説明

コンテンツ再生方法

【課題】ハードディスクのような2次記録媒体に放送などのコンテンツを蓄積するためには、著作権保護を考えて記録しなければならない。つまりコンテンツの暗号化処理などが必要になるが、TVやHDDレコーダのような組込み機器では専用の暗復号処理ハードウェアを利用しても、処理や鍵情報の取得に時間がかかる場合があり、コンテンツにおいてある間隔で鍵情報が更新される場合はより大きな問題となる。
この時、コンテンツを通常再生や、早送り・巻き戻しなどのトリックプレイを行なう際に処理時間が間に合わないという問題が発生する可能性がある。
【解決手段】 暗号化・復号化に必要となる鍵情報をあらかじめ用意しておく、実時間内に処理が終了しない部分の処理をしないなどの仕組みを提供することで、実時間内に問題なく再生やトリックプレイを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高い著作権保護機能(セキュリティ強度)を備えたコンテンツ格納メディア、特に、リムーバブルなコンテンツ格納メディアを利用する場合のコンテンツ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル放送では、著作権保護の観点から、「1度だけコピー可能」といった制限信号を付加してコンテンツを暗号化して提供している。そのため、対応レコーダでは、コンテンツを独自に暗号化してハードディスクに格納し、不正利用や人為的なミスによるコンテンツの流出を避けている。また、HDDに記録されているコンテンツをDVDやBlu-ray Diskなどに書き込む場合には、HDDに記録されているコンテンツを削除して(ムーブ機能)、「1度だけコピー可能」の決められたルールを守っている。
【0003】
しかしながら、ハードディスクにコンテンツを格納する際に、独自に暗号化をしているため、リムーバブルなハードディスクを利用できない、あるいは利用できても、他の機器で利用することが出来ず、利用者にとって不便な面もあった。このような背景から、著作権保護機能を搭載したリムーバブルなハードディスク「Secure−iVDR」が登場している。Secure−iVDRは、暗号化コンテンツデータとその復号鍵を含むUsage Passの独立管理機能、格納したUsage Passを不正なアクセスから保護する機能、PKIベースの双方向認証を備えたUsage Pass転送機能を備え、コンテンツの著作権保護機能を実現するものである。さらに、このコンテンツ著作保護機能を用いて、音楽コンテンツを対象とした音楽プレイヤ、ビデオコンテンツを対称としたビデオプレイヤにおける仕様が規定されている。ビデオプレイヤの場合、ビデオストリームを分割した連続する3072バイトの論理ブロックをAligned Unit(AU)と呼び、このAU単位で、暗号化を行う。また、連続する512個のAUを纏めた論理ブロックをAllocaiton Unit(ALU)と呼び、この単位が一つのUsage Passによって暗号化される最小単位となる。コンテンツのムーブ機能を実現する場合、コンテンツの重複が許されている時間は1分以下であることを考慮し、Secure−iVDRでは、Usage Passを1分以下で変更する必要がある。(非特許文献1参照)。
このような、Secure−iVDRを利用したレコーダでは、再生する場合に、レコーダ本体とSecure−iVDR間で相互認証を行い、レコーダ本体とSecure−iVDR間のUsage Pass 転送プロトコルを用いて暗号通信路を確立し、Usage Passを安全に読み出し、別途読み出した暗号化コンテンツをUsage Pass内に格納されいてる暗号鍵で復号し、復号したデータをデコータに渡すことにより、通常再生を実現する。
【0004】
しかしながら、レコーダ本体及びSecure−iVDRでは、組込み系のCPUを用いていることから、Usage Passを安全に読み出すためにかかる時間が大きい可能性があり、この場合、通常再生中にUsage Passの読み出しに間に合わず画面が乱れる可能性がある。また、マルチベンダでSecure−iVDRが提供される場合、Usage Passを安全に読み出すために必要となる時間がベンダ対応に異なる可能性がある。早送りや巻き戻しといった特殊再生を実現する場合、その倍速に対応した早さで、Usage Pass及びコンテンツを読み出す必要がある。地デジ対応のコンテンツは、MPEG2 TSと呼ばれ、特殊再生をする場合、少なくともIフレームと呼ばれるフレームを1分間に複数(n)フレーム表示し、さらに表示するフレームをある時間おきに抜粋(X倍速であれば、1分後にX分後のフレームを表示するように、x分の間にあるyフレームを、y/n毎にフレームを選択)する必要がある。これを、1分未満で変わるUsage Passの読み出しと並行して行う必要があり、Usage Passを読み出すためにかかる時間が大きい場合、特殊再生を実現することは困難である。
