説明

コラーゲン産生促進能及び/又は線維芽細胞増殖促進能を有する組成物

【課題】 顕著なコラーゲン産生促進能及び/又は線維芽細胞増殖促進能を有する新規組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、(A)コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種と、(B)ダイズタンパク質のサーモリシン分解物とを含有する組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進能を有する有用な新規組成物、線維芽細胞増殖促進能を有する有用な新規組成物、並びにそれらに関連する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動物の結合組織には、その主要成分として、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ラミニンなどが含まれていることが分かっている。なかでもコラーゲンは、後述の通り、生体において重要な役割を果たしている。
【0003】
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要蛋白質であり、特にヒトの体の総蛋白質の30%近くをコラーゲンが占める。コラーゲンの主たる機能は、生体組織の骨格構造の形成にあるので、動物の組織形態の骨格構造を構成する主成分として皮膚、軟骨組織、角膜、心臓、肝臓等に広く分布する。コラーゲンは、各種細胞の接着、細胞の分化や増殖に対して特異的に作用し、細胞機能の調節因子としての役割も持っているため、コラーゲンの減少は、角膜潰瘍等の角膜障害、リューマチ、関節炎、変形性関節炎、骨関節炎等の関節障害、炎症性疾患等の様々な疾患を引き起こすことがある。また近年コラーゲンには、消化器官での潰瘍の進行を抑制したり、血圧上昇を抑制したりする機能もあることが見出されてきている。
【0004】
そして皮膚真皮細胞外マトリックスでは、コラーゲン線維が網目状の束を形成することにより組織形態を維持している。コラーゲン線維は、成熟して適度な架橋形成が進行するにつれて太く弾力性に富む線維束を形成し、若い皮膚での適度なハリを与えている。しかし老化した皮膚では、真皮細胞外マトリックスのコラーゲン線維が著しく減少し、本来の弾力性に富むハリが失われてしまう。一説には、ヒトにおけるコラーゲンは20歳前後をピークとして皮膚の真皮の70%を占めるものの、老年期にはピーク時の20%程度にまで減少してしまうとも言われている。そして、そのようにしてコラーゲン量が減少すると、皮膚にはシワやタルミが形成されてしまう。光老化によるヘアレスマウスのコラーゲン線維束構造の変化が詳細に検討され(非特許文献1参照)、UVBを照射したヘアレスマウスには、シワが形成され、シワの形成と一致するようにコラーゲン線維束構造が崩壊し皮膚弾力性が低下していくことが示されている。また、コラーゲンは水分保持機能に優れていることも知られている。
【0005】
コラーゲンの減少による状態を改善するために、種々のコラーゲン合成促進物質が見出されている。例えば、レチノイン酸(非特許文献2)、グリシン及びプロリン及びアラニンからなる3種アミノ酸(特許文献1)、カンゾウ、ソウハクヒ、アロエ、スギナ、キンギンカ、オウバク、ガイヨウ又はゲンチアナなどの植物抽出物(特許文献2)、TGF−β、アスコルビン酸類、コラーゲン分解物(特許文献3)等が知られている。
【0006】
また、真皮の主細胞である線維芽細胞は、上述のようなコラーゲンや、皮膚の弾力性を維持しているエラスチン、皮膚の保湿力に大きな影響を与えるムコ多糖類(例、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)等を産生する。ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等の外的因子の影響や、加齢により、線維芽細胞自体の増殖能力が低下し、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、皮膚の老化(例えば、皮膚の弾力性もしくはハリの低下や、皮膚のシワもしくはタルミ等)が加速されることが知られている。
【0007】
従って、線維芽細胞の増殖を促進することもまた、皮膚の弾力性もしくはハリの低下に対する予防及び/又は改善や、皮膚のシワもしくはタルミの予防及び/又は改善に寄与すると考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開平7−194375号公報
【特許文献2】特開2001−206835号公報
【特許文献3】特開2000−309521号公報
【非特許文献1】Fragrance Journal、4、p36-37、1998
【非特許文献2】R. Marksら、 British Journal of Dermatology、122、91-98、1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような生体におけるコラーゲンの果たす役割の重要度に鑑み、顕著なコラーゲン産生促進能を有する更なる有用な新規組成物の開発が望まれている。本発明はかかる従来の問題に鑑み、顕著なコラーゲン産生促進能を有する有用な新規組成物を提供することを目的とする。また本発明は、線維芽細胞増殖促進能を有する有用な新規組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種と、ダイズタンパク質をサーモリシンという特定のプロテアーゼで分解して得られる産物とを併用して用いることにより、コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種を単独で用いるよりも細胞におけるコラーゲン産生促進能が顕著に促進されることを見出し、また更に検討を重ねることにより、上記両成分の併用により、線維芽細胞の増殖が相乗的に促進されることをも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
従って、本発明は以下を提供する。
(1)(A)コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種と、
(B)ダイズタンパク質のサーモリシン分解物
とを含有する組成物。
(2)細胞におけるコラーゲン産生を促進するために使用され得る、項目(1)に記載の組成物。
(3)線維芽細胞増殖を促進するために使用され得る、項目(1)又は(2)に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、顕著なコラーゲン産生促進能を有する有用な新規組成物が提供される。本発明の組成物は、細胞におけるコラーゲン産生を促進するために使用することができ、例えば、抗シワ用組成物、抗タルミ用組成物、関節障害の予防又は治療用組成物、炎症性疾患の予防又は治療用組成物などとして有益に使用することができる。また本発明により、線維芽細胞増殖促進能を有する有用な新規組成物が提供される。なお、後述の実施例に示されるように、本願組成物により得られる飛躍的に高いコラーゲン産生促進作用は、コラーゲンを産生する線維芽細胞の増殖促進効果のみに起因するものではないことが示唆されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において使用される用語は、特に他に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられていることが理解されるべきである。
【0014】
本発明は、(A)コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種と、(B)ダイズタンパク質のサーモリシン分解物とを含有する組成物に関する。
【0015】
本発明に用いられる、コラーゲン、ゼラチン(変性コラーゲン)、及びそれらの分解物(コラーゲン分解物又はゼラチン分解物)からなる群より選択される少なくとも一種〔以下、本明細書においてこれらを総称して「コラーゲン類」ということがある〕は、医薬品、医薬部外品、化粧品または食品の分野において用いられ得るものであれば特に限定されない。
【0016】
