説明

コンクリート部材の接合方法

【課題】接合部に緊張力を導入した状態でコンクリート部材同士を簡易かつ安価に接合することを可能としたコンクリート部材の接合方法を提供する。
【解決手段】二つのコンクリート部材1,1を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程と、予め高温に加熱された接合治具2を二つのコンクリート部材1,1の突合せ部に跨って配設するとともにコンクリート部材1同士を締め付け固定する工程と、を備えるコンクリート部材の接合方法であって、接合治具2の温度収縮により二つのコンクリート部材1,1の突合せ部にプレストレスを導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレキャスト製のコンクリート部材を現地にて接合することで、コンクリート構造物の構築を早期かつ経済的に行う場合がある。
このような施工方法は、例えば、長径間のコンクリート橋梁やコンクリート床版の建設に使用される。
【0003】
プレキャスト部材を利用した長径間構造物の構築方法としては、マッチキャストで個々に製作されたプレキャスト部材を、接合端面にエポキシ樹脂を塗布し、ポストテンション用の緊張材を介して、現地にて部材全長にわたってプレストレスを導入した状態で接合するのが一般的である。
【0004】
プレキャスト部材をポストテンション方式により接合する場合には、プレキャスト部材の端部に緊張力を導入する際の緊張反力が作用することになるので、プレキャスト部材の端部はマッシブに形成しておく必要がある。そのため、部材(構造物)の軽量化の妨げになるとともに、プレキャスト部材の製造コストが高価になっていた。
また、緊張力を導入するためのジャッキ等の締め付け装置を配置するスペースを確保する必要があった。
【0005】
また、プレキャスト部材同士の突合部をボルトナットやPC鋼棒などの接合治具を使用して締め付ける場合には、緊張ジャッキ、インパクトレンチ、油圧トルクレンチなどの締め付け装置を使用することになるが、締め付け装置を配置するためのスペースを確保する必要があるため、接合治具の位置の設定が制限されてしまう。
【0006】
また、従来の締め付け方法は、締め付け装置が大掛かりになるとともに、作業時間が長くなるため、早期施工の障害となっていた。
【0007】
そのため、特許文献1には、形状記憶合金よりなり、低温で塑性変形された線状部材を、コンクリート構造物に形成された貫通孔に挿入し、この線状部材の両端に定着具を装着した後、線状部材を加温して塑性変形前の状態に復元させることでコンクリート構造物の内部にプレストレスを導入する施工方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−34369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、形状記憶合金は、ニッケルやチタンなどの非常に高価な材料を使用するため、緊張用のジャッキを省略することへの代価としては、不経済であった。
また、コンクリート構造物全体にわたってポストテンションによる緊張力を与える従来の接合方法では、一般部については材料が有する引張抵抗力を考慮して設計を行うことができるが、接合部では引張抵抗力を考慮することができないため、接合部ではフルプレストレスを導入する必要がある。そのため、一般部に対しては必要以上の緊張力が導入されることとなり、不経済であった。
ここで、フルプレストレスとは、設計断面力により接合断面に引張応力が発生しないようにプレストレスを導入することをいう。
【0010】
また、ポストテンションを実施するためには、プレキャスト部材の製造時に予めシース管を設置しておき、架設時には、シース管への緊張材の挿入、緊張材への緊張力の導入、シース管へのグラウト材の充填など、作業に手間を要するとともに、費用がかさむという問題点を有していた。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、接合部に緊張力を導入した状態でコンクリート部材同士を簡易かつ安価に接合することを可能としたコンクリート部材の接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二つのコンクリート部材を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程と、予め高温に加熱された接合治具を前記二つのコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、を備えるコンクリート部材の接合方法であって、前記接合治具の温度収縮により前記二つのコンクリート部材の突合せ部にプレストレスを導入することを特徴としている。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、二つのコンクリート部材を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程と、常温の第一接合治具を前記二つコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、予め高温に加熱された第二接合治具を前記二つコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、前記第二接合治具を冷却する工程と、前記第一接合治具を加熱し、再度前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、前記第一接合治具を冷却する工程と、を備えるコンクリート部材の接合方法であって、前記第一接合治具および第二接合治具の温度収縮により、前記二つのコンクリート部材の突合せ部にプレストレスを導入することを特徴としている。