【0005】
【非特許文献1】Recording and Playback Device for iVDR - TV Recording specification(http://www.safia-lb.com/)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Secure−iVDRを用いたレコーダでは、鍵情報に相当するUsage Passを安全に読み出すための処理は、Secure−iVDRに内蔵されているCPUで実行することから、Usage Passの取得に時間を要し、コンテンツ表示に間に合うように復号できず、再生映像が止まったリすることになる。例えばその取得時間が1秒程度であれば、通常再生は問題ないが、復号に必要な鍵情報はコンテンツに対して一つではなく、ある間隔で変更されるため、特殊再生の場合、選択したIフレームが格納されているコンテンツの位置に応じたUsage Passを取得して、復号する必要がある。 このため、コンテンツ取得時に再生したコンテンツに対応したUsage Passを取得すると、コンテンツ表示に間に合わず、滑らかな再生または特殊再生ができないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、鍵情報の先読みを行うことにより、復号時に必要となる情報を予め用意する。また、再生速度と鍵情報の取得時間に応じて実時間内に表示可能なコンテンツデータとそれに対応する鍵情報のみを取得、または既に取得していた情報を廃棄する処理を行う。
【0008】
より具体的には、以下の解決手段により、上記課題を解決する。
【0009】
情報処理装置であって、情報記憶装置に格納されたコンテンツを再生できる機能を供え、著作権保護機能として、暗号化されたコンテンツを安全に復号できる機能を有し、復号に必要な鍵情報を必要時よりに先に読み込む機能を供えた情報処理装置。
コンテンツの再生速度に応じたコンテンツ情報を送信することにより、指定された再生速度にてコンテンツの再生ができる機能を供えた情報処理装置。
コンテンツの再生速度に応じて鍵情報の先読みを行う機能を有し、速度に応じたコンテンツ情報を送信することができる機能を供えた情報処理装置。
鍵情報の取得に時間がかかる場合に再生速度に応じて再生可能な情報を取得する機能を備え、取得した情報を元に指示された再生速度にてコンテンツ再生を可能にする情報処理装置。
【0010】
情報記憶装置に格納されたコンテンツを再生する情報処理装置であって、コンテンツを暗号化し、当該暗号化されたコンテンツを復号する暗号処理部と、前記暗号処理部で暗号化されたコンテンツを前記情報記憶装置に出力する出力部と、前記情報記憶装置から出力された暗号化されたコンテンツを入力する入力部と、前記暗号処理部、前記出力部及び前記入力部を制御する制御部と、を有し、暗号化処理部は、所定時間以内で暗号化する鍵を変更し、前記制御部は、前記コンテンツの復号に必要な鍵を必要時よりに先に読み込むよう制御する情報処理装置。
鍵を記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記記憶部の容量に基づいて、前記コンテンツの復号に必要な鍵を必要時よりに先に読み込む量を制御する情報処理装置。
前記制御部は、コンテンツの再生速度に応じて鍵の先に読み込む量を制御する情報処理装置。
前記情報記憶装置と相互に認証を行った後に、前記情報記憶装置に記憶されている鍵を読み出す情報処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ある間隔で鍵情報が変更されるような暗号コンテンツの再生時及び早送り/巻き戻しのような特殊再生において滑らかに再生及び特殊再生を行なうことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、本発明が本実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明を実現するための1実施例における著作権保護機能を備えたリムーバブルハードディスク(Secure−iVDR)に対応したレコーダのハードウェア構成及びソフトウェア構成図である。レコーダはテレビに内蔵されても良いし、PCやDVDレコーダに内蔵されても良いことから、本実施例では、Secure−iVDRに対応したレコーダを以下、情報処理装置として記載する。また、コンテンツを記録、保存するリムーバブルハードディスク(Secure−iVDR)や通常のハードディスクを情報記録装置として記載する。
【0014】
情報処理装置100はソフトウェアとして暗号化コンテンツを読み出すコンテンツデータ取得プログラム510とコンテンツを復号化する復号処理プログラム520、鍵情報を取得して一時保存、利用するための鍵情報取得プログラム540、高セキュリティを保つために情報処理装置100と情報記録装置300、310の間で認証を行なうための認証処理プログラム530、ユーザからの要求を受け付ける再生操作部500と実際にデコーダなどの出力装置140にコンテンツデータを出力するコンテンツ出力処理プログラム550を備える。
