説明

コラーゲン合成促進剤

【課題】本発明は、グリシンとプロリンのジペプチドであるグリシルプロリンを含有するコラーゲン合成促進剤、皮膚外用剤、薬剤組成物を提供する。
【構成】グリシンとプロリンのジペプチドであるグリシルプロリンは、加齢又は疾患とともに減少するコラーゲンの合成を促進する効果を有する。特に、タイプ12コラーゲンの合成を促進し、タイプ12コラーゲンが関与する皮膚老化や眼疾患に対する予防又は改善用薬剤組成物として有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のペプチドを含有するコラーゲン合成促進剤に関し、また、タイプ12コラーゲンが関与する皮膚老化や眼疾患に対する予防又は改善用薬剤組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚は、外側から表皮及び真皮層により構成される。特に、内側を構成する真皮層は、皮膚の90%以上の体積を占め、皮膚を支える働きを担っている。そして、この真皮層の状態が、皮膚表面のはりや、表面形態に大きな影響を与えている。皮膚のシワやタルミなどの、皮膚の老化現象の要因となるのは、真皮部分が薄くなり、衰えてくることが大きく関わっているものと考えられている。
【0003】
このような、皮膚の老化を防ぐことを目的として、従来から、皮膚に対してペプチド類を使用して、皮膚の状態を向上させる試みが、いくつかなされている。例えば、ペプチド類の中でもオリゴペプチド類を配合した化粧料がシワを抑制するなどの、皮膚の老化を防止することが知られている(特許文献1)、特に、Arg−Gly−Asp−Ser及びArg−Gly−Aspの2種類のペプチドは、皮膚の角質層に作用して、乾燥皮膚を改善して、皮膚の老化を防止することが報告されている(特許文献2)。
【0004】
さらには、コラーゲンやゼラチンのコラゲナーゼによる分解物やそれらの中に含まれる、特定のペプチド(グリシルプロリルヒドロキシプロリンなど)が抗老化効果やシワ抑制効果、さらには、細胞増殖促進作用、コラーゲン産生促進作用を有することが記載されている(特許文献3及び4)。
【0005】
しかしながら、上述した加水分解コラーゲンやオリゴペプチドのシワ抑制効果以上の効果が求められていた。
【0006】
また、コラーゲンは、細胞外マトリクスを構成するタンパクのひとつであり、その分子構造や形成する集合体の構造により、多くのファミリーが存在する。そのうち、タイプ12コラーゲンは、それ自身では線維を形成することがなく、その他の線維状コラーゲンを修飾する FACIT collagenの一種であるといわれている。タイプ12コラーゲンは、真皮ではタイプ1コラーゲン線維束の構造に関与しており、組織の強度や柔軟性を与えていると考えられている(非特許文献1)。また、加齢及び紫外線照射に伴う線維芽細胞とコラーゲン線維の相互作用の変化を検討した結果、老化や紫外線により線維芽細胞のコラーゲン線維との接着や組織形成にかかわる因子が減少し、これが光老化に伴う肌のハリや弾力の低下原因の一つであることを見だした。
【0007】
最近の研究において、加齢によってタイプ12コラーゲンの発現が低下し、線維束形成能が低下して皮膚の弾力性が低下し、シワ、タルミを生じることがわかった。しかしながら、タイプ12コラーゲンを高め、皮膚の弾力性を向上させる成分が望まれているものの、このような成分は知られていない。
【0008】
また、タイプ12コラーゲンが関与した疾患には、円錐角膜などの眼疾患があり、特に角膜の再生にはタイプ12コラーゲンが重要であることが報告されている(非特許文献2)。円錐角膜の治療には、リボフラビンの点眼があるが(非特許文献3)、まだ治験例も少なく、新しい治療薬が望まれている。
【0009】
このような疾患に対する治療薬としてペプチドを利用することは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭57−2213号公報
【特許文献2】特開平2−178207号公報
【特許文献3】特開2000−309521号公報
【特許文献4】特開2001-131084号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nishiyama T et al,J Bio Chem 269,28193−28199 (1994)
【非特許文献2】Cheng EL et al,Curr Eye Res 22,333−40 (2001)
【非特許文献3】Guttman C,Ophthalmology Times. Nov 1 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の目的は、コラーゲンの合成、特にタイプ12コラーゲンの合成を高めることができるコラーゲン合成促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記のような問題点を解決するため、コラーゲンについて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するペプチドにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0015】
(1)グリシルプロリンを含有することを特徴とするコラーゲン合成促進剤。
(2)グリシルプロリンを含有することを特徴とするタイプ12コラーゲン合成促進剤。
(3)グリシルプロリンを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(4)グリシルプロリンを含有し、タイプ12コラーゲンが関与する皮膚老化及び/又は眼の疾患に対する予防又は改善用薬剤組成物。
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明において、グリシルプロリンは、グリシンとプロリンがアミド結合を介して結合したジペプチドであり、分子式はC12である。この物質は、そのまま用いても良いし、塩の状態で用いることもできる。塩としては、製剤上許容できる、酸付加塩や塩基付加塩などが挙げられる。具体的には、酸付加塩としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸の塩や、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸の塩が挙げられる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩や、アンモニウム、エタノールアミンなどのアミン類の塩が挙げられる。
【0018】
上記の物質は、化学的に合成したり、コラーゲンなどのタンパクを加水分解し、分離精製する方法などが挙げられる。化学的に合成する場合には、液相法又は固相法などの通常の合成方法によって行うことができる。固相法の場合、ポリマー性の固相支持体へペプチドのC末端側(カルボキシル末端側)からそのアミノ酸残基に対応したL体のアミノ酸を順次ペプチド結合によって結合して行くのが良い。そして、そのようにして得られたペプチドは、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素などを用いてポリマー性の固相支持体から切断した後、アミノ酸側鎖の保護基を除去し、逆相系のカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーなどを用いた周知の方法で精製することができる。また、本物質は、シグマアルドリッチジャパン株式会社や株式会社ペプチド研究所などから市販されているものを用いることができる。
【0019】
本発明のペプチドは、周知の精製法、例えば、ゲル濾過法や逆相クロマトグラフィー法などを、単独又は組み合わせて用いることにより必要に応じて精製することができる。
【0020】
本発明のペプチドは、食品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができる。その剤形として、皮膚外用剤として用いる場合は、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤など皮膚に適用されるものが挙げられる。また、点眼薬や洗眼液など眼に適用する外用剤として用いることができる。また、経口用に用いる場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤などである。また、注射液、座薬などとして用いることができる。これらの剤形以外の周知な剤形を用いることができ、用途によって適宜選択すれば良い。
【0021】
本発明のペプチドを皮膚外用剤や点眼用外用剤などに用いる場合、ペプチドの配合量は剤形や用途などに応じて適宜選択することが可能であり、一般的には、剤全体に対して0.00001〜10重量%であることが好ましく、0.0001〜1重量%が最も好ましい。この配合量が、剤全体に対して0.00001重量%未満であると、効果を十分に発揮することが困難であり、好ましくない。また、10重量%を超えて配合しても、配合量の増加に見合った、効果の増強を見込みにくく好ましくない。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0022】
本発明のペプチドは、これらの具体的な形態に応じて、そのまま固体、粉末のまま使用しても良く、溶液として用いてもよい。また、効果を損なわない範囲内で、外用剤や医薬組成物に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤などの成分を配合することができる。
【0023】
本発明のペプチドを外用剤以外に用いる場合、ペプチドの摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などに応じて、適宜選択することが可能であり、一般的には、0.1〜5,000mg/日であることが好ましく、1〜500mg/日が最も好ましい。また、1日1回から数回投与できる。もちろん前記したように、投与方法や投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0024】
本発明のペプチドは、これらの具体的な形態に応じて、そのまま使用しても良く、効果を損なわない範囲内で、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤などの希釈剤を用いることができる。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ラウリン脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコールなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のグリシルプロリンは、コラーゲン合成促進剤、特にタイプ12コラーゲン合成促進剤として極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を詳細に説明するため、実施例として処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【実施例1】
【0027】
処方例1 ローション
