説明

サスペンションブッシュ組付構造

【課題】 車両の乗り心地を良好に確保しつつ、ゴム弾性体の耐久性を良好に高め得るサスペンションブッシュ組付構造の提供。
【解決手段】 半割り円筒形状の外筒金具半体の一対(24a、24b)を内筒金具26を間にして対称的に対向配置せしめ、ゴム弾性体28にて連結すると共に、その連結方向に直交する方向にて、軸方向に貫通するすぐり部30を、前記内筒金具26を間にしてその両側にそれぞれ形成したブッシュ20を、ブッシュ軸方向が垂直方向となるよう、前記アームアイ部22に圧入すると共に、該ブッシュ20に30〜40%の圧縮率の高圧縮を加え、該ブッシュ20の前記連結方向のばね特性を非線形とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、サスペンションブッシュの組付構造に係り、特に、車両サスペンションのサスペンションアームにおける円筒形状のアームアイ部に圧入せしめられて、ブッシュ軸方向が垂直方向となるように取り付けられてなる、縦置きのサスペンションブッシュ組付構造に関するものである。
【0002】
【背景技術】自動車等の車両のサスペンションの一つとして、例えば、実開昭61−91408号公報や特開平6−106931号公報等に示されている如く、車輪を回転可能に支持するキャリアと、そのようなキャリアの下端部に外側端部が枢着される一方、少なくとも車両前後方向に、互いに離隔されて設けられた二つの内側端部が、弾性ジョイントを介して、車体に枢支されたL型のロアアームとを備えてなる、ストラット式のものが知られている。また、そのような形式のサスペンションにおけるL型ロアアームの二つの内側端部のうち、車両後方側の内側端に設けられる弾性ジョイントとして、車両の上下方向(垂直方向)に延在する中心軸線に対して同心的に配置され、車体に固定される内筒金具と、そのような内筒金具に対して同心に延在して、ロアアームの車両後方側の内側端部を構成するアームアイ部に嵌挿されて固定された外筒金具と、それら内、外筒金具の間に介装されて、それら内、外筒金具を連結するゴム弾性体とからなる、縦置き式のゴムブッシュ(サスペンションブッシュ)が用いられていることは、従来からよく知られているところである。
【0003】そして、このような縦置き式のブッシュ組付構造を採用したストラット式サスペンションにあっては、L型のロアアームの内側端部の何れもが、車両前後方向に延在する中心軸線を有する弾性ジョイントを介して、それぞれ車体に枢支せしめられるようにした構造のものに比して、サスペンションの前後コンプライアンスを高くすることが出来、これにより、車両の乗り心地性が高められ得ることが知られているが、更に、その乗り心地性を向上せしめるべく、そのような縦置き構造のゴムブッシュにおける内筒金具と外筒金具との間に介装せしめられる円筒状のゴム弾性体に対して、内筒金具を挟むように、その両側にブッシュ軸方向に貫通する空所(すぐり部)をそれぞれ設けて、それら貫通空所の存在によって、車輪(タイヤ)の車両前後方向の動きが容易となるようにした構造も、検討されている。
【0004】ところで、そのようなサスペンションブッシュ構造を採用したサスペンションにおいても、近年における車としての保証が厳しくなってきているところから、外筒金具に対する内筒金具の相対的に大きな動きに対するゴム弾性体の耐久性の面において、その要求を充分に満足させ難くなってきているのである。
【0005】すなわち、外筒金具と内筒金具との間に作用する荷重にて内筒金具に相対的に大きな変位が生じた場合において、ブッシュのゴム弾性体に設けたすぐり部の隅部に大きな引張力が作用するようになり、そしてそのような引張力にてゴム弾性体に亀裂等の欠陥が発生して、耐久性を低下せしめることとなるのである。
【0006】従って、サスペンションに対するより高い要求特性を満足した状態において、ゴムブッシュ、特にゴム弾性体の耐久性をも満足させるには、従来のゴムブッシュにおけるゴム弾性体の如きゴムボリュームでは、困難であったのであり、そのために、そのようなゴム弾性体のゴムボリュームを増大せしめて、内筒金具の大きな変位によりすぐり部の隅部等に引張力が作用するのを抑制することにより、その耐久性を確保することが考えられるのであるが、そのようなゴムボリュームの増大は、直接的に、コストアップにつながり、またブッシュサイズが大きくなることによって、重量の増加やサスペンションアームの設計にも悪影響をもたらす等の問題を惹起することとなる。