【0015】
ハードウェアとしては、ソフトウェアの処理を行うCPU130のほか、録画用情報を取得するためのチューナ120、取得・記録したデータを映像・音声として出力するためのデコーダ140、デコーダにより出力される情報を実際に表現するためのスピーカやTVのパネル部分に相当する表示部150の他、情報記録装置であるHDDなどを接続するための記録装置接続部160、暗号・復号処理を補佐するための暗号処理部170、ユーザからの操作を受け付けるためのリモコン受信部180などから構成される。
【0016】
メモリ110に格納されたコンテンツデータ取得プログラム510、復号処理プログラム520、鍵情報取得プログラム540、認証処理プログラム530、再生操作プログラム500及びコンテンツ出力処理プログラム550など各種プログラムをCPU130が実行することで、コンテンツデータ取得や復号処理などの各処理を行う。
【0017】
各処理は、各プログラムをCPU130で実行することにより実現するが、これらはコンテンツデータ取得部510、復号処理部520、鍵情報取得部540、認証処理部530、再生操作部500及びコンテンツ出力処理部550など、各処理を行う処理部として集積回路化するなどしてハードウェアで実現することもできる。
【0018】
以下、説明を簡単にするため、各プログラムをCPU130が実行することで、実現される各処理部を、各処理の主体として説明する。
【0019】
また、情報記録装置300及び310の構成は大きく制御部とデータ格納部、耐タンパ領域の3つに分けることができる。制御部は情報記録装置300及び310を制御する部分であり、データのやりとりを行なう通信部610とSecure−iVDRのような高セキュリティレベルを実現するものでは認証処理部600を備える。記録する情報はデータ格納部に保存され、暗号化されたコンテンツデータ700やそのコンテンツに関連する情報を収めたコンテンツ説明情報720、コンテンツと時間の対応を表現するコンテンツと時間の対応情報730の他、コンテンツを復号するために必要な鍵情報を取得する際に用いられるコンテンツと鍵の対応情報710が存在する。なお、鍵情報800も情報記録装置300、310内に格納されるが、鍵情報は重要かつ容易に取得・変更されてはいけない情報であるため耐タンパ領域に格納される。通常のHDDのような耐タンパ領域を備えない場合でも、コピーフリーなどの暗号化の必要ないコンテンツや独自に暗号化を行なうコンテンツであれば、鍵情報などを意識せず、データ格納領域に保存して利用することが可能である。
【0020】
ここで、例えばSecure−iVDRの場合、鍵情報であるUsage Passは情報記録装置の中に備えた耐タンパ領域に格納しており、図1の鍵情報800に相当する。また、耐タンパ領域には簡単にはアクセスできないよう、この領域にアクセスして鍵情報を取り出すためには情報処理装置100と情報記録装置300または310間での認証が必須であり、セキュアな通信路を確保した上でやり取りが行なわれる。この仕組みよって格納されるコンテンツの安全性を高めている。
【0021】
また、情報処理装置100と情報記録装置300間で利用される通信部は、Secure−iVDRのようなHDDではATAインタフェースやSCSIインタフェースが一般的に利用されているが、特に限定するものではなく、今後は赤外線通信や、有線/無線LANやBluetoothTMなどのネットワークの利用も考えられる。
【0022】
コンテンツの再生処理は、コンテンツが暗号化されていなければ情報記録装置300または310から読み出し、表示部150にコンテンツデータを送ることで実現される。暗号化されて格納されているコンテンツの場合、そのコンテンツ及びコンテンツの位置に対応した鍵情報を取得し、その鍵を用いてコンテンツを復号しながら出力装置に復号済みコンテンツデータを送信することで実現される。
【0023】
Secure−iVDRで利用されているTV録画仕様では、最長でも1分でUsage Passを変更しなくてはならないと規定されている。コンテンツ及びその再生位置に対応した特定の鍵情報を読み出して、その鍵情報を用いてコンテンツを復号する必要がある。つまり、Secure−iVDRでは鍵情報であるUsage Passが複数のALU毎に変更されることが定められている。この複数のALUは、1分未満の再生映像分のコンテンツである。また、Usage PassをSecure−iVDRから読み出すためには、情報処理装置と情報記録装置間で、Usage Passを暗号化してやり取りする。しかしながら、情報記録装置及び情報処理装置に搭載されている組込みCPUを用いた場合、情報記録装置での暗号処理、情報処理装置での復号処理に時間がかかり、コンテンツに対応する鍵情報を必要時に取得していては実際の再生処理動作が間に合わない場合がある。