コラーゲン又はゼラチンとしては、牛や豚、魚、鶏などの動物の皮膚や骨、腱などの結合組織から抽出して得られるコラーゲンや、それらのコラーゲンを熱変性して得られるゼラチンなどが使用できる。コラーゲンの種類は、特に限定されず、I 型からXIII型等のコラーゲン、又はこれらのうちいくつかのコラーゲン混合物を用いることが可能である。また、市販のコラーゲンやゼラチンを用いることも可能である。
【0017】
コラーゲン分解物又はゼラチン分解物は、コラーゲン又はゼラチンを任意の方法で分解することによって得ることができ、例えば、コラーゲン又はゼラチンを、タンパク分解酵素によって分解すること、酸を用いて分解すること、アルカリを用いて分解すること、またはこれらの組合せによる方法などによって得ることができる。好ましくは、コラーゲン又はゼラチンをタンパク分解酵素によって分解することによって得られた分解物を用いる。
【0018】
かかる酵素としては、特に限定はされないが、例えば、コラゲナーゼ(例えば、Clostridium histolyticum、Streptomyces parvulus等の細菌、放線菌又は真菌等に由来するコラゲナーゼなどを用いることができ、また遺伝子組換技術を用いることによってこれらのコラゲナーゼを他の菌によって産生させることにより得られたコラゲナーゼであってもよい)、トリプシン、キモトリプシン、ズブチリシン、エラスターゼ、プロリン特異性プロテアーゼ、ストレプトコッカス属の微生物が産生するプロテアーゼ、パパイン、ペプシン、サーモリシン、カルボキシぺプチターゼY、アスペルギルス属の産生するプロテアーゼ、ストレプトミセス属の微生物が産生するプロテアーゼ、リゾープス属の微生物が産生するプロテアーゼ、乳酸菌が産生するプロテアーゼ等を1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。好ましくは、本発明には、コラゲナーゼによって加水分解された分解物が用いられる。また、特に好ましくは、コラーゲン特有のアミノ酸配列(Gly−X−Y)n(式中、Glyはグリシン残基を表し、X,Yは、グリシン残基以外の任意のアミノ酸残基を表し、互いに同一であっても、異なってもよい)のグリシン残基のアミノ基末端側を特異的に切断するコラゲナーゼにより加水分解された分解物が用いられ、最も好ましくは、Clostridium histolyticum、Streptomyces parvulus等の細菌、放線菌又は真菌等に由来する上記のような切断特異性を有するコラゲナーゼにより加水分解された分解物が用いられる。
【0019】
本発明に用いられるコラーゲン又はゼラチンの分解物には、(Gly−X−Y)n (式中、Glyはグリシン残基を表し、X,Yは、グリシン残基以外の任意のアミノ酸残基を表し、互いに同一であっても、異なってもよく、nは、1〜3の整数を表す)のアミノ酸配列を有するペプチドが含まれることが好ましい。コラーゲン又はゼラチンの分解物全体に対して、(Gly−X−Y)配列のトリペプチドが20〜100重量%であるものが好ましく、25〜100重量%であるものがより好ましい。このようなコラーゲン又はゼラチンの分解物は、コラーゲン特有のアミノ酸配列(Gly−X−Y)nのグリシン残基のアミノ基末端側を特異的に切断するコラゲナーゼを、コラーゲン又はゼラチンに対して作用させることによって容易に得ることができ、例えば特開平7−82299号公報に記載の方法などに準じて、当該分野で公知の方法により製造することができる。
【0020】
本発明に用いられるコラーゲン又はゼラチンの分解物は、本願効果を奏し得る限り特に制限はされないが、好ましくはその分子量が100以上のもの、より好ましくは分子量が100〜20000、より好ましくは280〜15000、さらに好ましくは280〜9800の範囲内にあるものを使用することが好ましい。平均分子量としては、本願効果を奏し得る限り特に制限されるものではないが、通常は280〜20000、好ましくは280〜15000、さらに好ましくは280〜9800の範囲内にある、コラーゲン又はゼラチンの分解物を用いるのがよい。分子量や平均分子量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができ、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)法やゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法などにより容易に測定することができる。また分解物を分子量や平均分子量に基づいて分取する方法も、当業者に公知の任意の分取方法によって行うことができる。
【0021】
また本発明に用いられるコラーゲン又はゼラチンの分解物には市販品も好適に用いることができる。市販されているコラーゲン又はゼラチンの分解物としては、例えば、ゼライス(株)製のコラーゲン・トリペプチドF、コラーゲン・トリペプチドM30,M60,M90、HACP-01、HACP-02、HACP-GR、HACP-FL1、HACP-U2、HACP-S3、新田ゼラチン(株)製のコラーゲンペプチド700F、コラーゲンペプチドSCP-5000、マルハ(株)製のフィッシュコラーゲンペプチドWP、日本化薬フードテクノ(株)のマリンコラーゲンリッチ500、日本ハム(株)製のC-LAPなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明では、上記のコラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種を、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の組成物に配合するコラーゲン類の配合量は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、通常は組成物全体に対して0.00001〜20重量%、より好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.0001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜3重量%とするのがよい。
【0024】
本発明にはさらに、ダイズタンパク質のサーモリシン分解物が用いられる〔以下、本明細書においてこれを「ダイズサーモリシン分解物」ということがある〕。
【0025】
ダイズ(Glycin max)は、背丈約60〜70cm程度となるマメ科の一年草植物である。その種子は、枝豆などとして、あるいは豆腐や味噌、醤油などに加工されて、食用に供されることが多いことで知られる。
【0026】
本発明に用いられるダイズタンパク質は、かかるダイズ植物に由来する任意のタンパク質であり得るが、好ましくは、ダイズ植物の種子に由来する任意のタンパク質であり得る。
【0027】
本発明においては、ダイズタンパク質の供給源として、ダイズ植物そのものやダイズ植物の種子そのもの、或いは該植物や該種子の破砕物又は粉砕物等を用いてもよいが、好ましくはダイズ植物中の全成分からタンパク質成分を分離・精製したもの、より好ましくは、ダイズ植物の種子中の全成分からタンパク質成分を分離・精製したものが用いられる。このように分離・精製して得られたダイズタンパク質は、それをサーモリシンで分解して得られる産物が本願効果を奏し得る限り、ダイズ植物またはダイズ植物の種子中に含まれる実質的に全種類のタンパク質を含むものでもよいし、一部の種類のタンパク質を含むものであってもよい。
【0028】
ダイズタンパク質としては、市販品も好適に用いることができ、例えば、日清コスモフーズ(株)、ADMファーイースト(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、(株)光洋商会などの製造業者または供給業者から容易に入手可能である。
【0029】
なお本明細書において、ダイズ植物の種子とは、ダイズ種子と通常呼ばれる構造物全体を指すのみならず、例えば、脱皮ダイズ種子、脱脂ダイズ種子(粉末状のもの等)、ダイズ種子全体より得られる雪花菜(オカラ)、豆乳等でもあり得る。
【0030】
本発明に用いられるサーモリシン(EC3.4.24.4)は、Bacillus thermoproteolyticusという耐熱性菌によって生産される耐熱性のプロテアーゼとして周知のものである。サーモリシンは一般に、大きな側鎖をもった疎水性のアミノ酸残基(例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニンなど)のアミノ基側のペプチド結合を切断することが知られている。
【0031】
