説明

サスペンション装置

【課題】サスペンション装置において、給油作業中であることを、車高の変化に基づいて検出可能とする。
【解決手段】車両が停止状態にあり、かつ、人の乗降も荷物の積み降ろしも行われることがない場合に(S1〜5)、車高の変化速度が検出され(S6)、変化速度が設定範囲内にあり、かつ、周波数が設定周波数以下である場合には(S7,8の判定がともにYES)、給油作業中であるとされる(S9)。このように、車高の変化速度に基づくため、給油口開閉センサによらなくても、給油作業中であることを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油作業を検出可能なサスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、車高調整装置を備えたサスペンション装置が記載されており、特許文献4には、給油口開閉センサ(フューエルリッドオープナセンサ)により給油口(フューエルリッド)が開状態にあることが検出された場合に、給油作業中であると検出されることが記載されている。
これらのうちの、特許文献1,2には、車両のドアが開状態にあると検出された場合には車高調整が禁止されることが記載され、特許文献3には、イグニッションスイッチがOFF状態に切り換えられた後、ドアロックが検出された場合には、車高調整装置への電気エネルギの供給が終了させられることが記載されている。
【特許文献1】実開平1−104807号公報
【特許文献2】特開平2−299916号公報
【特許文献3】特開平4−185517号公報
【特許文献4】特開2004−324579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、サスペンション装置において、給油口の開閉の状態を検出する給油口開閉センサによらなくても、給油作業中であることを検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、請求項1に係るサスペンション装置を、(a)車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられたサスペンションと、(b)前記車輪保持装置と、前記車体の前記車輪保持装置に対応する部分との間の相対位置関係である車高と、前記サスペンションに加わる荷重との少なくとも一方を検出する検出装置と、(c)その検出装置による検出値の変化速度が予め定められた設定範囲内にある場合に、前記車体に設けられた燃料タンクに燃料を供給する給油作業中であることを検出する給油作業検出装置とを含むものとすることによって解決される。
【0005】
請求項1に係るサスペンション装置において、車体に設けられた燃料タンクに燃料(液体燃料であり、例えば、ガソリン、軽油等が該当する)が供給される給油作業が行われると、サスペンションに加わる荷重が大きくなり、車輪保持装置と車体との間の相対距離が小さくなる。燃料の供給に伴って、燃料タンクに収容される燃料の量が漸増し、サスペンションに加わる荷重が漸増し、相対距離が漸減するのである。
この場合の、荷重の増加速度、車高の減少速度は、燃料の比重、燃料タンクへの供給流量等によって決まり、予め定められた設定範囲内となる。したがって、荷重の増加速度、車高の減少速度が予め定められた設定範囲内にある場合には、給油作業中であるとすることができる。
このように、荷重の増加速度と車高の減少速度との少なくとも一方に基づけば、給油口の開閉状態を検出する給油口開閉センサによらなくても、給油作業中であることを検出することができる。
本発明は、給油口開閉センサが設けられていない車両のサスペンション装置に適用する場合に、特に有効であるが、給油口開閉センサが設けられた車両のサスペンション装置に適用することもできる。その結果、給油口開閉センサの異常時にも給油作業中であることを検出することができる。また、給油口開閉センサによる検出結果と荷重や車高の変化速度との両方に基づけば給油作業中であることをより正確に検出することが可能となる。
また、荷重の増加速度や車高の減少速度が設定範囲内であり、かつ、周波数が設定値以下である場合に、給油作業中であるとすることもできる。給油作業に起因する車高変化においては、周波数が低いのが普通である。このことから、検出装置による検出値をフィルタ処理し、そのフィルタ処理された値に基づいて変化速度が設定範囲内にあるか否かが判定されるようにすることが望ましい。
【0006】
