説明

シキミ酸からオセルタミビルリン酸エステルへの方法

本発明は、式I(式中、R、R1’は、互いに独立して、H又はアルキルであり、Rは、アルキルであり、R、Rは、互いに独立して、H又はアルカノイルであるが、ただし、R3とR4とが両方ともHであることはない)の4,5−ジアミノシキミ酸誘導体及び薬学的に許容されるその付加塩の製造方法に関する。式Iの4,5−ジアミノシキミ酸誘導体、特に(3R,4R,5S)−5−アミノ−4−アセチルアミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エン−カルボン酸エチルエステル及びその薬学的に許容される付加塩は、ウイルスノイラミニダーゼの強力な阻害剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:
【0002】
【化1】


(式中、
、R1’は、互いに独立して、H又はアルキルであり、
は、アルキルであり、
、Rは、互いに独立して、H又はアルカノイルであるが、ただし、R3とR4とが両方ともHであることはない)の4,5−ジアミノシキミ酸誘導体及び医薬的に許容されるその付加塩の製造方法に関する。
【0003】
式Iの4,5−ジアミノシキミ酸誘導体、特にその(3R,4R,5S)−5−アミノ−4−アセチルアミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エン−カルボン酸エチルエステル及びその薬学的に許容される付加塩は、ウイルスノイラミニダーゼ(neuraminidase)の強力な阻害剤である(J. C. Rohloff et al., J. Org. Chem., 63, 1998, 4545-4550;WO98/07685)。
【0004】
本発明の根本にある課題は、容易に得ることができる出発原料、シキミ酸から、4,5−ジアミノシキミ酸誘導体を良好な品質及び収率で製造する新規な方法を提供することである。シキミ酸は、バイオテクノロジープロセス、例えば遺伝子工学、発酵から容易に得ることができる(Sunil S. Chandran, Jian Yi, K.M. Draths, Ralph von Daeniken, Wolfgang Weber, and J.W. Frost, Biotechnologie Progress, Vol. 19, No. 3, 2003, 808-814)。
【0005】
本発明によれば、その課題は、スキーム1に示される式Iの化合物を製造する方法によって解決される。
【0006】
【化2】

【0007】
この新規な方法は、従来技術で知られた方法に比べて、式Iの4,5−ジアミノシキミ酸誘導体に到達するのにより少ない工程を含むという長所を有する(J. C. Rohloff et al., J. Org. Chem., 63, 1998, 4545-4550;WO98/07685)。さらに、スキーム1に記載の、対応する中間体の分離及び精製を含まない方法工程の組み合わせにより、本方法の効率及び総収率をさらに高めることができる。
【0008】
その新規な方法は、
工程a)で、式:
【0009】
【化3】


のシキミ酸をROHでエステル化して、式:
【0010】
【化4】


(式中、Rは、上記のとおりである)の化合物を形成し、
工程b)で、式IIIの化合物を塩化メタンスルホニルと反応させて、式IV:
【0011】
【化5】


(式中、Rは、上記のとおりである)のトリメシラートを調製して、
工程c)で、アジド試薬により、トリメシラートIVの3−メシラート−基の位置選択的S2−置換によって、
【0012】
【化6】


(式中、Rは、上記のとおりである)のアジドを形成して、
工程d)で、式Vのアジドをトリアルキルフォスファイトで還元して、式:
【0013】
【化7】


(式中、Rは、上記のとおりであり、R及びRは、互いに独立して、C1−6アルキルである)のアジリジンを形成して、
工程e)で、式VIのアジリジンを開裂して、式:
【0014】
【化8】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成し、
工程f)で、式VIIのホスホルアミドを式:
【0015】
【化9】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物に変換して、
工程g)で、式IXのアジドを還元して、式Iの化合物を形成し、必要であれば、薬学的に許容される付加塩を形成することを特徴とする。
【0016】
工程f)の実施には2通りの方法がある。
【0017】
1.工程f)は、工程f1)、f2)及びf3を含み、
工程f1)で、式VIIのホスホルアミドを加水分解して、式:
【0018】
【化10】


(式中、R、R1’及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成して、
工程f2)で、式VIII-1の化合物をアシル化して、式:
【0019】
【化11】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成して、
工程f3)で、式VIII−2の化合物の5−メシラート−基をアジドに置換して、式:
【0020】
【化12】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成するか、あるいは、
2.1.工程f)は、工程f’1)、f’2)及びf’3を含み、
工程f’1)で、式VIIの化合物の5−メシラート−基を置換して、式:
【0021】
【化13】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成し、
工程f’2)で、式Xの化合物を加水分解して、式:
【0022】
【化14】