サーモリシンには、市販品も好適に用いることができ、例えば、大和化成(株)などの製造業者から容易に入手可能である。
【0032】
また本発明においては、サーモリシンと同等のペプチド切断特性(切断配列特異性など)を有するプロテアーゼとして当該分野で公知のプロテアーゼもまた、サーモリシンとして用いることができる。
【0033】
ダイズタンパク質をサーモリシンで分解する場合に用いられる反応条件は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、市販のサーモリシンを使用する場合には、その使用説明書に従って使用することができる。具体的な例としては、水などの溶媒に、ダイズタンパク質濃度が、一般的には0.1〜30%(w/v)、好ましくは1〜10%(w/v)程度となるようにダイズタンパク質又はダイズタンパク質を含む原料を懸濁し、この懸濁液に、一般的には0.001〜3%(w/v)、好ましくは0.01〜0.125%(w/v)程度となるようにサーモリシンを加えて分解反応を行う態様が挙げられる。一般的には、30〜80℃、好ましくは40〜70℃、より好ましくは50〜60℃の反応温度が使用され得る。また一般的には、2〜30時間、好ましくは3〜24時間、より好ましくは10〜20時間、さらに好ましくは12〜18時間の反応時間が使用され得る。反応液のpHとしては、サーモリシンの至適pH付近であることが好ましく、例えば7.0〜8.5付近であることが好ましい。
【0034】
反応の停止手段についても、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。かかる手段としては、例えば、加熱処理等が挙げられる。例えば、上記反応物を80〜100℃程度の温度で3〜20分間、好ましくは5〜15分間、加熱処理することにより、反応物中に含まれるサーモリシンを失活させることができる。例えば、かかる加熱処理としては、85℃で15分間の加熱処理や100℃で5分間の加熱処理などが挙げられる。
【0035】
上記のような分解反応により得られるダイズサーモリシン分解物は、必要に応じて、当業者に公知の任意の方法によりさらに処理され得る。例えば、ろ過等の処理により、該分解物中の大きな固体粒子を取り除くことが好ましい。ろ過条件等は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、ろ紙が目詰まりを起こしやすい場合等には、ろ過助剤等も好適に用いられ得る。
【0036】
また、前記分解物を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥することにより、粉末化することもできる。減圧濃縮および凍結乾燥の際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。このようにして粉末化された分解物は、そのまま又は水などの溶媒に溶かして、用いることができる。
【0037】
本発明に用いられる分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンで分解することにより生じた多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態であってもよいし、又は、そのような多種多様なペプチドを、細胞におけるコラーゲン産生促進能の有無を指標として及び/又は線維芽細胞増殖促進能を指標として、公知の方法でさらに分画・精製して得られる一部分などであってもよい。しかし簡便には、ダイズタンパク質をサーモリシンで分解して得られる多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態でそのまま用いる。コラーゲン産生促進能の有無及び/又は線維芽細胞増殖促進能の有無は、例えば、後述の実施例等に記載のようにして確認することができる。
【0038】
なお、本明細書において用語「細胞におけるコラーゲン産生促進能を有する」とは、被験物を細胞に作用させた場合に、当該被験物を細胞に作用させない場合と比較して、細胞におけるコラーゲンの産生量が増加することを意味する。特定の態様では、当該用語における細胞とは線維芽細胞を意味し、さらに特定の態様では皮膚線維芽細胞を意味する。
また、本発明において用語「線維芽細胞増殖促進能を有する」とは、被験物を線維芽細胞に作用させた場合に、当該被験物を作用させない場合と比較して、線維芽細胞の増殖が促進されることを意味する。特定の態様では、当該用語における線維芽細胞とは皮膚線維芽細胞を意味する。
【0039】
本発明に用いられるダイズタンパク質のサーモリシン分解物の平均分子量は、好ましくは300〜10000である。該平均分子量は、細胞への浸透性を高めてより高い効果を得る観点から、より好ましくは400〜5000であり、さらに好ましくは500〜3500であり、さらにより好ましくは550〜3200であり、特に好ましくは1000〜2000である。分解物の平均分子量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができ、例えば、後述の実施例に記載のようにしてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法などにより容易に測定することができる。
【0040】
本発明の組成物に配合するダイズサーモリシン分解物の配合量は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、通常は組成物全体に対して0.0001〜70重量%、より好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.001〜30重量%、さらにより好ましくは0.01〜20重量%とするのがよい。
【0041】
また、本発明の組成物におけるコラーゲン類とダイズサーモリシン分解物との重量比は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、通常は、コラーゲン類1重量部に対してダイズサーモリシン分解物が0.001〜500重量部、好ましくは0.01〜250重量部、さらに好ましくは0.1〜100重量部の範囲内とするのがよい。
【0042】
本発明の組成物には、前述したようなコラーゲン類及びダイズサーモリシン分解物に加えて、コラーゲン類又はダイズサーモリシン分解物の作用を増強または補足する目的で、あるいは本願組成物に他の有用な作用を付加するため、美白成分、抗炎症成分、抗菌成分、細胞賦活化成分、収斂成分、抗酸化成分、ニキビ改善成分、ヒアルロン酸等の生体成分合成促進成分、血行促進成分、保湿成分、老化防止成分等の各種成分を1種または2種以上組み合わせて配合することができる。好ましくは美白成分、抗炎症成分、抗菌成分、細胞賦活化成分、収斂成分、抗酸化成分、老化防止成分または保湿成分の1種または2種以上の成分である。これらの各成分としては、医薬品、医薬部外品、食品または化粧品分野において使用され得るものであれば特に制限されず、任意のものを適宜選択し使用することができる。
【0043】
例えば、美白成分としては、プラセンタ;アルブチン;コウジ酸;エラグ酸;フィチン酸;ルシノール;カモミラET;ビタミンA又はその誘導体、パントテン酸又はその誘導体等のビタミン類等が挙げられる。このうち、好ましいものとしては、パントテン酸又はその誘導体、エラグ酸、フィチン酸、ビタミンA又はその誘導体を挙げることができる。これらの美白成分は1種または2種以上を用いてもよい。
【0044】