【0014】
かかるコンクリート部材の接合方法によれば、特別な締め付け装置を要することなく、接合治具の温度収縮により接合部にプレストレスが導入されるため、接合を簡易かつ安価に行うことが可能となる。
ここで、常温とは、加熱することも冷却することもない自然の温度をいい、また、高温とは、接合治具が膨張する程度の温度であって、例えば鋼材であれば200℃〜400℃程度をいう。
【0015】
なお、前記コンクリート部材の接合方法におけるコンクリート部材が、セメントと、ポゾラン系反応粒子と、最大骨材粒径が2.5mm以下の骨材と、高性能減水剤と、水と、を混入して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.1mm〜0.3mm、長さが10mm〜30mmの形状を有する繊維を容積比で1%〜4%混入して得られる繊維補強コンクリートの硬化体であってもよい。
【0016】
また、前記コンクリート部材の接合方法において、コンクリート部材を配置する工程の前工程として、前記コンクリート部材同士の突合わせ面に、エポキシ系樹脂あるいはアクリル系樹脂の接着剤を塗布する工程を備えていてもよい。
【0017】
さらに、前記コンクリート部材の接合方法におけるコンクリート部材は、プレテンション部材であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンクリート部材の接合方法によれば、安価かつ容易に接合部にプレストレス(緊張力)を導入した状態でのコンクリート部材同士の接合を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の補強方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0020】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、図1に示すように、二つのプレテンション部材(コンクリート部材)1,1を、互いの端面同士を突き合わせた状態で接合治具2を介して接合するコンクリート部材の接合方法について説明する。
【0021】
プレテンション部材1は、I型断面の桁材であって、I型断面の本体部10と、本体部10の端部近傍の側面に凸状に形成されたブラケット部11を備えている。
このブラケット部11には、プレテンション部材1同士を連結する際に使用するボルト20を挿通するための挿通孔12,12,…が、複数形成されている。
ボルト孔12は、ブラケット部11に予め埋設されたシース管4により形成されている。
【0022】
プレテンション部材1は、セメントと、ポゾラン系反応粒子と、最大骨材粒径が2.5mm以下の骨材と、高性能減水剤と、水と、を混入して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.1mm〜0.3mm、長さが10mm〜30mmの形状を有する繊維を容積比で1%〜4%混入して得られる繊維補強コンクリートの硬化体を主体として構成されている。
ここで、ポゾラン系反応粒子としては、例えばシリカフュームやフライアッシュ、高炉スラグ等が採用可能である。かかる繊維補強コンクリートによれば、硬化後の圧縮強度が150〜200N/mm、曲げ引張強度が25〜45N/mm、割裂引張強度が10〜25N/mmのコンクリート体が形成される。
【0023】
本体部10には複数本の緊張材30が埋設されており、圧縮力が導入されている。
緊張材30には、プレテンション部材1の端面から所定の間隔を有した位置に、それぞれ定着装置31が固定されている。なお、定着装置31は必要に応じて配設すればよく、省略してもよい。
【0024】
本実施形態では、緊張材30として、鋼製の緊張ケーブルを使用するものとするが、緊張材30を構成する材料は限定されるものではなく、例えば炭素繊維やアラミド繊維を使用するなど、適宜公知の材料から選定して採用すればよい。
また、本実施形態では、プレストレスが予め導入されたプレテンション部材1同士を接合する場合について説明するが、当該コンクリート部材の接合方法により接合される部材はプレテンション部材に限定されるものではなく、各種コンクリート部材が採用可能である。
【0025】
接合治具2は、図2に示すように、接合線材(軸部21)と定着固定部(頭部22)とからなるボルト20と、定着可動部であるナット23と、により構成されている。なお、接合治具2は、熱による線膨張率が大きく高強度な材料であれば、限定されるものではなく、例えば、普通鋼材や高強度鋼材の丸鋼や異形鋼棒、あるいはPC鋼線等、適宜公知の接合治具の中から選択して採用することが可能である。
【0026】
なお、本実施形態では、ボルト孔12の頭部22およびナット23に対応する箇所に、予め支圧板13を配置しておくが、支圧板13は省略してもよい。
【0027】
プレテンション部材1,1は、図2(b)に示すように、接合治具2を利用して接合されている。プレテンション部材1,1を接合するには、接合部11,11のボルト孔12,12にボルト20の軸部21を挿通して、ボルト20を接合部11,11に跨って配設し、その後、一方のボルト孔12から突出した軸部21をナット23で締め付ければよい。
【0028】
また、プレテンション部材1同士は、突合部に介設されたグラウトや繊維補強コンクリート等からなる充填材3を介して接合されている。
【0029】
次に、第1の実施の形態に係るコンクリート部材の接合方法について、詳細に説明する。