【0024】
さらに映像コンテンツにおける「ある時間間隔」に相当するコンテンツ容量は、再生時間長期的にみると一定であるが、コンテンツを構成する映像フレームは、MPEGなど現在主流の動画形式の場合、「Iフレーム」「Pフレーム」「Bフレーム」の3種類のデータで構成される。Iフレームのサイズは、PやBフレームと比べて突出して大きい。したがって、Iフレーム再生時には読み出すコンテンツ容量が跳ね上がる。このため、Secure−iVDRでは、一つのUsage Passで暗号化されているALUの個数は特定できない。
【0025】
これらの制約を考慮し、予めコンテンツの再生位置に対応するUsage Passを必要となる時点より先に取得することで滑らかな再生を実現する。
【0026】
以下、Secure−iVDRを用いた場合で、通常再生の場合のUsage Passの先読み処理を説明するが、著作権保護を備えた情報記録装置として、一つのコンテンツにおいて、鍵情報が複数変更される場合には、本先読み処理が適用可能である。
【0027】
再生処理をUMLのアクティビティ図で示したものが図2である。
まず、利用者がリモコンやGUI操作により再生指示部に対して再生したいコンテンツの指定及び再生開始を指示する(ステップS1000、ステップS1100)。
【0028】
この指示を受けた再生操作部500はコンテンツ情報取得部510に再生対象コンテンツとその再生位置情報を通知し、コンテンツデータ700を取得する動作を開始する(ステップS1200)。同時に鍵情報取得部540にも対象コンテンツとコンテンツの再生位置を通知して鍵情報取得処理を始める(ステップS2000)。
【0029】
まずコンテンツ読み出し処理について説明する。コンテンツデータの名前と読み出す位置を受け取ったコンテンツデータ取得部510は、実際にファイルのオフセット計算を行なうなどして指定された位置から指定されたサイズのコンテンツデータを読み出す。しかし、読み出したコンテンツデータは録画時に暗号化されて格納されているため、その暗号を解くための鍵情報を鍵情報取得部540に対し、要求する(ステップS1300)。鍵情報取得部はその内部の処理で、要求に対応する鍵情報を読み出して鍵情報800を返す(ステップS2000)。以降、取得した鍵情報800を利用して復号処理部520においてコンテンツデータ700を複合化し(ステップS1400)、コンテンツ出力処理部550によりデコーダ140介して表示部150であるTVなどに送られる。これの一連の処理により、コンテンツの視聴が可能になる(ステップS1500)。
【0030】
次に鍵情報取得処理であるステップS2000の詳細について説明する。鍵情報取得部540では、鍵情報の取得要求に応じた鍵情報を通知する処理(ステップS2100、S2110、S2120、S2130、S2140)と、コンテンツの再生を妨げない範囲で鍵情報800の先読みを行ない、必要となるまで一時保存する処理を一定間隔で行う(ステップS2500、S2510、S2520)という二つの処理を行う。また、鍵情報取得部540により取得された鍵情報800は、コンテンツデータを復号化する際に必須であるため、鍵情報を一時保存する領域はコンテンツの復号処理を行う復号処理部520と鍵情報取得処理部540の両方からアクセスされる。このため、鍵情報800を一時保存する領域の管理に不具合が生じないように排他処理が必要である。
【0031】
また、先読みを行なうことにより鍵情報を一時保存する領域必要になる。この領域は、メモリなどにより構成され、有限である。また、TVやHDDレコーダなどの組込み機器などにおいては、価格競争に勝つため、出来るだけ低価格に機器を構成することが要求され、メモリを効率的に利用することが求められる。
【0032】
このため、鍵情報取得部540が行なう先読みにて、
1.必要数、一定数の情報しか貯めない
2.再生に影響のない頻度で先読みを行なう
という処理を行えば、これらの問題に対応できる。
【0033】
一時的に貯める鍵情報の量や、どの程度の頻度で先読みを行なうかは、鍵情報の取得に要する時間や、その他の処理がどのくらい実行されているかによるが、基本的には「再生するのに十分な情報を保持できる量及び間隔」が満たされていればよい。
【0034】
よって、鍵情報800を一時格納する領域が先読みした鍵情報で埋められている場合は、何もせずに一定時間先読みを停止する。停止されている先読み処理は、ある一定時間が経過した時、あるいは鍵情報の要求を受け付けた際に一時保存領域に格納されていない鍵情報を要求された場合に動作させる(ステップS2520)。
【0035】
