説明

シナトリンC3およびC1を得る方法

本発明は、式(III)の化合物を水酸化することを含んでなる、シナトリンCおよびCならびにそれらの誘導体を得る方法に関する。また、本発明は、前記合成の中間体、ならびにシナトリンCおよびCならびにそれらの誘導体を得るためのそれらの使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シナトリンCおよびCの合成法ならびにその合成法の中間体に関する。本発明は、また、前記中間体のシナトリンCおよびCの合成における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シナトリンC((3S,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ジカルボキシテトラヒドロ−2−フラノン)およびC((3S,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ドデシル−4,5−ジカルボキシテトラヒドロ−2−フラノン)は、シナトリン類に属する。
【化1】

【0003】
これらは、インドのゴムの木(Ficus elastica)の生葉から単離された真菌Circinotrichum falcatisporum Pirozynsky(RF−641)から、1992年に単離された。シナトリンCおよびCの構造の解明は、1992年にイタザキ博士のグループによりおこなわれた[Itazaki,H.;Nagashima,K.;Kawamura,Y.;Matsumoto,K.;Nakai,H.;Terui,Y.J.Antibiot.1992,45,38−49.]。また、イタザキ博士のグループは、真菌から抽出した天然化合物からシナトリンCおよびCのジメチルエステルを合成した。しかしながら、これらの著者によりおこなわれた絶対配置の付与は誤っており、シナトリンC3のジメチル化誘導体の場合には、以下の配置が提案された。
【化2】

【0004】
前記配置は、1997年に、Evans教授のグループにより検討され、訂正され[Evans,D.A.;Trotter,B.W.;Barrow,J.C.Tetrahedron 1997,53,8779−8794.]、上で示したイタザキ博士により提案された鏡像異性体配置に相当することが示された。
【0005】
シナトリンCおよびCは、ホスホリパーゼA(PLA)酵素の作用を阻害し、したがって、抗炎症活性を有している(Farooqui,A.A.;Litski,M.L.;Farooqui,T.;Horrocks,L.Brain Res. Bull.1999,49,139−153;Pinon,P.;Kaski,J.C.Rev. Esp.Cardiol.2006,59,247−258)。
【0006】
シナトリンCおよびCのエナンチオ選択的合成法が二つ、これまで文献に報告されている。Evans,D.A.;Trotter,B.W.;Barrow,J.C.Tetrahedron 1997,53,8779−8794は、これらの化合物の最初の合成を報告している。前記合成の主要な工程は、(R,R)−酒石酸ジ−t−ブチルエステル、およびミリスチン酸ベンジルエステルから調製されたアキラルα−ケトエステルから生成された酒石酸エステル由来シリルケテンアセタールの立体選択的チタン介在アルドール反応からなる。この合成は、収束的であり、5つの工程を含んでなり、総収率がシナトリンCについては24%、シナトリンCについては31%である。しかしながら、使用される材料は高価であり、種々の種類の保護基を使用する。
【0007】
Cuzzupe,A.N.;Di Florio,R.;White,J.M.;Rizzacasa,M.A.Org.Biomol.Chem.2003,1,3572−3577は、シナトリンCおよびCについてこれまでに報告された第二の合成法を記載している。その主要な工程は、エステルの存在下でのα−ヒドロキシケトンへ有機金属試薬をキレート化制御付加することにより、シナトリンCのC4第四級立体中心を生成することを含んでなる。水酸化ナトリウムによるシナトリンCのジメチルエステルの加水分解から、シナトリンCとシナトリンCとの1:1混合物が得られる。この合成は直線的であり、18工程含み、総収率が0.95%である。
【0008】
また、EP0405864A2、US5,120,647およびUS5,099,034も、Circinotricum falcatisporum RF−641の培養物から単離してシナトリン類を得ること、続いてそれを水酸化ナトリウムで加水分解してセコ酸が得られ、ジアゾメタンとの反応によりシナトリン類をエステル化するとそれらのジメチルエステルが得られることを記載している。
【0009】
したがって、効率、収率およびコストの面でシナトリンCおよびCの改善された合成を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明による合成法によれば、減らされた工程数および高収率で、シナトリンCおよびCを含む式(Ia)および式(Ib)の化合物を得ることができることが今般見出された。前記方法は、式(II)、式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の新規化合物を使用することにより可能となった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第一の態様は、式(III)の化合物からの、式(II)の化合物、すなわちシナトリンCおよびCを含む式(Ia)および式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物の合成における中間体である化合物の合成法に関する。
【0012】
さらなる態様は、式(III)の化合物、すなわち式(Ia)および式(Ib)の化合物、それらの立体異性体もまたはそれらの混合物の合成の中間体、ならびにそれらを得る方法に関する。
【0013】
本発明の他の態様は、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の化合物、すなわち式(Ia)および式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物の合成における中間体に関する。
【0014】
別のさらなる態様は、式(III)の化合物から、式(Ia)および式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物を得る方法に関する。
【0015】
別のさらなる態様は、式(III)の化合物から、式(Ia)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物を得る方法に関する。
【0016】
別のさらなる態様は、式(II)の化合物、ならびに当該化合物の式(Ia)または式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物の合成のための使用に関する。
【0017】
さらなる態様は、式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の少なくとも1種の化合物の、シナトリンCおよびC、それらの立体異性体、とりわけ鏡像異性体、またはそれらの混合物、ならびにシナトリンCおよびCの混合物またはそれらの立体異性体、とりわけ鏡像異性体の混合物を合成するための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は式(Ia)および式(Ib)の化合物を生成する順序の逆合成スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
シナトリンCおよびCの合成
第一の態様によれば、本発明により、式(II)の化合物、シナトリンCおよびCの直接前駆体、その立体異性体またはそれらの混合物を得る方法であって:
【化3】

[式中、
はC10〜C15アルキル基であり;そして
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]、
該方法は、
式(III)の化合物の二重結合を二水酸化することを含んでなることを特徴とする方法が提供される:
【化4】

(各炭素原子に隣接して記載されている数字は、炭素原子の番号を示す)
[式中、
、RおよびRは前記定義の通りであり;そして
は置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]。
【0020】
したがって、式(II)の化合物を得るための本発明による方法では、まず式(III)の化合物の炭素−炭素二重結合を二水酸化し、その後分子内環化して式(II)の化合物を得る。二水酸化の立体化学は、式(III)の化合物のC3におけるヒドロキシルにより方向づけられ、したがって、炭素((R)または(S))における立体化学に応じて、式(Ia)および式(Ib)の化合物の種々の立体異性体を得ることができる。換言すれば、立体選択的二水酸化および続いての環化は、単一の工程で得られる。いずれの場合においても、光延型反応により前記ヒドロキシルの配置を反転することができる(第三アルコール類の配置の反転の具体例については、Shi,Y.−J.;Hughes,D.L.;McNamara,J.M.Tetrahedron Lett. 2003,44,3609−3611;またはMukaiyama,T.;Shintou,T.;Fukumto,K.J.Am.Chem.Soc.2003,125,10538−10539を参照されたい)。別法として、式(III)の化合物がラセミ体である場合、ラセミ体の式(Ia)および(Ib)の化合物を得ることができ、それらをそのまま使用することもできるし、通常の方法で各鏡像異性体に分離することもできる。
【0021】
好ましい実施態様によれば、式(III)の化合物は、式(IIIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化5】