本実施形態のコンクリート部材の接合方法は配置工程と、締付工程と、を備えている。
【0030】
配置工程は、プレテンション部材1,1を互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程である。
【0031】
まず、プレテンション部材1,1を、互いに隙間を設けて配置した状態で固定し、この隙間の周囲に型枠をセットする。
続いて、隙間に充填材3を充填し、所定の強度が発現するまで養生する。
【0032】
締付工程は、配置工程において充填された充填材3に所定の強度が発現した後、予め高温に加熱された接合治具2をプレテンション部材1,1のブラケット11,11に跨って配設するとともに締め付け固定する工程である。
【0033】
接合治具2の加熱は、図3に示すように、加熱器Bにより行う。
加熱器Bは、ガスバーナ、石油バーナ、電気ヒータ等の公知の機器からなる加熱器本体B1と、加熱器本体B1を内装する箱型の外殻部材B2を備えて構成されている。外殻部材B2には、加熱器本体B1から所定長離れた位置に、網B3が固定されている。
【0034】
接合治具2の加熱は、網B3に接合治具2を載置した状態で、加熱器本体B1を稼動させて、軸部21が一様な温度となるように、赤外線放射温度計B4等により測定しながら行う。例えば、500℃まで測定が可能な赤外線放射温度計B4を使用する場合は、その測定誤差が上下3℃以内の温度管理を行うことができる。
また、高温(例えば200℃〜400℃)に加温された接合治具2の取り扱いは、耐熱繊維により編まれた耐熱手袋を使用するのが望ましい。
【0035】
接合治具2は、加熱後、すぐにボルト孔12に配置し、ナット23を螺合することにより締着する。つまり、ボルト20は、加熱基準温度t(例えば200℃〜400℃)以上になるまで加熱した後、その温度が加熱基準温度t(例えば200℃〜400℃)以下に下がる前にボルト孔12に配置して、ナット23を螺合して締着する。
【0036】
接合治具2の締付は、スパナ等の一般的な工具を利用してナット23を締め付けることにより行う。
【0037】
そして、接合治具2が冷却されることにより、接合治具の温度収縮し、二つのプレテンション部材1,1の突合部にプレストレスが導入される。ここで、接合治具2の冷却方法は限定されるものではなく、例えば、自然冷却、水を散水することによる水冷却、冷風を吹き付けることにより空気冷却等、適宜公知の冷却方法により行えばよい。
【0038】
以上、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法によれば、接合治具2の温度収縮により大きな圧縮の接合力を得ることが可能となるため、二つのプレテンション部材1,1の突合せ部にプレストレスが導入された状態でプレテンション部材が接合される。
また、ブラケット11,11に挿通した接合治具2を利用してプレテンション部材1同士を圧着することにより、プレストレスの連続性が維持される。
【0039】
また、接合治具2の締付固定をスパナ等の一般的な工具を利用して行うのみで、プレストレスを導入することが可能なため、簡易かつ安価に作業を行うことができる。また、特別な締付装置を要することなく接合することが可能なため、スペースに制約がある場合であっても、所望の接合力を得ることができ、接合治具2の設置位置による設計の自由度が制限されることがない。
【0040】
プレテンション部材1の突合面は、隙間なく接触しているため、接合治具2による収縮変形は、突合面のコンクリートを介してコンクリート部材相互にプレストレス量として蓄積される。
【0041】
コンクリートに高強度の繊維補強コンクリートを採用しているため、鉄筋による補強が不要となり、部材の薄肉化および軽量化が可能となる。また、セメント系マトリックスが保有する引張強度と繊維補強による架橋効果により、設計荷重に対して引張強度を期待した設計が可能となる。つまり、本体部10においては、設計荷重により引張応力が発生しても抵抗が可能である。
【0042】
ここで、接合治具2として、鋼材SCM440のM30のボルトナットを使用した場合の温度収縮による接合力を試算する。
(1)接合治具の弾性係数=2.1×10N/mm
SCM440の最小破断強度=1000N/mm
(2)線膨張係数=12×10−6/℃
(3)熱処理温度=200℃
(4)使用時の最高温度=40℃
(5)温度ひずみ
=(200−40)℃×12×10−6/℃=1920×10−6
(6)接合線材に発生する引張応力
=2.1×10N/mm×1920×10−6=403N/mm
(7)接合力=(3.14×30/4)×403=285kN
したがって、ボルト1本当たりの接合力は285kNとなり、大きな接合力を有していることがわかる。
【0043】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、図4に示すように、二つのコンクリート部材1,1を、互いの端面同士を突き合わせた状態で接合治具2を介して接合するコンクリート部材の接合方法について説明する。
【0044】
コンクリート部材1は、コンクリート床版であって、版状の本体部10と、本体部10の一面側端部(図4において下面端部)に立設されたブラケット部11とにより構成されている。
【0045】
本実施形態では、コンクリート部材1を繊維補強コンクリートにより構成するが、コンクリート部材1は、繊維補強コンクリートに限定されるものではない。なお、繊維補強コンクリートの配合等は、第1の実施の形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0046】
