説明

システインプロテアーゼインヒビターとしてのアミジノ化合物

本発明は、システインプロテアーゼ、特にカテプシンB、K、L、F、およびSのインヒビターである化合物に関し、従ってこれらのプロテアーゼが介在する疾患の治療に有用である。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、およびこれらを調製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システインプロテアーゼ、特にカテプシンB、K、L、F、およびSのインヒビターである化合物に関し、従ってこれらのプロテアーゼが介在する疾患の治療に有用である。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、およびこれらを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
システインプロテアーゼは、酵素の触媒部位におけるシステイン残基の存在を特徴とするペプチダーゼ群である。システインプロテアーゼは、タンパク質の正常な分解とプロセシングに関連する。しかし、例えば発現の上昇または活性化の亢進の結果としてのシステインプロテアーゼの異常な活性は、病的結果を有することがある。この点でいくつかのシステインプロテアーゼは、多くの病状(関節炎、筋ジストロフィー、炎症、腫瘍浸潤、糸球体腎炎、マラリア、歯周病、異染色性脳白質ジストロフィーなどを含む)を引き起こす。例えば、カテプシンBレベルの上昇およびこの酵素の再分布が腫瘍で見つかり、従って腫瘍浸潤と転移におけるこの酵素の役割を示唆している。さらに異常なカテプシンB活性は、リウマチ様関節炎、骨関節炎、ニューモシスティスカリニ肺炎、急性膵炎、炎症性気道疾患、および骨と関節の障害のような疾患に関係している。
【0003】
破骨細胞および破骨細胞関連多核細胞中のカテプシンKの顕著な発現および高いコラーゲン分解活性は、この酵素が多核細胞介在骨吸収に関与していること、すなわち骨粗鬆症で発生するような骨異常に関与していることを示唆している。さらに肺におけるカテプシンK発現およびそのエラスチン分解活性は、この酵素が肺の障害でもある役割を果たしていることを示唆する。
【0004】
カテプシンLは、正常なリソソーム性タンパク質分解ならびにいくつかの病状(特に限定されないが、黒色腫の転移を含む)に関与している。カテプシンSは、アルツハイマー病といくつかの自己免疫疾患(特に限定されないが、若年型糖尿病、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、および橋本甲状腺炎を含む)に関与する。さらにカテプシンSは、アレルギー性疾患(特に限定されないが、喘息を含む)および同種異系免疫応答(特に限定されないが、臓器移植または組織移植片の拒絶を含む)に関与している。
【0005】
別のシステインプロテアーゼであるカテプシンFはマクロファージ中で見つかっており、抗原プロセシングに関与している。刺激された肺マクロファージおよびおそらく他の抗原提示細胞中のカテプシンFは、気道炎症において役割を果たしている(G.P. Shiら、J. Exp. Med. 2000, 191, 1177参照)。
【0006】
システインプロテアーゼ活性の上昇がその疾患の病状および/または疾患の症状の一因となることが認識されている多くの疾患において、このクラスの酵素の活性を阻害する分子、特にカテプシンB、K、L、F、および/またはSを阻害する分子は治療薬として有用である。
【発明の開示】
【0007】
1つの態様において本発明は式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、
R1は、ベンズオキサゾール-2-イル、オキサゾロ-[4,5-b]-ピリジン-2-イル、2-エチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イル、2-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イル、3-フェニル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3−チエン-3-イル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3-ピリジン-3-イル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3−エチル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、5-エチル-[1,2,4]-オキサジアゾール-3-イル、または2-メトキシメチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イルであり;
R2は、エチルまたはn-プロピルであり;
R3は、シクロヘキシルメチル、1−メチルシクロヘキシルメチル、シクロペンチルメチル、1−メチルシクロペンチルメチル、シクロプロピルメチルスルフィニルメチル、シクロプロピルメチルスルホニルメチル、2-フェニルスルファニルエチル、2-フェニルスルホニルエチル、ピリジン-2-イルメチルスルホニルメチル、ベンジルスルフィニルメチル、ベンジルスルホニルメチル、2-(ジフルオロメトキシ)-ベンジルスルホニルメチル、または2-クロロベンジルであり;
R4は、メチル、フェニル、4−フルオロフェニル、イソプロピルアミン、シクロペンチルアミン、テトラヒドロピラン-4-イル、モルホリン-4-イル、またはピリジン-1-イルであり;
R5は、メチルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエチル、エトキシカルボニル、またはピリジン-3-イルスルホニルであり;または
R4とR5は、これらが結合している原子とともに、1,1-ジオキソベンゾ[d]イソチアゾール-3-イル、または1,1-ジオキソ-1,4-ジヒドロ-λ6-ベンゾ[1,2,4]チアジアジン-3-イルを形成する)の化合物;または
その薬剤学的に許容される塩に関する。
【0010】
好ましくはR3は、1−メチルシクロペンチルメチルである。
【0011】
好ましくは、以下:
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
よりなる群から選択される化合物、または
その薬剤学的に許容される塩。
【0018】
好ましくは、
【0019】
【化7】

