説明

コンデンサ

【課題】コンデンサのケースの内部に充填される樹脂の量を低減する。
【解決手段】ケース12の底面28に交差するケース12の一側面に、ケース12の開口30が形成されている。コンデンサ10の製造過程において、この開口30からケース12内に樹脂20が注入されモールドされる。開口30が形成されるケース12の一側面の面積は、ケース12の上部の面及び底面28の面積より小さい。このため、従来のようにケースの上部に形成された開口より注入される樹脂量に比べ、ケース12の一側面である開口30より注入される樹脂量のほうが少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースにコンデンサ素子を収納し、そのケース内を樹脂でモールドしたコンデンサの構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のモータ駆動のインバータ回路に用いられるフィルムコンデンサ(以下、単にコンデンサと記す)において、小型化、高性能化のための開発が盛んに行われている。また、このようなコンデンサにおいては、使用電圧の高電圧化、大電流化、大容量化などが要求されるため、並列接続した複数のコンデンサ素子をケース内に収納し、このケース内を樹脂でモールドしたコンデンサが開発され、使用されている。以下、従来のコンデンサの一例について図を用いて説明する。
【0003】
図4は、従来のコンデンサの構成を示す図であり、図5は、図4のA−A線による断面を示す図である。コンデンサ110は、ケース112と、ケース112に収納された複数のコンデンサ素子114と、コンデンサ素子114の両極にそれぞれ接続するバスバー116,118とを有する。ケース112の底面128の外周縁128aには、固定対象となる構造体(図示せず)にケース112を固定する固定部材122が設けられている。固定部材122により、コンデンサ110は構造体にケース112の底面128を接しながら固定される。ケース112の底面128に対向する上面には、開口130が形成されている。この開口130からケース112内に樹脂120が注入されてモールドされる。また、開口130から外部に向けてバスバー116,118が突出しており、それらの一端には外部接続用端子116a,118aが設けられている。
【0004】
コンデンサ110の上部には、スイッチング素子(図示せず)を内蔵するパワーモジュール140が設けられる。パワーモジュール140の接続端子142には、バスバー116,118の外部接続用端子116a,118aが電気的に接続される。以上により、モータ駆動用のインバータ回路が構成され、コンデンサ110が駆動用動力に対して平滑を目的として使用される。
【0005】
下記特許文献1においては、ケースの上面に樹脂を注入する開口が設けられ、その開口から外部に向けてバスバーが突出しているコンデンサが記載されている。このコンデンサにおいては、ケースの上面が他の面より面積が大きく形成されている。そして、ケースの上面の外周縁に、取り付け部が複数設けられ、これらの取り付け部によりコンデンサが被着装体に取り付けられる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−216756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のコンデンサ110は、固定対象となる構造体にケース112の底面128が接して固定される。コンデンサ110の形状は、略直方体である。構造体に固定されるコンデンサ110の安定化を図るために、ケース112の形状は構造体に接する底面128とこれに対向する上面である開口130との面積がケース112の他の面より大きく形成されている。
【0008】
このように従来及び上記特許文献1のコンデンサにおいては、樹脂注入用の開口がケースの他の面より大きい面積で形成されている。開口の面積が大きいため、開口から樹脂を注入するときに、樹脂の注入量が多くなってしまい、その結果、コスト高及び重量増になってしまうという問題があった。また、開口には、ケース外部から内部に侵入する湿気を防止するために防湿板を覆い被せる場合がある。この場合、大きい面積の開口に対応した防湿板が必要になり、コスト高になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、簡易な構造により、ケースの開口から注入する樹脂の量と防湿板の面積を減らし、コストの削減及び重量の低減を図ることができるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定対象となる構造体に底面を接して固定されるケースと、ケースに収納されたコンデンサ素子と、コンデンサ素子の両極にそれぞれ接続する2本のバスバーと、
を有し、各バスバーの一端に設けられた外部接続用端子をケースの外部に出してケース内を樹脂でモールドしたコンデンサにおいて、ケースの底面に交差するケースの一側面に、ケースの開口が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、ケースの底面と前記一側面とが交差する外周縁に設けられる固定部材は、その基端がケース内にまで伸びて形成され、その基端が樹脂でモールドされることにより固定部材がその外周縁に固着されることができる。
【0012】
