処理装置用カメラユニット10及び三爪チャック3とXPI−SMA変換アダプタ9との相対位置関係がずれてしまう。XPI−SMA変換アダプタ9を取付け取り外しする場合、アクチュエータロボットへの座標教示のためのティーチング作業及びポジションファイルのプログラム制御の書き換え作業が必要となる。このティーチング作業及びポジションファイルのプログラム制御の書き換え作業時間は非常に膨大なものとなる。
実施の形態1のコネクタ自動挿抜装置では、1回/日の計測装置26の0点出しのキャリブレーションを行う際、XPI−SMA変換アダプタ9から計測用制御ケーブル8を取り外す作業を容易化するために、XPI−SMA変換アダプタ9と計測用制御ケーブル8をコネクタで接続し、そのコネクタ周辺に人手で取付け取り外し作業を行うための作業スペースを設けることによって、XPI−SMA変換アダプタ9を計測側ハンド7に装着したまま計測用制御ケーブル8を取り外すことができるようにしている。すなわち、計測用制御ケーブル8をXPI−SMA変換アダプタ9から簡単に取り外し可能なように計測側ハンド7の配置形状を決めることによって、ティーチング作業を簡略化している。
【0027】
図3は、実施の形態1による図1、2のように構成されたコネクタ自動挿抜装置を用いて、終端器11及び計測用制御ケーブル8の接続動作を行う場合の、制御装置23の処理動作例を示すフロチャートである。また、図4、5は、コネクタ自動挿抜装置における動作状態の遷移を示す図である。図4(a)は画像処理装置用カメラユニット10により被測定端子13の終端器11の端末位置を計測している状態を示す図である。図4(b)は、把持部24を構成する3つの終端器側フィンガ4が、被測定端子13から終端器11を引き抜いている状態を示す図である。図5(a)は画像処理装置用カメラユニット10により被測定端子13の端末位置を計測している状態を示す図、図5(b)は計測側ハンド7により被測定端子13にXPI−SMA変換アダプタ9を接続している状態を示す図である。ここでは、コネクタ自動挿抜装置において、供試体12のRF特性を測定する場合を例に説明する。
【0028】
まず、手作業により、予め供試体12の全ての被測定端子13に、終端器11を装着する(ステップS1)。この場合、作業を効率化するため、全ての終端器11を一括して全ての被測定端子13に装着するために、何らかの治工具を用いても良い。
【0029】
次に、図4(a)に示すように、被測定端子13の終端器11を取り外すため、まず電動アクチュエータロボット1を水平方向(XY面内方向)に可動して、画像処理装置用カメラユニット10のカメラを、被測定端子13に接続された終端器11の上方に移動させる。照明14は、終端器11の上面を照らす。被測定端子13は水平面内で2次元配列されている。例えば、制御装置23は(I,J)番目(1≦I≦N、1≦J≦M。N、Mは2以上の正の整数。)の被測定端子13について、I=1〜N、J=1〜Mまで、順次RF特性の自動計測を実行する。終端器11を引き抜く被測定端子13の場所や順序は、予め制御装置23の制御シーケンスプログラムに規約されている。
【0030】
終端器11の上方に移動した画像処理装置用カメラユニット10は、撮影したカメラ画像の信号を画像処理部25に送る。画像処理部25は、カメラ画像に基づいて終端器11の外形を認識すると、終端器11の外形の中心位置を検出し、その位置座標を計測する(ステップS2)。計測された位置座標は終端器11の端末位置に相当し、検出された中心位置の位置座標は制御装置23に送信される。終端器11の外形認識は、例えば予め設定されたパターン画像とのパターンマッチングにより行う。
【0031】
この際、検出された中心位置の位置座標が予めポジションファイルとしてプログラム入力されていた位置データに対して位置ずれしている場合、制御装置23のCPUはこのずれ量を演算して、アクチュエータロボット1を水平面内(XY面内)で移動して位置補正を掛ける。補正した位置座標は終端器11の端末位置として制御装置23のメモリに一時記憶される。
【0032】
次に、実際に終端器11を取り外すため、電動アクチュエータロボット1を所定量移動して、三爪チャック3を終端器11の端末における中心軸の上方に移動させる。この所定の移動量は予め制御装置23のメモリに格納された、画像処理装置用カメラユニット10と三爪チャック3との相対位置座標に基づいて設定される。