【0020】
または、その薬剤学的に許容される塩。
【0021】
第2の態様において本発明は、本発明の化合物を1つ以上の適当な賦形剤との混合物として含む医薬組成物に関する。
【0022】
第3の態様において本発明は、システインプロテアーゼ、特にカテプシンSが介在する動物の疾患の治療法であって、動物に治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0023】
第4の態様において本発明は、治療が患者に免疫応答を引き起こす治療を受けている患者の治療法であって、患者に本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。好ましくは免疫応答は、MHCクラスII分子が介在する。本発明の化合物は、治療の前、同時、またはその後に投与することができる。好ましくは治療は、生物製剤による治療を含む。好ましくは治療は、小分子による治療を含む。
【0024】
好ましくは生物製剤は、タンパク質、好ましくは抗体、さらに好ましくはモノクローナル抗体である。さらに好ましくは生物製剤は、レミカード(Remicade)(登録商標)、レファクト(Refacto)(登録商標)、レフェロン-A(Referon-A)(登録商標)、第VIII因子、第VII因子、ベタセロン(Betaseron)(登録商標)、エポゲン(Epogen)(登録商標)、エンブレル(Embrel)(登録商標)、インターフェロンベータ、ボトックス(Botox)(登録商標)、ファブラザイム(Fabrazyme)(登録商標)、エルスパー(Elspar)(登録商標)、セレザイム(Cerezyme)(登録商標)、ミオブロック(Myobloc)(登録商標)、アルヅラザイム(Aldurazyme)(登録商標)、ベルルマ(Verluma)(登録商標)、インターフェロンアルファ、フミラ(Humira)(登録商標)、アラネスプ(Aranesp)(登録商標)、ゼバリン(Zevalin)(登録商標)、またはOKT3である。
【0025】
好ましくは治療は、ヘパリン、低分子量ヘパリン、プロカインイミド、またはヒドララジンの使用を含む。
【0026】
第5の態様において本発明は、動物への生物製剤の投与により引き起こされる動物の免疫応答を治療する方法であって、かかる治療の必要な動物に治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0027】
第6の態様において本発明は、臨床治験に参加している個体に本発明の化合物を生物製剤とともに投与することを含む、生物製剤の臨床治験を実施する方法に関する。
【0028】
第7の態様において本発明は、ヒトの生物製剤により引き起こされる免疫応答を治療するために、生物製剤を用いる治療を受けているヒトを本発明の化合物を用いて予防的に治療する方法に関する。
【0029】
第8の態様において本発明は、生物製剤により引き起こされる免疫応答による動物の生物製剤の効力の消失を測定する方法であって、本発明の化合物の存在下および非存在下で動物に生物製剤を投与することを含む方法に関する。好ましくは動物はヒトである。
【0030】
第9の態様において本発明は、動物の生物製剤の効力を改良する方法であって、本発明の化合物とともに動物に生物製剤を投与することを含む方法に関する。好ましくは動物はヒトである。
【0031】
第10の態様において本発明は、生物製剤により引き起こされる免疫応答を本発明の化合物が治療する、生物製剤との併用療法のための薬剤の製造のための、本発明の化合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
定義:
特に明記しない場合は、明細書と請求の範囲で使用される以下の用語は本出願の目的のために定義され、以下の意味を有する。
【0033】
「動物」は、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカなど)、および非哺乳動物(例えば、トリなど)を含む。
【0034】
「生物製剤」は、疾患の治療または管理のための、本来生きた生物由来の治療薬を意味する。例としては、特に限定されないが、タンパク質(組換えおよび血漿由来)、モノクローナルもしくはポリクローナルのヒト化もしくはマウス抗体、毒素、ホルモンなどがある。生物製剤は現在、癌、リウマチ様関節炎、および血友病のような種々の疾患の治療のために利用できる。
【0035】
「疾患」は特に、動物またはその一部の不健康な状態を含み、動物に適用される医学的または獣医学的治療法により引き起こされるかまたは付随して起きる不健康な症状(すなわち、かかる治療法の「副作用」)を含む。
【0036】
「免疫応答」は、患者の有効な治療を妨害するかまたは患者の疾患を引き起こす免疫応答を意味する。例えば、治療薬としてまたは診断薬としてマウス抗体を患者に投与すると、ヒト抗マウス抗体が産生され、これは以後の治療を妨害または干渉する。純粋なマウスモノクローナル抗体に対する抗体生成の頻度は70%を超えることがある(Khazaeli, M.B.ら、J. Immunother. 1994, 15, pp. 42-52; Dillman R.O.ら、Cancer Biother. 1994, 9, pp. 17-28; およびReinsberg, J. Hybridoma. 1995, 14, pp. 205-208参照)。免疫応答の影響を受ける公知の物質の他の例は、例えば第VIII因子のような血液凝固因子である。血友病A患者に投与されると、第VIII因子は血液が凝固する能力を回復する。第VIII因子はヒトタンパク質であるが、血友病患者の血液中には内因性第VIII因子が存在しないため、これは免疫応答を誘発し、従って免疫系に対して外来抗原として現れる。新しい患者の約29〜33%は、治療的に投与された第VIII因子に結合しこれを中和する抗体を産生する(Lusher J.M. Semin Thromb Hemost. 2002, 28(3), pp. 273-276参照)。これらの中和抗体は、正常な血液凝固パラメータを維持するためにより多量の第VIII因子の投与を必要とし、これは免疫寛容を誘導するための高価な方法である(Briet Eら、Adv. Exp. Med. Bio. 2001, 489, pp. 89-97参照)。他の免疫原性例はアデノウイルスベクターである。レトロウイルス療法は実験的であり、有用性は限定される。1つの理由は、治療用ウイルスの適用が、同じかまたは類似のウイルスの以後の投与を阻止することがある免疫応答を生成するためである(Yiping Yangら、J. of Virology 1995, 69, pp. 2004-2015参照)。これは、レトロウイルス療法がタンパク質の一過性発現または宿主ゲノムへのウイルス配列の直接取り込みに基づかなければならないことを確認する。管理された研究により、宿主抗体により認識される多くのウイルス中和エピトープが同定され(Hanne, Gahery-Segardら、J. of Virology 1998, 72, pp. 2388-2397参照)、この障害を克服するのにウイルスの修飾では充分ではないことを示唆する。本発明は、アデノウイルス療法が繰り返し適用に対して有用性を有する方法を可能にするであろう。中和抗体を誘発する免疫原性物質の別の例は、公知の化粧品ボトックス(Botox)である。ボツリヌス毒素タンパク質は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の発酵物から精製される。これは化粧品への応用以外に、治療薬として頚部ジストニーのような筋肉疾患に使用されている。繰り返し暴露後に、患者は毒素に対する中和抗体を生成し、これは効力の低下を引き起こす(Birklein F.ら、Ann Neurol. 2002, 52, pp. 68-73 およびRollnik, J.D.ら、Neurol. Clin. Neurophysiol. 2001, 2001(3), pp. 2-4参照)。「免疫応答」はまた、治療薬により引き起こされる疾患を包含する。この具体例は、組換えヒトエリスロポエチン(EPO)を用いる治療に対する免疫応答である。エリスロポエチンは、化学療法または透析を受けた患者の赤血球の増殖を刺激し赤血球数を回復するために使用される。少数の患者はEPOに対する抗体が出現し、従って治療的に投与されたEPOおよび自身の内因性EPOに対して非応答性である(Caasdeval, N.ら、NEJM. 2002、346、pp. 469-475参照)。彼らは、純粋な赤血球無形成に罹り、赤血球産生が大きく低下する(Gershon S.K.ら、NEJM 2002, 346, pp. 1584-1586参照)。このEPO療法の合併症は、治療しないと致死的である。他の具体例はマウス抗体OKT3(オーソクローン(Orthoclone)としても知られている)であり、これは活性化T細胞のCD-3ドメインに対するモノクローナル抗体である。臨床治験ではOKT3を投与された患者の20〜40%が、治療に対して抗体を産生している。これらの抗体は、治療の効果を無くす以外に、強い宿主免疫反応を刺激する。免疫反応は重症であり、高力価のヒト抗マウス抗体を有する患者は、薬剤投与が特に制限される(オーソクローン(Orthoclone)能書を参照)。最後の例はヒト抗体治療である。フミラ(Humira)(登録商標)はTNFに対するモノクローナル抗体であり、リウマチ様関節炎患者を治療するのに使用される。単独で服用すると、約12%の患者に中和抗体が出現する。さらにこの薬剤を投与された少数の患者はまた、全身性エリテマトーデス様症状(治療薬に誘導されるIgG性免疫応答)に罹る(フミラ(Humira)(登録商標)能書を参照)。
【0037】
「免疫応答」の他の例は、小分子薬剤に対する宿主反応である。いくつかの化学構造体が宿主タンパク質と結合して免疫認識を刺激することは、当業者に公知である(Ju. C.ら、2002, Current Drug Metabolism 3, pp. 367-377 およびKimber L.ら、2002, Toxicologic Pathology 30, pp. 54-58参照)。これらの宿主反応の大部分はIgG介在性である。IgG性の具体的な「免疫応答」には、溶血性貧血、スティーヴェンズ‐ジョンソン症候群、および薬剤誘導性ループスがある。
【0038】
「由来する」は、同様の物質から得られることを意味する。
【0039】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、その原子の結合の性質もしくは順序または空間中のその原子の配置が異なる式(I)の化合物を意味する。その原子の配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。互いの鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「鏡像異性体」または時に「光学異性体」と呼ばれる。4つの同一ではない置換基に結合した炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。1つのキラル中心を有する化合物はキラリティーが反対の2つの鏡像異性体を有し、「ラセミ混合物」と呼ばれる。2つ以上のキラル中心を有する化合物は2n-1個の鏡像異性体対を有する(ここでnはキラル中心の数である)。2つ以上のキラル中心を有する化合物は、個体ジアステレオ異性体またはジアステレオ異性体の混合物(「ジアステレオ異性体混合物」と呼ばれる)として存在する。1つのキラル中心が存在する時は、立体異性体はキラル中心の絶対配置で特徴付けられる。絶対配置は、キラル中心に結合した置換基の空間中の配置である。鏡像異性体はそのキラル中心の絶対配置により特徴付けられ、Cahn、IngoldおよびPrelogのR-およびS-配列決定法により記載される。立体化学命名の慣用法、立体化学の測定法、および立体異性体の分離法は当該分野で公知である(例えば、「応用有機化学(Advanced Organic Chemistry)」、第4版、March、Jerry、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1992参照)。式(I)の化合物を説明するために本出願で使用される名前と図はすべての可能な立体異性体を包含することを理解されたい。
【0040】
疾患の「病態」は、疾患の本質的性質、原因および発症、ならびに疾患過程から生じる構造的および機能的変化を意味する。
【0041】
「薬剤学的に許容される」は、一般的に安全で非毒性で、生物学的にも他の面でも有害ではない医薬組成物の調製に有用であり、獣医学的およびヒトでの薬剤学的使用に許容されるものを含むことを意味する。
【0042】
「薬剤学的に許容される塩」は、上記したように薬剤学的に許容され、所望の薬理学的活性を有する式(I)の化合物の塩を意味する。かかる塩には、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メチルスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、樟脳スルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、四級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸など、と形成される酸付加塩がある。
【0043】
薬剤学的に許容される塩はまた、存在する酸性プロトンが無機もしくは有機塩基と反応できる時に形成される塩基付加塩を含む。許容される無機塩には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、および水酸化カルシウムがある。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどがある。
【0044】
本発明はまた式(I)の化合物のプロドラッグを含む。プロドラッグは、代謝的手段(例えば加水分解)によりインビボで式(I)の化合物に変換される化合物を意味する。
【0045】
式(I)の化合物は互変異性体として存在してもよい。かかる互変異性体型(個々の互変異性体またはこれらの混合物)は本発明の範囲内である。例えば、互変異性化して式(I')の化合物与えるかまたはその逆の式(I)の化合物を以下に示す。
【0046】
【化8】

【0047】
互変異性体の量は、立体的相互作用、置換基の電子的作用、溶媒の極性、水素結合形成能、温度、pHなどのいくつかの条件により変動することは当業者により理解されるであろう。
【0048】
「治療的有効量」は、疾患の治療のために動物に投与される時、疾患のかかる治療を達成するのに充分な量を意味する。
【0049】
「治療」または「治療する」は、本発明の化合物の投与を意味し、以下を含む:
(1) 疾患の素因を有するが、疾患の病態または症状をまだ経験もしくは発症していない動物で疾患が起きることを予防する、
(2) 患者の病態または症状を経験もしくは発症している動物の疾患を抑制する(すなわち、病態および/または症状のさらなる進展を止める)、または
(3) 患者の病態または症状を経験もしくは発症している動物の疾患を軽減する(すなわち、病態および/または症状を逆転させる)。
【0050】
併用療法(生物製剤の使用)について「治療」または「治療する」は本発明の化合物の投与を意味し、以下を含む:
(1) 免疫応答の素因を有するが、免疫応答の病態または症状をまだ経験もしくは発症していない動物で免疫応答が起きることを予防する、
(2) 免疫応答の病態または症状を経験もしくは発症している動物の免疫応答を抑制する(すなわち、病態および/または症状のさらなる進展を止める)、または
(3) 免疫応答の病態または症状を経験もしくは発症している動物の免疫応答を軽減する(すなわち、免疫応答の程度または重症度、期間、明らかな症状の低下、または病態および/または症状の逆転、例えばMHCクラスII分子による抗原性ペプチドの結合と提示の低下、T細胞およびB細胞の活性化の低下、体液性および細胞性応答の低下、および適宜特定の免疫応答に対して、炎症、うっ血、疼痛、壊死の低下、生物製剤の効力の低下など)。
一般的合成スキーム
本発明の化合物は、以下の反応スキームに記載の方法により製造することができる。
【0051】
これらの化合物の調製に使用される出発物質と試薬は、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)、バッケム(Bachem)(トランス(Torrance)、カリホルニア州)、またはシグマ(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)などの販売業者から入手できるか、または「フィーザーとフィーザーの有機合成試薬(Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis)」、第1〜17巻(ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、1991);「ロッドの炭素化合物の化学(Rod's Chemistry of Carbon Compounds)」、第1〜5巻および増刊号(エルセビアサイエンスパブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)、1989);「有機反応(Organic Reactions)」、第1〜40巻(ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、1991);「マーチの応用有機化学(March's Advanced Organic Chemistry)」(ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、第4版)、および「ラロックの総合有機変換(Larock's Comprehensive Organic Transformaltions)」(ブイシーエィチパブリッシャーズ社(VCH Publishers Inc.)、1989)のような文献に記載の方法に従って、当業者に公知の方法により調製される。これらのスキームは、本発明の化合物を合成できるいくつかの方法を例示するのみであり、これらのスキームの修飾は本開示を参照することにより可能であり当業者に示唆されるであろう。
【0052】
反応の出発物質と中間体は、所望であれば従来法(特に限定されないが、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどがある)により単離精製してもよい。かかる物質は、物理定数やスペクトルデータを含む従来法を使用して性状解析される。
【0053】
特に明記しない場合は本明細書に記載の反応は、大気圧で約-78℃〜約150℃、さらに好ましくは約0℃〜約125℃の温度範囲、最も好ましくはほぼ室温(周囲温度)(例えば約20℃)で起きる。
【0054】
本明細書に記載の反応において、反応への好ましくない参加を避けるために反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオ、またはカルボキシ基(これらは最終生成物で所望である)を保護することが必要なことがある。標準的方法に従って従来の保護基が使用される(例えばT.W. GreeneとP.G.M. Wutsの「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons)、1991)。式(Ia)と(Ib)の化合物は、後述のスキーム1〜3に記載の方法により調製することができる。
【0055】
式(I)の化合物(ここでR1〜R5は発明の要約で定義したものである)は以下のスキーム1に示すように調製することができる。
スキーム1
【0056】
【化9】

