説明

コンパレータ回路

【課題】 高速動作が可能で、かつオフセット電圧を高精度にキャンセルすること可能なコンパレータ回路を提供すること。
【解決手段】 増幅回路の出力を増幅して増幅回路の入力に帰還する第2の増幅回路を設け、コンパレータ回路が入力電圧をサンプルするときに、第2の増幅回路が帰還して増幅率を高くすることによって、オフセットをキャンセルするような構成とした。さらに、第2の増幅回路の増幅率より増幅回路の増幅率を低くし、コンパレータ回路が入力電圧をコンパレートするときに、第2の増幅回路の帰還と切り離すことによって、高速にコンパレート動作することが可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に搭載されるコンパレータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のコンパレータ回路の回路図である。図6は、従来のスイッチのオンオフを示すタイミングチャートである。
【0003】
コンパレータ回路の入力端子は、スイッチ14及び入力容量10を介してアンプゲインaの第一アンプ11の反転入力端子に接続されている。スイッチ14と入力容量10との接続点は、スイッチ15を介して接地されている。第一アンプ11の非反転入力端子は、接地されている。第一アンプ11の出力端子は、ラッチ回路13を介してコンパレータ回路の出力端子に接続されている。また、第一アンプ11の出力端子は、スイッチ16を介して第一アンプ11の反転入力端子に接続されている。
【0004】
スイッチ14及びスイッチ16は図6に示すクロック信号Φ1によってオンオフ制御され、スイッチ15はクロック信号Φ2によってオンオフ制御され、ラッチ回路13はクロック信号Φ2によって第一アンプ11の出力端子の電圧を増幅し、ラッチ回路する。
【0005】
次に、従来のコンパレータ回路のサンプリング状態の動作について説明する。図7は、従来のコンパレータ回路のサンプリング状態を示す回路図である。
【0006】
クロック信号Φ1がハイになってクロック信号Φ2がローになると、コンパレータ回路は図7に示す回路になってサンプリング状態になる。コンパレータ回路の入力端子の入力電圧Vinは、入力容量10にサンプリングされる。
【0007】
ここで、サンプリング状態における、第一アンプ11の反転入力端子の電圧をXN1とし、第一アンプ11の出力端子の電圧をVo1とし、第一アンプ11のアンプゲインをaとし、コンパレータ回路の入力端子の入力電圧をVinとし、オフセット電圧をVOFFとし
、入力容量10の電荷をQ1とすると、XN1は、
N1=a(0−XN1+VOFF)・・・(1)
によって表され、
N1=[a/(1+a)]VOFF・・・(2)
になる。また、Q1は、
Q1=C(XN1−Vin)=C[[a/(1+a)]VOFF−Vin]・・・(3)
になる。
【0008】
次に、従来のコンパレータ回路のホールド及びコンパレート状態の動作について説明する。図8は、従来のコンパレータ回路のホールド及びコンパレート状態を示す回路図である。
【0009】
クロック信号Φ2がハイになってクロック信号Φ1がローになると、コンパレータ回路は図8に示す回路になってホールド及びコンパレート状態になる。コンパレータ回路の入力端子は接地し、入力容量10にサンプリングされた入力電圧Vinは第一アンプ11によってコンパレート動作されてラッチ回路13に入力する。
【0010】
ここで、ホールド及びコンパレート状態における、第一アンプ11の反転入力端子の電圧をXN2とし、第一アンプ11の出力端子の電圧をVo2とし、入力容量10の電荷をQ2とすると、Q2は、
Q2=C(XN2−0)=CXN2・・・(4)
になる。電荷保存則からQ1とQ2とは等しいので、XN2は、
Q2=CXN2=Q1=C[[a/(1+a)]VOFF−Vin]・・・(5)
N2=[a/(1+a)]VOFF−Vin・・・(6)
になる。また、Vo2は、
Vo2=a(0−XN2+VOFF)・・・(7)
によって表される。式(6)を式(7)に代入すると、Vo2は、
Vo2=aVin+[a/(1+a)]VOFF・・・(8)
になる。
【0011】
式(8)のVo2は、ラッチ回路13に入力し、クロック信号Φ2に同期して大きく増幅され、ラッチ回路される。
【0012】
なお、オフセット調整端子を有するコンパレータ回路も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−092204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のコンパレータ回路は、第一アンプ11のオフセット電圧VOFFを十分キャンセルしようとすると、アンプゲインaを高くする必要がある。