ブラケット部11は、本体部10に一体に形成されており、所定の間隔により接合治具2を挿通するボルト孔12が形成されている。
ボルト孔12は、ブラケット部11に予め埋設されたシース管4により形成されている。
【0047】
本実施形態のコンクリート部材1には、本体部10に対して片面(図4において下面)にのみしかブラケット部11が形成されていないため、突合面の図心が接合治具2よりも本体部10側(図4において上側)に位置するため、ボルト孔12を極力本体部10側に配置することが望ましい。なお、接合治具2が中間部において本体部10(図心)側に凸になるように、湾曲させた接合治具2(ボルト孔12)を配置してもよい。
【0048】
接合治具2の構成は、第1の実施の形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
ボルト孔12の頭部22およびナット23に対応する箇所に、予め支圧板13を配置しておくが、支圧板13は省略してもよい。
【0049】
コンクリート部材1,1は、図5に示すように、接合部11,11のボルト孔12,12を挿通することにより、両コンクリート部材1,1の接合部11,11に跨って配設された接合治具2を締め付けることにより接合されている。
【0050】
また、コンクリート部材1同士は、図4および図5に示すように、突合せ面にエポキシ系樹脂あるいはアクリル系樹脂からなる接着剤3’が塗布された状態で接合されている。
【0051】
次に、本実施形態のコンクリート部材の接合方法について、詳細に説明する。
コンクリート部材の接合方法は接着剤塗布工程と、配置工程と、第一締付工程と、第二締付工程と、第一冷却工程と、第三締付工程と、第二冷却工程と、を備えている。
【0052】
接着剤塗布工程は、コンクリート部材1の端面(突合面)に接着剤3’を塗布する工程である。本実施形態では、ゴムへらなどを介して接着剤3’の塗布を行うが、接着剤3’の塗布方法は限定されるものではなく、適宜公知の手段により行えばよい。
【0053】
配置工程は、コンクリート部材1,1を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程である(図5参照)。
【0054】
第一締付工程は、図6(a)に示すように、常温の第一接合治具2a(ボルト)を二つコンクリート部材1,1の接合部11,11に跨って配設するとともにボルトにナットを螺合しコンクリート部材1,1同士を締め付け固定する工程である。
【0055】
本実施形態では、接合部11に形成された複数のボルト孔12,12,…の1つおきに第一接合治具2aを配設するものとする。
【0056】
第一接合治具2aにより締め付けることで、コンクリート部材1を互いに引き寄せられるため、突合面に塗布された接着剤3の厚みが不均一であったとしても、余分な接着剤3をはみ出させることが可能となる。はみ出した接着剤3は除去する。
【0057】
第二締付工程は、図6(b)に示すように、予め高温に加熱された第二接合治具2bを二つコンクリート部材1,1の突合せ部に跨って配設するとともにコンクリート部材1同士を締め付け固定する工程である。
【0058】
本実施形態では、第一締付工程において配置された各第一接合治具2aの間に第二接合治具2bを配設するものとする。
【0059】
第二接合治具2bは、図3に示すように、加熱器Bを介して加熱した後、温度が冷める前にボルト孔12に配置し、締付固定する。つまり、第二接合治具2b(ボルト20)は、加熱基準温度t(例えば200℃〜400℃)以上になるまで加熱した後、その温度が加熱基準温度t(例えば200℃〜400℃)以下に下がる前にボルト孔12に配置して、ナット23を螺合して締着する。ここで、第二接合治具2bの加熱方法は、第1の実施の形態で示した接合治具2の加熱方法と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0060】
第一冷却工程は、第二接合治具2bを冷却する工程である。
第二接合治具2bの冷却は、散水等により、短時間に冷却する。第二接合治具2bは、冷却されることで収縮するため、コンクリート部材1の突合部にプレストレスを導入する。このとき、第二接合治具2bを、所定の冷却温度t(例えば、気温+5℃程度)以下になるまで冷却する。なお、第一冷却工程における第二接合治具2bの冷却温度tは限定されるものではない。
【0061】
第三締付工程は、前記第一接合治具を加熱し、再度締め付け固定する工程である。
第一接合治具2aは、図6(c)および(d)に示すように、一旦、ボルト孔12から取り外し、加熱した後、再度ボルト12孔に挿入する。
なお、第三締付工程における第一接合治具2aの加熱方法および締付固定方法は、第二締付工程における第二接合治具2bの加熱方法および締付固定方法と同様なため、詳細な説明は省略する。また、第一接合治具2aをボルト孔12に取り付けたままの状態で加熱してもよい。
【0062】
第二冷却工程は、第一接合治具を冷却する工程である。
第一接合治具2aの冷却は、第一冷却工程における第二接合治具2bの冷却と同様の方法により行う。
【0063】
なお、第二冷却工程の後工程として、さらに第二接合治具2bを加熱し、ナットを締め付けた後、冷却してもよい。これにより、一層のプレストレスを導入することが可能となる。この場合において、第二接合治具2bを、ボルト孔12から取り外して加熱してもよいし、ボルト孔12に取り付けたまま加熱してもよい。
【0064】
