説明

コンクリート組成物及びその配合決定方法

【課題】所定の品質基準を満たしながら、フライアッシュの大量混入を可能としたコンクリート組成物を提案する。
【解決手段】スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉をコンクリート1m当たり200〜300kg/mで配合するとともに、該フライアッシュ原粉は、セメント及びフライアッシュ原粉の全量に対して40〜55重量%の割合で配合し、かつセメント混入量を300kg/m以下とする条件の下で、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E))を50±5%とし、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を5.5〜13.0kg/mの割合で混合し、AE剤を0.08〜0.3kg/mの割合で混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電所で副産物として発生するフライアッシュ(石炭灰)を再生資源の利用促進を図るために大量混入して製造されるコンクリート組成物及びその配合決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所では、ボイラーで微粉炭を燃焼する際に、煙道で集塵機によって採取されたフライアッシュ(石炭灰)が大量に発生する。この石炭灰は、再生利用が図られているが、その代表例は、セメントと混合したフライアッシュセメントとしての利用である。フライアッシュを混合したコンクリートは、フライアッシュがボールベアリングのような作用を成すとともに、セメント粒子の間に入り込んでセメントの分散性を改善する。これらの作用によって、流動性が改善され、同一スランプであれば単位水量を減ずることが可能となる。また、長期材齢における強度増強、水密性の向上、凍結融解に対する抵抗性向上、水和熱や乾燥収縮の減少などの効果が得られるようになる。
【0003】
一方、前記フライアッシュは、再生資源の利用促進に関して指定副産物に指定されており、有効利用の途が嘱望されている。そのため、フライアッシュの利用したコンクリート品質確保のために、「フライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)」(土木学会)、「フライアッシュを細骨材補充混和材として用いたコンクリートの施工指針(案)」(土木学会四国支部)などが出版されている。同施工指針(案)には、フライアッシュを用いたコンクリートの品質確保のために、施工基準、施工方針等が明記されているが、フライアッシュを細骨材補充混和材として用いる場合は、単位水量が著しく多くならない適切なフライアッシュの容積置換率を試験により確認して決定することとし、一般にはフライアッシュの容積置換率を10〜15%とすることが推奨されている。
【0004】
このような状況の中、近年はフライアッシュを利用したコンクリート組成物に関して、種々の提案が成されている。例えば、下記特許文献1では、ワーカビリティを悪化させることなく、収縮量の小さい高強度のコンクリート二次製品を得るために、粒径20μm以下のフライアッシュを、フライアッシュとセメントからなる結合材のうち、前記フライアッシュの割合が5〜20重量%で配合し調製したコンクリート二次製品が提案されている。
【0005】
下記特許文献2では、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上と、粒子径が20μm以下のフライアッシュとを含有するセメント混和材が提案されている。この場合、フライアッシュはセメント100重量部に対して3〜35重量部となるような範囲で配合することが記載されている(同文献段落[0011]参照)。
【0006】
下記特許文献3では、フライアッシュをブレーン比表面積が7000cm/g以上となるように粉砕してなる微粉アッシュの粒子表面にトリアルカノールアミンが付着してなるセメント混和材、トリアルカノールアミン溶液とフライアッシュとを混合した後、得られた混合物を微粉アッシュのブレーン比表面積が7000cm/g以上となるように粉砕するセメント混和物の製造方法及びセメント組成物が提案されている。この場合、セメント混和物は、セメント100重量部に対して3〜30重量部配合することが記載されている(同文献段落[0025]参照)。
【0007】
下記特許文献4では、フライアッシュを細骨材として50kg/m〜150kg/m混入し、スランプを18cm以上に設定したコンクリート二次製品が提案されている。
【特許文献1】特開2002−211966号公報
【特許文献2】特開平10−287455号公報
【特許文献3】特開2004−2165号公報
【特許文献4】特開2005−314123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1記載のコンクリート製品は、粒度調整された粒径20μm以下のフライアッシュを使用するものであり、石炭火力発電所で発生したフライアッシュの分級工程が別途必要になるため、コストダウンが図れず経済的利点が得られないとともに、フライアッシュの混入量がフライアッシュとセメントからなる結合材のうち、前記フライアッシュの割合が5〜20重量%であるため、フライアッシュの大量利用を図るには不十分である。
