説明

サンドイッチパネルの製造方法

【課題】本発明は、発泡剤として水又は炭酸ガスを使用した硬質ポリウレタンフォームから構成され、サンドイッチパネルのフクレ(変形)を防止することができるサンドイッチパネルの製造方法等を提供する。
【解決手段】表面材、裏面材、及び前記表面材と裏面材との周縁部に配設された枠材にて構成された容器状外面材内に形成された空間部に、前記枠材に形成された注入口から硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させてサンドイッチパネルとする製造方法であって、前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物は水又は炭酸ガスを発泡剤の主成分とするものであり、前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させた後に、前記注入口から内部にガス誘導路を設け、前記注入口に防水通気性テープを貼付することを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームを断熱材としたサンドイッチパネルの製造方法等、に関する。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチパネルは、表面材、裏面材、及び前記表面材と裏面材との周縁部に配設された枠材にて容器状外面材を作製し、表面材と裏面材をプレスにて圧縮しつつ容器状外面材内部に形成された空間部に、前記枠材に形成された注入口から硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡、硬化させることにより製造されている(非特許文献1、第238〜239頁)。
【0003】
係るサンドイッチパネルの製造に使用される硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物においては、要求される断熱性能を満足するために、従来はフロン系発泡剤が使用されていた(非特許文献1、第125頁)。
【0004】
しかし、周知のように、フロン化合物はオゾン層破壊の原因であるため、その使用が禁止されている。硬質ポリウレタンフォームの製造分野においても、フロン化合物の代わりに、水を発泡剤として単独に使用する方法が注目されている。この方法は、水とイソシアネート成分の化学反応によって発生する炭酸ガスを応用し、発泡させるものである。また、水発泡以外として、炭酸ガス発泡によるノンフロン化も注目されている。
【0005】
特に、硬質ポリウレタンフォームを断熱材としたサンドイッチパネルの場合は、気泡がサンドイッチパネルを構成するカラー鋼板や、アルミ板等の金属製表面材や裏面材に接触する部分に溜まり、サンドイッチパネルの面材にフクレが発生し、外観上の問題を生じさせている。
【0006】
【非特許文献1】岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社、昭和62年9月25日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記実情に鑑み、本発明は、発泡剤として水又は炭酸ガスを使用した硬質ポリウレタンフォームから構成され、サンドイッチパネルのフクレ(変形)を防止することができるサンドイッチパネルの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意研究したところ、以下に示すサンドイッチパネルの製造方法等により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のサンドイッチパネルの製造方法は、表面材、裏面材、及び前記表面材と裏面材との周縁部に配設された枠材にて構成された容器状外面材内に形成された空間部に、前記枠材に形成された注入口から硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させてサンドイッチパネルとする製造方法であって、
前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物は水又は炭酸ガスを発泡剤の主成分とするものであり、
前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させた後に、前記注入口から内部にガス誘導路を設け、
前記注入口に防水通気性テープを貼付することを特徴とする。
【0010】
硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物は、容器状外面材内に形成された空間部の中央部に供給され、発泡しつつ上面材、裏面材、及び枠材と接着する。この際、接着面に空気が溜まった部分が残る場合がある。また、水発泡の際に発生する炭酸ガスや、炭酸ガス発泡に使用する炭酸ガスが、硬質ポリウレタンフォームの独立気泡セル膜を透過・拡散し、内圧の低い前記空気の溜まった部分へと移動し、最終的に内圧の大きなフクレを発生させると推測される。
【0011】
本発明において、上記ガス誘導路を設けることにより、フクレの原因と考えられる炭酸ガスを排出し、フクレを防止することができるものと考えられる。ガス誘導路はサンドイッチパネルに対して、長く、直径が大きいことが、ガスを排出する点で効果的である。また、注入口に防水通気性テープを貼付することにより、炭酸ガスや空気を透過することができる。一方、サンドイッチパネル内への水の浸入を防ぎ、硬質ポリウレタンフォームの弱点である湿熱変形を防止でき、フォーム劣化を防止することができる。
【0012】
本発明のサンドイッチパネルの製造方法は、ガス誘導路の長さがサンドイッチパネルの長辺長さの3〜60%であることを特徴とする。所定範囲の長さのガス誘導路を有することにより、炭酸ガスを有効に誘導(ガス抜き)することができる。
【0013】
本発明のサンドイッチパネルは、前記製造方法により得られることを特徴とする。本発明により得られたサンドイッチパネルは、パネル自体にフクレ(変形)の発生がなく、硬質ポリウレタンフォームからなるサンドイッチパネル内への水の浸入を防ぎ、硬質ポリウレタンフォームの弱点である湿熱変形を防止でき、フォーム劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物は、ポリオール組成物とイソシアネート成分とを混合することにより形成される。ポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤を含み、必要に応じて可塑剤、低分子量多官能活性水素化合物、充填剤等が添加、混合される。ポリオール化合物、触媒、整泡剤などは、硬質ポリウレタンフォームの技術分野において公知の化合物を限定なく使用することができる。