(式中、R、R1’及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成して、
工程f’3)で、式XIの化合物をアシル化して、式:
【0023】
【化15】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する。
【0024】
用語アルキルは、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖状又は分枝状のアルキル基の意味を有する。そのようなアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、ヘプチル及びその異性体、オクチル及びその異性体、ノニル及びその異性体、デシル及びその異性体、ウンデシル及びその異性体ならびにドデシル及びその異性体である。
【0025】
このアルキル基は、例えばWO98/07685に定義されているような1つ以上の置換基で置換され得る。好適な置換基は、C1−6−アルキル(上記のとおり)、C1−6−アルケニル、C3−6−シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−6−アルコキシ、C1−6−アルコキシカルボニル、F、Cl、Br及びIである。
【0026】
1、R1'中の用語アルキルは、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖状又は分枝状のアルキル基の意味を有する。
【0027】
1についての好ましい意味はエチルであり、R1'についてはエチルである。
【0028】
2は、上記の例示のような、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0029】
2についての好ましい意味は、エチルである。
【0030】
3及びR4は、アルカノイル基、より好ましくはC1−6−アルカノイル基、例えば、ヘキサノイル、ペンタノイル、ブタノイル(ブチリル)、プロパノイル(プロピオニル)、エタノイル(アセチル)及びメタノイル(ホルミル)の意味を有する。
【0031】
3についての好ましい意味はアセチルであり、R4についてはHである。
【0032】
及びRは、上記の例示のような、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0033】
及びRについての好ましい意味は、エチルである。
【0034】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、無機酸及び有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等との塩を包含する。
【0035】
塩形成は、それ自体公知であり、当業者に周知の方法で行われる。無機酸との塩のみならず、有機酸との塩も考慮される。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等がそのような塩の例である。
【0036】
好ましい薬学的に許容しうる酸付加塩は、リン酸との1:1塩であり、それは、好ましくは、−20〜60℃の温度で、エタノール溶液中で形成することができる。
【0037】
工程a)
工程a)は、式IIの(3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸を式ROHのアルコールでエステル化することを含む。
【0038】
典型的には、反応は、アルコール、好ましくはエタノール中で、強酸、例えばエタノール中の塩化水素、硫酸、又はエタノール中での塩化チオニルを用いた系中での塩化水素の製造、好ましくはエタノール中の塩化チオニルの存在下で行われる。
【0039】
反応温度は、主に、使用されるアルコールに依存し、一般に、60℃〜150℃、好ましくは70℃〜100℃の範囲である。
【0040】
反応は、一般に、1〜5時間、好ましくは2〜3時間後に完了する。
【0041】
工程b)
工程b)は、式IIIの化合物を塩化メタンスルホニルと反応させることによる式IVのトリメシラートの調製を含む。
【0042】
典型的には、反応は、式IIIの化合物、非プロトン性有機溶媒、好ましくは酢酸エチルの懸濁液中で、そして塩化メタンスルホニル、第三級有機塩基、好ましくはトリエチルアミンを用いて行われる。
【0043】
反応温度は、典型的には、−20℃〜50℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲である。
【0044】
工程c)
工程c)は、アジド試薬により、トリメシラートIVの3−メシラート−基の位置選択的S2−置換によって、式Vのアジドを形成することを含む。
【0045】
工程c)の反応は、典型的には、ジメチルスルホキシドのような不活性の有機溶媒、又は水と有機溶媒、好ましくは酢酸エチルとの混合物中で、相間移動触媒、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウムを用いて行われる。
【0046】
アジド試薬、好ましくはアジ化ナトリウムを室温で反応混合物に加える。
【0047】
反応は、一般に、1〜30時間後に終了する。
【0048】
工程d)
工程d)は、トリアルキルフォスファイトで式Vのアジドを還元して、式VIのアジリジンを形成することを含む。
【0049】
工程d)の反応は、典型的には、不活性ガスの雰囲気中で、有機溶媒、例えばトルエン中で行われる。トリアルキルフォスファイト、例えば、トリエチルホスファイトを室温で加える。
【0050】
反応は、一般に、1〜5時間、好ましくは2〜3時間後に完了する。
【0051】
反応温度は、主として使用する有機溶媒に依存し、一般に50℃〜150℃、好ましくは100℃〜120℃の範囲にある。
【0052】
工程e)
工程e)は、式VIのアジリジンを開裂して式VIIの化合物を形成することを含む。
【0053】
典型的には、反応は、不活性ガスの雰囲気中で、式VIの化合物、アルコール、例えば、3−ペンタノール及び三フッ化ホウ素エチルエーテルの懸濁液中で行われる。
【0054】
反応温度は、典型的には、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲にある。
【0055】
反応は、一般に10〜20時間、好ましくは16時間後に完了する。
【0056】
工程f)
工程f)は、2通りの方法で行うことができる:
(1)工程f)は、工程f1)、f2)及びf3)を含む。
【0057】
工程f1)は、式VIIの化合物のメシラート−基を置換して式VIII-1の化合物を形成することを含む。
【0058】
典型的には、反応は、不活性ガスの雰囲気中で、式VIIの化合物、アルコール、例えば、エタノール、及び強酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸等、好ましくは硫酸の懸濁液中で行われる。
【0059】
反応温度は、主として使用するアルコールに依存し、一般に50℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃の範囲にある。
【0060】
反応は、一般に10〜20時間、好ましくは16時間後に完了する。
【0061】
工程f2)は、式VIII−1の化合物をアセチル化して、式VIII−2の化合物を形成することを含む。
【0062】
アシル化は、塩基条件下で、当業者に公知のアシル化剤を用いることによって実施することができる。アシル化剤は、ハロゲン化アシル、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物であることができる。適切なアシル化剤は、好ましくはアセチル化剤、例えば、塩化アセチル又は無水酢酸である。適切な有機第三級塩基は、例えば、トリエチルアミン又は無機塩基との水溶液、例えば、水中の炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウムであり、好ましくは水中の炭酸水素ナトリウムである。
【0063】
好ましくは、アシル化は、塩基条件下で、酢酸エチル中、無水酢酸0.5〜2.0当量の混合物を使用して実施する。
【0064】
その温度は、一般に−20℃〜100℃の範囲で選択される。
【0065】
工程f3)は、式VIIIの化合物のメシラート−基をアジドに置換して、式IXの化合物を形成することを含む。
【0066】
工程f3)の反応は、典型的には、不活性の有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド中、又はジメチルスルホキシドとエタノールとの溶媒混合物中で行われる。
【0067】
アジド試薬、例えば、アジ化ナトリウムを、20℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃で反応混合物に加える。
【0068】
反応は、一般に、10〜30時間、好ましくは16時間後に完了する。
(2)工程f)は、工程f’1)、f’2)及びf’3)を含む。
【0069】
工程f’1)は、式VIIの化合物のメシラート−基を置換して、式Xの化合物を形成することを含む。
【0070】
工程f’1)の反応は、典型的には、不活性の有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド中、又はジメチルスルホキシドとエタノールとの溶媒混合物中で行われる。
【0071】
アジド試薬、例えば、アジ化ナトリウムを20℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃で反応混合物に加える。
【0072】
反応は、一般に、10〜30時間、好ましくは20時間後に完了する。
【0073】
工程f’2)は、式Xの化合物を加水分解して、式XIの化合物を形成することを含む。
【0074】
典型的には、反応は、不活性ガスの雰囲気中で、式Xの化合物、アルコール、例えばエタノール、及び、強酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸等、好ましくは硫酸の懸濁液中で行われる。
【0075】
反応温度は、主として使用するアルコールに依存し、一般に20℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃の範囲にある。
【0076】
反応は、一般に、80℃で10〜20時間、好ましくは8時間後に完了する。
【0077】
工程f’3)は、式XIの化合物をアセチル化して、式IXの化合物を形成することを含む。
【0078】
アシル化は、塩基条件下で、当業者に公知のアシル化剤を用いて行うことができる。アシル化剤は、ハロゲン化アシル、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物であることができる。適切なアシル化剤は、好ましくはアセチル化剤、例えば、塩化アセチル又は無水酢酸である。適切には、有機第三級塩基は、例えば、トリエチルアミン又は無機塩基との水溶液、例えば、水中の炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウムであり、好ましくは水中の炭酸水素ナトリウムである。
【0079】
好ましくは、アシル化は、塩基条件下で、酢酸エチル中の無水酢酸の0.5〜2.0当量の混合物を用いて行われる。
【0080】
温度は、一般に−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲において選択される。
【0081】
工程g)
工程g)は、式IXのアジドを還元して、式Iの化合物を形成し、必要であれば、薬学的に許容される付加塩を形成することを含む。典型的には、還元は、極性プロトン性の溶媒、例えば、アルコール中、好ましくは水性エタノール又は水性テトラヒドロフラン中、最も好ましくは水性エタノール中で行われる。
【0082】
反応温度は、主として、使用するホスフィンに依存するが、一般に、−20℃〜30℃、好ましくは0〜25℃の間の範囲にある。
【0083】
反応は、2つの温度レベルで行うのが好ましい場合がある、すなわち、上記の範囲の低いほうの温度範囲をホスフィンを添加するために、その後、室温に至るまでの僅かに高い温度を反応を完了させるために用いる。
【0084】
本発明の具体的な実施態様として、変換中に存在する触媒量の酸が、それがなければ、数パーセントという僅かな程度で生じて望ましくない不純物をもたらすエステルの加水分解を抑制することが見出された。
【0085】