【0009】
前記特許文献2記載のセメント混和物も同様に、ブレーン比表面積が7000cm/g以上となるように粉砕処理したフライアッシュを使用するものであり、フライアッシュの粉砕加工手間が掛かるため、コストダウンが図れず経済的利点が得られないとともに、フライアッシュの混入量がセメント100重量部に対して3〜35重量部なる範囲で配合するものであるため、フライアッシュの大量利用を図るには不十分である。
【0010】
前記特許文献3記載のセメント組成物も同様に、粒度調整された粒子径が20μm以下のフライアッシュを使用するものであり、コストダウンが図れず経済的利点が得られないとともに、フライアッシュの混入量がセメント100重量部に対して3〜35重量部となる範囲で配合するものであるため、フライアッシュの大量利用を図るには不十分である。
【0011】
これら特許文献1〜3に比較して、上記特許文献4は、フライアッシュを50kg/m〜150kg/m混入するものであり、フライアッシュの使用量増大が見込まれる点で優れている。しかし、諸般の事情から、更なるフライアッシュの大量使用が嘱望されている現状では、未だ不十分である。なお、フライアッシュの大量混入する場合には、強度発現性、凍結融解抵抗性、中性化に対する抵抗性、膨張材の効果の低減など、耐久性が低下する問題がある。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、所定の品質基準を満たしながら、フライアッシュの大量混入を可能としたコンクリート組成物及びその配合決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉をコンクリート1m当たり200〜300kg/mで配合するとともに、該フライアッシュ原粉は、セメント及びフライアッシュ原粉の全量に対して40〜55重量%の割合で配合し、かつセメント混入量を300kg/m以下とする条件の下で、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E))を50±5%とし、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を5.5〜13.0kg/mの割合で混合し、AE剤を0.08〜0.3kg/mの割合で混合したことを特徴とするコンクリート組成物が提供される。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸エーテル系またはスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系を用いる請求項1記載のコンクリート組成物が提供される。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記AE剤は、変性ロジン酸化合物系界面活性剤を用いる請求項1,2いずれかに記載のコンクリート組成物が提供される。
【0016】
請求項4に係る本発明として、スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉:200〜300kg/m、フライアッシュ原粉量/セメント及びフライアッシュ原粉の全量:40〜55重量%、セメント混入量を300kg/m以下、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E)):50±5%、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤:5.5〜13.0kg/m、AE剤:0.08〜0.3kg/mの数値範囲内で基準配合を決定する第1ステップと、
前記基準配合によるコンクリートのスランプフローを確認し、所要のスランプフローが得られない場合は、細骨材の表面水量及び/又は高性能AE減水剤混入量の調整により所定のスランプフローになるように前記基準配合を修正する第2ステップと、
前記基準配合によるコンクリートの空気量を確認し、所定の空気量が得られない場合は、AE剤混入量の調整により所定の空気量になるように前記基準配合を修正する第3ステップとを含むことを特徴とするコンクリート組成物の配合決定方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上詳説のとおり本発明によれば、所定の品質基準を満たしながら、フライアッシュの大量混入を可能としたコンクリート組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
〔コンクリート組成物の配合〕
本コンクリート組成物の配合は、水、セメント、フライアッシュ原粉、細骨材、粗骨材、膨張材、高性能AE減水剤およびAE剤から構成され、スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉をコンクリート1m当たり200〜300kg/mで配合するとともに、該フライアッシュ原粉は、セメント及びフライアッシュ原粉の全量に対して40〜55重量%の割合で配合し、かつセメント混入量を300kg/m以下とする条件の下で、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E))を50±5%とし、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を5.5〜13.0kg/mの割合で混合し、AE剤を0.08〜0.3kg/mの割合で混合したものである。