請求項2に記載のサスペンション装置においては、前記給油作業検出装置が、(a)車両に設けられたドアの開閉の状態を検出する開閉検出装置と、(b)その開閉検出装置によってドアが閉状態にあることが検出された場合に、前記給油作業中であるか否かを検出するドア閉時給油作業検出部とを含むものとされる。
給油作業の検出は、人の乗降がない場合、荷物の積み降ろしがない場合に行われることが望ましい。その結果、車高変化、荷重変化が、給油作業に起因する変化であるか否かを正確に取得することができ、給油作業中であるか否かを正確に取得することができる。
車体に設けられたドアとしては、乗降車用ドア、ラッゲージコンパートメントドア(バックドア)等がある、これらの少なくとも1つのドアが開状態にある場合には、人の乗降、荷物の積み降ろしが行われると推定することができる。
また、給油作業の検出は、車高調整装置によって車高調整が行われない場合に行われることが望ましい。
【0007】
請求項3に記載のサスペンション装置においては、(a)前記車輪保持装置と前記車体との間の前記相対位置関係を調整する車高調整装置と、(b)前記給油作業検出装置によって、前記給油作業中であることが検出された場合に、前記車高調整装置によって車高調整が行われないようにする車高調整禁止装置とを含むものとされる。
給油作業中であると検出された場合には、車高調整装置による車高調整が禁止される。それによって、給油作業者の意に反して車高が変化することを回避し、給油作業において車高の変化に注意する必要がなくなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の一実施例であるサスペンション装置を図を参照しつつ説明する。
本サスペンション装置において、図1に示すように、前後左右輪4FL、FR、RL、RRを保持する車輪保持装置6FL、FR、RL、RRと車体8との間に、それぞれ、車高調整アクチュエータとしての懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRが、図示しないサスペンションスプリングとともに設けられる。懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは流体としての作動液により作動させられるものである。以下、懸架シリンダ10等を区別する必要がある場合に、車輪位置を表す符号FL、FR、RL、RRを付して使用し、区別する必要がない場合に符号を付さないで使用する。
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは、互いに構造が同じものであり、それぞれ、ハウジング11と、ハウジング11の内部に相対移動可能に嵌合されたピストン12と、ピストンロッド14とを含み、ピストンロッド14が車輪保持装置6に、ハウジング11が車体8に、それぞれ上下方向に相対移動不能に連結される。ピストン12には、そのピストン12により仕切られた2つの液室16,18を連通させる絞り機能を有する連通路20が設けられる。絞り機能により、ピストン12のハウジング11に対する相対移動速度(絞りを流れる作動液の流速)に応じた減衰力が発生させられる。懸架シリンダ10はショックアブソーバとして機能する。
【0009】
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液室16には、それぞれ、個別通路22FL、FR、RL、RRが接続される。
個別通路22FL、FR、RL、RRの各々には、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの各々に対応して、互いに並列にアキュムレータ24FL、FR、RL、RRとアキュムレータ26FL、FR、RL、RRとが接続される。また、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RR(個別通路22FL、FR、RL、RR)とアキュムレータ26FL、FR、RL、RRとを接続する接続通路27FL、FR、RL、RRには、それぞればね定数切換弁28FL、FR、RL、RRが設けられる。
これらアキュムレータ24、26は、いずれもばねとしての機能を有するものであり、例えば、ハウジングとそのハウジングの内側を仕切る仕切部材とを含み、その仕切部材の一方の容積変化室に個別通路22が連通させられ、他方の容積変化室に弾性体が設けられたものであり、一方の容積変化室の容積の増加に起因して他方の容積変化室の容積が減少し、それによって弾性力を発生させるものとすることができる。アキュムレータ24,26は、ベローズ式のものとしたり、ブラダ式のものとしたり、ピストン式のものとしたりすること等ができる。