以上、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法によれば、接合治具2による緊張力の導入を、第一接合治具と第二接合治具とに分けて2段階で行うことで、突合面におけるあそびを早期に取り込むことが可能となり、緊張効率が向上する。
【0065】
コンクリート部材1の突合面は、隙間なく接触しているため、接合治具2による収縮変形は、突合面のコンクリートを介してコンクリート部材1相互にプレストレス量として蓄積される。
【0066】
接着剤3’として、エポキシ樹脂性のものを利用すれば、接合面における引張抵抗を設計的に期待できる。
また、接着剤3’を利用していることにより、接合作業を迅速に行うことが可能である。
【0067】
この他、第2の実施の形態のコンクリート部材の接合方法による作用効果は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0068】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。
【0069】
例えば、本発明のコンクリート部材の接合方法の対象となるコンクリート部材は、あらゆる長手方向で接合して構成される構造物に適用可能であり、箱型断面、I型断面の桁構造や床版構造等のほか、コンクリート部材を上下方向に接合した塔状構造物としても適用が可能である。
また、上下左右に接合した複合的な構造物とする場合にも、ボルト接合の要領で順次接合することができる。

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係るコンクリート部材の接合方法を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示すコンクリート部材の接合方法を示す平面図、(b)は同拡大平面図である。
【図3】接合治具の加熱方法の概略を示す模式図である。
【図4】第2の実施の形態に係るコンクリート部材の接合方法を示す斜視図である。
【図5】図4に示すコンクリート部材の接合方法を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は第2の実施の形態に係るコンクリート部材の接合方法の各作業工程を示す正面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 コンクリート部材(プレテンション部材)
10 本体部
11 ブラケット部
12 ボルト孔
2 接合治具
2a 第一接合治具
2b 第二接合治具
3 充填材
3’ 接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのコンクリート部材を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程と、
予め高温に加熱された接合治具を前記二つのコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、を備えるコンクリート部材の接合方法であって、
前記接合治具の温度収縮により前記二つのコンクリート部材の突合せ部にプレストレスを導入することを特徴とする、コンクリート部材の接合方法。
【請求項2】
二つのコンクリート部材を、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する工程と、
常温の第一接合治具を前記二つコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、
予め高温に加熱された第二接合治具を前記二つコンクリート部材の突合せ部に跨って配設するとともに前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、
前記第二接合治具を冷却する工程と、
前記第一接合治具を加熱し、再度前記コンクリート部材同士を締め付け固定する工程と、
前記第一接合治具を冷却する工程と、を備えるコンクリート部材の接合方法であって、
前記第一接合治具および第二接合治具の温度収縮により、前記二つのコンクリート部材の突合せ部にプレストレスを導入することを特徴とする、コンクリート部材の接合方法。
【請求項3】
前記コンクリート部材が、セメントと、ポゾラン系反応粒子と、最大骨材粒径が2.5mm以下の骨材と、高性能減水剤と、水と、を混入して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.1mm〜0.3mm、長さが10mm〜30mmの形状を有する繊維を容積比で1%〜4%混入して得られる繊維補強コンクリートの硬化体であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンクリート部材の接合方法。
【請求項4】
前記コンクリート部材同士の突合わせ面に、エポキシ系樹脂あるいはアクリル系樹脂の接着剤を塗布する工程を備えることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート部材の接合方法。
【請求項5】
前記コンクリート部材が、プレテンション部材であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコンクリート部材の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−299277(P2009−299277A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151677(P2008−151677)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】