[式中、
、R、RおよびRは前記定義の通りである]
であり、そして得られた前記式(II)の化合物は、式(IIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化6】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
である。
【0022】
二水酸化反応は、Smith,M.B.;March,J.Marchの新有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry);John Wiley & Sons:ニューヨーク,2001.pp.:1048−1051に記載されているような、当業者に公知の条件下でおこなうことができる。好ましい実施態様によれば、二水酸化を、四酸化オスミウム/N−メチルモルホリン−N−オキシドまたは過マンガン酸カリウムの存在下でおこなう。
【0023】
図1から明らかなように、式(III)の化合物の調製は、2つの別の経路により実施することができる。したがって、好ましい実施態様によれば、式(III)の化合物は、
(a)式(V)の化合物
【化7】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
を、式(XII)の化合物
【化8】

[式中、
は前記定義の通りである]
の存在下で反応させること;または
(b)過酸化物または過ヨウ素酸ナトリウムにより、式(VI)の化合物
【化9】

[式中、
、R、RおよびRは前記定義の通りであり;そして
はC〜Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択されるものである]
を酸化することにより調製される。
【0024】
選択的工程a)によれば、安定化されたイリドである式(XII)の化合物は、式(V)の化合物と反応して、式(III)の化合物を生成する。前記安定化されたイリドは、公知の方法(Villa,M.J.;Warren,S.J.Chem.Soc.P.T 1 1994,12,1569−1572)により調製してもよく、市販品を購入することもできる。好ましい実施態様によれば、前記イリドは、[(メトキシカルボニル)メチレン]トリフェニルホスホランである。選択的工程b)では、ヒドロキシルを、例えば、過酸化物、好ましくは過酸化水素または過マンガン酸ナトリウムを用いて、当該技術分野において公知の条件に従って、式(III)の化合物のC3に導入する。前記導入は、以下の順序でおこなう:(i)セレン原子の酸化、(ii)立体特異的1,3−シグマトロピー転位、および(iii)ヒドロキシルの除去。例えば、Nishiyama,H.;Narimatsu,S.;Itoh,K.Tetrahedron Lett.1981,22,5289−5292;またはWerkhoven,T.M.;Nisper,R.;Lugtenburg,J.J.Eur.J.Org.Chem.1999,11,2909−2914を参照されたい。
【0025】
好ましい実施態様によれば、合成経路b)を受けて、式(VI)の化合物は、式(XIII)の化合物
【化10】

[式中、
、R、RおよびRは前記定義の通りである]
を、塩基および式(XIV)のホスホン酸エステル
【化11】

[式中、
は前記定義の通りである;そしてRはC〜Cアルキル基である]
の存在下で反応させること、
により調製される。
【0026】
好ましい実施態様によれば、前記塩基は、水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)からなる群から選択されるものであり、好ましくは水素化ナトリウムである。使用される式(XIV)のホスホン酸エステルは、好ましくは(ジメトキシホスホリル)酢酸メチルである。
【0027】
好ましい実施態様によれば、式(XIII)の化合物は、塩基の存在下で、式(VII)の化合物
【化12】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
を、式(XV)の化合物
【化13】

[式中、
は前記定義の通りであり;そして
XはClおよびBrから選択されるハロゲンである]
と反応させることにより調製される。
【0028】
好ましくは、前記塩基は、水素化ナトリウム、第二アミン、例えば、モルホリン、ジエチルアミン、N−フタリルイミド、またはアルカリ金属のビス(トリメチルシリル)アミド、例えば、リチウム(LiHMDS)、ナトリウム(NaHMDS)またはカリウム(KHMDS)からなる群から選択されるものであり、好ましくは水素化ナトリウムまたはモルホリンである。
【0029】
好ましくは、臭化フェニルセレニル(PhSeBr)を、式(XV)の化合物として使用する。
【0030】
前記反応は、当該技術分野において公知の方法により実施できる。例えば、式(VII)の化合物から生成されるソジウムエノラートの溶液に、式(XV)の化合物を添加することができる(Smith,M.B.;March,J.Marchの最新有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry);John Wiley&Sons:ニューヨーク,2001.pp.:548−556参照)。別法として、アミン、例えば、モルホリンおよび式(XV)の化合物を含んでなる溶液を調製した後、前記溶液に式(VII)の化合物を添加することができる(Boivin,S.;Outurquin,F.;Paulmier,C.Tetrahedron 1997,53,16767−16782参照)。好ましい実施態様によれば、使用される塩基は、カイラル第二アミンであり、式(XIII)の鏡像異性的に純粋または鏡像異性的に濃縮された化合物が生成される。したがって、公知のカイラル第二アミン、例えばブロリン、(例えば、Vignola,N.;List,B.J.Am.Chem.Soc.2004,126,450−451参照)により、式(XIII)の化合物の2種の鏡像異性体またはそれらの鏡像異性的に濃縮された混合物を得ることができ、したがって、式(VI)、式(III)および式(II)の化合物ならびに鏡像異性的に濃縮されたまたは鏡像異性的に純粋なシナトリンCおよびCを得ることができる。
【0031】
したがって、経路b)によれば、式(VI)の化合物は、
(i) 式(VII)の化合物を式(XV)の化合物と反応させて、式(XIII)の化合物を得ること;そして
(ii) 前記式(XIII)の化合物を、塩基の存在下で、式(XIV)のホスホン酸エステルと反応させること
を含んでなる合成経路に従って調製できる。
【0032】
再び経路a)において、一般式(III)の化合物を得るために、好ましい実施態様によれば、式(V)の化合物は、フッ化物イオンを生成することができる化合物を、式(XI)の化合物
【化14】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りであり;そして
はトリアルキルシリル基である]
と反応させることにより調製される。
【0033】
上記のとおり、式(XI)の化合物におけるエポキシド基は、位置選択的に開環して、式(V)の化合物を形成する。一般的な位置選択的開環法は、当該技術分野において公知であり、例えば、Pujol,B.;Sabatier,R.;Driguez,P.A.;Doutheau,A.Tetrahedron Lett.1992,33,1447−1450に記載されている。
【0034】
この開環は、フッ化物イオンを生成できる化合物を用いておこなう。好ましくは、フッ酸−ピリジン系、フッ酸水溶液または式NR・3HF(式中、Rは、独立して、水素およびC〜Cアルキルからなる群から選択されるものである)のフッ化三水素を使用し;より好ましくは、使用される化合物はトリエチルエミントリス−ヒドロフルオリド(EtN・3HF)である。
【0035】
式(V)の化合物の2種の鏡像異性体の各々は、式(XI)の化合物が非対称エポキシ化により調製されるとき、その好適な鏡像異性体の位置特異的開環により得ることができる。別法として、式(XI)の化合物がラセミ体である場合、式(V)の化合物はラセミ体として得ることもでき、それをそのままで使用することもでき、または一般的な方法によりその鏡像異性体の各々に分離することもできる。
【0036】
好ましい実施態様によれば、式(XI)の化合物は、エポキシ化剤を式(X)の化合物
【化15】

