説明

シリカ又は金属ケイ酸塩膜のための前駆体

【課題】新規アルコキシシラノールを提供する。
【解決手段】ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択された組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アルコキシシラノールは、電子デバイスの製作において注目が高まっており、そこでは、アルコキシシラノールは、金属含有前駆体と反応してケイ素及び金属含有材料の膜を堆積させる。具体的には、部品デバイス(即ち、トランジスタ)のサイズが小さくなって部品デバイスの密度が増加し、回路がパターン化されるにつれて、これら部品デバイスと回路間の従来のシリカ誘電絶縁材料が適切でなくなるため、業界では、比較的低温で堆積されるより優れた誘電材料が求められている。金属含有化合物と300℃よりも低い温度で反応するアルコキシシラノールが、より小さな電子部品デバイスと、増加した密度及びより小さな全体寸法を有する回路とを電気的に絶縁するのに必要とされる低誘電絶縁材料を提供するために研究されている。
【0002】
国際公開第02/27063号パンフレット(特許文献1)では、金属又は半金属含有前駆体と反応させて金属又は半金属ケイ酸塩を堆積させるためのアルコキシシラノール、例えば、トリス−(tert−ブトキシ)シラノールが記載されている。アルコキシシラノールは、[(R1)(R2)(R3)CO]−[(R4)(R5)(R6)CO]−[(R7)(R8)(R9)CO]−SiOH(式中、Rnは同じであってもよいし異なってもよく、n=1〜9である)を含有するものとして一般的に記載されている。
【0003】
さらに国際公開第03/083167号パンフレット(特許文献2)では、アルミニウム含有前駆体と反応させてシリカアルミン酸塩を形成するための、国際公開第02/27063号パンフレットに記載されているものと同じ範囲のアルコキシシラノールが記載されている。
【0004】
Backerらの「Esters Mixtes De L’Acide Tetrathio−Orthosilicique」,Rec.Trav.Chim.,61,(1942),500−512頁(非特許文献1)では、トリス−(ブトキシ)シラノールの合成が記載されている。
【0005】
Goedelらの「Hyperbranched Poly(alkoxysilonanes)」,Polymer Preprints,42(1),(2001),242−243頁(非特許文献2)では、アルコキシシラノール、例えば、トリス−(エトキシ)シラノールの重合が記載されている。
【0006】
Hausmanらの「Rapid Vapor Deposition of Highly Conformal Silica Nanoaluminates」,Science,第298巻,10/11/2002,402−406頁(非特許文献3)では、電子工学用途で使用できる薄膜を提供するためのトリス−(tert−ブトキシ)シラノールとトリメチルアルミニウムの交互の原子層堆積(ALD)が記載されている。
【0007】
Muller,Richardの「Zur Darstellung von Alkoxy−und Alkoxysiloxy−silanolen」,Z.Chem.,23,Jg.(1983),252頁(非特許文献4)では、その表1の最後の記載事項及び表2において種々のトリス−(アルコキシ)シラノールが同定されており、表2にトリス−(PhO)シラノールが含まれている。
【0008】
Schottらの「Alkoxy−silanole−partielle Kieselsaureester」,Z.Anorg.Allg.Chemie,459,(1979),177−186頁(非特許文献5)では、トリアルコキシシラノールとジアルコキシシランジオールの合成が記載されている。
【0009】
【特許文献1】国際公開第02/27063号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/083167号パンフレット
【非特許文献1】Backerらの「Esters Mixtes De L’Acide Tetrathio−Orthosilicique」,Rec.Trav.Chim.,61,(1942),500−512頁
【非特許文献2】Goedelらの「Hyperbranched Poly(alkoxysilonanes)」,Polymer Preprints,42(1),(2001),242−243頁
【非特許文献3】Hausmanらの「Rapid Vapor Deposition of Highly Conformal Silica Nanoaluminates」,Science,第298巻,10/11/2002,402−406頁
【非特許文献4】Muller,Richardの「Zur Darstellung von Alkoxy−und Alkoxysiloxy−silanolen」,Z.Chem.,23,Jg.(1983),252頁