しかしながら、クロック信号Φ1及びΦ2の周波数を早くして、第一アンプ11を高速で動作するようにした場合は、第一アンプ11の動作が追従しないので、アンプゲインaは低くなってしまう。アンプゲインaが低くなると、式(8)に示したように、オフセット電圧VOFFが十分キャンセルされなくなってしまうと言う課題がある。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みてなされ、オフセット電圧を高精度にキャンセルするとともに、高速で動作することができるコンパレータ回路を提供することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のコンパレータ回路は、上記課題を解決するため、入力容量に入力電圧をサンプルホールドすることによって増幅回路のオフセットをキャンセルするコンパレータ回路において、増幅回路の出力を増幅して増幅回路の入力に帰還する第2の増幅回路を設け、コンパレータ回路が入力電圧をサンプルするときに、第2の増幅回路が帰還して増幅率を高くすることによって、オフセットをキャンセルするような構成とした。
さらに、第2の増幅回路の増幅率より増幅回路の増幅率を低くし、コンパレータ回路が入力電圧をコンパレートするときに、第2の増幅回路の帰還と切り離すことによって、高速にコンパレート動作することが可能な構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、増幅回路の出力にサンプリング時に動作する第2の増幅回路を追加したので、サンプリング時にコンパレータ回路の入力端子の入力電圧に対する増幅率を高くでき、増幅回路のオフセット電圧を精度よくキャンセルすることが可能である。
【0017】
また、本発明は、ホールド及びコンパレート時にコンパレータ回路の入力端子の入力電圧に対するアンプゲインを低くできるので、高速なコンパレート動作が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のコンパレータ回路の回路図である。図2は、本実施形態のコンパレータ回路の、スイッチのオンオフを示すタイミングチャートである。
【0020】
本実施形態のコンパレータ回路は、スイッチ24及び25と、サンプルホールド用の入力容量20と、アンプゲインaの増幅回路である第一アンプ21と、アンプゲインAの第二の増幅回路である第二アンプ22と、ラッチ回路23を備えている。
スイッチ24は、コンパレータ回路の入力端子VINと入力容量20の一方の端子の間に接続されている。スイッチ25は、接地と入力容量20の一方の端子の間に接続されている。入力容量20の他方の端子は、第一アンプ21の反転入力端子に接続されている。第一アンプ21の非反転入力端子は、接地されている。第一アンプ21の出力端子は、ラッチ回路23を介してコンパレータ回路の出力端子OUTに接続されている。さらに、第一アンプ21の出力端子は、第二アンプ22の入力端子に接続されている。第二アンプ22の出力端子は、スイッチ26を介して第一アンプ21の反転入力端子に接続されている。
【0021】
第一アンプ21のアンプゲインa(例えば、10倍)は、第二アンプ22のアンプゲインA(例えば、100倍)よりも低く設定されている。そして、サンプリング状態では第一アンプ21及び第二アンプ22が使用され、ホールド及びコンパレート状態では第一アンプ21のみが使用される。
【0022】
スイッチ24及びスイッチ26は、図2に示すクロック信号Φ1によってオンオフ制御される。スイッチ25は、図2に示すクロック信号Φ2によってオンオフ制御される。ラッチ回路23は、クロック信号Φ2によって第一アンプ21の出力端子の電圧を増幅及びラッチする。図2に示すように、クロック信号Φ1の位相とクロック信号Φ2の位相とは相補的になっている。また、クロック信号Φ1とクロック信号Φ2とは、同時にローになる期間が存在している。従って、全てのスイッチが同時にオフになる期間が存在している。
【0023】
次に、本実施形態のコンパレータ回路のサンプリング状態の動作について説明する。図3は、本実施形態のコンパレータ回路のサンプリング状態を示す回路図である。
【0024】
クロック信号Φ1がハイになってクロック信号Φ2がローになると、スイッチ24及びスイッチ26はオンしてスイッチ25はオフし、コンパレータ回路は図3に示す回路になってサンプリング状態になる。コンパレータ回路の入力端子の入力電圧Vinは、入力容量20にサンプリングされる。また、第一アンプ21のアンプゲインaと第二アンプ22のアンプゲインAとを乗算したアンプゲインaAに基づいたフィードバックが、第二アンプ22の出力端子から第一アンプ21の反転入力端子に行われる。
【0025】
ここで、サンプリング状態における、第一アンプ21の反転入力端子の電圧をXN1とし、第一アンプ21の出力端子の電圧をVo1とし、第一アンプ21のアンプゲインをaとし、第二アンプ22のアンプゲインをAとし、コンパレータ回路の入力端子の入力電圧をVinとし、オフセット電圧をVOFFとし、入力容量20の電荷をQ1とすると、XN1は、
N1=aA(0−XN1+VOFF)・・・(9)
によって表され、
N1=[aA/(1+aA)]VOFF・・・(10)
になる。また、Q1は、
Q1=C(XN1−Vin)=C[[aA/(1+aA)]VOFF−Vin]・・・(11)
になる。
【0026】
次に、本実施形態のコンパレータ回路のホールド及びコンパレート状態の動作について説明する。図4は、本実施形態のコンパレータ回路のホールド及びコンパレート状態を示す回路図である。
【0027】
クロック信号Φ2がハイになってクロック信号Φ1がローになると、スイッチ24及びスイッチ26はオフしてスイッチ25はオンし、コンパレータ回路は図4に示す回路になってホールド及びコンパレート状態になる。コンパレータ回路の入力端子は接地し、入力容量20にサンプリングされた入力電圧Vinは第一アンプ21によってコンパレート動作されてラッチ回路23に入力する。