本実施例においては、アキュムレータ24の方がアキュムレータ26よりばね定数が大きいものとされており、以下、アキュムレータ24を高圧アキュムレータと称し、アキュムレータ26を低圧アキュムレータと称する。
【0010】
ばね定数切換弁28の開状態においては、閉状態における場合より、懸架シリンダ10とアキュムレータ24,26との間において作動液の授受が容易になるため、サスペンションスプリングのばね定数がみかけ上小さい状態となり、閉状態においては、ばね定数がみかけ上大きい状態となる。
本実施例においては、旋回中、制動あるいは駆動中にはばね定数が大きい状態とされ、直進定速走行中(前後加速度、横加速度がそれぞれ設定値以下の状態で、前後加速度が0,横加速度が0の状態に限らない)にはばね定数が小さい状態とされる。また、後述するように、高速車高調整中においてもばね定数切換弁28が閉状態とされる。
【0011】
個別通路22FL、FR、RL、RRには、それぞれ、可変絞り30FL、FR、RL、RRが設けられる。前述のように、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRの車体8に対する相対的な上下動により液室16において作動液が流入・流出させられるが、この場合に、可変絞り30によって個別通路22の流路面積が制御されることにより、懸架シリンダ10において発生させられる減衰力が制御される。本実施例においては、可変絞り30等により減衰力調整機構が構成される。
可変絞り30により個別通路22の流路面積が小さくされた場合には、サスペンションの硬さがハード(車輪と車体との上下方向の相対移動速度が同じ場合の減衰力が大きくなる状態)とされ、流路面積が大きくされた場合にはソフト(相対移動速度が同じ場合の減衰力が小さくなる状態)とされる。これらは、運転者によるモード選択スイッチの状態に応じて制御されるが、車両の走行状態に基づいて制御されるようにすることもできる。本実施例においては、旋回状態にある場合、制動・駆動状態(減速・加速状態)にある場合にハードとされ、走行安定性の低下が抑制される。
【0012】
本サスペンション装置には作動液給排装置50が設けられる。作動液給排装置50は、高圧源56、低圧源58としてのリザーバ、個別制御弁装置60等を含む。
高圧源56は、ポンプ61とポンプモータ62とを備えたポンプ装置64、蓄圧用アキュムレータ66等を含む。ポンプ装置64,蓄圧用アキュムレータ66等は制御通路68に設けられる。ポンプ61によってリザーバ58の作動液が汲み上げられて吐出され、蓄圧用アキュムレータ66において加圧した状態で蓄えられる。蓄圧用アキュムレータ66は常閉の電磁開閉弁である蓄圧制御弁70を介して制御通路68に接続される。制御通路68には流体源圧センサ72が設けられる。流体源圧センサ72によれば、ポンプ61の吐出圧やアキュムレータ圧を検出することができる。
制御通路68のポンプ61の吐出側には、逆止弁74,消音用アキュムレータ76が設けられる。また、ポンプ61の高圧側と低圧側とを接続する流出通路84が設けられ、流出通路84に流出制御弁86が設けられる。流出制御弁86は、ポンプ61の吐出圧をパイロット圧として機械的に開閉させられるパイロット式開閉弁であり、ポンプ61が作動状態にあり、作動液が吐出される間、閉状態とされ、ポンプ61が非作動状態にある間、開状態とされる。
【0013】
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは、個別通路22FL、FR、RL、RRと制御通路68とを介して液圧源88に接続される。
個別制御弁装置60は、個別通路22FL、FR、RL、RRに設けられた個別制御弁90FL、FR、RL、RRを含む。また、個別通路22FL、FRを接続する前輪側左右連通路91に左右連通弁92が設けられ、個別通路22RL、RRを接続する後輪側左右連通路93に左右連通弁94が設けられる。
これら個別制御弁90FL、FR、RL、RR、左右連通弁92,94は、常閉の電磁開閉弁であり、左右連通弁92,94の閉状態において個別制御弁90FL、FR、RL、RRを個別に制御することにより、各車輪4FL、FR、RL、RRの各々において、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRとそれに対応する車体8の部分(懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRに対応する部分)との間の距離である車高が独立に制御可能とされる。個別制御弁90等により車高調整アクチュエータが構成され、車高調整アクチュエータの制御により懸架シリンダ10における流体量が制御され、車高が制御される。