[式中、
、R、RおよびRは前記定義の通りである]
と反応させることにより得られる。
【0037】
この転換を実施できる条件が、例えば、a)Pujol,B.;Sabatier,R.;Driguez,P.A.;Doutheau,A.Tetrahedron Lett.1992,33,1447−1450;またはb)Lowinger,T.B.;Chu,J.;Spence,P.L.Tetrahedron Lett.1995,36,8383−8386に記載されているが、これらには限定されない。また、以下の文献に、これらの反応について一般的な説明がある:(a)Smith,M.B.;March,J.Marchの最新有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry);John Wiley & Sons:ニューヨーク,2001,pp.1051−1054;(b)Davis,F.A.;Sheppard,A.C.J.Org.Chem.1987,52,954−955;または(c)Dayan,S.;Bareket,Y.;Rozen,S.Tetrahedron 1999,55,3657−3664。好ましい実施態様によれば、前記エポキシ化剤は、m−CPBA、2−スルホニルオキサジリジンおよびHOF・CHCN複合体からなる群から選択され、より好ましくはm−CPBAである。
【0038】
上記したように、鏡像体過剰または鏡像異性的純粋な方法で式(XI)の化合物を得るために非対称的方法において式(X)の化合物のエポキシ化をおこなって、式(II)の化合物への経路を開くことができ、したがって鏡像体過剰あるいは鏡像異性的に純粋な方法で式(Ia)および式(Ib)の化合物への経路を開くこともできる。
【0039】
したがって、本発明は、Walkup,R.D.;Obeyesekere,N.U.J.Org.Chem.1988,53,920−923に記載のカイラル補助剤を使用することによるか、またはZhu,Y.;Tu,Y.;Yu,H.;Shi,Y.Tetrahedron Lett.1998,39,7819−7822に記載されているカイラル触媒を使用することによる、当該技術分野において記載されている方法などの、式(X)の化合物を非対称エポキシ化する方法も意図している。
【0040】
好ましい実施態様によれば、式(X)の化合物は、式(VII)の化合物
【化16】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
を、塩基の存在下、ハロゲン化トリアルキルシリルまたはトリアルキルシリルトリフレートと反応させることにより調製される。
【0041】
この転換を実施することができる条件の例は、例えば、Dalla,V.;Catteau,J.P.Tetrahedron 1999,55,6497−6510に記載されているが、これらには限定されない。この反応に使用できるトリアルキルシリル基およびそれらの導入に好適な試薬が当業者に知られている(例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Greene、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis);John Wiley & Sons:Hoboken,2007.pp.:189−196参照)。
【0042】
好ましい実施態様によれば、トリアルキルシリル基はトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルテキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリルからなる群から選択され、そして好ましいハロゲン化物は塩素およびヨウ素から選択される。
【0043】
トリアルキルシリル基は好ましくはt−ブチルジメチルシリルであり、そして好ましいトリアルキルシリルトリフレートはt−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネートである。
【0044】
式(VII)の化合物の反応により、C2−C3における二重結合の立体化学にしたがって、式(X)の化合物の2種の立体異性体が得られる((E)または(Z))。本発明の目的のためには、2種の立体異性体のどちらが形成されるかは重要ではない。上記したように、光延反応によりC3位置(例えば、式(III)または(V)の化合物における)におけるヒドロキシルの立体化学を反転させて、式(II)の化合物の鏡像異性体のいずれかを得ることができ、したがって、式(Ia)および式(Ib)の化合物の種々の立体異性体を得ることができるであろう。
【0045】
したがって、経路a)によれば、式(V)の化合物は、
(i)前記式(VII)の化合物を、塩基の存在下で、ハロゲン化トリアルキルシリルまたはトリアルキルシリルトリフレートと反応させて、式(X)の化合物を得ること;
(ii)前記式(X)の化合物をエポキシ化剤と反応させて、式(XI)の化合物を得ること;そして
(iii)前記式(XI)の化合物を、フッ化物イオンを生成することができる化合物と反応させること
を含んでなる合成経路に従って調製できる。
【0046】
以上から明らかなように、両方の経路a)およびb)において、共通の中間体は式(VII)の化合物である。好ましい実施態様によれば、式(VII)の化合物は、塩基の存在下、式(VIII)の化合物
【化17】

[式中、
およびRは前記定義の通りである]
と、式(IX)の蓚酸ジエステル
【化18】

[式中、
は前記定義の通りである]
とを反応させることにより調製される。
【0047】
好ましい実施態様によれば、前記塩基は無機塩基である。この転換を実施できる条件の例が、例えば、Dubowchik,G.M.;Padilla,L.;Edinger,K.;Firestone,R.A.J.Org.Chem.1996,61,4676−4684に記載されているが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、前記塩基は水素化ナトリウムである。
【0048】
上記したように、式(Ia)および式(Ib)の化合物は、式(III)の化合物を二水酸化した後、得られた式(II)の化合物を塩基の存在下で加水分解し、続いて酸性化することにより調製できる。したがって、本発明のさらなる態様は、式(Ia)および式(Ib)の化合物、それらの立体異性体もしくはそれらの混合物、または式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物もしくはそれらの立体異性体の混合物の調製方法であり、
(i) 式(III)の化合物の二重結合を二水酸化して、式(II)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物を得ること;
(ii) 前記式(II)の化合物を、アルカリ水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下で加水分解すること;そして
(iii) 前記反応媒体を酸性化することを含んでなり、
基およびR基は工程(ii)の塩基性条件下で不安定である、方法に関する。
【0049】
本明細書全体を通じて説明するように、式(II)の化合物の合成および、したがって、式(Ia)および(Ib)の化合物の合成も、鏡像異性的に純粋または鏡像異性的に濃縮した中間体によるキラルであることができる。
【0050】
したがって、本発明の好ましい実施態様は、式(IIIa)および式(IIa)の化合物またはそれらの鏡像異性体から、式(Ia’)および(Ib’)の化合物またはそれらの鏡像異性体
【化19】

[式中、
は前記定義の通りである]
を調製することを含んでなる。
【0051】
以上から明らかなように、式(II)の化合物の塩基性媒体における加水分解および続いての酸性化(工程(ii)および(iii))では、対応のカルボン酸を生じるRおよびRが一部分を構成するカルボキシエステル基を加水分解することを含む。したがって、前記した転換を実施するために、RおよびRが塩基性媒体において不安定である部分を形成するカルボキシエステルが必要である。以下の理論に拘束されるものではないが、式(Ia)および/または式(Ib)の化合物を調製する方法の工程(ii)には、三酸の形成、C4位置のカルボキシ酸基(スキーム2における経路A参照)で式(Ia)の化合物を生成するC2位置のヒドロキシルのラクトン化が含まれると思われる。さらに、工程(iii)で使用される酸性媒体は、使用される酸性媒体により提供されるトリエステルのC4位置のOH基の損失により生成する第三カルボカチオンを形成しなければならないと思われる(スキーム2における経路B参照)。続いてC2位置のカルボキシ酸基をC4位置における前記カルボカチオンで環化することにより、式(Ib)の化合物を生成する。
【化20】

