説明

コーティング用樹脂組成物および該組成物を用いて得られる硬化体

【課題】デバイスの性能をさらに改善でき、かつ、デバイス間での性能のばらつきを小さくできるコーティング用樹脂組成物の提供。
【解決手段】コーティング用樹脂組成物5は、無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる無機粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含む。より具体的には、コーティング用樹脂組成物は、磁性粒子6と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むか、あるいは、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用樹脂組成物および該組成物を用いて得られる硬化体に関する。より詳しくは、本発明は、無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる無機粒子被覆体を含むコーティング用樹脂組成物、および該組成物を用いて得られる硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やデジタルカメラ等の携帯型電子機器などにおいて、電源装置や駆動回路にインダクタが用いられている。このようなインダクタは、通常、金属線を巻回して成るコイルと、このコイルに接続される端子電極とを備えている。上記インダクタとしては、薄くかつ小型であるとともに、大きなインダクタンスを有することが求められている。
【0003】
これに対して、特許文献1では、磁性材粉を含有した磁性樹脂(コーティング用樹脂組成物)から得られる硬化体によってインダクタのコイルを覆って、インダクタのインダクタンスを大きくする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306017号公報
【特許文献2】特許第2927279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたインダクタでは、インダクタンスの値について、ばらつきが大きいという問題がある。
したがって、本発明の目的は、インダクタにおけるインダクタンスの値を大きくでき、かつ、インダクタンスの値のばらつきを小さくできるコーティング用樹脂組成物を得ることにある。また、本発明の他の目的は、大きなインダクタンスの値を有し、インダクタンスの値のばらつきが小さいインダクタを得ることにある。
【0006】
また、白色光が得られる発光装置として、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体からなるLEDチップと、該LEDチップを覆っているコーティング部材(硬化体)とを有する発光装置が知られている(特許文献2など)。ここで、コーティング部材は、YAG系蛍光体を含有する透明樹脂(コーティング用樹脂組成物)から得られる。この発光装置では、上記LEDチップは青色光を放ち、該LEDチップの周囲に存在するコーティング部材中の上記YAG系蛍光体は該青色光によって励起され黄色光を放つ。そして、青色光と黄色光との混色により、白色光が得られる。
【0007】
しかしながら、製造された発光装置における白色光の色度について、ばらつきが大きいという問題がある。
したがって、本発明の目的は、好ましい色度の白色光が得られ、かつ、白色光の色度のばらつきを小さくできるコーティング用樹脂組成物を得ることにある。また、本発明の他の目的は、好ましい色度の白色光を放ち、白色光の色度のばらつきが小さい発光装置を得ることにある。
【0008】
このように、磁性材粉やYAG系蛍光体などの無機粒子を含むコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体を有するデバイスでは、性能をさらに改善する際に、デバイス間での性能のばらつきを抑える必要がある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、デバイスの性能を改善でき、かつ、デバイス間での性能のばらつきを小さくできるコーティング用樹脂組成物を得ることにある。また、本発明の他の目的は、性能が改善されており、デバイス間での性能のばらつきが小さいデバイスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる無機粒子被覆体を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明に係るコーティング用樹脂組成物は、無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる無機粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る硬化体は、上記コーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする。
本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
【0012】
上記磁性粒子被覆体において、上記磁性粒子および上記被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、上記被覆樹脂体が50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、上記磁性粒子が0質量部を超え50質量部未満の量で含まれることが好ましい。
【0013】
上記被覆樹脂体は、エポキシ化合物から形成される硬化物であることが好ましい。
または、上記被覆樹脂体は、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物であることが好ましい。
【0014】
または、上記被覆樹脂体は、ポリイミド樹脂から形成されることが好ましい。
上記硬化性樹脂はエポキシ化合物であることが好ましい。
本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物の製造方法は、上記磁性粒子被覆体を作製した後、上記磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を混合することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る第一の硬化体は、第一のコーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする。
本発明に係るインダクタは、金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えたインダクタであって、上記コイル表面の少なくとも一部が、第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆われることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るインダクタの製造方法は、金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えたインダクタの製造方法であって、上記端子電極が形成された基台を多数個取りできる集合基台に、複数のコイルを搭載するコイル搭載工程と、上記搭載されたコイル表面の少なくとも一部を、第一のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体によって覆い、集合インダクタを製造する集合インダクタ製造工程と、上記集合インダクタを単個のインダクタに切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
【0018】
上記蛍光体粒子被覆体において、上記蛍光体粒子および上記被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、上記被覆樹脂体が50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、上記蛍光体粒子が0質量部を超え50質量部未満の量で含まれることが好ましい。
【0019】
上記被覆樹脂体は、シリコーン樹脂から形成される硬化物であることが好ましい。
本発明に係る第二の硬化体は、第二のコーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る発光装置は、LEDチップ(発光ダイオードのチップ)と、該LEDチップを覆っている硬化体とを備えた発光装置であって、上記硬化体が、第二のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る発光装置の製造方法は、LEDチップと、該LEDチップを覆っている硬化体とを備えた発光装置の製造方法であって、上記LEDチップを第二のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体で覆う工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るコーティング用樹脂組成物を用いてデバイスを製造すると、デバイスの性能を改善でき、かつ、デバイス間での性能のばらつきを小さくできる。
具体的には、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物を用いてインダクタを製造すると、インダクタにおけるインダクタンスの値を大きくでき、かつ、インダクタンスの値のばらつきを小さくできる。
【0023】
さらに、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物を用いて発光装置を製造すると、好ましい白色光の色度が得られ、かつ、白色光の色度のばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施形態1のインダクタを説明するための図である。
【図2】図2は、実施形態1のインダクタを説明するための図である。
【図3】図3は、実施形態2のインダクタを説明するための図である。
【図4】図4は、実施形態2のインダクタを説明するための図である。
【図5】図5は、実施形態3のインダクタを説明するための図である。
【図6】図6は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図7】図7は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図8】図8は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図9】図9は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図10】図10は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図11】図11は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図12−1】図12−1は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図12−2】図12−2は、実施形態1のインダクタの製造方法を説明するための図である。
【図13】図13は、磁性粒子被覆体において、被覆樹脂体の付着の様子を説明するための図である。
【図14】図14は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【図15】図15は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【図16】図16は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【図17】図17は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【図18】図18は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【図19】図19は、本発明に係る発光装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るコーティング用樹脂組成物は、無機粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含み、無機粒子被覆体は、無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる。また、本発明に係る硬化体は、上記コーティング用樹脂組成物から得られる。本発明に係るコーティング用樹脂組成物には上記被覆樹脂体が含まれているため、該樹脂組成物を硬化させて硬化体を製造するときに、無機粒子が沈降せず、硬化体中に無機粒子が均一に分散される。したがって、後述するように、本発明に係るコーティング用樹脂組成物を用いてデバイスを製造すると、デバイスの性能を改善でき、かつ、デバイス間での性能のばらつきを小さくできる。
【0026】
以下、第一のコーティング用樹脂組成物、第一の硬化体、第二のコーティング用樹脂組成物および第二の硬化体について詳しく説明する。
【0027】
<第一のコーティング用樹脂組成物および第一の硬化体>
〔第一のコーティング用樹脂組成物〕
本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物は、磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含む。
【0028】
(磁性粒子被覆体)
上記磁性粒子被覆体は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる。本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物には上記被覆樹脂体が含まれているため、該樹脂組成物を硬化させて第一の硬化体を製造するときに、磁性粒子が沈降せず、第一の硬化体中に磁性粒子が均一に分散される。詳細には、磁性粒子に被覆樹脂体が付着することにより、磁性粒子被覆体全体では、磁性粒子よりも比重が低下している。一方、第一のコーティング用樹脂組成物は加熱により硬化する過程で一度粘度が低下する場合がある。この過程において、比重が低下されている磁性粒子被覆体は、磁性粒子が単独で組成物中に存在するときよりも沈降し難い。このため、最終的に得られた第一の硬化体中では磁性粒子は均一に分散される。したがって、後述するように、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物によれば、大きなインダクタンスの値(本明細書において、「インダクタンスの値」を「L値」ともいう。)を有し、かつ、インダクタンスの値のばらつきが小さいインダクタを製造できる。なお、第一の硬化体中では、被覆樹脂体と硬化性樹脂が硬化した部分とは一体化している。
【0029】
上記被覆樹脂体は、エポキシ化合物から形成される硬化物、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物、またはポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0030】
まず、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合の磁性粒子被覆体について説明する。
磁性粒子を形成する材料としては、フェライト、アモルファス合金、パーマロイ、電磁軟鉄、ケイ素鋼、センダスト合金およびFe−Al合金が挙げられる。これらの材料からなる磁性粒子を単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
フェライトとは、下記組成式(1)で表される酸化物である。
AFe24 (1)
(Aは、Mn、Mg、Ni、Co、CuまたはZnの二価の金属イオンを表す。Aとしては、上記金属イオンを単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。)
【0032】