美白作用を有する植物成分を美白成分として用いてもよく、かかる植物成分としては、イリス(アイリス)、アーモンド、アロエ、イチョウ、ウーロン茶、エイジツ、オウゴン、オウレン、オトギリソウ、オドリコソウ、海藻、カッコン、クチナシ、クジン、クロレラ、ゴバイシ、コムギ、コメ、コメハイガ、オリザノール、コメヌカ、サイシン、サンショウ、シソ、シャクヤク、センキュウ、ソウハクヒ、ダイズ、納豆、茶、トウキ、トウキンセンカ、ニンニク、ハマメリス、ベニバナ、ボタンピ、ヨクイニン、アメジスト、アセンヤク、アセビワラビ、イヌマキ、エノキ、カキ(Diospyros kaki)、キササゲ、クロマメ、ゲンチアナ、ゲンジン、サルサ、サヤインゲン、ショクマ、ジュウロウ、セージ、ゼンコ、ダイコン、ツツジ、ツクシハギ、トシン、ニガキ、パセリ、ヒイラギ、ホップ、マルバハギ、チョウジ、カンゾウ等の植物に由来する成分が挙げられる。好ましくは、イリス(アイリス)、アロエ、イチョウ、ウーロン茶、エイジツ、オウゴン、オウレン、オトギリソウ、オドリコソウ、海藻、カッコン、クチナシ、クジン、ゴバイシ、コムギ、コメ、コメヌカ、サイシン、サンショウ、シソ、シャクヤク、センキュウ、ソウハクヒ、茶、トウキ、トウキンセンカ、ハマメリス、ベニバナ、ボタンピ、ヨクイニン、アメジスト、アセンヤク、エノキ、カキ(Diospyros kaki)、キササゲ、クロマメ、ゲンチアナ、サルサ、サヤインゲン、ジュウロウ、セージ、ゼンコ、ダイコン、ツツジ、ツクシハギ、トシン、ニガキ、パセリ、ヒイラギ、ホップ、チョウジ、及びカンゾウの植物由来成分であり、より好ましくは、イリス(アイリス)、アロエ、イチョウ、エイジツ、オウゴン、オウレン、オトギリソウ、クチナシ、クジン、コメ、コメヌカ、サイシン、シャクヤク、センキュウ、ソウハクヒ、茶、トウキ、トウキンセンカ、ハマメリス、ベニバナ、ボタンピ、アメジスト、アセンヤク、エノキ、カキ(Diospyros kaki)、セージ、ダイコン、ツツジ、パセリ、ホップ、カンゾウ及びヨクイニンの植物由来成分が挙げられる。これらの植物成分を本発明の組成物に用いる場合、植物成分の形態は特に制限されないが、通常は植物エキス(植物抽出物)や精油などの態様で使用することができる。なお、上記植物成分中に記載の( )内は、その植物の学名、別名または生薬名である。
【0045】
上記美白成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、好ましくは0.0003〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0046】
美白成分として美白作用のある植物成分を用いる場合は、目的に応じて1種もしくは2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。上記植物成分を美白成分として用いる場合、本願組成物への配合割合は、エキスや精油などの抽出物換算で、通常0.00001〜20重量%、好ましくは0.0001〜15重量%、より好ましくは0.001〜10重量%である。
【0047】
抗炎症成分としては、アラントイン、カラミン、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、グアイアズレン、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、メントール、カンフル、テレピン油、インドメタシン、サリチル酸又はその誘導体等が挙げられる。好ましくはアラントイン、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、グアイアズレン、メントールである。
【0048】
上記抗炎症成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、好ましくは0.0003〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0049】
抗菌成分としては、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン等が挙げられる。好ましくは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン等が挙げられる。さらに好ましくは、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸及びその誘導体、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノールである。
【0050】
上記抗菌成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、好ましくは0.0003〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0051】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類:レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類:グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類:タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号などが挙げられる。好ましくは、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類:レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類である。
【0052】
上記細胞賦活化成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、好ましくは0.0003〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0053】
収斂成分としては、ミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等の金属塩;タンニン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸などの有機酸を挙げることができる。好ましくは、ミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、硫酸アルミニウムカリウム、タンニン酸である。
【0054】
収斂成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、通常0.0003〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0055】
抗酸化成分としては、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸及びその塩、フラボノイド、グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、カタラーゼ、スーパーオキサイドジスムターゼ、チオレドキシン、タウリン、チオタウリン、ヒポタウリンなどが挙げられる。好ましくは、チオタウリン、ヒポタウリン、チオレドキシン、フラボノイドである。
【0056】
抗酸化成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、通常0.00001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.001〜5重量%である。
【0057】
老化防止成分としては、レチノイド(レチノール、レチノイン酸、レチナール等)、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。好ましくは、レチノイド(レチノール、レチノイン酸、レチナール等)、カイネチンである。
【0058】
上記老化防止成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合は、好ましくは0.0003〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0059】
保湿成分としては、アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニンなどのアミノ酸及びその誘導体;グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;ソルビトールなどの糖アルコール;レシチン、水素添加レシチン等のリン脂質;ヒアルロン酸プロピレングリコール、ヘパリン、コンドロイチン等のムコ多糖;乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素などのNMF由来成分等が挙げられる。好ましいものは、アラニン、セリン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニン、コラーゲン、コラーゲンペプチド、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、水素添加レシチン、ヒアルロン酸プロピレングリコール、ヘパリン、コンドロイチン、乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウムである。