【0033】
この位置状態で、制御装置23は、電動アクチュエータロボット1及び終端器側エアシリンダ2をZ軸方向に高精度に位置決めして、三爪チャック3を予め設定された所定量下降させる。この際、まず終端器側エアシリンダ2をZ軸方向に可動させて、予め設定された所定位置Z1まで三爪チャック3を粗い位置決め精度で移動させる。引き続いて、電動アクチュエータロボット1をZ軸方向に可動させて、予め設定された所定位置Z2まで三爪チャック3を高い位置決め精度で移動させる。このようにして、3本の終端器側フィンガ4が終端器11を把持出来る位置まで、三爪チャック3を移動させる。終端器側エアシリンダ2を用いているのでZ軸方向の移動速度を早めることが可能となり、併せて、電動アクチュエータロボット1を用いているのでZ軸方向の位置決め精度を高くすることが可能となる。
【0034】
続いて、制御装置23は三爪チャック3を可動し、それに取付けた3本の終端器側フィンガ4が水平面内で相互接近するように移動して、図4(b)に示すように、3本の終端器側フィンガ4が終端器11を把持する(ステップS3)。
【0035】
このとき、3本の終端器側フィンガ4の内、1本に内蔵した終端器把持検知用の光ファイバセンサ5を用いて、終端器11が終端器側フィンガ4から所定距離内にあるか否かを計測することによって、把持した終端器11を確実に把持したことを検知する(ステップS4)。
【0036】
終端器11を把持した状態で、三爪チャック3と、それに取付けた3本の終端器側フィンガ4を、電動アクチュエータロボット1及び終端器側エアシリンダ2で所定量上昇させる。これによって、終端器11を被測定端子13から引き抜くとともに、被測定端子13の周辺から退避させる(ステップS5)。
【0037】
この際、最初に終端器側エアシリンダ2をZ軸方向に可動させた後、電動アクチュエータロボット1をZ軸方向に駆動させて、三爪チャック3を予め設定された所定位置まで移動させる。ここでも、終端器側エアシリンダ2及び電動アクチュエータロボット1を用いているので、Z軸方向の移動速度を早めるとともに、高い位置決め精度を得ることが可能となる。
【0038】
次に被測定端子13にXPI−SMA変換アダプタ9を挿入させるため、図5(a)のように、電動アクチュエータロボット1を可動して、画像処理装置用カメラユニット10を被測定端子13の上方に移動させる。
【0039】
被測定端子13の上方に移動した画像処理装置用カメラユニット10は、撮影したカメラ画像の信号を画像処理部25に送る。画像処理部25は、被測定端子13の外形を認識して中心位置を検出し、検出した中心位置を制御装置23に送信する。
【0040】
この際、画像処理部25で検出された被測定端子13の中心位置が予めポジションファイルとしてプログラム入力されていた位置データに対して位置ずれしている場合、制御装置23のCPUはこのずれ量を演算して、アクチュエータロボット1を水平面内(XY面内)で移動して位置補正を掛ける(ステップS6)。補正した位置座標は被測定端子13の端末位置として制御装置23のメモリに一時記憶される。
【0041】
次に、被測定端子13にXPI−SMA変換アダプタ9を挿入させるため、制御装置23は電動アクチュエータロボット1を水平面内(XY面内)で所定量移動して、XPI−SMA変換アダプタ9を被測定端子13の端末における中心軸の上方に移動させる。この所定の移動量は予め制御装置23のメモリに格納された、画像処理装置用カメラユニット10とXPI−SMA変換アダプタ9との相対位置座標に基づいて設定される。なお、XPI−SMA変換アダプタ9は、上述したように計測側ハンド7に保持固定されている。
【0042】
次いで、制御装置23は電動アクチュエータロボット1及び計測側エアシリンダ6を所定量下降させて、XPI−SMA変換アダプタ9の先端を高精度に位置決めして、被測定端子13に挿入させる(ステップS7)。この際、計測側エアシリンダ6を最初に可動してXPI−SMA変換アダプタ9を高速度でZ軸方向に移動させた後、電動アクチュエータロボット1によりXPI−SMA変換アダプタ9を高精度にZ軸方向に移動させる。
【0043】
制御装置23は、XPI−SMA変換アダプタ9を介した計測用制御ケーブル8と接続された計測装置を用いて、RF特性の自動測定を行う(ステップS8)。
【0044】