【0020】
以下、具体的に詳述すると、
先ず、本コンクリート組成物の配合を決定するに当たり、要求される性能基準は下表1のとおりである。
【0021】
【表1】

【0022】
本コンクリート組成物は、コンクリート二次製品に対して好適に適用されるものであり、スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件で製造される。
【0023】
フライアッシュは、セメントに近い粉末度を有するものであり、コンクリート二次製品で多く用いられている固練りかつ富配合の有スランプコンクリートに対して大量のフライアッシュの混合を試みると、適切な練り混ぜ性能や施工性を保てる範囲の配合は著しく困難であることが知見されたため、本発明に係るフライアッシュを大量混入したコンクリート組成物は、高流動コンクリート仕様とする。高流動コンクリートは、粉体量を一般の有スランプコンクリートよりも多くすることによって、材料の分離抵抗性を有しながら、優れた流動性や充填性を有するようにしたコンクリートであり、粉体の一部としてフライアッシュを大量に混入し、フライアッシュのポゾラン反応による硬化を期待すると共に、単位セメント量の削減により低コスト化を図る。
【0024】
本コンクリート組成物で使用されるフライアッシュは、石炭火力発電所において採取されたフライアッシュ原粉を粒度調整(分級処理)することなく、そのまま使用することとする。一般に市販されているものは、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)の規格に適合したものであるが、分級処理に伴う費用が嵩むようになり、セメントを全量使用する場合よりも高コストになってしまう。この粒度調整されたフライアッシュを使用することは、本来のワーカビリティ改善、凍結融解抵抗性の向上などを目的とする場合であればよいが、火力発電所で大量に発生するフライアッシュの有効利用を図ると同時に、コンクリート製品の低コスト化を図る本発明の目的に合致させるために、フライアッシュは敢えて原粉をそのまま使用することを条件とする。
【0025】
前記フライアッシュ原粉は、コンクリート1m当たり200〜300kg/mで配合されるとともに、該フライアッシュ原粉は、セメント及びフライアッシュ原粉の全量に対して40〜55重量%の割合(以下、置換割合という。)で配合される。フライアッシュ原粉の混入量が200kg/m未満で、かつ前記置換割合が40重量%未満の場合は、フライアッシュの大量使用の点で不十分であり、300kg/mを超え、かつ前記置換割合が55重量%を超える場合には、収縮ひび割れの危険性が高くなるとともに、高性能AE減水剤を更に大量に投入しなければならなくなりコスト増になる。また、耐久性(中性化や膨張収縮性)、製造(練り混ぜ性能、変動)及び施工性(材料の沈降分離や表面の巻込み空気の残留)などの点でマイナス面が顕著となり実質的にコンクリート製品の製造が困難となる。
【0026】
また、セメント混入量を300kg/m以下とする条件の下で、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E))を50±5%とする。フライアッシュを大量混入する場合に懸念される収縮ひび割れ、粘性増大、強度低下を減少させるか緩和させるために膨張材を添加する。膨張材としては、カルシウムサルホアルミネートを主成分とし、エトリンガイト水和物の生成によって発生する体積膨張を利用したCSA系膨張材と、CaOを主成分としCaOの水和物生成によって発生する体積膨張を利用したCaO系膨張材の2種類に大別されるが、これらの内、どちらを用いてもよい。前記膨張材は、体積膨張によりコンクリートに作用する引張力を低減してひび割れを防止し、コンクリートにケミカルプレストレスを導入することにより曲げ強度や引張強度を大幅に改善する。
【0027】
一方、前記水結合材比が45%未満の場合は、粘性が高くなり、高性能AE減水剤の添加量を増量しても所要の流動性が確保できなくなるおそれがある。また、55%を超える場合には、材料分離のおそれがあり好ましくない。更には、所要の圧縮強度(50N/mm2)が確保できなくなるおそれがある。また、水結合材比を45〜55%とすることにより、フライアッシュのポゾラン活性により組織の緻密化を図り、水セメント比45%程度の中性化抵抗性を確保することが可能となる。
【0028】
本コンクリート組成物に混入される高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸系とされる。高性能AE減水剤は、JIS A 0203(コンクリート用語)において、「空気連行性能をもち、AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能を持つ混和剤」と定義される化学混和剤の一つであり、フライアッシュを大量混入した高流動コンクリートにおいて、流動性を調整するとともに、強度増強を図り、単位水量を低減して乾燥収縮、水密性、中性化抵抗性を改善する。
