説明

サイドエアバッグ装置

【課題】体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置や幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができ、そのエアバッグ袋体の小型化も可能なサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】体格が大小異なる着座者Pの頭部の高さ位置に合わせてヘッドレスト3Cを上下に位置調節すると、連動支持機構により肩部用エアバッグ袋体5Bの収納ケース5Cが着座者Pの肩部の高さ位置および幅位置に対応して上下方向および左右方向に位置調節される。その結果、車両が側面衝突を受けた際には、着座者Pの肩部に対応した適切な位置に肩部用エアバッグ袋体5Bを展開させることができ、着座者Pの肩部を的確に拘束することができる。そして、肩部用エアバッグ袋体5Bを小型化することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が側面衝突を受けた際にシートの着座者を衝撃から保護するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が側面衝突を受けた際にシートの着座者を衝撃から保護するサイドエアバッグ装置が従来一般に知られている。そして、この種のサイドエアバッグ装置としては、シートのヘッドレストに支持されることで展開時に着座者の頭部を支えるエアバッグ体と、シートのシートバックに支持されることで展開時に着座者の胸の側部を支えるエアバッグ体とを独立して設けたものや、これらを一体に設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、頭部用のエアバッグ体と体部用のエアバッグ体と一体に設けたエアバッグ体において、シートバックに対する支持高さの最下端を着座者の肩部高さを考慮した高さとすることが開示されている。
【特許文献1】特許第3716535号公報(段落0003,0005,0007、図19,20、段落0049〜0052、図1〜5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に従来例として開示された着座者の胸の側部を支えるエアバッグ体は、シートバックに対する支持位置が固定的であるため、展開時に着座者の衝撃耐性の高い肩部を確実に拘束することができない。殊に着座者の体格の大小に応じて的確に肩部を拘束することができないため、着座者の拘束性が低いという問題がある。
【0005】
もっとも、頭部用のエアバッグ体と体部用のエアバッグ体と一体に設けたエアバッグ体においては、着座者の体格の大小に拘わらず衝撃耐性の高い着座者の肩部を的確に拘束することができるが、この場合には、エアバッグ体が無駄に大型化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置や幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができ、そのエアバッグ袋体の小型化も可能なサイドエアバッグ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るサイドエアバッグ装置は、シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、エアバッグ袋体の収納ケースがシートのシートバックにその上下方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明に係るサイドエアバッグ装置では、着座者の肩部の高さ位置に対応して収納ケースを上下方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体が展開する。
【0009】
第2の発明に係るサイドエアバッグ装置は、シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、エアバッグ袋体の収納ケースがシートのシートバックにその左右方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係るサイドエアバッグ装置では、着座者の肩部の幅位置に対応して収納ケースを左右方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体が展開する。
【0011】
第3の発明に係るサイドエアバッグ装置は、シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、エアバッグ袋体の収納ケースがシートのシートバックにその上下方向および左右方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係るサイドエアバッグ装置では、着座者の肩部の高さ位置および幅位置に対応して収納ケースを上下方向および左右方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置および幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体が展開する。