【非特許文献5】Schottらの「Alkoxy−silanole−partielle Kieselsaureester」,Z.Anorg.Allg.Chemie,459,(1979),177−186頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シリカ−金属膜を製造するために現在意図されているアルコキシシラノールは、望ましくない物理的性質を有している。使用の容易さを促進させるために、アルコキシシラノールは、容易に合成され、高純度で利用できるべきであり、保管場所から反応場所への供給が容易であるべきである。本発明の新規アルコキシシラノールは、従来技術の不利を克服し、以下に示されるようにシリカ−金属膜の製造に関して優れた特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択された組成物;基材上に金属又は半金属ケイ酸塩層を形成するためのその使用;並びに混合アルコキシシラノールの合成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、新規クラスの混合アルコキシシラノール、その合成及び使用に関する。これらの混合アルコキシシラノールは、500℃よりも低い温度で化学気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)法のいずれかによりシリカ又は金属ケイ酸塩を作製するための可能性のある前駆体として用いることができる。これらの化合物は、2当量の大きなアルコール(HOR1)、例えば、tert−ブタノール又はtert−ペンタノールを塩基又は金属アルコキシド(MOR1、即ち、アルコールの金属塩)の存在下でSiCl4と反応させ、続いて1当量のより大きくないアルコール(HOR2)、例えば、イソ−プロパノールを塩基又は対応する金属アルコキシド(MOR2)の存在下で添加し、次いでより低温で加水分解することによって調製される。
【0013】
混合アルコキシシラノールは、室温で液体でありかつ熱的に安定であることが見出される。液体でかつより高い蒸気圧を有するため、これらの新規化合物は、商業的に入手可能なトリス(アルコキシ)シラノール、例えば、トリス(tert−ブトキシ)シラノール(TBOSL)又はトリス(tert−ペントキシ)シラノール(TPOSL)よりも優れた前駆体である。というのも、TBOSLは室温で固体であり、TPOSLの蒸気圧は非常に低い(96℃で約2torr)からである。
【0014】
これら新規の熱的に安定な混合アルコキシシラノールは、低サーマルバジェットの金属ケイ酸塩又はシリカ膜を形成するための可能性のある前駆体として調製された。混合アルコキシシラノールの中でも、ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールは調製が容易であり、半導体産業で要求される高純度において作製することが可能である。ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールの蒸気圧は、トリス(tert−ペントキシ)シラノール(TPOSL)、ALD SiO2のための可能性のある供給源として半導体産業で現在評価されている前駆体の蒸気圧よりも約10倍高いことが見出され(図を参照されたい)、したがって、混合アルコキシシラノールはCVD又はALDの前駆体としてより優れた前駆体になる。
【0015】
トリス(アルコキシ)シラノール前駆体は商業的に入手可能である。それらは2段階の手順、即ち、式1又は式2、続いて式3のような加水分解によって調製することができる。
【化1】

【0016】
トリス(アルコキシ)シラノールの熱安定性は、アルキル基に直接的に関係している。例えば、トリス(tert−ブトキシ)シラノールとトリス(tert−ペントキシ)シラノールが非常に安定であるのに対し、トリス(イソ−プロポキシ)シラノールとトリス(エトキシ)シラノールは安定ではなく、加熱によって重合しポリシロキサンを形成する。
【0017】
混合アルコキシシラノールの合成はより複雑であり、式4〜7で示されるように3段階のプロセスを伴う。
【化2】

【0018】
安定な混合アルコキシシラノールを作製するためには、第1工程(式4又は5)に関して大きなアルコールを選択してクロロ配位子の更なる置換を防ぎ、モノアルコキシトリクロロシラン又はビス(アルコキシ)ジクロロシランへのSiCl4の定量的な転化を可能にすることが好ましい。アルコキシ基が十分大きくない場合には、アルコキシトリクロロシラン、ビス(アルコキシ)ジクロロシラン及びトリス(アルコキシ)クロロシランの混合物が生成するであろう。したがって、tert−ブタノール又はtert−ペンタノールが第1工程のために好ましい。好ましくは、2当量の大きなアルコールがビス(アルコキシ)ジクロロシランを作製するのに用いられる。第2工程のための別のアルコールも同様に、完全に置換されたアルコキシシランの形成を防ぐほど十分大きくなければならないが、わずか1当量の第2のアルコールがシラノールの完全な置換を回避するのに使用されるべきである。
【0019】
例えば、2当量のtert−ブタノールが第1工程で使用され、2当量のイソ−プロパノールが第2工程で用いられる場合には、望ましくないビス(tert−ブトキシ)ビス(イソ−プロポキシ)シランが形成される。結果として得られる完全に置換されたアルコキシシランは、最終生成物の混合アルコキシシラノールから除去するのが極めて困難である。というのも、それらの沸点が通常非常に近いからである。
【0020】
副産物のHClは、得られた混合アルコキシシラノールの安定性において或る役割を果たす。生成したHClを反応から除去するための方法が2つある。即ち、有機塩基塩、例えば、ピリジン塩酸塩として又は無機塩基として除去する方法である。有機塩基は以降の分離又はCVD/ALDプロセスにおいて問題が生じる場合があるので、無機塩基が有機塩基よりも好ましい。より高い温度では他の反応が促進され、このような反応によって後で蒸留により分離することが困難な生成物が生じるため、反応温度もまた混合アルコキシシラノールの合成を成功させるために重要である。
【0021】
以下の例により、望ましい混合アルコキシシラノールを得ることが可能であることを示す。これらの化合物を作製するための実際の大規模なプロセスは、化合物それ自体に応じて変化する場合がある。
【実施例】
【0022】
[例1:ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノールの合成]