基本的には、一つ前のUsage Passを用いてコンテンツを再生している時間内に次のUsage Passを読み出しておけば良い。しかし、上述したように、Usage Passの対象範囲は一定でないことから、1分間に最低2つのUsage Passが先読みされていればよい。また、Usage Passの読み出しには、情報処理装置及び情報記録装置のCPUが割かれるため、連続的に行っているコンテンツの再生が止まる可能性があることから、Usage Passの読み出しを分散させることが必要である。
【0036】
利用者によるリモコンやGUI操作を介した再生指示部に対する再生したいコンテンツの指定及び再生開始の指示を受け(ステップS1000)、再生操作部500は、鍵情報取得部540に再生対象コンテンツとその再生位置情報を通知する(ステップS1100)。
それを受けた鍵情報取得部540における先読み処理手順を図3の右側に示す。
【0037】
先読みするUsage Passの数を「n」、Usage Passを読み出す間隔を「h」とする。また、Usage Passを読み出すために必要な処理時間を「x」secとする。
【0038】
指定された位置に対応する鍵情報800の格納位置をコンテンツと鍵の対応情報710より取得する。コンテンツと鍵IDの対応情報710は、鍵情報であるUsage Pass識別子と、そのUsage Passで暗号化されたコンテンツを格納しているALUの先頭識別子と最終識別子を管理している。本対応情報により、再生位置情報から、最初に利用するUsage Passを読み出す(ステップS2500)。
【0039】
読み出したUsage Passを一時保存領域に識別子とUsage Passを対として記載し、先読み数Nを1とし、次に読み出す予定のUsage Pass 識別子を記憶する(ステップS2510)。このとき、一時保存領域に記憶する情報は読み出した順序通りにしておく。
【0040】
本Usage Passに対応したコンテンツの再生を終えるまでの間に、「n」個のUsage Passを読み出すため、次回読み出し時間「h」を例えば次式で計算し、タイマを設定し処理を終了する(ステップS2520)。
h=(60 sec-nx)/n
上記タイマがタイムアウトした場合、または読み込み済みの鍵情報を一時保存領域より削除した場合、再度鍵情報取得部540の鍵情報の先読み処理が起動される。この処理が起動されると、先読み数Nをチェックし、先読みする「n+1」以下であれば、ステップS2510で記憶したUsage Pass識別子に対応したUsage Passを読み出し、読み出したUsage Passを一時保存領域に識別子とUsage Passを対として記載し、先読み数Nに1を加え、次に読み出す予定のUsage Pass 識別子を記憶する(ステップS2500、S2510)。
【0041】
本Usage Passに対応したコンテンツの再生を終えるまでの間に、「n」個のUsage Passを読み出すため、次回読み出し時間「h」を再度計算し、タイマを設定し処理を終了する(ステップS2520)。
以下、このような処理をコンテンツの終端(あるいは先頭)まで繰り返すことにより、Usage Passの先読み処理を行う。
【0042】
こうして先読みできた鍵情報800を取得要求に応じて渡すことにより、再生などの処理を行う。これが図3の左側に示される処理である。
【0043】
コンテンツデータ取得部510はステップS1200にてコンテンツデータを読み出した後、鍵情報取得部540に対して鍵情報取得要求を出すことにより、鍵情報800の取得を試みる(ステップS1300)。鍵情報取得部540では、鍵情報取得要求を受け付けており(ステップS2100)、要求がくるとコンテンツの読み出し位置に対応するUsage Pass の識別子から一時保存領域に蓄えられたUsage Passを検索する(ステップS2110)。対応する鍵情報であるUsage Passを発見できた場合は、その鍵情報を返して復号処理を行う(ステップS2140、S1500)。対応するUsage Passを発見できなかった場合は、一時保存領域から読み込んだ取得済み鍵情報を廃棄し、次の読み込み済み鍵情報が一致するか確認する(ステップS2120)。最終的に全ての鍵情報を廃棄した場合、先読み数Nを0にして鍵情報800を即時入手するよう要求し(ステップS2130)、先読み処理を即時起動させて鍵情報を取得する(ステップS2500、S2510、S2110、S2140)。その後、取得した鍵情報を要求側に通知してコンテンツデータを復号し、再生処理を行う。
【0044】
このように、コンテンツデータ700の読み出しと鍵情報800、つまりUsage Passの読み出し処理は別々に開始し、コンテンツデータ取得部510と鍵情報取得部540は鍵情報の連携を行ない、最終的にコンテンツ再生を実現する。これらの動作はほぼ同時に開始されるが、鍵情報800を取得し、一時保存領域に格納できた時点で、初めて復号処理部520にてコンテンツデータ700を復号可能になる。このため、コンテンツ情報の取得処理と鍵情報の取得処理自体は同時に開始されても、鍵情報800が読めていることが、再生を行う際には必須となる。しかし、場合によってはコンテンツデータ700の読み出しの方が早く、先読み処理用の一時保存領域に鍵情報800が蓄えられていない場合も発生する。この場合、鍵情報800の一時保存領域が空のため、ステップS2130で示される鍵情報取得要求が先読み処理側に通知されることになる。このため、ただちに鍵情報800の取得処理が実行され、取得した鍵情報がすぐに要求元に返されて処理可能な状態になる。