【0013】
第1〜第3の発明に係るサイドエアバッグ装置において、シートバックから着座者の肩部を支える部分がショルダレストとして分割されている場合、ショルダレストと共に収納ケースをシートバックに位置調節自在に支持することができる。
【0014】
また、第1〜第3の発明に係るサイドエアバッグ装置において、収納ケースは、シートバックに上下位置調節自在に装着されたヘッドレストに連動して位置調節されるように構成することができる。この場合、体格が大小異なる着座者の頭部の高さ位置に応じてヘッドレストを上下に位置調節することにより、これに連動して収納ケースが着座者の肩部の高さ位置または幅位置、あるいは高さ位置および幅位置に対応した適切な位置に調節される。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係るサイドエアバッグ装置によれば、着座者の肩部の高さ位置に対応して収納ケースを上下方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができる。
【0016】
第2の発明に係るサイドエアバッグ装置によれば、着座者の肩部の幅位置に対応して収納ケースを左右方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができる。
【0017】
第3の発明に係るサイドエアバッグ装置によれば、着座者の肩部の高さ位置および幅位置に対応して収納ケースを上下方向および左右方向に位置調節することにより、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者の肩部の高さ位置および幅位置に拘わらず着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができる。
【0018】
そして、第1〜第3の発明に係るサイドエアバッグ装置によれば、着座者の肩部に対応した適切な位置にエアバッグ袋体を展開させることができるため、着座者の肩部を的確に拘束することができると共に、エアバッグ袋体を小型化することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係るサイドエアバッグ装置の最良の実施形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態として車両用の前部シートに適用されたサイドエアバッグ装置を前部シートおよびシートベルト装置と共に示す正面図、図2は図1に示したサイドエアバッグ装置を前部シートおよびシートベルト装置と共に示す斜視図、図3は一実施形態のサイドエアバッグ装置の要部として図1および図2に示した前部シート内に構成される連動支持機構の左半分の正面図である。
【0020】
一実施形態のサイドエアバッグ装置は、車両が側面衝突を受けた際にシートの着座者を衝撃から保護するものであり、例えば図1に示すシートベルト装置1と共に、車両の前部ドア2に隣接して配置された前部シート3に適用される。
【0021】
シートベルト装置1は、所謂3点式であって、図1および図2に示すように、シートベルト1Aにスライド自在に装着されたタング1Bと、タング1B部分から延びるシートベルト1Aのラップベルト部分1A1の端部を前部シート3におけるシートクッション3Aの向かって右側の左側部の後部付近に固定するアンカ1Cと、タング1B部分から延びるシートベルト1Aのショルダベルト部分1A2を繰り出すショルダアンカ1Dと、タング1Aをシートクッション3Aの向かって左側の右側部の後部付近に着脱自在に固定するバックル1Eとを備えている。
【0022】
前部シート3は、シートクッション3Aの後部にシートバック3Bが前後に角度調節に自在に連結され、シートバック3Bの上部にヘッドレスト3Cが上下に位置調節自在に装着された構造を有する。
【0023】
ここで、シートバック3Bは、図1に示した着座者Pの両肩部を除く背中から腰の部分を支える形状に形成されており、着座者Pの左右の肩部を支える部分は、シートバック3Bから分割された左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eとしてヘッドレスト3Cの下部の左右に配設されている。
【0024】
そして、ヘッドレスト3Cの下部の左右と左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eとの間は、それぞれジャバラ状ブーツ3F,3Gを介して連結されている。また、ヘッドレスト3Cの幅方向中央部の下部とシートバック3Bの幅方向中央部の上部との間は、ジャバラ状ブーツ3Hを介して連結されている。
【0025】
ここで、左ショルダレスト3Dの上部には、前述したシートベルト装置1のショルダアンカ1Dが固定されている。このショルダアンカ1Dは、左ショルダレスト3D内の図示しないヘッドレストフレームに溶接されており、内蔵するリトラクタ(図示省略)からシートベルト1Aのショルダベルト部分1A2を繰り出すように構成されている。