【0014】
本サスペンション装置は、コンピュータを主体とするサスペンションECU100によって制御される。サスペンションECU100は、実行部102,記憶部104,入出力部106等を含み、入出力部106には、ばね定数切換弁28、可変絞り30のコイル、作動液給排装置50(蓄圧用制御弁70,個別制御弁90,左右連通弁92、94のコイル、ポンプモータ62等)が図示しない駆動回路を介して接続されるとともに、流体源圧センサ72,前後左右の各輪毎に設けられ、車高をそれぞれ検出する車高センサ120,車両の走行状態を検出する走行状態検出装置122,車高調整モード選択スイッチ124,車高調整指示スイッチ126,イグニッションスイッチ128,車両のドアが開状態にあるか否かを検出するドア開閉スイッチ134,通信装置136等がそれぞれ接続される。
また、記憶部104には、図4のフローチャートで表される車高調整プログラム、図3のフローチャートで表される給油作業検出プログラム等が記憶されている。
【0015】
走行状態検出装置122は、車両の走行速度を検出する走行速度センサ、旋回状態を検出するヨーレイトセンサ、制動・駆動の状態を検出する前後加速度センサ等を含む。
車高調整モード選択スイッチ124は、運転者によって操作されるものであり、スイッチ124の操作により、自動モードとマニュアルモードとのいずれか一方が選択される。自動モードが選択された場合には、予め定められた条件が満たされた場合にそれに応じて車高が変化させられ、マニュアルモードが選択された場合には、車高調整指示スイッチ126の指示に応じて変化させられる。
車高調整指示スイッチ126は、車高を増大させる場合、車高を減少させる場合等に操作されるスイッチで、運転者のマニュアル操作によって切り換えられる。車高を増大させる操作が行われた場合には、車高が予め定められた設定量だけ(1段階)増大させられ、車高を減少させる操作が行われた場合には、車高が予め定められた設定量だけ(1段階)減少させられる。
ドア開閉スイッチ134は、乗降車用ドア、ラッゲージコンパートメントドア(バックドア)の開閉をそれぞれ検出する。
【0016】
通信装置136は、送受信アンテナ141等を含み、予め定められた設定領域内において携帯機142との間で通信を行う。携帯機142は、送受信アンテナ等を含む通信部144、識別情報を記憶するとともに情報を作成して送信するコンピュータを主体とする処理部146等を含む。携帯機142は、複数の操作部を備え、操作部の操作に応じて、車高を大きくする指示、車高を小さくする指示等を表す情報を識別情報とともに送信する。
通信装置136において、携帯機142から送信された情報を受信した場合に、その情報に含まれる識別情報に基づき、自車両に送信されたものであるか否かを判定する。自車両に送信されたものであるとされた場合には、携帯機142からの指示に応じて車高調整が開始される。また、携帯機142から車高調整指示を表す情報が送信されなくても、予め定められた設定領域内に携帯機142が入ったことが検出された場合に、車高調整(車高を低くすること)が開始される場合もある。
【0017】
以上のように構成されたサスペンション装置における作動について説明する。
懸架シリンダ10における作動液の流出・流入が車高調整装置により制御され、それによって車高が調整される。本実施例においては、作動液給排装置50とサスペンションECU100の図4のフローチャートで表される車高調整プログラムを記憶する部分、実行する部分等により車高調整装置が構成される。
例えば、左前輪4FLについて、車輪保持装置6FLと車体8の左前輪4FLに対応する部分との間の距離である車高を減少させる場合は、個別制御弁90FLが開状態とされ、懸架シリンダ10FLからリザーバ58に作動液が流出させられる。また、車高を増加させる場合には、個別制御弁90FLが開状態とされ、ポンプモータ62が駆動させられる。それによって、ポンプ61から吐出された高圧の作動液が懸架シリンダ10FLに供給される。
【0018】
車高調整は、予め定められた車高調整条件が満たされた場合に行われるが、車高調整条件は、(i)携帯機142からの情報を受信した場合、(ii)マニュアルモードにおいて車高調整指示スイッチ126が操作された場合、(iii)自動モードにおいて予め定められた条件が満たされた場合等に満たされる。