【0057】
LGがハロのような脱離基である式(a)の化合物と式(b)のアミノ酸化合物(ここでR'は水素またはアルキルである)との反応により式(c)の化合物が得られ、これは次に式(I)の化合物に変換される。反応は当該分野で公知の方法により行われる。かかる方法のいくつかは、Dunn, A.D., Org. Prep. Proceed. Int., 1998, 30, 709;Lindstroem, S.ら、Heterocycles, 1994, 38, 529;Katrizky, A.R.ら、Synthesis, 1990, 561;Hontz, A.C.ら、Org. Synth., 1963, IV, 383;およびStephen, H., J. Chem. Soc., 1957, 490に記載されている。
【0058】
式(a)の化合物は市販されているか、または当該分野で公知の方法により容易に調製することができる。かかる方法のいくつかは、後述の実施例に記載される。式(b)のアミノ酸は市販されている。その他は当該分野で公知の方法により調製することができる。かかる方法のいくつかは、PCT出願公報第WO00/55144号、WO01/19816号、WO03/029200号、米国特許出願第60/422,337号、米国特許第6,353,017B1号、6,492,662B1号、353,017B1号、および6,525,036B1号(これらの開示内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0059】
R'が水素である化合物(c)の反応、またはR'がアルキルである(c)中のエステル基の塩基性加水分解条件下での加水分解の次に、生じた酸に式(d)の化合物を反応させることにより式(e)の化合物が得られる。反応は適切なカプリング剤(例えば、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、O-(7-アザベンゾトリゾール-1-イル)-1,1,3,3、テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-ベンゾトリゾール-1-イル-N,N,N',N"-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート(HABU)、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、など)を用いて行うことができ、および場合により適切な触媒(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)など)および非求核性塩基(例えば、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンなど、またはこれらの適当な組合せ)を用いて、周囲温度で完了するのに5〜10時間必要である。適当な反応溶媒には、特に限定されないが、ジメチルホルムアミド、塩化メチレンなどがある。式(d)の化合物は、後述の実施例に記載の方法により調製することができる。
【0060】
(e)のヒドロキシ基をオキソン(Oxone)、デスマーチンペルヨーディナン(Dess Martin Periodinane)、TEMPO/ブリーチなどの適当な酸化剤で酸化すると、式(I)の化合物が得られる。
【0061】
あるいは式(I)の化合物は後述のスキーム2に示すように調製することができる。
スキーム2
【0062】
【化10】

【0063】
式(a)、(f)または(g)の化合物に式(h)のアミノ化合物を反応させると式(e)の化合物が得られ、これは次に上記スキーム1に記載のように式(I)の化合物に変換される。チオン(f)との反応はヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(Yong, Y.F.ら、J. Org. Chem. 1997, 62, 1540参照)、ホスゲンまたはトリホスゲン(Barton, D.H.ら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 1982, 2085参照)、ハロゲン化アルキル(Brand, E.とBrand, F.C., Org. Synth., 1955, 3, 440参照)、またはカルボジイミド(Poss, M.A.ら、Tet. Lett., 1992, 40, 5933参照)のような適当なカプリング剤の存在下で行われる。
【0064】
イミデート化合物(g)との反応は、当業者に公知の反応条件下で行われる(例えば、Haake, M.ら、Synthesis, 1991, 9,753; Dauwe, C.ら、Synthesis, 1995, 2, 171; Reidら、Justus Liebigs Ann. Chem. 1966, 97, 696;およびDean N. D.とPapadopoulos, E.P. J. Het. Cehm., 1982, 19, 1117)。
【0065】
化合物(a)、(f)および(g)は市販されているか、または当該分野で公知の方法により調製することができる(Tet. Lett., 2001, 42, 46, 8181-8184; Chem. Heterocyclo, 1972, 848-851; Chem. Heterocyclo, 1988, 337-344, PCT出願公報第WO02/20485号、Francesconi, I.ら、J. Med. Chem., 1999, 42, 2260; Kurzer, F.ら、Org. Synth. 1963, 645; Futman, A.D., 米国特許第3,984,410号、Stetter, H.とTheisen, D.H. Chem. Ber., 1969, 102, 1641-42, およびOrtiz, J.A., Arzneim.-Forsch./Drug Res, 1977, 47, 431-434参照)。
【0066】
式(h)の化合物は、式(b)(R'=H)のN-保護アミノ酸に式(d)の化合物を上記のカプリング反応条件下で反応させ、次にアミノ保護基を除去することにより調製することができる。適当なアミノ保護基には、特に限定されないが、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどがある。
【0067】
あるいは式(I)の化合物(R4はピロリジニル、モルホリニル、イソプロピルアミン、またはシクロペンチルアミンであり、窒素原子を介してアミジン炭素原子に結合している)は、後述のスキーム3に示すように調製することができる。
スキームC
【0068】
【化11】