【0026】
図3は、前部シート3内に構成された連動支持機構4における左ショルダレスト3Dに対応した左半分(向かって右側の半分)の構造を示している。なお、連動支持機構4の右半分(向かって左側の半分)の構造は、左半分の構造と左右対称であるため、図示および詳細な説明は省略する。
【0027】
連動支持機構4は、図2に示したヘッドレスト3Cの上下位置調節に連動して左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eを上下方向および左右方向に位置調節自在にシートバック3Bに支持するものであり、連動支持機構4の向かって右側の左半分は、ヘッドレスト3Cの上下位置調節に連動して左ショルダレスト3Dを左右方向に位置調節自在にシートバック3Bに支持するように構成されている。
【0028】
連動支持機構4の左半分は、シートバック3Bに対してヘッドレスト3Cを上下に移動自在に案内する構造として、一組の中央ガイドステー4Aおよび中央ガイドパイプ4Bを備えている。
【0029】
中央ガイドステー4Aは、その下端部がシートバック3B内のアッパフレーム3B1に溶接されており、シートバック3Bの幅方向中央部付近に配置されている。一方、中央ガイドパイプ4Bは、ヘッドレスト3C内の図示しないヘッドレストフレームに溶接されており、ヘッドレスト3Cの幅方向中央部付近に配置されている。そして、この中央ガイドパイプ4Bに中央ガイドステー4Aの略上半分が摺動自在に嵌合しており、両者の間には、ヘッドレスト3Cを上下に位置調節するための図示しないロック機構が構成されている。
【0030】
また、連動支持機構4の左半分は、ヘッドレスト3Cに対して左ショルダレスト3Dを左右方向に移動自在に案内する構造として、一組の上部ガイドバー4Cおよび上部ガイドパイプ4Dと、同様の他の一組の下部ガイドバー4Eおよび下部ガイドパイプ4Fとを備えている。
【0031】
上部ガイドバー4Cは、向かって右側の一端部側が左ショルダレスト3D内のショルダレストフレーム3D1に溶接されており、左ショルダレスト3Dの上部に略水平に配置されている。一方、上部ガイドパイプ4Dは、ヘッドレスト3C内の図示しないヘッドレストフレームおよび中央ガイドパイプ4Bに溶接されており、ヘッドレスト3Cの上下方向中央部付近に配置されている。そして、この上部ガイドパイプ4Dに上部ガイドバー4Cの中間部から向かって左側の他端部側が摺動自在に嵌合している。
【0032】
同様に、下部ガイドバー4Eは、向かって右側の一端部側が左ショルダレスト3D内のショルダレストフレーム3D1に溶接されており、左ショルダレスト3Dの下部付近に略水平に配置されている。一方、下部ガイドパイプ4Fは、ヘッドレスト3C内の図示しないヘッドレストフレームおよび中央ガイドパイプ4Bに溶接されており、ヘッドレスト3Cの下部付近に配置されている。そして、この下部ガイドパイプ4Fに下部ガイドバー4Eの中間部から向かって左側の他端部側が摺動自在に嵌合している。
【0033】
さらに、連動支持機構4の左半分は、ヘッドレスト3Cの上下移動に連動して左ショルダレスト3Dを左右方向に移動させる構造として、上下方向に延びる縦ラックバー4Gと、左右方向に延びる横ラックバー4Hと、両者を連動させる2連の小径ピニオンギヤ4Jおよび大径ピニオンギヤ4Kとを備えている。
【0034】
縦ラックバー4Gは、その下端部がシートバック3B内のアッパフレーム3B1に溶接されており、中央ガイドステー4Aと平行にその向かって右側方に配置されている。そして、この縦ラックバー4Gは、ヘッドレスト3Cの下面に設置されているガイドブッシュ4Lを貫通してヘッドレスト3C内に延出しており、その上部の向かって右側の側面にラック4G1が形成されている。
【0035】
横ラックバー4Hは、向かって右側の一端部側が左ショルダレスト3D内のショルダレストフレーム3D1に溶接されており、上部ガイドバー4Cおよび下部ガイドバー4Eと平行に両者の間に水平に配置されている。そして、この横ラックバー4Hは、ヘッドレスト3Cの下部の向かって右側の左側面に配設されているガイドブッシュ4Mを貫通してヘッドレスト3C内に延出しており、その向かって左側の他端部の上面にラック4H1が形成されている。
【0036】
2連の小径ピニオンギヤ4Jおよび大径ピニオンギヤ4Kは、ヘッドレスト3C内の図示しないヘッドレストフレームに回転自在に支持されて一体に回転するようになっている。そして、ヘッドレスト3Cの上方移動に応じて左ショルダレスト3Dが向かって右側の左側方に移動するように、小径ピニオンギヤ4Jは縦ラックバー4Gのラック4G1に噛み合い、大径ピニオンギヤ4Kは横ラックバー4Hのラック4H1に噛み合っている。なお、小径ピニオンギヤ4Jと大径ピニオンギヤ4Kとのギヤ比は、着座者Pの頭部位置と肩幅との関係を求めた体格データにより決定されている。
【0037】
ここで、図1に示すように、一実施形態のサイドエアバッグ装置5は、車両が側面衝突を受けた際に着座者Pの腰部を衝撃から保護する腰部用エアバッグ袋体5Aと、着座者Pの肩部を衝撃から保護する肩部用エアバッグ袋体5Bとを備えている。