適切な酸は、カルボン酸であり、好ましくは酢酸である。酢酸は、通常、式(IX)の4−アセチルアミノ−5−アジド−シキミ酸誘導体に対し0.5mol%〜3.0mol%の触媒量で氷酢酸の形態で、添加される。
【0086】
本方法は、一般に3時間〜6時間後に完了する。
【0087】
その後、当業者に公知の方法を適用することにより、反応混合物を仕上げることができる。好ましくは反応混合物を、好ましくは≦5mol%酢酸で安定化させた後、減圧下で濃縮する。
【0088】
4,5−ジアミノシキミ酸誘導体は、例えば、蒸発と結晶化により単離することができるが、好ましくは、例えば、エタノール溶液中に保存し、J.C.Rohloff et al., J.Org.Chem. 63, 1998, 4545-4550; WO 98/07685)に記載の方法にしたがって、薬学的に許容される付加塩にその後さらに変換される。
【0089】
塩形成は、それ自体公知であり、当業者に周知の方法で行われる。無機酸との塩のみならず、有機酸との塩も考慮される。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等がそのような塩の例である。
【0090】
好ましい薬学的に許容される酸付加塩は、リン酸との1:1塩であり、それは、好ましくは、エタノール溶液中で、−20〜60℃の温度で形成することができる。
【0091】
以下の実施例は、本発明を、それを限定することなく、より詳細に説明する。
【0092】
実施例1
(a)(3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(iii)の調製
還流冷却器、磁気撹拌器及び不活性ガス供給器を備えた250mlの四つ口丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸(ii)19.90gを80mlエタノール中に懸濁し、塩化チオニル4.16mlを、10分間かけて加えた。反応混合物を2時間加熱還流し、その褐色の溶液を室温に冷まし、40℃/200〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物24.39gを暗褐色の油状物として得て、これを一晩結晶化させた。粗生成物を酢酸エチル100ml中で溶解し、40℃/200〜10ミリバールで蒸発させて、生成物22.56gを褐色の残留物として得た。
IR(ATR) 3350, 2982, 1715, 1252, 1097 cm-1; MS(ターボスプレー) MNH4+ 220.1
【0093】
(b)(3R,4S,5R)−3,4,5−トリス−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(iv)の調製
温度計、機械式攪拌器及び不活性ガス供給器を備えた1000mlの二つ口丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(iii)20.22gを酢酸エチル600ml中に懸濁し、0〜5℃に冷却し、塩化メタンスルホニル24.0mlを加えた。温度を0〜5℃の範囲に保持しながら、その暗褐色の溶液に、トリエチルアミン45.0mlを46分間かけて加えた。褐色の懸濁液を0〜5℃で30分間撹拌し、予冷した(0〜5℃)ガラスろ過器でろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル合計200mlで洗浄し、合わせたろ液を0.5M HSO 400mlで抽出し、分離した有機相を無水硫酸ナトリウム100gで乾燥させ、ろ過し、酢酸エチル200mlで洗浄し、ロータリーエバポレーター中で40℃/200〜10ミリバールで蒸発させて、生成物42.24gを褐色の樹脂として得た。
IR(ATR) 2943, 1715, 1332, 1251, 1170 cm-1; MS(イオンスプレー): 454.2 M+NH4+
【0094】
(c)(3R,4S,5R)−3−アジド−4,5−ビス−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(v)の調製
磁気撹拌器及び不活性ガス供給器を備えた5mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−3,4,5−トリス−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(iv)436.3mgを、ジメチルスルホキシド0.83ml中に溶解した。その清澄な無色の溶液に、アジ化ナトリウム71.5mgを室温で加え、反応混合物を2.5時間撹拌し、次にアジ化ナトリウム13.7mgを室温で加え、さらに室温で19時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル5mlで希釈し、1M NaHCO溶液で3回抽出した。有機相を分離し、無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、20℃/140〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物0.33gを明黄色の油状物として得た。酢酸エチルとn−ヘキサンの1/2混合物を用いてシリカカラムクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。合わせた画分をロータリーエバポレーターで蒸発させ、乾燥させて、(3R,4S,5R)−3−アジド−4,5−ビス−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル0.27gを無色の油状物として得た。
IR(ATR) 2942, 2105, 1713, 1660, 1350, 1171 cm-1. MS(ターボスプレー) M+NH4+ 401.1
【0095】
(d)(1S,5R,6S)−7−(ジエトキシ−ホスホリル)−5−メタンスルホニルオキシ−7−アザ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−2−エン−3−カルボン酸エチルエステル(vi)の調製