【0007】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、保証要求が高くなっても、ゴムボリュームを増大せしめることなく、車両の乗り心地を良好に確保しつつ、ゴム弾性体の耐久性を良好に高め得るサスペンションブッシュの組付構造を提供することにある。
【0008】
【解決手段】そして、本発明にあっては、そのような課題の解決のために、車両サスペンションのサスペンションアームにおける円筒形状のアームアイ部に圧入せしめられて、ブッシュ軸方向が垂直方向となるように取り付けられてなる縦置きのサスペンションブッシュ組付構造にして、半割り円筒形状の外筒金具半体の一対を所定の内筒金具を間にして対称的に対向配置せしめ、それら一対の外筒金具半体と内筒金具とをゴム弾性体にてそれぞれ連結すると共に、その連結方向に直交する方向において、軸方向に貫通するすぐり部を、前記内筒金具を間にしてその両側にそれぞれ形成してなる構造のブッシュを用い、かかるブッシュを、ブッシュ軸方向が垂直方向となるように、前記アームアイ部に圧入せしめると共に、該ブッシュに30〜40%の圧縮率の高圧縮を加えて、該ブッシュの前記連結方向におけるばね特性が非線形となるようにしたことを特徴とするサスペンションブッシュ組付構造を、その要旨とするものである。
【0009】このような本発明に従うサスペンションブッシュ組付構造にあっては、縦置きのサスペンションブッシュとして、外筒金具が、一体的な円筒形状ではなく、半割り形状とされると共に、その半割り形状の外筒金具半体の突き合わせ部位に、内筒金具を挟んで、その両側に、一対のすぐり部が形成されてなる構造のブッシュを用い、それをサスペンションアームにおける円筒形状のアームアイ部に圧入せしめて、30〜40%の高圧縮を加えて、内、外筒金具のゴム弾性体による連結方向におけるばね特性が非線形となるように構成されているところから、そのような連結方向における静ばね定数が硬く(高く)なり、以てそのような連結方向とそれに直交するすぐり部の対向方向の静ばね定数の比を、従来からのブッシュよりも大きく為し得ることとなったのであり、そしてそれによって、操縦安定性の向上を、有利に図り得ることとなったのである。
【0010】しかも、そのようなブッシュが、アームアイ部に30〜40%の高圧縮率にて圧入せしめられていることによって、外部荷重の作用により、内、外筒金具が相対的に変位しても、ブッシュ(ゴム弾性体)には、圧縮成分が支配的に掛かり、常に圧縮成分が加わった状態に維持されているところから、引っ張り応力がゴム弾性体に作用するようなこともなく、その耐久性の向上に大きく寄与し得ることとなるのである。
【0011】なお、かかる本発明に従うサスペンションブッシュ取付構造の好ましい実施態様の一つによれば、前記ブッシュは、前記すぐり部の対向方向が前記サスペンションアームに取り付けられる車輪の車両前後方向の動きに対応した前記アームアイ部における荷重入力方向に位置する一方、前記外筒金具半体と内筒金具の連結方向が前記荷重入力方向に対して直角な方向に位置するように、前記アームアイ部に圧入せしめられることとなる。そして、このようなブッシュの圧入、配置構造の採用によって、タイヤ(車輪)を前後方向にスムーズに動かす方向において、かかるブッシュのばねは柔らかくなり、従ってタイヤもスムーズに動くようになり、以て車の乗り心地を良くすることが出来る一方、そのようなタイヤが動き易い方向に直交する方向となる、タイヤが動き難い方向には、内、外筒金具の連結方向が位置せしめられて、その方向における静ばね定数が硬くされていることによって、優れた乗り心地と操縦安定性が両立して、効果的に実現せしめられ得るのである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明に従う代表的な実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0013】先ず、図1には、車両のフロントサスペンションに用いられるサスペンションアームであるL型のロアアームの平面形態が示されており、また図2には、そのようなロアアームについて、車両内側から外側(タイヤ側)に向かって見た形態(正面図)が示されている。なお、それらの図においては、2つのサスペンションブッシュのうちの何れか一方が、半裁断面図において示されている。