【0060】
保湿成分を用いる場合、本願組成物に配合する割合としては、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7.5重量%、より好ましくは0.5〜5重量%を挙げることができる。
【0061】
本発明の組成物は、上記各成分に加えて組成物の用途あるいは剤形に応じて、医薬品、医薬部外品、化粧品または食品の分野に通常使用される成分を適宜配合しても良い。配合できる成分としては、特に制限されないが、例えば、アミノ酸類、アルコール類、多価アルコール類、糖類、ガム質、多糖類などの高分子化合物、界面活性剤、可溶化成分、油脂類、経皮吸収促進成分、防腐・抗菌・殺菌剤、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、酵素成分、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、清涼化剤の他、ミネラル類、細胞賦活剤、滋養強壮剤、賦形剤、増粘剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、分散剤、吸着剤、崩壊補助剤、湿潤剤または湿潤調節剤、防湿剤、着色料、着香剤または香料、芳香剤、還元剤、可溶化剤、溶解補助剤、発泡剤、粘稠剤または粘稠化剤、溶剤、基剤、乳化剤、可塑剤、緩衝剤、光沢化剤などをあげることができる。特に、本発明の組成物が外用組成物である場合には、界面活性剤、可溶化成分または油脂類を配合することによって製剤の使用感をより向上させることができる。また外用組成物である場合には、さらに経皮吸収促進成分を配合するのが好ましい。
【0062】
ここで用いられる界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)−オクチルドデシルアルコールやPOE−2−デシルテトラデシルアルコール等のPOE−分岐アルキルエーテル;POE −オレイルアルコールエーテルやPOE−セチルアルコールエーテル等のPOE−アルキルエーテル;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート及びソルビタンモノラウレート等のソルビタンエステル;POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノイソステアレート、及びPOE−ソルビタンモノラウレート等のPOE−ソルビタンエステル;グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、及びグリセリンモノミリステート等のグリセリン脂肪酸エステル;POE−グリセリンモノオレエート、POE−グリセリンモノステアレート、及びPOE−グリセリンモノミリステート等のPOE−グリセリン脂肪酸エステル;POE−ジヒドロコレステロールエステル、POE−硬化ヒマシ油、及びPOE−硬化ヒマシ油イソステアレート等のPOE−硬化ヒマシ油脂肪酸エステル;POE−オクチルフェニルエーテル等のPOE−アルキルアリールエーテル;モノイソステアリルグリセリルエーテルやモノミリスチルグリセリルエーテル等のグリセリンアルキルエーテル;POE−モノステアリルグリセリルエーテル、POE−モノミリスチルグリセリルエーテル等のPOE−グリセリンアルキルエーテル;ジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルデカステアレート、デカグリセリルデカイソステアレート、及びジグリセリルジイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、等の各種非イオン界面活性剤:あるいはレシチン、水素添加レシチン、サポニン、サーファクチンナトリウム、コレステロール、胆汁酸などの天然由来の界面活性剤等を例示することができる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもまた2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0063】
界面活性剤を使用する場合、本願組成物への配合割合としては、本発明の効果を妨げないことを限度として特に制限されず、通常は本願組成物中に0.01〜30重量%の割合で含まれるような範囲で適宜選択して使用することができる。本願組成物中の有効成分の安定性等の観点からは、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲を挙げることができる。
【0064】
可溶化成分としては、例えば、エタノール等の低級アルコール、グリセリン,エチレングリコール等の多価アルコール、水素添加大豆リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。好ましくは、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水素添加大豆リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、より好ましくは、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水素添加大豆リン脂質である。これらの可溶化成分は、1種単独で使用しても、または2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0065】
これらの可溶化成分を使用する場合、本願組成物への配合割合としては、本発明の効果を妨げないことを限度として特に制限されず、通常は本願組成物中に0.01〜70重量%の割合で含まれるような範囲で適宜選択して使用することができる。本願成物中の有効成分の安定性等の観点からは、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の範囲を挙げることができる。
【0066】
油脂類としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油脂;大豆油、米油、菜種油、綿実油、ゴマ油、サフラワー油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヒマワリ油、パーム油、アマ油、シソ油、シア油、サル油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、及びアボガド油等の植物油脂;ミンク油、卵黄油、牛脂、乳脂、及び豚脂等の動物油脂;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類;ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等の天然及び合成脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルデカノール、ラウリルアルコール等の天然及び合成高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレート等のエステルやエーテル類;シリコーン油等が挙げられる。これらの油脂類は、1種単独で使用しても、または2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらの油脂類を使用する場合、本願組成物への配合割合としては、本発明の効果を妨げないことを限度として特に制限されず、通常は本願組成物中に0.01〜70重量%の割合で含まれるような範囲で適宜選択して使用することができる。本願組成物中の有効成分の安定性等の観点からは、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.1〜50重量%の範囲を挙げることができる。
【0068】
本発明の組成物は、その用途に応じて、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品に通常使用される剤形をとることができ、通常、固形剤、半固形剤または液剤である。具体的には、錠剤(口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゲル剤、リポソーム剤、エキス剤、チンキ剤、レモネード剤、軟膏剤、ゼリー剤などの公知の形態をとることができる。また、必要に応じてその他の溶媒や通常使用される基剤等を配合することによって、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、クリーム状、シート状(基材担持)、エアゾール状、スプレー状などの各種所望の形態に調製することができる。