磁気撹拌器、還流冷却器及び不活性ガス供給器を備えた10mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−3−アジド−4,5−ビス−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(v)383.4mgをアルゴン下で撹拌しながらトルエン4.0ml中に溶解した。その清澄な溶液に、トリエチルホスファイト 191μlを室温で加えた。5分後、窒素が発生し、室温で30分間撹拌した後、明黄色の反応混合物を5時間加熱還流し、次にトリエチルホスファイト191μlを加え、さらに2時間還流した。反応混合物を冷却し、40℃/60〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物470mgを黄色の油状物として得た。トルエンとアセトンの2/1混合物を用いてシリカカラムクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。合わせた画分をロータリーエバポレーター40℃/250〜10ミリバールで蒸発、乾燥させて、(1S,5R,6S)−7−(ジエトキシ−ホスホリル)−5−メタンスルホニルオキシ−7−アザ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−2−エン−3−カルボン酸エチルエステル87mgを黄色の油状物として得た。
IR(ATR) 2984, 1711, 1649, 1356, 1253, 1173, 1019 cm-1. MS(イオンスプレー) MH+398.0
【0096】
(e)(3R,4S,5R)−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(vii)の調製
磁気撹拌器及び不活性ガス供給器を備えた50mlの丸底フラスコ中で、(1S,5R,6S)−7−(ジエトキシ−ホスホリル)−5−メタンスルホニルオキシ−7−アザ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−2−エン−3−カルボン酸エチルエステル(vi)1.94gをアルゴン下で撹拌しながら、3−ペンタノール20ml中に溶解した。その清澄な明黄色の溶液を、三フッ化ホウ素エチルエーテル736μlで0〜5℃で処理した。反応混合物を室温で16時間撹拌し、反応混合物を酢酸エチル50mlで希釈し、水70mlで2回抽出した。有機相を分離し、無水NaSO 25gで乾燥させ、ろ過し、ロータリーエバポレーターで40℃/70〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物2.18gを黄色の油状物として得た。t−ブチルメチルエーテルを用いてカラムクロマトグラフィーで、粗生成物を精製した。合わせた画分を、ロータリーエバポレーターで40℃/250〜10ミリバールで蒸発、乾燥させて、(3R,4S,5R)−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル1.47gを明黄色の固体として得た。
IR(ATR) 3236, 1711, 1246, 1024 cm-1. MS(ターボスプレー) MH-484.2
【0097】
(f1)(3R,4S,5R)−4−アミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(viii-1)の調製
磁気撹拌器、還流冷却器及び不活性ガス供給器を備えた5mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(vii)120mgを、エタノール500μl中に溶解し、96%硫酸120μlで処理して、反応混合物を16時間還流し、室温に冷まし、酢酸エチル1.0mlで希釈し、0−5℃に冷却した。冷却した溶液を、28%水酸化ナトリウム水溶液100μl及び25%水酸化アンモニウム水溶液257μlで処理した。十分撹拌した混合物を水1.5mlで希釈し、抽出し、有機相を分離し、無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、20℃/120〜10ミリバールで蒸発させ、20℃/<10ミリバールで1時間乾燥させて、(3R,4S,5R)−4−アミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル56mgを無色の油状物として得た。
IR(ATR) 1711, 1655, 1350, 1246, 1171 cm-1. MS(イオンスプレー) MH+350.3
【0098】
(f2)(3R,4S,5R)−4−アセチルアミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(viii-2)の調製
磁気撹拌器及び不活性ガス供給器を備えた10mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−4−アミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(vii-1)190mgを、酢酸エチル1.6ml中に溶解し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液1.6mlを加え、室温で無水酢酸62μlを加え、2相混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を酢酸エチル2.0mlで希釈し、有機相を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル合計3.0mlで洗浄した。ろ液を、40℃/200〜10ミリバールで蒸発させて、(3R,4S,5R)−4−アセチルアミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル192mgをオフホワイトの結晶として得た。
IR(ATR) 3303, 1714, 1648, 1534, 1344, 1251, 1174, 1094, 903 cm-1. MS(イオンスプレー) MH+392.0
【0099】
(f3)(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(ix)の調製