【0052】
カルボン酸エステルの加水分解および式(II)の化合物における開環(工程(i))に好適な塩基は当業者に知られており、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化バリウムがある。
【0053】
いずれのプロトン酸も、閉環してシナトリンCおよびCを形成する(工程(ii))。使用される酸は、好ましくは塩酸である。
【0054】
この反応についての類似の条件が、Cuzzupe、A.N.;Di Florio,R.;White,J.M.;Rizzacasa,M.A.Org.Biomol.Chem.2003,1,3572−3577に記載されている。
【0055】
前記方法により、式(Ia)および式(Ib)の対応の化合物の混合物を得ることができ、これを、一般的な方法(例えば、クロマトグラフィーカラムまたは再結晶)により対応する実質的に純粋な化合物に分離できる。
【0056】
別法として、式(II)および式(III)の化合物から式(Ia)の化合物を、式(Ib)の化合物を形成する必要なく直接得ることができる。RおよびRが一部分を構成するカルボキシエステル基を、ラクトンの開環を生じない条件下、したがって、前記した三酸(スキーム2参照)(式(Ia)および式(Ib)の両方の化合物の形成源)を形成しない条件下でカルボキシ酸基に転換することにより達成できる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、式(Ia)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物
【化21】

[式中、
はC10〜C15アルキル基である]
を調製する方法であって、
(i) 前記で定義されている式(III)の化合物の二重結合を二水酸化して、式(II)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物
【化22】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
を得ること;そして
(ii) 非塩基性条件下で、式(II)の化合物のラクトン環のカルボキシエステル基を転換して、対応のカルボキシ酸基を得ること
を含んでなる方法が提供される。
【0057】
工程(ii)の転換をおこなうことができる条件は、一般的にRおよびRが一部分を構成するカルボキシエステル基を、ラクトンの開環を生じない条件下でカルボキシ酸基に転換できる条件である。非塩基性条件下で(例えば、水素化によるか、あるいは酸性媒体中)カルボキシ酸基に転換できるカルボキシエステル基は、当業者に知られている。例えば、p−メトキシベンジル、1−フェニル−エチルまたはトリチルが挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
好ましい実施態様によれば、RおよびRはベンジル基(−(CH)−フェニル)である。式(II)(式中、RおよびRはベンジルである)の化合物の水素化により、顕著な量の式(Ib)の化合物が得られることなく式(Ia)の化合物のみが得られる。同様な条件については、例えば、Evans,D.A.;Trotter,B.W.;Barrow,J.C.Tetrahedron 1997,53,8779−8794(その全体が本発明の明細書の一部とされる)における化合物20の化合物14への転換を参照されたい。別の好ましい実施態様によれば、酸性媒体においてRおよびR基を不安定にできる。反応媒体を酸性化することにより、前記RおよびR基を除去して、式(II)の化合物のラクトンを開環することなく対応のカルボキシ酸を形成し、したがって、顕著な量の式(Ib)の化合物の形成が観察されることなく式(Ia)の化合物が得られる。例えば、RおよびRがt−ブチルである場合には、酸性媒体中(例えば、トリフルオロ酢酸を用いて)、環が開環されることなく対応のカルボキシ酸を得ることができる。例えば、Evans,D.A.;Trotter,B.W.;Barrow,J.C.Tetrahedron 1997,53,8779−8794における化合物19の化合物13への転換を参照されたい。
【0059】
好ましい実施態様によれば、Rはn−ドデシルである。別の好ましい実施態様によれば、RはC〜Cアルキルであり、好ましくはメチルである。別の好ましい実施態様によれば、RはC〜Cアルキル、好ましくはメチルである。別の好ましい実施態様によれば、RはC〜Cアルキル、好ましくはメチルである。
【0060】
本発明による方法の中間体およびその使用
いままで説明したことから明らかなように、式(II)の化合物は、本発明の合成における中間体である。したがって、本発明のさらなる態様は、式(II)の化合物、その立体異性体、とりわけ鏡像異性体またはそれらの混合物
【化23】

[式中、
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]に関するが、但し、前記式(II)の化合物は下記を表さない:
【化24】

【0061】
上で定義されている式(II)の化合物の、式(Ia)または式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物、ならびに式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物またはそれらの立体異性体の混合物を合成するための使用も、本発明の一態様である。
【0062】
本発明の他の態様は、式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の化合物、本発明の合成における中間体、それらの立体異性体またはそれらの混合物に関する。
【0063】
好ましい実施態様によれば、式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の化合物におけるRは、n−ドデシルである。別の好ましい実施態様によれば、Rは、メチルである。別の好ましい実施態様によれば、Rは、メチルである。別の好ましい実施態様によれば、Rは、メチルである。
【0064】
式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の化合物の、式(Ia)または式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物、ならびに式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物またはそれらの立体異性体の混合物を合成するための使用も、本発明の一態様である。
【0065】
定義
本発明の理解を容易にするために、本発明に使用されるいくつかの用語および表現の意味を、以下に示す。
【0066】
「アルキル」は、炭素および水素原子からなり、未飽和を含まず、そして単結合により分子の他の部分に結合した直鎖または分岐鎖炭化水素鎖を有するラジカルを指す。アルキル基の炭素原子数は、各々の場合で特定される。例えば、「C〜Cアルキル」は、炭素原子が1個、2個、3個または4個であるアルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルを指す。例えば、「C10〜C15アルキル」と示されているとき、炭素原子数が10個、11個、12個、13個、14個または15個であるアルキル基、例えば、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシルまたはペンタデシルを指す。
【0067】
「ハロゲン化物」または「ハロゲン」は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味する。
【0068】
本明細書における「立体異性体」は、同じ結合配列により結合された同じ原子により形成されているが、互いに置き換えができない異なる三次元構造を有する化合物を指す。
【0069】
「鏡像異性体」は、立体異性体的に純粋な化合物の鏡像として理解される。本発明の目的には、鏡像異性体は、鏡像体過剰率が95%超、好ましくは98%超、さらに好ましくは99%超、さらに好ましくは99.5%超である2つの鏡像異性体の混合物として考えることができる。
【0070】
「Bn」は、ベンジル(−(CH)−フェニル)を意味する。
【0071】
「トリアルキルシリル」は、式−Si(R’)(R’’)R’’’(式中、R’、R’’およびR’’’の各々は、独立して、フェニル基およびC〜Cアルキル基から選択されるものである)のラジカルとして理解されている。トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル;ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルテキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリルがあるが、これらには限定されない。
【0072】
本明細書が本発明による化合物における置換された基に言及するときは、1つ、2つまたは3つの有効な位置が、独立的にシアノ;アルカノイル、例えば、C〜Cアルカノイル基、例えば、アシル等;カルボキサミド(−(C=O)NH);トリアルキルシリル;6個以上の炭素を有する炭素環式アリール、特にフェニルまたはナフチルおよび(C〜C)アルキルアリール、例えば、トリル、からなる群から選択される1つ、2つ、3つの好適な基で置換されることができる特定の部分を指す。「置換されたアルキル」としては、例えば、シアノエチル、アセチルメチル、カルボキサミドメチル(−CHCONH)、2−トリメチルシリルエチル、ベンジル、ジフェニルメチルなどがあげられるが、これらには限定されない。
【0073】
「アリール」は、C〜C14芳香族炭化水素ラジカル、例えば、フェニル、ナフチルまたはアントラシルを指す。
【0074】
特に断らない限り、本発明の化合物は、1つ以上の同位体濃縮された原子が存在することだけが異なる化合物を含むものも指す。例えば、水素がデューテリウムまたはトリチウムで置換されているか、または炭素が13Cまたは14C濃縮炭素で置換されていることを除いて、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内のものである。
【0075】
以下、実施例により本発明の種々の実施態様を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0076】
一般的方法および材料
各場合について特記した以外は、全ての反応をアルゴン雰囲気下でおこなった。使用する溶媒は、アルゴン雰囲気下で蒸留且つ乾燥した。試薬および溶媒は、Aldrich社、Fluka社、Merck社、Sigma社、Acros社、Lancaster社、SDS社またはScharlau社から入手し、必要に応じて通常の方法で精製した。反応生成物は、固定相として60Merckシリカゲル(粒度:230〜400メッシュ)を用いて、加圧下でカラムクロマトグラフィー(フラッシュクロマトグラフィー)により精製した。
【0077】
(完全デカップリング)Hおよび13C核磁気共鳴スペクトルを、以下の装置を用いて、各場合において示した溶媒(CDClおよびCDOD)中、室温でおこなった:Varian Gemini−200(200MHz),Varian INOVA−300(300MHz),Bruker Avance−300(300MHz)およびVarian INOVA−400(400MHz)。化学シフトの値を、内部標準として溶媒の残留信号を用いて百万分の一(δ,ppm)で示す:CDCl,7.26ppm(H−NMR)および77.0ppm(13C−NMR);CDOD,3.31ppm(H−NMR)および49.0ppm(13C−NMR)。H−NMRスペクトルは、プロトン数および各信号の見掛け多重度で示す。結合定数(J)は、見掛け結合定数であり、単位Hzで表す。以下の略号を用いた:s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、c(四重項)、q(五重項)およびm(多重項)。
【0078】
融点(m.p.)は、ReichertブランドKofler顕微鏡で測定した。赤外線(IR)スペクトルは、Perkin−Elmer分光光度計(モデル681およびFT−IRスペクトル分光光度計)で記録した。低解像度質量スペクトル(LRMS)を、(1)電子衝撃(EI)イオン化法を用いて、Hewlett Packard 5973 MSD分光光度計に試料を直接注入することによるか、または(2)エレクトロスプレー化学イオン化法(API−ES)をポジティブまたはネガティブモードで用いて、Hewlett Packard LCMS 1100 MSD分光光度計(HPLC結合四重極解析器)で記録した。元素分析(E.A.)を、Perkin−Elmer 240CおよびHeraus CHN−O−Rapid分析器を用いておこなった。
【0079】
特に断らない限り、実施例に示す全ての生成物はラセミ化合物(rac)である。
【0080】
実施例1:rac−(S)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチルの調製
【化25】