【0069】
これらの剤形は当該分野の通常の方法にて製造することができる。例えば、半固形剤であれば、上述のようなコラーゲン類とダイズサーモリシン分解物に加えて必要に応じて上記各任意成分を配合混合し、さらに必要に応じてその他の溶媒や通常使用される外用組成物の基剤等を配合することによって、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、クリーム状、シート状(基材担持)、エアゾール状、スプレー状などの各種所望の形態に調製することができる。
【0070】
本発明の組成物は、本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、例えば医薬品、医薬部外品、食品[菓子、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメントなど)を含む)、栄養機能食品、特定保健用食品を含む]などとすることができ、また化粧品ではファンデーション、口紅、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、眉墨及び美爪料等のメーキャップ化粧料;ローション(化粧水や乳液など)、クリーム、オイル、パック、ゲル剤(ジェル状美容液やジェルクリームなど)などの基礎化粧料;洗顔料やクレンジング、ボディ洗浄料などの洗浄料、入浴剤などとすることができる。
【0071】
本発明の組成物は内服用組成物としても外用組成物としても好適に用いられ得るが、皮膚の老化症状に対してより直接的に高い効果を発揮させるためには、好ましくは外用組成物として用いられる。
【0072】
本発明の組成物は顕著なコラーゲン産生促進能を有するので、細胞におけるコラーゲン産生を促進するために好適に使用され得る。例えば、本発明の組成物は、コラーゲンの減少や変性などに伴う各種障害(角膜潰瘍などの角膜障害、リューマチ,関節炎,変形性関節炎,骨関節炎などの関節障害、炎症性障害等)の治療又は予防用組成物、消化器官の潰瘍の治療又は予防用組成物、血圧上昇を抑制するための治療又は予防用組成物、コラーゲンの減少や変性などに起因する美容上の問題を予防又は治療するための組成物(例えば、紫外線曝露や加齢等によるコラーゲンの減少や変性などに起因する皮膚のシワもしくはタルミの予防および/または改善のための組成物、或いはコラーゲンの減少や変性などに起因する皮膚の弾力性もしくはハリの低下に対する予防および/または改善のための組成物等)として好適に用いることができる。
【0073】
また本発明の組成物は、線維芽細胞増殖促進能を有するので、例えば、線維芽細胞の減少や不活性化などに伴う美容上の問題を予防又は治療するための組成物(例えば、紫外線曝露や加齢等による線維芽細胞の減少や不活性化などに起因する皮膚のシワもしくはタルミの予防および/または改善のための組成物、或いは線維芽細胞の減少や不活性化などに起因する皮膚の弾力性もしくはハリの低下に対する予防および/または改善のための組成物等)等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0075】
実施例1
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物の調製
粉末状分離ダイズタンパク質(製品名「PR-800」、不二製油株式会社製)50gを2Lの蒸留水に分散し、0.1N NaOHでpH8.0に調整した。500mgのサーモリシン(EC3.4.24.4、Bacillus thermoproteolyticus由来、製品名「サモアーゼPC10F」、大和化成株式会社製、100 units/mg)を添加して、60℃で15時間での分解を行なった。反応後、100℃で10分間煮沸してサーモリシンを失活させた。放冷後、25gのろ過助剤(ラジオライト500、昭和化学工業株式会社)を添加し、撹拌した後、ろ過を行なった。得られたろ液を500mlまで減圧濃縮し、その後凍結乾燥をして、最終的に約26gのダイズタンパク質サーモリシン分解物を得た。
【0076】
このようにして得られた分解物の平均分子量をGPC法により測定した。凍結乾燥後のダイズサーモリシン分解物100mgを、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)2.0ml中に溶解し、被験溶液とした。Sephadex G25(Mediumタイプ、Amersham Biosciences社製)を充填したカラム(φ2.6×100cm)を、同じ0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化した。このカラムに被験溶液を2.0ml負荷して、流速1.0ml/分で溶出した。分子量既知のペプチド標品として、Insulin(ウシ膵臓由来、シグマ社製、分子量5733)、Insulin A chain(ウシ膵臓由来、シグマ社製、分子量2532)、およびBradykinin(シグマ社製、分子量1050)を用いた。214nmでペプチドを検出し、溶出時間から分子量分布および平均分子量を推定した。その結果、上記方法により得られたダイズサーモリシン分解物の平均分子量は、約1500であることが推定された。
【0077】
実施例2
皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生検定(1)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(CRL−1836;ATCC)を、48ウェルカルチャープレート中で、サブコンフルエント状態になるまで培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で2日間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに1日間培養した。その後、培養液を除去し、下記の表1に示す被験薬をそれぞれの濃度で溶解した400μlの無血清培地に交換して培養した。一方、コラーゲン類もダイズサーモリシン分解物も添加しない無血清培地を400μl添加したものをコントロールとして用いた。3日間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたタイプIコラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法(Anti−Human Procollagen typeI C−peptide EIA Kit;タカラバイオ株式会社製)で定量した。定量結果をもとに、コントロール培養液中のタイプIコラーゲン量を100%として各被験培養液中のコラーゲン量を算出した。この結果を表1に纏める。
【0078】
【表1】

【0079】
なお、本実施例に使用されたコラーゲン・トリペプチドF(CTP−Fとも呼ばれる;ゼライス(社)製)は、魚由来(魚皮由来)のコラーゲンをコラゲナーゼで分解して得られるコラーゲン分解物であり、(Gly−X−Y)(式中、Glyはグリシン残基を表し、X,Yは、グリシン残基以外の任意のアミノ酸残基を表し、互いに同一であっても、異なってもよい)のアミノ酸配列からなるトリペプチドを約30%含有することが公知である(Fragrance Journal、3、p54-60、2006;Fragrance Journal、11、p61-67、2003を参照のこと)。
【0080】
またCTP−Fの分子量を測定した。測定は、以下の測定条件でGFC法により行った。分子量分布は、分子量標準品の溶出時間及び分子量をもとに作成した検量線を用いて求めた。分子量標準品としては、(1)Gly-Gly-Gly〔分子量189、SIGMA〕、(2)Gly-Gly-Tyr-Arg〔分子量451、SIGMA〕、(3)Angiotensin II,Human〔分子量1050、Calbiochem〕、(4)Cytochrome C from equine heart〔分子量12500、SIGMA〕の4種を用いた。
[測定条件]
・検出器:紫外線分光光度計SPD−10A((株)島津製作所製)
・カラム:TSKgel G2500PWXL(東ソー(株)製、φ7.8mm300mm)
・カラム温度:r.t.