特に、NiZn系フェライト(上記式(1)において、AがNiおよびZnの二価の金属イオンである場合)およびMnZn系フェライト(上記式(1)において、AがMnおよびZnの二価の金属イオンである場合)が好適に用いられる。なお、フェライトからなる磁性粒子は、はフェライト焼結体を微粉砕した焼結フェライト粉末であってもよい。
【0033】
アモルファス合金としては、コバルト系、鉄系、ニッケル系の高透磁率材料が挙げられる。アモルファス合金は、たとえば、Co、FeおよびNiを合計で70〜98質量%、B、SiおよびPを合計で2〜30質量%含み(Co、FeおよびNiとB、SiおよびPとの合計を100質量%とする。)、さらに、Al、Mn、Zr、Nbなどを含む。
【0034】
コバルト系の高透磁率材料としては、具体的には、Co−84質量%とFe−5.3質量%とSi−8.5質量%とB−2.2質量%とからなる合金、Co−84質量%とFe−3.3質量%とB−1.3質量%とP−9.8質量%とAl−1.6質量%とからなる合金、Co−89質量%とFe−5.3質量%とSi−2.3質量%とB−3.4質量%とからなる合金、Co−81.9質量%とFe−5.1質量%とSi−10質量%とB−3質量%とからなる合金、Co−80質量%とFe−10質量%とSi−6質量%とB−4質量%とからなる合金、Co−78.8質量%とFe−5.1質量%とSi−6.1質量%とB−4.7質量%とNi−5.3質量%とからなる合金が挙げられる。鉄系の高透磁率材料としては、具体的には、Fe−95.4質量%とB−4.6質量%とからなる合金、Fe−91.4質量%とSi−5.9質量%とB−2.7質量%とからなる合金が挙げられる。Ni系の高透磁率材料としては、具体的には、Ni−94.5質量%とP−5.5質量%とからなる合金が挙げられる。
【0035】
パーマロイとしては、78−Permalloy、45−Permalloy、Hipernik、Monimax、Sinimax、Radiometal、1040 Alloy、Mumetal、Cr−Permalloy、Mo−Permalloy、Supermalloy、Hardperm、36−Permalloy、Deltamax、角形ヒステリシスパーマロイ、JIS PB 1種および2種、JIS PC 1種〜3種、JIS Pd 1種および2種、JIS PE 1種および2種などが挙げられる。電磁軟鉄としては、工業純鉄、アームコ鉄、Cioffi純鉄、低炭素鋼板などが挙げられる。ケイ素鋼としては、無方向性ケイ素鋼、方向性ケイ素鋼などが挙げられる。センダスト合金およびFe−Al合金としては、アルパーム、ハイパーマル、センダスト、スーパーセンダストなどが挙げられる。
【0036】
磁性粒子を形成する材料としては、透磁率が高い材料ほど好ましい。
これらのうちで、NiZn系またはMnZn系フェライトからなる磁性粒子、アモルファス合金からなる磁性粒子が好適に用いられる。
【0037】
被覆樹脂体を作製するために用いるエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造や分子量などは限定されず、該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0038】
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、具体的には、少なくとも一個の脂環式エポキシ環を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。上記エポキシ樹脂は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記エポキシ化合物は、常温(25℃)で液体のものもあれば固体のものもある。上記被覆樹脂体を作製する際に固体のエポキシ樹脂を用いる場合は、液体のエポキシ樹脂と混合し溶解して用いることが好ましい。これらのうちで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0039】
エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合、磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物を硬化させるための顕在型硬化剤、より具体的には付加重合型硬化剤を用いて作製する。付加重合型硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤などが挙げられる。上記付加重合型硬化剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
以下に、エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合において、磁性粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、磁性粒子とエポキシ化合物と付加重合型硬化剤とを配合した配合物を作製する。このとき、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤のみを混合した混合物の粘度が10000cP以上となるように、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物を硬化させるときに、磁性粒子が均一に分散したまま硬化させることができる。すなわち、最終的に得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。付加重合型硬化剤は、エポキシ化合物100質量部に対して、通常5〜50質量部の量で配合する。また、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤(合計)は、エポキシ化合物、付加重合型硬化剤および磁性粒子100質量部中に、通常50質量部を超え100質量部未満の量で、好ましくは、50質量部を超え80質量部以下の量で配合することが望ましい。これにより、得られた磁性粒子被覆体中での被覆樹脂体および磁性粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。
【0041】
次いで、上記配合物を硬化させるが、該硬化は、通常、常温(25℃)にて30分〜2日で完了する。このようにして得られた硬化物中で、磁性粒子は分散している。
次いで、この硬化物を粉砕して、磁性粒子被覆体を製造する。たとえば、ミルを用いて硬化物を粉砕して磁性粒子被覆体を製造してもよく、また、ミルを用いて硬化物を粉砕して粉砕物を得た後、分級して磁性粒子被覆体を製造してもよい。このようにして得られた磁性粒子被覆体は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤から形成された硬化物である。
【0042】
また、エポキシ化合物として脂環式エポキシ樹脂を用いる場合、磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物を硬化させるための顕在型硬化剤、より具体的にはカチオン型硬化剤を用いて作製する。カチオン型硬化剤としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート等のヨードニウム塩化合物、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート等のスルホニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物、鉄−アレーン錯体化合物などが挙げられる。上記カチオン型硬化剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
以下に、エポキシ化合物として脂環式エポキシ樹脂を用いる場合において、磁性粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、エポキシ化合物とカチオン型硬化剤とを配合した配合物を作製する。このとき、上記混合物の粘度が1000cP以下となるように、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、磁性粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。カチオン型硬化剤は、エポキシ化合物100質量部に対して、通常0.5〜10質量部の量で配合する。
【0044】
なお、上記配合物には、エーテル、ヘキサンなどの揮発性溶媒をさらに混合してもよい。この場合は、揮発性溶媒は、エポキシ化合物100質量部に対して、たとえば0.3〜10質量部の量で用いる。
【0045】
次いで、磁性粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、紫外線を照射し、磁性粒子の表面でエポキシ化合物を重合させて、磁性粒子被覆体を製造する。このとき、磁性粒子に風を当てて、磁性粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。また、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤(合計)は、エポキシ化合物、カチオン型硬化剤および磁性粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた磁性粒子被覆体中での被覆樹脂体および磁性粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた磁性粒子被覆体は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤から形成された硬化物である。
【0046】
次に、上記被覆樹脂体が分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物である場合の磁性粒子被覆体について説明する。(メタ)アクリロイル基含有化合物は、紫外線照射により重合できる化合物である。なお、本明細書において、アクリロイル基およびメタクリロイル基をあわせて「(メタ)アクリロイル基」ともいう。
【0047】
磁性粒子については、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合と同じである。
被覆樹脂体を作製するために用いる分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが挙げられる。これらのうちで、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが好適に用いられる。
【0048】
被覆樹脂体を作製するために用いる分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート等の二官能の化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の化合物が挙げられる。また、多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、さらに、ポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマー等、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル系プレポリマーが挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーは、たとえば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化することによっても得られる。エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、たとえば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させエステル化して得られる。ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、たとえば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化して得られる。ポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られる。これらのうちで、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエステルアクリレート系プレポリマーが好適に用いられる。
【0049】
上記(メタ)アクリロイル基含有化合物は、硬化物が得られる限り、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化性の観点から、たとえば、一種または二種以上の多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物を用いることが好ましい。また、一種または二種以上の単官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物と一種または二種以上の多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0050】
磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体を作製する際には、通常、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる。ラジカル重合開始剤は、紫外線照射によりラジカルを発生し、(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合を開始させる。
【0051】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等のベンゾフェノン系開始剤、ベンジル、フェニルメトキシジケトン等のジケトン系開始剤、アセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系開始剤、2,4―ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤、2−メチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン系開始剤などが挙げられる。これらの中で、吸収波長の観点からアセトフェノン系開始剤が好適に用いられる。上記ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
以下に、磁性粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、(メタ)アクリロイル基含有化合物とラジカル重合開始剤とを配合した配合物を作製する。このとき、上記配合物の粘度が1000cP以下となるように、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、磁性粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。ラジカル重合開始剤は、(メタ)アクリロイル基含有化合物100質量部に対して、通常0.3〜10質量部の量で配合する。
【0053】
なお、上記配合物には、エーテル、ヘキサンなどの揮発性溶媒をさらに混合してもよい。この場合は、揮発性溶媒は、(メタ)アクリロイル基含有化合物100質量部に対して、たとえば0.3〜10質量部の量で用いる。
【0054】
次いで、磁性粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、紫外線を照射し、磁性粒子の表面で(メタ)アクリロイル基含有化合物を重合させて、磁性粒子被覆体を製造する。このとき、磁性粒子に風を当てて、磁性粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤(合計)は、(メタ)アクリロイル基含有化合物、ラジカル重合開始剤および磁性粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた磁性粒子被覆体中での被覆樹脂体および磁性粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた磁性粒子被覆体は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤から形成された硬化物である。