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.5部
2.ジグリセリン 0.5部
3.1,3−ブチレングリコール 8.0部
4.グリセリン 2.0部
5.キサンタンガム 0.02部
6.クエン酸 0.01部
7.クエン酸ナトリウム 0.1部
8.エタノール 5.0部
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1部
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1部
11.香料 適量
12.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分1〜7、12と、成分8〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合しろ過して製品とする。
【0028】
処方例2 クリーム
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.5部
2.スクワラン 5.5部
3.オリーブ油 3.0部
4.ステアリン酸 2.0部
5.ミツロウ 2.0部
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5部
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0部
8.ベヘニルアルコール 1.5部
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5部
10.1,3−ブチレングリコール 8.5部
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05部
13.香料 0.1部
14.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10〜12、14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加え、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分13、次いで少量の14に溶解した1を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0029】
処方例3 乳液
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.05部
2.スクワラン 5.0部
3.オリーブ油 5.0部
4.ホホバ油 5.0部
5.セタノール 1.5部
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0部
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0部
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート
(20E.O.) 2.0部
9.プロピレングリコール 1.0部
10.グリセリン 2.0部
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
12.香料 0.1部
13.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分9〜11、13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分12、次いで少量の13に溶解した1を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0030】
処方例4 ゲル剤
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.1部
2.エタノール 5.0部
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1部
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1部
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0部
7.グリセリン 5.0部
8.キサンタンガム 0.1部
9.カルボキシビニルポリマー 0.2部
10.水酸化カリウム 0.2部
11.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2〜5と、成分1、6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合しろ過して製品とする。
【0031】
処方例5 軟膏
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.2部
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0部
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0部
4.流動パラフィン 5.0部
5.セタノール 6.0部
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1部
7.プロピレングリコール 10.0部
8.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分6〜8に加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化し、45℃で少量の8に溶解した1を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0032】
処方例6 パック
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.01部
2.ポリビニルアルコール 12.0部
3.エタノール 5.0部
4.1,3−ブチレングリコール 8.0部
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5部
7.クエン酸 0.1部
8.クエン酸ナトリウム 0.3部
9.香料 適量
10.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分1〜10を均一に溶解し製品とする。
【0033】
処方例7 ファンデーション
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.1部
2.ステアリン酸 2.4部
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート
(20E.O.) 1.0部
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0部
5.セタノール 1.0部
6.精製ラノリン 2.0部
7.流動パラフィン 3.0部
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5部
9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1部
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1部
11.ベントナイト 0.5部
12.プロピレングリコール 4.0部
13.トリエタノールアミン 1.1部
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2部
15.二酸化チタン 8.0部
16.タルク 4.0部
17.ベンガラ 1.0部
18.黄酸化鉄 2.0部
19.香料 適量
20.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19、次いで小量の20に溶解した1を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
処方例8 浴用剤
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 0.005部
2.炭酸水素ナトリウム 50.0部
3.黄色202号 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする。
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0035】
処方例9 顆粒剤
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 5.0部
2.還元麦芽糖水あめ 35.0部
3.微結晶セルロース 60.0部
[製造方法]成分1〜3に70w/w%エタノールを適量加えて練和し、押出し造粒した後、乾燥して顆粒剤を得る。当該顆粒を1回1g内用する。
【0036】
処方例10 点眼剤
[処方] 配合量
1.グリシルプロリン 1.0部
2.コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.50部
3.ホウ酸 0.13部
4.ホウ砂 0.75部
5.d−カンフル 0.005部
6.塩化ナトリウム 適量
7.1N−塩酸水溶液 適量
8.1N−水酸化ナトリウム水溶液 適量
9.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分1〜9を混合し、pH7.4の澄明な点眼薬を得る。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0038】
実験例1 タイプ12コラーゲン合成試験
コンフルエントになったNB1RGB細胞に、本発明のペプチドを1μg/mLの濃度で含む未血清DMEM培地を加え、24時間培養を行った。陽性対象には、TGF−β1を1ng/mL添加した。その後、NB1RGB細胞から抽出した総RNAを基にRT−PCR法によりタイプ12コラーゲンmRNA発現量の測定を行った。RT−PCR法にはSYBR(商標) RT−PCR Kit(Invitrogen社)を用いた。95℃2分の初期変性を行った後、PCR反応として95℃20秒、60℃15秒を1cycleとして40cycle行った。また、内部標準としてはβ−actinを用いた。その他の操作は定められた方法に従い、タイプ12コラーゲンの発現量を内部標準であるβ−actin mRNA発現量に対する割合として求めた。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0039】
タイプ12コラーゲン用のプライマーセット
CAGTGTGCCAGCATCCCATA(配列番号1)
AGCACTGGCGACTTAGAAAATGT(配列番号2)
β―Actin用のプライマーセット
CACTCTTCCAGCCTTCCTTCC(配列番号3)
GTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(配列番号4)
【0040】
本発明のペプチドを添加した細胞における変化を表1に示した。その結果、本発明のペプチドの添加により、タイプ12コラーゲンのmRNA発現は増加した。
【0041】
【表1】