【0028】
ここで、ホールド及びコンパレート状態における、第一アンプ21の反転入力端子の電圧をXN2とし、第一アンプ21の出力端子の電圧をVo2とし、入力容量20の電荷をQ2とすると、Q2は、
Q2=C(XN2−0)=CXN2・・・(12)
になる。電荷保存則からQ1とQ2とは等しいので、XN2は、
Q2=CXN2=Q1=C[[a/(1+a)]VOFF−Vin]・・・(13)
N2=[aA/(1+aA)]VOFF−Vin・・・(14)
になる。また、Vo2は、
Vo2=a(0−XN2+VOFF)・・・(15)
によって表される。式(14)を式(15)に代入すると、Vo2は、
Vo2=aVin+[a/(1+aA)]VOFF・・・(16)
になる。
【0029】
式(16)のVo2は、ラッチ回路23に入力し、クロック信号Φ2に同期して大きく増幅される。その結果、コンパレータ回路の出力端子の電圧は、ほぼ電源電圧または接地電圧になる。
【0030】
ここで、A>>aであるので、
a/(1+aA)≒0・・・(17)
が成立し、
Vo2≒aVin・・・(18)
が成立する。
【0031】
以上、説明したように、増幅回路の出力にサンプリング時に動作する第2の増幅回路を追加したので、サンプリング時にコンパレータ回路の入力端子の入力電圧に対する増幅率を高くでき、増幅回路のオフセット電圧を精度よくキャンセルすることが可能である。
【0032】
また、ホールド及びコンパレート時にコンパレータ回路の入力端子の入力電圧Vinに対するアンプゲインを低くできるので、高速なコンパレート動作が可能である。さらに、コンパレータ回路の入力端子VINからみたミラー容量が小さくなる、と言う効果がある。
【0033】
なお、本実施形態のコンパレータ回路は、第一アンプ21の非反転入力端子が接地されているが、適当な電位が与えられてもよい。また、スイッチ25が入力容量20と接地の間に接続されているが、入力容量20と適当な電位の間に接続されてもよい。
【0034】
本発明のコンパレータ回路は、高速で高精度のコンパレート動作が要求されるADコンバータやDAコンバータに適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のコンパレータ回路の回路図である。
【図2】本発明のコンパレータ回路の、スイッチのオンオフを示すタイミングチャートである。
【図3】本発明のコンパレータ回路の、サンプリング状態を示す回路図である。
【図4】本発明のコンパレータ回路の、ホールド及びコンパレート状態を示す回路図である。
【図5】従来のコンパレータ回路の回路図である。
【図6】従来のコンパレータ回路の、スイッチのオンオフを示すタイミングチャートである。
【図7】従来のコンパレータ回路の、サンプリング状態を示す回路図である。
【図8】従来のコンパレータ回路の、ホールド及びコンパレート状態を示す回路図である。
【符号の説明】
【0036】
20 入力容量
21 第一アンプ
22 第二アンプ
23 ラッチ回路
24、25、26 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力容量に入力電圧をサンプルホールドすることによって増幅回路のオフセットをキャンセルするコンパレータ回路において、
前記増幅回路の出力を増幅して前記増幅回路の入力に帰還する第2の増幅回路を設け、前記コンパレータ回路が前記入力電圧をサンプルするときに、前記第2の増幅回路が帰還して増幅率を高くすることによって、オフセットをキャンセルするコンパレータ回路。
【請求項2】
前記第2の増幅回路の増幅率より前記増幅回路の増幅率を低くすることによって、高速にコンパレート動作することが可能な請求項1に記載のコンパレータ回路。
【請求項3】
コンパレータ回路入力端子と、
一端が、第1のスイッチを介して前記コンパレータ回路入力端子と、第2のスイッチを介して接地と、接続された入力容量と、
第一入力端子が前記入力容量の他端に接続され、第二入力端子が比較電位と接続された、増幅回路と、
入力端子が前記増幅回路の出力端子に接続され、出力端子が第3のスイッチを介して前記増幅回路の第一入力端子に接続された第2の増幅回路と、
入力端子が前記増幅回路の出力端子に接続され、出力端子がコンパレータ回路出力端子に接続されたラッチ回路と、を備えているコンパレータ回路。
【請求項4】
サンプルホールド動作中に前記第3のスイッチが接続状態になり、コンパレート動作中に前記第3のスイッチが切断状態になる請求項3に記載のコンパレータ回路。
【請求項5】
前記増幅回路の増幅率が、前記第2の増幅回路の増幅率より低い請求項3または4に記載のコンパレータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178079(P2008−178079A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291686(P2007−291686)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】