【0055】
最後に、上記被覆樹脂体がポリイミド樹脂である場合の磁性粒子被覆体について説明する。
磁性粒子については、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合と同じである。
【0056】
被覆樹脂体を作製するために用いるポリイミド樹脂は、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、該ポリイミド樹脂としては、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸との縮合重合体、芳香族ジアミンとビスマレイミドとの付加重合体であるビスマレイミド樹脂、アミノ安息香酸ヒドラジドとビスマレイミドとの付加重合体であるポリアミノビスマレイミド樹脂、ジシアネート化合物とビスマレイミド樹脂とからなるビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられる。ポリイミド樹脂は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体を作製する際には、通常、ポリイミド樹脂を溶媒中に溶解させた配合物を用いる。上記溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒が挙げられる。
【0058】
以下に、磁性粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、ポリイミド樹脂と溶媒とを配合した配合物を作製する。このとき、溶媒は、ポリイミド樹脂を溶解できる量で配合する。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、磁性粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。
【0059】
次いで、磁性粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、溶媒を蒸発させて、磁性粒子被覆体を製造する。このとき、磁性粒子に風を当てて、磁性粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。特に、熱風を当てて溶媒を蒸発させることが好ましい。また、ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂および磁性粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた磁性粒子被覆体中での被覆樹脂体および磁性粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた磁性粒子被覆体は、磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、ポリイミド樹脂で形成されている。
【0060】
上述した磁性粒子被覆体において、磁性粒子被覆体(磁性粒子および被覆樹脂体の合計)を100質量部としたときに、被覆樹脂体が好ましくは50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、より好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量で含まれ、磁性粒子が好ましくは0質量部を超え50質量部未満の量で含まれ、より好ましくは20質量部以上50質量部未満の量で含まれることが望ましい。磁性粒子および被覆樹脂体の量が上記範囲にあると、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物を硬化させて第一の硬化体を製造するときに、磁性粒子がより沈降せず、第一の硬化体中に磁性粒子がより均一に分散される。詳細には、磁性粒子に被覆樹脂体が上記割合で付着することにより、磁性粒子被覆体全体では、磁性粒子よりも比重が大きく低下している。ところで、第一のコーティング用樹脂組成物は加熱により硬化する過程で一度粘度が低下する場合がある。この過程において、比重が低下されている磁性粒子被覆体は、沈降し難い。このため、最終的に得られた第一の硬化体中では磁性粒子はより均一に分散される。したがって、このような磁性粒子被覆体を含む第一のコーティング用樹脂組成物によれば、大きなL値を有し、かつ、L値のばらつきがより小さいインダクタを製造できる。なお、磁性粒子被覆体中の磁性粒子および被覆樹脂体の量の割合は、通常、磁性粒子被覆体を作製するときに用いる原料の量の割合と同じであるとみなせる。具体的には、エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合であれば、磁性粒子とエポキシ化合物および付加重合型硬化剤との割合と、磁性粒子と被覆樹脂体との割合は同じであるとみなせる。他のエポキシ化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびポリイミド樹脂を用いるときも同様にみなすことができる。
【0061】
上述のようにして得られた磁性粒子被覆体において、被覆樹脂体は磁性粒子表面の少なくとも一部に付着している。詳細には、磁性粒子被覆体60において、被覆樹脂体61は磁性粒子6表面全体を一様に覆うか(図13(a))または間欠的に覆っていてもよく(図13(b))、磁性粒子6表面の一部を一様に覆うか(図13(c))または間欠的に覆っていてもよい(図13(d))。また、磁性粒子被覆体一つの中に、磁性粒子が一つ含まれていても、複数含まれていてもよい。
【0062】
エポキシ化合物から形成される硬化物、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物、およびポリイミド樹脂のうち、被覆樹脂体としては作製の容易さから、エポキシ化合物から形成される硬化物がより好ましく用いられる。
【0063】
(フュームドシリカ)
フュームドシリカを用いると、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物中で磁性粒子被覆体の沈降を抑えることができ、さらに、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物を加熱し硬化させて第一の硬化体を製造する過程において、組成物の粘度の変化を小さく抑えることができる。このように、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物では、上記磁性粒子被覆体とフュームドシリカとを含むため、該樹脂組成物を硬化させて第一の硬化体を製造するときに、磁性粒子が沈降せず、第一の硬化体中に磁性粒子が均一に分散される。したがって、後述するように、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物によれば、大きなL値を有し、L値のばらつきが小さいインダクタを製造できる。
【0064】
フュームドシリカは、通常四塩化ケイ素等の揮発性ケイ素化合物を気化し、たとえば酸素水素炎中で燃焼加水分解して製造される。本発明では、特に制限されず、公知のものを用いることができる。フュームドシリカは、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
フュームドシリカは、一次粒径が5〜50nmの範囲にあることが好ましい。
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ化合物、具体的には芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂が好適に用いられる。芳香族エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂については、磁性粒子被覆体において説明したエポキシ樹脂と同様である。
【0066】
(その他)
その他の成分として、硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤が用いられる。硬化性樹脂が芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂の場合は、通常、加熱により硬化性樹脂を硬化できる潜在型硬化剤、あるいは常温(25℃)または加熱下で硬化性樹脂を硬化できる顕在型硬化剤が用いられる。上記潜在型硬化剤としては、たとえば、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、カプセル型イミダゾール系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤などの硬化剤が挙げられる。上記顕在型硬化剤としては、上述した付加重合型硬化剤が挙げられる。硬化剤は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
なお、第一のコーティング用樹脂組成物に潜在型硬化剤を用いると、加熱により硬化する過程で組成物の粘度は一旦低下する。しかしながら、第一のコーティング用樹脂組成物では、磁性粒子は比重が低下されている磁性粒子被覆粒体として存在しているため、該樹脂組成物は、磁性粒子が沈降せずに均一に分散された状態で硬化できる。
【0068】
第一のコーティング用樹脂組成物は、色材をさらに含んでいてもよい。色材を用いる場合は、第一のコーティング用樹脂組成物全量中に0.01〜3.0質量%の量で含まれていることが好ましい。
【0069】
(第一のコーティング用樹脂組成物)
本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物は、上述した磁性粒子被覆体、フュームドシリカ、硬化性樹脂、および必要に応じて硬化剤などその他の成分を含む。いいかえると、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物は、上述のように磁性粒子被覆体を作製した後、磁性粒子被覆体、フュームドシリカ、硬化性樹脂、および必要に応じて硬化剤などその他の成分を混合して得られる。硬化剤を用いるときは、硬化性樹脂および硬化剤100質量部に対して、磁性粒子被覆体を10〜1000質量部の量で、フュームドシリカを0.1〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の量で配合することが望ましい。配合量が上記範囲にあると、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物を硬化させて第一の硬化体を製造する過程において、磁性粒子が沈降せず、第一の硬化体中に磁性粒子を均一に分散させることができる。また、硬化剤は、第一のコーティング用樹脂組成物を硬化できる量で用いればよいが、たとえば、硬化性の観点から、硬化性樹脂1当量に対して硬化剤を0.7〜1.3当量の量で配合することが好ましい。
【0070】
〔第一の硬化体〕
本発明に係る第一の硬化体は第一のコーティング用樹脂組成物から得られ、該第一の硬化体では、樹脂被覆体および硬化性樹脂から形成されるマトリックス中に磁性粒子が均一に分散されている。この第一の硬化体は、携帯型電子機器に搭載されるインダクタに好適に用いられるため、該第一の硬化体をインダクタに用いた場合を例として説明する。
【0071】
本発明に係るインダクタは、金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えたインダクタであって、コイル表面の少なくとも一部が、第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆われる。以下、インダクタの実施形態について、図面を用いながら、より具体的に説明する。
【0072】
(実施形態1のインダクタ)
まず、図1および図2に基づいて、実施形態1のインダクタの構成を説明する。ここで、図1は実施形態1のインダクタの外観斜視図であり、図2は図1に示す切断線A−Aによる断面図である。実施形態1のインダクタでは、リードフレームによって端子電極が形成され、コイルの全周(外周の全て)に上記第一の硬化体が形成されている。
【0073】
図1および図2に示す実施形態1のインダクタ(インダクタ1)において、ボビン2はフェライトなどの磁性体からなり、円柱状の巻芯2aの両端に径大のフランジ部2bを有している。このボビン2の巻芯2aに金属線3が巻回されてコイル4が形成される。
【0074】
コイル4の外周表面は、磁性粒子6を含む第一の硬化体5で覆われている。この第一の硬化体5は、上述した第一のコーティング用樹脂組成物から形成される。なお、第一の硬化体5に含有される磁性粒子6は、模式的に図示しており、実際には微小な粒子であるため目では見えない。このように、第一の硬化体5は磁性粒子6を含むため、磁性体としての性質を有する。したがって、第一の硬化体5がコイル4の外周の全周を覆っていると、コイル4は、磁性材であるボビン2の巻芯2a、フランジ部2bおよび第一の硬化体5により、ポット型コアのように磁気回路が閉じた状態(すなわち閉磁路)となる。この結果、コイル4が第一の硬化体5によって覆われていない場合と比較してコイル4の透磁率μは高くなり、インダクタのL値が大きくなる。ところで、特開2008−306017号公報に開示されているインダクタにおいても、コイルは硬化体によって覆われているため、コイルを硬化体によって覆わない場合と比較して、コイルの透磁率μおよびL値は大きい。しかしながら、本発明に係る第一の硬化体は、上述した磁性粒子被覆体を含む第一のコーティング用樹脂組成物から形成されることにより、特開2008−306017号公報の硬化体よりも、磁性粒子がより均一に分散されている。したがって、実施形態1のインダクタの方が、特開2008−306017号公報のインダクタよりもコイルの透磁率μおよびL値のばらつきが抑えられる。
【0075】
また、所定のL値を有するインダクタを作製する場合は、実施形態1のインダクタでは、コイル4を第一の硬化体5によって覆わない場合よりも、金属線の巻回数を減らすことができる。このため、実施形態1のインダクタでは、コイル4を第一の硬化体5によって覆わない場合よりも、コイルの大きさを小さくできる、すなわち、インダクタの小型化が図れる。ところで、インダクタの大きさが小さくなると、インダクタ自体が閉磁性を有するようになる。このような小さなインダクタに本発明に係る第一の硬化体を用いると、L値をより向上できる利点もある。
【0076】
なお、磁性粒子6の含有量が多いほど、コイル4の透磁率μは高くなりL値も大きくなるが、第一の硬化体5を形成する際の作業性やコストを考慮して適切な含有量を決定すればよい。また、第一の硬化体5は、図2で示すようにボビン2のフランジ部2bの間に入るように形成されると、磁気回路の磁気抵抗が下がるため、L値を効率よく大きくできる。
【0077】
また、基台としてのリードフレーム11は金属材料よりなり、コイル4を搭載する円形の貫通穴13が形成されている。また、14a〜14dはリードフレーム11によってインダクタ1の四隅に形成される4個の端子電極である(端子電極14dは図面上コイル4の裏側に隠れている)。この端子電極14a〜14dは、金属線3側の一方向に折り曲げられた折り曲げ部15a〜15dを有している。端子電極14a、14bの折り曲げ部15a、15bには金属線3の巻線端末3a、3bが絡げられ、その後、溶接や半田付けなどによって電気的に結合される。一方、端子電極14c、14dは、通常は未接続であり、ダミー端子として用いられる。なお、端子電極14a〜14dに対する巻線端末3a、3bの接続は、端子電極14a、14bに限定されず任意でよい。また、インダクタ1をトランスとして使用する場合は、たとえば、金属線3を2重に巻回し、金属線3の4本の巻線端末をそれぞれの端子電極14a〜14dに結合する。そして、端子電極14a〜14dは、インダクタ1を実装する実装基板(図示せず)などと接続され、実装基板上の電子回路と電気的に接続される。
【0078】