・移動相:水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混液(55:45:0.1(v/v/v))
・流量:0.5ml/分
・測定波長:220nm
・測定レンジ:0.2AUFS
・試料濃度:0.2mg/ml
・注入量:20μl
その結果、CTP−Fの分子量は約100〜約9800の範囲内にあることが推定された。
【0081】
上記の表1に示される結果から、コラーゲン分解物とダイズサーモリシン分解物とを併用した培養液で培養した細胞では、コラーゲン分解物単独の培養液で培養した場合よりも細胞内で産生されるコラーゲンの量が顕著に増加し、ダイズタンパク質をサーモリシンという特定のプロテアーゼで処理することにより得られる分解物が、コラーゲン分解物のコラーゲン産生促進能を飛躍的に増強し得ることが実証された。
【0082】
さらに培養液を採取した後の細胞についてWST−8法により生細胞数を計測した。より詳細には、400μl培地中40μlの割合でWST−8試薬を添加したものに培地交換し、次いで35分間培養後、その上清を200μl分取し吸光度を測定した。その結果、コラーゲン分解物とダイズサーモリシン分解物とを併用した培養液で培養されることによる生細胞数の有意な減少は認められず、生体に対して安全に使用できるものであることが確認された。
実施例3
ダイズサーモリシン分解物の分子量分画物の調製
ダイズサーモリシン分解物の分子量分画物を用いても、コラーゲン類によるコラーゲン産生促進能を増強し得るかどうかを探るため、被験材料として、実施例1で調製したダイズサーモリシン分解物の他に、ダイズタンパク質のサーモリシン分解物の分子量分画物の調製を行った。
【0083】
具体的には、脱脂大豆粉末(商品名プロファム974、ADMファーイースト株式会社製)1gを40mlの蒸留水に分散し、0.1N NaOHでpH8.5に調整した。これに50mgのサーモリシン(製品名「サモアーゼPC10F」、大和化成株式会社製)を添加して、60℃で15時間での分解を行った。反応後、100℃で10分間煮沸してサーモリシンを失活させた。放冷後、1gのろ過助剤(ラジオライト500、昭和化学工業株式会社)を添加し、撹拌した後、ろ過を行った。
【0084】
上述のようにして得られたろ液40mlを、強酸性イオン交換樹脂(商品名「Dowex 50W×2,H+form,50−100mesh」、ダウケミカルカンパニー製)を充填した150ml容カラムに通した後、カラムの5倍容の脱イオン水で洗浄し、非ペプチド成分を除去した。2Mのアンモニア溶液を通液し、カラム吸着成分を溶出させて、ペプチド画分を回収した。エバポレーターを用いてアンモニアを除去し、更に濃縮して乾固させた。5mlの水を加えて乾固物を溶解した後、遠心分離(10,000rpm、30分間)を行い、不溶物を除去した。その上清を凍結乾燥した結果、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物として、125mgの粗ペプチドが得られた。
【0085】
次いで、GPC法により分子量分画を行った。Sephadex G−25(Mediumタイプ、Amersham Biosciences社製)を充填したカラム(φ2.6×100cm)を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化した。次いで、このカラムに、凍結乾燥後の上記粗ペプチド125mgを0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)2.0ml中に溶解した粗ペプチド溶液を全量負荷し、流速1.0ml/分で溶出した。分子量既知のペプチド標品として、実施例1で使用したものと同様の標品を用い、214nmでペプチドを検出した。溶出時間から分子量分布および平均分子量を推定した。分子量分布3000〜3400(平均分子量約3200)のフラクション(F1)、分子量分布2000〜3000(平均分子量約2500)のフラクション(F2)、分子量分布1000〜2000(平均分子量約1500)のフラクション(F3)、および分子量分布100〜1000(平均分子量約550)のフラクション(F4)を得た。これらを脱塩処理後に凍結乾燥することにより、26.0mg(F1)、32.8mg(F2)、16.4mg(F3)および4.2mg(F4)の粉末を得た。
【0086】
実施例4
ダイズサーモリシン分解物の分子量分画物のコラーゲン産生促進能検定
以上のようにして調製された分子量分画物を用いて、コラーゲン産生促進能の検定を行った。
まず、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(CRL−1836;ATCC)を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、12500細胞/1cm密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で約72時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル500μlずつ使用した。細胞がコンフルエントになった時点で、培養液を除去し、下記の表2に示す被験物を100μg/ml添加したD−MEM培地を500μlずつ添加した。なお、実施例1で調製したダイズサーモリシン分解物も実施例3で調製した分子量分画物も添加しない培地を500μl添加したものをコントロールとして用いた。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたタイプIコラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法(Anti−Human Procollagen typeI C−peptide EIA Kit;タカラバイオ株式会社製)で定量した。定量結果をもとに、コントロール培養液中のタイプIコラーゲン量を100%として各被験培養液中のタイプIコラーゲン量を算出した。結果を表2に纏める。
【0087】
【表2】

【0088】
以上の結果に示されるように、ダイズサーモリシン分解物の分子量分画物を用いる場合であっても、実施例2で実証されたダイズサーモリシン分解物と同様に、コラーゲン類のコラーゲン産生促進能を増強できるものと認められた。
【0089】
実施例5
皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生検定(2)
上記実施例2とは異なるコラーゲン類を用いて、ダイズサーモリシン分解物との併用効果について更に確認を行った。
まず、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(NHDF:CRL−2089)を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で2日間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに1日間培養した。その後、培養液を除去し、下記の表3に示す被験薬をそれぞれの濃度で溶解した400μlの無血清培地に交換して培養した。ここで本実施例では、コラーゲン類として、魚由来(魚鱗由来)のコラーゲンを分解して得られたコラーゲン分解物(平均分子量1500)を使用した。一方、コラーゲン類もダイズサーモリシン分解物も添加しない無血清培地を400μl添加したものをコントロールとした。3日間培養した後、上清を除去し、無血清培地で3回洗浄した後、無血清培地を各ウェルに400μlずつ添加し、さらに2日間培養した。その後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたタイプIコラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法(Anti−Human Procollagen typeI C−peptide EIA Kit;タカラバイオ株式会社製)で定量した。定量結果をもとに、コントロール培養液中のタイプIコラーゲン量を100%として各被験培養液中のコラーゲン量を算出した。この結果を表3に纏める。
【0090】
【表3】

【0091】
上記結果に示されるように、実施例2とは異なるコラーゲン類を用いた場合であっても、コラーゲン類とダイズサーモリシン分解物とを併用することにより、それぞれを単独で用いた場合に比較して、細胞内で産生されるコラーゲン量が飛躍的に増加することが確認された。
【0092】
実施例6
皮膚線維芽細胞の増殖促進試験