磁気撹拌器、還流冷却器及び不活性ガス供給器を備えた5.0mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−4−アセチルアミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(viii-2)340mgを、ジメチルスルホキシド1.2mlとエタノール1.2mlとの中に溶解し、アジ化ナトリウム113mgを加え、反応混合物を85〜90℃で21時間撹拌した。褐色の反応混合物を室温に冷まし、1M炭酸水素ナトリウム水溶液7.0mlで処理し、t−ブチルメチルエーテル7.0mlで抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、40℃/250〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物280mgを褐色の結晶として得た。粗生成物280mgをt−ブチルメチルエーテル3.0ml中に溶解し、褐色の溶液を−20℃で16時間撹拌し、ベージュ色の懸濁液を形成した。懸濁液を、予冷した(−20℃)ガラスろ過器でろ過し、予冷した(−20℃)t−ブチルメチルエーテル1.5mlで洗浄した。白色の結晶を、40℃/10ミリバールで2時間乾燥させて、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル60mgを白色の結晶として得た。
IR(ATR) 3265, 2101, 1713, 1659, 1559, 1249, 1078 cm-1. MS(イオンスプレー) MH+339.3
【0100】
(f’1)(3R,4R,5S)−5−アジド−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(x)の調製
磁気撹拌器、還流冷却器及び不活性ガス供給器を備えた5.0mlの丸底フラスコ中で、(3R,4S,5R)−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−5−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(vii)104mgを、エタノール0.50mlとジメチルスルホキシド0.50mlとの中に溶解し、アジ化ナトリウム28mgを加え、反応混合物を85〜90℃で20時間撹拌した。褐色の反応混合物を室温に冷まし、酢酸エチル1.0mlで希釈し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液1.0mlで抽出した。分離した有機相を、無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、40℃/120〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物40mgを褐色の結晶として得た。粗生成物40mgをメチルシクロヘキサン0.40ml中に溶解し、室温で5時間撹拌し、ろ過し、メチルシクロヘキサン0.15mlで洗浄し、白色の結晶を40℃/10ミリバールで2時間乾燥させて、(3R,4R,5S)−5−アジド−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル14mgを白色の結晶として得た。
IR (ATR) 3205, 2099, 1717, 1660, 1246, 1224, 1025 cm-1. MS (イオンスプレー) M+OAc-491.3
【0101】
(f’2)(3R,4R,5S)−4−アミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(xi)の調製
磁気撹拌器、還流冷却器及び不活性ガス供給器を備えた5.0mlの丸底フラスコ中で、(3R,4R,5S)−5−アジド−4−(ジエトキシ−ホスホリルアミノ)−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(x)300mgをエタノール1.25ml中に溶解し、96%硫酸0.31mlで処理した。その黒色の溶液を室温で18時間、さらに80℃で8時間撹拌した。黒色の反応混合物を室温に冷まし、ブライン435ml中の25%水酸化アンモニウム65mlの混合物8.0mlで処理し、酢酸エチル9.0mlで抽出した。分離した有機相を、水10mlで洗浄し、水相を酢酸エチル9.0mlで洗浄し戻した。合わせた有機相を無水NaSO 20gで乾燥させ、ろ過し、40℃/140〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物175mgを暗褐色の油状物として得た。25%水性水酸化アンモニウム1%v/vを含む酢酸エチルを用いてシリカカラムクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。合わせた画分を40℃/140〜10ミリバールで蒸発させて、(3R,4R,5S)−4−アミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル97mgを褐色の油状物として得た。
IR (ATR) 3265, 2101, 1713, 1659, 1559, 1249, 1078 cm-1. MS (イオンスプレー) MH+339.3
【0102】
(f’3)(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(ix)の調製
磁気撹拌器及び不活性ガス供給器を備えた5.0mlの丸底フラスコ中で、(3R,4R,5S)−4−アミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)−シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(xi)118.5mgを、酢酸エチル1.0ml中に溶解した。その褐色の溶液を1M炭酸水素ナトリウム水溶液1.0mlで処理した。混合物を撹拌しながら無水酢酸45.4μlで処理した。混合物を室温で1時間撹拌した。有機相を分離し、無水NaSO 1gで乾燥させ、ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル合計2.0mlで洗浄した。合わせたろ液を40℃/240〜10ミリバールで蒸発させて、粗生成物139mgをベージュ色の固体として得た。粗固体を、n−ヘキサン1.40mlとt−ブチルメチルエーテル0.70mlとの中に懸濁し、室温で1時間撹拌し、0〜5℃に冷却し、0〜5℃で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、フィルターケーキを、予冷した(0〜5℃)n−ヘキサンとt−ブチルメチルエーテルとの2/1溶媒混合物合計0.70mlで洗浄した。フィルターケーキを45℃/9ミリバールで乾燥させて、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アジド−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル94mgを白色の結晶として得た。