【0069】
LGが脱離基、好ましくはメチルチオである式(i)の化合物に式(b)の化合物を反応させると式(j)の化合物が得られる。酸(j)に式(d)の化合物を上記反応条件で反応させると、式(k)の化合物が得られる。(k)にイソプロピルアミンまたはシクロペンチルアミンを反応させると試験(I)の化合物が得られ、これは上記したように式(I)の化合物に変換される。
【0070】
式(I)の化合物を調製するのに使用できる他の方法は、PCT出願公報第WO62/20485号とWO03/029200号、および米国特許第6,420,364号(これらの開示内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
薬理学と有用性
本発明の化合物はシステインプロテアーゼ、特にカテプシンSの選択的インヒビターであり、従って疾患の病態および/または症状にシステインプロテアーゼ活性が一因となる疾患を治療するのに有用である。例えば本発明の化合物は、自己免疫疾患(特に限定されないが、若年型糖尿病、乾癬、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、特にグレーブス眼球突出症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、および橋本甲状腺炎を含む)、アレルギー性疾患(特に限定されないが、喘息を含む)、同種異系免疫応答(特に限定されないが、臓器移植または組織移植片および子宮内膜症を含む)を治療するのに有用である。
【0071】
カテプシンSはまた、過度の弾力線維分解を含む障害、例えば慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)、細気管支炎、喘息と気管支炎の過度の気道弾力線維分解、肺実質炎、および心血管疾患(例えばプラーク破裂およびアテローム)の一因である。カテプシンSは小繊維生成に関与し、従ってカテプシンSのインヒビターは、全身性アミロイドーシスの治療に有用である。
生物製剤の調製
本発明の実施において、生物製剤の作成または精製のためにいくつかの方法が使用される。生物製剤を調製するための方法は、後述のように当該分野で公知である。
【0072】
モノクローナル抗体は当該分野で公知の標準的方法、例えばKohlerとMilstein、Nature 1975, 256:495に記載の方法、またはその修飾法、例えばBuckら、1982, In Vitro 18:377に記載の方法により調製される。典型的にはマウスまたはラットを、タンパク質担体に結合したMenB PS誘導体で免疫し、追加免疫し、脾臓(および場合により、いくつかの大きなリンパ節)を取り出し、単一の細胞に分離する。所望であれば、抗原で被覆したプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することにより脾臓細胞をスクリーニングする(非特異的に接着した細胞を除去後に)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、懸濁液の残りとともに洗浄除去されない。次に、生じるB細胞またはすべての分離した脾臓細胞をミエローマ細胞と融合するように誘導してハイブリドーマを形成させる。ハイブリダイゼーションで使用される代表的なマウスミエローマ株には、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手できるものがある。
【0073】
ヒトでの免疫原性を低下させるために、マウスモノクローナル抗体分子から、ヒトおよび非ヒトアミノ酸配列からなるキメラ抗体が形成される(Winterら、Natue 1991 349:293; Lobuglioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989 86:4220; Ahawら、J. Immunol. 1987 138:4534; およびBrownら、Cancer Res. 1987 47:3577; Riechmannら、Nature 1988 332:323; Verhoeyenら、Science 1988 239:1534; およびJonesら、Nature 1986 321:522;ヨーロッパ特許広報第519,596号、1992年12月23日公開;および英国特許公表第GB2,276,169号、1994年9月21日公開)。
【0074】
親モノクローナル抗体分子の免疫学的結合性を示すことができる抗体分子断片(例えば、F(ab')2、FV,およびsFv分子)は、公知の方法を使用して製造することができる。Inbarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1972 69:2659;Hochmanら、Biochem. 1976 15:2706; Ehrlichら、Biochem. 1980 19:4091; Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988 85(16):5879;およびHustonらの米国特許第5,091,513号と5,132,405号;Ladnerらの米国特許第4,946,778号。
【0075】
別の方法では、モノクローナル抗体分子集団をインビトロで拡張するためにファージ表示系を使用することができる。Saikiら、Nature 1986 324:163; Scharfら、Science 1986 233:1076; 米国特許第4,683,195号および4,683,202号;Yangら、J. Mol. Biol. 1995 254:392;Barbas, IIIら、Methods: Comp. Meth Enzymol. 1995 8:94;Barbas, IIIら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991 88:7978。
【0076】
ファージ表示ライブラリーから選択されたFab分子の重鎖および軽鎖部分のコード配列を単離または合成し、適当なベクターまたはレプリコン中に発現のためにクローン化することができる。任意の適当な発現系を使用することができ、例えば細菌、酵母、昆虫、両生類および哺乳動物系がある。細菌の発現系には、Changら、Nature 1978 275:615、Goeddelら、Nature 1979 281:544、Goeddelら、Nucleic Acids Res. 1980 8:4057、ヨーロッパ特許出願第EP36,776号、米国特許第4,551,433号、deBoerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1983 80:21-25、およびSiebenlistら、Cell 1980 20:269に記載されたものがある。
【0077】
酵母の発現系には、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1978 75:1929、Itoら、J. Bacteriol. 1983 153:163、Kurtzら、Mol. Cell. Biol. 1986 6:142、Kunzeら、J. Basic Microbiol. 1985 25:141、Gleesonら、J. Gen. Microbiol. 1986 132:3459、Roggenkampら、Mol. Gen. Genet. 1986 202:302、Dasら、J. Bacteriol. 1984 158:1165、De Louvencourtら、J. Bacteriol. 1983 154:737、Van den Bergら、Bio/Technology 1990 8:135、Kunzeら、J. Basic Microbiol. 1985 25:141、Creggら、Mol. Cell. Biol. 1985 5:3376、米国特許第4,837,148号および4,929,555号、Beachら、Nature 1981 300:706、Davidowら、Curr. Genet. 1985 10:380、Gaillardinら、Curr. Genet. 1985 10:49、Ballanceら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 112:284-289、Tilburnら、Gene 1983 26:205-221、Yeltonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1984 81:1470-1474、Kellyら、EMBO J. 1985 4:475479;ヨーロッパ特許出願第EP244,234号、および国際特許公報第WO91/00357号に記載されたものがある。
【0078】
昆虫での異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号、ヨーロッパ特許出願第EP127,839号およびEP155,476号、Vlakら、J. Gen. Virol. 1988 69:765-776、Millerら、Ann. Rev. Microbiol. 1988 42:177、Carbonellら、Gene 1988 73:409、Maedaら、Nature 1985 315:592-594、Lebacq-Verheydenら、Mol. Cell. Biol. 1988 8:3129、Smithら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1985 82:8404、Miyajimaら、Gene 1987 58:273、およびMartinら、DNA 1988 7:99に記載されたように行うことができる。多くのバキュロウイルス株や変種および宿主からの対応する許容昆虫宿主細胞が、Luckowら、Bio/Technology 1988 6:47-55、Millerら、「遺伝子操作(Genetic Engineering)」、Setlow, J.K.ら編、第8巻、プレヌムパブリッシング(Plenum Publishing)、pp. 1986 277-279、およびMaedaら、Nature 1985 315:592-594に記載されている。
【0079】
哺乳動物での発現は、Dijkemaら、EMBO J. 1985 4:761、Gormanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1982 79:6777、Boshartら、Cell 1985 41:521、および米国特許第4,399,216号に記載されたように行うことができる。哺乳動物発現の他の特徴は、Hamら、Meth. Enz. 1979 58:44、Barnesら、Anal. Biochem. 1980 102:255、米国特許第4,767,704号、4,657,866号、4,927,762号、4,560,655号および再発行米国特許第RE30,985号、および国際特許公報第WO90/103430号、WO87/00195号に記載されたように促進することができる。
【0080】
組換えアデノウイルスベクターの産生は米国特許第6,485,958号に記載されている。
【0081】
ボツリヌス毒素A型は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の培養物を樹立し、これを発酵槽中で培養し、発酵混合物を公知の方法に従って回収し精製することにより得られる。
【0082】
任意の上記タンパク質産生法を使用して、本発明の利益を受ける生物製剤を得ることができるであろう。
試験
システインプロテアーゼ阻害活性、特に本発明の化合物のカテプシンS阻害活性は、当業者に公知の方法により測定することができる。プロテアーゼ活性および試験化合物によるその阻害を測定するための適当なインビトロ測定法は公知である。典型的には測定法は、ペプチドベースの基質のプロテアーゼ誘導加水分解を測定する。プロテアーゼ阻害活性を測定するための測定法の詳細は、生物学的例1〜6(後述)に記載される。
投与と医薬組成物
一般に本発明の化合物は、治療的有効量で当該分野で公知の通常の許容される任意の方法で、単独にまたは1つ以上の治療薬と組合せて投与される。治療的有効量は、疾患の重症度、対象の年齢と相対的健康、使用される化合物および他の因子の力価に応じて大きく変動する。例えば本発明の化合物の治療的有効量は、約10マイクログラム/キログラム体重(μg/kg)/日〜約20ミリグラム/キログラム体重(mg/kg)/日、典型的には約100μg/kg/日〜約10mg/kg/日の範囲である。従って80kgのヒト患者の治療的有効量は約1mg/日〜約1.6g/日、典型的には約1mg/日〜約100mg/日の範囲である。一般に個人の知識と本出願の開示に従う当業者は、ある疾患を治療するための本発明の化合物の治療的有効量を確認することができるであろう。
【0083】
本発明の化合物は、以下の経路の1つにより医薬組成物として投与することができる:経口、全身性(例えば、経皮、鼻内または坐剤)または非経口(例えば、筋肉内、静脈内または皮下)。組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、持続放出性製剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアゾル剤、または任意の適切な組成物の形を取ることができ、一般に少なくとも1つの薬剤学的に許容される賦形剤と組合せた本発明の化合物からなる。許容される賦形剤は非毒性で、投与を助け、活性成分の治療効果に悪影響を与えないものである。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体でも、またはエアゾル組成物の場合は、当業者が入手できるガス状賦形剤でもよい。
【0084】
固体の薬学的賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどがある。液体および半固体賦形剤は、水、エタノール、グリコール、プロピレングリコール、および種々の油、例えば石油、動物油、植物油、または合成起源の油(例えば、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラル油、ゴマ油など)から選択される。特に注射液剤用の好適な液体担体には、水、食塩水、水性ブドウ糖およびグリコールがある。
【0085】
組成物中の本発明の化合物の量は、製剤の種類、単位用量のサイズ、賦形剤および薬剤科学分野で当業者に公知の他の因子の種類により大きく変動する。一般にある疾患を治療するための本発明の化合物の組成物は、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.3重量%〜1重量%の活性成分を含み、残りは賦形剤である。好ましくは医薬組成物は、連続治療のための単位投与剤型で、または特に症状の軽減が必要な場合に随意に単位投与剤型で投与される。本発明の化合物を含む代表的薬剤調製物は以下の実施例で説明される。
【実施例】
【0086】
本発明の式(I)の化合物の調製を例示する以下の例で本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参照A
2(S)-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ-1-(オキサゾロ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ブタン-1-オールの合成
【0087】
【化12】

【0088】
工程1
2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン(11g、100ミリモル)、トリエチルオルトギ酸(80ml)、およびp-トルエンスルホン酸(61mg)の混合物を140℃で8時間加熱した。真空下で過剰のトリエチルオルトギ酸を除去し、酢酸エチル(9g)からオキサゾロ[4,5-b]ピリジンを結晶化させた。
工程2
攪拌棒を取り付けたきれいな丸底フラスコにTHF(30ml)中のオキサゾロ[4.5-b]ピリジン(600mg、5ミリモル)を入れ、反応混合物を窒素雰囲気下で0℃に冷却した。塩化イソプロピルマグネシウム(THF中2M、2.5ml、5ミリモル)を加えた。0℃で1時間攪拌後、THF(20ml)中の2(S)-(tert-ブトキシカルボニル)アミノブチルアルデヒド(573mg、3ミリモル)を加えた。氷浴を除去し、反応混合物を室温まで暖めた。2時間後、飽和塩化アンモニウムを用いて反応混合物をクエンチさせ、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにより精製して383mgの標題化合物を得た。
【0089】
H1NMR(DMSO-d6):δ8.42 (m, 1H), 8.18 (m, 1H), 7.3 (m, 1H), 6.8-6.6 (dd, d, 1H, OH, ジアステレオ異性体), 6.3-6.02 (d, d, 1H, NH, ジアステレオ異性体), 4.82-4.5 (m, m, 1H, ジアステレオ異性体), 1.8-1.3 (m, 2H), 1.2-1.05 (s, s, 9H, ジアステレオ異性体), 0.89 (m, 3H)。MS: 306.2 (M-1), 308.6 (M+1)。
参照B
2(S)-アミノ-1-(3-フェニル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)-ブタン-1-オールの合成
【0090】
【化13】

【0091】
3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシペンタン酸(500mg、2.14ミリモル)をEDC(600mg、3.14ミリモル)、HOBt(600mg、3.92ミリモル)、およびN-ヒドロキシ-ベンズアミジン(292mg、2.14ミリモル)と一緒にした。ジクロロメタン(10ml)を加え、次に4-メチルモルホリン(1ml)を加えた。反応混合物を周囲温度で16時間攪拌した。酢酸エチル(200ml)で希釈後、溶液を水(30ml)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で溶媒を留去した。粗生成物をピリジン(10ml)に溶解し、80℃で15時間加熱した。ピリジンを真空下で留去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによりシリカゲル(溶出液:酢酸エチル)で精製して2(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-1-(3-フェニル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)-ブタン-1-オール(290mg、0.83ミリモル)を得た。2(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-1-(3-フェニル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)-ブタン-1-オール(145mg、0.41ミリモル)を塩化メチレン(4ml)に溶解し、TFA(4ml)を加えた。1時間攪拌後、反応混合物を蒸発乾固して標題化合物を得た。
【0092】
N-ヒドロキシ-ベンズアミジンの代わりにN-ヒドロキシプロパミジンを使用した以外は上記方法に従って、2(S)-アミノ-1-(3-エチル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)-ブタン-1-オールを得た。
参照C
2(S)-アミノ-1-(2-メトキシメチル-[1,3,4]オキサジアゾール-5-イル)-ブタン-1-オールの合成
【0093】
【化14】