例えば、(A)イグニッションスイッチ128のOFF状態においては、見栄えを良くするために車高が標準車高とされる。この制御は、イグニッションスイッチ128がON状態からOFF状態に切り換えられてから予め定められた設定時間が経過すると行われる。
(B)それに対して、携帯機242から送信された「車高を小さくする指示を表す情報」を受信した場合等には、車高が自動で低くされる。標準車高においては、人が乗車し難いからである。
(C)また、自動モードにおいて、走行していた車両が停止した後、イグニッションスイッチ128がON状態からOFF状態に切り換えられた場合等には、人が降車する可能性があると考えられるため、車高が自動で低くされる。車両の走行中においては、標準高さにあるため、人が降車し易い高さまで低くされるのである。なお、走行していた車両が停止した後、予め定められた設定時間が経過しても、イグニッションスイッチ128がOFF状態に切り換えられない場合にも車高が低くされる。
(D)さらに、イグニッションスイッチ128のON状態において、荷物の積み降ろし、人の乗降等に起因して車体が水平姿勢から設定姿勢以上隔たった姿勢になると(例えば、前後方向あるいは左右方向の傾斜角度が設定角度以上になると)、車両姿勢が水平となるように車高調整が行われる。
(E)また、イグニッションスイッチ128がOFF状態からON状態に切り換えられたこと、シフト位置がパーキング位置からドライブ位置に切り換えられたこと等の予め定められた条件が満たされた場合に、車高が高くされる。乗車時に低くされた車高が走行するのに先だって標準高さまで高くされるのである。
(F)イグニッションスイッチ128のON状態において、マニュアルモードにおいて車高調整指示スイッチ126が操作された場合には、その操作に応じて車高が増加あるいは減少させられる。
(G)走行速度が設定速度以上である場合に車高が小さくされる。
【0019】
なお、上述の(A)の場合に行われる制御を見栄え制御と称し、(C)、(E)の場合に行われる制御を乗降制御と称することがある。
また、(A)〜(F)の場合の車高調整は車両の停止状態において行われ、(G)の場合の車高調整は走行中に行われる。
さらに、車高調整が、高速で行われる場合(車高の変化速度が大きい場合であり、高速車高調整と称する)と低速で行われる場合(車高の変化速度が小さい場合であり、低速車高調整と称する)とがある場合には、(B)、(C)、(E)、(F)が満たされた場合の車高調整は高速で行われるようにすることができる。高速車高調整においてはばね定数切換弁28が閉状態とされ、低速車高調整においては開状態のままとされる。
【0020】
本実施例においては、車高減少速度に基づいて給油作業中であるかどうかが検出され、給油作業中であることが検出された場合には、車高調整が禁止される。
車高減少速度が設定範囲内にあり、かつ、周波数が設定値以下である場合に、給油作業に起因する車高変化であるとされる。この給油作業は、車両の停止中において、車高調整装置による車高調整が行われておらず、かつ、人の乗降、荷物の積み降ろしが行われない場合に検出される。
給油作業は、車両の停止中において行われるのが普通である。また、車高調整装置による車高調整中、人の乗降中、荷物の積み降ろし中には、給油作業に起因する車高の変化であるか否かを正確に判断することができないからである。
【0021】
給油作業が行われる場合には、図2において、運転者あるいは作業者によってフューエルリッドオープナー150が操作され、それによって、フューエルリッド152が開らかれる。本実施例においては、フューエルリッドオープナー150とフューエルリッド152とが図示しないケーブル等で連結され、フューエルリッドオープナー150の操作により、マニュアルでフューエルリッド152が開かれるのである。
図示しない給油ガンが給油管154に差し込まれ、ガソリン等の燃料がフューエルタンク156に供給される。このように、燃料がフューエルタンク156に供給されるのに伴って、フューエルタンク156内の燃料の量が増え、各懸架シリンダ10に加わる荷重が大きくなる。それによって、懸架シリンダ10の液圧が大きくなり、車高が小さくなる。この場合の車高の減少速度は燃料の比重、フューエルタンク156への供給流量等によって予め決まる。そこで、本実施例においては、車高の減少速度が予め定められた設定範囲内にある場合には給油作業中であるとされる。
【0022】