【0014】そして、それらの図において、L型ロアアーム10の車両外側端部には、ボールジョイント12が配設されており、このボールジョイント12が、よく知られているように、キャリア(図示せず)を介して、車輪(タイヤ)14に取り付けられるようになっている。また、ロアアーム10の車両前後方向に互いに離隔して設けられた二つの内側端部のうち、車両前方側に位置するもののアームアイ部16には、ブッシュ軸方向が水平方向である横置きのゴムブッシュ18が、装着されている一方、車両後方側に位置するロアアーム10の他の一つの内側端部には、サスペンションブッシュとしての縦置きのゴムブッシュ20が、そのブッシュ軸方向が垂直方向となるようにして、アームアイ部22内に圧入せしめられて、取り付けられているのであり、そして、それら横置きのゴムブッシュ18と縦置きのゴムブッシュ20により、ロアアーム10が車体に枢支せしめられるようになっているのである。
【0015】かかる状況下、そのようなロアアーム10に取り付けられる二つのサスペンションブッシュのうち、縦置きのゴムブッシュ20が、本発明の前記した課題を解決すべく、図3及び図4に示される構造において構成されると共に、図1に示される配設形態において、アームアイ部22に対して圧入せしめられているのである。
【0016】要するに、かかるゴムブッシュ20は、図3R>3及び図4より明らかな如く、対応する端部同士が突き合わされることによって円筒体となる外筒金具24を与える、半割り円筒形状の外筒金具半体24a、24bと、内筒金具26と、それら一対の外筒金具半体24a、24bと内筒金具26とを連結するゴム弾性体28とから構成されており、そして内筒金具26の両側に一対の外筒金具半体24a、24bを対称的に対向、配置せしめた状態において、ゴム弾性体28にて連結せしめられて、一体的な構造とされているのである。また、それら一対の外筒金具半体24a、24bと内筒金具26の連結方向に対して直交する方向において、換言すれば一対の外筒金具半体24a、24bの内筒金具26両側に位置する突き合わせ部位において、それぞれ、すぐり部30が、ブッシュ軸方向に貫通する空所として形成されている。
【0017】なお、このような一対の外筒金具半体24a、24bと内筒金具26とをゴム弾性体28にて連結せしめてなる、一体的な構造のゴムブッシュ20は、よく知られているように、加硫成形金型の成形キャビティ内の所定位置に、一対の外筒金具半体24a、24bや内筒金具26を配置せしめた状態下において、所定のゴム材料を供給して、ゴム弾性体28を加硫成形することにより、一体的な加硫成形品として得る方法等の、公知の各種手法に従って、容易に製造され得るものである。
【0018】そして、かくの如き構造のゴムブッシュ20は、図5に示される如く、その外筒金具半体24a、24bの対応する周方向両端部を突き合わせるようにして、径方向に圧縮せしめられた状態下において、ロアアーム10の2つの内側端部のうちの車両後方側の内側端に設けられたアームアイ部22に圧入せしめられて、取り付けられることとなるが、本発明にあっては、特に、そのような圧入に際して、ゴム弾性体28の圧縮率が30〜40%となるようにして、圧入が行なわれるのである。具体的には、図3に示されるように、圧入前のゴムブッシュ20における内外筒金具24、26間の連結方向での、内外筒金具24、26間の距離をH0 とし、図5R>5に示される如く、圧入後におけるゴムブッシュ20の内外筒金具24、26の連結方向における距離をH1 としたとき、[(H0 −H1 )/H0 ]×100にて表わされる圧縮率(%)が30〜40%の範囲内となるように、ゴムブッシュ20はアームアイ部22に圧入せしめられるのであり、これによって、2つのすぐり部30、30の対向方向(すぐり中心軸32方向)においては、柔らかなばね特性が確保される一方、そのようなすぐり部30、30の対向方向とは直角な方向、換言すればゴム弾性体28による内外筒金具24、26の連結方向においては、ばね特性が非線形特性となるようにしたのである。