【0045】
こうして、暗号化済みコンテンツデータ700の取得と対応する鍵情報800の取得が完了できれば、復号処理部520にてコンテンツデータ700を復号してコンテンツ出力処理部550より復号済みのデータをデコーダ140、表示部150に提供してコンテンツの再生を実現する(ステップS1500)。
【0046】
以上に示した処理を、コンテンツデータ700の最後に到達するまで、コンテンツデータ取得処理部510ではステップS1200からS1500を、鍵情報取得部540ではステップS2000で説明される処理を繰り返すことで、鍵情報800の取得に少々時間がかかっても問題なくコンテンツの再生を行なうことができる。
【0047】
次に、図4、図5を用いて早送り/巻き戻しなどのトリックプレイを実現する方法を説明する。
【0048】
図4では、ある暗号化されたコンテンツがあり、コンテンツと位置に対応したUsage PassそれぞれKn…とし、それぞれの領域を通常の速度で再生した場合に要する時間をTn秒、…と表現している。
【0049】
ここで、図4に示される「再生位置」より早送りを行なった場合の処理について述べる。
このとき通常再生であれば、先ほど述べたような鍵情報の先読み処理を行っていれば問題なくそのまま読み続けることができる。
【0050】
しかし早送りは、通常再生ではTn秒かけて全てのコンテンツを再生していたものをtn秒に縮めて再生するため、デコーダ140が対応できる処理スピードを超える場合は、上述した「Iフレーム」をだけを抽出して再生する。例えば、10倍速であれば、tn秒はTn/10秒である。また、トリックプレイにおいて、「Iフレーム」を1秒間にいくつのフレームを表示するかにより、滑らかな早送り/巻き戻しを実現する。この1秒間のフレーム表示数は、デコーダにより上限数が決められているものである。ここでは、その上限数を「A」とする。
【0051】
m倍速を実現する場合、1秒間にm秒分のコンテンツに存在する「Iフレーム」を抽出し、そのうち「A」フレームを平均的に選択することが望まれる。Secure−iVDRの場合、Usage Passは、1分未満で変更されることから、m<<60では、1秒間にUsage Passは通常1つ、最悪2つ必要である。
【0052】
しかし、mが60に近い場合、1秒間にUsage Passは、通常2つ必要となり、最悪3つ必要となる。また、mが60より大きい場合、1秒間にUsage Passは最低m/60の少数点第一桁を切り上げた値が必要である。
【0053】
また、mが60以下の場合、Usage Pass読み出しに必要な時間「x」が、x<<1/3秒であれば、何も気にすることなく、トリックプレイであるが、x<<1/3秒以外であれば、コンテンツの読み出し時間も考慮したUsage Passの先読み処理及び1秒間のフレーム表示数を減らすことが必要となる。1>Xであれば、1秒間に1フレーム表示、x>1である場合、x秒間(xは小数点第一を切り上げた数とする)に1フレーム表示とする。
【0054】
さらに、前方向の場合は、通常再生時にN個のUsage Passが読み出されているが、後方向では、Usage Passの準備が無いことから、後方向の先読み準備が必要となる。
【0055】
トリックプレイを行うためには、Iフレームとその時間情報、及びコンテンツデータにおけるIフレームの場所を指し示すシークファイルを録画時に作成してあることが前提となる。本シークファイルでは、Iフレームの再生時間とそのIフレームが格納されいてる先頭と最終のALU識別子、ALUを構成する192バイトのパケット番号(連続した数)で示したIフレームが格納されている先頭パケット番号から構成されているとする。しかしながら、Iフレームの位置情報とその再生時間に対応がとれればよく、構成は問わない。
図5にトリックプレイを考慮した鍵情報取得部の処理フローを示す。
【0056】
基本的な処理の流れは図3に表示されている通りであり、トリックプレイ時はステップS2500での処理が通常再生と異なる部分がある。利用者によるリモコンやGUI操作を介した再生指示部に対するトリックプレイ指示は、鍵情報取得部に再生方向、再生速度(m倍速)、現在再生時間を通知する(ステップS1100)。
【0057】
以下前方向のトリックプレイとして説明するが、後方向のトリックプレイも時間軸の方向が逆であるだけで、基本的な処理は同じである。
【0058】