また、2本のバスバーは、ケースの開口の近傍にあるコンデンサ素子の極に接続する第1のバスバーと、ケースの開口から遠方にあるコンデンサ素子の極に接続する第2のバスバーとからなり、第1のバスバーがコンデンサ素子の極に接続する部位からケースの外部までの間を、第2のバスバーが第1のバスバーに重なるように配線されることができる。
【0013】
また、前記構造体には、ケースの底面を冷却する冷却手段が設けられ、第2のバスバーはコンデンサ素子とケースの底面との間を配線されることが好適である。
【0014】
さらに、スイッチング素子を内蔵するパワーモジュールがケースの底面に対向する上面に設けられ、パワーモジュールの接続端子側と同じ方向に、ケースの開口が設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンデンサによれば、簡易な構造により、ケースの開口から注入する樹脂の量と防湿板の面積を減らし、コストの削減及び重量の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るコンデンサの実施形態について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るコンデンサの構成を示す図であり、図2は、図1のB−B線による断面を示す図である。
【0017】
コンデンサ10は、ケース12と、ケース12に収納されたコンデンサ素子14と、コンデンサ素子14の両極にそれぞれ接続するバスバー16,18とを有する。ケース12の内部には、樹脂20が充填されモールドされる。
【0018】
コンデンサ素子14は、誘電体フィルムに電極となる金属を蒸着したものを一対にして巻回し、両端面に陽極と陰極とをそれぞれ設けて構成されたものである。ここで、紙面の右側に位置するコンデンサ素子14の端面を例えば陽極、左側に位置するコンデンサ素子14の端面を例えば陰極とする。各コンデンサ素子14の陽極には、バスバー16が並列接続され、各コンデンサ素子14の陰極には、バスバー18が並列接続されている。バスバー16,18は、ケースの外部にそれぞれ突出し、それらの一端には外部接続用端子16a,18aが設けられている。本実施形態においては、コンデンサ素子14が3個設けられる場合について説明するが、これに限定されず、3個以上または3個以下であってもよい。
【0019】
コンデンサ10の上部には、スイッチング素子(図示せず)を内蔵するパワーモジュール40が設けられる。パワーモジュール40の接続端子42には、バスバー116,118の外部接続用端子116a,118aが電気的に接続される。以上により、モータ駆動用のインバータ回路が構成され、コンデンサ10が駆動用動力に対して平滑を目的として使用される。
【0020】
ケース12は、略直方体の形状であり、上部及び下部の面が一番大きい面積を有するように形成されている。以降、ケース12の下部の面のことを、底面28と記す。ケース12の底面28の外周縁28aには、ケース12の外側に突起した固定部材22が一体に設けられている。固定部材22は、固定対象となる構造体(図示せず)に対してボルト等を介して固定される。これにより、ケース12は、底面28が構造体に接するように固定される。
【0021】
本発明のコンデンサ10においては、ケース12の底面28に交差するケース12の一側面に、ケース12の開口30が形成されていることを特徴とする。コンデンサ10の製造過程において、この開口30からケース12内に樹脂20が注入されモールドされる。そして、開口30においては、ケース12外部から内部に侵入する湿気を防止するために、モールドされる樹脂20が所定の厚さを有している。開口30が形成されるケース12の一側面の面積は、ケース12の上部の面及び底面28の面積より小さい。このため、従来のようにケースの上部に形成された開口から注入される樹脂量に比べ、ケース12の一側面である開口30から注入される樹脂量のほうが少なくすることができる。樹脂量が少なくなるので、製造費を削減することができる。また、コンデンサ10の重量の軽量化を図ることができる。
【0022】
また、従来技術で述べたように、開口30には、ケース12外部から内部に侵入する湿気を防止するために防湿板(図示せず)を覆い被せる場合がある。防湿板はエポキシ樹脂からなる。上述のように、開口30が形成されるケース12の一側面の面積は、ケース12の上部の面及び底面28の面積より小さい。このため、従来のようにケースの上部に形成された開口に覆い被せる防湿板に比べ、ケース12の一側面である開口30に覆い被せる防湿板のほうがその面積が小さくすることができる。防湿板の面積が小さくなるので、防湿板に掛かるコストを削減することができる。また、コンデンサ10の重量の軽量化を図ることができる。
【0023】
上述したように固定部材22は底面28の外周縁28aに設けられる。しかしながら、開口30が形成されるケース12の一側面と底面28とが交差する外周縁28aには、固定部材22とケース12とを接合する接合面が少なく、その外周縁28aに安定して固定部材22を設けることができない。そこで、本実施形態のコンデンサ10においては、底面28と開口30が形成されるケース12の一側面とが交差する外周縁28aに設けられる固定部材24は、その基端24aがケース12内まで伸びて形成され、基端24aが樹脂20でモールドされることにより固定部材24がその外周縁28aに固着されるように構成される。これにより、固定部材24とケース12とを接合する接合面が少なくても、固定部材24を底面28の外周縁28aに確実に固定することができる。