また、通常、磁性粒子を含まず、エポキシ樹脂などからなる封止材7によって、コイル4、コイル4を覆う第一の硬化体5およびリードフレーム11上の端子電極14a〜14dを封止する。これにより、磁性粒子6がインダクタ1の表面に露出せず、実装時の接触や使用中の衝撃などによる磁性粒子6の脱落が抑えられ、安定したL値を有し信頼性に優れたインダクタが提供できる。なお、通常、インダクタ1の全体が封止材7によって封止されるため、機械的に強く耐候性にも優れたインダクタが得られる。また、端子電極14a〜14dの折り曲げ部15a〜15dは、封止材7中に埋入されるため、端子電極14a〜14dは封止材7に確実に固着される。ここで、図1において、封止材7は説明の都合上透明な部材として示している。
【0079】
次に、実施形態1のインダクタの製造方法について説明する。金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えた実施形態1のインダクタの製造方法は、端子電極が形成された基台を多数個取りできる集合基台に、複数のコイルを搭載するコイル搭載工程(S1)と、搭載されたコイル表面を、上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆い、集合インダクタを製造する集合インダクタ製造工程(S2)と、前記集合インダクタを単個のインダクタに切断する切断工程(S3)とを含む。以下、製造工程を図面に基づいて説明する。
【0080】
コイル搭載工程(S1)は、詳細には、集合基台製造工程(S1−1)、粘着材貼り合わせ工程(S1−2)、ボビン搭載工程(S1−3)、コイル巻き工程(S1−4)および端末処理工程(S1−5)から構成される。
【0081】
まず、集合基台製造工程(S1−1)では、集合基台としての集合リードフレーム(端子電極が形成された基台を多数個取りできる集合基台)を製造する。具体的には、図6に示すように、金属材料からなる薄板をプレス加工して、多数の貫通穴13や端子電極14a〜14dの折り曲げ部15a〜15dなどが一括して形成され、リードフレーム11が多数個取りできる集合基台としての集合リードフレーム10が完成する。なお、集合リードフレーム10の形態は限定されず、長いリール状でもよく、長いリール状の集合リードフレームを一定の長さに切断した集合リードフレームでもよい。
【0082】
次いで、粘着材貼り合わせ工程(S1−2)では、集合基台製造工程(S1−1)で得られた集合リードフレームに粘着材を貼り合わせる。具体的には、図7に示すように、集合リードフレーム10の裏面の全面に、粘着材として面状の粘着テープ16を矢印Cの方向に圧力をかけて貼り合わせる。この工程により、集合リードフレーム10に形成されている複数の貫通穴13から粘着テープ16の粘着面16aが露出する。
【0083】
次いで、ボビン搭載工程(S1−3)では、粘着材が貼り合わせられた集合基台に複数のボビンを一括して搭載する。具体的には、図8に示すように、複数のボビン2は、トレー(図示せず)によって集合リードフレーム10の貫通穴13の位置に合わせて整列され、その後、トレーを矢印Dの方向に移動させて複数のボビン2を貫通穴13の中に搭載する。すなわち、貫通穴13の底面には、上述のように粘着テープ16の粘着面16aが露出しているため、トレーによって整列されているボビン2を矢印Dの方向に押圧することにより、ボビン2は貫通穴13に嵌め込まれて粘着面16aに密着し、貫通穴13の中に固着される。
【0084】
ここで、貫通穴13の径をボビン2の径より若干小さくしてボビン2を貫通穴13に圧入してもよい。この場合は、ボビン2は集合リードフレーム10と強固に結合し、粘着テープ16の粘着力が多少弱くても、ボビン2は貫通穴13から外れることがない。また、ボビン2の圧入によって、集合リードフレーム10に対するボビン2の位置精度が向上し、続くコイル巻き工程(S1−4)を円滑に行うことができる。また、貫通穴13の径をボビン2の径より若干大きくしてクリアランスを設け、ボビン2を貫通穴13に緩やかに嵌め込んでもよい。この場合は、ボビン2は粘着テープ16の粘着力だけで集合リードフレーム10に固着されるが、ボビン2の貫通穴13に対する位置合わせが厳密でなくてもボビン2を貫通穴13に嵌め込むことができる。これにより、ボビン2を整列させるトレーをある程度ラフに設計でき、ボビン搭載工程(S1−3)を簡略化できる。ボビン2と集合リードフレーム10の貫通穴13との嵌合を、圧入とするか緩嵌とするかは、製品仕様や製造工程の能力に応じて選択するとよい。
【0085】
次いで、コイル巻き工程(S1−4)では、ボビンが搭載された集合基台上のボビンに金属線を連続的に巻回してコイルを形成する。具体的には、図9に示すように、巻線機(図示せず)のノズル40は回転軸を備えており矢印Eの方向に回転しながら金属線3を繰り出すことができる。これにより、集合リードフレーム10に搭載されたボビン2は、ノズル40から繰り出される金属線3によって巻回されて、コイル4が製造される。詳細には、ノズル40は、金属線3を折り曲げ部15bに絡げた後、矢印Eの方向に回転してボビン2の巻芯2aに巻回し、所定の回数を巻回した後、折り曲げ部15aに絡げる。続いて、ノズル40は、隣のボビン2に移動して、折り曲げ部15bに絡げてからボビン2の巻芯2aに巻回し、所定の回数を巻回した後、折り曲げ部15aに絡げる。
【0086】
次いで、端末処理工程(S1−5)では、コイル巻き工程(S1−4)において金属線3が絡げられた折り曲げ部15a、15bに、アーク溶接や半田付けなどによって端末処理を行って、金属線3の巻線端末3a、3bを折り曲げ部15a、15bに確実に結合する。このように、集合リードフレーム10に折り曲げ部15a〜15dを設けることにより、コイル巻き工程(S1−4)および端末処理工程(S1−5)の作業が容易になるとともに、金属線3と端子電極14a、14bとが確実に電気的に結合される。
【0087】
次に、集合インダクタ製造工程(S2)では、上述のようにコイル搭載工程(S1)で形成されたコイル表面を、上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆い、集合インダクタを製造する。具体的には、図10に示すように、集合リードフレーム10に搭載されたコイル4の外周(すなわち金属線3の露出部分)に、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物をディスペンサーなどによって塗布し、コイル4の外周を該樹脂組成物で覆う。
【0088】
次いで、第一のコーティング用樹脂組成物を硬化させる。第一のコーティング用樹脂組成物に潜在型または顕在型硬化剤を用いる場合においては、加熱温度および加熱時間は、用いる硬化性樹脂や潜在型硬化剤の種類や配合量に応じて適宜選択すればよい。なお、後述する封止工程で加熱することにより上記樹脂組成物を硬化させてもよい。第一のコーティング用樹脂組成物に顕在型硬化剤を用いる場合においては、常温(25℃)で硬化させてもよく、硬化時間は、用いる硬化性樹脂や顕在型硬化剤の種類や配合量に応じて適宜選択すればよい。また、このようにして、コイル4の外周を上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体5によって覆い、集合インダクタ50が得られる。
【0089】
なお、集合インダクタ製造工程(S2)で製造されたインダクタは、樹脂によって封止することが好ましい。具体的には、図11に示すように、集合リードフレーム10と、第一の硬化体5で覆われたコイル4とを、エポキシ樹脂などの封止材7でインジェクション成型、トランスファ成型、液状樹脂成型などの成型法によって封止する。これにより、多数のインダクタが集合した集合インダクタ50が完成する。このように、封止材7によって封止すると、機械的に強く耐候性にも優れたインダクタが得られる。また、集合リードフレーム10に形成された折り曲げ部15a〜15d(図6参照)は封止材7に埋入される方向へ折り曲げられているので、集合リードフレーム10によって形成される端子電極14a〜14d(図6参照)は、封止材7に強固に固着して剥がれ難くなり、信頼性の高いインダクタとなる。なお、集合リードフレーム10の裏面は封止材7によって封止しないことが好ましい。また、コイル4と同じ高さ、または、コイル4より僅かに低い高さで封止することが好ましい。
【0090】
最後に、切断工程(S3)では、集合インダクタ製造工程(S2)で得られた集合インダクタを単個のインダクタに切断する。具体的には、図12−1に示すように、完成した集合インダクタ50を切断線X、Yに沿ってダイシング、または、プレス抜きなどによって切断する。なお、プレス抜きの場合は、集合インダクタ50の製造において、リードフレームの間隔を広げておき、かつ、切断線X、Y付近(すなわち、プレス抜き領域)を封止しないことが好ましい。図12−2は、切断工程(S3)によって集合インダクタ50が切断され、単個のインダクタ1が多数完成した状態を示している。このように、上述したインダクタの製造方法では、集合リードフレーム10によって多数のインダクタを一括して同時に製造できるため、低コストでの大量生産が可能であるとともに、製品の寸法や特性ばらつきが少ないインダクタを提供できる。
【0091】
以上のように、実施形態1によれば、コイルが、磁性粒子が均一に分散した第一の硬化体で覆われているため、透磁率μが高く、かつL値が大きい高性能なインダクタを提供できる。また、製品間でのL値のばらつきも抑えられる。
【0092】
(実施形態2のインダクタ)
まず、図3および図4に基づいて、実施形態2のインダクタの構成を説明する。ここで、図3は実施形態2のインダクタの外観斜視図であり、図4は実施形態2のインダクタを上面より見た上面図である。なお、実施形態1と同一要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。実施形態2のインダクタでは、リードフレームによって端子電極が形成され、コイルの外周の一部に上記第一の硬化体が形成されている。
【0093】
実施形態2のインダクタ(インダクタ20)では、実施形態1のインダクタと異なり、コイル4の外周表面の一部(2ヶ所)が、磁性粒子6を含む第一の硬化体5a、5bで覆われている。このため、コイル4は、ボビン2および磁性樹脂5a、5bにより、磁気回路の一部が閉じた状態となる。したがって、コイル4の大きさや金属線3の巻数が実施形態1のインダクタ(インダクタ1)と等しければ、実施形態2のインダクタでは、抵抗値は実施形態1のインダクタと同じであり、L値は実施形態1のインダクタよりも小さい。
【0094】
また、実施形態2のインダクタでは、第一の硬化体5a、5bは、コイル4の外周の2ヶ所に対向するように形成されているが、これに限定されず、たとえば、コイル4の外周の3ヶ所に形成してもよく、または、1ヶ所の狭い範囲に形成してもよい。コイル4の外周に形成する第一の硬化体の範囲によって、コイル4の磁気回路の閉じる範囲が変わる。すなわち、コイル4の透磁率μが変えられるため、抵抗値を変えずに任意のL値を有するインダクタを得ることができる。このように本発明に係る第一の硬化体によれば、コイル4の大きさや金属線3の巻数は同じままで、コイル4の外周に形成する第一の硬化体の形成範囲を変えることにより、抵抗値を変えずにL値を任意に変えられる。したがって、インダクタのシリーズ化を容易に実現できる。さらに、製造されたインダクタ間において、L値のばらつきを抑えられる。また、もちろん、上述した第一のコーティング用樹脂組成物の作製において、磁性粒子の種類や含有量(すなわち第一のコーティング用樹脂組成物に配合する磁性粒子被覆体の含有量)を変えることによっても、L値をコントロールできる。
【0095】
次に、実施形態2のインダクタの製造方法について説明する。集合インダクタ製造工程(S2)以外は、実施形態1のインダクタの場合と同様である。集合インダクタ製造工程(S2)では、コイル搭載工程(S1)で形成されたコイル表面を、上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆い、集合インダクタを製造する。具体的には、集合リードフレーム10に搭載されたコイル4の外周の一部(すなわち金属線3の露出部分のうち2ヶ所)に、本発明に係る第一のコーティング用樹脂組成物をディスペンサーなどによって塗布し、コイル4の外周を該樹脂組成物で覆う。第一のコーティング用樹脂組成物を硬化させる点については、実施形態1のインダクタの場合と同様である。このようにして、コイル4の外周の一部(2ヶ所)を上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体5a、5bによって覆い、集合インダクタ50が得られる。
【0096】
以上のように、実施形態2によれば、コイルの外周を覆う第一の硬化体の範囲を変えることにより、抵抗値が同じでL値の異なるインダクタを容易に製造できる。さらに、製造されたインダクタ間において、L値のばらつきを抑えられる。このため、L値をシリーズ化したコストの安いインダクタを提供できる。
【0097】
(実施形態3のインダクタ)
まず、図5に基づいて、実施形態3のインダクタの構成を説明する。ここで、図5は実施形態3のインダクタの外観斜視図である。なお、実施形態1と同一要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。実施形態3のインダクタでは、両面プリント配線板である回路基板によって端子電極が形成され、コイルの全周(外周の全て)に上記第一の硬化体が形成されている。
【0098】
図5に示す実施形態3のインダクタ(インダクタ30)では、実施形態1のインダクタと異なり、基台としてのリードフレーム11の変わりに、回路基板31を用いる。回路基板31は、両面プリント配線板よりなり、この回路基板31のコーナーに形成される配線パターン32a、32bに、金属線3の巻線端末3a、3bが熱圧着または半田付けなどによって電気的に結合される。さらに、配線パターン32a、32bは、図示しないスルホールによって回路基板31の裏面に形成される電極に接続され、インダクタ30を実装する実装基板(図示せず)などと接続される。
【0099】
次に、実施形態3のインダクタの製造方法については、コイル搭載工程(S1)において、集合リードフレームの変わりに集合回路基板を用いる以外は、実施形態1のインダクタの製造方法と同じである。
【0100】
以上のように、実施形態3によれば、コイルが、磁性粒子が均一に分散した第一の硬化体で覆われているため、透磁率μが高く、L値が大きい高性能なインダクタを提供できる。また、製品間でのL値のばらつきも抑えられる。
【0101】
なお、実施形態3のインダクタにおいて、第一の硬化体5はコイル4の全周に形成されているが、これに限定されず、たとえば、実施形態2で説明したように第一の硬化体5をコイル4の外周の一部に形成してもよい。この場合も、形成範囲などに応じてL値を調整できる。
【0102】
(その他)
実施形態1〜3のインダクタでは、コイル4はコアとしてのボビン2を備えているが、コイル4はこの形態に限定されるものではなく、ボビン2を有しない空芯コイルを備えていてもよい。コイル4が空芯コイルである場合は、コイル4の全体を第一の硬化体5の中に埋設し、その外側を封止材7で封止する態様が好適である。
【0103】
また、実施形態1〜3のインダクタは、単個のコイルを搭載したインダクタであるが、本発明に係るインダクタは、リードフレームの形状を変更し、コイルを複数搭載した多重インダクタであってもよい。
【0104】
さらに、本発明に係る第一の硬化体は、インダクタに限定されず、コイルと一緒にICチップなどの他の電子部品をリードフレーム上に搭載した複合型のSMD部品などにも適用できる。
【0105】
<第二のコーティング用樹脂組成物および第二の硬化体>
〔第二のコーティング用樹脂組成物〕
本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物は、蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含む。
【0106】
(蛍光体粒子被覆体)