【0081】
MeOH(0.5ml)を、THF(19.5ml)にNaH(1.08g、45.3mmol)を添加して調製した懸濁液に、0℃で添加した。得られた混合物が室温に到達するまで、混合物を攪拌した。次に、ミリスチン酸メチル(10g、41.2mmol)および蓚酸ジメチル(4.87g、41.2mmol)を添加した。得られた混合物を、3時間、加熱還流した。その後、HO(19ml)を0℃で添加し、そして混合物を10%HCl水溶液で中和した。相分離し、そして水相をAcOEt(3×10ml)で抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、20:1)により精製して、rac−(S)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(8.61g、収率64%)を透明油状物として得た。
【0082】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ4.01(1H,t,J=6.9Hz,H−3),3.88(3H,s,−OCH),3.71(3H,s,−OCH),1.88(2H,m,H−4),1.24(20H,m,−CH−),0.86(3H,m,−CH
【0083】
実施例2:2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(メトキシカルボニル)−2−ペンタデセン酸メチルの調製
【化26】

【0084】
TBDMSOTf(1.84g、6.96mmol)を、CHCl(48ml)にrac−(S)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(1.90g、5.80mmol)およびEtN(1.17g、11.6mmol)を添加して調製した溶液に、0℃で添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した。生成物を、クロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、12:1)により精製して、2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(メトキシカルボニル)−2−ペンタデセン酸メチル(2.09g、収率82%)を透明油状物として得た。
【0085】
IR(NaCl):ν3388,2943,2927,2854,1738,1716,1627,1432,1310,1204,1129,1097,840,811,784cm−1
H−NMR(300MHz,CDCl):δ3.79(3H,s,−OCH),3.71(3H,s,−OCH),2.29(2H,m,−CH−),1.32(20H,m,−CH−),0.94(9H,s,t−BuSi),0.87(3H,m,−CH),0.17(6H,s,(CHSi)
13C−NMR(75MHz,CDCl):δ182.3,168.6,165.8,118.2,52.2,51.7,31.9,29.6,29.5,29.4,29.3,28.2,26.0,25.4,22.6,18.3,14.1,−4.6
LRMS(EI):m/z442(M,0),441(M−1,1),427(3),411(3),385(100)
元素分析(C2446Si):実測値:C,65.00,H,10.50;計算値:C,65.11,H,10.47
【0086】
実施例3:rac−(2R,3R)−2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,3−エポキシ−3−(メトキシカルボニル)−ペンタデカン酸メチルの調製
【化27】

【0087】
m−CPBA(7.77g、45.0mmol)を、CHCl(129ml)に2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−(メトキシカルボニル)−2−ペンタデセン酸メチル(9.96g、22.5mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で5日間攪拌した。その後、セライトを添加し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、10:1)により精製して、rac−(2R,3R)−2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,3−エポキシ−3−(メトキシカルボニル)−ペンタデカン酸メチル(9.96g、収率96%)を透明油状物として得た。
【0088】
IR(NaCl):ν3389,2952,2928,2856,1758,1462,1440,1401,1362,1307,1255,1199,1165,1100,1004,843,785cm−1
H−NMR(300MHz,CDCl):δ3.76(3H,s,−OCH),3.75(3H,s,−CH),2.07(1H,m,H−4),1.78(1H,m,H−4),1.46(2H,m,H−5),1.24(18H,sブロード,−CH−),0.91(9H,s,t−BuSi),0.87(3H,m,−CH),0.20(3H,s,(CHSi),0.15(3H,s,(CHSi)
13C−NMR(75MHz,CDCl):δ168.1,166.4,82.0,68.0,52.8,52.4,31.8,29.5,29.5,29.4,29.3,29.3,28.1,25.3,24.4,22.6,17.9,14.0,−4.0,−4.6
LRMS(EI):m/z458(M,0),443(2),427(0),401(66),399(9),341(10),313(3),281(2),233(100)
元素分析(C2446Si):実測値:C,63.00,H,10.00;計算値:C,62.84,H,10.11
【0089】
実施例4:rac−(R)−3−ヒドロキシ−3−(メトキシカルボニル)−2-オキソペンタデカン酸メチルの調製
【化28】