【0024】
次に、本実施形態のコンデンサ10の別の態様について、図3を用いて説明する。このコンデンサ10においては、バスバー16がコンデンサ素子14の陽極(紙面右側の端面)に接続する部位からケース12の外部までの間を、バスバー18がバスバー16に重なるように配線されて構成される。
【0025】
具体的には、バスバー18は、コンデンサ素子14の陰極(紙面左側の端面)に接続し、そこからコンデンサ素子14とケース12の底面28との間をコンデンサ素子14の陽極側に向かい伸びて形成される。そして、バスバー18は、コンデンサ素子14の陽極側において、バスバー16に積層するように重なり合う。バスバー16,18は、重なり合った状態で開口30からケース12の外部に突出し、コンデンサ10の上部に位置するパワーモジュール40の接続端子42に接続している。バスバー16,18は、その外周を絶縁体により被覆されている。このため、バスバー16,18が互いに重なり合う区間は簡易的なコンデンサを構成する。本実施形態においては、バスバー18を上述したようなルートで配線することにより、バスバー16,18が互いに重なり合う区間が長くなり、簡易的なコンデンサを構成する区間が長くなる。そうすると、コンデンサ10とパワーモジュール40との間のバスバー16,18による配線の距離を実際より短い距離とみなすことができるので、インダクタンスをより低減することができる。また、コンデンサ10とパワーモジュール40の間のバスバー16,18による配線の距離を短くするために、ケース12の開口30がパワーモジュール40の接続端子42側と同じ方向に設けられることが好適である。
【0026】
この実施形態においては、構造体50にコンデンサ10を冷却する冷却手段52が設けられている。冷却手段52は、冷却媒体が流れる冷却ジャケットにより構成される。構造体50とケース12の底面28が接していることから、コンデンサ素子14とケース12の底面28との間を通り、熱伝導が良好なバスバー18により、効果的にコンデンサ10の内部を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るコンデンサの構成を示す図である。
【図2】図1のB−B線による断面を示す図である。
【図3】別の態様のコンデンサの構成を示す図である。
【図4】従来のコンデンサの構成を示す図である。
【図5】図4のA−A線による断面を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10,110 コンデンサ、12,112 ケース、14,114 コンデンサ素子、16,18,116,118 バスバー 20,120 樹脂、24,26,124 固定部材、30,130 開口、140 パワーモジュール、142 接続端子、50 構造体、52 冷却手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象となる構造体に底面を接して固定されるケースと、
ケースに収納されたコンデンサ素子と、
コンデンサ素子の両極にそれぞれ接続する2本のバスバーと、
を有し、
各バスバーの一端に設けられた外部接続用端子をケースの外部に出してケース内を樹脂でモールドしたコンデンサにおいて、
ケースの底面に交差するケースの一側面に、ケースの開口が形成されている、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
ケースの底面の外周縁に設けられ、ケースを前記構造体に固定する固定部材を有し、
ケースの底面と前記一側面とが交差する外周縁に設けられる固定部材は、その基端がケース内にまで伸びて形成され、その基端が樹脂でモールドされることにより固定部材がその外周縁に固着される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンデンサにおいて、
2本のバスバーは、ケースの開口の近傍にあるコンデンサ素子の極に接続する第1のバスバーと、ケースの開口から遠方にあるコンデンサ素子の極に接続する第2のバスバーとからなり、
第1のバスバーがコンデンサ素子の極に接続する部位からケースの外部までの間を、第2のバスバーが第1のバスバーに重なるように配線される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のコンデンサにおいて、
前記構造体には、ケースの底面を冷却する冷却手段が設けられ、
第2のバスバーはコンデンサ素子とケースの底面との間を配線される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のコンデンサにおいて、
スイッチング素子を内蔵するパワーモジュールがケースの底面に対向する上面に設けられ、
パワーモジュールの接続端子側と同じ方向に、ケースの開口が設けられている、
ことを特徴とするコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−34433(P2010−34433A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197209(P2008−197209)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】