給油作業検出プログラムは、図3のフローチャートで表され、予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様である)において、車速センサによる検出値が車両が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下であるか否かが判定される。車両が停止状態にある場合には、S2において、車高センサ120によって車高が検出される。そして、S3において、車高調整装置による車高調整中であるか否か、S4において、ドア開閉スイッチ134がON状態にあるか否かが検出される。車高調整中でなく、人の乗車・降車も荷物の積み降ろしもない場合には、S5において、S2が実行されてからの経過時間が設定時間以上になったか否かが判定される。
設定時間が経過する以前においては、S2〜5が実行され、車高センサ120によって車高が検出される。設定時間が経過した場合には、S5における判定がYESとなり、S6において、車高減少速度VHが取得される。この場合の設定時間は、例えば、車高減少速度が設定範囲内にあるか否かを正確に検出できる時間に設定することができる。
その後、S7、8において、車高減少速度VHが設定範囲内にあるか否かが判定され、周波数fHが設定値Fsh以下であるか否かが判定される。車高減少速度VHが設定範囲内(V1≦VH≦V2)にあり、かつ、周波数fHが設定値以下(fH≦Fsh)である場合には、S9において、給油作業中フラグがセットされ、そうでない場合には、S10において、給油作業中フラグはリセットされる。
【0023】
車高調整プログラムは、図4のフローチャートで表されるが、予め定められた設定時間毎に実行される。S21において、車高調整要求があるか否かが判定される。前述のように、車高調整指示スイッチ126が操作された場合、自動車高調整条件が満たされた場合、携帯機142からの情報が受信された場合には、S22において、給油作業中フラグがセット状態にあるか否かが判定される。給油作業中フラグがリセット状態にある場合には、S23において、その車高調整要求に応じた車高調整が行われるが、セット状態にある場合には、S23が実行されることがないのであり、車高調整が行われることがない。
【0024】
給油作業が、図5の(A)に示すように、イグニッションスイッチ128がON状態からOFF状態に切り換えられた後であって、乗降制御が終了した後に開始された場合において、給油作業中に、車高調整要求が満たされる場合がある。例えば、イグニッションスイッチ128がOFF状態に切り換えられてから設定時間が経過した場合(見栄え制御が行われる場合)、携帯機142から車高調整指示情報が送信された場合がある。本実施例においては、給油作業検出プログラムの実行により給油作業中であることが検出された場合には、それ以降に、車高調整要求が満たされても車高調整は行われない。給油作業が終了して、給油作業中フラグがリセットされると、車高調整が開始される。
図5の(B)に示すように、イグニッションスイッチ128のON状態において給油作業が行われた場合において、給油作業検出プログラムの実行により給油作業中であることが検出された場合には、それ以降に、車高調整指示スイッチ126が操作された場合、荷物の積み降ろしが行われて、車体が傾いた場合等には、車高調整要求が満たされる場合がある。本実施例においては、これらの場合においても、車高調整が行われることはないのであり、給油作業終了後に、車高調整が行われる。
図5の(C)に示すように、イグニッションスイッチ128のON状態において給油作業が開始された場合において、給油作業中フラグがセットされた後に、イグニッションスイッチ128がOFF状態に切り換えられる場合がある。この場合には、車高を小さくする制御(乗降制御)が行われるはずであるが、車高調整が行われることはない。
【0025】
以上のように、本実施例においては、給油作業中であることが車高の減少速度に基づいて取得される。そのため、たとえ、給油口開閉センサが設けられていない車両であっても、給油作業中であることを検出することができる。
また、給油作業中である場合には、車高調整が禁止される。車高調整要求が満たされても、車高調整が行われないことになり、その結果、給油作業において、車高変化に注意を払うことを必要がなくなる。さらに、給油作業中に意に反して車高が変化することを回避することができる。
本実施例においては、サスペンションECU100の図3のフローチャートで表される給油作業検出プログラムを記憶する部分、実行する部分等により給油作業検出装置が構成され、ドア開閉スイッチ134およびS4を記憶する部分、実行する部分等により開閉検出装置が、S4〜10を記憶する部分、実行する部分等によりドア閉時給油作業検出部が構成され、図4のフローチャートで表される車高調整プログラムのS22の判定がYESである場合にS23が実行されない部分等により車高調整禁止装置が構成される。車高調整禁止装置は、車高調整装置自体に設けることもできる。