自動測定終了後、制御装置23は電動アクチュエータロボット1及び計測側エアシリンダ6を所定量上昇させて、XPI−SMA変換アダプタ9を抜く(ステップS9)。この際、電動アクチュエータロボット1を最初に可動してXPI−SMA変換アダプタ9を高精度でZ軸方向に移動させた後、計測側エアシリンダ6によりXPI−SMA変換アダプタ9を高速度にZ軸方向に移動させる(ステップS10)。
【0045】
次に、把持した終端器11を装着するため、制御装置23は電動アクチュエータロボット1を所定量移動して、三爪チャック3を被測定端子13の端末の中心線上に移動させる。
【0046】
制御装置23は電動アクチュエータロボット1及び終端器側エアシリンダ2を所定量下降させて、終端器11の先端を高精度に位置決めし、図4(b)に示すように、終端器11を被測定端子13に挿入させる(ステップS11)。この際、計測側エアシリンダ6を最初に可動してXPI−SMA変換アダプタ9を高速度でZ軸方向に移動させた後、電動アクチュエータロボット1によりXPI−SMA変換アダプタ9を高精度にZ軸方向に移動させる。
【0047】
続いて、制御装置23は三爪チャック3の3本の終端器側フィンガ4を開き、把持していた終端器11を解放させる。
【0048】
3本の終端器側フィンガ4の内、1本に内蔵した終端器把持検知用の光ファイバセンサ5を用いて、把持していた終端器11を確実に解放したか検知させる。
【0049】
更に、制御装置23は、三爪チャック3と、それに取付けた3本の終端器側フィンガ4を、電動アクチュエータロボット1及び終端器側エアシリンダ2で所定量上昇させる。
【0050】
被測定端子13が複数個ある場合、次に自動測定したい被測定端子13の上方に、画像処理装置用カメラユニット10を移動する。そして、ステップS11から再びステップS2に戻り、自動測定したい全ての被測定端子13について、上記操作を繰り返し行う。
【0051】
以上の処理フローを端的に説明すると次のステップ(1)〜(7)から成る。このステップ(1)〜(7)を順次繰り返し行うことによって、RFコネクタの挿抜とRF特性計測が連続して自動的に実行される。
(1)各RFコネクタに終端器を装着した後、終端器の画像に基づいて終端器の位置計測を行うステップ。
(2)上記計測された終端器の位置にロボットハンドを移動した後、上記ロボットハンドにより終端器を把持し、上記RFコネクタから終端器を引き抜くステップ。
(3)上記終端器を引き抜いたRFコネクタの画像に基づいてRFコネクタの位置計測を行うステップ。
(4)上記終端器を引き抜いたRFコネクタに計測用ハンドにより計測用ケーブルを装着するステップ。
(5)上記計測用ケーブルを用いたRF信号の計測が完了した後、RFコネクタから計測用ケーブルを引き抜くステップ。
(6)上記計測用ケーブルを引き抜いたRFコネクタの位置に、ロボットハンドにより終端器を移動させるステップ。
(7)上記ロボットハンドにより終端器移動位置で終端器をRFコネクタに装着するステップ。
【0052】
以上説明した通り、この発明によれば、制御装置のプログラム制御によって、画像処理装置を用いてRFコネクタに接続した終端器の位置情報を取得する。また、電動アクチュエータロボットとエアスライダを併用した2段式ロボットハンドを用いて、自動的に終端器を取付け取り外しする。更に、画像処理装置を用いてRFコネクタの位置情報を取得し、電動アクチュエータロボットとエアスライダを併用した計測用ハンドを用いて、計測用ケーブルをRFコネクタに自動的に接続する。これによって、狭ピッチの多数のRFコネクタについて、電気特性を維持しつつ、自動で連続的にRF特性の測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置における、制御装置の処理フローを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置の、コネクタ引き抜き動作を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1によるコネクタ自動挿抜装置の、計測用ケーブルの接続動作を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 電動アクチュエータロボット、2 終端器側エアスライダ、3 三爪チャック、4 終端器側フィンガ、5 終端器把持検知用光ファイバセンサ、6 計測側エアスライダ、7 計測用ハンド、8 計測用制御ケーブル、9 XPI−SMA変換アダプタ、10 画像処理装置用カメラユニット(カメラ)、11 終端器、12 供試体、13 被測定端子(RFコネクタ)、20 画像処理装置、23 制御装置(計算機)、26 計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端器及びRFコネクタの端末位置を計測する画像処理装置と、