【0042】
実験例2 シワ形成抑制試験
グリシルプロリンを0.5%になるように20重量% 1,3−ブチレングリコール水溶液に溶解し、試料とした(グリシルプロリン製剤)。被験者10人(24〜55才)の顔に1ヶ月間塗布し、使用試験を行った。比較例として、20重量% 1,3−ブチレングリコール水溶液を用いた(コントロール製剤)。被験者毎、使用試験前後について、シワのスコアを肉眼により下記の基準で評価し、使用前後の平均値を求めた。
【0043】
(シワのスコア)
シワの程度に応じてスコア化した。
1:シワがない
2:わずかにシワがある
3:シワがある
4:かなりシワがある
5:著しいシワがある
【0044】
これらの試験結果を表2に示した。その結果、本発明のペプチドは優れたシワ形成抑制効果を示した。
【0045】
【表2】

【0046】
同様な使用試験により、処方例1のローションなども優れた皮膚老化効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
グリシルプロリンは、加齢又は疾患とともに減少するコラーゲンの合成を促進する効果を有する。特に、タイプ12コラーゲンの合成を促進し、タイプ12コラーゲンが関与する皮膚老化や眼疾患に対する予防又は改善用薬剤組成物が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシルプロリンを含有することを特徴とするコラーゲン合成促進剤。
【請求項2】
グリシルプロリンを含有することを特徴とするタイプ12コラーゲン合成促進剤。
【請求項3】
グリシルプロリンを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項4】
グリシルプロリンを含有し、タイプ12コラーゲンが関与する皮膚老化及び/又は眼の疾患に対する予防又は改善用薬剤組成物。



【公開番号】特開2011−105634(P2011−105634A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261465(P2009−261465)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】