上記蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる。本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物には上記被覆樹脂体が含まれているため、該樹脂組成物を硬化させて第二の硬化体を製造するときに、蛍光体粒子が沈降せず、第二の硬化体中に蛍光体粒子が均一に分散される。詳細には、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様である。すなわち、蛍光体粒子に被覆樹脂体が付着することにより、蛍光体粒子被覆体全体では、蛍光体粒子よりも比重が低下している。一方、第二のコーティング用樹脂組成物は加熱により硬化する過程で一度粘度が低下する場合がある。この過程において、比重が低下されている蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子が単独で組成物中に存在するときよりも沈降し難い。このため、最終的に得られた第二の硬化体中では蛍光体粒子は均一に分散される。したがって、後述するように、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物によれば、好ましい色度の白色光を放ち、白色光の色度のばらつきが小さい発光装置を製造できる。なお、第二の硬化体中では、被覆樹脂体と硬化性樹脂が硬化した部分とは一体化している。
【0107】
上記被覆樹脂体は、エポキシ化合物から形成される硬化物、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物、またはポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0108】
まず、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合の蛍光体粒子被覆体について説明する。
蛍光体粒子は、LEDチップから放たれる青色光により励起され、黄色光を放つことができる蛍光体からなる粒子である。たとえば、YAG系蛍光体からなる粒子が挙げられる。
【0109】
被覆樹脂体を作製するために用いるエポキシ化合物は、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造や分子量などは限定されず、該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0110】
芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の化合物が挙げられる。上記エポキシ樹脂は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記エポキシ化合物は、常温(25℃)で液体のものもあれば固体のものもある。上記被覆樹脂体を作製する際に固体のエポキシ樹脂を用いる場合は、液体のエポキシ樹脂と混合し溶解して用いることが好ましい。これらのうちで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0111】
エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合、蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物を硬化させるための顕在型硬化剤、より具体的には付加重合型硬化剤を用いて作製する。付加重合型硬化剤としては、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の硬化剤が挙げられる。上記付加重合型硬化剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
以下に、エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合において、蛍光体粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、蛍光体粒子とエポキシ化合物と付加重合型硬化剤とを配合した配合物を作製する。このとき、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤のみを混合した混合物の粘度が10000cP以上となるように、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物を硬化させるときに、蛍光体粒子が均一に分散したまま硬化させることができる。すなわち、最終的に得られた蛍光体粒子被覆体において、蛍光体粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。付加重合型硬化剤は、エポキシ化合物100質量部に対して、通常5〜50質量部の量で配合する。また、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤(合計)は、エポキシ化合物、付加重合型硬化剤および蛍光体粒子100質量部中に、通常50質量部を超え100質量部未満の量で、好ましくは、50質量部を超え80質量部以下の量で配合することが望ましい。これにより、得られた蛍光体粒子被覆体中での被覆樹脂体および蛍光体粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。
【0113】
次いで、上記配合物を硬化させるが、該硬化は、通常、常温(25℃)にて30分〜2日で完了する。このようにして得られた硬化物中で、蛍光体粒子は分散している。
次いで、この硬化物を粉砕して、蛍光体粒子被覆体を製造する。たとえば、ミルを用いて硬化物を粉砕して蛍光体粒子被覆体を製造してもよく、また、ミルを用いて硬化物を粉砕して粉砕物を得た後、分級して蛍光体粒子被覆体を製造してもよい。このようにして得られた蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物および付加重合型硬化剤から形成された硬化物である。
【0114】
また、エポキシ化合物として脂環式エポキシ樹脂を用いる場合、蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物を硬化させるための顕在型硬化剤、より具体的にはカチオン型硬化剤を用いて作製する。カチオン型硬化剤としては、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の硬化剤が挙げられる。上記カチオン型硬化剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
以下に、エポキシ化合物として脂環式エポキシ樹脂を用いる場合において、蛍光体粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、エポキシ化合物とカチオン型硬化剤とを配合した配合物を作製する。このとき、上記混合物の粘度が1000cP以下となるように、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、蛍光体粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた蛍光体粒子被覆体において、蛍光体粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。カチオン型硬化剤は、エポキシ化合物100質量部に対して、通常0.5〜10質量部の量で配合する。
【0116】
なお、上記配合物には、エーテル、ヘキサンなどの揮発性溶媒をさらに混合してもよい。この場合は、揮発性溶媒は、エポキシ化合物100質量部に対して、たとえば0.3〜10質量部の量で用いる。
【0117】
次いで、蛍光体粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、紫外線を照射し、蛍光体粒子の表面でエポキシ化合物を重合させて、蛍光体粒子被覆体を製造する。このとき、蛍光体粒子に風を当てて、蛍光体粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。また、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤(合計)は、エポキシ化合物、カチオン型硬化剤および蛍光体粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた蛍光体粒子被覆体中での被覆樹脂体および蛍光体粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、エポキシ化合物およびカチオン型硬化剤から形成された硬化物である。
【0118】
次に、上記被覆樹脂体が分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物である場合の蛍光体粒子被覆体について説明する。(メタ)アクリロイル基含有化合物は、紫外線照射により重合できる化合物である。なお、本明細書において、アクリロイル基およびメタクリロイル基をあわせて「(メタ)アクリロイル基」ともいう。
【0119】
蛍光体粒子については、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合と同じである。
被覆樹脂体を作製するために用いる分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、具体的には、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の化合物が挙げられる。これらのうちで、好ましい化合物についても第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様である。
【0120】
被覆樹脂体を作製するために用いる分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の化合物が挙げられる。これらのうちで、好ましい化合物についても第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様である。
【0121】
上記(メタ)アクリロイル基含有化合物は、硬化物が得られる限り、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化性の観点から、たとえば、一種または二種以上の多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物を用いることが好ましい。また、一種または二種以上の単官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物と一種または二種以上の多官能の(メタ)アクリロイル基含有化合物とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0122】
蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体を作製する際には、通常、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる。ラジカル重合開始剤は、紫外線照射によりラジカルを発生し、(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合を開始させる。
【0123】
ラジカル重合開始剤としては、具体的には、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の開始剤が挙げられる。これらのうちで、好ましい開始剤についても第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様である。上記ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
以下に、蛍光体粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、(メタ)アクリロイル基含有化合物とラジカル重合開始剤とを配合した配合物を作製する。このとき、上記配合物の粘度が1000cP以下となるように、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤を配合して、上記配合物を得ることが好ましい。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、蛍光体粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた蛍光体粒子被覆体において、蛍光体粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。上記粘度は、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤の種類や配合量により調節できる。なお、上記粘度は、E型粘度計により測定される。ラジカル重合開始剤は、(メタ)アクリロイル基含有化合物100質量部に対して、通常0.3〜10質量部の量で配合する。
【0125】
なお、上記配合物には、エーテル、ヘキサンなどの揮発性溶媒をさらに混合してもよい。この場合は、揮発性溶媒は、(メタ)アクリロイル基含有化合物100質量部に対して、たとえば0.3〜10質量部の量で用いる。
【0126】
次いで、蛍光体粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、紫外線を照射し、蛍光体粒子の表面で(メタ)アクリロイル基含有化合物を重合させて、蛍光体粒子被覆体を製造する。このとき、蛍光体粒子に風を当てて、蛍光体粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤(合計)は、(メタ)アクリロイル基含有化合物、ラジカル重合開始剤および蛍光体粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた蛍光体粒子被覆体中での被覆樹脂体および蛍光体粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、通常、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤から形成された硬化物である。
【0127】
最後に、上記被覆樹脂体がポリイミド樹脂である場合の蛍光体粒子被覆体について説明する。
蛍光体粒子については、上記被覆樹脂体がエポキシ化合物から形成される硬化物である場合と同じである。
【0128】
被覆樹脂体を作製するために用いるポリイミド樹脂は、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様に、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、該ポリイミド樹脂としては、具体的には、第一のコーティング用樹脂組成物の場合と同様の樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体を作製する際には、通常、ポリイミド樹脂を溶媒中に溶解させた配合物を用いる。上記溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒が挙げられる。
【0130】
以下に、蛍光体粒子被覆体の製造方法を具体的に説明する。まず、ポリイミド樹脂と溶媒とを配合した配合物を作製する。このとき、溶媒は、ポリイミド樹脂を溶解できる量で配合する。これにより、上記配合物から形成される硬化物(被覆樹脂体)を、蛍光体粒子の表面に均一に付着させることができる。すなわち、最終的に得られた蛍光体粒子被覆体において、蛍光体粒子および被覆樹脂体の割合のばらつきを小さくできる。
【0131】
次いで、蛍光体粒子に対して上記配合物を吹きかけるとともに、溶媒を蒸発させて、蛍光体粒子被覆体を製造する。このとき、蛍光体粒子に風を当てて、蛍光体粒子が舞った状態で上記配合物を吹きかけることが好ましい。特に、熱風を当てて溶媒を蒸発させることが好ましい。また、ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂および蛍光体粒子100質量部に対して、通常50質量部を超え100質量部未満の量、好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量となるように吹きかけることが望ましい。これにより、得られた蛍光体粒子被覆体中での被覆樹脂体および蛍光体粒子の割合を好ましい範囲にすることができる。このようにして得られた蛍光体粒子被覆体は、蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなり、被覆樹脂体は、ポリイミド樹脂で形成されている。