【0094】
工程1
水とジオキサンの混合物(200mlの水と200mlのジオキサン)中の(S)-(+)-2-アミノ-1-ブタノール(50g、561ミリモル)を0℃に冷却し、NaOH(26.9g、673ミリモル)とジ-tert-ブチジカーボネート(146.96g、673ミリモル)を加えた。添加後、反応混合物を室温まで暖め、2時間攪拌した。ジオキサンを除去した後、残渣を酢酸エチルで抽出し、次に食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した。さらに精製することなく、粗2(S)-Boc-アミノ-1-ブタノール(120g)を次の工程に使用した。
工程2
塩化メチレン(700ml)中の塩化オキザリル(40.39g、265ミリモル)の溶液を攪拌し-60℃に冷却した。塩化メチレン(100ml)中のジメチルスルホキシド(51.7g、663ミリモル)を滴下して加えた。10分後、塩化メチレン(100ml)中の2(S)-Boc-アミノ-1-ブタノール(50g、265ミリモル)の溶液を-70℃で滴下して加えた。反応混合物を-40℃に10分間暖め、次に再度-70℃まで冷却した。塩化メチレン(100ml)中のトリエチルアミン(74.9g、742ミリモル)の溶液を加え、反応混合物を2時間かけて室温まで暖めた。飽和リン酸二水素ナトリウム(100ml)を加え、次に有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去して45gの2(S)-Boc-アミノブチルアルデヒド(1-ホルミルプロピル)カルバミン酸tert-ブチルエステルを得た。
工程3
メチルメトキシ酢酸(52g、500ミリモル)、ヒドラジン水化物(30ml)の混合物を8時間加熱還流した。過剰のヒドラジンと水を真空下で除去した。残渣をn-ブタノールで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のn-ブタノールを除去して45gのヒドラジドを得た。
工程4
上記ヒドラジド(45g)、トリエチルオルトギ酸(146ml)、およびp-トルエンスルホン酸(61mg)の混合物を140℃で8時間加熱した。過剰のトリエチルオルトギ酸を真空下で除去した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、4.6gの2-メトキシメチル-[1.3.4]-オキサジアゾールを得た。
工程5
THF(100ml)中の2-メトキシメチル-[1,3,4]-オキサジアゾール(4.6g、40ミリモル)の攪拌溶液に、n-BuLi(25.2mlのヘキサン中の1.6M溶液)を窒素下で-78℃で滴下して加えた。1時間後、MgBr/Et2O(10.4g、40.3ミリモル)を加え、反応混合物を1時間-45℃に暖め、THF(20ml)中の2(S)-Boc-アミノブチルアルデヒド(1-ホルミルプロピル)カルバミン酸tert-ブチルエステル(5.28g、28.25ミリモル)で処理した。反応混合物を1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2(S)-Boc-アミノ-1-(5-メトキシメチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-2-イル)-1-プロパノールブタノール(500mg)を得た。
工程6
2(S)-Boc-アミノ-1-(5-メトキシメチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-2-イル)-1-プロパノールブタノール(500mg、1.66ミリモル)と塩化メチレン(5ml)を混合し、TFA(0.5ml)を室温で加えた。1時間攪拌後、溶媒と過剰のTFAを真空下で除去して、標題化合物をTFA塩(340mg)として得た。
参照D
2(S)-アミノブ-1-(2-フェニル-[1,3,4]オキサジアゾール-5-イル)ブタン-1-オールの合成
【0095】
【化15】

【0096】
工程1
ベンゾイックヒドラジド(22.5g、165ミリモル)、トリエチルオルトギ酸(150ml)およびp-トルエンスルホン酸(300mg)の混合物を120℃で12時間加熱した。過剰のトリエチルオルトギ酸を真空下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール(14.5g)を得た。
工程2
THF(100ml)中の2-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール(10g、68.5ミリモル)の攪拌溶液に、n-BuLi(42.8mlのヘキサン中の1.6M溶液)を窒素下で-78℃で滴下して加えた。1時間後、MgBr/Et2O(17.69g、68.5ミリモル)を加え、反応混合物を1時間-45℃に暖め、THF(20ml)中の2(S)-Boc-アミノブチルアルデヒド(7.8g、41ミリモル)で処理した。反応混合物を1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2-[2(S)-Boc-アミノ-1-ヒドロキシブチル]-5-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール(9.7g)を得た。
工程3
2-[2(S)-Boc-アミノ-1-ヒドロキシブチル]-5-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール(505mg、1.5ミリモル)と塩化メチレン(5ml)を混合し、TFA(1ml)を室温で加えた。1時間攪拌後、溶媒と過剰のTFAを真空下で除去して、530mgの標題化合物をTFA塩として得た。
参照E
2(S)-アミノ-1-オキサゾロ[4,5-b]ピリジン-2-イルブタン-1-オールの合成
【0097】
【化16】

【0098】
工程1
2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン(25g、227ミリモル)、トリエチルオルトギ酸(75ml)とp-トルエンスルホン酸(61mg)の混合物を140℃で8時間加熱した。過剰のトリエチルオルトギ酸を真空下で除去した。生成物を酢酸エチルから結晶化して22.5gのオキサゾロ[4.5-b]ピリジンを得た。
工程2
THF(300ml)中のオキサゾロ[4,5-b]ピリジン(12g、100ミリモル)の攪拌溶液に、n-BuLi(62.5mlのヘキサン中の1.6M溶液)を窒素下で-78℃で滴下して加えた。1時間後、MgBr/Et2O(25.8g、100ミリモル)を加え、反応混合物を1時間-45℃に暖め、THF(50ml)中の2(S)-Boc-アミノブチルアルデヒド(11.46g、60ミリモル)で処理した。反応混合物を1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2(S)-Boc-アミノ-1-(オキサゾロ[4,5-b]ピリジン-2-イル)-1-ブタノール(14.1g)を得た。
工程3
2(S)-Boc-アミノ-1-(オキサゾロ[4,5-b]ピリジン-2-イル)-1-ブタノール(311mg、1ミリモル)と塩化メチレン(5ml)を混合し、TFA(1ml)を室温で加えた。1時間攪拌後、溶媒と過剰のTFAを真空下で除去して、355mgの標題化合物をTFA塩として得た。
参照F
2(S)-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オール塩酸塩の合成
【0099】
【化17】

【0100】
工程1
トルエン(150ml)中のベンズオキサゾール(28.6g、240ミリモル)の溶液に、THF(120ml、240ミリモル)中の塩化イソプロピルマグネシウムの2M溶液を約-4℃で加えた。赤褐色混合物を約-4℃で保存し、必要に応じて使用した。
工程2
ジクロロメタン(500ml)と水(350ml)中の2(S)-Boc-アミノブタノール(50g、264ミリモル)の溶液に、20℃でTEMPO(0.01当量)、臭化ナトリウム(1当量)、および炭酸水素ナトリウム(3当量)を加えた。反応混合物を0℃で攪拌し、希釈した漂白剤(1.3当量、450ml)を40分かけて加えた。反応混合物を0℃で30分間攪拌し、次にチオ硫酸でクエンチした。デカントと抽出(ジクロロメタン)後、有機相を食塩水で洗浄し、真空下で濃縮乾固して2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノブチルアルデヒドを低融点固体(38.1G;収率77%)。
工程3
トルエン(150ml)中の2(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノブチルアルデヒド(30g、160ミリモル)の溶液を、-5℃で30分かけてベンズオキサゾールのグリニャール試薬の溶液(上記工程1に記載のように調製した)に加えた。反応混合物を0℃で0.5時間攪拌し、次に室温で2.5時間攪拌した。5%酢酸でクエンチし、5%炭酸ナトリウム水溶液、次に食塩水で洗浄し、濃縮乾固して粗2(S)-tert-ブトキシカルボニル-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オールを得た。残渣をトルエンで希釈し、シリカゲルを加えた。スラリーをろ過した。トルエンで溶出して非極性の不純物を除去した。次にトルエンと酢酸エチルの8/2混合物を使用して、2(S)-tert-ブトキシカルボニル-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オールを脱着させた。
工程4
20〜25℃のイソプロパノール(118ml)中の2(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オール(26.3g、86ミリモル)の溶液に、トリメチルクロロシラン(1.4当量)を加えた。溶液を50℃で5時間攪拌した。反応混合物を52mlまで濃縮し、次にイソプロピルエーテル(210ml)を加え、ろ過し、真空下で乾燥して標題化合物を灰色の固体として得た(16.4g;収率=79%;ジアステレオ異性体の混合物)。
参照G
2(S)-Boc-アミノ-1-(2-エチル-[1,3,4]オキサジアゾール-2-イル)ブタン-1-オールの合成
【0101】
【化18】

