説明

ゴムローラの製造方法

【課題】 最終的に型内に充填されるゴム内部に残留するエアーを低減することで、ボイドの発生を防止して、画像不良を生じない表面性に優れたゴムローラを得ることができるゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 練り機によりゴムを練るゴム練り工程と、練られたゴムを成形機内で可塑化する可塑化工程と、可塑化されたゴムを成形機により金型内に充填する充填工程と、を含むゴムローラの製造方法である。ゴム練り工程および充填工程の2工程、好ましくは、さらに、可塑化工程を含む全工程においてエアー抜きを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴムローラの製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、画像形成装置における現像ローラ等として好適に使用可能なゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置における現像ローラ等として、軸の外周にゴム層を担持してなるゴムローラが使用されている。かかるゴムローラは一般に、所定の配合ゴムを、ゴム練りした後、射出(押出)成形機内により所定の型内に充填し、軸の外周に担持させた状態で加硫成形することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−300239号公報([0003]、[図1]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゴム練り後のゴムは一旦リボン状に形成され、成形機内に投入されて可塑化された後、型内に充填されることになるが、このリボン状ゴム内部には、通常、練りにより巻き込まれたエアーが含まれる。また、このゴムを、成形機のスクリューで可塑化する際や、型内に充填する際にも、さらに内部にエアーが巻き込まれることになる。
【0004】
このように内部にエアーを巻き込んだゴムを用いて成形、キュアを行うと、ゴム内部のエアーが膨張して、ゴムローラ表面にボイド、即ち、気泡状の欠陥が生ずる。ボイドの発生により表面に凹凸が形成されたローラでは、画出しを行った際に縦すじ等の画像不良が発生して、製品として不良となるため、型内への充填時におけるゴム内部へのエアーの残留を防止して、製品ローラにおけるボイドの発生を防止することが重要となる。
【0005】
そこで本発明の目的は、最終的に型内に充填されるゴム内部に残留するエアーを低減することで、ボイドの発生を防止して、表面性が良好で画像不良の発生がない、高品質のゴムローラを得ることができるゴムローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ゴム内部への残留エアーの低減を図るためには、ゴム練り、スクリュー可塑化および型内充填の各工程において、ゴムの脱泡を行うことが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のゴムローラの製造方法は、練り機によりゴムを練るゴム練り工程と、練られたゴムを成形機内で可塑化する可塑化工程と、可塑化されたゴムを該成形機により金型内に充填する充填工程と、を含むゴムローラの製造方法において、
前記ゴム練り工程および充填工程の2工程でエアー抜きを行うことを特徴とするものである。好ましくはさらに、前記可塑化工程においてもエアー抜きを行う。
【0008】
本発明においては、前記ゴム練り工程においては、真空撹拌機を用いてゴム練りを行うことができ、前記可塑化工程においては、ベント式成形機を用いてゴムの可塑化を行うことができる。また、前記充填工程においては、前記金型内を真空引きしながらゴムの充填を行うことができる。本発明は特に、液状ポリイソプレンゴムを40重量部以下で含有するゴムを用いる場合に有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ゴム内部からのエアーの排除を確実に行うことができるため、最終的に型内に充填された際にゴム内部に残留するエアーを従来に比し大幅に低減することが可能となり、これにより製品ローラにおけるボイドの発生を防止して、画像不良を生じない、高品質のゴムローラを得ることができるゴムローラの製造方法を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のゴムローラの製造方法は、練り機によりゴムを練るゴム練り工程と、練られたゴムを成形機内で可塑化する可塑化工程と、可塑化されたゴムを成形機により金型内に充填する充填工程と、を含むものであり、これらゴム練り工程および充填工程の2工程、好ましくは、さらに、可塑化工程においてもエアー抜きを行う。従来、例えばベント式成形機を用いて可塑化工程を行うなど、個々の工程に関しエアー抜きを考慮してゴムローラの製造を行うことは行われていたが、本発明によりゴムローラ製造の上記2工程、特には全工程においてエアー抜きを行うことで、従来になく良好にボイドの発生を防止することができ、結果として画像不良を生じない高品質のゴムローラを製造することが可能となった。
【0011】
以下、各工程につき具体的に説明する。
まず、ゴム練り工程においては、撹拌機内を真空にした練り機を使用してゴム練りを行うことで、ゴム内部に巻き込まれたエアーを排除する方法を好適に用いることができる。
【0012】
次に、練られたゴムの可塑化を行う可塑化工程においては、ベント式成形機を用いることが好ましい。かかるベント式成形機の一例を、図1に示す。図示するベント式成形機10は、シリンダー11にスクリュー12が装着されてなり、ホッパー13から供給される原料を、駆動装置14により駆動されるスクリュー12により押出しまたは射出して、金型20内に充填することにより成形を行うものである。ベント式成形機10においては、スクリュー12の中間部に除圧縮部15が設けられるとともにシリンダー11の対応する箇所に脱気用のベント孔16が設けられており、このベント孔16から真空吸引等を行うことで、成形機内の原料中に含まれるエアーや水分などを除去することができるものである。ベント式成形機10は、図示はしないが、その他、減速機、加熱・冷却装置(ヒーター、ブロワー)温度制御装置などを適宜備えており、本発明においては、市販の装置を適宜用いることが可能である。
【0013】
また、充填工程においては、金型内を真空引きしながらゴムの充填を行う方法を好適に用いることができる。図2に、本発明に用いることのできる金型の一例の下端部概略図を示す。金型20内の真空引きは、例えば、図示するように、スリーブ21に嵌合された下端側キャップ22にエアー抜き孔23を設けて、このエアー抜き孔23に真空ポンプ(図示せず)を接続するなどした、真空引き機構を備える金型20を用いることで、好適に行うことができる。これにより、金型20内へのゴム充填時においても、ゴム内部へのエアーの巻き込みを良好に防止することが可能となる。なお、図1では金型20を横置き状態に配置してゴムの充填を行っているが、この金型配置については、縦置きであってもよく、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明のゴムローラの製造方法においては、上記ゴム練り、可塑化および充填の各工程において、夫々エアー抜きを行う点のみが重要であり、それ以外の点については従来公知の手法に従い行うことができ、特に制限されるものではない。また、エアー抜きを行うための方法についても、上述した方法、設備には制限されない。
【0015】
本発明は特に、配合中に、液状ポリイソプレンゴム(LIR)を40重量部以下、特には10〜30重量部にて含有するゴムを用いてゴムローラを製造する場合に有効である。LIRは、一般に、ローラ硬度を柔らかくし、練り加工性(ハンドリング性)を良くするために用いられる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1に示す配合に従い、LIRの配合量のみを下記の表2に示すように変えて、ゴムローラの製造を行った。
【0017】
(従来例1〜3)
下記の表2に示すようにLIRの配合部数を変えた配合ゴムを用い、ゴム練り工程、可塑化工程および充填工程のいずれにおいてもエアー抜きを行わずに、従来例1〜3のゴムローラを得た。
【0018】
(実施例1)
ゴム練り工程においては真空撹拌機を用いてゴム練りを行い、充填工程においては金型内を真空引きしながらゴムの充填を行うことにより(図2参照)、これら2工程においてエアー抜きを実施して、実施例1のゴムローラを得た。
【0019】
(実施例2)
ゴム練り工程においては真空撹拌機を用いてゴム練りを行い、可塑化工程においてはベント式成形機を用いてゴムの可塑化を行い(図1参照)、かつ、充填工程においては金型内を真空引きしながらゴムの充填を行うことにより(図2参照)、各工程においてエアー抜きを実施して、実施例2のゴムローラを得た。
【0020】
従来例1〜3および実施例1、2の各ゴムローラにつき、110℃で、夫々0,3,5,10,15時間キュアを行った後、各ゴムローラ表面を研磨して、ボイド数を測定した。測定は、図3に示すように、ローラのDカット側A、中央部B、丸軸側Cの3箇所の斜線部領域内の、ローラ表面上側および下側のボイドについて行った。測定器としては3次元測定器(倍率38倍で、ボイドは0.15mm以上のものをカウントした。)を用い、これら計6箇所のボイドの合計数を算出した。この結果を、下記の表2および図4のグラフ中に併せて示す。
【0021】
【表1】