【0132】
上述した蛍光体粒子被覆体において、蛍光体粒子被覆体(蛍光体粒子および被覆樹脂体の合計)を100質量部としたときに、被覆樹脂体が好ましくは50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、より好ましくは50質量部を超え80質量部以下の量で含まれ、蛍光体粒子が好ましくは0質量部を超え50質量部未満の量で含まれ、より好ましくは20質量部以上50質量部未満の量で含まれることが望ましい。蛍光体粒子および被覆樹脂体の量が上記範囲にあると、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物を硬化させて第二の硬化体を製造するときに、蛍光体粒子がより沈降せず、第二の硬化体中に蛍光体粒子がより均一に分散される。詳細には、蛍光体粒子に被覆樹脂体が上記割合で付着することにより、蛍光体粒子被覆体全体では、蛍光体粒子よりも比重が大きく低下している。ところで、第二のコーティング用樹脂組成物は加熱により硬化する過程で一度粘度が低下する場合がある。この過程において、比重が低下されている蛍光体粒子被覆体は、沈降し難い。このため、最終的に得られた第二の硬化体中では蛍光体粒子はより均一に分散される。したがって、このような蛍光体粒子被覆体を含む第二のコーティング用樹脂組成物によれば、好ましい色度の白色光を放ち、白色光の色度のばらつきがより小さい発光装置を製造できる。なお、蛍光体粒子被覆体中の蛍光体粒子および被覆樹脂体の量の割合は、通常、蛍光体粒子被覆体を作製するときに用いる原料の量の割合と同じであるとみなせる。具体的には、エポキシ化合物として芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を用いる場合であれば、蛍光体粒子とエポキシ化合物および付加重合型硬化剤との割合と、蛍光体粒子と被覆樹脂体との割合は同じであるとみなせる。他のエポキシ化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物およびポリイミド樹脂を用いるときも同様にみなすことができる。
【0133】
上述のようにして得られた蛍光体粒子被覆体において、被覆樹脂体は蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着している。詳細には、図13(a)〜(d)において、磁性粒子被覆体60を蛍光体粒子被覆体60と、磁性粒子6を蛍光体粒子6と置き換えたとすると、蛍光体粒子被覆体60において、被覆樹脂体61は蛍光体粒子6表面全体を一様に覆うか(図13(a))または間欠的に覆っていてもよく(図13(b))、蛍光体粒子6表面の一部を一様に覆うか(図13(c))または間欠的に覆っていてもよい(図13(d))。また、蛍光体粒子被覆体一つの中に、蛍光体粒子が一つ含まれていても、複数含まれていてもよい。
【0134】
エポキシ化合物から形成される硬化物、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物、およびポリイミド樹脂のうち、被覆樹脂体としては作製の容易さから、エポキシ化合物から形成される硬化物がより好ましく用いられる。
【0135】
(フュームドシリカ)
フュームドシリカを用いると、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物中で蛍光体粒子被覆体の沈降を抑えることができ、さらに、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物を加熱し硬化させて第二の硬化体を製造する過程において、組成物の粘度の変化を小さく抑えることができる。このように、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物では、上記蛍光体粒子被覆体とフュームドシリカとを含むため、該樹脂組成物を硬化させて第二の硬化体を製造するときに、蛍光体粒子が沈降せず、第二の硬化体中に蛍光体粒子が均一に分散される。したがって、後述するように、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物によれば、好ましい色度の白色光を放ち、白色光の色度のばらつきが小さい発光装置を製造できる。
【0136】
フュームドシリカは、通常四塩化ケイ素等の揮発性ケイ素化合物を気化し、たとえば酸素水素炎中で燃焼加水分解して製造される。本発明では、特に制限されず、公知のものを用いることができる。フュームドシリカは、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
フュームドシリカは、一次粒径が5〜50nmの範囲にあることが好ましい。
【0137】
(硬化性樹脂およびその他の成分)
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ化合物、具体的には芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂が好適に用いられる。芳香族エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂については、蛍光体粒子被覆体において説明したエポキシ樹脂と同様である。
【0138】
硬化性樹脂が、上記エポキシ化合物である場合、その他の成分として、硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤が用いられる。硬化性樹脂が芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂の場合は、通常、加熱により硬化性樹脂を硬化できる潜在型硬化剤、あるいは常温(25℃)または加熱下で硬化性樹脂を硬化できる顕在型硬化剤が用いられる。上記潜在型硬化剤としては、たとえば、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、カプセル型イミダゾール系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤などの硬化剤が挙げられる。上記顕在型硬化剤としては、上述した付加重合型硬化剤が挙げられる。硬化剤は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
なお、第二のコーティング用樹脂組成物に潜在型硬化剤を用いると、加熱により硬化する過程で組成物の粘度は一旦低下する。しかしながら、第二のコーティング用樹脂組成物では、蛍光体粒子は比重が低下されている蛍光体粒子被覆粒体として存在しているため、該樹脂組成物は、蛍光体粒子が沈降せずに均一に分散された状態で硬化できる。
【0140】
さらに、硬化性樹脂としては、耐熱性の観点から、ポリシロキサン構造を有しているシリコーン樹脂も好適に用いられる。上記シリコーン樹脂としては、反応活性部位としてエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、触媒または有機過酸化物で反応できるビニル基またはその誘導体を有する付加型等のシリコーン樹脂;湿気硬化型シリコーン樹脂;アセトン、アルコールまたはオキシム等が脱離する縮合反応により硬化するシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0141】
硬化性樹脂が、上記シリコーン樹脂である場合、具体的には、加熱または紫外線照射により硬化するようにあらかじめ調製された状態で市販されているシリコーン樹脂組成物が好適に用いられる。上記組成物は、一液性であっても二液性であってもよく、より具体的には、信越化学(株)製の有機変性シリコーンレジンおよびフェニルシリコーンレジンの他、東レ・ダウコーニング株式会社製、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製および旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の上記と同様の製品などが挙げられる。
【0142】
その他の成分として、顔料、ガラスフィラーなどの減光材や硬化したシリコーンレジンを用いてもよい。これにより、発光装置から得られる白色光の色度や加工性を調整できる。
【0143】
(第二のコーティング用樹脂組成物)
本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物は、上述した蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカ、硬化性樹脂、および必要に応じて硬化剤などその他の成分を含む。
【0144】
いいかえると、硬化性樹脂が、上記エポキシ化合物である場合、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物は、上述のように蛍光体粒子被覆体を作製した後、蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカ、硬化性樹脂、および必要に応じて硬化剤などその他の成分を混合して得られる。硬化剤を用いるときは、硬化性樹脂および硬化剤100質量部に対して、蛍光体粒子被覆体を10〜1000質量部の量で、フュームドシリカを0.1〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の量で配合することが望ましい。配合量が上記範囲にあると、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物を硬化させて第二の硬化体を製造する過程において、蛍光体粒子が沈降せず、第二の硬化体中に蛍光体粒子を均一に分散させることができる。また、硬化剤は、第二のコーティング用樹脂組成物を硬化できる量で用いればよいが、たとえば、硬化性の観点から、硬化性樹脂1当量に対して硬化剤を0.7〜1.3当量の量で配合することが好ましい。
【0145】
硬化性樹脂が、上記シリコーン樹脂である場合、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物は、上述のように蛍光体粒子被覆体を作製した後、蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカ、シリコーン樹脂組成物を混合して得られる。シリコーン樹脂組成物の全量100質量部に対して、蛍光体粒子被覆体を10〜1000質量部の量で、フュームドシリカを0.1〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の量で配合することが望ましい。配合量が上記範囲にあると、本発明に係る第二のコーティング用樹脂組成物を硬化させて第二の硬化体を製造する過程において、蛍光体粒子が沈降せず、第二の硬化体中に蛍光体粒子を均一に分散させることができる。
【0146】
〔第二の硬化体〕
本発明に係る第二の硬化体は第二のコーティング用樹脂組成物から得られ、該第二の硬化体では、樹脂被覆体および硬化性樹脂から形成されるマトリックス中に蛍光体粒子が均一に分散されている。この第二の硬化体は、発光装置に好適に用いられるため、該第二の硬化体を発光装置に用いた場合を例として説明する。
【0147】
本発明に係る発光装置は、LEDチップと、該LEDチップを覆っている硬化体とを備えた発光装置であって、該硬化体は、第二のコーティング用樹脂組成物から得られる第二の硬化体である。以下、発光装置の実施形態について、図面を用いながら、より具体的に説明する。
【0148】
図14は本発明の実施形態である発光装置を構成するケース体の斜視図である。図14において、102は外形が略立方体形状のケース体であり、該ケース体102の上面102aには、発光方向に向けた光を反射する傾斜面を有するカップ形状の凹部102bが形成されている。103a、103bは該ケース体102を構成する熱伝導性の高い射出成形が可能なMg合金系のメタルコア材料から成る一対のメタルコアであり、スリット102cを隔てて対向している。
【0149】
104はケース体102の一部を構成する絶縁部材であり、上記スリット102cの内部に充填され、上記メタルコア103a、103bを一対の電極として絶縁分離し、該メタルコア103a、103bを結合している。さらに、該メタルコア103a、103bの露出面には、光沢仕上げのAgメッキが施され、この結果、上記凹部102bの内面にある傾斜面102dはAgメッキで覆われた光反射面となっている。105は上記凹部102bの底面102eに実装されたLEDチップである。LEDチップとしては、InGaN系LEDチップが好適に用いられる。
【0150】
図15は、図14のケース体102をA−Aで断面し、さらに第二の硬化体を設けた本発明の発光装置の完成断面図である。図15において、101は発光装置であり、上記一対のメタルコア103a、103bと上記絶縁部材104によってなるケース体102で構成されている。106はサブマウントパッケージであり、上記LEDチップ105はセラミック等によってなるサブマウント基板106aにフェースダウンボンディングによって実装し一体化される。サブマウントパッケージ106は底面2eに半田付け等により実装される。
【0151】
これにより、上記LEDチップ105はサブマウント基板106aを介してメタルコア103a、103bと電気的に接続し、さらに該メタルコア103a、103bの下部は実装基板へ接続する端子電極を成している。107は外周に傾斜面を有する第二の硬化体であり、蛍光体粒子107aを含み、上記LEDチップ105の表面を覆っている。
【0152】
ここで、発光装置101の動作を図15に基づいて説明する。図15において、発光装置101を構成する上記メタルコア103a、103bに駆動電圧を印加すると、サブマウント基板106aを介してLEDチップ105に駆動電圧が印加され、該LEDチップ105から青色光Pb(図示せず)が発光する。そして該青色光Pbが上記第二の硬化体107に混入された蛍光体粒子107aに衝突すると該蛍光体粒子107aが励起されて波長変換が行われ、蛍光体粒子107aから黄色光Pe(図示せず)が発光される。
【0153】
この結果、発光装置101からは、上記LEDチップ105から発光されて蛍光体粒子107aに衝突せずに出力される青色光Pbと、上記蛍光体粒子107aに衝突して波長変換された黄色光Peとが混合された白色光Phが発光される。なお、LEDチップ105は上述したごとく反射効率の優れたAgメッキが施された傾斜面102dによって周辺を囲まれているので、白色光Phは効率よく前方に発光する。
【0154】
上述のように、本発明の実施形態である発光装置101では、LEDチップ105の表面は、蛍光体粒子107aを含む第二の硬化体107で覆われているため、白色光Phを発光する。この第二の硬化体107は、上述した第二のコーティング用樹脂組成物から形成される。なお、第二の硬化体107に含有される蛍光体粒子107aは、模式的に図示しており、実際には微小な粒子であるため目では見えない。ところで、従来の発光装置においても、LEDチップは蛍光体粒子を含む硬化体によって覆われているため、白色光を発光できる。しかしながら、本発明に係る第二の硬化体は、上述した蛍光体粒子被覆体を含む第二のコーティング用樹脂組成物から形成されることにより、従来の硬化体よりも、蛍光体粒子がより均一に分散されている。したがって、本発明の実施形態である発光装置の方が、従来の発光装置よりも白色光の色度のばらつきが抑えられる。
【0155】
次に、発光装置101の製造方法について図面に基づいて説明する。発光装置101の製造方法は、LEDチップ105と、該LEDチップ105を覆っている第二の硬化体107とを備えた発光装置101の製造方法であって、上記LEDチップ105を第二のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体107で覆う工程を含む。
【0156】
具体的には、まず、集合基板を製造する。図16は、集合基板の製造工程を示す斜視図であり、110は集合基板でありMg合金等のメタルコア材料から射出成形又はプレス成形によって形成され、カップ状の上記凹部102bが縦横に合計9個整列している。次に、該凹部102bの中心を左右に分離するようにスリット102cを加工し、さらに、該スリット102cへ上記絶縁部材104である樹脂を充填して硬化させる。次に、凹部102bの内側の傾斜面102dに光沢Agメッキを施し、該凹部102bの傾斜面102dが光の反射面として機能するようにする。