【0019】ここにおいて、一般に、ゴムに圧縮を加えると、その初期においては、線形のばね特性(荷重−撓み特性)を示すが、更に圧縮を加えていくと、そのようなばね特性が非線形となるのであり、このため、本発明では、かかる圧縮率が30%以上にて発現される非線形特性を利用することとしたのであり、また、そのような圧縮率が高くなり過ぎると、ばね自体が硬くなり過ぎる問題に加えて、ゴム弾性体28の接着端部にて亀裂等が発生して、耐久性を低下せしめる問題を惹起するところから、そのような圧縮率の上限は、40%とすることとしたのである。なお、このようなゴム弾性体28に対する30〜40%の高圧縮は、外筒金具24を二分割にして、半割り円筒形状の外筒金具半体24a、24bの一対とすることにより、初めて、実現され得るものであって、一体の外筒金具を用いたブッシュにあっては、そのような高圧縮が加えられることにより、外筒金具の割れや外筒金具内面に塗布される接着剤の塗膜が割れ、ゴムに亀裂が入る等の問題が惹起されることとなる。
【0020】そして、そのような30〜40%もの高圧縮をゴムブッシュ20のゴム弾性体28に加えることによって、ゴムブッシュ20の内外筒金具24、26連結方向における静ばねが硬くなり(ばね定数としては大きくなる)、そのような連結方向とすぐり中心軸方向32との静ばね定数の比を大きくとることが出来ることとなるのであり、以て、後述するように、乗り心地と操縦安定性の両立が有利に実現せしめられ得るのである。
【0021】しかも、そのような高圧縮により、ゴムブッシュ20のゴム弾性体28には、常に圧縮成分がかかっていることとなり、そのため、内外筒金具24、26が相対変位しても、引っ張り応力がかからず、以て耐久性の向上が有利に実現され得ることとなるのである。
【0022】また、かかるゴムブッシュ20をロアアーム10におけるアームアイ部22に圧入せしめて、前述の如き高圧縮をかけて、取り付けるに際して、ゴムブッシュ20は、そのすぐり部30、30の対向方向(すぐり中心軸32の方向)が車輪(タイヤ)14を車両前後方向にスムーズに動かすに最も容易な方向となるように、アームアイ部22に圧入せしめられて、配置されることとなるのである。具体的には、図1に示される如く、ゴムブッシュ22は、すぐり部30、30の対向方向がロアアーム10に取り付けられる車輪(タイヤ)14の車両前後方向の動きに対応したアームアイ部22における荷重入力方向に位置するようにして、またそのブッシュ軸方向が垂直方向となるようにして、アームアイ部22に圧入せしめられ、これによって、車輪(タイヤ)14を車両前後方向にスムーズに動き易いようにして、乗り心地の向上を実現しているのである。
【0023】このように、ゴムブッシュ20における2つのすぐり部30、30の対向方向であるすぐり中心軸32方向が、車輪(タイヤ)14が動き易い方向に向けて配置されることにより、ゴムブッシュ20の内外筒金具24、26の連結方向は、このようなすぐり中心軸32の方向に対して垂直な方向となる、タイヤが動き難い方向に位置せしめられることになるのであり、そして、そのような内外筒金具24、26を連結するゴム弾性体28部分には、30〜40%の高圧縮が加えられていることによって、それら連結方向/すぐり中心軸32方向に対応する車両左右方向/前後方向の静ばね定数の比を大きくとることが出来、以て乗り心地と操縦安定性が、両立して、有利に実現され得るのである。