まず、通知された再生速度「m」とUsage Pass読み出しにかかる時間「x」から、表示間隔と表示フレーム数とUsage Passの先読み数を求める(ステップS3000)。
【0059】
m << 60secの場合、1秒間の表示フレーム数を「A」とし、先読み数「n」=2とする(ステップS3100)。
【0060】
m<=60sec かつ x<<1/3secの場合、1秒間の表示フレーム数を「A」とし、先読み数「n」=3とする(ステップS3200)。
【0061】
ステップS3100とステップS3200にあてはまらず、かつ、1/2>x>1であれば、1秒間の表示フレーム数を1とし、先読み数「n」を1とする(ステップS3300)。
【0062】
さらに、ステップS3300にあてはまらない場合、[2x+1]秒間([α]はαを超えない整数を表現したもの(=小数点以下を切り捨てたもの)とする)毎に1フレームを表示する。
【0063】
このように、表示フレーム数と先読み数が決定できたのち、実際に先読み処理を行なう(ステップS3500)。その後の処理はステップS2510と同様の処理となる。
【0064】
ステップS3500において、n=1の場合、次のような処理を行う。
指定された再生速度(m倍速)から、現在再生時刻にm秒を追加した時間を求める(ステップS4000)。
【0065】
シークファイルより、計算した時間に相当するALUの識別子を求め、さらに、コンテンツと鍵対応情報ファイルから、求めたALUの識別子を求める(ステップS4100)。
Usage Passを読み出し、読み出したUsage Passを一時保存領域に識別子とUsage Passを対として記載し、先読み数Nを1とする。(ステップS4200)。
【0066】
さらに次のUsage Pass 識別子読み出し、読み出したUsage Passを一時保存領域に識別子とUsage Passを対として記載し、先読み数Nを1とする。(ステップS4300)。
【0067】
このように、読み出したいIフレームが一つのUsage Passが対象としているALU間に収まっているとは限らないため、2つのUsage Passを読み出す。または、m秒後のIフレームが次のUsage PassのALUに跨っている場合、一つ前のIフレームを読み出すようにし、Usage Passの読み出しを一つにしてもよい。
【0068】
コンテンツデータ取得処理部で、新たなUsage Passを一次保存領域から取得した際、Nから1を減算し、鍵情報取得部にイベントを上げ起動する。
【0069】
本起動を受け、鍵情報取得部は、ステップS4000からS2510の処理を行う。この際、現在時刻として、コンテンツデータ取得処理部で表示する予定のIフレームの再生時刻を通知し、これを現在再生時刻として処理を行う。
【0070】
さらに、逆方向のトリックプレイに対応するため、Usage Passを図6に示すように利用する。図6は、鍵情報格納領域5000の構成を示す図である。鍵情報格納領域5000は、鍵取得処理部で計算した先読み数「n」×2−1個のUsage Passを管理する。各Usage Passを格納するエリアは、状態フラグエリア5100、Usage Pass 識別子エリア5200、Usage Passエリア5300から構成する。状態フラグは、Empty、Used、Using、aheadの4種から構成する。また、Usage Passを格納するエリアは、先頭から順番に利用する。先読みをした場合、aheadの次にあたるエリアの状態フラグがEmptyのエリア、あるいはUsedのエリアに読み出したUsage Passを記録し、状態フラグをaheadに変更する。Usage Passを利用した後、状態フラグは、UsingからUsedに変更する。さらに、次に利用するUsage Passのエリアの状態フラグをaheadからUsingに変更する。Usage Passを破棄する場合、状態フラグを全てEmptyとし、Usage Passは、また先頭のエリアから格納する。本実施例では、状態フラグがaheadであるUsage Passエリアは、最大「n」個である。尚、後方向にトリックプレイを行う場合、利用する方向が上記説明と逆として利用する。方向が変更になった時点で、状態フラグUsedをaheadに、aheadはemptyに変更する。
【0071】
1秒間、あるいは数秒間に1フレームしか表示しない場合、状態フラグを一つのIフレームを読むために、一つのUsage Passしか利用しない場合でも、二つのUsage Passの状態フラグをEmptyとする。
【0072】
逆方向のトリックプレイが次に要求されると考えて、上記状態フラグをUsedにしてもよい。
また、鍵情報取得に要する時間が予め厳密にはわからない場合も考えられる。
この場合、鍵情報取得の度に要した時間を取得しておき、平均値を出すことで1つの鍵情報取得に要する時間を想定してもよい。
【0073】
または、あらかじめ出荷時、あるいは最初に鍵情報を読み込んだ際などに、情報記録装置の方に鍵情報取得に要する時間を記録しておき、その情報を元に動作してもよい。