【0157】
次に、図17に示すように、集合基板110に上記LEDチップ105を有するサブマウントパッケージ106を実装する工程を説明する。サブマウントパッケージ106を9個用意し、該9個のサブマウントパッケージ106を集合基板110の凹部102bの底面102eにそれぞれ同時に実装する。
【0158】
次に、サブマウントパッケージ106を実装した集合基板110に第二の硬化体107を設ける工程を説明する。上記集合基板110に設けられた凹部102bの位置に、第二のコーティング用樹脂組成物を充填し硬化させ、第二の硬化体107とする。熱硬化性の硬化性樹脂を用いた場合は、加熱温度および加熱時間は、用いる樹脂や硬化剤の種類や配合量に応じて適宜選択すればよい。また、紫外線硬化性の硬化性樹脂を用いた場合は、紫外線照射量および紫外線照射時間は、用いる樹脂の種類や配合量に応じて適宜選択すればよい。
【0159】
最後に、完成した集合基板110から発光装置101を切り離す分離工程について説明する。図18は、発光装置101の分離工程を示しており、90度の角度で交差する複数のダイシングラインDLに沿って集合基板110を切断分離し、個々の発光装置101を得る。このように、集合基板110を用いた製造方法によれば、発光装置101の大量生産が可能となり、製造効率を大幅に向上させることができる。
【0160】
なお、集合基板110は発光装置101の取り個数を9個として示したが、取り個数はこれに限定されず、適宜選択できる。また、絶縁部材104の形状は、一対のメタルコア103a、103bを絶縁分離する機能と結束する機能とを有する限り、必ずしも上述した形状に限定されるものではない。
【0161】
また、図19に示すように、本発明の発光装置において、第二の硬化体107は外周に傾斜面を有する略円盤状に形成されていてもよく、上記LEDチップ105の表面に接しないように設けられていてもよい。
【0162】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0163】
[実施例1−1]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂混合物と、付加重合型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0164】
具体的には、ディスポーザブルカップを用いて、磁性粒子100質量部、エポキシ樹脂混合物100質量部およびアミン系硬化剤30質量部を混合して配合物を得た。なお、上記混合では、エポキシ樹脂混合物1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。上記配合物を常温(25℃)にて30分かけて硬化させ、硬化物を得た。
【0165】
このとき、エポキシ樹脂混合物100質量部およびアミン系硬化剤30質量部のみを混合して得た混合物を別に作製し、E型粘度計により粘度を測定したところ10000cP以上であった。
【0166】
上記硬化物をハンマーで砕き、次いで、ミルにてさらに粉砕した。その後、20μmメッシュのふるいでふるって、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−1)を得た。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は56.5質量部の量で含まれ、磁性粒子は43.5質量部の量で含まれていた。
【0167】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0168】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−1)36.9質量部、ヒュームドシリカ6.15質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部およびアミン系硬化剤23質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0169】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
コイル搭載工程(S1)、集合インダクタ製造工程(S2)および切断工程(S3)を行って、実施形態1のインダクタに対応するインダクタを作製した。
【0170】
コイル搭載工程(S1)のうち、集合基台製造工程(S1−1)では、集合基台としての集合リードフレーム(端子電極が形成された基台を多数個取りできる集合基台)を製造した。具体的には、図6に示すように、金属材料からなる薄板をプレス加工して、多数の貫通穴13や端子電極14a〜14dの折り曲げ部15a〜15dなどが一括して形成され、リードフレーム11が多数個取りできる集合基台としての集合リードフレーム10が完成した。
【0171】
次いで、粘着材貼り合わせ工程(S1−2)では、集合基台製造工程(S1−1)で得られた集合リードフレームに粘着材を貼り合わせた。具体的には、図7に示すように、集合リードフレーム10の裏面の全面に、粘着材として面状の粘着テープ16を矢印Cの方向に圧力をかけて貼り合わせた。この工程により、集合リードフレーム10に形成されている複数の貫通穴13から粘着テープ16の粘着面16aが露出した。
【0172】
次いで、ボビン搭載工程(S1−3)では、粘着材が貼り合わせられた集合基台に複数のボビンを一括して搭載した。具体的には、図8に示すように、複数のボビン2は、トレー(図示せず)によって集合リードフレーム10の貫通穴13の位置に合わせて整列され、その後、トレーを矢印Dの方向に移動させて複数のボビン2を貫通穴13の中に搭載した。すなわち、貫通穴13の底面には、上述のように粘着テープ16の粘着面16aが露出しているため、トレーによって整列されているボビン2を矢印Dの方向に押圧することにより、ボビン2は貫通穴13に嵌め込まれて粘着面16aに密着し、貫通穴13の中に固着された。
【0173】
次いで、コイル巻き工程(S1−4)では、ボビンが搭載された集合基台上のボビンに金属線を連続的に巻回してコイルを形成した。具体的には、図9に示すように、巻線機(図示せず)のノズル40は回転軸を備えており矢印Eの方向に回転しながら金属線3を繰り出すことができた。これにより、集合リードフレーム10に搭載されたボビン2は、ノズル40から繰り出される金属線3によって巻回されて、コイル4が製造された。詳細には、ノズル40は、金属線3を折り曲げ部15bに絡げた後、矢印Eの方向に回転してボビン2の巻芯2aに巻回し、所定の回数を巻回した後、折り曲げ部15aに絡げた。続いて、ノズル40は、隣のボビン2に移動して、折り曲げ部15bに絡げてからボビン2の巻芯2aに巻回し、所定の回数を巻回した後、折り曲げ部15aに絡げた。
【0174】
次いで、端末処理工程(S1−5)では、コイル巻き工程(S1−4)において金属線3が絡げられた折り曲げ部15a、15bに、半田付けによって端末処理を行って、金属線3の巻線端末3a、3bを折り曲げ部15a、15bに確実に結合した。このように、集合リードフレーム10に折り曲げ部15a〜15dを設けることにより、コイル巻き工程(S1−4)および端末処理工程(S1−5)の作業が容易になるとともに、金属線3と端子電極14a、14bとが確実に電気的に結合された。
【0175】
次に、集合インダクタ製造工程(S2)では、上述のようにコイル搭載工程(S1)で形成されたコイル表面を、上記第一のコーティング用樹脂組成物から得られる第一の硬化体によって覆い、集合インダクタを製造した。具体的には、集合リードフレーム10に搭載されたコイル4の外周(すなわち金属線3の露出部分)に、第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)をディスペンサーによって塗布し、コイル4の外周を該樹脂組成物で覆った(図10参照)。
【0176】
次いで、第一のコーティング用樹脂組成物を、130℃にて2時間加熱して硬化させ、冷却した。このようにして、コイル4の外周を第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)から得られる第一の硬化体によって覆い、集合インダクタが得られた。
【0177】
なお、集合インダクタ製造工程(S2)で製造されたインダクタは、樹脂によって封止した。具体的には、集合リードフレーム10と、第一の硬化体で覆われたコイル4とを、封止材7(エポキシ樹脂)で液状樹脂成型によって封止した(図11参照)。ここで、コイル4と同じ高さで封止した。これにより、多数のインダクタが集合した集合インダクタ50が完成した。
【0178】
最後に、切断工程(S3)では、集合インダクタ製造工程(S2)で得られた集合インダクタを単個のインダクタに切断した。具体的には、完成した集合インダクタ50を切断線X、Yに沿ってダイシングによって切断した(図12−1参照)。切断工程(S3)によって集合インダクタ50が切断され、単個のインダクタ1が多数完成した(図12−2参照)。
【0179】
なお、上記インダクタの作製では、集合インダクタ製造工程(S2)においてコイル表面を第一の硬化体によって覆わなかった場合に、得られるインダクタのタイプが2020C100Mとなるような作製条件を用いた。
【0180】
[比較例1−1]
集合インダクタ製造工程(S2)においてコイル表面を第一の硬化体によって覆わなかった以外は、実施例1−1と同様にして、インダクタを製造した。これにより、2020C100Mのインダクタを得た。
【0181】
[参考例1−1]
磁性粒子被覆体の変わりに磁性粒子(単独)を用いてコーティング用樹脂組成物を作製した他は実施例1−1と同様にして、コーティング用樹脂組成物を作製した。
【0182】
具体的には、磁性粒子(NiZn系フェライトからなる磁性粒子)16.1質量部、ヒュームドシリカ(AEROSIL 200(登録商標)、日本アエロジル(株)製)7.19質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂116.9質量部およびアミン系硬化剤26.9質量部を混合して、コーティング用樹脂組成物を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0183】
次いで、上記コーティング用樹脂組成物を用いた他は実施例1−1と同様にして、硬化体を有するインダクタを作製した。
[実施例1−2]
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子の変わりにMnZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一のコーティング用樹脂組成物および第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0184】
[参考例1−2]
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子の変わりにMnZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた他は参考例1−1と同様にして、コーティング用樹脂組成物および硬化体を有するインダクタを作製した。
【0185】
[実施例1−3]
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子の変わりにアモルファス合金からなる磁性粒子を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一のコーティング用樹脂組成物および第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0186】
[参考例1−3]
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子の変わりにアモルファス合金からなる磁性粒子を用いた他は参考例1−1と同様にして、コーティング用樹脂組成物および硬化体を有するインダクタを作製した。
【0187】
[実施例1−4]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子被覆体における磁性粒子および樹脂被覆体の含有量を変えた他は実施例1−1と同様にして、磁性粒子被覆体(1−4)を作製した。
【0188】
具体的には、磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂混合物と、付加重合型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0189】
より詳細には、ディスポーザブルカップを用いて、磁性粒子100質量部、エポキシ樹脂混合物325.2質量部およびアミン系硬化剤74.8質量部を混合して配合物を得た。なお、上記混合では、エポキシ樹脂混合物1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。上記配合物を常温(25℃)にて30分かけて硬化させ、硬化物を得た。
【0190】
このとき、エポキシ樹脂混合物325.2質量部質量部およびアミン系硬化剤74.8質量部のみを混合して得た混合物を別に作製し、E型粘度計により粘度を測定したところ10000cP以上であった。
【0191】
上記硬化物をハンマーで砕き、次いで、ミルにてさらに粉砕した。その後、20μmメッシュのふるいでふるって、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−4)を得た。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は80質量部の量で含まれ、磁性粒子は20質量部の量で含まれていた。
【0192】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0193】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−4)80.3質量部、ヒュームドシリカ3.98質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂64.7質量部およびアミン系硬化剤14.9質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−4)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0194】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)の変わりに第一のコーティング用樹脂組成物(1−4)を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0195】
[実施例1−5]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子被覆体における磁性粒子および樹脂被覆体の含有量を変えた他は実施例1−1と同様にして、磁性粒子被覆体(1−5)を作製した。
【0196】
具体的には、磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂混合物と、付加重合型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0197】
より詳細には、ディスポーザブルカップを用いて、磁性粒子100質量部、エポキシ樹脂混合物35.5質量部およびアミン系硬化剤31.2質量部を混合して配合物を得た。なお、上記混合では、エポキシ樹脂混合物1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。上記配合物を常温(25℃)にて30分かけて硬化させ、硬化物を得た。
【0198】
このとき、エポキシ樹脂混合物35.5質量部質量部およびアミン系硬化剤31.2質量部のみを混合して得た混合物を別に作製し、E型粘度計により粘度を測定したところ10000cP以上であった。
【0199】