【0024】なお、サスペンションアーム(10)におけるアームアイ部(22)に対するゴムブッシュ20の圧入に際してのすぐり中心軸32の方向は、一定ではなく、車両の構造やサスペンションアーム(10)の構造等によって、図1に示される左右軸と前後軸との間において、種々変化し、タイヤ(14)が車両前後方向に動き易いように、そのようなタイヤ(14)が取り付けられたサスペンションアーム(10)を介して加わるアームアイ部22における荷重のうち、そのようなタイヤ(14)の車両前後方向の動きに対応して作用する荷重の入力方向に、ゴムブッシュ20の2つのすぐり部30、30が対向して位置するように、配置せしめられることとなる。従って、かかるゴムブッシュ20におけるすぐり中心軸32の方向は、必ずしも車両前後方向に一致するものではなく、ここでは、左右軸に対するすぐり中心軸32の為す角度:αが約20°となるように、圧入、配置せしめられている。
【0025】また、かかるゴムブッシュ20における、対向した2つのすぐり部30、30の大きさとしては、図5に示される如き、アームアイ部22に対する圧入、圧縮状態下において、すぐり中心軸32方向における、要求されるばねの柔らかさに応じて、適宜に選定されることとなるが、一般に、すぐり角度:β、換言すればブッシュ軸心から見たすぐり部30の広がり角度としては、50°〜100°程度が採用され、図示の例においては、約90°とされている。
【0026】ところで、上述の如くしてロアアーム10のアームアイ部22に圧入して取り付けられる、図5に示される如き圧縮状態のゴムブッシュ20の優れた特徴は、外筒金具として一体の円筒体を用い、それと内筒金具とをゴム弾性体にて連結すると共に、内筒金具の両側に同様な大きさのすぐり部を対向させて設けてなる構造の、従来のゴムブッシュと対比した、図6及び図7における荷重−撓み特性を示すグラフから、容易に理解することが出来るのである。
【0027】すなわち、図6は、内外筒金具をゴム弾性体にて連結した方向において、それら内外筒金具間に荷重を加えたときの荷重−撓み特性を示しており、また図7R>7は、すぐり中心軸方向において、内筒金具と外筒金具との間に荷重を加えた場合の荷重−撓み特性を示すグラフであり、何れの測定においても、内筒金具を固定する一方、外筒金具に荷重を加えて、外筒金具の撓み(変位)の程度をレコーダにて記録する手法を採用したものである。なお、本発明ブッシュにおけるすぐり角度(β)は、約90°(圧入後)であり、また従来ブッシュにおいても、そのすぐり部は、ブッシュ軸心から見て、90°の角度となる大きさにおいて設けられている。そして、それらの図において、実線が本発明ブッシュの特性を示し、破線が従来ブッシュの特性を示している。
【0028】そして、それらの図のうち、図6では、内外筒金具の連結方向においては、本発明ブッシュの方が従来ブッシュよりも大きな静ばね定数を示している一方、すぐり部の対向方向であるすぐり軸方向においては、図7に示される如く、本発明ブッシュと従来ブッシュとは、その静ばね定数(直静の傾き)が略同一であることを示しているのであり、このことからして、本発明ブッシュにおいては、内外筒金具の連結方向/すぐり軸方向の静ばね定数の比を大きく設定することが出来ることを、理解し得るのである。
【0029】以上、本発明の代表的な一実施形態について詳述してきたが、それはあくまでも例示であって、本発明は、そのような実施形態における具体的記載によって、限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
【0030】例えば、サスペンションアームの形状や構造、具体的にはロアアーム10の形状や構造、更にはその外側端部における車輪の取付構造、またゴムブッシュ18を介しての車体への取付構造等は、公知の各種の構造乃至は構成が適宜に採用されることとなるのである。
【0031】また、縦置き式のゴムブッシュ20にあっても、外筒金具が半割り円筒形状の筒状半体の一対にて構成され、且つ内筒金具を挟んで、その両側に対向するように2つのすぐり部が形成されてなる構造のゴムブッシュである限りにおいて、各種の変更を加えた構造のブッシュであっても、何等差し支えないのである。