SiCl420g(0.118mol)を1000mlの三口フラスコにおいてヘキサン500mlとともに充填した。ドライアイスとイソ−プロパノールを含む冷浴によってフラスコを−40℃に冷却した。イソ−プロパノール18ml(0.237mol)とtert−ペンタノール11.3ml(0.118mol)を添加漏斗によってゆっくりと添加した。温度は−20℃未満に維持した。ピリジン30mlをフラスコにゆっくりと添加し、ピリジン塩酸塩の多量の白色沈殿物を生成させた。冷浴を取り除き、フラスコを3時間撹拌した。反応混合物のガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)測定により、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)クロロシランと他の生成物の形成が示された。溶媒の濾過及び除去によって約23gの白色スラリーを得た。この白色スラリーをエーテル40ml、水15ml及びピリジン15mlを含有する溶液に−20℃未満の温度で添加が完了するまで滴下した。得られた白色スラリーを3時間撹拌した。有機層を分離して無水CaCl2上で2日間乾燥した。GC/MSにより、主生成物としてのビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール(79.5%)と、テトラキス(イソ−プロポキシ)シラン(2.8%)と、トリス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラン(12.4%)と、トリス(イソ−プロポキシ)シラノール(1.3%)の形成が示された。真空蒸留によってトリス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シランからビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノールを分離することは非常に困難であった。しかしながら、合成が大規模で行われる場合には、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノールの精製は可能であろう。
【0023】
[例2:ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノールの合成]
SiCl420g(0.118mol)を1000mlの三口フラスコにおいてヘキサン500mlとともに充填した。ドライアイスとイソ−プロパノールを含む冷浴によってフラスコを−40℃に冷却した。tert−ブタノール11.3ml(0.118mol)を添加漏斗によってゆっくりと添加した。温度は−20℃未満に維持した。ピリジン10mlをフラスコにゆっくりと添加し、ピリジン塩酸塩の多量の白色沈殿物を生成させた。冷浴を取り除き、フラスコを3時間撹拌した。イソ−プロパノール18mlとピリジン20mlの混合物を得られた白色スラリーにゆっくりと添加した。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物のGC/MS測定により、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)クロロシランとトリス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シランの形成が示された。溶媒の濾過及び除去によって白色スラリーを得た。この白色スラリーをエーテル50ml、水50ml及びピリジン15mlを含有する溶液に−20℃未満の温度で添加が完了するまで滴下した。得られた白色スラリーを2時間撹拌した。有機層を分離して無水CaCl2上で2日間乾燥した。GC/MSにより、主生成物としてのビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール(55%)と、トリス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラン(34%)の形成が示された。
【0024】
[例3:ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールの合成]
SiCl420g(0.118mol)を1000mlの三口フラスコにおいてヘキサン400mlとともに充填した。ドライアイスとイソ−プロパノールを含む冷浴によってフラスコを−40℃に冷却した。tert−ブタノール22.6ml(0.236mol)を添加漏斗によってゆっくりと添加した。温度は−20℃未満に維持した。ピリジン20mlをフラスコにゆっくりと添加し、ピリジン塩酸塩の多量の白色沈殿物を生成させた。冷浴を取り除き、冷浴を取り除いた後フラスコを一晩撹拌した。濾過を適用して液体を得、それにイソ−プロパノール9ml(0.118mol)を40℃よりも低い温度で添加した。ピリジン10mlを得られた白色スラリーにゆっくりと添加した。冷浴を取り除いた後、反応混合物を5時間撹拌した。溶媒の濾過及び除去によって白色スラリーを得た。この白色スラリーをエーテル50ml、水50ml及びピリジン15mlを含有する溶液に−0℃未満の温度で添加が完了するまで滴下した。得られた白色スラリーを一晩撹拌した。有機層を分離して無水CaCl2上で数日間乾燥した。GC/MSにより、主生成物としてのビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール(>80%)と、ビス(イソ−プロポキシ)ビス(tert−ブトキシ)シランの形成が示された。真空蒸留によって純粋なビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール(約104℃/2torr)を得た。熱重量分析/示差走査熱量測定(TGA/DSC)により沸点が207℃であることが示される。
【0025】
[例4:ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールの合成]