【0026】
なお、上記実施例においては、給油作業中である場合に、車高調整が禁止されるようにされていたが、車高調整速度が小さくされるようにすることもできる。車高変化速度が小さい場合には、車高の変化に注意する必要性も低くなる。
また、高速車高調整と低速車高調整との両方が行われる場合には、高速車高調整は禁止され、低速車高調整は許可されるようにすることもできる。
さらに、フューエルリッドオープナ150の操作の有無、すなわち、フューエルリッド152の開閉の状態が検出可能な車両にも適用することができる。
また、フューエルリッドオープナ150(スイッチ)が操作された場合に、図示しないフューエルリッドオープナモータが作動させられることによりフューエルリッド152が開かれる場合において、車高調整中においては、フューエルリッドオープナモータが作動させられないようにしたり、フューエルリッドがロックされるようにしたりすることもできる。本実施例においては、車高調整中に給油作業が行われないようにすることによって車高変化の給油作業への影響が回避される。
さらに、フューエルリッド152の裏面に「車高調整中に給油作業を行わないこと」等の表示を付すこともできる。
また、懸架シリンダ10の液圧を検出する液圧センサが設けられる場合には、液圧センサによる検出液圧(サスペンションに加えられる荷重に対応)の増加速度が設定範囲内にある場合には給油作業中であると検出することもできる。さらに、液圧の増加速度と車高の減少速度との両方に基づいて給油作業が検出されるようにすることもできる。例えば、液圧の増加速度が予め定められた設定範囲内にあり、かつ、車高の減少速度が予め定められた設定範囲内にある場合に、給油作業中であるとすることができる。
さらに、サスペンションの構成については問わない。上記実施例においては、車輪保持装置6と車体8との間に作動液により作動させられる懸架シリンダ10が設けられたが、懸架シリンダは気体により作動させられるものとすることができる。
その他、本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例である車高調整装置を含むサスペンション装置全体を示す図である。
【図2】上記サスペンション装置が搭載された車両を示す斜視図である。
【図3】上記サスペンション装置のサスペンションECUの記憶部に記憶された給油作業検出プログラムを表すフローチャートである。
【図4】上記記憶部に記憶された車高調整プログラムを表すフローチャートである。
【図5】上記サスペンション装置における作動を表す図である。
【符号の説明】
【0028】
10:懸架シリンダ 90:個別制御弁 100:サスペンションECU 134:ドア開閉スイッチ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられたサスペンションと、
前記車輪保持装置と、前記車体の前記車輪保持装置に対応する部分との間の相対位置関係である車高と、前記サスペンションに加わる荷重との少なくとも一方を検出する検出装置と、
その検出装置による検出値の変化速度が予め定められた設定範囲内にある場合に、前記車体に設けられた燃料タンクに燃料を供給する給油作業中であることを検出する給油作業検出装置と
を含むことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
前記給油作業検出装置が、(a)車両に設けられたドアの開閉状態を検出する開閉検出装置と、(b)その開閉検出装置によってドアが閉状態にあることが検出された場合に、前記給油作業中であるか否かを検出するドア閉時給油作業検出部とを含む請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記車輪保持装置と前記車体との間の前記相対位置関係を調整する車高調整装置と、
前記給油作業検出装置によって、前記給油作業中であることが検出された場合に、前記車高調整装置によって車高調整が行われないようにする車高調整禁止装置と
を含む請求項1または2に記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−55415(P2007−55415A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242565(P2005−242565)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】