IR (NJL) 3269, 2104, 1715, 1660, 1562, 1254 cm-1. MS (ターボスプレー) MH+ 339.2.
【0103】
(g)(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(i)の調製
エチル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アジド−3−(1−エチルプロキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボキシラート(ix)50.0g(0.147mol)を、機械式攪拌器、冷却器、及び250mlの滴下漏斗を備え、窒素パージした1000mlのガラス反応器に入れた。エタノール300ml、水50ml及び酢酸0.09gを加えた。得られた清澄な溶液に、エタノール150mlに溶解したトリブチルホスフィン31.4g(0.155mol)を、5℃(+/−5℃)の温度で30−90分間かけて連続的に加えた。ジャケットを僅かに冷却(〜3℃)しながら、反応温度をこの温度に維持した。フィーダーをエタノール20mlですすいだ。清澄な反応混合物を、ジャケットを僅かに冷却(〜3℃)しながら、さらに5℃(+/−5℃)で90分間撹拌した。その後、温度を30〜60分間以内に20〜25℃に上げて、溶液をさらに3時間(窒素発生中)撹拌した。
反応終了後(HPLCコントロール)、清澄な溶液に酢酸0.18gを加えた。次に減圧下(300〜50ミリバール)で、最高温度60℃及び最高ジャケット温度75℃で、混合物をほぼ乾燥するまで濃縮した。油状残留物(80〜100ml)をエタノール160mlで希釈し、得られた溶液を次に再び、上記の方法にしたがって濃縮した。油状残留物を容量が250mlに至るまでエタノール中に溶解した。溶液の含水量を、KF(カール・フィッシャー)滴定法で測定すると、1.0%重量%未満であった。収量:エタノール溶液中の標記生成物44.4g(HPLCで97%面積)。
IR (NJL) 3279, 1720, 1639, 1554, 1252, 1128 cm-1. MS (イオンスプレー) MH+ 313.1, MNa+ 335.3
【0104】
(g1)(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3−(1−エチル−プロポキシ)シクロヘキサ−1−エンカルボン酸エチルエステル(i)ホスファート(1:1)の調製
機械式攪拌器、冷却器、及び500ml滴下漏斗を備え、乾燥し、窒素パージした1000mlのガラス反応器中で、オルトリン酸17.0g(水中で85%)をエタノール400ml中に溶解し、得られた清澄な溶液を50〜55℃に温めた。その後、実施例1から得たエタノール溶液250ml及び含有しているエチル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(1−エチルプロキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボキシラート0.147molを、撹拌下で加えた。この溶液の全容量の3分の2(約160ml)を手早く加えた(10〜15分)後、添加を中止し、過飽和の清澄な溶液に、先に得たエチル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(1−エチルプロキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボキシラートホスファート(1:1)0.2gの結晶の粒を加えた。その後直ちに結晶化が開始した。得られた濃懸濁液を、50〜55℃で45〜60分間撹拌した。次に、残りのアミン溶液を50〜55℃で懸濁液に徐々に(45〜60分間)加えた。フィーダーをエタノール20mlですすいだ。その後、濃懸濁液を約4時間(冷却速度=10℃/時間)で、12〜20℃に連続的に冷却した。結晶化を完了させるために、撹拌を12〜20℃でさらに2±1時間続けた。エチル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(1−エチルプロキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボキシラートホスファート(1:1)を、加圧ろ過(0.3バール窒素過圧、Dacron(登録商標)フィルタークロス)で単離した。結晶生成物を、アセトン240mlで2回、n−ヘプタン300mlで2回、室温で洗浄した。エチル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(1−エチルプロキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボキシラートホスファート(1:1)を一定重量まで最大50℃の温度で真空乾燥(≒20ミリバール)させた。
収量:含有量99重量%(不純物合計<0.5重量%、不純物単体≦0.1重量%)の無色針状の形態での標記生成物54〜55g(88〜91%)。
IR (NJL) 3352, 3164, 2923, 2854, 1724, 1663, 1551, 1463, 1263, 1132 cm-1. MS (イオンスプレー) MH+ 313.1, MNa+ 335.3.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化16】