【0015】
発泡剤としては、上述のように水又は炭酸ガスを主成分として使用する。主成分とは、100%が水であってもよく、一部に他の発泡剤、例えばノルマルペンタンやシクロペンタンなどの低沸点炭化水素化合物を使用してもよいことを意味する。なお、環境問題の観点や、作業性の問題、また、冷蔵庫等のような熱伝導率が要求されない建材等においては、水又は炭酸ガス単独で使用することが好ましい。
【0016】
ガス誘導路19の先端位置までの長さ(ガス誘導路長)Lは、パネル内部の長辺長さ(全長)Lに対して、L/L=0.03〜0.6であることが好ましく、即ちパネル内部の全長の3〜60%であることが好ましく、より好ましくは5〜40%、更に好ましくは5〜10%である。3%未満であると、パネル内部の炭酸ガスを十分に誘導(ガス抜き)することができず、一方、60%を超えると、加工処理が困難となる。なお、ガス誘導路19はフクレ現象が発生しやすい中央部、又は端部に近い位置に設けることが好ましい態様である。
【0017】
ガス誘導路19の直径としては、例えば、2〜15mmが好ましく、3〜5mmがより好ましい。直径が2mm未満であると、加工処理が困難であり、またガス抜き効果が小さくなる。また、15mmを超えると、フォーム強度や製品強度を低下させる原因となる。また、水分をガス誘導路の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。なお、注入口18から硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入するため、注入口18の直径は、ガス誘導路19の直径と同等であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0018】
本発明に使用する防水通気性テープとは、炭酸ガスや空気などは通すが、水などを通さないテープをいい、このような特性を有するテープ材であれば、特に限定することなく、使用することができる。例えば、ジャパンゴアッテクス社製のゴアテックスを両面テープ処理を行い、使用することが好ましい態様である。
【0019】
表面材、裏面材並びに枠材としては公知の材料が使用可能である。表面材と裏面材とは同一材料であっても異なった材料であってもよい。具体的には、面材としてはステンレス鋼板、メッキ鋼板、カラー鋼板、アルミ面材、樹脂パネル等が例示され、枠材としては、木材、樹脂材等が例示される。
【0020】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0021】
図1には、カラー鋼板製の表面材12、裏面材14及びABS樹脂製の枠材16から形成された容器状外面材10を斜視図にて示した。枠材16の短辺側の中央部に注入口18が形成されている。通常は、硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物が発泡と共に空間部内に完全に充填可能なように、容器状外面材10の各隅部には、連続気泡軟質ポリウレタンフォームを充填した小さなガス抜き部(ベントホール、直径3〜5mm)17が設けられる。なお、硬質ポリウレタンフォームの原料としては、一般に用いられるものであれば、特に限定されないが、市販品として、東洋ゴム工業製の原料を使用することができる。また、前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物の発泡・硬化後の仕上がり密度としては、一般的には30〜45kg/mである。
【0022】
図2には、図1のX−X断面図であって、注入口18(直径20〜35mm)より硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入し、発泡・硬化させて硬質ポリウレタンフォーム(PU)を製造した後、注入口18より溢れ出した余剰のフォーム(オーバーフォーム)を削り取り、更に、注入口18からパネル内部にガス誘導路19(長さ50〜100mm)を設け、前記注入口18を塞ぐようにして、防水通気性テープ(ジャパンゴアテックス社製、ゴアッテクス、厚み20〜50μm)を貼付した。
【0023】
本発明におけるサンドイッチパネルの製造方法により、炭酸ガス等によるフクレ(変形)を防止できることが、目視により確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】表面材、裏面材及び枠材から形成された容器状外面材を示した斜視図
【図2】注入口よりガス誘導路を設けた状態を示した図1のX−X断面図
【符号の説明】
【0025】
10 容器状外面材(断熱パネル)
12 表面材
14 裏面材
16 枠材
17 ベントホール
18 注入口
19 ガス誘導路
20 ガス透過・水不透過性テープ
PU 硬質ポリウレタンフォーム
L ガス誘導路長
パネル内部の長辺長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材、裏面材、及び前記表面材と裏面材との周縁部に配設された枠材にて構成された容器状外面材内に形成された空間部に、前記枠材に形成された注入口から硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させてサンドイッチパネルとする製造方法であって、
前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物は水又は炭酸ガスを発泡剤の主成分とするものであり、
前記硬質ポリウレタンフォーム発泡原液組成物を注入して発泡・硬化させた後に、前記注入口から内部にガス誘導路を設け、
前記注入口に防水通気性テープを貼付することを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項2】
前記ガス誘導路の長さがサンドイッチパネル内部の長辺長さの3〜60%であることを特徴とする請求項1記載のサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法により得られるサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137268(P2008−137268A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325773(P2006−325773)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】