【0029】
前記高性能AE減水剤は、ナフタレン系、メラミン系、リグニン系、ポリカルボン酸系、アミノスルホン系などに大別されるが、これらの中で本コンクリート組成物で好適に使用される高性能AE減水剤はポリカルボン酸系である。
【0030】
前記ナフタレン系、メラミン系、リグニン系の高性能AE減水剤は添加量を上げても流動性が向上しない傾向にあるのに対して、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は添加量の増大とともに、流動性が増大する傾向にあるため、フライアッシュを大量混入した本コンクリート組成物に対して好適に使用される。
【0031】
その混入量は、5.5〜13.0kg/m、好ましくは6.0〜11.0kg/mの割合で混合される。混入量が5.5kg/m未満の場合は、高性能AE減水剤の添加不足のため、粘性が高くなり流動性を確保できないおそれがある。一方、混入量が13.0kg/mを超える場合は経済性の悪化に加え、高添加による材料分離などが発生し好ましくない。
【0032】
前記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、更にオレフィン−マレイン酸塩共重合体、反応性高分子、ポリアクリルアミド部分加水分解物、スチレン−マレイン酸塩系、スチレン−マレイン酸塩系、スチレンマレイン酸エステル系、アクリル酸塩アクリルエステル系(ポリカルボン酸系エーテル系)、アクリル酸塩アクリル酸エステル系、ポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル部分架橋ポリマー、スチレン−マレイン酸−アリルエーテル系、アリルエーテル−マレイン酸エステル系、スルホン化ビニル共重合体系などに分類される(「ポリカルボン酸系高性能AE減水剤に関する参考資料 建築・土木用ケミカル材料 株式会社東レリサーチセンター」参照)が、これらの中で特に好適なものは、ポリカルボン酸エーテル系またはスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系である。前者のポリカルボン酸エーテル系は空気量保持性能に特に優れる。このポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤は、例えば株式会社エヌエムビー製のレオビルド8000シリーズとして入手可能である。後者のスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系はフライアッシュ原粉の未燃カーボンの影響を低減させ、スランプフローの保持性能に特に優れる。この高性能性AE減水剤は、例えば日本油脂株式会社製のマリアリム20シリーズとして入手可能である。なお、前記ポリカルボン酸エーテル系とスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系とを対比した場合は、後者のスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系の方が高流動コンクリートの流動性を確保し易いことが後述の実験で明らかとなっている。
【0033】
また、本コンクリート組成物では、前記高性能AE減水剤と共に、AE剤を併用する。フライアッシュ中に含まれる未燃カーボンがAE剤を吸着する影響により、空気連行性が低下する傾向にあるため、別途、所定の空気量を確保するとともに、凍結融解抵抗性を向上させるために、AE剤を0.08〜0.3kg/m、好ましくは0.1〜0.2kg/mの割合で混合する。
【0034】
前記AE剤は、JIS A 0203(コンクリート用語)において、「コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、ワーカビリティ及び耐凍害性を向上させるために用いる混和剤」と定義される化学混和剤の一つであり、例えば、カルボン酸型(樹脂酸塩、脂肪酸塩)、硫酸エステル型(高級アルコール硫酸エステル塩)、スルホン型(アルキルベンゼンスルホン酸塩)、エーテル型・エステルエーテル型(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、イミダリン型など、種々のものが市場に提供されているが、本コンクリート組成物で特に好適に用いられるものは、変性ロジン酸化合物系界面活性剤である。このAE剤は、例えば株式会社エヌエムビー製のマイクロエア202として入手可能である。
【0035】
前記細骨材は、通常のコンクリート用骨材として用いられるものであれば、特に制限なく使用することができる。種類についても、川砂、海砂、陸砂、人工軽量骨材などを使用することができる。
【0036】
前記粗骨材についても同様に、通常のコンクリート用骨材として用いられるものであれば、特に制限なく使用することができる。種類についても、川砂利、採石、人工軽量骨材などを使用することができる。本コンクリート組成物で使用される細骨材及び粗骨材量は、一般的なコンクリート二次製品の場合の細・粗骨材量と比較すると、13〜20%程度の削減が可能である。
【0037】
以上、詳述した本コンクリート組成物について、フライアッシュ混和量を200kg/m3、250kg/m3、300kg/m3とした場合の代表的配合例を示せば下表2の通りである。