ピリジンの存在下でSiCl4と2当量のtert−ブタノールの反応により調製したビス(tert−ブトキシ)ジクロロシラン20g(0.0799mol)を、1000mlの三口フラスコにおいてヘキサン200mlとともに充填した。ドライアイスとイソ−プロパノールを含む冷浴によってフラスコを−20℃に冷却した。イソ−プロパノール4.8g(0.08mol)を添加した。温度は−20℃未満に維持した。ピリジン6.3gをフラスコにゆっくりと添加し、ピリジン塩酸塩の多量の白色沈殿物を生成させた。冷浴を取り除き、冷浴を取り除いた後フラスコを室温で数日間撹拌した。溶媒の濾過及び除去によって白色スラリーを得た。この白色スラリーをエーテル50ml、水50ml及びNH4HCO36gを含有する溶液に−10℃未満の温度で添加が完了するまで滴下した。得られた白色スラリーを一晩撹拌した。有機層を分離して無水CaCl2上で乾燥した。GC/MSにより、主生成物としてのビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール(93.8%)と、ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)クロロシランの形成が示された。真空蒸留によって純粋なビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール(約104℃/2torr)を得た。
【0026】
液体でかつより高い蒸気圧を有するため、これらの新規混合アルコキシシラノールは、商業的に入手可能なトリス(アルコキシ)シラノール、例えば、トリス(tert−ブトキシ)シラノール(TBOSL)又はトリス(tert−ペントキシ)シラノール(TPOSL)よりも優れた前駆体である。というのも、TBOSLは室温で固体であり、TPOSLの蒸気圧は非常に低い(96℃で約2torr)からである。
【0027】
この新規混合アルコキシシラノールは、有利には、一般に金属又は半金属含有化合物をビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択される混合アルコキシシラノールと接触させ、当該金属又は半金属含有化合物を当該混合アルコキシシラノールと反応させて基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成することにより、基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する方法、例えば、ソリッドステート・トランジスタ、キャパシタ、ビア及び回路の電子デバイス製作における誘電層を形成する方法において使用することができる。好ましくは、混合アルコキシシラノール及び金属又は半金属含有化合物は、それらが混合及び反応される反応チャンバー又はツールへの輸送を容易にするよう液体状態でそれぞれ利用可能にされ、好ましくは、製作される電子デバイスのサーマルバジェットを維持するためにそれらの両方が当該反応チャンバー又はツールにおいて低温で気化される。典型的には、金属又は半金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン、スカンジウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される。金属又は半金属化合物を作製するのに用いられる配位子は、アミド、アルキル、アルコキシド、ハライド及びそれらの混合物であることができる。
【0028】
本発明は幾つかの好ましい実施態様に関して説明されたが、本発明の完全な範囲は特許請求の範囲により確認されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術のアルコキシシラノール;トリス(tert−ペントキシ)シラノール(TPOSL)と新規混合アルコキシシラノール;ビス(tert−ブトキシ)(イソプロポキシ)シラノール(BTBIPOSL)の蒸気圧の比較のグラフであり、アルコキシシラノールが用いられる膜堆積プロセスのための好ましい可能性のある操作温度範囲にわたってビス(tert−ブトキシ)(イソプロポキシ)シラノールの蒸気圧が一貫して10倍高いことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択された組成物。
【請求項2】
前記組成物が、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノールである、請求項1に記載の発明。
【請求項3】
前記組成物が、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールである、請求項1に記載の発明。
【請求項4】
前記組成物が、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノールである、請求項1に記載の発明。
【請求項5】
前記組成物が、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノールである、請求項1に記載の発明。
【請求項6】
前記組成物が、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノールである、請求項1に記載の発明。
【請求項7】
ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール。
【請求項8】
基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する方法であって、金属又は半金属含有化合物をビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択される混合アルコキシシラノールと接触させる工程、並びに当該金属又は半金属含有化合物を当該混合アルコキシシラノールと反応させて基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する工程を含む、方法。