【0038】
腰部用エアバッグ袋体5Aは、前部シート3を構成するシートバック3Bの向かって右側の左側部内に配設された収納ケース(図示省略)内に収納されており、車両が側面衝突を受けた際には、図1および図2に二点鎖線で示すように前部ドア2の内面と着座者Pの腰部との間の空間に展開する。
【0039】
ここで、シートベルト装置1を構成するショルダアンカ1Dには、肩部用エアバッグ袋体5Bの収納ケース5Cが一体に構成されており、この収納ケース5Cは、左ショルダレスト3Dの向かって右側の側面上に配置されている。そして、収納ケース5Cに収納された肩部用エアバッグ袋体5Bは、車両が側面衝突を受けた際には、図1および図2に二点鎖線で示すように前部ドア2の内面と着座者Pの肩部との間の空間に展開する。
【0040】
以上のように構成された一実施形態のサイドエアバッグ装置5では、例えば大柄な体格の着座者Pがその頭部の高さ位置に合わせて前部シート3のヘッドレスト3Cをシートバック3Bから上方に引き上げて位置調節すると、連動支持機構4により、左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eがヘッドレスト3Cと共にシートバック3Bの上方に移動しつつヘッドレスト3Cからシートバック3Bの幅方向外側に向け左右方向に移動して位置調節される。
【0041】
この場合、図3に示した連動支持機構4の左半分では、ヘッドレスト3Cが矢印方向の上方に引き上げられると、シートバック3B側の中央ガイドステー4Aに沿ってヘッドレスト3C側の中央ガイドパイプ4Bが上方移動することで、ヘッドレスト3C、左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3E(図2参照)が上方に位置調節される。
【0042】
その際、シートバック3B側の縦ラックバー4Gのラック4G1に噛み合うヘッドレスト3C側の小径ピニオンギヤ4Jが向かって左向きの反時計方向に回転しつつ上方に移動し、左ショルダレスト3D側の横ラックバー4Hのラック4H1に噛み合う大径ピニオンギヤ4Kが小径ピニオンギヤ4Jと一体に向かって左向きの反時計方向に回転することで、横ラックバー4Hが左ショルダレスト3D側に押し出される。
【0043】
そして、左ショルダレスト3D側の上部ガイドバー4Cおよび下部ガイドバー4Eがヘッドレスト3C側の上部ガイドパイプ4Dおよび下部ガイドパイプ4Fに沿って移動することで、左ショルダレスト3Dがヘッドレスト3Cから図3の矢印方向の左方に移動して位置調節される。
【0044】
その結果、左ショルダレスト3Dの向かって右側の側面上に配置されている収納ケース5Cが前部シート3のシートバック3Bに対し上方および向かって右側の左方に移動して着座者Pの左肩の左側直近に位置調節される。同時に左ショルダレスト3Dの上部に固定されたショルダアンカ1Dが着座者Pの左肩の直上に位置調節される。
【0045】
反対に、小柄な体格の着座者Pがその頭部の高さ位置に合わせて前部シート3のヘッドレスト3Cをシートバック3B側の下方に押し下げて位置調節すると、連動支持機構4が前述した動作と反対の動作をすることにより、左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eがヘッドレスト3Cと共にシートバック3B側の下方に移動しつつシートバック3Bの幅方向内側に向け左右方向に移動して位置調節される。
【0046】
その結果、左ショルダレスト3Dの向かって右側の側面上に配置されている収納ケース5Cが前部シート3のシートバック3Bに対し下方および向かって左側の右方に移動して着座者Pの左肩の左側直近に位置調節される。同時に左ショルダレスト3Dの上部に固定されたショルダアンカ1Dが着座者Pの左肩の直上に位置調節される。
【0047】
すなわち、一実施形態のサイドエアバッグ装置5では、体格が大小異なる着座者Pの頭部の高さ位置に応じてヘッドレスト3Cを上下に位置調節することにより、これに連動して肩部用エアバッグ袋体5Bの収納ケース5Cが着座者Pの肩部の高さ位置および幅位置に対応した適切な位置に調節される。
【0048】
従って、一実施形態のサイドエアバッグ装置5によれば、車両が側面衝突を受けた際には、体格が大小異なる着座者Pの肩部の高さ位置および幅位置に拘わらず着座者Pの肩部に対応した適切な位置に肩部用エアバッグ袋体5Bを展開させることができ、着座者Pの衝撃耐性の高い肩部を的確に拘束することができる。
【0049】
そして、このように体格が大小異なる着座者Pの肩部の高さ位置および幅位置に拘わらず着座者Pの肩部に対応した適切な位置に肩部用エアバッグ袋体5Bを展開させることができるため、肩部用エアバッグ袋体5Bを必要最小限に小型化することができる。
【0050】
なお、シートベルト装置1においては、体格が大小異なる着座者Pの肩部の高さ位置および幅位置に拘わらずショルダアンカ1Dが着座者Pの左肩の直上に位置調節されるため、着座者Pがショルダアンカ1Dからショルダベルト部分1A2を引き出す作業が容易である。また、ショルダアンカ1Dから引き出されて着座者Pに装着されたショルダベルト部分1Aが着座者Pの胸部分に緩みなく適切にフィットする。