上記終端器を把持する把持部と把持部を3次元方向に移動させる駆動部を有したロボットハンドと、
計測用ケーブルを3次元方向に移動可能な計測用ハンドと、
上記ロボットハンドにおける把持部の把持または解放動作、上記ロボットハンド及び計測用ハンドの移動動作を制御する制御装置と、
を備え、
上記制御装置は、上記画像処理装置により計測された終端器の端末位置にロボットハンドの把持部を移動して終端器を把持し、上記終端器を引き抜いてから退避した後、
上記画像処理装置により計測されたRFコネクタの端末位置に計測用ハンドを移動させ、計測用ケーブルをRFコネクタに接続した後、
上記ロボットハンドを用いて画像処理装置により計測された終端器の端末位置に退避した終端器を移動させ、再び終端器をRFコネクタに接続する制御を行う、
ことを特徴としたコネクタ自動挿抜装置。
【請求項2】
上記把持部により終端器が把持された状態を検知する検知センサを備え、
上記検知センサは、把持部に取付けられた光ファイバと光ファイバを介して光信号を入出力する検知部とを有し、検知部により検知される光量に基づいて終端器の把持の有無を検知することを特徴とした請求項1記載のコネクタ自動挿抜装置。
【請求項3】
上記把持部は、相互に接近または離間するように移動することにより、終端部を把持または解放する少なくとも三爪のチャックを有し、
上記検知センサは、上記把持部における少なくとも1本の爪に取付けられ、当該爪の移動に応じて終端器との距離が相対的に変化することを特徴とする請求項2記載のコネクタ自動挿抜装置。
【請求項4】
上記制御装置はメモリと演算部を有し、
上記画像処理装置は、カメラユニットと信号処理部を有し、
上記信号処理部はカメラユニットの撮影画像に基づいてRFコネクタの端末中心位置及びRFコネクタに装着された終端器の端末中心位置を求め、メモリにRFコネクタの端末中心位置及びRFコネクタに装着された終端器の端末中心位置を格納し、
上記演算部は、信号処理部で求められた終端器の端末中心位置とRFコネクタの端末中心位置の位置ずれ量に基づいて、終端器をRFコネクタに位置合わせする、
ことを特徴とした請求項1〜3の何れか1項に記載のコネクタ自動挿抜装置。
【請求項5】
上記ロボットハンドの駆動部は、エアスライダと電動アクチュエータを備えて構成され、
上記制御装置は、エアスライダを用いて把持部を昇降させた後、電動アクチュエータを用いてRFコネクタから終端器を挿抜させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のコネクタ自動挿抜装置。
【請求項6】
各RFコネクタに終端器を装着した後、終端器の画像に基づいて終端器の位置計測を行うステップ、
上記計測された終端器の位置にロボットハンドを移動した後、上記ロボットハンドにより終端器を把持し、上記RFコネクタから終端器を引き抜くステップ、
上記終端器を引き抜いたRFコネクタの画像に基づいてRFコネクタの位置計測を行うステップ、
上記終端器を引き抜いたRFコネクタに計測用ハンドにより計測用ケーブルを装着するステップ、
上記計測用ケーブルを用いたRF信号の計測が完了した後、RFコネクタから計測用ケーブルを引き抜くステップ、
上記計測用ケーブルを引き抜いたRFコネクタの位置に、ロボットハンドにより終端器を移動させるステップ、
上記ロボットハンドにより終端器移動位置で終端器をRFコネクタに装着するステップ、
の順序で、コネクタを挿抜するコネクタ挿抜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161994(P2008−161994A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356719(P2006−356719)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】