【0038】
【表2】

【0039】
〔配合決定方法〕
本コンクリート組成物の配合設計手順は、基本的に水、セメント、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、膨張材、高性能AE減水剤及びAE剤の基準配合を決定したならば、この基準配合に基づいて練り混ぜを行い、所要のスランプフロー及び空気量が得られない場合には、前記水、セメント、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、膨張材の配合は変えずに、高性能AE減水剤及びAE剤からなる混和剤の混入量を調整することにより、所定のスランプフロー値及び空気量の基準を満たすようにする。
【0040】
この基本設計方針の下、コンクリートの配合設計は、スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉:200〜300kg/m、フライアッシュ原粉量/セメント及びフライアッシュ原粉の全量:40〜55重量%、セメント混入量を300kg/m以下、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E)):50±5%、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤:5.5〜13.0kg/m、AE剤:0.08〜0.3kg/mの数値範囲内で基準配合を決定する第1ステップと、
前記基準配合によるコンクリートのスランプフロー値を確認し、所要のスランプフロー値が得られない場合は、細骨材の表面水量及び/又は高性能AE減水剤混入量の調整により所定のスランプフロー値になるように前記基準配合を修正する第2ステップと、
前記基準配合によるコンクリートの空気量を確認し、所定の空気量が得られない場合は、AE剤混入量の調整により所定の空気量になるように前記基準配合を修正する第3ステップとからなる手順によって配合が決定される。
【実施例】
【0041】
〔実施例1:スランプフロー及び空気量〕
上記表2に示した3種類のコンクリート配合例について、練り混ぜ試験を行い、スランプフロー、空気量、L型ボックス充填高さ及び500mmフロー時間を確認した。その結果を下表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
〔実施例2:圧縮強度試験、その他の物性試験〕
上記表2に示した3種類の配合のコンクリート及び従来からの有スランプコンクリートについて、圧縮強度試験を実施した。その結果を図1に示す。同図1に示されるように、フライアッシュ混和量を200kg/m3、250kg/m3、300kg/m3としたいずれのケースにおいても、従来の有スランプコンクリートの場合とほぼ同等の強度特性を示し、材令28日での圧縮強度は要求性能の50N/mm2を満たす結果となった。
【0044】
また、その他の力学特性である静弾性係数、ポアソン比、曲げ強度及び割裂強度は、圧縮強度が同じであればほぼ同等の値を示すことが知られているため、フライアッシュを大量混入したコンクリートについても、従来の有スランプコンクリートと同等の力学特性を有するコンクリートが得られることが判明した。また、単位結合材量は約20%程度削減できることが確認された。
硬化したコンクリートの耐久性に関しては、(1)フライアッシュを混和することによって、ASR(アルカリ骨材反応)の抑制効果が認められた。(2)凍結融解300サイクルにおいても、相対動弾性係数は約99%であり、凍結融解に対して優れた抵抗性を有している。
【0045】
〔実施例3:高性能AE減水剤の適合性〕
本実施例3では、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の内、下表4に示すポリカルボン酸エーテル系4種類、スチレン−マレイン酸−アリルエーテル系2種類について、スランプフローの経時変化、空気量の経時変化を調べた。配合は下表5に示す通りとした。
【0046】
練り混ぜ試験は、フライアッシュ、セメント、膨張材、細骨材をミキサーに投入して20秒間の空練りを行った後、水及び混和剤を投入してモルタル状態の練り混ぜを3分間行い、最後に粗骨材を投入しコンクリート状態の練り混ぜを2分間行った。各高性能AE減水剤の使用量とスランプフローの関係を調べるとともに、これらの各ケースのフレッシュコンクリートについて、練り混ぜ直後にスランプフロー及び空気量を計測した後、これらスランプフロー及び空気量の経時的変化を調べた。高性能AE減水剤の使用量とスランプフローとの関係を図2に、スランプフローの経時的変化を図3に、空気量の経時的変化を図4にそれぞれ示す。なお、図3に示すスランプフローの経時変化試験及び図4に示す空気量の経時的変化試験においては、マリアリムCL-15については初期値を変化させた3種類、マリアリムA-20については初期値を変化させた2種類について試験を行っている。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
(1)高性能AE減水剤の使用量とスランプフローの関係