【0051】
本発明に係るサイドエアバッグ装置は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、図3に示した連動支持機構4の2連の小径ピニオンギヤ4Jおよび大径ピニオンギヤ4Kは、図示しないコントロールユニットにより回転が制御される駆動モータによって回転駆動されるように構成してもよい。
【0052】
この場合、コントロールユニットが駆動モータの回転を制御して2連の小径ピニオンギヤ4Jおよび大径ピニオンギヤ4Kを向かって左回りの反時計回りに回転させると、ヘッドレスト3Cがシートバック3Bに対して上方に移動し、同時に左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eがシートバック3Bに対してその幅方向外側に移動する。
【0053】
反対に2連の小径ピニオンギヤ4Jおよび大径ピニオンギヤ4Kを向かって右回りの時計回りに回転させると、ヘッドレスト3Cがシートバック3Bに対して下方に移動し、同時に左ショルダレスト3Dおよび右ショルダレスト3Eがシートバック3Bに対してその幅方向内側に移動する。
【0054】
ここで、図3に示した連動支持機構4は、向かって右側の左半分だけの構造としてもよい。この場合、図2に示した右ショルダレスト3Eは、ヘッドレスト3Cと一体に構成してもよいし、シートバック3Bと一体に構成してもよい。
【0055】
なお、図1、図2に示したエアバッグ装置5は、左側の前部シート3用に構成されているが、図示の例とは左右対称に構成して右側の前部シート用としてもよいし、後部シート用に構成することも可能である。
【0056】
さらに、本発明に係るサイドエアバッグ装置は、自動車用シートに限らず、その他の車両や船舶、航空機などのシートにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態として車両用の前部シートに適用されたサイドエアバッグ装置を前部シートおよびシートベルト装置と共に示す正面図である。
【図2】図1に示したサイドエアバッグ装置を前部シートおよびシートベルト装置と共に示す斜視図である。
【図3】一実施形態のサイドエアバッグ装置の要部として図1および図2に示した前部シート内に構成される連動支持機構の左半分の正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…シートベルト装置、1A…シートベルト、1A1…ラップベルト部分、1A2…ショルダベルト部分、1B…タング、1C…アンカ、1D…ショルダアンカ、1E…バックル、2…前部ドア、3…前部シート、3A…シートクッション、3B…シートバック、3C…ヘッドレスト、3D…左ショルダレスト、3E…右ショルダレスト、3F,3G,3H…ジャバラ状ブーツ、4…連動支持機構、4A…中央ガイドステー、4B…中央ガイドパイプ、4C…上部ガイドバー、4D…上部ガイドパイプ、4E…下部ガイドバー、4F…下部ガイドパイプ、4G…縦ラックバー、4H…横ラックバー、4J…小径ピニオンギヤ、4K…大径ピニオンギヤ、4L,4M…ガイドブッシュ、5…サイドエアバッグ装置、5A…腰部用エアバッグ袋体、5B…肩部用エアバッグ袋体、5C…収納ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ袋体の収納ケースは、前記シートのシートバックにその上下方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ袋体の収納ケースは、前記シートのシートバックにその左右方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
シートの着座者の肩部とその側方の車室面との間に展開するエアバッグ袋体を備えたサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ袋体の収納ケースは、前記シートのシートバックにその上下方向および左右方向に位置調節自在に支持されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記シートバックから着座者の肩部を支える部分がショルダレストとして分割されており、このショルダレストと共に前記収納ケースがシートバックに位置調節自在に支持されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記収納ケースは、前記シートバックに上下位置調節自在に装着されたヘッドレストに連動して位置調節されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−143280(P2008−143280A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330958(P2006−330958)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】