【0090】
EtN・(HF)(0.95g、5.90mmol)を、MeOH(180ml)にrac−(2R,3R)−2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,3−エポキシ−3−(メトキシカルボニル)ペンタデカン酸メチル(9.01g、19.66mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で2.5時間攪拌した。その後、AcOEtを添加し、そして混合物をHO(2×3ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。得られた生成物であるrac−(R)−3−ヒドロキシ−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチルを、精製することなく次の工程に使用した。
【0091】
IR(NaCl):ν3473,2955,2925,2854,1740,1438,1259,1138,1074cm−1
H−NMR(300MHz,CDCl):δ3.87(3H,s,−OCH),3.84(3H,s,−OCH),1.95(2H,m,H−4),1.24(20H,sブロード,−CH−),0.87(3H,t,J=6.5Hz,−CH
13C−NMR(75MHz,CDCl):δ188.5,170.7,162.0,80.5,53.6,53.0,33.9,31.8,29.5,29.5,29.5,29.4,29.2,22.6,22.4,14.0
LRMS(EI):m/z345(M+1,0),313(1),286(0),257(14),225(0),197(100)
【0092】
実施例5:rac−(2Z,4R)−4−ヒドロキシ−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−2−ヘキサデセン酸メチルの調製
【化29】

【0093】
[(メトキシカルボニル)メチレン]トリフェニルホスホラン(16.43g、49.12mmol)を、CHCl(186ml)に前記で得られたrac−(R)−3−ヒドロキシ−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(6.77g、19.65mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で48時間攪拌した。その後、セライトを添加し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成物を、クロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、7:1)により精製して、rac−(2Z,4R)−4−ヒドロキシ−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−2−ヘキサデセン酸メチル(7.60g、収率97%)を無色油状物として得た。
【0094】
IR(NaCl):ν3494,2925,2854,1733,1646,1436,1349,1256,1199,1168,1019cm−1
H−NMR(300MHz,CDCl):δ6.26(1H,s,H−2),3.80(3H,s,−OCH),3.80(3H,s,−OCH),3.71(3H,s,−OCH),3.67(1H,s,−OH),1.91(2H,m,−CH−),2.43(2H,m,−CH−),1.22(18H,m,−CH−),0.85(3H,t,J=6.8Hz,−CH
13C−NMR(75MHz,CDCl:δ173.0,166.8,164.9,151.0,120.3,77.7,53.6,52.4,52.0,37.5,31.8,31.5,29.5,29.5,29.4,29.3,29.3,29.2,23.1,22.6,14.0
LRMS(EI):m/z401(M+1,3),383(1),369(8),341(28),309(100),249(18),197(18)
元素分析(C2136):実測値:C,63.00,H,9.00;計算値:C,62.98,H,9.06
【0095】
実施例6:[(メトキシカルボニル)メチレン]−トリフェニルホスホランの調製
【化30】

【0096】
ブロモ酢酸メチル(5.3g、34.6mmol、1当量)を、トルエン(20ml)にPPh(9.52g、36.3mmol、1.05当量)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。懸濁液を徐々に形成し、真空下で濾過し、そしてトルエン(3×10ml)で洗浄した。生成物である臭化[(メトキシカルボニル)メチル]トリフェニルホスホニウムを、精製することなく以下の工程に使用した。
【0097】
H−NMR(200MHz,CDCl):δ8.00−7.60(15H,m,Ar−H),5.62(1H,d,JP,H=15.5Hz,H−1),3.61(3H,s,−OCH
【0098】
1.15N NaOH(60ml)水溶液を、CHCl(90ml)に前記で得られた臭化[(メトキシカルボニル)メチル]トリフェニルホスホニウム(14.3g、34.6mmol、1当量)を添加して調製した溶液に室温で添加した。得られた混合物を、室温で、2時間激しく攪拌した。その後、相分離した。水相を、CHCl(3×10ml)で抽出した。有機相を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去して、[(メトキシカルボニル)メチレン]−トリフェニルホスホラン(10.5g、収率90%)を白色固体として得た。
【0099】
H−NMR(200MHz,CDCl):δ7.61(15H,m,Ar−H),5.62(1H,m,H−1),3.50(3H,s,−OCH
【0100】
実施例7:rac−(R)−3−(フェニルセレニル)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチルの調製
方法A
【化31】

【0101】
THF(17ml)にrac−(S)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(6g、18.26mmol)を添加して調製した溶液を、THF(34ml)にNaH(0.482g,20.09mmol)を添加して調製した懸濁液に添加した。得られた混合物を、Hがもはや発生しなくなるまで室温で攪拌した(10分間)。その後、混合物を0℃で冷却し、そしてTHF(17ml)にBrSePh(4.74g,20.09mmol)を添加して調製した溶液を添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。その後、HO(50ml)を添加した。相分離し、そして水相をAcOEt(3×30ml)で抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt,10:1)により精製することにより、rac−(R)−3−(フェニルセレニル)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(5.63g、収率65%)を褐色油状物として得た。
【0102】
方法B
【化32】

【0103】
モルホリン(0.221g、2.54mmol)を、CHCl(12ml)にBrSePh(0.300g、1.27mmol)を添加して調製した溶液に室温でゆっくりと添加した。得られた混合物を、室温で15分間攪拌した。次に、CHCl(2ml)にrac−(S)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(0.417g、1.27mmol)を添加して調製した溶液を添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。攪拌中、懸濁液に、固体が析出してきた。その後、固体をセライトにより真空濾過し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt,10:1)により精製して、rac−(R)−3−(フェニルセレニル)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(0.368g、収率60%)を褐色油状物として得た。
【0104】
IR(NaCl):ν3057,2925,2854,1736,1713,1577,1438,1299,1232,1129,1064,1020,999,743,692cm−1
H−NMR(200MHz,CDCl):δ7.36(5H,m,Ar−H),3.95(3H,s,−OCH),3.81(3H,s,−OCH),1.70(2H,m,−CH−),1.43−1.24(20H,m,−CH−),0.88(3H,m,−CH
13C−NMR(50MHz,CDCl):δ179.6,168.3,161.2,137.8,130.1,129.3,129.0,124.6,64.9,53.3,53.2,31.6,30.7,29.2,29.0,27.0,25.4,24.6,24.3,22.5,22.2,20.8,14.0
LRMS(EI):m/z484(M+1,96),426(3),397(100),365(60),337(50),269(14),235(12),157(55)
元素分析(C2436Se):実測値:C,59.70,H,7.30;計算値:C,59.62,H,7.50
【0105】
実施例8:rac−(R)−3−(フェニルセレニル)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチルと(ジメトキシホスホリル)酢酸メチルとの反応
【化33】