図2に示される高性能AE減水剤の使用量とスランプフローの関係では、同じスランプフロー値を得るための高性能AE減水剤の使用量は、レオビルド8000SM、フローリックVP-700、マリアリムA-20、マリアリムCL-15ではほぼ同程度であった。これに対して、レオビルド8000SLの使用量が多く、マイティ21・HFでは少ない傾向を示した。
【0050】
(2)スランプフローの経時変化及び空気量の経時変化
図3に示されるスランプフローの経時変化図によれば、ポリカルボン酸エーテル系(レオビルド、マイティー、フローリック)に対して、スチレン−マレイン酸−アリルエーテル系(マリアリム)のほうが、初期のスランプフローが同じ条件(60〜65cm)であっても、スランプフローの持続性が良いことがわかる。ただし、スチレン−マレイン酸−アリルエーテル系においては、マリアリムCL−15の場合には初期のスランプフローが65cm以上になるとスランプフローが後伸びする傾向にあり、マリアリムA−20はスランプフローが緩やかに低下することがわかる。よって、フライアッシュ原粉を大量に混和したコンクリート配合においては、ポリカルボン酸系の中でも、スチレン−マレイン酸−アリルエーテル系(無水マレイン酸)のマリアリムA−20が好適である。
【0051】
一方、図4に示される空気量の経時変化図によれば、マリアリムCL−15については、AE助剤による空気連行の効果を妨げる傾向を示し(AE助剤を0.1%添加しても空気量は4%程度と他のケースと比べ低い)、初期の空気量を確保しても(AE助剤を0.13%添加)、空気量が時間の経過とともに減少することが判明した。
【0052】
以上、スランプ及び空気量の持続性の観点から総合的に評価すると、ポリカルボン酸系の中でもスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系(無水マレイン酸)のマリアリムA−20が好適である。
【0053】
〔他の形態例〕
(1)本発明に係るコンクリート組成物は、一般的なコンクリート構造物の構築に適用可能であるが、好ましくは配合管理や製造管理が高い精度で行えるコンクリート二次製品に対して好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】圧縮強度試験結果を示すグラフである。
【図2】高性能AE減水剤の使用量とスランプフローの関係を示すグラフである。
【図3】スランプフローの経時的変化を示すグラフである。
【図4】空気量の経時的変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉をコンクリート1m当たり200〜300kg/mで配合するとともに、該フライアッシュ原粉は、セメント及びフライアッシュ原粉の全量に対して40〜55重量%の割合で配合し、かつセメント混入量を300kg/m以下とする条件の下で、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E))を50±5%とし、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を5.5〜13.0kg/mの割合で混合し、AE剤を0.08〜0.3kg/mの割合で混合したことを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸エーテル系またはスチレン−マレイン酸−アリルエーテル系を用いる請求項1記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
前記AE剤は、変性ロジン酸化合物系界面活性剤を用いる請求項1,2いずれかに記載のコンクリート組成物。
【請求項4】
スランプフロー:60〜70cm、空気量:3〜6%とする高流動コンクリートの配合設計条件の下で、分級処理されていないフライアッシュ原粉:200〜300kg/m、フライアッシュ原粉量/セメント及びフライアッシュ原粉の全量:40〜55重量%、セメント混入量を300kg/m以下、単位水量(W)と、単位結合材量(セメント(C)及び膨張材(E))との比で表される水結合材比(W/(C+E)):50±5%、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤:5.5〜13.0kg/m、AE剤:0.08〜0.3kg/mの数値範囲内で基準配合を決定する第1ステップと、
前記基準配合によるコンクリートのスランプフローを確認し、所要のスランプフローが得られない場合は、細骨材の表面水量及び/又は高性能AE減水剤混入量の調整により所定のスランプフローになるように前記基準配合を修正する第2ステップと、
前記基準配合によるコンクリートの空気量を確認し、所定の空気量が得られない場合は、AE剤混入量の調整により所定の空気量になるように前記基準配合を修正する第3ステップとを含むことを特徴とするコンクリート組成物の配合決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−246308(P2007−246308A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69151(P2006−69151)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(593012402)SMCコンクリート株式会社 (16)
【Fターム(参考)】