【0102】
工程1
ホルミックヒドラジド(60g、1モル)、トリエチルオルトプロピオン酸(176.26g、1モル)およびp-トルエンスルホン酸(250mg)の混合物を120℃で12時間加熱した。エタノールを真空下で除去し、残渣を真空下で蒸留して24gのエチル-[1.3.4]オキサジアゾールを得た。
工程2
THF(50ml)中のエチル-[1,3,4]-オキサジアゾール(4.66g、48ミリモル)の攪拌溶液に、n-BuLi(30mlのヘキサン中の1.6M溶液)を窒素下で-78℃で滴下して加えた。1時間後、MgBr/Et2O(12.38g、48ミリモル)を加え、反応混合物を-45℃に1時間暖め、THF(20ml)中の2(S)-tert-ブチトキシカルボニルアミノブチルアルデヒド(3.2g、24ミリモル)で処理した。反応混合物を1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(2.13g)を得た。
【0103】
1NMR(DMSO-δ):6.65-6.52 (1H, d, d, J=9.2Hz, J=9.2Hz, NH, ジアステレオ異性体), 6.14, 5,95 (1H, d, d, J=5.6Hz, J=5.6Hz, OH, ジアステレオ異性体), 4.758-4.467 (1H, m, ジアステレオ異性体), 3.7-3.55 (1H, m), 2.8 (2H, q), 1.33 (12h, t), 1.25-1.21 (2H, m), 0.82 (3H, m)。MS:284.1 (M-1), 286
参照H
チオフェン-2-カルボチオ酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミドの合成
【0104】
【化19】

【0105】
工程1
後述の実施例1の工程2の方法により、HBTUの代わりにHOBtを使用してチオフェン-2-カルボン酸をトリフルオロエチルアミンに結合させて、チオフェン-2-カルボン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミドを得た。
工程2
トルエン(100ml)中のチオフェン-2-カルボン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミド(2.8g、13.28ミリモル、1.0当量)に、ラウェッソン試薬(Lawesson's reagent)(2.71g、6.69ミリモル、0.5当量)を加えた。溶液を100℃で3時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶出液として5% 酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、標題化合物(1.4g)を黄色の固体として得た。MS=225.9(M+1)。
【0106】
市販の出発物質の代わりにチオフェン-2-カルボン酸を使用して上記のように進めて、以下の化合物を調製した:
フェニル-2-カルボチオ酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミド;MS=220 (M+1);
4-フルオロフェニルカルボチオ酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミド;MS=238 (M+1);および
テトラヒドロピラン-4-カルボチオ酸(2,2,2-トリフルオロエチル)アミド;MS=225.8 (M-1)。
参照I
1,1-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-1λ6-チエノ[2,3-d]イソチアゾ-ル-3-オンの合成
【0107】
【化20】

【0108】
工程1
4-(クロロスルホニル)チオフェン-3-カルボン酸メチル(5g、20.75ミリモル)を塩化メチレン(50ml)に溶解し、溶液を0℃に冷却し、アンモニウムガス(1.1g、64.7ミリモル)を20分間導入した。さらに2時間攪拌後、反応混合物を10%塩酸で洗浄して中性にし、次に食塩水で洗浄した。溶媒を濃縮後、粗4-スルファモイルチオフェン-3-カルボン酸メチルを得て、これをエタノールから再結晶化して2.7gの4-スルファモイルチオフェン-3-カルボン酸メチルを得た。MS:220 (M-1), 221.9 (M+1), 243.8 (M+Na)。
工程2
4-スルファモイルチオフェン-3-カルボン酸メチル(2.7g、12.2ミリモル)、メタノール(12ml)、およびナトリウムメトキシドの25%メタノール溶液(3.6ml)の混合物を48時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、濃塩酸で酸性にし、沈殿した生成物を採取し、水で洗浄した。粗生成物を水から再結晶化し、400mgの標題化合物を得た。MS:187.8 (M-1), 189.5 (M+1)。1H NMR(DMSO-d6): 8.34 (d, J=4.4Hz, 1H), 7.705 (d, J=4.8Hz, 1H)。
参照J
1-シクロペンチル-3-メチルスルホニルチオ尿素の合成
【0109】
【化21】

【0110】
ベンゼン(1mL)中のメチルスルホニルイソシアネート(175mg、0.128ミリモル、1.0当量)(J. Org. Chem. 1967, pp. 340に記載の文献の方法に従って調製した)に、シクロペンチルアミン(130mg、1.53ミリモル、1.2当量)を加え、混合物をマイクロ波装置中で80℃に加熱した。冷却すると、1-シクロペンチル-3-メチルスルホニルチオ尿素が褐色の針状物として沈殿した(210mg)。
参照K
2(R)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-シクロプロピルメタンスルホニルプロピオン酸の合成
【0111】
【化22】

【0112】
工程1
水酸化ナトリウム(2.16g、54ミリモル)を水(27ml)に溶解し、溶液をメタノール(54ml)中の2(R)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-メルカプトプロピオン酸(8.2g、37ミリモル)の懸濁液に加えた。清澄な溶液が生成した後、ブロモメチルシクロプロパン(5g、37ミリモル)を加え、生じる反応混合物を3日間攪拌した。メタノールを減圧下で除去した。残渣を1M塩酸(200ml)で処理し、次にジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去して2(R)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-シクロプロピルメチルスルファニルプロピオン酸(7.94g)を得た。
工程2
水酸化ナトリウム(2.32g、58ミリモル)を水(27ml)に溶解し、2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-シクロプロピルメチルスフファニル-プロピオン酸(7.94g、29ミリモル)を加えた。水(100ml)中のオキソン(Oxone)(登録商標)の溶液をゆっくり加えた。重炭酸ナトリウムを添加してpHを3に調整し、反応混合物を30分攪拌し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去して2(R)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-シクロプロピルメタンスルホニルプロピオン酸(4.64g、15ミリモル、31%)を得た。
参照L
2(S)-アミノ-N-[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]-3-(1-メチル-シクロペンチル)プロピオンアミドの合成
【0113】
【化23】

【0114】
工程1
1-メチルシクロペンタノール(20g、0.2モル)を室温で臭化水素酸(40ml)に加えた。1時間攪拌後、溶液をヘキサンで抽出し、ヘキサンを食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を濃縮後、20.5gの臭化1-メチルシクロペンチルを得た。
工程2
ベンゼン(200ml)を充填した500mlのフラスコに水素化トリブチルスズ(37.8g、130ミリモル)を還流して加え、Z-デヒドロ-Ala-OH(15g、64ミリモル)、臭化1-メチルシクロペンタニル(20.5g)およびAIBN(1.9g)を加えた。2時間後、溶媒を除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して7.9gの2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(1-メチル-シクロペンチル)プロピオン酸メチルエステルを得た。
工程3
2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオン酸メチルエステル(7.6g、23.8ミリモル)をアセトニトリル(82ml)と0.2M重炭酸ナトリウム水溶液(158ml)の混合物に溶解し、アルカラーゼ(Alcalase)2.4L(1.1ml)を加え、反応混合物を8時間激しく攪拌した。次に反応混合物から30℃で溶媒を留去してアセトニトリルを除去し、水性残渣をエーテルで洗浄した。エーテル層を濃縮して1.9gの2(R)-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオン酸メチルエステルを得た。水相をセライトでろ過し、6N 塩酸でpHを3に調整し、溶液を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を乾燥し、溶媒を留去して1.4gの2(S)-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオン酸を得た。
工程4
塩化メチレン(10ml)中の2(S)-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオン酸(560mg、1.84ミリモル)、2(S)-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オール(378mg、1.84ミリモル)、およびHOBt(338mg、2.2ミリモル)の攪拌混合物に、EDC(533mg、2.76ミリモル)とN-メチルモルホリン(373mg)を室温で加えた。14時間攪拌後、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して600mgの[1-[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピルカルバモイル]-2(S)-(1-メチルシクロペンチル)エチル]カルバミン酸ベンジルエステルを得た。
工程5
エタノール(30ml)中の[1-[1(S)-ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピルカルバモイル]-2(S)-(1-メチルシクロペンチル)エチル]カルバミン酸ベンジルエステル(600mg)の溶液にPd/C(5%)(60mg)を加え、反応混合物を水素雰囲気下(50psi)で2時間攪拌した。ろ過して触媒を除去し、ろ液を濃縮して430mgの標題化合物を得た。MS:358.2 (M-1)。360.1 (M+1), 382.0 (M+Na)。
実施例1
2(R)-(1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-λ6-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-イル)-N-[1(S)-(3-エチル-[1.2.4]オキサジアゾール-5-イルカルボニル)プロピル]-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオンアミドの合成
【0115】
【化24】

【0116】
工程1
2(S)-アミノ-3-シクロペンチル-3-メチルプロピオン酸ヒドロブロミド(1g、3.97ミリモル)を1N 水酸化ナトリウム水溶液(10ml)とジオキサン(5ml)に溶解し、氷浴で冷却した。David, F.A., J. Org. Chem., 1990, 55, 1254に記載の方法により調製した3-クロロベンゾ[d]イソチアゾール-1,1-ジオキシド(0.804g、4ミリモル)を加えた。反応混合物を室温まで暖め、次に1N 塩酸で酸性にし、生成物を酢酸エチルで単離した。酢酸エチル−ヘキサン混合物から結晶化して3(S)-シクロペンチル-2-(1,1-ジオキソベンゾ[d]イソチアゾール-3-イルアミノ)-3-メチルプロピオン酸(1.5g)を得た。
工程2
3-シクロペンチル-2(S)-(1,1-ジオキソベンゾ[d]イソチアゾール-3-イルアミノ)-3-メチルプロピオン酸(0.168g、0.5ミリモル)、2(S)-アミノ-(3-エチル-[1.2.4]-オキサジアゾール-5-イル)ブタン-1-オール(0.093g、0.5ミリモル)、HOBt(0.092g、0.6ミリモル)、EDC(0.145g、0.75ミリモル)、NMM(0.202g、2ミリモル)、および塩化メチレン(5ml)の混合物を室温で攪拌した。反応混合物を水で希釈して生成物を単離し、酢酸エチルで抽出して2(R)-(1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-λ6-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-イル)-N-{1(S)-(3-エチル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)ヒドロキシメチル]プロピル}-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオンアミドを得た。
工程3
塩化メチレン(5ml)中の2(R)-(1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-λ6-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-イル)-N-{1(S)-(3-エチル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)ヒドロキシメチル]プロピル}-3-(1-メチルシクロペンチル)プロピオンアミド(0.25g、0.5ミリモル)の溶液をデスマーチンペルヨーディナン(Dess Martin Periodinane)(0.254g、0.6ミリモル)で室温で処理した。反応をHPLCにより追跡した。反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水溶液でクエンチした。水−酢酸エチル処理後、カラムクロマトグラフィーにより標題化合物(0.049g)を得た。M.pt. 202-204℃。MS 500.4 (M-1) および 502.2 (M+1)。
実施例2
({1-[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルカルボニル)プロピルカルバモイル]-2(S)-シクロヘキシルエチルアミノ}フェニルメチレン)カルバミン酸エチルエステルの合成
【0117】
【化25】