(式中、
、R1’は、互いに独立して、H又はC1−6アルキルであり、
は、C1−6アルキルであり、
、Rは、互いに独立して、H又はアルカノイルであるが、ただし、R3とR4とが両方ともHであることはない)の4,5−ジアミノシキミ酸誘導体及び医薬的に許容されるその付加塩の製造方法であって、
工程a)で、式:
【化17】


の5−アミノシキミ酸をROHでエステル化して、式:
【化18】


(式中、Rは、上記のとおりである)の化合物を形成し、
工程b)で、式IIIの化合物を塩化メタンスルホニルと反応させて、式IV:
【化19】


(式中、Rは、上記のとおりである)のトリメシラートを調製して、
工程c)で、アジド試薬により、トリメシラートIVの3−メシラート−基の位置選択的S2−置換によって、式:
【化20】


(式中、Rは、上記のとおりである)のアジドを形成して、
工程d)で、式Vのアジドをトリアルキルフォスファイトで還元して、式:
【化21】


(式中、Rは、上記のとおりであり、R及びRは、互いに独立して、C1−6アルキルである)のアジリジンを形成して、
工程e)で、式VIのアジリジンを開裂して、式:
【化22】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成し、
工程f)で、式VIIのホスホルアミドを、式:
【化23】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物に変換して、
工程g)で、式IXのアジドを還元して、式Iの化合物を形成して、必要であれば、薬学的に許容される付加塩を形成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
工程f)が、
工程f1)で、式VIIのホスホルアミドを加水分解して、式:
【化24】


(式中、R、R1’及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程と、
工程f2)で、式VIII-1の化合物をアセチル化して、式:
【化25】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程と、
工程f3)で、式VIIIの化合物のメシラート−基をアジドに置換して、式:
【化26】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程f)が、
工程f’1)で、式VIIの化合物のメシラート−基を置換して、式:
【化27】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程と、
工程f’2)で、式Xの化合物を加水分解して、式:
【化28】


(式中、R、R1’及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程と、
工程f’3)で、式XIの化合物をアセチル化して、式:
【化29】


(式中、R、R1’、R、R及びRは、上記のとおりである)の化合物を形成する工程とを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
、R1’及びRがエチルであり、Rがアセチルであり、Rが水素である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
及びRが互いに独立してエチルである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
薬学的に許容される酸付加塩がリン酸塩である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、アルコール、好ましくはエタノール中、強酸、好ましくは塩化チオニルの存在下で、60℃〜150℃、好ましくは70℃〜100℃の反応温度範囲で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、非プロトン性有機溶媒、好ましくは酢酸エチル中で、そして塩化メタンスルホニルと、第三級有機塩基、好ましくはトリエチルアミンを用いて、−20℃〜50℃、好ましくは0℃〜5℃の範囲の反応温度で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
工程c)が、不活性の有機溶媒、好ましくはジメチルスルホキシド中で、又は水と有機溶媒、好ましくは水と酢酸エチルとの混合物中で、相間移動触媒、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム及びアジド試薬、好ましくはアジ化ナトリウムを用いて、室温で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
工程d)が、不活性ガスの雰囲気中で、有機溶媒、好ましくはトルエン中で行われ、トリアルキルフォスファイト、例えば、トリエチルホスファイトを室温で加え、反応温度が、50℃〜150℃、好ましくは100℃〜120℃の範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項11】
工程e)が、不活性ガスの雰囲気中で、アルコール、例えば3−ペンタノール及び三フッ化ホウ素エチルエーテル中で、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜5℃の温度範囲で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
工程f1)が、不活性ガスの雰囲気中で、アルコール、例えばエタノール、及び強酸、好ましくは硫酸の中で、50℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃の温度範囲で行われる、請求項2記載の方法。
【請求項13】
工程f2)が、アシル化剤を用いて、好ましくは、塩基条件下で、酢酸エチル中、無水酢酸を用いて、−20℃〜100℃の温度範囲で行われる、請求項2記載の方法。
【請求項14】
工程f3)が、不活性の有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド又はジメチルスルホキシドとエタノールとの溶媒混合物中で、アジド試薬、好ましくはアジ化ナトリウムを用いて、20℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃の温度範囲で行われる、請求項2記載の方法。
【請求項15】
工程f’1)が、不活性の有機溶媒、好ましくはジメチルスルホキシド又はジメチルスルホキシドとエタノールとの溶媒混合物中で、アジド試薬、好ましくはアジ化ナトリウムを用いて、20℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項16】
工程f’2)が、不活性ガスの雰囲気中で、アルコール、好ましくはエタノール、及び強酸、好ましくは硫酸の中で、20℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃の温度範囲で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項17】
工程f’3)が、塩基条件下で、酢酸エチル中、無水酢酸の混合物を用いて、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜5℃の温度範囲で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項18】
以上に記載の本発明。

【公表番号】特表2010−539208(P2010−539208A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525299(P2010−525299)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061838
【国際公開番号】WO2009/037137
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】