【0106】
THF(8ml)に(ジメトキシホスホリル)酢酸メチル(2.33g、12.8mmol)を添加して調製した溶液を、THF(91ml)にNaH(0.307g、12.8mmol)を添加して調製した懸濁液に添加した。得られた混合物を、Hがもはや発生しなくなるまで室温で攪拌した(10分間)。次に、THF(8ml)にrac−(R)−3−(フェニルセレニル)−3−(メトキシカルボニル)−2−オキソペンタデカン酸メチル(5.63g、11.64mmol)を添加して調製した溶液を添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、15:1)により精製して、rac−(E、R)−2−(フェニルセレニル)−3、4−ビス(メトキシカルボニル)−3−ヘキサデセン酸メチル(トランス、51%)および(Z)−3、4−ビス(メトキシカルボニル)−3−ヘキサデセン酸メチル(シス、21%)の5:2混合物(4.53g、収率72%)を褐色油状物として得た。
【0107】
IR(NaCl):ν2925,2854,1733,1632,1577,1458,1435,1313,1268,1199,1158,1125,1075,1001,742,693cm−1
H−NMR(200MHz,CDCl):δ7.39(5H,m,Ar−Hトランス),4.64(1H,s,H−2トランス),3.71(3H,s,−OCHシス),3.69(3H,s,−OCHトランス),3.68(3H,s,−OCHトランス),3.67(3H,s,−OCHトランス),3.65(3H,s,−OCHシス),3.61(3H,s,−OCHシス),3.33(2H,s,H−2シス),2.23(2H,m,H−5シス),1.83(2H,m,H−5トランス),1.13(20H,m,−CH−トランス,シス),1.17(20H,m,−CH−トランス,シス),0.79(3H,m,−CHトランス),0.76(3H,m,−CHシス)
13C−NMR(50MHz,CDCl):δ169.9,169.0,166.2,146.1,143.1,136.1,129.8,129.0,128.8,125.2,52.9,52.2,52.1,43.2,33.5,31.7,31.2,30.4,29.4,29.4,29.3,29.1,29.1,29.0,27.3,22.5,20.8,14.0,13.9
LRMS(EI):m/z540(M+1,6),508(33),383(12),351(100),291(8),197(25)
【0108】
実施例9:rac−(Z,R)−4−ヒドロキシ−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−2−ヘキサデセン酸メチルの調製
【化34】

【0109】
33%H(5.99ml)水溶液を、CHCl(70ml)にrac−(E,R)−2−(フェニルセレニル)−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−3−ヘキサデセン酸メチル(トランス)(4.53g、8.39mmol)およびピリジン(1.32g、16.79mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した。残留物をAcOEt(30ml)に溶解し、そしてHO(30ml)を添加した。相分離し、そして水相をAcOEt(3×10ml)で抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、10:1)により精製して、rac−(Z、R)−4−ヒドロキシ−3、4−ビス(メトキシカルボニル)−2−ヘキサデセン酸メチル(2.2g、収率65%)を無色油状物として得た。
【0110】
IR(NaCl):ν3494,2925,2854,1733,1646,1436,1349,1256,1199,1168,1019cm−1
H−NMR(300MHz,CDCl):δ6.26(1H,s,H−2),3.80(3H,s,−OCH),3.80(3H,s,−OCH),3.71(3H,s,−OCH),3.67(1H,s,−OH),1.91(2H,m,−CH−),2.43(2H,m,−CH−),1.22(18H,m,−CH−),0.85(3H,t,J=6.8Hz,−CH
13C−NMR(75MHz,CDCl):δ173.0,166.8,164.9,151.0,120.3,77.7,53.6,52.4,52.0,37.5,31.8,31.5,29.5,29.5,29.4,29.3,29.3,29.2,23.1,22.6,14.0
LRMS(EI):m/z401(M+1,3),383(1),369(8),341(28),309(100),249(18),197(18)
元素分析(C2136):実測値:C,63.00,H,9.00;計算値:C,62.98,H,9.06
【0111】
実施例10:rac−(3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ビス(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2−フラノン(IV)の調製
【化35】

【0112】
NMO(1.21g、9.99mmol)およびOsO(t−BuOH中2.5%、0.019g、0.075mmol)を、アセトン/HO5:1混合物(10.2ml)にrac−(Z,R)−4−ヒドロキシ−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−2−ヘキサデセン酸メチル(1g、2.50mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で2日間攪拌した。その後、10%Na(0.2ml)水溶液を添加した。混合物を、MeOHを用いてシリカゲルにより濾過し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をクロマトグラフィーカラム(ヘキサン/AcOEt、3:1)により精製することにより、rac−(3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ビス(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2−フラノン(IV)(0.670g、収率67%)を白色固体として得た。
【0113】
融点:74〜76℃
IR(KBr):ν3400,3339,2956,2918,2851,1785,1775,1714,1467,1445,1364,1307,1226,1155,1133,1061cm−1
H−NMR(200MHz,CDCl):δ5.21(1H,s,H−5),3.87(3H,s,−OCH),3.78(3H,s,−OCH),3.56(1H,sブロード,−OH),2.90(1H,sブロード,−OH),1.80(2H,m,H−6),1.21(20H,sブロード,−CH−),0.83(3H,m,−CH
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ6.74(1H,s,−OH),6.41(1H,s,−OH),5.50(1H,s,H−5),3.72(3H,s,−OCH),3.65(3H,s,−OCH),1.68(2H,m,H−6),1.39(2H,m,H−7),1.23(18H,sブロード,−CH−),0.84(3H,m,−CH
13C−NMR(50MHz,CDCl):δ173.9,170.6,166.4,81.0,78.5,54.0,52.7,31.7,29.6,29.5,29.4,29.2,29.2,22.5,21.5,13.9
LRMS(EI):m/z402(M,0),315(2),285(2),234(2),216(0),197(11),160(30),101(100)
元素分析(C2034):実測値:C,59.70,H,8.50;計算値:C,59.68,H,8.51
【0114】
実施例11:rac−(3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ビス(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2−フラノンとLiOH/HClとの反応
【化36】

【0115】
1N LiOH(0.104g、2.48mmol,2.5ml)水溶液を、THF(5ml)にrac−(3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ビス(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2−フラノン(IV)(0.050g、0.12mmol)を添加して調製した溶液に添加した。得られた混合物を、室温で2時間攪拌した。その後、相分離した。水相を、AcOEt(2×2ml)で洗浄し、10%HCl水溶液で処理(酸性pHとなるまで)し、そしてAcOEt(3×3ml)で抽出した。抽出物を、無水NaSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去して、rac−(3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−3−ドデシル−4,5−ジカルボキシテトラヒドロ−2−フラノン(シナトリンC)およびrac−(3S,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ドデシル−4,5−ジカルボキシテトラヒドロ−2−フラノン(シナトリンC)の1:1混合物(0.026g、収率56%)を白色固体として得た。
【0116】
H−NMR(300MHz,CDOD):δ5.39(1H,s,H−5,シナトリンC),4.70(1H,s,H−3シナトリンC),2.16(1H,m,H−6シナトリンC),1.82(2H,m,H−6シナトリンC),1.68(1H,m,H−6シナトリンC),1.50(1H,m,H−7シナトリンC),1.46(2H,m,H−7シナトリンC),1.36(1H,m,H−7シナトリンC),1.29(18H,sブロード,−CH−シナトリンC,シナトリンC),0.88(3H,m,−CHシナトリンC,シナトリンC
13C−NMR(75MHz,CDOD):シナトリンC:δ176.8,172.6,170.3,82.1,81.2,80.8,33.2,32.1,31.4,30.8,30.7,30.5,30.4,23.6,22.6,14.5;シナトリンC:d175.8,172.0,88.6,85.7,74.8,33.4,32.3,31.6,30.5,30.4,30.3,30.1,23.8,22.4,14.3
LRMS(EI):m/z374(M,0),355(1),331(1),297(3),267(3),249(3),207(5),197(93),57(100)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物を得る方法であって:
【化1】