【0118】
工程1
N-Boc-シクロヘキシルアラニン(1.8g、6.58ミリモル)、2(S)-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オール(1.6g、6.58ミリモル)、EDC(1.65g、8.5ミリモル)、HOBt(1.21g、7.9ミリモル)、NMM(1.42ml)、および塩化メチレンの混合物を室温で2時間攪拌した。次に反応混合物を塩化メチレンで希釈し、水、重炭酸ナトリウム水溶液、および食塩水で洗浄した。溶媒を留去して2-N-tert-ブトキシカルボニル-アミノ-3-シクロヘキシルプロピオン酸[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]アミド(2.3g)を得て、これをジオキサン(5ml)中の4N 塩酸に溶解した。室温で2時間攪拌後、溶媒と過剰の塩酸を蒸発させて除去し、残渣を水に溶解し、凍結乾燥して2(S)-アミノ-3-シクロヘキシルプロピオン酸[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]アミド(1.5g)を得た。
工程2
塩化メチレン中のN-エトキシカルボニルベンゼンチアミド(27mg、0.13ミリモル)(Papadonpoulos, E.P., J. Org. Chem., 1976, 41, 962に記載の方法により調製した)と2(S)-アミノ-3-シクロヘキシルプロピオン酸[1(S)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]アミド(50mg、0.13ミリモル)の溶液に、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(41mg、0.16ミリモル)とNMM(39mg、0.39ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を水で希釈後、塩化メチレン層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液と食塩水で洗浄した。濃縮後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:1 酢酸エチル:ヘキサン)で精製して({1(S)-[1-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピルカルバモイル]-2(S)-シクロヘキシルエチルアミノ}フェニルメチレン)カルバミン酸エチルエステルを得て、これを上記実施例1の工程3に記載のように標題化合物に変換した。
実施例3
N-{1(RS)-(ベンズオキサゾール-2-イルカルボニル)プロピル]-3-シクロヘキシル-2(S)-[(メタンスルホニルイミノピロリジン-1-イルメチル)アミノ]プロピオンアミドの合成
【0119】
【化26】

【0120】
工程1
(H.G. McFadden, J.L. HuppatzとP.K. Halladay, Aust. J. Cehm., 1993, 46, 873-886)の方法を使用して、2-クロロベンゼンスルホンアミドの代わりにメタンスルホンアミドを使用してN-[ビス(メチルチオ)メチレン]メタンスルホンアミドを得た。
工程2
シクロヘキシルアラニン(342mg、2ミリモル)を水(4ml)に溶解した。1N 水酸化ナトリウム(4ml、4ミリモル)とN-[ビス(メチルチオ)メチレン]メタンスルホンアミド(400mg、2ミリモル)を反応混合物に加え、反応混合物を70℃で12時間攪拌した。水(30ml)を反応混合物に加え、次にエチルエーテルで抽出した。水層を1N 塩酸でpH4に酸性化した。生成物を酢酸エチルで抽出し、有機抽出物を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し濃縮して、3-シクロヘキシル-2-[(メタンスルホニルイミノエチルスルファニルメチル)アミノ]プロピオン酸(664mg)を無色油状物として得た。3-シクロヘキシル-2-[(メタンスルホニルイミノメチルスルファニル-メチル)アミノ]-プロピオン酸に2(S)-アミノ-1-ベンズオキサゾール-2-イルブタン-1-オールを反応させてN-{1(RS)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]-3-シクロヘキシル-2(R)-[(メタンスルホニルイミノメチルスルファニルメチル)アミノ]プロピオンアミドを得た。
工程3
5mlのマイクロ波バイアル中のN-{1(RS)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]-3-シクロヘキシル-2(R)-[(メタンスルホニルイミノ-メチルスルファニルメチル)アミノ]プロピオンアミド(254mg、0.5ミリモル)とピロリジン(0.25M)の溶液をマイクロ波(オプチマイザー(Optimizer))で89℃で1時間加熱した。次に過剰の溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン 5:1で溶出)により精製してN-{1(RS)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]-3-シクロヘキシル-2(R)-[(メタンスルホニルイミノピロリジン-1-イルメチル)アミノ}プロピオンアミド(234mg)を白色の固体として得た。N-{1(RS)-(ベンズオキサゾール-2-イルヒドロキシメチル)プロピル]-3-シクロヘキシル-2(R)-[(メタンスルホニルイミノピロリジン-1-イルメチル)アミノ}プロピオンアミドを、上記実施例1の工程3に記載のように標題化合物に変換した。
【0121】
本発明の化合物のいくつかの分析データは以下の通りである:
【0122】
【表1】