上記硬化物をハンマーで砕き、次いで、ミルにてさらに粉砕した。その後、20μmメッシュのふるいでふるって、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−5)を得た。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は40質量部の量で含まれ、磁性粒子は60質量部の量で含まれていた。
【0200】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0201】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−5)26.8質量部、ヒュームドシリカ6.66質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂108.2質量部およびアミン系硬化剤24.9質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−5)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0202】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)の変わりに第一のコーティング用樹脂組成物(1−5)を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0203】
[実施例1−6]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、脂環式エポキシ樹脂として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートと、カチオン重合開始剤としてトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートとを用いた。
【0204】
具体的には、上記脂環式エポキシ樹脂100質量部と、上記カチオン重合開始剤3質量部とを混合して配合物を得た。このとき、E型粘度計により配合物の粘度を測定したところ1000cP以下であった。
【0205】
塗布装置および紫外線照射装置が設けられた流動槽に磁性粒子を入れ、流動槽に風を送って磁性粒子を流動させた。塗布装置に配合物を入れ、塗布装置のノズルを通じて配合物をミスト状にし、流動している磁性粒子に対して噴霧した。ここで、脂環式エポキシ樹脂およびカチオン重合開始剤からなる配合物と磁性粒子との合計100質量部に対して、配合物が56.5質量部の量となるように、配合物を噴霧した。配合物の噴霧を開始すると同時に、流動槽内の磁性粒子に紫外線を照射し、磁性粒子表面で脂環式エポキシ樹脂を重合させ、樹脂被覆体を作製した。これにより、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−6)が得られた。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は56.5質量部の量で含まれ、磁性粒子は43.5質量部の量で含まれていた。
【0206】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0207】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−6)36.9質量部、ヒュームドシリカ6.15質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部およびアミン系硬化剤23質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−6)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0208】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)の変わりに第一のコーティング用樹脂組成物(1−6)を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0209】
[実施例1−7]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、アクリロイル基含有化合物(多官能化合物)としてトリシクロデカンジメチロールジアクリレートと、ラジカル重合開始剤(アセトフェノン系開始剤)として市販の2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンとを用いた。
【0210】
具体的には、上記アクリロイル基含有化合物100質量部と、上記ラジカル重合開始剤3質量部とを混合して配合物を得た。このとき、E型粘度計により配合物の粘度を測定したところ1000cP以下であった。
【0211】
塗布装置および紫外線照射装置が設けられた流動槽に磁性粒子を入れ、流動槽に風を送って磁性粒子を流動させた。塗布装置に配合物を入れ、塗布装置のノズルを通じて配合物をミスト状にし、流動している磁性粒子に対して噴霧した。ここで、アクリロイル基含有化合物およびラジカル重合開始剤からなる配合物と磁性粒子との合計100質量部に対して、配合物が56.5質量部の量となるように、配合物を噴霧した。配合物の噴霧を開始すると同時に、流動槽内の磁性粒子に紫外線を照射し、磁性粒子表面でアクリロイル基含有化合物を重合させ、樹脂被覆体を作製した。これにより、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−7)が得られた。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は56.5質量部の量で含まれ、磁性粒子は43.5質量部の量で含まれていた。
【0212】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0213】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−7)36.9質量部、ヒュームドシリカ6.15質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部およびアミン系硬化剤23質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−7)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0214】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)の変わりに第一のコーティング用樹脂組成物(1−7)を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0215】
[実施例1−8]
(磁性粒子被覆体の作製)
磁性粒子としてNiZn系フェライトからなる磁性粒子を用いた。また、被覆樹脂体を作製するために、ポリイミド樹脂が揮発性溶媒に溶解している配合物を用いた。
【0216】
塗布装置および紫外線照射装置が設けられた流動槽に磁性粒子を入れ、流動槽に熱風を送って磁性粒子を流動させた。塗布装置に配合物を入れ、塗布装置のノズルを通じて配合物をミスト状にし、流動している磁性粒子に対して噴霧した。ここで、ポリイミド樹脂と磁性粒子との合計100質量部に対して、ポリイミド樹脂が56.5質量部の量となるように、配合物を噴霧した。熱風により配合物中の溶媒を蒸発させ、磁性粒子被覆体を作製した。これにより、磁性粒子と磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体(1−8)が得られた。得られた磁性粒子被覆体において、磁性粒子および被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、被覆樹脂体は56.5質量部の量で含まれ、磁性粒子は43.5質量部の量で含まれていた。
【0217】
(第一のコーティング用樹脂組成物の作製)
ヒュームドシリカとしてAEROSIL 200(登録商標、日本アエロジル(株)製)を、硬化性樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を、潜在型硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた。
【0218】
具体的には、磁性粒子被覆体(1−8)36.9質量部、ヒュームドシリカ6.15質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部およびアミン系硬化剤23質量部を混合して、第一のコーティング用樹脂組成物(1−8)を得た。なお、上記混合では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1当量に対してアミン系硬化剤は1当量の量で混合されていた。
【0219】
(第一の硬化体を有するインダクタの作製)
第一のコーティング用樹脂組成物(1−1)の変わりに第一のコーティング用樹脂組成物(1−8)を用いた他は実施例1−1と同様にして、第一の硬化体を有するインダクタを作製した。
【0220】
[評価]
実施例1−1〜1−8、比較例1−1および参考例1−1のインダクタについて、100kHz、25℃の条件で、L値(公称インダクタンスの値)を測定した。また、L値のばらつきを求めた。結果を表1に示す。なお、ばらつきは、インダクタを1000個製造して求めた値である。
【0221】
【表1】

このように、コイルの全周に第一の硬化体が形成されているインダクタ(実施例1−1〜1−8)では、第一の硬化体が形成されていないインダクタ(比較例1−1)に比較して、L値が改善できた。また、実施例1−1〜1−8と参考例1−1との比較より、磁性粒子被覆体を含む第一のコーティング樹脂組成物を用いたインダクタでは、L値が増加しても、得られたインダクタ間でのL値のばらつきが抑えられた。
【符号の説明】
【0222】
1、20、30: インダクタ
2: ボビン
2a: 巻芯
2b: フランジ部
3: 金属線
3a、3b: 巻線端末
4: コイル
5、5a、5b: 第一の硬化体
6: 磁性粒子
7: 封止材
10: 集合リードフレーム
11: リードフレーム
13: 貫通穴
14a〜14d: 端子電極
15a〜15d: 折り曲げ部
16: 粘着テープ
16a: 粘着面
31: 回路基板
32a、32b: 配線パターン
40: ノズル
50: 集合インダクタ
60: 磁性粒子被覆体
61: 被覆樹脂体
101: 発光装置
102: ケース体
102a: 上面
102b: 凹部
102c: スリット
102d: 傾斜面
102e: 底面
103a、3b: メタルコア
104: 絶縁部材
105: LEDチップ
106: サブマウントパッケージ
106a: サブマウント基板
107: 第二の硬化体
107a: 蛍光体粒子
110: 集合基板
111: 第二の硬化体集合体
111a: 連結部材
Ph: 白色光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と該無機粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる無機粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする硬化体。
【請求項3】
磁性粒子と該磁性粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
前記磁性粒子被覆体において、前記磁性粒子および前記被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、前記被覆樹脂体が50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、前記磁性粒子が0質量部を超え50質量部未満の量で含まれることを特徴とする請求項3に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項5】
前記被覆樹脂体が、エポキシ化合物から形成される硬化物であることを特徴とする請求項3または4に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項6】
前記被覆樹脂体が、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリロイル基含有化合物から形成される硬化物であることを特徴とする請求項3または4に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項7】
前記被覆樹脂体が、ポリイミド樹脂から形成されることを特徴とする請求項3または4に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化性樹脂がエポキシ化合物であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項9】
前記磁性粒子被覆体を作製した後、前記磁性粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を混合することを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする硬化体。
【請求項11】
金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えたインダクタであって、
前記コイル表面の少なくとも一部が、請求項3〜8のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体によって覆われることを特徴とするインダクタ。
【請求項12】
金属線を巻回して成るコイルと、該コイルに接続される端子電極とを備えたインダクタの製造方法であって、
前記端子電極が形成された基台を多数個取りできる集合基台に、複数のコイルを搭載するコイル搭載工程と、
前記搭載されたコイル表面の少なくとも一部を、請求項3〜8のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体によって覆い、集合インダクタを製造する集合インダクタ製造工程と、
前記集合インダクタを単個のインダクタに切断する切断工程と、
を含むことを特徴とするインダクタの製造方法。
【請求項13】
蛍光体粒子と該蛍光体粒子表面の少なくとも一部に付着した被覆樹脂体とからなる蛍光体粒子被覆体、フュームドシリカおよび硬化性樹脂を含むことを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【請求項14】
前記蛍光体粒子被覆体において、前記蛍光体粒子および前記被覆樹脂体の合計を100質量部としたときに、前記被覆樹脂体が50質量部を超え100質量部未満の量で含まれ、前記蛍光体粒子が0質量部を超え50質量部未満の量で含まれることを特徴とする請求項13に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項15】
前記被覆樹脂体が、シリコーン樹脂から形成される硬化物であることを特徴とする請求項13または14に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られることを特徴とする硬化体。
【請求項17】
LEDチップと、該LEDチップを覆っている硬化体とを備えた発光装置であって、
前記硬化体が、請求項13〜15のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体であることを特徴とする発光装置。
【請求項18】
LEDチップと、該LEDチップを覆っている硬化体とを備えた発光装置の製造方法であって、
上記LEDチップを請求項13〜15のいずれかに記載のコーティング用樹脂組成物から得られる硬化体で覆う工程を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−270197(P2010−270197A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121989(P2009−121989)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】