【0032】何れにしても、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、本発明には、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであって、そのような実施の態様が、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【0033】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に従うサスペンションブッシュ組付構造によれば、外筒金具を半割り円筒形状の半体の一対にて構成した縦置きのサスペンションブッシュを用いたことにより、そのようなサスペンションブッシュを30〜40%の高い圧縮率にてサスペンションアームのアームアイ部に圧入、配置せしめることが出来、これにより、常に圧縮成分がゴム弾性体に作用する状態となっているために、内外筒金具が相対変位しても、ゴム弾性体には引っ張り応力がかからず、以てその耐久性を著しく高め得ることとなったのであり、また30〜40%の高圧縮をかけているために、車両左右方向における動きに対して、サスペンションブッシュ、ひいてはゴム弾性体の静ばね定数を高くすることが出来、以て車両左右方向と車両前後方向の静ばね定数の比を大ならしめることにより、操縦安定性を向上せしめ、更には乗り心地の向上をも達成し得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両サスペンションの一つであるストラット式サスペンションにおけるL型ロアアームを示す平面説明図(一部切欠き)である。
【図2】図1に示されるL型ロアアームの正面説明図(一部切欠き)である。
【図3】図1に示されるロアアームの車両内側端部の車両後方側部位に設けられるアームアイ部に圧入せしめられるゴムブッシュの一例を示す平面説明図である。
【図4】図3に示されるゴムブッシュにおけるA−A断面説明図である。
【図5】図3に示されるゴムブッシュの圧入、圧縮形態を示す平面説明図である。
【図6】本発明ブッシュと従来ブッシュとの対比において、内外筒金具の連結方向における荷重−撓み特性を示すグラフである。
【図7】本発明ブッシュと従来ブッシュとの対比において、すぐり中心軸方向における荷重−撓み特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10 ロアアーム 12 ボールジョイント
14 車輪(タイヤ) 16、22 アームアイ部
18、20 ゴムブッシュ 24a、b 外筒金具半体
26 内筒金具 28 ゴム弾性体
30 すぐり部 32 すぐり中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両サスペンションのサスペンションアームにおける円筒形状のアームアイ部に圧入せしめられて、ブッシュ軸方向が垂直方向となるように取り付けられてなる縦置きのサスペンションブッシュ組付構造にして、半割り円筒形状の外筒金具半体の一対を所定の内筒金具を間にして対称的に対向配置せしめ、それら一対の外筒金具半体と内筒金具とをゴム弾性体にてそれぞれ連結すると共に、その連結方向に直交する方向において、軸方向に貫通するすぐり部を、前記内筒金具を間にしてその両側にそれぞれ形成してなる構造のブッシュを用い、かかるブッシュを、ブッシュ軸方向が垂直方向となるように、前記アームアイ部に圧入せしめると共に、該ブッシュに30〜40%の圧縮率の高圧縮を加えて、該ブッシュの前記連結方向におけるばね特性が非線形となるようにしたことを特徴とするサスペンションブッシュ組付構造。
【請求項2】 前記ブッシュを、前記すぐり部の対向方向が前記サスペンションアームに取り付けられる車輪の車両前後方向の動きに対応した前記アームアイ部における荷重入力方向に位置する一方、前記外筒金具半体と内筒金具の連結方向が前記荷重入力方向に対して直角な方向に位置するように、前記アームアイ部に圧入せしめることを特徴とする請求項1に記載のサスペンションブッシュ組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−337527(P2002−337527A)
【公開日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−145810(P2001−145810)
【出願日】平成13年5月16日(2001.5.16)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】