【0123】
生物学的測定法
実施例1
カテプシンBアッセイ
種々の濃度の試験化合物の溶液を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、次にアッセイ緩衝液(40μl、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、50mM(pH6);モノラウリン酸ポリエチレンソルビタン、0.05%;およびジチオスレイトール(DTT)、2.5mMを含む)に希釈した。ヒトカテプシンB(25μlのアッセイ緩衝液中0.025ピコモル)を希釈物に加えた。アッセイ溶液を5〜10分間シェーカープレート上で混合し、カバーし、室温で30分間インキュベートした。アッセイ溶液にZ-FR-AMC(25μlのアッセイ緩衝液中20ナノモル)を加え、加水分解を分光学的(λ 460nm)に5分間追跡した。標準的数学モデルを使用して酵素進行曲線から見かけの阻害定数(Ki)を計算した。
【0124】
本発明の化合物を上記アッセイにより試験し、カテプシンB阻害活性を示すことが観察された。
実施例2
カテプシンKアッセイ
種々の濃度の試験化合物の溶液を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、次にアッセイ緩衝液(40μl、MES、50mM(pH5.5);EDTA 2.5mM;およびDTT、2.5mMを含む)に希釈した。ヒトカテプシンK(25μlのアッセイ緩衝液中0.0906ピコモル)を希釈物に加えた。アッセイ溶液を5〜10分間シェーカープレート上で混合し、カバーし、室温で30分間インキュベートした。アッセイ溶液にZ-Phe-Arg-AMC(25μlのアッセイ緩衝液中4ナノモル)を加え、加水分解を分光学的(λ 460nm)に5分間追跡した。標準的数学モデルを使用して酵素進行曲線から見かけの阻害定数(Ki)を計算した。
【0125】
本発明の化合物を上記アッセイにより試験し、カテプシンK阻害活性を示すことが観察された。
実施例3
カテプシンLアッセイ
種々の濃度の試験化合物の溶液を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、次にアッセイ緩衝液(40μl、MES、50mM(pH5.5);EDTA 2.5mM;およびDTT、2.5mMを含む)に希釈した。ヒトカテプシンL(25μlのアッセイ緩衝液中0.05ピコモル)を希釈物に加えた。アッセイ溶液を5〜10分間シェーカープレート上で混合し、カバーし、室温で30分間インキュベートした。アッセイ溶液にZ-Phe-Arg-AMC(25μlのアッセイ緩衝液中1ナノモル)を加え、加水分解を分光学的(λ 460nm)に5分間追跡した。標準的数学モデルを使用して酵素進行曲線から見かけの阻害定数(Ki)を計算した。
【0126】
本発明の化合物を上記アッセイにより試験し、カテプシンL阻害活性を示すことが観察された。
実施例4
カテプシンSアッセイ
種々の濃度の試験化合物の溶液を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、次にアッセイ緩衝液(40μl、MES、50mM(pH6.5);EDTA 2.5mM;およびNaCl、100mM);β−メルカプトエタノール、2.5mM;およびBSA、0.00%を含む)に希釈した。ヒトカテプシンS(25μlのアッセイ緩衝液中0.05ピコモル)を希釈物に加えた。アッセイ溶液を5〜10分間シェーカープレート上で混合し、カバーし、室温で30分間インキュベートした。アッセイ溶液にZ-Val-Val-Arg-AMC(10% DMSOを含有する25μlのアッセイ緩衝液中4ナノモル)を加え、加水分解を分光学的(λ 460nm)に5分間追跡した。標準的数学モデルを使用して酵素進行曲線から見かけの阻害定数(Ki)を計算した。
【0127】
本発明の化合物を上記アッセイにより試験し、カテプシンS阻害活性を示すことが観察された。
実施例5
カテプシンFアッセイ
種々の濃度の試験化合物の溶液を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、次にアッセイ緩衝液(40μl、MES、50mM(pH6.5);EDTA 2.5mM;およびNaCl、100mM;DTT、2.5mM;およびBSA、0.01%を含む)に希釈した。ヒトカテプシンF(25μlのアッセイ緩衝液中0.1ピコモル)を希釈物に加えた。アッセイ溶液を5〜10分間シェーカープレート上で混合し、カバーし、室温で30分間インキュベートした。アッセイ溶液にZ-Phe-Arg-AMC(10% DMSOを含有する25μlのアッセイ緩衝液中2ナノモル)を加え、加水分解を分光学的(λ 460nm)に5分間追跡した。標準的数学モデルを使用して酵素進行曲線から見かけの阻害定数(Ki)を計算した。
【0128】
本発明の化合物を上記アッセイにより試験し、カテプシンF阻害活性を示すことが観察された。
実施例6
インビトロLip10蓄積アッセイ
正常な抗原提示中に、Lip10はタンパク質分解されてペプチド断片の充填と抗原提示細胞の表面上への以後のMHC-II提示を可能にする。切断過程はカテプシンSにより仲介される。すなわちLip10アッセイはカテプシンSをブロックする化合物の能力のインビトロの尺度である。低濃度のLip10蓄積を引き起こす化合物は、抗原の提示をブロックすると予測される。
方法:
ラージ(Raji)細胞(4x106)を、10%(v/v) FBS、10mM ヘペス、2mM L-グルタミン、および1mM ピルビン酸ナトリウムを含有するRPMI1640培地中の0.02%DMSOまたは異なる濃度のカテプシンSインヒビターとともに、37℃で5%CO2加湿雰囲気下で培養した。培養期間後、細胞を冷PBSで洗浄し、次に細胞をNP-40溶解緩衝液(5mM EDTA、1% NP-40、150mM NaCl、および50mM トリス、pH7.6)中でプロテアーゼインヒビターで溶解した。タンパク質測定を行い、溶解物試料を還元SDS試料緩衝液中で沸騰させた。タンパク質を電気泳動により12% NuPAGE(登録商標)ビス−トリスゲル(Bis-Tris gels)で分離した。次にタンパク質をニトロセルロース膜に移し、ブロッキング緩衝液(PBS-ツイーン中の5%脱脂乾燥ミルク)でインキュベートし、ブロットをヒトCD74不変鎖合成ペプチド(1.5〜2μg/mlのマウス抗CD74モノクローナル抗体、PIN.1、ストレスゲンバイオテクノロジーズ(Stressgen Biotechnologies))に対する一次抗体とインキュベートした。次にブロットを1:10,000希釈の2次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗マウスIgG)とともにインキュベートした。免疫反応性タンパク質を、ピアススーパーシグナル(登録商標)ウェストピコ(Pierce Super Signal West Pico)化学発光基質を使用して検出した。
医薬組成物例
以下は、本発明の化合物を含有する代表的薬剤調製物である。
【0129】
錠剤調製物
以下の成分を充分に混合し、一本線刻み目入り錠剤に圧縮する。
【0130】
成分 錠剤当たりの量、mg
本発明の化合物 400
コーンスターチ 50
クロスカルメロースナトリウム 25
乳糖 120
ステアリン酸マグネシウム 5
カプセル剤調製物
以下の成分を充分に混合し、ハードシェルゼラチンに充填する。
【0131】
成分 カプセル当たりの量、mg
本発明の化合物 200
乳糖、噴霧乾燥 148
ステアリン酸マグネシウム 2
懸濁剤調製物
以下の成分を充分に混合し、経口投与用懸濁液を作成する。
【0132】
成分 量
本発明の化合物 1.0g
フマル酸 0.5g
塩化ナトリウム 2.0g
メチルパラベン 0.15g
プロピルパラベン 0.05g
グラニュー糖 25.5g
ソルビトール(70%溶液) 12.85g
ベーグム(Veegum)K(バンデビルト社(Vandebilt Co.)
1.0g
香味剤 0.035ml
着色剤 0.5mg
蒸留水 100mlにする
注射剤調製物
以下の成分を充分に混合し、注射剤調製物を作成する。
【0133】
成分 量
本発明の化合物 1.2g
酢酸ナトリウム緩衝液 0.4M 2.0ml
HCl(1N)またはNaOH(1N) 適当なpHにする
水(蒸留水、無菌) 20mlにする
水以外の上記成分のすべてを合わせ、攪拌しながら60〜70℃に加熱する。60℃の充分量水を激しく攪拌しながら加えて成分を乳化させ、次に水を加えて100gにする。
【0134】
坐剤調製物
本発明の化合物をワイテプソル(Witepsol)(登録商標)H-15(飽和植物脂肪酸のトリグリセリド;リッチェス−ネルソン社(Riches-Nelson, Inc.)、ニューヨーク)と混合して総重量2.5gの坐剤を調製し、これは以下の組成物を有する:
本発明の化合物 500mg
ワイテプソル(Witepsol)(登録商標)H-15 残り
明快さと理解を目的として前記本発明を例示と実施例によりある程度詳細に記載した。添付の請求の範囲内で変更と修飾が可能であることは当業者に明らかであろう。すなわち上記説明は例示のためであって、決して限定のためではないことを理解されたい。本発明の範囲は上記説明によって限定されるものではなく、以下の請求の範囲およびかかる請求の範囲の同等物の全範囲により決定される。本出願で引用されるすべての特許、特許出願(米国特許出願第60/532,234号を含む)および刊行物は、各個別の特許、特許出願または刊行物があたかも個別に記載されているように、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
R1は、ベンズオキサゾール-2-イル、オキサゾロ-[4,5-b]-ピリジン-2-イル、2-エチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イル、2-フェニル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イル、3-フェニル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3−チエン-3-イル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3-ピリジン-3-イル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、3−エチル-[1,2,4]-オキサジアゾール-5-イル、5-エチル-[1,2,4]-オキサジアゾール-3-イル、または2-メトキシメチル-[1,3,4]-オキサジアゾール-5-イルであり;
R2は、エチルまたはn-プロピルであり;
R3は、シクロヘキシルメチル、1−メチルシクロヘキシルメチル、シクロペンチルメチル、1−メチルシクロペンチルメチル、シクロプロピルメチルスルフィニルメチル、シクロプロピルメチルスルホニルメチル、2-フェニルスルファニルエチル、2-フェニルスルホニルエチル、ピリジン-2-イルメチルスルホニルメチル、ベンジルスルフィニルメチル、ベンジルスルホニルメチル、2-(ジフルオロメトキシ)-ベンジルスルホニルメチル、または2-クロロベンジルであり;
R4は、メチル、フェニル、4−フルオロフェニル、イソプロピルアミン、シクロペンチルアミン、テトラヒドロピラン-4-イル、モルホリン-4-イル、またはピリジン-1-イルであり;
R5は、メチルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエチル、エトキシカルボニル、またはピリジン-3-イルスルホニルであり;または
R4とR5は、これらが結合している原子とともに、1,1-ジオキソベンゾ[d]イソチアゾール-3-イル、または1,1-ジオキソ-1,4-ジヒドロ-λ6-ベンゾ[1,2,4]チアジアジン-3-イルを形成する)の化合物;または
その薬剤学的に許容される塩。
【請求項2】
以下:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

よりなる群から選択される化合物、または
その薬剤学的に許容される塩。
【請求項3】
次式の化合物:
【化7】

【請求項4】
請求項1〜3の化合物を1つ以上の適当な賦形剤との混合物として含む医薬組成物。
【請求項5】
システインプロテアーゼが介在する動物の疾患の治療法であって、動物に治療的有効量の請求項1〜3のいずれかの化合物を投与することを含む方法。
【請求項6】
治療が患者に免疫応答を引き起こす治療を受けている患者の治療法であって、患者に請求項1〜3のいずれかの化合物を投与することを含む方法。
【請求項7】
治療は生物製剤による治療を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
生物製剤はタンパク質である、請求項7の方法。
【請求項9】
生物製剤は抗体である、請求項7の方法。
【請求項10】
生物製剤は、レミカード(Remicade)(登録商標)、レファクト(Refacto)(登録商標)、レフェロン-A(Referon-A)(登録商標)、第VIII因子、第VII因子、ベタセロン(Betaseron)(登録商標)、エポゲン(Epogen)(登録商標)、エンブレル(Embrel)(登録商標)、インターフェロンベータ、ボトックス(Botox)(登録商標)、ファブラザイム(Fabrazyme)(登録商標)、エルスパー(Elspar)(登録商標)、セレザイム(Cerezyme)(登録商標)、ミオブロック(Myobloc)(登録商標)、アルヅラザイム(Aldurazyme)(登録商標)、ベルルマ(Verluma)(登録商標)、インターフェロンアルファ、フミラ(Humira)(登録商標)、アラネスプ(Aranesp)(登録商標)、ゼバリン(Zevalin)(登録商標)、またはOKT3である、請求項9の方法。
【請求項11】
動物への生物製剤の投与により引き起こされる動物の免疫応答を治療する方法であって、かかる治療の必要な動物に治療的有効量の請求項1〜3のいずれかの化合物を投与することを含む方法。
【請求項12】
臨床治験に参加している個体に請求項1〜3のいずれかの化合物を生物製剤とともに投与することを含む、生物製剤の臨床治験を実施する方法。
【請求項13】
ヒトの生物製剤により引き起こされる免疫応答を治療するために、生物製剤を用いる治療を受けているヒトを請求項1〜3のいずれかの化合物とともに生物製剤を用いて予防的に治療する方法。
【請求項14】
生物製剤により引き起こされる免疫応答による動物の生物製剤の効力の消失を測定する方法であって、請求項1〜3のいずれかの化合物の存在下および非存在下で動物に生物製剤を投与することを含む方法。
【請求項15】
動物の生物製剤の効力を改良する方法であって、請求項1〜3のいずれかの化合物とともに動物に生物製剤を投与することを含む方法。
【請求項16】
システインプロテアーゼはカテプシンSである、請求項5の方法。
【請求項17】
疾患は乾癬またはグレーブス眼球突出症である、請求項16の方法。
【請求項18】
生物製剤により引き起こされる免疫応答を請求項1〜3のいずれかの化合物が治療する、生物製剤との併用療法のための薬剤の製造のための、請求項1〜3のいずれかの化合物の使用。

【公表番号】特表2007−516295(P2007−516295A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547413(P2006−547413)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043451
【国際公開番号】WO2005/063742
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500502495)アクシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】AXYS PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】