1)BR:日本ゼオン社製、「BR1220L」
2)IR:日本ゼオン社製、「IR2200L」
3)LIR:クラレ(株)製、「LIR−30」
4)カーボンブラック:東海カーボン(株)製、「TB#5500」
5)架橋剤:日本油脂(株)製、「1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン」
【0022】
【表2】

【0023】
上記表2および図4のグラフから明らかなように、ゴム練り工程および充填工程の2工程、さらには可塑化工程を含む全工程においてエアー抜きを行った実施例1、2のゴムローラにおいては、従来例1〜3のエアー抜きを行わないゴムローラに比して、ボイド数が大幅に減少しており、高品質のゴムローラが得られていることが確認できた。また、従来例1〜3の結果からは、キュア時間が増大すればするほどボイド数が増加し、LIRの配合量が少ないほどボイド数が増大していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ベント式成形機の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る金型の一例を示す下端部概略図である。
【図3】実施例におけるローラのボイド数測定方法を示す説明図である。
【図4】実施例におけるローラのボイド数測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
10 ベント式成形機
11 シリンダー
12 スクリュー
13 ホッパー
14 駆動装置
15 除圧縮部
16 ベント孔
20 金型
21 スリーブ
22 下端側キャップ
23 エアー抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り機によりゴムを練るゴム練り工程と、練られたゴムを成形機内で可塑化する可塑化工程と、可塑化されたゴムを該成形機により金型内に充填する充填工程と、を含むゴムローラの製造方法において、
前記ゴム練り工程および充填工程の2工程でエアー抜きを行うことを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記可塑化工程においてもエアー抜きを行う請求項1記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム練り工程において、真空撹拌機を用いてゴム練りを行う請求項1または2記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記可塑化工程において、ベント式成形機を用いてゴムの可塑化を行う請求項2または3記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記充填工程において、前記金型内を真空引きしながらゴムの充填を行う請求項1〜4のうちいずれか一項記載のゴムローラの製造方法。
【請求項6】
液状ポリイソプレンゴムを40重量部以下で含有するゴムを用いる請求項1〜5のうちいずれか一項記載のゴムローラの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−297842(P2006−297842A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125873(P2005−125873)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】