[式中、
はC10〜C15アルキル基であり;そして
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]
該方法が、
式(III)の化合物
【化2】

[式中、
、RおよびRは前記で定義した通りであり;そして
は置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]
の二重結合を二水酸化することを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記式(III)の化合物が、式(IIIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化3】

[式中、R、R、RおよびRは請求項1で定義されている通りである]
であり、そして得られた前記式(II)の化合物が(IIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化4】

[式中、R、RおよびRは請求項1で定義されている通りである]
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二水酸化を、四酸化オスミウム/N−メチルモルホリン−N−オキシドまたは過マンガン酸カリウムの存在下でおこなう、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
式(III)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化5】

[式中、
、RおよびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;そして
はC10〜C15アルキル基から選択されるものである]。
【請求項5】
式(III)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物を合成する方法であって:
【化6】

[式中、
、RおよびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;そして
はC10〜C15アルキル基である]
該方法が、
(a)式(V)の化合物
【化7】

[式中、
、RおよびRは前記定義の通りである]
を、式(XII)の化合物
【化8】

[式中、
は前記定義の通りである]
の存在下で反応させること;または
(b)過酸化物または過ヨウ素酸ナトリウムにより、式(VI)の化合物
【化9】

[式中、
、R、RおよびRは前記で定義した通りであり;そして
はC〜Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択されるものである]
を酸化することを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記式(VI)化合物の調製が、
(i)塩基の存在下で、式(VII)の化合物
【化10】

[式中、
、RおよびRは請求項5で定義されている通りである]
を、式(XV)の化合物
【化11】

[式中、
は請求項5で定義されている通りであり;そして
XはClおよびBrから選択されるハロゲンである]
と反応させて、式(XIII)の化合物
【化12】

[式中、
、R、RおよびRは請求項5で定義されている通りである]
を得ること;そして
(ii)前記式(XIII)の化合物を、塩基の存在下で、式(XIV)のホスホン酸エステル
【化13】

[式中、
は請求項5で定義されている通りであり;そして
はC〜Cアルキル基である]
と反応させることにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(V)の化合物の調製が、
(i)式(VII)の化合物
【化14】

[式中、
、RおよびRは請求項5で定義されている通りである]
を、塩基の存在下で、ハロゲン化トリアルキルシリルまたはトリアルキルシリルトリフレートと反応させて、式(X)の化合物
【化15】

[式中、
、RおよびRは請求項5で定義されている通りであり;そして
はトリアルキルシリル基である]
を得ること;
(ii)前記式(X)の化合物をエポキシ化剤と反応させて、式(XI)の化合物
【化16】

[式中、
、RおよびRは請求項5で定義されている通りであり;そして
は前記定義の通りである]
を得ること;そして
(iii)前記式(XI)の化合物をフッ化物イオンを生成することができる化合物と反応させることにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記エポキシ化剤が、3−クロロ過安息香酸、2−スルホニルオキサジリジンおよびHOF・CHCN複合体からなる群から選択されるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エポキシ化が、非対称エポキシ化である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記式(VII)の化合物を、塩基の存在下で、式(VIII)の化合物
【化17】

[式中、RおよびRは請求項6で定義されている通りである]
と、式(IX)の蓚酸ジエステル
【化18】

[式中、Rは請求項6で定義されている通りである]
とを反応させることにより調製される、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
式(V)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化19】

[式中、
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;そして
はC10〜C15アルキル基から選択されるものである]。
【請求項12】
式(XI)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化20】

[式中、
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;そして
はトリアルキルシリル基である]。
【請求項13】
式(X)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化21】

[式中、
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;そして
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;そして
はトリアルキルシリル基である]。
【請求項14】
式(VI)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化22】

[式中、
、RおよびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;そして
はC〜Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択されるものである]。
【請求項15】
式(XIII)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化23】

[式中、
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;そして
はC〜Cアルキルおよびフェニルからなる群から選択されるものである]。
【請求項16】
式(VII)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物:
【化24】

[式中、
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
はC10〜C15アルキル基から選択されるものである]。
【請求項17】
およびRはメチルであり、そしてRはn−ドデシルである、請求項11〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
式(Ia)および/もしくは式(Ib)の化合物、それらの立体異性体もしくはそれらの混合物、または式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物もしくはそれらの立体異性体の混合物を調製する方法であって:
【化25】

[式中、
はC10〜C15アルキル基から選択されるものである]
該方法が、
(i)式(III)の化合物
【化26】

[式中、
は置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
は前記で定義した通りであり;そして
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]
の二重結合を二水酸化して、式(II)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物
【化27】

[式中、R、RおよびRは前記定義の通りである]
を得る工程;
(ii)前記式(II)の化合物を、アルカリ水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下で加水分解する工程;そして
(iii)前記反応媒体を酸性化する工程(ここで、R基およびR基は工程(ii)の塩基性条件下で不安定なものである)を含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項19】
式(Ia‘)および式(Ib’)の化合物またはそれらの鏡像異性体
【化28】

[式中、
は請求項18で定義されている通りである]
を調製する請求項18に記載の方法であって、
前記式(III)の化合物が式(IIIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化29】

[式中、R、R、RおよびRは請求項18で定義されている通りである]であり、
前記式(II)の化合物は式(IIa)の化合物またはその鏡像異性体
【化30】

[式中、R、RおよびRは請求項18で定義されている通りである]
である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式(Ia)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物を調製する方法であって:

【化31】

[式中、RはC10〜C15アルキル基である]
該方法が、
(i)式(III)の化合物
【化32】

[式中、
は置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものであり;
は前記で定義した通りであり;そして
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]
の二重結合を二水酸化して、式(II)の化合物、その立体異性体またはそれらの混合物
【化33】

[式中、
、RおよびRは前記で定義した通りである]
を得ること;そして
(ii)非塩基性条件下で、前記式(II)の化合物のラクトン環のカルボキシエステル基を転換して、対応するカルボン酸基を得ることを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項21】
式(II)の化合物、その立体異性体、とりわけ鏡像異性体またはそれらの混合物:
【化34】

[式中、
はC10〜C15アルキル基から選択されるものであり;
およびRは、独立して、置換または未置換C〜C20アルキル基から選択されるものである]
(但し、前記式(II)の化合物は下記を表さない)。
【化35】

【請求項22】
請求項21で定義されている式(II)の化合物の、式(Ia)および/もしくは式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物、ならびに式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物またはそれらの立体異性体の混合物を合成するための使用。
【請求項23】
前記請求項で定義されている式(III)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(X)、式(XI)および式(XIII)の少なくとも1種の化合物の、式(Ia)および/もしくは式(Ib)の化合物、それらの立体異性体またはそれらの混合物、ならびに式(Ia)および式(Ib)の化合物の混合物またはそれらの立体異性体の混合物を合成するための使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−523631(P2011−523631A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507950(P2011−507950)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070139
【国際公開番号】WO2009/135978
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508157886)コンセジョ スペリオール デ インベスティガショネス シエンティフィカス (21)
【Fターム(参考)】