【0074】
これまでの実施例において、リムーバブルなハードディスクを例に説明を行ったが、これに限定されない。リムーバブルではない記録メディアにコンテンツを記録した場合であっても、上記実施例を適用できる。著作権保護を考えて記録する場合に、コンテンツの暗号化処理などが必要になるが、TVやHDDレコーダのような組込み機器では専用の暗復号処理ハードウェアを利用しても、処理や鍵情報の取得に時間がかかる場合がある。コンテンツにおいてある間隔で鍵情報が更新される場合はより大きな問題を生じるので、この問題を解決するため、上記実施例を適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ハードウェア/ソフトウェア構成図
【図2】再生処理概要
【図3】鍵情報読み込み処理概要
【図4】トリックプレイ動作の例
【図5】トリックプレイ時の鍵情報読み込み処理(1)
【図6】トリックプレイ時の鍵情報読み込み処理(2)
【図7】先読み情報を保存する構造
【符号の説明】
【0076】
100…情報処理装置
110…メモリ
120…チューナ
130…CPU
140…デコーダ(出力装置)
150…表示部
160…記録装置接続部
170…暗号処理部
180…リモコン受信部
300、310…情報記録装置
400…リモコン
500…再生操作部
510…コンテンツデータ取得部
520…復号処理部
530…認証処理部
540…鍵情報取得部
550…コンテンツ出力処理部
610…通信部
600…認証処理部
700…コンテンツデータ
710…コンテンツ⇔鍵情報
720…コンテンツ説明情報
730…コンテンツ⇔時間情報
800…鍵情報
5000…鍵情報格納領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
情報記憶装置に格納されたコンテンツを再生できる機能を供え、
著作権保護機能として、暗号化されたコンテンツを安全に復号できる機能を有し、
復号に必要な鍵情報を必要時よりに先に読み込む機能を供えた情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置であって、
コンテンツの再生速度に応じたコンテンツ情報を送信することにより、指定された再生速度にてコンテンツの再生ができる機能を供えた情報処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の情報処理装置であって、
コンテンツの再生速度に応じて鍵情報の先読みを行う機能を有し、
速度に応じたコンテンツ情報を送信することができる機能を供えた情報処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の情報処理装置であって、
鍵情報の取得に時間がかかる場合に再生速度に応じて再生可能な情報を取得する機能を備え、
取得した情報を元に指示された再生速度にてコンテンツ再生を可能にする情報処理装置。
【請求項5】
情報記憶装置に格納されたコンテンツを再生する情報処理装置であって、
コンテンツを暗号化し、当該暗号化されたコンテンツを復号する暗号処理部と、
前記暗号処理部で暗号化されたコンテンツを前記情報記憶装置に出力する出力部と、
前記情報記憶装置から出力された暗号化されたコンテンツを入力する入力部と、
前記暗号処理部、前記出力部及び前記入力部を制御する制御部と、を有し、
暗号化処理部は、所定時間以内で暗号化する鍵を変更し、
前記制御部は、前記コンテンツの復号に必要な鍵を必要時よりに先に読み込むよう制御する情報処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の情報処理装置であって、
鍵を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部の容量に基づいて、前記コンテンツの復号に必要な鍵を必要時よりに先に読み込む量を制御する情報処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の情報処理装置であって、
前記制御部は、コンテンツの再生速度に応じて鍵の先に読み込む量を制御する情報処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記情報記憶装置と相互に認証を行った後に、前記情報記憶装置に記憶されている鍵を読み出す情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−234722(P2008−234722A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69760(P2007−69760)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】