コラーゲン類とダイズサーモリシン分解物との併用によるコラーゲン産生促進効果の作用機序について詳しく調べるため、線維芽細胞の増殖に対する両成分の影響を検討した。
まず、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(NHDF;CRL−2089)を、96ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1600細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で24時間培養を行った。培養液には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)を各ウェル100μlずつ使用した。その後、培養液を除去し、下記の表4に示す被験薬をそれぞれの濃度で溶解した200μlの無血清培地に交換して培養した。なお本実施例では、コラーゲン類として、上記実施例5で使用したものと同じもの(即ち、魚由来(魚鱗由来)のコラーゲンを分解して得られたコラーゲン分解物(平均分子量1500))を用いた。一方、コラーゲン類もダイズサーモリシン分解物も添加しない無血清培地を200μl添加したものをコントロールとして用いた。さらに48時間培養した後、WST−8法にて各ウェル中の生細胞数を計測した(Cell Counting Kit−8;(株)同仁化学研究所製)。測定結果をもとに、コントロールにおける生細胞数を100%として、各被験薬添加群の生細胞数(%)を算出した。この結果を表4に纏める。
【0093】
【表4】

【0094】
この結果から、コラーゲン類とダイズサーモリシン分解物とを併用した培養液で培養した場合には、それぞれを単独で用いて培養する場合と比較して、線維芽細胞数が相乗的に増加することが認められた。しかしここで確認された相乗的な線維芽細胞増殖促進効果は、両者の併用による飛躍的に高いコラーゲン産生促進効果に比べるとやや緩やかなものであると考えられた。そのため、線維芽細胞増殖促進作用は、両成分の併用により奏される飛躍的に高いコラーゲン産生促進の作用機序の一端を担う可能性はあるものの、この線維芽細胞増殖促進作用のみにより、あれほどまでに高いコラーゲン産生促進効果が得られたとは考え難く、両成分の併用によるコラーゲン産生促進作用には、その他の作用機序も関与していることが示唆された。
【0095】
以下に製剤実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0096】
製剤実施例1:乳液
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 0.1
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 0.1
スクワラン 2.0
流動パラフィン 5.0
セタノール 0.5
モノステアリン酸グリセリル 2.0
POE(25)セチルエーテル 2.0
グリセリン 4.0
1,3-ブチレングリコール 6.0
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0097】
製剤実施例2:乳液
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 1.0
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 2.0
グルコオリゴ糖 0.5
酸性キシロオリゴ糖 0.5
1,3−ブチレングリコール 12.0
ホホバ油 6.0
グリセリン 4.0
ワセリン 3.5
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 1.5
ステアリン酸グリセリル 1.2
アラントイン 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.1
セタノール 0.6
パンテノール 1.0
トリエタノールアミン 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0098】
製剤実施例3:クリーム
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 0.01
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 0.5
ワセリン 1.0
スクワラン 5.0
流動パラフィン 10.0
ステアリン酸 1.5
ステアリルアルコール 2.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
POE(20)セチルエーテル 3.0
グリセリン 6.0
1,3-ブチレングリコール 8.0
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0099】
製剤実施例4:化粧水
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 1.0
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 0.5
1,3−ブチレングリコール 12.0
グリセリン 3.0
グルコオリゴ糖 2.0
アラントイン 0.1
ポリクオタニウム−51 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
PEG−1500 0.5
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0100】
製剤実施例5:化粧水
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 0.005
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 0.1
POE(20)ソルビタンモノイソステアリン酸エステル 0.3
コハク酸 0.2
コハク酸ナトリウム 0.5
エデト酸三ナトリウム 0.05
1,3-ブチレングリコール 6.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0101】
製剤実施例6:ゲル剤
〔成分〕 〔比率〕
コラーゲン分解物 0.05
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 0.2
グルコオリゴ糖 0.5
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.5
1,3−ブチレングリコール 5.0
フェニルメチルポリシロキサン 1.0
ラベンダー油 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
メントール 0.1
アルギニン 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 適量
100.0重量%
【0102】
製剤実施例7:飲料
〔成分〕 〔比率〕
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500) 1.0
魚由来コラーゲン分解物 0.5
ビタミンB2 0.005
エリスリトール 10.0
酸味料 1.0
甘味料 1.0
香料 0.01
精製水 残量
100.0重量%
【0103】
製剤実施例8:内服用錠剤(1錠中)
〔成分〕 〔比率〕
ダイズタンパク質のサーモリシン分解物(平均分子量1500)50.0mg
豚由来コラーゲン分解物 20.0mg
ビタミンB1 1.0mg
ビタミンB2 0.5mg
香料 0.625mg
甘味料 0.625mg
ショ糖脂肪酸エステル 3.75mg
マルチトール 48.5mg
125.0mg


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの分解物からなる群より選択される少なくとも一種と、
(B)ダイズタンパク質のサーモリシン分解物
とを含有する組成物。
【請求項2】
細胞におけるコラーゲン産生を促進するために使用され得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
線維芽細胞増殖を促進するために使用され得る、請求項1又は2に記載の組成物。

【公開番号】特開2008−56664(P2008−56664A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197535(P2007−197535)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】