【請求項9】
前記金属又は半金属含有化合物が反応の際に蒸気の状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合アルコキシシラノールが反応の際に蒸気の状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記混合アルコキシシラノールが、ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記金属又は半金属が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン、スカンジウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記金属又は半金属含有化合物が、金属アミド、金属アルコキシド、金属水素化物、金属アルキル及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する方法であって、金属又は半金属含有化合物をビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールと接触させる工程、及び当該金属又は半金属含有化合物を当該ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノールと反応させて基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する工程を含む、方法。
【請求項15】
混合アルコキシシラノールを合成する方法であって、四塩化ケイ素を第1のアルカノール又はその金属塩と反応させてアルコキシクロロシランを形成する工程、及び当該アルコキシクロロシランを当該第1のアルカノールとは異なる第2のアルカノール又はその金属塩とさらに反応させて混合アルコキシシラノールを形成する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記第1のアルカノールがtert−ブタノールであり、前記第2のアルカノールがイソ−プロパノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のアルカノールがtert−ペンタノールであり、前記第2のアルカノールがイソ−プロパノールである、請求項14に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択された組成物。
【請求項2】
基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する方法であって、金属又は半金属含有化合物をビス(tert−ブトキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(イソ−プロポキシ)シラノール、ビス(イソ−プロポキシ)(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(tert−ペントキシ)(tert−ブトキシ)シラノール、ビス(tert−ブトキシ)(tert−ペントキシ)シラノール及びそれらの混合物からなる群より選択される混合アルコキシシラノールと接触させる工程、並びに当該金属又は半金属含有化合物を当該混合アルコキシシラノールと反応させて基材上に金属又は半金属ケイ酸塩を形成する工程を含む、方法。
【請求項3】
前記金属又は半金属含有化合物が反応の際に蒸気の状態である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記混合アルコキシシラノールが反応の際に蒸気の状態である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属又は半金属が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン、スカンジウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属又は半金属含有化合物が、金属アミド、金属アルコキシド、金属水素化物、金属アルキル及びそれらの混合物から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
混合アルコキシシラノールを合成する方法であって、四塩化ケイ素を第1のアルカノール又はその金属塩と反応させてアルコキシクロロシランを形成する工程、及び当該アルコキシクロロシランを当該第1のアルカノールとは異なる第2のアルカノール又はその金属塩とさらに反応させて混合アルコキシシラノールを形成する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記第1のアルカノールがtert−ブタノールであり、前記第2のアルカノールがイソ−プロパノールである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアルカノールがtert−ペンタノールであり、前記第2のアルカノールがイソ−プロパノールである、請求項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160744(P2006−160744A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−355620(P2005−355620)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【Fターム(参考)】